JP6927403B1 - 紙の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、サイズ剤の添加量を増やした場合であっても、紙の製造工程における抄紙系内での汚れを低減することを課題とする。
【解決手段】本発明は、パルプスラリーを得る工程と、パルプスラリーを抄紙する工程を含む紙の製造方法であって、パルプスラリーを得る工程は、パルプと水を含む分散液に少なくとも第1の水溶性アルミニウム化合物を添加する第1薬品添加工程と、パルプと水を含む分散液に第2の水溶性アルミニウム化合物とアルケニル無水コハク酸を添加する第2薬品添加工程と、をこの順に含み、パルプスラリーを得る工程は、白水希釈工程をさらに含み、第2薬品添加工程では、パルプと水を含む分散液に第2の水溶性アルミニウム化合物とアルケニル無水コハク酸の混合物を添加する、もしくは、第2の水溶性アルミニウム化合物とアルケニル無水コハク酸を同時添加する、紙の製造方法に関する。
【選択図】なし

Description

本発明は、紙の製造方法に関する。
一般的に紙は、パルプ繊維を水中に懸濁させたパルプスラリーから製造され、パルプスラリーには、パルプ繊維の他に必要に応じて各種薬剤が添加される。このような薬剤としては、歩留向上剤、紙力増強剤、填料、サイズ剤、粘剤等が主に使用されている。
近年は、物流コストの削減等を目的として、紙の軽量化が検討されている。紙の軽量化の取り組みの一つとして、紙の白色度、不透明性、印刷適性を向上する目的で填料と呼ばれる無機粒子(填料)の含有率を高めることが行われている。
また、紙の耐水性を高めたり、インクにじみを抑制したりする目的でパルプスラリーにはサイズ剤が添加される。特許文献1には、ロジン系のサイズ剤を添加したスラリーを抄紙する紙の製造方法が開示されている。ここでは、パルプに対するサイズ剤の定着率を高めるために、硫酸アルミニウムなどのアルミニウム化合物を添加することが検討されている。また、特許文献2には、サイズ剤としてアルケニルコハク酸無水物(ASA)を添加する紙の製造方法が開示されている。
特開2017−8463号公報 特開2014−88644号公報
上述したように各種サイズ剤を用いた紙の製造方法が開示されている。しかしながら、従来技術において、特にサイズ剤の添加量を増やした際にサイズ剤由来の汚れがマシンに付着する等の不具合が発生する場合があった。
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、サイズ剤の添加量を増やした場合であっても、紙の製造工程における抄紙系内での汚れを低減することを目的として検討を進めた。
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、パルプスラリーを得る工程において、所定の薬品添加工程を設けることにより、紙の製造工程における抄紙系内での汚れを低減できることを見出した。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
[1] パルプスラリーを得る工程と、パルプスラリーを抄紙する工程を含む紙の製造方法であって、
パルプスラリーを得る工程は、パルプと水を含む分散液に少なくとも第1の水溶性アルミニウム化合物を添加する第1薬品添加工程と、パルプと水を含む分散液に第2の水溶性アルミニウム化合物とアルケニル無水コハク酸を添加する第2薬品添加工程と、をこの順に含み、
パルプスラリーを得る工程は、第1薬品添加工程の前、第2薬品添加工程の後、もしくは第1薬品添加工程と第2薬品添加工程の間に白水希釈工程をさらに含み、
第2薬品添加工程では、パルプと水を含む分散液に第2の水溶性アルミニウム化合物とアルケニル無水コハク酸の混合物を添加する、もしくは、第2の水溶性アルミニウム化合物とアルケニル無水コハク酸を同時添加する、紙の製造方法。
[2] 第1薬品添加工程では、紙力剤をさらに添加する、[1]に記載の紙の製造方法。
[3] 第1の水溶性アルミニウム化合物及び第2の水溶性アルミニウム化合物は、それぞれ硫酸バンドである、[1]又は[2]に記載の紙の製造方法。
[4] 第1薬品添加工程は白水希釈工程の前に設けられる工程であり、
第2薬品添加工程は白水希釈工程の前後10秒以内に設けられる工程である、[1]〜[3]のいずれかに記載の紙の製造方法。
[5] 第1薬品添加工程及び第2薬品添加工程は、白水希釈工程の前に設けられる工程である、[1]〜[4]のいずれかに記載の紙の製造方法。
[6] 第2薬品添加工程は、パルプと水を含む分散液に、第2の水溶性アルミニウム化合物とアルケニル無水コハク酸の混合物を添加する工程であり、
混合物を添加する工程では、第2の水溶性アルミニウム化合物とアルケニル無水コハク酸を混合して混合物としてから、10秒以内に分散液に添加する、[1]〜[5]のいずれかに記載の紙の製造方法。
[7] 第1薬品添加工程において添加する第1の水溶性アルミニウム化合物の量をPとし、第2薬品添加工程において添加する第2の水溶性アルミニウム化合物の量をQとした場合、P≧0.8×Qである、[1]〜[6]のいずれかに記載の紙の製造方法。
[8] 第2薬品添加工程において添加するアルケニル無水コハク酸の添加量は、分散液中のパルプの絶乾質量100質量部に対して0.01〜0.30質量部である、[1]〜[7]のいずれかに記載の紙の製造方法。
[9] 第2薬品添加工程において、添加する第2の水溶性アルミニウム化合物の添加量は、アルケニル無水コハク酸の添加量に対して0.2〜36倍である、[1]〜[8]のいずれかに記載の紙の製造方法。
[10] パルプスラリーは、軽質炭酸カルシウムを含有する灰分を含み、軽質炭酸カルシウムの含有量は、灰分の全質量に対して80質量%以上である、[1]〜[9]のいずれかに記載の紙の製造方法。
本発明の製造方法によれば、サイズ剤の添加量を増やした場合であっても、紙の製造工程における抄紙系内での汚れを低減することができる。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
