JP4673288B2 - マット台紙及びマットボード - Google Patents

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Description

本発明は、絵画、版画、写真、ポスター、書道など(以下、これらを総称して「作品」と呼ぶ)の展示と保存にとって欠くことのできない額に使用されるマット台紙及びマットボードに関するものであり、さらに詳細には、カール適性及びカット適性に優れたマット台紙及びこのマット台紙を用いたマットボードに関するものである。
絵画や写真等の作品を収納する額1は、図1に示すように、額縁2と、作品3と、作品3を鑑賞する表面のガラス或いはアクリル樹脂板などからなるグレージング4と、マットボード5と、マウントボード6と、バックボード7とから主に構成されている。
ここで、マットボード5は、
1.作品3とグレージング4が密着しないように空間8を作る。
2.作品3の余白を隠してトリミングし、作品3を切らずに額装する。
3.作品3と額縁2の調和・効果的演出を行い作品3のイメージアップを行う。
4.作品3自体の酸性化などから作品3を保護し、作品3の保存性を高める。
などの役割を担うものである。
このようなマットボード5は、図2に断面図で示すように、マット台紙9と、マット台紙9の表面に貼合される表面素材10とから構成されている。この表面素材10には、高級水彩紙、和紙、色紙、エンボス加工紙などが用いられる。このため、マットボード5は、用いる表面素材10によって異なった雰囲気を有し、マットボード5の選定によって、額1の中に収納される作品3の表情をガラリと変えることが出来る。
このマットボード5は、図2に示すように、マット台紙9の片面のみに、表面素材10が貼合されて形成されるが、この表面素材10の貼合には、水分を多く含む澱粉糊が使用されることが一般的である。このため、マット台紙9に表面素材10を貼合すると、糊の水分によりマットボード5がカールしてしまうという問題があるのが実情である。
マットボード5がカールしてしまうと、マットボード5としての商品価値が下がることは勿論、機能面でも、グレージング4とマットボード5との間に部分的に隙間ができてしまうため、作品3をイメージアップさせるどころか、作品3のイメージダウンを招いてしまうという問題がある。
また、マットボード5と作品3との間にも部分的に隙間が生じてしまうため、作品3を所定位置にしっかりと固定できないという問題も生じる。
また、マットボード5は、図1に示すように、作品のサイズに合わせて中抜き窓部11が設けられる。この窓部11を設けるカット方法として、マットボード5の表面に対して垂直に刃を入れる方法もあるが、最近は、マットボード5を用いた額1の美粧性をより高めるために、マットカット専用機でマットボード5の表面に対して約45度の角度で刃を入れてカット(傾斜カット)し、マットボード5の窓部11のカット面(断裁面)12も利用する方法が主流になってきている。
すなわち、マットボード5に傾斜カットを行って窓部11を形成すると、断裁面12が大きくあらわれる。すなわち、マット台紙や高級水彩紙、和紙、色紙等が用いられた表面素材10が大きくあらわれる。このため、マットボード5の断裁面12も利用すると、額1に収められる作品3をより効果的に演出することができる。
しかしながら、このマットボード5に傾斜カットを行う方法が主流になるにつれて、マット台紙9に、特にカット適性が要求されるようになってきている。すなわち、マット台紙9の断裁面に、切り粕、カット粕、ケバ、バリ、ひげ、ササクレ等(以下、本発明では総称して「ケバ」と呼ぶ)の発生がないことが要求されてきている。マット台紙9の断裁面にこのようなケバがあると、目障りとなり、美粧性を低下させてしまい、作品3の効果的な演出を行うどころか、逆に作品の価値を下げてしまう。
ところが、マット台紙に関して特別に研究された文献はほとんど見当たらず、例えば特許文献1に示されるマット台紙が提案されている程度である。
