JP2015021209A - クラフト紙及びクラフト紙の製造方法 - Google Patents

クラフト紙及びクラフト紙の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、表裏差少なく、強度が十分に高められたクラフト紙を提供すること、及び該クラフト紙の生産効率を高めることを課題とする。【解決手段】本発明は、ギャップフォーマー式抄紙機で抄紙されたクラフト紙であって、CD方向に対するMD方向の引張強度が1.5〜3.8倍であり、CD方向の引張強度が15〜70Nm/gであることを特徴とするクラフト紙に関する。【選択図】なし

Description

本発明は、クラフト紙及びクラフト紙の製造方法に関する。具体的には、本発明は、表裏差が小さく、かつCD方向の強度が高められたクラフト紙に関する。さらに、本発明は、生産効率が高められたクラフト紙の製造方法に関する。
クラフトパルプを原料として得られるクラフト紙は、製袋や包装紙等の様々な用途に用いられている。近年は、環境保護、循環型社会の観点から、石油原料由来の包装袋から、紙素材のクラフト紙へのシフトが急速に進められている。このように、用途が拡がっているクラフト紙には、輸送・保管に耐えうるような機能や強度が求められている。
例えば、特許文献1には、フリーネスを一定範囲内とした針葉樹晒クラフトパルプと広葉樹晒クラフトパルプを特定の割合で含む晒クラフト紙であって、表面サイズ剤を塗布した晒クラフト紙が開示されている。ここでは、クラフト紙の強度を高め、さらに、表面処理剤や表面サイズ剤を塗布することによって、印刷適性を高めることが検討されている。
特開2013−100623号公報
しかしながら、上述したようなクラフト紙の製造工程においては、生産スピードが遅く、生産スピードを高めた場合はクラフト紙の強度が低下するという問題がある。すなわち、従来のクラフト紙の製造工程においては、生産スピードを高めることと、強度を高めることの両立は困難であった。
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、表裏差が小さく、強度が十分に高められたクラフト紙を提供することを目的として検討を進めた。さらに本発明者らは、クラフト紙の生産スピードを十分に高めることも目的として検討を進めた。
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、ギャップフォーマー式抄紙機を用いてクラフト紙を抄紙することにより、表裏差が小さく、かつ強度が十分に高められたクラフト紙を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
[1]ギャップフォーマー式抄紙機で抄紙されたクラフト紙であって、CD方向に対するMD方向の引張強度が1.5〜3.8倍であり、CD方向の引張強度が15〜70Nm/gであることを特徴とするクラフト紙。
[2]MD方向の破断伸度が1.0〜3.0%であり、CD方向の破断伸度が2.5〜6.5%であることを特徴とする[1]記載のクラフト紙。
[3]前記クラフト紙の一方の面の平滑度と、他方の面の平滑度の差が8sec未満であることを特徴とする[1]又は[2]のいずれかに記載のクラフト紙。
[4]前記クラフト紙は、フリーネスが530〜700mlCSFの針葉樹クラフトパルプと、フリーネスが500mlCSF以下の広葉樹クラフトパルプを質量比で10:90〜90:10の割合で含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のクラフト紙。
[5]前記針葉樹クラフトパルプのフリーネスと、前記広葉樹のフリーネスの差が100mlCSF以上であることを特徴とする[4]に記載のクラフト紙。
[6]前記クラフト紙の一方の面と他方の面の平滑度がいずれも10〜80secであることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載のクラフト紙。
[7]密度が0.65〜0.95g/cm3であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載のクラフト紙。
[8]前記クラフト紙の全質量に対して古紙パルプを30質量%未満含むことを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載のクラフト紙。
