JP4117325B2 - キャリアテープ用紙およびキャリアテープ - Google Patents

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Description

本発明は、電子回路を製造する際に使用する、チップ状の表面実装電子部品を収納し、表面実装機(マウンター)に搬送するためのキャリアテープおよびこれに用いるキャリアテープ用紙に関する。
電子機器の自動生産を行うにあたっては、表面実装タイプの電子部品を表面実装機により基板に自動装着する技術が用いられる。表面実装機に対して電子部品を供給するためには、電子部品収納用のキャビティ部と表面実装機内への送り用のマージナル部とを備える幅6〜9mm、基紙厚0.4〜1.2mmのキャリアテープが用いられている。特に一般的には幅8mm、厚さが0.7〜1.0mmのものがよく用いられる。
このキャリアテープは、紙製およびプラスチック製のものがあるが、コスト安であり、軽量であり、廃棄容易であり、非帯電性であることから紙製とするのが望ましいとされている。
キャリアテープの具体的な形態としては、部品収納用のキャビティ部とキャリアテープ送り用のマージナル部とが貫通孔であり、表面実装部品を収納した状態で、表面がトップカバーテープでシールされ、下面がボトムテープでシールされるパンチキャリアテープや、キャビティ部がエンボス加工により形成された凹部であり、表面のみがトップカバーテープでシールされるエンボスキャリアテープや、表面実装部品の挿入直前にこれらキャビティ部等を形成するアンパンチキャリアテープなどが知られる。
これらのキャリアテープはキャビティ部に電子部品が装填されトップカバーテープでシールされた状態で、直径5cm程度のカセットリールに捲きつけられた状態(レコード巻方式)、あるいは直径20cm程度巾10cm程度の紙管にスパイラル状に捲きつられた状態(トラバース巻)で出荷され、最終ユーザーが表面実装機に装着して使用される。
近年では、レコード巻方式と比較して1巻当りの巻長さを長くすることができるために継ぎ手作業が軽減され、電子部品装填工程の高速化及び作業効率向上のメリットがあるトラバース巻方式が多用されるようになっている。
特開2002−46769号公報 特開平3−249300号公報
しかしながら、従来キャリアテープは、カセットリール等に捲き付ける際に、リールあるいは管の外周面に沿って湾曲せずに折れ、しわの発生することがあった。
折れ、しわの現象は一般的に用いられる紙厚が550μm以上のもので顕著となり、またカセットリール径が5〜6cmと小径の場合に顕著となる。そして、このように折れ、しわが内面側に生ずると、その折れ、しわ部分の表面にも凸部が発現し、この凸部が次工程の表面実装機のガイド部分に引っ掛かって部品を表面実装機内に安定して装填することができない。また、表面実装機では、トップカバーシールを一定張力で引っ張りつつキャリアテープから剥離してキャビティ内の電子部品を取り出すが、キャリアテープに折れ、しわが内面側に発生するとその折れ、しわ部分でキャリアテープからトップカバーシールが剥離して浮いてしまう。そうすると、表面実装機がトップカバーシールを一定張力で引っ張ることができず、表面実装機に引っ張られるキャリアテープがばたつき、キャビティ内の電子部品の脱落や所望位置への装填ができなくなる。
そこで、本発明の解決課題は、厚さ550μm以上の多層抄き板紙からなるキャリアテープ原紙を効率良く生産することができ、かつ、リール捲き付け時あるいは捲き付け状態において、折れ、しわの発生が防止されたキャリアテープおよびキャリアテープ用紙を提供することにある。
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
巻取りの外面に位置する表面層と、巻取りの内面に位置する裏面層と、前記表面層と前記裏面層の間に中間層を有する、紙厚が550〜1200μmの多層抄きのキャリアテープ用紙であって、
裏面層の付量が45〜100g/m2であり、
前記表面層及び裏面層は、水溶性高分子が塗工されているか又は含浸されており、
前記表面層に塗工または含浸された水溶性高分子の固形分量が1平方メートルあたり0.5〜1.8g/m2であり、
裏面層に塗工又は含浸された水溶性高分子の固形分量が1平方メートルあたり1.0〜4.0gであり、
裏面層とこの裏面層に隣接する中間層のカナダ標準濾水度の差が30〜100ccであり、かつ、