(紙の製造方法)
本発明は、パルプスラリーを得る工程と、パルプスラリーを抄紙する工程を含む紙の製造方法に関する。ここで、本発明におけるパルプスラリーを得る工程は、パルプと水を含む分散液に少なくとも第1の水溶性アルミニウム化合物を添加する第1薬品添加工程と、パルプと水を含む分散液に第2の水溶性アルミニウム化合物とアルケニル無水コハク酸を添加する第2薬品添加工程と、をこの順に含む。また、パルプスラリーを得る工程は、第1薬品添加工程の前、第2薬品添加工程の後、もしくは第1薬品添加工程と第2薬品添加工程の間に白水希釈工程をさらに含む。そして、第2薬品添加工程では、パルプと水を含む分散液に第2の水溶性アルミニウム化合物とアルケニル無水コハク酸の混合物を添加する、もしくは、第2の水溶性アルミニウム化合物とアルケニル無水コハク酸を同時添加する。なお、本明細書においては、抄紙工程に供するパルプ分散液をパルプスラリーと呼び、その前段階(薬品等添加段階)のパルプ分散液を分散液と呼ぶ。
このように、本発明においては、パルプスラリーを得る工程において、少なくとも第1の水溶性アルミニウム化合物を添加する第1薬品添加工程と、パルプと水を含む分散液に第2の水溶性アルミニウム化合物とアルケニル無水コハク酸を添加する第2薬品添加工程と、をこの順に設け、さらに、第2薬品添加工程においてアルケニル無水コハク酸と水溶性アルミニウム化合物の添加条件をコントロールすることにより、抄紙系内での汚れ(マシン汚れ等)の発生を効果的に抑制することができる。
また、本発明においては、得られる紙のサイズ性を向上させることができる。本発明においては、パルプスラリーを得る工程で、サイズ剤としてアルケニル無水コハク酸を用いているため、紙のサイズ性をより効果的に向上させることができる。アルケニル無水コハク酸は、抄紙工程系内において、アルケニル無水コハク酸の加水分解物が凝集することで汚れの原因となる。特に灰分が多い紙の製造工程においては、アルケニル無水コハク酸の添加量を増やした場合に、アルケニル無水コハク酸の加水分解物と灰分が凝集することで汚れの発生が顕著となる場合がある。
しかしながら、本発明者らは、紙の製造方法について鋭意検討を進める中で、敢えて、パルプと水を含む分散液に、アルケニル無水コハク酸と水溶性アルミニウム化合物の混合物を添加するか、もしくは、パルプと水を含む分散液に、アルケニル無水コハク酸と水溶性アルミニウム化合物を同時添加することとした。そして、本発明者らは、これらの工程を少なくとも第1の水溶性アルミニウム化合物を添加する第1薬品添加工程の後に設けることとした。その結果、驚くべきことに、第1の水溶性アルミニウム化合物を添加した後に、アルケニル無水コハク酸と第2の水溶性アルミニウム化合物の混合物を添加するか、もしくは、パルプと水を含む分散液に、アルケニル無水コハク酸と第2の水溶性アルミニウム化合物を同時添加することで、アルケニル無水コハク酸の加水分解物が凝集することを抑制することができ、抄紙系内での汚れ(マシン汚れ等)の発生を抑制できることを見出した。このように本発明は、サイズ剤としてアルケニル無水コハク酸を用いた場合に、紙のサイズ性の向上と、抄紙系内での汚れ(マシン汚れ等)の発生の抑制を両立し得たものである。
さらに、本発明においては、高い灰分歩留まり率が達成される。具体的には、灰分歩留まり率は29%以上であることが好ましく、31%以上であることがより好ましく、35%以上であることがさらに好ましい。なお、本明細書における灰分歩留まりとは、灰分のワンパスリテンションと呼ばれることもあり、抄紙機におけるインレット中の灰分と白水中の灰分から算出される灰分の歩留りである。
パルプスラリーを得る工程は、パルプと水を含む分散液に少なくとも第1の水溶性アルミニウム化合物を添加する第1薬品添加工程と、パルプと水を含む分散液に第2の水溶性アルミニウム化合物とアルケニル無水コハク酸を添加する第2薬品添加工程とを含む。このように、パルプスラリーを得る工程では、少なくとも第1の水溶性アルミニウム化合物を添加する第1薬品添加工程と、第2の水溶性アルミニウム化合物とアルケニル無水コハク酸を添加する第2薬品添加工程の2工程を含んでおり、水溶性アルミニウム化合物が2段階で添加される。このように、水溶性アルミニウム化合物を2段階に分けて添加することで、抄紙系内での汚れ(マシン汚れ等)の発生をより効果的に抑制することができる。
上述したようにパルプスラリーを得る工程では第1薬品添加工程と第2薬品添加工程の2段階において水溶性アルミニウム化合物が添加される。ここで、第1薬品添加工程において添加する第1の水溶性アルミニウム化合物の量をPとし、第2薬品添加工程において添加する第2の水溶性アルミニウム化合物の量をQとした場合、P≧0.5×Qであることが好ましく、P≧0.8×Qであることがより好ましく、P≧1.0×Qであることが特に好ましい。なお、Qに対してPの上限値は特に限定されないが、P≦20.0×Qであることが好ましく、P≦10.0×Qであることがより好ましく、P≦5.0×Qであることが特に好ましい。このように各薬品添加工程における水溶性アルミニウム化合物の添加量上記条件とすることにより、抄紙系内での汚れ(マシン汚れ等)の発生をより効果的に抑制することができる。
第1の水溶性アルミニウム化合物は硫酸バンドであることが好ましく、第2の水溶性アルミニウム化合物もまた硫酸バンドであることが好ましい。この場合、第1の水溶性アルミニウム化合物と第2の水溶性アルミニウム化合物は同種の硫酸バンドであることが好ましい。
第1薬品添加工程では、紙力剤をさらに添加することが好ましい。すなわち、第1薬品添加工程では、第1の水溶性アルミニウム化合物と紙力剤を添加することが好ましい。例えば、第1の水溶性アルミニウム化合物と紙力剤を添加する際には、第1の水溶性アルミニウム化合物と紙力剤を、同一のタンクに添加してもよく、タンクとタンクを繋ぐ同一の配管上で添加してもよい。また、第1の水溶性アルミニウム化合物と紙力剤を添加する際には、どちらか一方をタンクに添加し、もう一方をそのタンクに繋がる配管に添加してもよい。このように、第1の水溶性アルミニウム化合物と紙力剤は同時に添加してよく、第1の水溶性アルミニウム化合物と紙力剤を予め混合した後に添加してもよく、各々を順番に添加してもよい。中でも、第1薬品添加工程では、第1の水溶性アルミニウム化合物と紙力剤は同時に添加するか、もしくは第1の水溶性アルミニウム化合物を添加した後に紙力剤を添加することが好ましい。