特許文献1に記載されたマット台紙は、製紙用繊維にアルカリ性粉体と汚染ガス吸着性粉体を含有せしめ、冷水抽出pH値を6.5〜8.5の範囲とすることにより、長期間作品と接して使用しても作品に悪影響を及ぼすことがなく、さらに空気中の汚染ガスや裏板合板から発生する汚染ガスを除去することによって作品自体を保護するものであり、上述したようなマットボードがカールしてしまうというカール適性の問題や、カット適性については何ら解決されていない。
また、マット台紙は、坪量が同程度の厚紙である段ボール用ライナーや包装箱などに用いられる白板紙とは、全く異なる用途に用いられるため、異なる加工が施される。このため、マット台紙として、段ボール用ライナーや、白板紙を用いても、上述したようなカール適性や、カット適性の問題の解決には至っていない。
特開2003−171895号公報
本発明は、上述したような実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、カール適性及びカット適性に優れたマット台紙、及びこのマット台紙を用いて形成したマットボードを提供することにある。
本発明の上記目的は、額装用のマットボードに用いられ、表面層と、裏面層と、前記表面層及び前記裏面層の間に中間層とを有する、厚さが700〜1,200μm、坪量が430〜750g/m の多層抄きのマット台紙であって、前記表面層の原料パルプは、LBKPを30〜70質量%、NBKPを20〜50質量%、機械パルプを5〜50質量%の割合で含有し、また、濾水度が前記中間層の原料パルプの濾水度よりも10ml以上高く、前記表面層の付け量は40〜120g/m であり、少なくとも前記表面層の表面に、水溶性高分子を塗工または含浸し、前記表面層の表面は、JIS−P8140に基づく吸水度が10〜60g/mであることを特徴とするマット台紙を提供することによって達成される。
また、本発明の上記目的は、前記各層の原料パルプ繊維のカヤニ数平均繊維長が1.0〜2.0mmであり、前記表面層の原料パルプの濾水度が250〜450mlで、前記中間層の原料パルプの濾水度が230〜430mlであり、また前記表面層の原料パルプ中には、填料が2〜10質量%含有され、また少なくとも前記表面層の密度が前記中間層の密度よりも3%以上高いことを特徴とするマット台紙を提供することによって、効果的に達成される。
また、本発明の上記目的は、前記裏面層は、サイズ剤の配合量が前記裏面層の原料パルプに対して固形分換算で0.1質量%未満であり、また前記裏面層の裏面は、JIS−P8140による吸水度が200〜2,000g/mであることを特徴とするマット台紙を提供することによって、より効果的に達成される。
また、本発明の上記目的は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のマット台紙の表面に、表面素材を貼合して形成されたことを特徴とする額装用のマットボードを提供することによって、より効果的に達成される。
さらにまた、本発明の上記目的は、JIS−P8151プリント・サーフ試験機法(面積式流量計形プリント・サーフ試験機)にて、ソフトバッキングを用いてクランプ装置のバッキングを1.0MPAとして測定したときの平滑度が3.0〜8.0μmになるように、カレンダー装置にて前記マット台紙の表裏面を平滑化処理した後、前記マット台紙の表面に前記表面素材を貼合すること特徴とする額装用のマットボードを提供することによって、より効果的に達成される。
本発明に係るマット台紙によれば、表面層の濾水度を中間層の濾水度よりも10ml以上高くし、表面層の表面あるいは裏面層の裏面の少なくとも一方の面に、水溶性高分子を塗工または含浸し、さらにまた、水溶性高分子の塗工面の吸水度を10〜60g/mとしたので、カール適性及びカット適性に優れ、また両適性のバランスにも優れるものとなる。
また、表面層に填料を2〜10質量%含有することにより、カール適性及びカット適性をよりバランス良く、効率的に、そして安定的に得ることができる。
また、水溶性高分子の非塗工面のJIS−P8140による吸水度を200〜2,000g/mとすることにより、カール適性をより良好なものとすることができる。
さらにまた、また、表面層の密度を、中間層の密度よりも3%以上高く調整したので、よりカット適性に優れ、傾斜カット時におけるケバ、紙粉の発生を抑制できる。