下記(1)〜(6)の手順で測定される裏面側へのカール評価値が3〜10mmである、ことを特徴とするキャリアテープ用紙。
(1)被測定キャリアテープ用紙を流れ方向10cm、幅方向10cmの正方形に裁断して測定用試料とする。
(2)被測定キャリアテープ用紙一枚につき5枚の試料を作成する。
(3)裁断された各試料を23℃の恒温環境下において湿度を65%RH→25%RH→65%RH→85%RHの順に連続的に変化させる吸脱湿処理を行う。このとき前記各湿度下においては2時間の維持時間を設ける。
(4)吸脱湿処理を3サイクル繰り返した後、さらに各試料を23℃、65%RHの環境下に3時間放置し、その後に各試料の反り具合を測定する。
(5)反り具合の測定は、反った試料の凸面を下方にして水平台上に載置し、かかる状態において四箇所各頂点から前記水平台の試料載置面までの距離をそれぞれ測定し、この四箇所測定値の平均値を基準カール値とする。
(6)5枚の試料の基準カール値の平均値をそのキャリアテープ用紙のカール評価値(mm)とする。
<請求項2記載の発明>
前記裏面層に対する水溶性高分子の塗工量又は含浸量が、前記表面層に対する水溶性高分子の塗工量又は含浸量よりも、固形分比で10%以上多い、請求項1に記載のキャリアテープ用紙。
<請求項3記載の発明>
請求項1又は2記載のキャリアテープ用紙が用いられ、搬送対象部品収納用のキャビティ部とテープ送り用のマージナル部を有する、ことを特徴とするキャリアテープ。
本発明に係るキャリアテープ用紙は、多層抄きで各層間にある程度の一体性があり、さらに裏面側へ所定値カールされたことにより、キャリアテープとしてリールあるいは管に捲き付ける時あるいは捲き付けた状態における、折れ、しわの発生が格段に小さくなる。
表裏面層への水溶性高分子の塗布、含浸により表裏面層をキャリアテープ用紙における好適な特性とされるほか、裏面側へのカールが好適に発生される。
中間層に機械パルプを5〜30%含有させたことにより、良好な地合が達成され、地合ムラを起点とした折れ、しわの発生、裏面側へのカールに伴う折れ、しわの発生が防止される効果がいっそう高まる。より、くわしくは機械パルプを一定量含有させることにより、中間層の柔軟性が向上され、リールあるいは管に捲き付ける場合に発生する湾曲した形状に適応できる特性となり、折れ、しわ防止の作用効果をいっそう発揮させるのである。
さらに、裏面層のフリーネスは、この裏面層と隣接する中間層のフリーネスよりも相対的に30cc以上低いことが好ましく、30cc〜100cc低いことがより好ましい。裏面層のフリーネスを裏面層と隣接する中間層のフリーネスよりも相対的に30cc以上低くすることにより、裏面側へのカール調整が容易に達成しうるようになる。
ただし、裏面層のフリーネスが裏面層と隣接する中間層のフリーネスよりも相対的に100ccを超えて高くなる場合には、裏面層と裏面層と隣接する中間層の繊維の絡み合いが悪くなり、リール等に捲き付ける時に発生する湾曲した形状への変化にともなう応力歪みによって、層間剥離が生じてしまうおそれがある。
なお、本発明におけるフリーネスは、JIS−P8220に準拠して標準離解機にて試料パルプを離解処理したのちに、JIS−P8121に準拠してカナダ標準濾水度試験機にて測定した濾水度の値である(以下、同様)。(以下、単にフリーネスという)
以上の本発明のキャリアテープ用紙からなるキャリアテープは、折れ、しわが極めて発生しづらいなどの利点があり、トップテープを安定的に剥離することができ、電子部品取り出し時の安定生産に優れ生産効率の向上に寄与する。
本発明の実施の形態を、具体例を示しながら以下に詳説する。
本発明のキャリアテープ用紙は、多層抄きで製造される表面層、中間層、裏面層を備える用紙であればよく、3層構造に限らず中間層を複数層有する4層あるいはそれ以上の多層構造であってもよい。ここで、多層抄きとするのは、各層間でパルプ繊維同士に適度な絡みあいが生ずるため各層の適度な一体性が得られるからである。また、多層抄きでは、各層の原料の構成を自由にでき、例えば、古紙パルプを中間層に配合しつつ表面層および裏面層にバージンパルプを使用することや、表面層、中間層、裏面層の各々で濾水度を調整すること、各層の付け量を調整することが容易で、リサイクルに貢献する古紙パルプを使用しつつ品質の確保を達成しやすいといった利点がある。