[9]前記針葉樹クラフトパルプと前記広葉樹クラフトパルプの少なくとも一方が晒クラフトパルプであることを特徴とする[4]〜[8]のいずれかに記載のクラフト紙。
[10]前記クラフト紙の全パルプに対して、針葉樹未晒クラフトパルプを70質量%以上含有することを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載のクラフト紙
[11]ギャップフォーマー式抄紙機でクラフト紙を抄紙する工程を含み、CD方向に対するMD方向の引張強度が1.5〜3.8倍であり、CD方向の引張強度が15〜70Nm/gであるクラフト紙の製造方法。
[12]前記抄紙する工程における抄紙幅は2500mm以上であり、抄紙速度は800m/min以上であることを特徴とする[11]に記載のクラフト紙の製造方法。
[13]前記抄紙する工程の前に、フリーネスが530〜700mlCSFとなるように針葉樹クラフトパルプを叩解する工程と、フリーネスが500mlCSF以下となるように広葉樹クラフトパルプを叩解する工程をさらに含むことを特徴とする[11]又は[12]に記載のクラフト紙の製造方法。
本発明によれば、表裏差が小さく、かつ強度が十分に高められたクラフト紙を効率よく得ることができ、生産スピードを格段に高めることができる。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
(1.クラフト紙)
本発明は、ギャップフォーマー式抄紙機で抄紙されたクラフト紙であって、CD方向(製造時におけるライン流れ方向)に対するMD方向(製造時におけるライン流れ方向に直交する方向)の引張強度が1.5〜3.8倍であり、CD方向の引張強度が15〜70Nm/gであるクラフト紙に関する。
通常、ギャップフォーマー式抄紙機で紙類を抄紙した場合、CD方向の引張強度が弱くなる傾向となる。しかし、本発明では、クラフト紙をギャップフォーマー式抄紙機で抄紙することにより、CD方向の引張強度を十分に高めることに成功した。
本発明で得られるクラフト紙のCD方向に対するMD方向の引張強度は1.5〜3.8倍であればよく、1.8〜3.5倍であることが好ましく、2.0〜3.3倍であることがより好ましい。また、クラフト紙のCD方向の引張強度は15〜70Nm/gであればよく、18〜45Nm/gであることが好ましく、20〜35Nm/gであることが好ましい。
本発明のクラフト紙は、フリーネスが530〜700mlCSFの針葉樹クラフトパルプと、フリーネスが500mlCSF以下の広葉樹クラフトパルプを質量比で10:90〜90:10の割合で含有することが好ましい。
針葉樹クラフトパルプ(NKP)のフリーネスは、530mlCSF以上であればよく、550mlCSF以上であることが好ましく、570mlCSF以上であることがより好ましい。また、針葉樹クラフトパルプ(NKP)のフリーネスは、700mlCSF以下であればよく、670mlCSF以下であることが好ましく、650mlCSF以下であることがより好ましい。
広葉樹クラフトパルプ(LKP)のフリーネスは、500mlCSF以下であればよく、400mlCSF以下であることが好ましく、350mlCSF以下であることがより好ましい。なお、広葉樹クラフトパルプ(LKP)のフリーネスの下限値に特に制限はないが、150mlCSF以上であることが好ましく、200mlCSF以上であることがより好ましい。針葉樹クラフトパルプ(NKP)と広葉樹クラフトパルプ(LKP)のフリーネスを上記範囲内とすることにより、引張強度、破断伸び、引裂強度に優れたクラフト紙を得ることができる。
なお、フリーネスとは、JIS−P8220に準拠して標準離解機にて試料を離解処理した後、JIS−P8121に準拠してカナダ標準濾水度試験機にて測定した濾水度の値である。
また、針葉樹クラフトパルプのフリーネスと、広葉樹クラフトパルプのフリーネスの差は、100mlCSF以上であることが好ましく、150ml以上であることがより好ましい。針葉樹クラフトパルプのフリーネスと、広葉樹クラフトパルプのフリーネスの差が上記範囲となるように調整することにより、クラフト紙の引張強度、破断伸び、引裂強度をより良好なものとすることができる。