本発明に係るマット台紙及びマットボードについて、具体例を示しながら以下に詳説する。
本発明に係るマット台紙は、表面層、中間層、及び裏面層の3層の紙層を有するように多層抄きで製造される。なお、本発明に係るマット台紙は、このような3層構造に限らず中間層を複数層有する4層あるいは5層以上の紙層を有する多層構造であってもよい。
ここで、多層抄きとするのは、各層の原料の構成を自由にできるので、本発明に係るマット台紙に要求されるカール適性及びカット適性を得やすいからである。すなわち、例えば、美粧性が要求される表面層及び裏面層にバージンパルプを使用し、中間層に古紙パルプを使用することや、表面層、中間層、裏面層の各層で濾水度を調整すること、また、各層の付け量を調整すること等が容易となる。したがって、本発明に係るマット台紙に要求されるカール適性及びカット適性を達成しやすく、また、リサイクルに貢献する古紙パルプを使用しつつマット台紙の品質を確保することができるという利点がある。
また、マット台紙は坪量が高いため、多層抄きとすることにより、高い生産性を得ることができるという利点もある。すなわち、坪量の高いマット台紙を単層で製造する場合には、抄紙機での脱水性、乾燥性が極めて悪く、生産スピードが低くなるため、生産性が低下する。また単層紙を後に貼り合せて高坪量であるマット台紙を得ることも可能ではあるが、単層紙の製造とは別に貼り合せの工程が必要となり生産効率が悪くなる。
ここで、本発明に係るマット台紙の各層に用いる原料パルプとしては、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、グランドウッドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の機械パルプ、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ、または離解・脱墨・漂白古紙パルプ、あるいは、ケナフ、麻、葦等の非木材繊維から化学的にまたは機械的に製造されたパルプ等の公知の種々のパルプを一種または数種を適宜選択して使用することができる。
しかしながら、特にマット台紙の表面層は、傾斜カットを行う際に、刃が最初に入る部分であるため、本発明におけるカール適性及びカット適性をバランスよく、効率的に達成するために重要な層である。なお、本明細書中、カール適性に優れるとは、後述するように構成されたマットボードにカールが発生しないことであり、カット適性に優れるとは、後述する傾斜カット時にケバの発生がないことである。
すなわち、本発明に係るマット台紙も、従来のマット台紙と同様に、マット台紙の表面層の表面(以下、単に「表面」と言う。)に、水分を多く含む糊を塗工または含浸し、高級水彩紙、和紙、色紙、エンボス加工紙等の表面素材を貼合し、額や作品の大きさなどにあわせて所定の寸法に断裁され、マットボードを形成する。なお、以下では、マット台紙の表面に表面素材を貼合する場合について説明するが、層構成を逆転することで、表面とは反対の面(すなわち、裏面層の表面)に表面素材を貼合することもできる。
そして、本願発明は、このように形成されたマットボードの表面に対して約45度の角度で刃を入れてカット(以下、本明細書では「傾斜カット」と言う。)を行い、作品のサイズに合わせた中抜き窓部を設けることを想定している。そして、この傾斜カット後のマットボードの断裁面も、額の一部として利用することにより、作品をより効果的に演出することを想定したものである。
このため、表面層の原料パルプには、上述した原料パルプの中でも、特にLBKP、NBKPが好適に用いられる。
特に、表面層の原料パルプには、LBKPを30〜70質量%含有することが好ましく、30〜50質量%含有することがより好ましい。LBKPの含有量が30〜70質量%であると、後述する本発明に係るマット台紙の表面に塗工・含浸される水溶性高分子を効率的に表面にとどめることができ、カール適性及びカット適性をバランス良く保ちながら向上させることができる。