また、坪量の高いキャリアテープ用紙においては、多層抄きとすることにより、高い生産性を得ることができるといった利点がある。すなわち、坪量の高いキャリアテープ用紙を単層で製造する場合には、抄紙機での脱水性、乾燥性が極めて悪く、生産スピードが低くなる問題があり、また低坪量の単層紙を後に貼り合せる製造方法では、単層紙の製造とは別に貼り合せの工程が必要となり生産効率が悪くなるという問題があるが、多層抄きとすることによりこれらの問題なく生産できる。
本発明に係るキャリアテープ用紙の各層に用いる原料パルプとしては、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ、または離解・脱墨・漂白古紙パルプ、あるいは、ケナフ、麻、葦等の非木材繊維から化学的にまたは機械的に製造されたパルプ等の公知の種々のパルプを一種または数種を適宜選択して使用することができる。ただし、表面実装部品への影響を考慮し填料を減少させる必要がある場合は、ディインキングパルプ、ウエストパルプ等の古紙パルプよりもバージンパルプを使用することが好ましい。
特にキャリアテープ用紙の表面層、裏面層においては、その役割、各種品質特性等をバランスよく、効率的に達成するために、LBKP、NBKPが適する。特に、LBKPを70〜95質量%含有することが好ましい。LBKPの含有量が70〜95質量%であると、キャリアテープ用紙として必要な表面強度や剛度を保ちながら、良好な地合いが得られるとともに、トップシールテープとの接着性がより良好となり、トップシールテープを剥離する際に安定したピールオフ強度を得ることができる。なお、表層の原料パルプのLBKPの含有量が70質量%未満であると、良好な地合いを得ることが難しくなり、トップシールテープとの接着性にバラツキが生じやすく、トップシールテープを剥離する際にキャリアテープの走行が安定しないことがあり、生産効率が低下するおそれもある。一方、LBKPの含有量が95質量%を超えると、表面強度や剛度が低下し、トップシールテープを剥離する際に毛羽立ちや紙粉が発生し、チップ型電子部品をキャリアテープ原紙に収納、取り出しする際の生産効率が低下する原因となる。
他方、特に中間層においては、機械パルプを一定量含有させることが好ましい。またLBKP、NBKPを適当量混合するのが好ましい。機械パルプを一定量含有させることにより、中間層の地合を良好にし、地合ムラを起点とした折れ、しわの発生が防止される。さらには、機械パルプを一定量含有させることで中間層の柔軟性が向上され、リールあるいは管に捲き付ける場合に発生する湾曲した形状に適応できる特性となり、折れ、しわ防止の作用効果をいっそう発揮する。
好適な機械パルプとしては、グランドウッドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、プレッシャライズドグランドウッドパルプ(PGW)などが挙げられる。これら機械パルプの中でも結束繊維や紙粉の発生が少ないサーモメカニカルパルプ(TMP)、プレッシャライズドグランドウッドパルプ(PGW)が特に好ましい。
中間層における機械パルプの含有量は5%以上が好ましく、更には10%以上とすることが中間層にクッション性を持たせ、表面の折れ、しわを防止する点でより好ましい。なお、機械パルプの含有量が多いと、強度が低くなり、断面からの紙粉発生や中間層での層間剥離の懸念があるため、30%以下が好ましい。
ここで中間層に機械パルプを含有させるにあたって、古紙パルプをその原料とすることで含有せしめることが可能である。例えば、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ、または離解・脱墨・漂白古紙パルプ等を中間層の原料とすればよい。これらの古紙パルプの中でも、特に中間層の原料としては、表面強度や剛度、引張強度や層間強度などが高く、かつ機械パルプを含みクッション性に優れる、茶古紙、クラフト封筒古紙から製造される古紙パルプが好適である。
一方、本発明のキャリアテープ用紙は、裏面層のフリーネスを裏面層に隣接する中間層のフリーネスよりも相対的に30cc以上低くすることが好ましく、30cc〜100cc低くすることがより好ましい。裏面層のフリーネスを裏面層に隣接する中間間層のフリーネスよりも相対的に30cc以上低くすることにより、裏面層側へのカール調整がより容易となる。ただし、裏面層のフリーネスが裏面層に隣接する中間層のフリーネスよりも相対的に100ccを超えて高くなる場合には、裏面層と裏面層に隣接する中間層との繊維の絡み合いが悪くなり、キャリアテープとしたときに直径約50mmのコアに捲き取る際、あるいは捲き戻される際に発生する湾曲形状の変化にともなう曲げ応力やしごきの力による層間剥離が生ずるおそれが高まるため100cc未満とするのが望ましい。