紙力剤としては、例えば、カチオン化澱粉やカチオン性や両性のポリアクリルアミド系コポリマー等を用いることができる。中でも、紙力剤は、カチオン化澱粉であることが好ましい。
紙力剤の添加量は、パルプの絶乾質量100質量部に対して、0.05質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、0.2質量部以上であることがさらに好ましく、0.4質量部以上であることが特に好ましい。また、紙力剤の添加量は、パルプの絶乾質量100質量部に対して、5.0質量部以下であることが好ましい。
第2薬品添加工程では、パルプと水を含む分散液に第2の水溶性アルミニウム化合物とアルケニル無水コハク酸を添加する。第2薬品添加工程は、第1薬品工程において第1の水溶性アルミニウム化合物を添加した後、5秒経過した後であって25分以内に設けられる工程であることが好ましく、10秒経過した後であって1分以内に設けられる工程であることがより好ましい。このように、第1薬品添加工程と第2薬品添加工程は異なる工程である。第1薬品添加工程と第2薬品添加工程は、それぞれ異なる容器で行わる工程であってもよく、配管内における異なる位置で行われる工程であってもよい。
第2薬品添加工程において添加するアルケニル無水コハク酸の添加量は、分散液中のパルプの絶乾質量100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.02質量部以上であることがより好ましく、0.03質量部以上であることがさらに好ましく、0.05質量部以上であることが一層好ましく、0.1質量部以上であることが特に好ましい。また、アルケニル無水コハク酸の添加量は、分散液中のパルプの絶乾質量100質量部に対して、0.30質量部以下であることが好ましく、0.25質量部以下であることがより好ましく、0.24質量部以下であることがさらに好ましく、0.22質量部以下であることが特に好ましい。なお、上記添加量は、アルケニル無水コハク酸の固形分換算量である。アルケニル無水コハク酸の添加量を上記範囲内とすることにより、より効果的に紙のサイズ性を向上させるとともに、抄紙系内での汚れをより効果的に低減することができる。
第2薬品添加工程において添加する第2の水溶性アルミニウム化合物の添加量は、分散液中のパルプの絶乾質量100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.10質量部以上であることがさらに好ましく、0.20質量部以上であることが一層好ましい。また、第2の水溶性アルミニウム化合物の添加量は、分散液中のパルプの絶乾質量100質量部に対して、5.0質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以下であることがより好ましく、0.45質量部以下であることがさらに好ましく、0.40質量部以下であることが特に好ましい。本実施形態においては、第2薬品添加工程において添加する水溶性アルミニウム化合物の添加量を通常の添加量より少なくすることができる。その結果、系内のpHの低下を抑制することができ、炭酸カルシウムの溶解が抑制されるため、アルケニル無水コハク酸由来の汚れ(例えばASA−Ca塩(粘着性があり、汚れの要因になりやすい))の発生を抑えることができる。このように、本実施形態においては、系内の汚れの発生が抑制されるため、抄紙系内での汚れ(マシン汚れ等)の発生が効果的に抑制される。
第2薬品添加工程における第2の水溶性アルミニウム化合物の添加量は、アルケニル無水コハク酸の添加量に対して1倍以上であることが好ましく、6倍以上であることがさらに好ましい。また、水溶性アルミニウム化合物の添加量は、アルケニル無水コハク酸の添加量に対して36倍以下であることが好ましく、10倍以下であることがより好ましい。第2薬品添加工程における第2の水溶性アルミニウム化合物の添加量とアルケニル無水コハク酸の添加量を上記条件とすることにより、より効果的に紙のサイズ性を向上させるとともに、抄紙系内での汚れをより効果的に低減することができる。
第2薬品添加工程では、パルプと水を含む分散液に第2の水溶性アルミニウム化合物とアルケニル無水コハク酸の混合物を添加する、もしくは、第2の水溶性アルミニウム化合物とアルケニル無水コハク酸を同時添加する工程を含む。中でも、第2薬品添加工程では、第2の水溶性アルミニウム化合物とアルケニル無水コハク酸を予め混合した混合物を添加することが好ましい。すなわち、第2薬品添加工程は、パルプと水を含む分散液に、第2の水溶性アルミニウム化合物とアルケニル無水コハク酸の混合物を添加する工程を含むことが好ましい。
第2薬品添加工程が、パルプと水を含む分散液に、第2の水溶性アルミニウム化合物とアルケニル無水コハク酸の混合物を添加する工程を含む場合、第2の水溶性アルミニウム化合物とアルケニル無水コハク酸を混合した後には、すみやかに分散液に該混合物が添加されることが好ましい。具体的には、第2の水溶性アルミニウム化合物とアルケニル無水コハク酸を混合して混合物としてから、60秒以内に分散液に添加することが好ましく、30秒以内に分散液に添加することがより好ましく、10秒以内に分散液に添加することがさらに好ましい。このように、第2の水溶性アルミニウム化合物とアルケニル無水コハク酸を混合後すぐにパルプと水を含む分散液に添加することで、抄紙系内での汚れをより効果的に低減することができる。