なお、LBKPの含有量が30質量%未満であると、地合ムラが生じ、良好な地合いを得難くなるため、表面に塗工・含浸される水溶性高分子の被膜性、塗工・含浸量にバラツキが生じやすくなるとともに、表面素材を貼合する際の糊(以下、単に「糊」と言う。)、が、表面層に隣接する層である中間層(以下、単に「中間層」と言う。)に浸透しやすくなるため、糊の浸透ムラが生じてしまい、カール適性が低下する。また、地合ムラが生じると、部分的に密度ムラも生じるが、マット台紙の表面に対して垂直にカットして窓部を設ける場合は、垂直方向に高い圧力で刃が入るので、多少の密度ムラがあったとしても断裁面にケバが発生することはないが、本願発明のように、傾斜カットを行う場合には、密度ムラにより、断裁面にケバが発生しやすくなり、カット適性が低下する。
また、表面層の原料パルプに、NBKPを20〜50質量%含有することが好ましく、30〜45質量%含有することがより好ましい。表面層の原料パルプに、LBKPに加えて、NBKPを20〜50質量%含有させることにより、カール適性及びカット適性をよりバランス良く、効率良く、そして安定的に得ることができる。
すなわち、パルプ繊維が長く、太く剛直なNBKPを表面層の原料パルプに所定量含有させることにより、表面層に適度な空隙を生じさせることができる。これにより、この空隙が糊を吸収するため、表面層のパルプ繊維が糊を吸収することがなくなり、繊維の膨潤を防止することができるのでカール適性を向上させることができる。
なお、NBKPは繊維長が長く、剛直である。従って、NBKPの含有量が50質量%を超えると、良好な地合いが得難くなるため、表面に塗工・含浸される水溶性高分子の被膜性、塗工・含浸量にバラツキが生じやすくなるとともに、糊が中間層に浸透しやすくなるため、部分的に浸透ムラが生じてしまい、カール適性が低下する。また、地合いムラから生じた部分的な密度ムラにより、カット適性が低下し、傾斜カットを行うと、断裁面にケバが発生しやすくなる。
さらにまた、表面層の原料パルプに、機械パルプを5〜50質量%含有することが好ましく、10〜30質量%含有することがより好ましい。なお、本発明に係るマット台紙は、上述したように、傾斜カット後の断裁面も額の一部として利用することにより、作品の演出効果を高めることを想定したものであるため、機械パルプの中でも結束繊維や紙粉の発生が少ないTMP、PGWを用いることが好ましい。
表面層の原料パルプに、LBKP及びNBKPに加えて、機械パルプを5〜50質量%含有させることにより、高いクッション性を表面層に付与することができ、カット適性を向上させることができる。すなわち、LBKPやNBKPにはない、機械パルプによるクッション性が、地合ムラ、密度ムラなどを緩和するため、カット適性を向上させることができ、傾斜カットを行った際に、断裁面にケバが発生することを防止することができる。
なお、機械パルプの含有量が50質量%を超えると、繊維間結合が少なくなって、強度が低くなるため、傾斜カット後の断裁面から紙粉が発生したり、中間層と層間剥離の問題を生じる場合がある。層間剥離が生じると、マット台紙の層間に部分的に剥離が生じているので、傾斜カット後の断裁面が見苦しいものとなり、作品を効果的に演出することができなくなり、マット台紙としての商品価値が低下してしまう。
また、表面層に用いられる原料パルプは、濾水度が、中間層の原料パルプの濾水度よりも相対的に10ml以上高く、好ましくは20〜100ml高くされている。
このように表面層の原料パルプの濾水度を、表面層に隣接する中間層の濾水度よりも相対的に10ml以上高くすると、カール適性に優れるようになる。
なお、表面層の濾水度が、中間層の濾水度よりも相対的に100mlよりも高くなると、表面層と中間層のパルプ繊維の絡み合いが悪くなるため、傾斜カットを行う際、刃を入れることによって加えられる圧力によって、層間剥離が生じてしまう場合がある。
表面層に用いる原料パルプの濾水度は、250〜450mlとすることが好ましく、300〜400mlとすることがより好ましい。
また、中間層の原料パルプの濾水度は、230〜430mlとすることが好ましく、280〜380mlとすることがより好ましい。
中間層の濾水度が230ml未満であると、繊維長が短くなるため、中間層に空隙を生じさせにくくなる。このため、パルプ繊維が糊の水分を吸収して膨潤してしまうため、カール適性が低下し、カールが発生しやすくなる。