なお、層間剥離が生じた場合にはトップシールテープを剥離する際にキャリアテープの走行が安定しないし、さらにチップ型電子部品を所定位置にセットできないなどの問題が発生する。
ここで、裏面層に用いる原料パルプのフリーネスは300〜450ccとすることが好ましく、320〜430ccとすることがより好ましい。
また、裏面層に隣接する中間層の原料パルプのフリーネスは330〜480ccとすることが好ましく、350〜450ccとすることがより好ましい。中間層におけるフリーネスが330cc未満であると、キャリアテープとしたときの折れ、しわのおそれが高まり、480ccを超えると、用紙の表面強度や剛度が低下傾向となるため、紙粉が発生しやすくキャリアテープとして加工適性に劣るようになる。
なお、本発明においては各層を形成するための原料パルプあるいはパルプスラリー中には、内添薬品を必要に応じて添加することができる。例えば、硫酸バンド等の薬品定着剤、ロジン等のサイズ剤、ポリアクリルアマイド、澱粉等の紙力増強剤、ポリアマイド等の濾水・歩留り向上剤、ポリアミド、ポリアミン、エピクロルヒドリン等の耐水化剤、消泡剤、塩基性染料、酸性染料、アニオン性直接染料、カチオン性直接染料等の染料等を適宜用いることができる。
他方、本発明のキャリアテープ用紙は、下記(1)〜(6)の手順で測定される裏面側へのカール評価値が3〜10mmである。好適には裏面層側に5〜8mmである。裏面層側へのカール評価値が3mm未満の場合は、リール捲き付け時あるいは捲き付け状態において、折れ、しわの発生の防止効果が小さく、裏面層側へのカールが10mmを超える場合には、カバーテープ剥離時にキャリアテープ用紙の表面層側への折れ、しわが発生しやすくなる。ここで、本願発明のカール評価値は、下記の手順から明らかになるとおり、巻き癖カールなどの外力要因によって発生する反り性ではなく、キャリアテープ用紙が本来固有にもっている反り性を評価できるものである。
ここで、カール評価値は下記(1)〜(6)の手順により測定する。
(1)被測定キャリアテープ用紙を流れ方向10cm、幅方向10cmの正方形に裁断して測定用試料とする。
(2)被測定キャリアテープ用紙一枚につき5枚の試料を作成する。
(3)裁断された各試料を23℃の恒温環境下において湿度を65%RH→25%RH→65%RH→85%RHの順に連続的に変化させる吸脱湿処理を行う。このとき前記各湿度下においては2時間の維持時間を設ける。
(4)吸脱湿処理を3サイクル繰り返した後、さらに各試料を23℃、65%RHの環境下に3時間放置し、その後に各試料の反り具合を測定する。
(5)反り具合の測定は、反った試料の凸面を下方にして水平台上に載置し、かかる状態において四箇所各頂点から前記水平台の試料載置面までの距離をそれぞれ測定し、この四箇所測定値の平均値を基準カール値とする。
(6)5枚の試料の基準カール値の平均値をそのキャリアテープ用紙のカール評価値(mm)とする。
キャリアテープ用紙のカールを本発明の範囲にするにあたっては、特に表面層、裏面層に水溶性高分子を塗工又は含浸させるのが簡易である。かかる方法でキャリアテープ原紙に要求される品質を満足できるものが得られる。
特に、この場合、裏面層に塗工又は含浸された水溶性高分子の固形分量が、表面層に塗工又は含浸された水溶性高分子の固形分量よりも、1平方メートルあたりの質量比で10%以上多いのが望ましい。
また、前記水溶性高分子としては、澱粉、ポリビニールアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド(PAM)等から、1種又は2種以上の水溶性高分子を使用することができる。なかでも、表面強度やトップカバーテープとの接着性、耐熱性などの点からポリビニールアルコール(PVA)が好適である。
裏面層に対する水溶性高分子の塗工量または含浸量は、固形分で1.0〜4.0g/m2とすることが好ましい。より好ましくは1.3〜2.5g/m2である。1.0g/m2未満であると、キャリアテープ原紙を所望のカール値にすることが難しくなる。また、4.0g/m2を超えると塗工時の粘度の増加などにより塗工適性が悪化し、粕・汚れの発生、断紙の問題などが発生しやすくなる。また、塗工、含浸後の乾燥性が悪化し、生産性が低下する。表裏面各層に水溶性高分子を内添する方法もあるが、コスト面や操業性などの点からは外添が好ましい。