第2薬品添加工程で用いるアルケニル無水コハク酸は、エマルションとして添加されることが好ましい。例えば、アルケニル無水コハク酸とカチオン化澱粉を混合し、乳化工程を経ることでエマルション溶液(乳化液)とし、このエマルション溶液と水溶性アルミニウム化合物を混合することが好ましい。アルケニル無水コハク酸をエマルション溶液(乳化液)として添加することで、アルケニル無水コハク酸の分散安定性をより効果的に高めることができる。
アルケニル無水コハク酸のエマルション溶液において、アルケニル無水コハク酸エマルション粒子の粒子径は、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましい。また、アルケニル無水コハク酸エマルション粒子の粒子径は、5μm以下であることが好ましい。なお、アルケニル無水コハク酸エマルション粒子の粒子径は、光学顕微鏡にて観察し、測定した値である。
パルプスラリーを得る工程は、第1薬品添加工程の前、第2薬品添加工程の後、もしくは第1薬品添加工程と第2薬品添加工程の間に白水希釈工程をさらに含む。このように、第1薬品添加工程及び第2薬品添加工程に加えて、白水希釈工程を経て、抄紙工程に供されるパルプスラリーが得られることになる。
中でも、第1薬品添加工程は白水希釈工程の前に設けられる工程であることが好ましく、第2薬品添加工程は白水希釈工程の前後10秒以内に設けられる工程であることが好ましい。この場合、第2薬品添加工程は白水希釈工程の前に設けられてもよく、白水希釈工程の前に設けられてもよい。ただし、第2薬品添加工程は白水希釈工程の前後近傍に設けられることが好ましい。
また、白水希釈工程は第1薬品添加工程の後、20秒以降に設けられる工程であることが好ましく、25秒以降に設けられる工程であることがより好ましく、30秒以降に設けられる工程であることがさらに好ましい。また、白水希釈工程は第1薬品添加工程の後、25分以内に設けられる工程であることが好ましい。
さらに、白水希釈工程は、第2薬品添加工程の後に設けられることがより一層好ましい。すなわち、第1薬品添加工程及び第2薬品添加工程は、白水希釈工程の前に設けられる工程であることが好ましい。なお、白水希釈工程では、希釈後の固形分濃度が2質量%以下となるように、より好ましくは1.5質量%以下となるように白水あるいは水で希釈されることが好ましい。
パルプスラリーを抄紙する工程(以下、抄紙工程ともいう)では、酸性抄紙法、中性抄紙法、アルカリ性抄紙法等の抄紙方法を任意に採用できる。中でも、パルプスラリーを抄紙する工程では、中性抄紙法もしくはアルカリ性抄紙法を採用することが好ましい。抄紙機としては、ツインワイヤー式抄紙機、ギャップフォーマー式抄紙機、長網抄紙機、円網抄紙機、オントップ型抄紙機、ヤンキー抄紙機等を用いることができる。中でも、抄紙工程では、ツインワイヤー式抄紙機又はギャップフォーマー式抄紙機を用いることが好ましく、ギャップフォーマー式抄紙機を用いることが特に好ましい。ツインワイヤー式抄紙機やギャップフォーマー式抄紙機は、原料を2枚のワイヤーに挟みながら走行させることにより、上下両方に脱水する型式の抄紙機である。このため、原料はその両側でほぼ均等に脱水され、脱水速度が高められる。すなわち、ツインワイヤー式抄紙機やギャップフォーマー式抄紙機はでは高速抄紙が可能となり、かつ得られた紙の裏表間の風合いの差が小さくなるという利点がある。
本発明の紙の製造工程においては、紙の表面強度を向上させたり、接着剤との接着性を高めるため、紙の表面に平滑化処理を施してもよい。このような平滑化処理は、例えば加圧可能なリール間で紙を加圧処理することにより実施することができる。また、平滑化処理を施す際に、紙の表面に接するロールは平滑な表面を有し、加熱可能な金属製ロールであることが好ましい。
また、平滑化処理は、紙を抄紙する過程で、例えば一対の金属製ロールを一組または複数組備えたカレンダーロールによるカレンダー処理(マシンカレンダーによるカレンダー処理)、金属製ロールと樹脂製ロールとを一組または複数組備えたカレンダーロールによるカレンダー処理(ソフトカレンダーによるカレンダー処理)、又はヤンキードライヤーによる乾燥処理等により実施することもできる。このような製造方法とすることにより、紙の表面の平滑性が向上し、より高精度な印刷が可能となる。
なお、本発明の紙の製造工程は、抄紙工程の前に、任意の工程を含んでもよい。すなわち、本発明の紙の製造工程は、第1薬品添加工程、第2薬品添加工程及び白水希釈工程に加えて、任意の工程を含んでいてもよい。任意の工程としては、例えば、填料を添加する工程、歩留り剤を添加する工程等を挙げることができる。このような任意の工程は第1薬品添加工程、第2薬品添加工程及び白水希釈工程の後に設けられることが好ましい。
(紙)
本発明は、上述した製造方法で製造された紙に関するものであってもよい。本発明の製造方法で得られる紙のステキヒトサイズ度は3秒以上であることが好ましく、4秒以上であることがより好ましく、5秒以上であることがさらに好ましい。また、紙のステキヒトサイズ度は40秒以下であることが好ましく、35秒以下であることがより好ましく、30秒以下であることがさらに好ましい。紙のステキヒトサイズ度を上記範囲内とすることにより、印刷適性や筆記適性の良い紙を得ることができる。
紙中の灰分量は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、紙中の灰分量は、40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましい。なお、紙中の灰分量は、20質量%以上であってもよく、22質量%以上であってもよく、24質量%以上であってもよく、本発明の製造方法で得られる紙は高灰分紙であってもよい。また、紙中の灰分量は、20質量%以下であってもよく、18質量%以上であってもよく、16質量%以上であってもよく、本発明の製造方法で得られる紙は低灰分紙であってもよい。なお、灰分の含有量は、JIS P 8251に記載の灰分試験方法(525℃燃焼法)によって測定される値である。