一方、中間層の濾水度が430mlを超えると、中間層に空隙が生じやすくなるという点ではカール適性を向上させることはできるものの、水溶性高分子の被膜ムラが生じやすく、この被覆ムラによるカールの発生が多くなるため、結果的にカール適性が低下してしまう。また、繊維間結合が少なくなって、強度が低下するため、カット適性が低下するとともに、層間剥離が生じたり、傾斜カット後の断裁面から紙粉が発生しやすくなる等の問題を生じる場合がある。
なお、本明細書中の「濾水度」とは、JIS−P8220に準拠して標準離解機にて試料パルプを離解処理したのちに、JIS−P8121に準拠してカナダ標準濾水度試験機にて測定した濾水度の値である(以下、同様)。
また、各層の原料パルプの濾水度による調整だけでなく、マット台紙全体のパルプ繊維のカヤニ数平均繊維長を1.0〜2.0mmにすることが好ましく、1.2〜1.8mmにすることがより好ましい。
すなわち、本発明に係るマット台紙の場合は、繊維同士の絡み合いを良くするために繊維のフィブリル化を促進させる叩解方法を用いることが好ましいが、叩解方法によっては、繊維をフィブリル化せずに単に繊維を切断したカッティングになっている場合があり、このような場合でも見かけ上の濾水度は変化してしまう。このため、各層の原料パルプの濾水度の調整とあわせて、マット台紙全体としては、パルプ繊維の長さを1.0〜2.0mmに調整することが好ましい。
本発明に係るマット台紙は、多層抄きで構成されるため、上述したように表面層、中間層、裏面層の各層には、それぞれ異なる原料パルプを用いることができる。
しかしながら、本発明に係るマット台紙は、上述したように傾斜カット後の断裁面も額の一部として利用することにより、作品をより効果的に演出することを想定したものである。このため、本発明に係るマット台紙の各層に、異なる原料パルプを用いたとしても、傾斜カット後の断裁面が縞模様にならないように、各層の原料パルプを略同色に調整することが好ましい。
ここでいう略同色とは、断裁面が目視にて縞模様になっていない範囲である。具体的には、マット台紙を各層に剥離した後に、各層の明度(L)、色相(a)、色相(b)をJIS−Z8722に準拠して測定し、隣り合う層の色調の差(ΔE)が1.5以内であることが好ましく、1.0以内とすることがより好ましい。
ΔEは、表面層のa値をa1、表面層に隣接する中間層のa値をa2とした場合の(a1−a2)をΔaとし、同様にΔL、Δbとし、下記式で求めることができる。
ΔE=(Δa+Δb+ΔL1/2
なお、中間層と裏面層との色調の差も同様にして求めることができる。
また、各層の原料パルプあるいはパルプスラリー中には、例えば、硫酸バンド等の薬品定着剤、ロジン等のサイズ剤、ポリアクリルアマイド、澱粉等の紙力増強剤、ポリアマイド等の濾水・歩留り向上剤、ポリアミド、ポリアミン、エピクロルヒドリン等の耐水化剤、消泡剤、塩基性染料、酸性染料、アニオン性直接染料、カチオン性直接染料等の染料、填料等の内添薬品を必要に応じて添加することができる。
特に、カール適性及びカット適性の向上効果を損なわない範囲で、表面層及び/または中間層の原料パルプに炭酸カルシウム、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、硫化亜鉛、二酸化チタン、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、クレー、シリカなどの填料を、単独又はこれらを適宜組み合わせて含有させることが好ましい。
また、これらの填料は、各層の原料パルプに対して2〜10質量%含有させることが好ましく、2〜8質量%含有させることがより好ましい。これにより、カール適性及びカット適性をバランス良く、効率的に、そして安定的に得ることができる。
なお、填料の含有率が2質量%未満であると、填料によるカール適性の向上効果を得難く、一方、10質量%を超えるとカール適性を向上させることはできるものの、傾斜カット時に紙粉が発生しやすくなる。
また、上述した填料の中でも、コスト面からはタルクやクレーが好適に使用できる。また、本発明に係るマット台紙には作品の保存性も要求されるため、中性領域で製造することが好ましく、これには炭酸カルシウムが好適に使用できる。