針葉樹クラフトパルプと広葉樹クラフトパルプの質量比は、10:90〜90:10であればよく、20:80〜80:20であることが好ましく、30:70〜70:30であることがより好ましく、40:60〜60:40であることがさらに好ましい。このように、針葉樹クラフトパルプと広葉樹クラフトパルプの質量比を上記範囲内とすることにより、クラフト紙が破袋することを抑止することができる。
本発明では、針葉樹クラフトパルプと広葉樹クラフトパルプのフリーネスを上記範囲とし、これらの質量比を上記範囲とすることにより、引張強度、破断伸び、引裂強度などに起因する破袋防止効果を高めることができる。さらに、ギャップフォーマー式抄紙機における生産性を高めることができ、安価で高品質なクラフト紙を得ることができる。
なお、本発明において、地合とは、クラフト紙を光に透過させて見た場合のパルプ繊維により形成される模様のことをいい、光を透過させたときに視覚的に感ぜられるむらと定義することができる。また、地合が良いとは、局所的な坪量の分布が少ないことを意味する。局所坪量の分布を測定するには、散乱の影響がなく透過量と局所坪量に一定の関係があるβ線を用いることが多い。
また、本発明のクラフト紙は、透気度は、40〜150秒であることが好ましい。透気度を上記範囲内とすることにより、原料クラフトパルプのフリーネスを所望の範囲とすることができ、クラフト紙の地合を良好にすることができる。また、一定の引張強度や破断伸びを達成することができ、品質バランスの良いクラフト紙を得ることができる。
本発明で用いる針葉樹クラフトパルプと広葉樹クラフトパルプは、混合前に叩解されることが好ましい。叩解は、針葉樹クラフトパルプと広葉樹クラフトパルプが上記範囲のフリーネスとなるまで行われることが好ましい。これにより、クラフト紙の強度をより効果的に高めることができる。
本発明のクラフト紙には、2種類の繊維長を有する原料クラフトパルプが混合されることが好ましい。繊維長が比較的長いものとしては、1.5〜2.5mm、好ましくは、1.7〜2.2mmの原料クラフトパルプ用いることが好ましい。また、繊維長が比較的短いものとしては、0.5〜1.0mm、好ましくは、0.6〜0.8mmの原料クラフトパルプ用いることが好ましい。このような異なる繊維長を有する原料クラフトパルプは、上述したような叩解工程を経ることによっても得ることができるし、針葉樹クラフトパルプや広葉樹クラフトパルプを混合することによっても得ることができる。
本発明のクラフト紙の一方の面と他方の面の平滑度はいずれも10〜80secであることが好ましく、15〜50secであることがより好ましく、20〜40secであることがさらに好ましい。さらに、クラフト紙の一方の面の平滑度と、他方の面の平滑度の差が8sec未満であることが好ましく、5sec未満であることがより好ましく、3sec未満であることがさらに好ましい。このようにクラフト紙の表裏面の平滑度を上記範囲とすることにより、印刷適性を効果的に高めることができる。また、表裏面の平滑度の差が小さいため、印刷面を選ぶことなく、印刷を施すことが可能となる。
本発明のクラフト紙の密度は0.65〜0.95g/cm3であることが好ましく、0.70〜0.85g/cm3であることがより好ましく、0.75〜0.80g/cm3であることがさらに好ましい。クラフト紙の密度を上記範囲内とすることにより、引張強度、破断伸び等の強度を高めることができる。
本発明のクラフト紙のMD方向の破断伸度は1.0〜3.0%であることが好ましく、 1.5〜3.0%であることがより好ましく、2.0〜3.0%であることがさらに好ましい。また、CD方向の破断伸度は2.5〜6.5%であることが好ましく、3.5〜6.5%であることがより好ましく、4.5〜6.5%であることがさらに好ましい。
<1−1.原料>
本発明で用いることができる針葉樹クラフトパルプとしては、例えば、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、針葉樹亜硫酸パルプ等を挙げることができる。また、広葉樹クラフトパルプとしては、例えば、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ等を挙げることができる。
また、本発明では、針葉樹クラフトパルプと広葉樹クラフトパルプに加えて、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ、または離解・脱墨・漂白古紙パルプ、あるいはケナフ、麻、葦等の非木材繊維から化学的にまたは機械的に製造されたパルプ等の公知の種々のパルプを用いることができる。なお、クラフト紙の全質量に対する古紙パルプの含有率は、30質量%未満であることが好ましく、20質量%未満であることがより好ましく、10質量%未満であることがさらに好ましい。
