JP6816683B2 - 紙コップ用原紙および紙コップ - Google Patents
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Description
例えば、一般的な自動販売機における紙コップ自動供給装置は、上下方向に積み重なった多数の紙コップを収納している。紙コップ自動供給装置は、待機時においては最下位の紙コップのトップカール部と係合することでコップを支持しており、販売時においては当該係合を解除してすぐ上の紙コップのトップカール部と係合する。このように、紙コップ自動供給装置は、トップカール部を利用して、紙コップを一つずつ確実に落下させ利用者に提供する(特許文献1参照)。
トップカール部の成形の不具合を抑制する方法の一つとして、紙コップ用原紙の引張強度を増大させることが考えられる。引張強度が大きければ、成形の際に大きな引張力がかかっても、紙コップ用原紙の繊維が破断することによるトップカール部の成形の不具合は生じにくい。
圧縮強度の大きい紙とは丸まりづらい紙であり、トップカール処理への適性に欠け、トップカール部の折れ等が発生しやすい。特に、紙コップ側面の接合部分、即ちシーム部は、紙コップ用原紙が二重になっており、二枚の紙を重ねて巻き込むことになるため、トップカール処理が他の部位よりも困難になる。そのため、丸まりづらい紙コップ用原紙を用いれば、前記接合部分において丸まりきらなかったトップカール部の一部がめくれ上がってしまうという不具合(シーム部めくれ)が非常に生じやすい。このように、圧縮強度が大きく丸まりづらい紙コップ用原紙は、紙コップの歩留まりを悪化させるという問題を生じていた。
その結果、丸まりやすさを実現するための手段として、圧縮強度の減少だけではなく、Z軸強度(層間強度)の減少も有効であることを見出した。本発明によれば、Z軸強度と引張強度が一定の範囲にあれば、丸まりやすさを備えつつ繊維の破断も生じない紙コップ用原紙が実現可能である。特にシーム部では、トップカール部の内側となる紙が外側となる紙に追随して座屈変形することによって、シーム部先端で内側となる紙と外側となる紙との間に割れ、剥がれ等を生じることがなく、シーム部めくれを抑制できる。
本発明は、このような知見を基に完成するに至ったものである。すなわち、本発明は、以下のような構成を有している。
(1)紙コップ上端開口部周縁に金型をあてることにより開口部を広げる。
(2)特定の大きさのカール形状が施されたカールの上方成形用の金型を、紙コップ上端開口部側に上からあてる。
(3)カールの上方成形用の金型を下に押し込み、紙コップ上端開口部を開口部周縁に対して外側にカールさせる。
(4)特定の大きさのカール形状が施されたカールの下方成形用の金型を、紙コップ上端開口部側に下からあてる。
(5)紙コップを下方へ押し込むことにより、カールの下方成形用の金型の曲面に沿ってガイドさせて内側へ巻き込み、トップカール部を成形する。
(パルプ)
紙コップ用原紙は、セルロースパルプを主成分とする。セルロースパルプには特に制限はないが、強度の観点から化学パルプを含有することが好ましい。化学パルプとしては特に限定されないが、広葉樹クラフトパルプ(LKP)または針葉樹クラフトパルプ(NKP)を含有することが好ましい。パルプは晒パルプでもよく、未晒パルプでもよい。さらに、LKPとNKPをいずれも含有することが好ましい。以下、特に断りのない限り、LKPとNKPにはそれぞれ晒パルプまたは未晒パルプを含むが、広葉樹晒クラフトパルプをLBKP、針葉樹晒クラフトパルプをNBKPということがある。
しかし、NKPの配合量を増やせば、引張強度と同時に圧縮強度も大きくなってしまう。そこで本発明者らは、十分小さな圧縮強度を得ると同時に、トップカール部の成形時の引張力によって紙コップ用原紙の繊維が破断しないだけの引張強度も得ることができるNKPの含有量について検討を重ねた。その結果、NKPの含有量は、パルプ成分の合計質量に対して、10〜20質量%であれば好ましく、13〜18質量%であればさらに好ましいことを見出した。
LKPはNKPと比較して繊維が短く強度に劣るが、抄紙された紙の地合や平滑性に優れ、印刷適性を良好にすることができる。そのため、紙コップ用原紙において、LKPの含有量は、パルプ成分の合計質量に対して、40質量%以上であることが好ましく、60質量%であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
しかし、フリーネスを小さくすれば、引張強度と同時に圧縮強度も大きくなってしまう。そこで本発明者らは、抄紙された紙コップ用原紙について、十分小さな圧縮強度を得ると同時に、トップカール部の成形時の引張力によって紙コップ用原紙の繊維が破断しないだけの引張強度も得ることができる離解フリーネスついて検討を重ねた。その結果、JIS P 8121:2012に準拠して測定した離解フリーネスが440〜530mlcsfであれば好ましいことを見出した。離解フリーネスは460〜510mlcsfであればより好ましく、460〜500mlcsfであればさらに好ましい。なお、ここで離解フリーネスとは、紙コップ用原紙をJIS P 8220:2012の方法に従って離解することにより得られたパルプスラリーを用いて、JIS P 8121:2012の方法に従って測定したカナディアンスタンダードフリーネスの値を指す。
また、離解フリーネスは、抄紙される前のセルロースパルプのフリーネスを調節して調整することができる。抄紙される前のセルロースパルプのフリーネスは390〜480mlcsfであれば好ましく、410〜460mlcsfであればより好ましいことを見出した。
紙コップ用原紙の坪量は、180〜240g/m2であることが好ましく、200〜240g/m2であることがより好ましく、220〜240g/m2であることがさらに好ましい。坪量が240g/m2以下であると、紙が重くなり過ぎて紙コップ製造時の作業性が低下するおそれがない。一方、坪量が180g/m2以上であると、紙コップとして強度を向上することができる。