サイズ剤としては、公知の種々のものを使用することができるが、特に、本発明においては、中性ロジンサイズ剤やAKD系サイズ剤、ASA系サイズ剤などの中性領域でサイズ発現効果が高いサイズ剤を用い、熱水抽出pH値を6.5〜9.0、好ましくは6.5〜8.5として本マット台紙を中性領域で製造すると、保存性にも優れるので好ましい。
サイズ剤の配合量は、各層の原料パルプに対して、固形分換算で0.2〜1.5質量%が好ましい。サイズ剤の配合量が0.2質量%未満であると、表面及び/又は裏面に後述する所望の吸水度を付与する効果が少なく、一方、配合量を1.5質量%より多くしても、表面及び/又は裏面に付与される吸水度の効果は変わらず、製造コストが高くなるだけである。
熱水抽出pH値が6.5〜9.0、より好ましくは6.5〜8.5の範囲にあって、pH値が限りなく7.0に近いマット台紙であると、長時間経過しても変色が少なく、保存性に優れる。
pH調整は、硫酸、塩酸、硫酸アルミニウムなどの酸薬品、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、アンモニア水などのアルカリ薬品で調整することができる。これらのアルカリ薬品の中でも、写真や絵画などの作品に変色などの影響を及ぼすことがなく、作品の保存性に優れる炭酸水素ナトリウムを用いることが好ましい。
このように表面層の原料パルプの選択・調整、濾水度の調整等により、本発明に係るマット台紙は、TAPPI UM 522の剥離強度試験に準じて測定した剥離強度を0.5〜1.5MPa、好ましくは0.6〜1.2MPaに調整することができる。これにより、傾斜カットを行っても層間剥離を生じることがなくなる。
剥離強度の調整は、後述する各層の付け量の調整、紙力増強剤の添加、層間に澱粉などの接着剤を噴霧するなどの方法によっても達成することができる。
表面層の付け量は、40〜120g/mであることが好ましく、45〜100g/mであることがより好ましい。
表面層の付け量が40g/m未満であると、原料パルプの配合や濾水度、吸水度などを調整しても、付け量が少ないために本願発明の所望とするカール適性及びカット適性を得ることができない。
一方、表面層の付け量が120g/mを超えると、カール適性が低下するとともに、製造コストが高くなってしまう。すなわち、表面層には、中間層や裏面層に使用されるパルプに比べ、高価なパルプが用いられることが多いが、付け量が多くなると、この高価なパルプの使用量が多くなるため、マット原紙の製造コストが高くなる。さらに、表面層の付け量が多くなると、表面層の厚さが厚くなるため、後述する裏面層に付与する吸水性を発揮しにくくなるため、表面層と裏面層との内部の水分の差を小さくすることができず、カール適性が低下してしまう。
本発明に係るマット台紙は、マット台紙が用いられる額の大きさ及び使用目的によっても変化するが、厚さが700〜1,200μm、坪量が430〜750g/mの範囲にあることが好ましい。
マット台紙の厚さが700μm未満、坪量が430g/m未満であると、マット台紙としての強度、剛性が不足し、額装用に用いることが難しくなる。一方、マット台紙の厚さを1,200μmより大きくした場合や、坪量を750g/mより大きくした場合であっても、カール適性及びカット適性を向上させることができず、過剰品質となると共に、製造コストが高くなるだけである。
上述したような原料パルプを用いて形成された本発明に係るマット台紙は、少なくとも表面素材が貼合される面(本実施形態では、マット台紙の表面)に水溶性高分子が塗工・含浸される。
水溶性高分子としては、澱粉、ポリビニールアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド(PAM)等から、1種又は2種以上の水溶性高分子を使用することができる。これらの中でも特に、糊との接着性、糊付着・乾燥時の寸法安定性、カット適性などの点からポリビニールアルコール(PVA)を使用するのが好ましい。
表面へ塗工・含浸させる水溶性高分子の含有量は、固形分換算で片面当り0.25〜2.0g/mとすることが好ましく、0.25〜1.5g/mとすることがより好ましい。