中でも、本発明では、針葉樹クラフトパルプと広葉樹クラフトパルプの少なくとも一方が晒クラフトパルプであることが好ましい。すなわち、針葉樹クラフトパルプとして針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)を用い、広葉樹クラフトパルプとして広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)を用いることが好ましい。用途に応じて、本発明のもう一つの好ましい形態は針葉樹未晒クラフトパルプを70質量%以上含有する。好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上含有する。
<1−2.内填薬品>
本発明では、上述した原料クラフトパルプに内添薬品を加えてもよい。内添薬品としては、例えば、硫酸バンド等の薬品定着剤、ロジン等のサイズ剤、ポリアクリルアマイド、澱粉等の紙力増強剤、ポリアマイド等の濾水度歩留り向上剤、ポリアミド、ポリアミン、エピクロルヒドリン等の耐水化剤、消泡剤、クレー、タルク、炭酸カルシウム等の填料、塩基性染料、酸性染料、アニオン性直接染料、カチオン性直接染料等の公知の種々のものを挙げることができる。
また、本発明では、上述した原料クラフトパルプにカチオン化澱粉を含有することが好ましい。カチオン化澱粉の含有率は、原料クラフトパルプの全質量に対して、0.2質量%以下であること好ましく、0.01〜0.05質量%であることがより好ましい。カチオン化澱粉を加えることにより、クラフト紙の強度が増強され、かつ破断伸びのよいクラフト紙を得ることができる。
(2.クラフト紙の製造方法)
<2−1.抄紙方法>
本発明のクラフト紙の抄紙には、ギャップフォーマー式抄紙機を用いる。ギャップフォーマー式抄紙機は、原料を2枚のワイヤーに挟みながら走行させることにより、上下両方に脱水する型式である。このため、原料はその両側でほぼ均等に脱水することができ、かつ脱水速度を高めることができる。すなわち、ツインワイヤー式抄紙機では高速抄紙が可能となり、かつ得られたクラフト紙の裏表間の風合いの差が小さくなるという利点がある。さらに、このような抄紙機を用いて、クラフト紙を抄紙することにより、CD方向の引張強度を高めることができる。
ギャップフォーマー式抄紙機で、抄紙する際の抄紙幅は、2500mm以上であることが好ましく、3500mm以上であることがより好ましく、4500mm以上であることが更に好ましい。また、抄紙速度は、800m/min以上であることが好ましく、900m/min以上であることがより好ましく、1000m/min以上であることがさらに好ましい。このように、ギャップフォーマー式抄紙機では、抄紙幅を広くとることができ、より高速抄紙が可能となり、クラフト紙の生産効率をより高めることができる。
従来、このようなギャップフォーマー式抄紙機では、新聞用紙やティシュ用の薄物紙類が抄紙されていた。すなわち、ギャップフォーマー式抄紙機では、強度が重要視されない大量消費型の紙類の製造が行われていた。これは、ギャップフォーマーによって抄造されると引裂き強度が弱くなるためであり、引裂き強度が弱くても問題とならない新聞用紙やティシュ用の薄物紙類がギャップフォーマー式抄紙機で抄紙されることが多かった。
しかし、本発明では、クラフト紙をギャップフォーマー式抄紙機で抄紙することにより、CD方向の引張強度が十分に高められたクラフト紙を得ることに成功した。すなわち、本発明では、ギャップフォーマー式抄紙方法により、クラフト紙を抄紙することにより、強度及び品質を高めつつも、クラフト紙の生産効率を高めることができる。
<2−2.叩解>
本発明では、上記のように抄紙する工程の前に、フリーネスが530〜700mlCSFとなるように針葉樹クラフトパルプを叩解する工程と、フリーネスが500mlCSF以下となるように広葉樹クラフトパルプを叩解する工程をさらに含むことが好ましい。
<2−3.その他の処理>