表面層に対する水溶性高分子の塗工量または含浸量は、固形分で0.5〜1.8g/m2とするのが好ましい。より好ましくは0.5〜1.5g/m2である。0.5g/m2未満であると、キャリアテープとしたときの表面強度、層間強度が不足するおそれがある。1.8g/m2を超えると、キャリアテープ原紙を所望のカール値にすることが難しくなる。また、塗工・含浸後の乾燥性が悪化し、生産性が低下するとともに後の工程で汚れが生じやすくなる。
水溶性高分子を表面層、裏面層へ塗工・含浸するために用いる塗工装置は特に限定されるものではなく、例えばエアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、バーコーター及びゲートロールコーター、サイズプレス等のロールコーター、ベルバパコーター、カレンダー塗工等を適宜使用することができる。
裏面層への塗工・含浸量を、表面層への塗工・含浸量よりも多くするにあたっては、例えば、表裏層に塗工・含浸させる塗工液中の水溶性高分子濃度に変化をもたせたり、各層に対する塗工回数を異ならしめたりすればよい。例えば、カレンダー塗工機によって裏面層に2回塗工し、表面層に1回塗工するなどすればよい。
水溶性高分子を塗工・含浸させた後には、カレンダー装置にて表裏面を平滑化処理することが好ましい。表面平滑化処理するためのカレンダー装置としては特に限定されるものではなく、例えばマシンカレンダー、ソフトカレンダー、又はヤンキードライヤー等が適宜使用される。表面平滑化処理は、JIS P 8151 プリント・サーフ試験機法(面積式流量計形プリント・サーフ試験機)にて、ソフトバッキングを用いてクランプ装置のバッキングを1.0MPAとして測定したときの平滑度が5.0〜8.0μmとなるようにするのが望ましい。
さらに、本発明のキャリアテープ用紙では、TAPPI UM522に準じて測定した、Z軸方向の層間強度が1.1〜1.7であることが好ましく、1.3〜1.6であることがより好ましい。層間強度を1.1〜1.7とするためには、各層の原料の選択・調整、濾水度の調整、付け量の調整、紙力増強剤の添加、層間に澱粉などの接着剤を噴霧するなどの方法により達成することができる。層間強度が1.1未満の場合には、層同士の繊維の絡み合いが悪くなり、リール等に捲き付ける時に発生する湾曲した形状への変化にともなう応力歪みによって、層間剥離が生じてしまう場合があるからである。反対に層間強度が1.7を超える場合には、紙力増強剤の添加量を多くする、層間に澱粉などの接着剤を多く噴霧するなどの対応が必要で、キャリアテープ原紙の層間強度としても過剰な品質となり、不必要なコストアップを招くことになる。また、薬品に頼らない場合には、少なくとも各層の原料パルプ、濾水度、付け量などをほぼ同一にする必要が生じ、本発明が所望するカール値を達成することが難しくなる。
さらに、本発明のキャリアテープ用紙では、表面層のTAPPI T459 om−83に準じて測定した表面強度が12A以上であるのが好ましく、14Aであるのがより好ましい。表面強度を12A以上とするためには、原料配合率や原料パルプスラリーのフリーネス、水溶性高分子を塗工・含浸するなどの方法により達成することができる。トップカバーテープを接着する側の表面の表面強度が12A未満の場合には、トップカバーテープを剥離する工程にて、キャリアテープ用紙表面のパルプ繊維がとられ、紙粉となって操業性を悪化させる原因となる。
以上詳述のキャリアテープ用紙は、15〜20cm程度の幅の中原反に裁断したのちに、製品巾(例えば8mm巾)に裁断し、パンチ加工やエンボス加工等の適宜の加工をほどこして搬送対象部品収納用のキャビティ部やテープ送り用のマージナル部等を形成し、本発明のキャリアテープとする。
次に、本発明の実施例と比較例を説明することにより本発明の効果を明らかにする。なお、当然、本発明を以下の実施例のものに限定する趣旨ではない。また、以下の試験例においては、特に説明ない限り、「%」とは「質量%」を意味する。
[実施例1]