水溶性高分子の含有量が0.25g/m未満であると、水溶性高分子が塗工・含浸された塗工面の吸水度を、上述したように10〜60g/mとしても、糊が表面層の内部に浸透しやすくなり、カール適性が低下する。
一方、水溶性高分子の含有量が2.0g/mを超えると水溶性高分子の塗工・含浸時の粘度の増加などにより塗工適性が悪化し、粕・汚れの発生、断紙の問題などが発生しやすくなる。また、塗工・含浸後の乾燥性が悪化し、生産性が低下する。なお、表面層に水溶性高分子を内添する方法もあるが、コスト面や操業性などから外添するのが好ましい。
水溶性高分子を塗工・含浸するために用いる塗工装置は特に限定されるものではなく、例えばエアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、バーコーター及びゲートロールコーター、サイズプレス等のロールコーター、ベルバパコーター、カレンダー塗工等を適宜使用することができる。
水溶性高分子を塗工・含浸させた後には、カレンダー装置にてマット台紙の表裏面を平滑化処理することが好ましい。
表面平滑化処理するためのカレンダー装置としては特に限定されるものではなく、例えばマシンカレンダー、ソフトカレンダー、又はヤンキードライヤー等が適宜使用される。表面平滑化処理は、JIS−P8151 プリント・サーフ試験機法(面積式流量計形プリント・サーフ試験機)にて、ソフトバッキングを用いてクランプ装置のバッキングを1.0MPAとして測定したときの平滑度が3.0〜8.0μmとなるようにするのが、表面素材をムラなく平坦に貼合できる点で望ましい。
このように水溶性高分子が塗工・含浸された表面層(以下、「塗工面」と言う。)は、JIS−P8140に基づいて測定時間2分で測定した吸水度(以下、「吸水度」と言う。)が10〜60g/mであることが好ましく、20〜50g/mであるとより好ましい。
表面層の吸水度が10g/m未満であると、糊が表面層の紙層内に浸透せず、接着性が悪くなるため、特殊な接着剤が必要となると共に、本発明に係るマット台紙を古紙としてリサイクルする際にも溶解性が悪くなる。また、吸水度を10g/m未満とするために、多量の薬品を添加する必要があり、この結果、操業性が悪化すると共に、製造コストが高くなる。
一方、吸水度が60g/mを超えると糊が表面層の紙層内に浸透してしまい、糊の水分によりパルプ繊維が膨潤し、その後乾燥することによりカールが発生しやすくなる。また、接着性が悪くなるために、多量の接着剤を塗布しなければならないという問題が生じ、ますますカールが発生しやすくなってしまう。
また、裏面層の吸水度は、JIS−P8140に基づいて、測定時間2分で測定した吸水度が200〜2,000g/mであることが好ましく、200〜1,500g/mであるとより好ましい。これにより、裏面層は、吸水性に優れる層となるので、マット台紙のカール適性をより良好なものとすることができる。
すなわち、表面素材を貼合し、カール適性を確保するために糊を塗工面に残しながらも、一定量は接着強度を確保するために、表面層に浸透させなければならない。
しかしながら、表面層に糊を浸透させることにより、表面層の水分と裏面層の水分とが大きく異なってしまう。このようなマット台紙を乾燥させると、表面層と裏面層との水分差によりカールが発生してしまい、カール適性が低下してしまう。
このため、裏面、すなわち表面素材が貼合されない面の吸水度を上記の範囲に調整し、表面層の内部に浸透した糊等の水分を、裏面層にまで吸収させることにより、表面層、中間層、及び裏面層の各層の内部の水分の水分率を互いに近づける。これにより、表面層の表面素材との貼合適性を損なうことなく、カール適性にも優れるマット台紙とすることができる。
なお、裏面層の吸水度が200g/m未満であると、裏面層の吸水性が低く、表面層の内部に浸透した糊等の水分を裏面層にまで吸収させることができなくなるため、表面層と裏面層との水分の差を小さくすることができず、カール適性が低下する。
一方、吸水度が2,000g/mを超えると、裏面にまで糊の成分が浸透してしまう場合がある。マットボードは、例えば保管時や搬送時等には積み重ねられるが、このように糊成分が裏面に浸透したマット台紙が用いられると、浸透してしまった糊成分が、積み重ねられた際に隣接するマットボードに移ってしまい、接着されてしまう等の問題が生じるおそれがある。