紙コップ用原紙の紙厚は210〜290μmであることが好ましく、260〜290μmであればより好ましい。紙厚が290μm以下であると、嵩が高すぎることによって紙コップ製造時の作業性が低下するおそれがない。一方、紙厚が210μm以上であると、紙コップとしての強度を向上することができる。
紙コップ用原紙の密度は、0.82〜0.85g/cm3であることが好ましく、0.83〜0.84g/cm3であることがより好ましい。密度が0.85g/cm3以下であると、紙厚を極端に薄くする必要がなく、生産性が向上する。一方、密度が0.82g/cm3以上であると、紙コップとしての強度を向上することができる。
トップカール部の成形を容易にするためには丸まりやすい紙コップ用原紙が必要となる。
Z軸強度とは紙面に対して垂直方向の強度、つまり紙層間の強度、換言すると紙層内の内部結合強さを指す。紙層間の結合が弱ければ、Z軸強度が小さくなる。Z軸強度の小さい紙コップ用原紙にトップカール部の成形を行うと、各紙層は隣接した紙層から離れて滑り、紙層ごとにズレながら無理なく丸まっていき、容易にトップカール部を成形することができる。
Z軸強度の減少は、例えば抄紙工程中のプレス工程において線圧を適宜減少して調整することで実現できる。ほかの調整方法としては、パルプ配合量に対するNKP配合量を調節する、離解フリーネスを調節する等の方法が挙げられる。本発明者らは、トップカール部の成形を容易にするために十分に小さいZ軸強度について検討を重ねた。その結果、Z軸強度が560kN/m2より大きいと、十分な丸まりやすさを確保できず、シーム部めくれが著しく発生する。また、シーム部めくれを効果的に抑える観点から、Z軸強度は540kN/m2以下であれば好ましく、500kN/m2以下であればより好ましいことを見出した。
一方、Z軸強度が小さすぎると十分な引張強度を保持することが困難になる。そのため、Z軸強度は400kN/m2以上であることが好ましく、460kN/m2以上であることがより好ましい。
トップカール部の成形時の丸まりやすさを確保しつつ、引張力に耐え得るために、紙コップ用原紙の引張強度は14.0〜20.0kN/mであることが必要である。引張強度は15.0〜20.0kN/mであることが好ましく、15.0〜18.0kN/mであることがより好ましく、16.0〜18.0kN/mであることがさらに好ましい。
引張強度を14.0〜20.0kN/mの範囲に制御するためにはパルプ配合量に対するNKP配合量を調節する、離解フリーネスを調節する、繊維配向度を調節する、プレスパートにおけるプレス圧を調節する、内添薬品を変更する等の方法がある。さらに紙コップ原紙の紙層が一層抄きか多層抄きかに関わらず、紙の表層側に紙力剤を多く含有させる、繊維配向度に表裏差をつける等の方法がある。
引張強度はいずれの場合も、原則としてMD方向(抄紙機の流れ方向)で測定する。ただし、MD方向かどうかが不明のときは、角度22.5度毎に引張強度を測定し、最も強い引張強度を示した方向をMD方向とする。
各項目の評価方法は、下記に示す通りである。
JIS P 8124:2011に準拠して坪量の測定を行った。下4桁まで測定可能な電子天秤を用いて重量を測定し、坪量を算出した。
JIS P 8118:2014に準拠の紙厚計を用いて測定を行った。
JIS P 8118:1998に準拠して、密度を測定した。
JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.18−1:2000 紙及び板紙−内部結合強さ試験方法−第1部:Z軸方向引張試験法に準拠して測定した。測定機として、エー・アンド・デイ株式会社製テンシロン万能材料試験機RTC−1250Aを用いた。
JIS P 8113:2006に規定された方法に準拠して、JIS P 8111:1998に規定された調湿環境下にて調湿後の紙コップ原紙のMD方向の引張強度の測定を行った。測定機として、横型引張試験機(L&W社製、CODE SE−064)を用いた。
得られた紙コップ用原紙をJIS P 8220:2012の方法に従って離解し、得られたパルプスラリーをJIS P 8121:2012に準拠した方法で離解フリーネスの測定を行った。測定機として、熊谷理機工業製のカナディアンフリーネステスターを用いた。
得られた紙コップ原紙を製罐した際における、トップカール部を目視で観察して、下記基準で評価を行った。
○:トップカール部に破断,膨れ,破れ,折れ等が見られない。
△:トップカール部に若干の破断、膨れ、破れ、折れ等が見られるが実用レベルである。
×:トップカール部に破断、膨れ、破れ、折れ等が非常に多く目立つ。
得られた紙コップ原紙を製罐した際における、トップカール部のシーム部を目視で観察して、下記の基準で評価を行った。
○:シーム部にめくれ上がりが見られない。
△:シーム部に若干のめくれ上がりが見られるが実用レベルである。
×:シーム部にめくれ上がりが非常に多く目立つ。
Claims (4)
- セルロースパルプを主成分とし、
Z軸強度が560kN/m2以下であり、
MD方向の引張強度が14.0〜20.0kN/mである
ことを特徴とする紙コップ用原紙。 - 前記セルロースパルプは、針葉樹クラフトパルプを含有し、前記セルロースパルプに対する針葉樹クラフトパルプの含有量が10〜20質量%であることを特徴とする請求項1に記載の紙コップ用原紙。
- JIS P 8121:2012に準拠して測定した前記セルロースパルプの離解フリーネスが440〜530mlであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の紙コップ用原紙。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の紙コップ用原紙からなる紙コップ。
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