ここで、灰分は、軽質炭酸カルシウムを含むことが好ましい。この場合、軽質炭酸カルシウムの含有量は、灰分の全質量に対して80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。軽質炭酸カルシウムの含有量を上記範囲内とすることにより、印刷適性に優れた紙を安価に製造することが可能となる。
紙中のアルケニル無水コハク酸量は、0.030質量%以上であることが好ましく、0.035質量%以上であることがより好ましく、0.040質量%以上であることがさらに好ましい。また、紙中のアルケニル無水コハク酸量は、0.100質量%以下であることが好ましく、0.095質量%以下であることがより好ましく、0.090質量%以下であることがさらに好ましい。なお、アルケニル無水コハク酸の含有量は、熱分解GCMSを用いて分析する。具体的には、所定量のアルケニル無水コハク酸を紙に浸み込ませたものを熱分解GCMSで標品として測定し、紙中ASA量の検量線を作製し、この検量線に基づいて、紙中ASA量を算定する。紙中のアルケニル無水コハク酸量を上記範囲内とすることにより、印刷適性や筆記特性と汚れの防止を両立することができる。
紙の坪量は特に限定されないが、20g/m以上であることが好ましく、25g/m以上であることがより好ましい。また、紙の坪量は200g/m以下であることが好ましく、170g/m以下であることがより好ましく、150g/m以下であることがさらに好ましい。
紙の厚みは特に限定されないが、25μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、35μm以上であることがさらに好ましい。また、紙の厚みは250μm以下であることが好ましく、225μm以下であることがより好ましく、200μm以下であることがさらに好ましい。
(水溶性アルミニウム化合物)
パルプスラリーを得る工程では、第1薬品添加工程において第1の水溶性アルミニウム化合物を添加し、第2薬品添加工程において第2の水溶性アルミニウム化合物を添加する。第1の水溶性アルミニウム化合物及び第2の水溶性アルミニウム化合物(以下、まとめて単に水溶性アルミニウム化合物とも言う)は、紙力増強剤やサイズ剤等を紙中に定着させるための定着剤として機能する。水溶性アルミニウム化合物としては、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、硫酸バンド等が挙げられる。
第1薬品添加工程における第1の水溶性アルミニウム化合物の添加量は、分散液中のパルプの絶乾質量100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、0.3質量部以上であることがさらに好ましい。また、第1薬品添加工程における第1の水溶性アルミニウム化合物の添加量は、分散液中のパルプの絶乾質量100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましく、1質量部以下であることがさらに好ましい。第1薬品添加工程における第1の水溶性アルミニウム化合物の添加量を上記範囲内とすることにより、抄紙系内での汚れをより効果的に低減することができる。
第2薬品添加工程における第2の水溶性アルミニウム化合物の添加量は、分散液中のパルプの絶乾質量100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.10質量部以上であることがさらに好ましく、0.20質量部以上であることが一層好ましい。また、第2薬品添加工程における第2の水溶性アルミニウム化合物の添加量は、分散液中のパルプの絶乾質量100質量部に対して、5.0質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以下であることがより好ましく、0.45質量部以下であることがさらに好ましく、0.40質量部以下であることが特に好ましい。第2薬品添加工程における第2の水溶性アルミニウム化合物の添加量を上記条件とすることにより、より効果的に紙のサイズ性を向上させるとともに、抄紙系内での汚れをより効果的に低減することができる。
第2薬品添加工程における第2の水溶性アルミニウム化合物の添加量は、アルケニル無水コハク酸の添加量に対して1倍以上であることが好ましく、6倍以上であることがより好ましい。また、水溶性アルミニウム化合物の添加量は、アルケニル無水コハク酸の添加量に対して36倍以下であることが好ましく、10倍以下であることがより好ましい。第2薬品添加工程における第2の水溶性アルミニウム化合物の添加量を上記条件とすることにより、より効果的に紙のサイズ性を向上させるとともに、抄紙系内での汚れをより効果的に低減することができる。
第1薬品添加工程、第2薬品添加工程及び白水希釈工程を経て、アルケニル無水コハク酸と水溶性アルミニウム化合物(第1の水溶性アルミニウム化合物及び第2の水溶性アルミニウム化合物を含む)を含むパルプスラリーが得られる。水溶性アルミニウム化合物の含有量(第1の水溶性アルミニウム化合物及び第2の水溶性アルミニウム化合物を含む)は、パルプスラリー中のパルプの絶乾質量100質量部に対して、0.1〜6質量部であることが好ましく、0.1〜4質量部であることがより好ましい。
(無機填料)
上述した製造方法で製造される紙は、無機填料を含有する。無機填料の含有量は、パルプの絶乾質量100質量部に対して、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、16質量部以上であることがさらに好ましく、22質量部以上であることが一層好ましく、24質量部以上であることが特に好ましい。また、無機填料が含有量は、パルプの絶乾質量100質量部に対して、40質量部以下であることが好ましく、35質量部以下であることがより好ましい。また、無機填料は軽質炭酸カルシウムを含有し、軽質炭酸カルシウムの含有量は、灰分の全質量に対して80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。軽質炭酸カルシウムの含有量を上位範囲内とすることにより、印刷適性に優れた紙を安価に製造することが可能となる。