本発明では、表面強度を向上させたり、接着剤との接着性を高めるため、クラフト紙の表面に平滑化処理を施しても良い。この平滑化処理は、例えば加圧可能なリール間でクラフト紙を加圧処理することにより実施することが好ましい。また、平滑化処理を施す際に、クラフト紙の表面に接するロールは平滑な表面を有し、加熱可能な金属製ロールがあることが好ましい。
なお、本クラフト紙における平滑化処理は、上記の平滑化処理の他、クラフト紙を抄紙する過程で、例えば一対の金属ロールを一組または複数組備えたカレンダーロールによるカレンダー処理(マシンカレンダーによるカレンダー処理)、金属製ロールと樹脂製ロールとを一組または複数組備えたカレンダーロールによるカレンダー処理(ソフトカレンダーによるカレンダー処理)、ヤンキードライヤーによる乾燥処理等により実施することもできる。このような製造方法とすることにより、クラフト紙の表面の平滑性が向上し、より高精度な印刷が可能となる。
(3.クラフト紙の用途)
本発明のクラフト紙は、事務用印刷用紙、封筒、包装紙、紙袋等に好ましく用いられる。本発明のクラフト紙は優れた印刷適性を有するため、印刷を施す用紙等に好ましく用いられる。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
(実施例1)
JIS P 8121−2(カナダ標準ろ水度法)に準じてろ水度(所謂フリーネス)を540ccにダブルディスクリファイナーで調整した針葉樹クラフトパルプ(NBKP)と、ろ水度を480ccにダブルディスクリファイナーで調整した広葉樹クラフトパルプ(LBKP)を質量比で50:50となるように混合したパルプスラリーに、カチオン化澱粉0.8部(対パルプ、固形分換算)、硫酸バンド0.6部(対パルプ、固形分換算)、アルキルケテンダイマー(荒川化学工業(株)製、TW−100)0.1部(対パルプ、固形分換算)を攪拌しながら順次添加し、紙料を調整した。
上記で得られた紙料をギャップフォーマー式抄紙機にて900m/分で抄紙し、101g/m2のクラフト紙を得た。得られたクラフト紙の、MD方向の比引張強度、破断伸び、比引裂強度、地合、生産効率、表裏差を表1に示す。
(実施例2)
広葉樹クラフトパルプのろ水度を400ccとした以外は実施例1と同様にして、101g/m2のクラフト紙を得た。得られたクラフト紙の、密度、平滑度、MD、CD方向の比引張強度および破断伸び、比引裂強度、地合、印刷適性、生産効率、表裏差を表1に示す。
(実施例3)
針葉樹クラフトパルプのろ水度を650cc、広葉樹クラフトパルプのろ水度を300ccとした以外は実施例1と同様にして紙料を調整した。得られた紙料をギャップフォーマー式抄紙機にて850m/分で抄紙し、101g/m2のクラフト紙を得た。得られたクラフト紙の、密度、平滑度、MD、CD方向の比引張強度および破断伸び、比引裂強度、地合、印刷適性、生産効率、表裏差を表1に示す。
(実施例4)
針葉樹クラフトパルプのろ水度を650cc、広葉樹クラフトパルプのろ水度を400ccとした以外は実施例1と同様にして、101g/m2のクラフト紙を得た。得られたクラフト紙の、密度、平滑度、MD、CD方向の比引張強度および破断伸び、比引裂強度、地合、印刷適性、生産効率、表裏差を表1に示す。
(実施例5)
針葉樹クラフトパルプのろ水度を650cc、広葉樹クラフトパルプのろ水度を400ccとした後、質量比で50:50となるように混合したパルプスラリーに、古紙パルプ含有量が20質量%となるようDIPを配合した以外は実施例1と同様にして、101g/m2のクラフト紙を得た。得られたクラフト紙の、密度、平滑度、MD、CD方向の比引張強度および破断伸び、比引裂強度、地合、印刷適性、生産効率、表裏差を表1に示す。
なお、本発明で用いるDIPとしては、十分な平滑性を得るため、機械パルプを含まない古紙(例えば、上白およびカードに分類される古紙、模造・色上に分類される古紙)を配合することが好ましい。古紙はパルプスラリーとし、脱墨工程を経た後、叩解され紙料が調整される。
(実施例6)
古紙パルプ含有量が40質量%となるようにDIPを配合した以外は実施例5と同様にして、101g/m2のクラフト紙を得た。得られたクラフト紙の、密度、平滑度、MD、CD方向の比引張強度および破断伸び、比引裂強度、地合、印刷適性、生産効率、表裏差を表1に示す。
(実施例7)
針葉樹クラフトパルプのろ水度を730ccとした以外は実施例1と同様にして紙料を調整した。得られた紙料をギャップフォーマー式抄紙機にて950m/分で抄紙し、101g/m2のクラフト紙を得た。得られたクラフト紙の、密度、平滑度、MD、CD方向の比引張強度および破断伸び、比引裂強度、地合、印刷適性、生産効率、表裏差を表1に示す。