表面層については、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)10%、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)90%の割合のパルプスラリーを、抄造後離解した際のカナディアンスタンダードフリーネス(CSF)が420mlになるように調整し、これにサイズ剤(近代化学工業株式会社製R50)を固形分換算で0.25%、PAM(ハリマ化成株式会社製、ハーマイドB−15)を固形分換算で0.15%添加し、さらに硫酸バンドを添加してpHを5に調整した抄紙原料を使用した。
裏面層については、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)10%、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)90%の割合のパルプスラリーを、抄造後離解した際のカナディアンスタンダードフリーネス(CSF)が350mlになるように調節し、これにサイズ剤(近代化学工業株式会社製R50)を固形分換算で0.25%、PAM(ハリマ化成株式会社製、ハーマイドB−15)を固形分換算で0.15%内添し、さらに硫酸バンドを添加してPHを5に調整した抄紙原料を使用した。
中間層(2〜4層)については、NBKP50%、LBKP40%、サーモメカニカルパルプ(TMP)10%の割合のパルプスラリーを、抄造後離解した際のカナディアンスタンダードフリーネス(CSF)が400mlになるように調節し、これにサイズ剤(近代化学工業株式会社製R50)を固形分換算で0.30%、PAM(ハリマ化成株式会社製、ハーマイドB−15)を固形分換算で0.5%添加し、さらに硫酸バンドを添加してpHを5に調整した抄紙原料を使用した。
これらの抄紙原料を円網多層抄紙機にて、表面層の付け量を60g/m2、中間層(2〜4層)の付け量を440g/m2、裏面層の付け量を80g/m2として、5層構造で抄き合わせ、PVA(日本合成化学株式会社製、ゴーセノールN300)をカレンダー塗工で表面に塗工量0.9g/m2、裏面に2.0g/m2塗工して、実施例1にかかるキャリアテープ用紙を得た。
[実施例2〜5、比較例1〜2]
裏面層に塗工するPVAの塗工量を表1に示す値にした以外は、上記実施例1と同様にして作成した。
[実施例6〜9、比較例3〜4]
表面層に塗工するPVAの塗工量を表1に示す値にした以外は、上記実施例1と同様にして作成した。
[実施例10〜12、比較例5〜6]
裏面層のカナディアンスタンダードフリーネス(CSF)を表1に示す値にした以外は、実施例1と同様にして作成した。
[実施例13〜17、比較例7〜8]
裏面層、中間層の付け量を表1に示す値にした以外は、実施例1と同様にして作成した。
[実施例18〜22]
中間層の原料パルプ配合率を表1に示す値にした以外は、実施例1と同様にして作成した。
このようにして作成した各実施例および各比較例について米坪、厚さ、カール、平滑度、表面強度、層間強度の物性測定と、折れについての評価試験を行った。結果は、表1に示す。なお、物性測定および評価試験は、JIS−P8111に準拠して温度23℃±1℃、湿度50±2%の環境条件で行った。また、各実施例および各比較例についての操業性をも評価した。各測定方法および試験方法についての詳細は以下のとおりである。
(坪量)
JIS P 8124 紙及び板紙−坪量測定方法に基づいて測定した。
(厚さ)
JIS P 8118 紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法に基づいて測定した。
(平滑度)
JIS P 8151 紙及び板紙−表面粗さ及び平滑度試験方法(エア・リーク法)−プリント・サーフ試験機法(面積式流量計形プリント・サーフ試験機)にて、ソフトバッキングを用い、クランプ装置のバッキングを1.0MPAとして表面、裏面それぞれの平滑度を測定した。
(表面強度)
TAPPI T459 om−83に基づき、表面側、裏面側のそれぞれの表面強度を測定した。
(層間強度)
TAPPI UM522に従い、Z軸方向の層間強度を測定した。
(層剥離操作)
各層それぞれの物性を測定するさいには、得られたキャリアテープ用紙を以下の手順に従って層剥離することとした。まず、各例にかかるサンプルを室温の水に約1時間浸漬する。次いで、水に浸漬した各サンプルを、角を起点として10mmφ程度の丸棒に捲き付けた後、丸棒を転がして各サンプルをしごく。この操作を各サンプルの四隅の全ての角を起点に繰り返し、各方向からサンプルにしごきの力を加える。そうすると、各サンプルの層間の一部が剥離してくるので、剥離した表層、中層、裏層をそれぞれ他の層と分離する。