無機填料はタルクを含んでいてもよい。タルクは、含水ケイ酸マグネシウム(3MgO・4SiO・HO)を主成分とするものである。また、無機填料には、タルク以外の填料が含まれていてもよい。タルク以外の無機填料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、石膏、カオリン、デラミネーテッドカオリン、水和ケイ酸塩、珪藻土、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、若しくは水酸化亜鉛等の無機顔料や尿素・ホルマリン樹脂微粒子、若しくは微小中空粒子等の有機顔料を挙げることができる。また、古紙や損紙等をパルプ原料として用いた場合には、これらに含まれる填料も含有することができる。なお、無機填料は2種以上を混合して用いてもよい。
(パルプ原料)
パルプスラリーを得る工程では、まず、パルプと水を含む分散液を得る。本発明で用いることのできるパルプとしては、例えば、広葉樹由来のパルプ、針葉樹由来のパルプ、非木材由来のパルプを挙げることができる。広葉樹クラフトパルプとしては、例えば、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ等を挙げることができる。また、針葉樹クラフトパルプとしては、例えば、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、針葉樹亜硫酸パルプ等を挙げることができる。
また、紙に含まれるパルプには、アカシア由来の広葉樹パルプが含まれることが好ましい。アカシア由来の広葉樹パルプの含有量は、パルプの原材料全体の質量に対して30質量%以上であることが好ましい。アカシア由来の広葉樹パルプの含有量は、パルプの原材料全体の質量に対して30〜100質量%であることが好ましく、50〜100質量%であることがより好ましく、70〜100質量%であることがさらに好ましい。アカシア由来のパルプの含有量を上記範囲内とすることにより、静摩擦係数の小さい紙を製造することができる。さらに、アカシア由来の広葉樹パルプの含有量を上記範囲内とすることにより、製造工程における紙の乾燥時間を短縮することができる。
アカシア由来のパルプとしては、例えば、Acacia mangium(アカシアマンギューム)、A.auriculiformis(アカシアアウリカルフォルミス)、A.catechu(アカシアカテキュー)、A.decurrens(アカシアデカレンス)、A.holosericea(アカシアホロセリシア)、A.leptocarpa(アカシアレプトカルパ)、A.maidenii(アカシアマイデニアイ)、A.mearnsii(アカシアメランシー)、A.melanoxylon(アカシアメラノキシロン)、A.neriifolia(アカシアネリフォーラ)、A.silvestris(アカシアシリベストリス)、又はA.peregrinalis(アカシアペレグリナリス)等やこれらの交雑種(hybrid:ハイブリッド)であるアカシアから得られるパルプを用いることができる。
本発明では、針葉樹クラフトパルプと広葉樹クラフトパルプに加えて、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ、または離解・脱墨・漂白古紙パルプ、あるいはケナフ、麻、葦等の非木材繊維から化学的にまたは機械的に製造されたパルプ等の公知の種々のパルプを用いることができる。なお、紙の全質量に対する古紙パルプの含有率は、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。すなわち、紙の全質量に対するフレッシュパルプの含有率は70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
本発明で用いるパルプ原料のフリーネスは350〜650mlCSFであることが好ましい。パルプスラリーを得る工程の前には、必要に応じて、上記フリーネスとなるように叩解工程を設けてもよい。なお、フリーネスとは、JIS−P8220に準拠して標準離解機にて試料を離解処理した後、JIS−P8121に準拠してカナダ標準濾水度試験機にて測定した濾水度の値である。
(任意成分)
本発明の製造工程では、上述した無機填料以外の内添薬品を加えてもよい。内添薬品としては、例えば、ポリアマイド等の濾水度歩留り向上剤、ポリアミド、ポリアミン、エピクロルヒドリン等の耐水化剤、消泡剤、塩基性染料、酸性染料、アニオン性直接染料、カチオン性直接染料等の公知の種々のものを挙げることができる。
さらに、本発明の製造工程では、上述した原料パルプにカチオン化澱粉を含有させてもよい。カチオン化澱粉の含有率は、原料パルプの絶乾質量100質量部に対して、0.1〜15質量部であること好ましく、0.1〜10質量部であることがより好ましい。カチオン化澱粉の含有率は、カチオン化澱粉を固形分換算した場合の含有率である。カチオン化澱粉を加えることにより、紙の強度が増強され、かつ破断伸びのよい紙を得ることができる。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
<アルケニル無水コハク酸(ASA)の乳化方法>
アルケニル無水コハク酸(ファイブラン、荒川化学株式会社製)100質量%溶液と、カチオン化澱粉(P−3Y、ピラースターチ株式会社製)3質量%溶液を混合し、ホモジナイザー(日本精機製作所社製)を用いて、5000rpmで5分間乳化作業を行い、アルケニル無水コハク酸成分が1質量%であって、アルケニル無水コハク酸エマルション粒子の粒子径が2μmのアルケニル無水コハク酸の乳化液を得た。なお、アルケニル無水コハク酸エマルション粒子の粒子径は、光学顕微鏡にて観察し、測定した値である。
<実施例1>
原料となるパルプとして、CSF400mLの広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)を用いた。パルプ濃度が3質量%になるよう水で希釈し、第1分散液を得た。