(実施例8)
針葉樹クラフトパルプのろ水度を490ccとした以外は実施例1と同様にして紙料を調整した。得られた紙料をギャップフォーマー式抄紙機にて850m/分で抄紙し、101g/m2のクラフト紙を得た。得られたクラフト紙の、密度、平滑度、MD、CD方向の比引張強度および破断伸び、比引裂強度、地合、印刷適性、生産効率、表裏差を表1に示す。
(実施例9)
針葉樹クラフトパルプのろ水度を650cc、広葉樹クラフトパルプのろ水度を530ccとした以外は実施例1と同様にして紙料を調整した。得られた紙料をギャップフォーマー式抄紙機にて950m/分で抄紙し、101g/m2のクラフト紙を得た。得られたクラフト紙の、密度、平滑度、MD、CD方向の比引張強度および破断伸び、比引裂強度、地合、印刷適性、生産効率、表裏差を表1に示す。
(実施例10)
針葉樹クラフトパルプと広葉樹クラフトパルプの質量比を70:30とした以外は実施例4と同様にして、101g/m2のクラフト紙を得た。得られたクラフト紙の、密度、平滑度、MD、CD方向の比引張強度および破断伸び、比引裂強度、地合、印刷適性、生産効率、表裏差を表1に示す。
(実施例11)
針葉樹クラフトパルプと広葉樹クラフトパルプの質量比を30:70とした以外は実施例4と同様にして、101g/m2のクラフト紙を得た。得られたクラフト紙の、密度、平滑度、MD、CD方向の比引張強度および破断伸び、比引裂強度、地合、印刷適性、生産効率、表裏差を表1に示す。
(実施例12)
針葉樹クラフトパルプと広葉樹クラフトパルプの質量比を85:15とした以外は実施例4と同様にして、101g/m2のクラフト紙を得た。得られたクラフト紙の、密度、平滑度、MD、CD方向の比引張強度および破断伸び、比引裂強度、地合、印刷適性、生産効率、表裏差を表1に示す。
(実施例13)
針葉樹クラフトパルプと広葉樹クラフトパルプの質量比を15:85とした以外は実施例4と同様にして、101g/m2のクラフト紙を得た。得られたクラフト紙の、密度、平滑度、MD、CD方向の比引張強度および破断伸び、比引裂強度、地合、印刷適性、生産効率、表裏差を表1に示す。
(実施例14)
針葉樹クラフトパルプと広葉樹クラフトパルプの質量比を95:5とした以外は実施例4と同様にして、101g/m2のクラフト紙を得た。得られたクラフト紙の、密度、平滑度、MD、CD方向の比引張強度および破断伸び、比引裂強度、地合、印刷適性、生産効率、表裏差を表1に示す。
(実施例15)
針葉樹クラフトパルプと広葉樹クラフトパルプの質量比を5:95とした以外は実施例4と同様にして、101g/m2のクラフト紙を得た。得られたクラフト紙の、密度、平滑度、MD、CD方向の比引張強度および破断伸び、比引裂強度、地合、印刷適性、生産効率、表裏差を表1に示す。
(実施例16)
針葉樹クラフトパルプのろ水度を600cc、広葉樹クラフトパルプのろ水度を350ccとした以外は実施例1と同様にして、101g/m2のクラフト紙を得た。得られたクラフト紙の、密度、平滑度、MD、CD方向の比引張強度および破断伸び、比引裂強度、地合、印刷適性、生産効率、表裏差を表1に示す。
(実施例17)
[NUKPの製造]
ダグラスファーからなる木材チップを用い、液比3.5硫化度28%、有効アルカリ14質量%(Na2Oとして)となるように調整した白液を用いて蒸解温度165℃にて1.5時間クラフト蒸解を行った。クラフト蒸解終了後、黒液を分離し、得られたチップを高濃度離解機によって離解後、濾布で遠心脱水と水洗浄を3回繰り返し、次いでスクリーンにより、未蒸解物を除き、遠心脱水してカッパー価45である針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)を得た。
上記で得られた針葉樹未晒クラフトパルプのろ水度を550ccにダブルディスクリファイナーにて調整し使用した以外は実施例1と同様にして、101g/m2のクラフト紙を得た。得られたクラフト紙の、密度、平滑度、MD、CD方向の比引張強度および破断伸び、比引裂強度、地合、印刷適性、生産効率、表裏差を表1に示す。
(実施例18)
[LOKPの製造]