(原料パルプの配合比率)
表1中における「原料パルプの配合比率」とは、層剥離操作したのち、表層、裏層、及び中間層の各層の繊維比率をJIS−P8120に記載の「紙、板紙及びパルプ繊維組成試験方法」に準拠して測定した値である。
(付け量)
表1中における「付け量(g/m2)」は、層剥離操作したのち乾燥させた表面層、裏面層及び中間層の各層をJIS P 8124 紙及び板紙−坪量測定方法に従って測定した米坪である。
(離解フリーネス)
表1中における「離解フリーネス(cc)」は、層剥離操作後の各層の試料を約3cm2の大きさに裁断して約25gの重さの試験片とし、この試験片を1リットルの水に24時間浸漬した後、JIS−P8220に準拠して標準離解機で15分間離解処理し、試験片が完全に離解していることを目視で確認した後、JIS−P8121に準拠してカナダ標準濾水度試験機にて測定した濾水度の値である。
(カール評価値)
上記の手順(1)〜(6)に従って測定した。なお、表中の(−)値は表面側へカールしたことを示す。
(折れの評価)
折れの評価は、流れ方向30cm、幅8mmのサンプルを10本用意し、直径6cmの円柱に捲きつけ、折れ、しわの発生個数を目視で数えた。そして1本あたりの平均個数を次の基準で評価し表中に表した。1個未満を◎、1個以上2個未満を○、2以上5個未満△、5個以上を×と評価した。
Figure 0004117325
表1から、本発明のキャリアテープ用紙である実施例1〜22は品質評価に優れることが分かる。それに対して、比較例1〜8は、品質評価において実施例1〜22よりも劣る結果となっている。してみると、本発明のキャリアテープ用紙は、カセットリールや管に捲き取るときや捲き取り後に、折れの発生が防止されているといえる。これにより、トップテープを安定的に剥離することができ、電子部品取り出し時の安定生産に優れ、生産効率のよいキャリアテープ用紙、およびキャリアテープとなるといえる。

Claims (3)

  1. 巻取りの外面に位置する表面層と、巻取りの内面に位置する裏面層と、前記表面層と前記裏面層の間に中間層を有する、紙厚が550〜1200μmの多層抄きのキャリアテープ用紙であって、
    裏面層の付量が45〜100g/m2であり、
    前記表面層及び裏面層は、水溶性高分子が塗工されているか又は含浸されており、
    前記表面層に塗工または含浸された水溶性高分子の固形分量が1平方メートルあたり0.5〜1.8g/m2であり、
    裏面層に塗工又は含浸された水溶性高分子の固形分量が1平方メートルあたり1.0〜4.0gであり、
    裏面層とこの裏面層に隣接する中間層のカナダ標準濾水度の差が30〜100ccであり、かつ、
    下記(1)〜(6)の手順で測定される裏面側へのカール評価値が3〜10mmである、ことを特徴とするキャリアテープ用紙。
    (1)被測定キャリアテープ用紙を流れ方向10cm、幅方向10cmの正方形に裁断して測定用試料とする。
    (2)被測定キャリアテープ用紙一枚につき5枚の試料を作成する。
    (3)裁断された各試料を23℃の恒温環境下において湿度を65%RH→25%RH→65%RH→85%RHの順に連続的に変化させる吸脱湿処理を行う。このとき前記各湿度下においては2時間の維持時間を設ける。
    (4)吸脱湿処理を3サイクル繰り返した後、さらに各試料を23℃、65%RHの環境下に3時間放置し、その後に各試料の反り具合を測定する。
    (5)反り具合の測定は、反った試料の凸面を下方にして水平台上に載置し、かかる状態において四箇所各頂点から前記水平台の試料載置面までの距離をそれぞれ測定し、この四箇所測定値の平均値を基準カール値とする。
    (6)5枚の試料の基準カール値の平均値をそのキャリアテープ用紙のカール評価値(mm)とする。
  2. 前記裏面層に対する水溶性高分子の塗工量又は含浸量が、前記表面層に対する水溶性高分子の塗工量又は含浸量よりも、固形分比で10%以上多い、請求項1に記載のキャリアテープ用紙。
  3. 請求項1又は2記載のキャリアテープ用紙が用いられ、搬送対象部品収納用のキャビティ部とテープ送り用のマージナル部を有する、ことを特徴とするキャリアテープ。
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