次いで、第1分散液中のパルプの絶乾質量100質量部に対して、硫酸バンド(固形分換算)0.4質量部と、カチオン化澱粉(P−3Y、ピラースターチ株式会社製)(固形分換算)1.2質量部を同時に添加し、第2分散液を得た(第1薬品添加工程)。
次いで、第2分散液に上記で得たアルケニル無水コハク酸の乳化液と硫酸バンドを同時に添加し、第3分散液を得た。アルケニル無水コハク酸の乳化液の添加量は、第2分散液中のパルプの絶乾質量100質量部に対してアルケニル無水コハク酸(固形分換算)が0.05質量部となるようにし、硫酸バンドの添加量は、硫酸バンド(固形分換算)が0.4質量部となるようにした(第2薬品添加工程)。
その後、白水で希釈する工程、填料を添加する工程及び歩留り剤を添加する工程を順に設けた。白水で希釈する工程では、第3分散液を白水で希釈することにより、パルプ濃度が0.5質量%の第4分散液を得た。填料を添加する工程では、第4分散液中のパルプの絶乾質量100質量部に対して軽質炭酸カルシウム(タマパールTP−121、奥多摩工業株式会社製)を16質量部添加し、第5分散液を得た。歩留り剤を添加する工程では、第5分散液中のパルプの絶乾質量100質量部に対してカチオン性歩留剤(ND−300、ハイモ株式会社製)が0.015質量部、アニオン歩留剤(RV−30、ハイモ株式会社製)0.0075質量部となるように各歩留り剤を添加した。
サイズ剤(アルケニル無水コハク酸(ASA)の乳化液)の添加タイミングは、紙力剤を添加してから30秒後に、白水希釈は、サイズ剤(アルケニル無水コハク酸(ASA)の乳化液)を添加してから8秒後に行った。
上記のようにして、抄紙用のパルプスラリーを得た。その後、定法に従い、角型シートマシンで抄紙して坪量64g/mの手抄き紙を得た。
<実施例2>
第1薬品添加工程における硫酸バンドの添加量を0.64質量部とし、第2薬品添加工程における硫酸バンドの添加量を0.16質量部とした以外は実施例1と同様の方法で紙を製造した。
<実施例3>
第2薬品添加工程で、アルケニル無水コハク酸と硫酸バンドを事前に5秒間混合した後に第2分散液に添加した以外は、実施例1と同様の方法で紙を製造した。
<実施例4>
第1薬品添加工程における硫酸バンドの添加量を0.5質量部とし、第2薬品添加工程におけるアルケニル無水コハク酸の添加量を0.14質量部とし、硫酸バンドの添加量を0.1質量部に変更した。また、填料を添加する工程における、軽質炭酸カルシウム(タマパールTP−121、奥多摩工業株式会社製)の添加量を27質量部添加に変更した。坪量を60g/mと変更した。上記以外は実施例3と同様の方法で紙を製造した。
<実施例5>
第2薬品添加工程においてアルケニル無水コハク酸の乳化液と硫酸バンドを同時に添加したこと以外は実施例4と同様の方法で紙を製造した。
<比較例1>
第1薬品添加工程における硫酸バンドの添加量を0.6質量部とし、第2薬品添加工程において硫酸バンドを添加しなかった以外は実施例5と同様の方法で紙を製造した。
<実施例6>
原料となるパルプとして、CSF400mLの広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)を用いた。パルプ濃度が3質量%になるよう水で希釈し、第1分散液を得た。
次いで、第1分散液中のパルプの絶乾質量100質量部に対して、硫酸バンド(固形分換算)0.4質量部、カチオン化澱粉(P−3Y、ピラースターチ株式会社製)(固形分換算)1.2質量部を同時に添加し、第2分散液を得た(第1薬品添加工程)。
次いで、第2分散液を白水で希釈し、パルプ濃度が0.5質量%の第3分散液を得た(白水で希釈する工程)。
次いで、第3分散液に、上記で得たアルケニル無水コハク酸の乳化液と硫酸バンドを5秒間事前に混合した後に添加し、第4分散液を得た。添加量は、第3分散液中のパルプの絶乾質量100質量部に対してアルケニル無水コハク酸(固形分換算)が0.14質量部、硫酸バンド(固形分換算)が0.2質量部となるようにした(第2薬品添加工程)。
その後、填料を添加する工程及び歩留り剤を添加する工程を順に設けた。填料を添加する工程では、第4分散液中のパルプの絶乾質量100質量部に対して軽質炭酸カルシウム(タマパールTP−121、奥多摩工業株式会社製)を27質量部添加し、第5分散液を得た。歩留り剤を添加する工程では、第5分散液中のパルプの絶乾質量100質量部に対してカチオン性歩留剤(ND−300、ハイモ株式会社製)が0.015質量部、アニオン歩留剤(RV−30、ハイモ株式会社製)0.0075質量部となるように添加した。
サイズ剤(アルケニル無水コハク酸(ASA)の乳化液)の添加タイミングは、紙力剤を添加してから30秒後に、白水希釈は、サイズ剤(アルケニル無水コハク酸(ASA)の乳化液)を添加してから8秒後に行った。
上記のようにして、抄紙用のパルプスラリーを得た。その後、定法に従い、角型シートマシンで抄紙して坪量60g/mの手抄き紙を得た。
<実施例7>
第2薬品添加工程で、アルケニル無水コハク酸と硫酸バンドを事前に混合せず、同時に添加したこと以外は実施例6と同様の方法で紙を製造した。
<実施例8>
第2薬品添加工程で、アルケニル無水コハク酸と硫酸バンドの混合時間を10秒とし、第3分散液に添加したこと以外は実施例6と同様の方法で紙を製造した。
<実施例9>
填料を添加する工程で、軽質炭酸カルシウム(タマパールTP−121、奥多摩工業株式会社製)の添加量を30質量部としたこと以外は実施例6の方法で紙を製造した。
<実施例10>
第2薬品添加工程で、アルケニル無水コハク酸の添加量を0.2質量部としたこと以外は実施例6と同様の方法で紙を製造した。
<実施例11>
第2薬品添加工程で、アルケニル無水コハク酸と硫酸バンドの混合時間を60秒とし、第3分散液に添加したこと以外は実施例6と同様の方法で紙を製造した。
<実施例12>
填料を添加する工程で、軽質炭酸カルシウム(タマパールTP−121、奥多摩工業株式会社製)の添加量を40質量部としたこと以外は実施例6と同様の方法で紙を製造した。
<実施例13>