ユーカリ木材チップとアカシア木材チップを60%と40%で混合したL材木材チップを用い、液比3.5、硫化度28%、有効アルカリ14質量%(Na2Oとして)となるように調整した白液を用いて蒸解温度155℃にて6時間クラフト蒸解を行った。クラフト蒸解終了後、黒液を分離し、得られたチップを高濃度離解機によって離解後、濾布で遠心脱水と水洗浄を3回繰り返し、次いでスクリーンにより、未蒸解物を除き、遠心脱水してカッパー価20.7である広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)を得た。次に、この広葉樹未晒クラフトパルプに対し、絶乾パルプ質量あたり苛性ソーダを2.5%、酸素を2.1%添加し、パルプ濃度10%、95℃、90分の条件で二段アルカリ酸素漂白を行って広葉樹酸素晒クラフトパルプ(LOKP)を得た。この広葉樹酸素晒クラフトパルプのろ水度を
ろ水度を550ccにダブルディスクリファイナーにて調整した前記針葉樹未晒クラフトパルプと、ろ水度を500ccに調整した上記広葉樹酸素晒クラフトパルプを質量比で90:10となるよう混合したパルプスラリーを使用した以外は実施例1と同様にして、101g/m2のクラフト紙を得た。得られたクラフト紙の、密度、平滑度、MD、CD方向の比引張強度および破断伸び、比引裂強度、地合、印刷適性、生産効率、表裏差を表1に示す。
(実施例19)
ろ水度を650ccにダブルディスクリファイナーにて調整した前記針葉樹未晒クラフトパルプと、ろ水度を400ccに調整した上記広葉樹酸素晒クラフトパルプを質量比で90:10となるよう混合したパルプスラリーを使用した以外は実施例1と同様にして、101g/m2のクラフト紙を得た。得られたクラフト紙の、密度、平滑度、MD、CD方向の比引張強度および破断伸び、比引裂強度、地合、印刷適性、生産効率、表裏差を表1に示す。
(実施例20)
実施例1と同様にして得られた紙料をギャップフォーマー式抄紙機にて900m/分で抄紙し、100g/m2のクラフト紙を得た。
得られたクラフト紙に、酸化澱粉100部、表面サイズ剤(商品名:ポリマロンN2000、荒川化学工業(株)製)20部からなる塗被液を片面当たりの乾燥塗工量が0.5g/m2となるようゲートロールコーターにて塗工し、101.0g/m2のクラフト紙を得た。得られたクラフト紙の、密度、平滑度、MD、CD方向の比引張強度および破断伸び、比引裂強度、地合、印刷適性、生産効率、表裏差を表1に示す。
(比較例1)
実施例4と同様にして得られた紙料を長網抄紙機にて500m/分で抄紙し、101g/m2のクラフト紙を得た。得られたクラフト紙の、密度、平滑度、MD、CD方向の比引張強度および破断伸び、比引裂強度、地合、印刷適性、生産効率、表裏差を表1に示す。
(比較例2)
実施例4と同様にして得られた紙料を円網抄紙機にて250m/分で抄紙し、101g/m2のクラフト紙を得た。得られたクラフト紙の、密度、平滑度、MD、CD方向の比引張強度および破断伸び、比引裂強度、地合、印刷適性、生産効率、表裏差を表1に示す。
(比較例3)
実施例5と同様にして得られた紙料を長網抄紙機にて500m/分で抄紙し、101g/m2のクラフト紙を得た。得られたクラフト紙の、密度、平滑度、MD、CD方向の比引張強度および破断伸び、比引裂強度、地合、印刷適性、生産効率、表裏差を表1に示す。
(比較例4)
実施例5と同様にして得られた紙料を円網抄紙機にて250m/分で抄紙し、101g/m2のクラフト紙を得た。得られたクラフト紙の、密度、平滑度、MD、CD方向の比引張強度および破断伸び、比引裂強度、地合、印刷適性、生産効率、表裏差を表1に示す。
(比較例5)
実施例4と同様にして得られた紙料をハイブリッドフォーマー抄紙機にて650m/分で抄紙し、101g/m2のクラフト紙を得た。得られたクラフト紙の、密度、平滑度、MD、CD方向の比引張強度および破断伸び、比引裂強度、地合、印刷適性、生産効率、表裏差を表1に示す。
(評価)
<比引張強度>
JIS P 8113に準拠して紙の引張強度を測定し、その結果を米坪で除して紙1g当たりの強度を算出した。
<破断伸び>
JIS P 8113に準拠して測定した。
<比引裂強度>
JIS P8116に準拠して測定し、その結果を米坪で除して紙1g当たりの強度を算出した。
<地合>
原紙の透かし地合を目視により下記基準で評価した。
5:非常に良好である。
4:良好である。
3:若干劣るが実用上問題ないレベル。
2:大きく劣り実用上問題となるレベル。
1:極めて劣り、実用できないレベル。