填料を添加する工程で、軽質炭酸カルシウム(タマパールTP−121、奥多摩工業株式会社製)の添加量を16質量部としたこと以外は実施例6と同様の方法で紙を製造した。
<実施例14>
填料を添加する工程で、軽質炭酸カルシウム(タマパールTP−121、奥多摩工業株式会社製)の添加量を7質量部としたこと以外は実施例6と同様の方法で紙を製造した。
<実施例15>
第2薬品添加工程で硫酸バンドの添加量を5.0質量部にした以外は実施例6と同様の方法で紙を製造した。
<比較例2>
第1薬品添加工程における硫酸バンドの添加量を0.6質量部とし、第2薬品添加工程において硫酸バンドを添加しなかった以外は実施例6と同様の方法で紙を製造した。
(評価)
<紙中の灰分量の測定>
紙中の灰分量は、JIS P 8251に準拠し測定した。
<紙中ASA>
紙中のASA量は熱分解GCMSを用いて分析した。具体的には、各量のアルケニル無水コハク酸(ファイブラン、荒川化学株式会社製)を紙に浸み込ませたものを熱分解GCMSで標品として測定し、紙中ASA量の検量線を作製し、紙中ASA量を算定した。
<紙中灰分中の軽質炭酸カルシウムの割合>
JIS P 8251に準拠し紙を灰化した後、その灰分の粒度分布をマイクロトラック(MT3000II、マイクロトラック・ベル社製)を用いて測定し、粒子径が1〜10μmを軽質炭酸カルシウム、11〜16μmをタルクとして、軽質炭酸カルシウムの割合を算出した。
<ステキヒトサイズ度>
サイズ性の指標として、ステキヒトサイズ度を、JIS P 8122に準拠し測定した。値が大きいほどサイズ性が良好である。
<灰分歩留り>
TAPPIの標準試験方法(TAPPI T 269cm−92)に準拠し灰分歩留りを測定した。具体的には、DFR−05(フォイトターボ株式会社製)を用いて、填料を添加する工程後の第5分散液を攪拌しながら、歩留り剤を添加し、ワイヤーメッシュを通過後のモデル白水を得た。第5分散液の固形分濃度および灰分とモデル白水の固形分濃度および灰分の灰分を測定し、歩留りを算出した。
第5分散液の固形分濃度:y
第5分散液の灰分:z
モデル白水の固形分濃度:Y
モデル白水の灰分:Z
灰分歩留り={(y×z)−(Y×Z)}/(y×z)×100
<ASAの汚れ評価>
角型シートマシンで手抄きを行った後、25cm角の湿紙に金属板をのせ、4.2kgfで2分間、プレスを行った。金属板を剥離し、金属板への汚れ付着量を4段階で目視評価した。なお、汚れの観察には、光学顕微鏡Nicon社製 OPTIPHOT 200を用いた。
◎:目視評価で汚れの付着がなく、光学顕微鏡で100倍に拡大して観察しても汚れの付着が確認できなかった。
〇:目視評価で汚れの付着がなく、光学顕微鏡で100倍に拡大して観察すると汚れの付着が確認できた。
△:目視評価で汚れの付着がややあった。
×:目視評価で汚れの付着が多くあった。
Figure 0006927403
Figure 0006927403
実施例では、マシン汚れが抑制されていた。また、実施例では、灰分歩留まりが高い傾向が見られた。

Claims (9)

  1. パルプスラリーを得る工程と、前記パルプスラリーを抄紙する工程を含む紙の製造方法であって、
    前記パルプスラリーを得る工程は、パルプと水を含む分散液に少なくとも第1の水溶性アルミニウム化合物を添加する第1薬品添加工程と、パルプと水を含む分散液に第2の水溶性アルミニウム化合物とアルケニル無水コハク酸を添加する第2薬品添加工程と、をこの順に含み、
    前記パルプスラリーを得る工程は、白水希釈工程をさらに含み、
    前記第1薬品添加工程は前記白水希釈工程の前に設けられる工程であり、
    前記第2薬品添加工程は前記白水希釈工程の前後10秒以内に設けられる工程であり、
    前記第2薬品添加工程では、パルプと水を含む分散液に前記第2の水溶性アルミニウム化合物と前記アルケニル無水コハク酸の混合物を添加する、もしくは、前記第2の水溶性アルミニウム化合物と前記アルケニル無水コハク酸を同時添加する、紙の製造方法。
  2. 前記第1薬品添加工程では、紙力剤をさらに添加する、請求項1に記載の紙の製造方法。
  3. 前記第1の水溶性アルミニウム化合物及び前記第2の水溶性アルミニウム化合物は、それぞれ硫酸バンドである、請求項1又は2に記載の紙の製造方法。
  4. 前記第1薬品添加工程及び前記第2薬品添加工程は、前記白水希釈工程の前に設けられる工程である、請求項1〜のいずれか1項に記載の紙の製造方法。
  5. 前記第2薬品添加工程は、パルプと水を含む分散液に、前記第2の水溶性アルミニウム化合物と前記アルケニル無水コハク酸の混合物を添加する工程であり、
    前記混合物を添加する工程では、前記第2の水溶性アルミニウム化合物と前記アルケニル無水コハク酸を混合して混合物としてから、10秒以内に前記分散液に添加する、請求項1〜のいずれか1項に記載の紙の製造方法。
  6. 前記第1薬品添加工程において添加する前記第1の水溶性アルミニウム化合物の量をPとし、前記第2薬品添加工程において添加する前記第2の水溶性アルミニウム化合物の量をQとした場合、P≧0.8×Qである、請求項1〜のいずれか1項に記載の紙の製造方法。
  7. 前記第2薬品添加工程において添加する前記アルケニル無水コハク酸の添加量は、前記分散液中のパルプの絶乾質量100質量部に対して0.01〜0.30質量部である、請求項1〜のいずれか1項に記載の紙の製造方法。
  8. 前記第2薬品添加工程において、添加する前記第2の水溶性アルミニウム化合物の添加量は、前記アルケニル無水コハク酸の添加量に対して0.2〜36倍である、請求項1〜のいずれか1項に記載の紙の製造方法。
  9. 前記パルプスラリーは、軽質炭酸カルシウムを含有する灰分を含み、前記軽質炭酸カルシウムの含有量は、前記灰分の全質量に対して80質量%以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載の紙の製造方法。
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