<生産効率>
[抄造速度]
1分間当たりに生産される紙をm(メートル)/分で示す。
○:抄造速度が800m/分以上であり、生産効率が非常に良い。
△:抄造速度が500m/分以上、800m/分未満であり、生産効率がやや良い。
×:抄造速度が500m/分未満であり、生産効率が非常に悪い。
<表裏差>
JIS P 8155:2010に準拠して紙の平滑度を測定した。
○:表裏面の平滑度の差が3秒未満であり、表裏差が非常に少ない。
△:表裏面の平滑度の差が3秒以上8秒未満であり、若干の表裏差があるが実用上問題ない。
×:表裏面の平滑度の差が8秒以上あり、表裏差が大きく実用上問題がある。
Figure 2015021209
表1に示された結果から、実施例1〜20では、生産効率よく、CD方向の引張強度が十分に強いクラフト紙が得られていることがわかる。また、実施例1〜20で得られたクラフト紙は、表裏差が少ないことがわかる。
一方、比較例1〜5では、生産効率が低下しており、得られるクラフト紙の表裏差が大きいことがわかる。
本発明によれば、表裏差が小さくかつ、強度が十分に高められたクラフト紙を効率よく得ることができ、生産スピードを格段に高めることができるため、製紙産業上の利用可能性が高い。

Claims (13)

  1. ギャップフォーマー式抄紙機で抄紙されたクラフト紙であって、
    CD方向に対するMD方向の引張強度が1.5〜3.8倍であり、CD方向の引張強度が15〜70Nm/gであることを特徴とするクラフト紙。
  2. MD方向の破断伸度が1.0〜3.0%であり、
    CD方向の破断伸度が2.5〜6.5%であることを特徴とする請求項1に記載のクラフト紙。
  3. 前記クラフト紙の一方の面の平滑度と、他方の面の平滑度の差が8sec未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載のクラフト紙。
  4. 前記クラフト紙は、フリーネスが530〜700mlCSFの針葉樹クラフトパルプと、フリーネスが500mlCSF以下の広葉樹クラフトパルプを質量比で10:90〜90:10の割合で含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のクラフト紙。
  5. 前記針葉樹クラフトパルプのフリーネスと、前記広葉樹のフリーネスの差が100mlCSF以上であることを特徴とする請求項4に記載のクラフト紙。
  6. 前記クラフト紙の一方の面と他方の面の平滑度がいずれも10〜80secであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のクラフト紙。
  7. 密度が0.65〜0.95g/cm3であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のクラフト紙。
  8. 前記クラフト紙の全質量に対して古紙パルプを30質量%未満含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のクラフト紙。
  9. 前記針葉樹クラフトパルプと前記広葉樹クラフトパルプの少なくとも一方が晒クラフトパルプであることを特徴とする請求項4〜8のいずれか1項に記載のクラフト紙。
  10. 前記クラフト紙の全質量に対して針葉樹未晒クラフトパルプを70質量%以上含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のクラフト紙
  11. ギャップフォーマー式抄紙機でクラフト紙を抄紙する工程を含み、
    CD方向に対するMD方向の引張強度が1.5〜3.8倍であり、CD方向の引張強度が15〜70Nm/gであるクラフト紙の製造方法。
  12. 前記抄紙する工程における抄紙幅は2500mm以上であり、抄紙速度は800m/min以上であることを特徴とする請求項11に記載のクラフト紙の製造方法。
  13. 前記抄紙する工程の前に、フリーネスが530〜700mlCSFとなるように針葉樹クラフトパルプを叩解する工程と、フリーネスが500mlCSF以下となるように広葉樹クラフトパルプを叩解する工程をさらに含むことを特徴とする請求項11又は12に記載のクラフト紙の製造方法。
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