裏面の吸水度を200〜2,000g/mとするためには、サイズ剤を無添加とする、少量のサイズ剤を添加する、あるいは、界面活性剤を添加し吸水性を高めるなどの方法により達成することができる。
なお、サイズ剤を配合する場合において、そのサイズ剤の配合量は、裏面層の原料パルプに対して、固形分換算で0.1質量%未満である。サイズ剤の配合量が0.1質量%を超えると、裏面層に本願発明の所望とする吸水性を付与する効果が低下してしまい、マット台紙のカール適性が低下してしまう。
また、本発明に係るマット台紙は、上述したように原料パルプの選定、配合率や濾水度の調整、各層の付け量の調整、水溶性高分子の塗工・含浸などを行うことにより、表面層の密度が中間層の密度よりも高くなるように調整することが好ましい。
全体の密度が同等のマット台紙であっても、表面層の密度を中間層の密度よりも高く調整したマット台紙の方が、傾斜カット時におけるケバ、紙粉の発生を大幅に抑制できることが、本発明者らの実験の結果わかった。
具体的には、表面層の密度と中間層の密度との比率(%)(表面層の密度÷中間層の密度×100)を3%以上にすることが好ましく、5%以上にすることがより好ましく、8%以上にすることが最も好ましい。
4%以上になるように調整すると、傾斜カット時におけるケバ、紙粉の抑制効果が現れる。また、8%以上にするとより顕著な効果が得られるが、それ以上高くしてもケバ、紙粉の抑制効果は横ばいであった。
上述したように構成された本発明に係るマット台紙は、カール適性に優れて、カールが極めて発生し難いとともに、カット適性にも優れ、ケバが極めて発生し難いので、窓部を効果的に設けることができる。
また、本発明に係るマット台紙を用いて形成された額装用のマットボードは、グレージングとマットボードとの密着性、マットボードと作品との密着性に優れ、額に収められる作品の効果的演出にも優れる。
本願発明に係るマット台紙の効果を確認するため、以下のような各種の試料を作製し、これらの各試料に対する品質を評価する試験を行った。なお、本実施例において、本願発明を限定するものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲において、適宜その構成を変更することができることはいうまでもない。
本発明に係る21種類のマット台紙(これを「実施例1」ないし「実施例21」とする)と、これらの実施例1ないし実施例21と比較検討するための5種類のマット台紙(これを「比較例1」ないし「比較例5」とする)を表1に示すような構成で作製し、また、市販の白ライナー(これを「比較例6」とする)と、市販のマット台紙(これを「比較例7」とする)とを用意し、評価した。

[実施例1]
表面層については、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)40質量%、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)40質量%、サーモメカニカルパルプ(TMP)20質量%からなるパルプスラリーを、抄造後離解した際のカナディアンスタンダード濾水度(CSF)が350mlになるように調節したものに、サイズ剤(近代化学工業株式会社製R50)を固形分換算で0.25質量%、PAM(ハリマ化成株式会社製、ハーマイドB−15)を固形分換算で0.15質量%内添し、灰分が5%となるように填料としてタルクを内添し、炭酸水素ナトリウムを添加して熱水抽出pH値が7.5となるように調整した原料を使用した。
裏面層については、サイズ剤を添加しなかったこと以外は、表面層と同様に調整した。
中間層(2〜4層)としては、NBKP30質量%、脱墨古紙パルプ(DIP)50質量%、TMP20質量%からなるパルプスラリーを、CSFが340mlになるように調節したものに、PAM(ハリマ化成株式会社製、ハーマイドB−15)を固形分換算で0.5質量%内添し、灰分が5%となるように填料としてタルクを内添し、炭酸水素ナトリウムを添加して熱水抽出pH値が7.5となるように調整した原料を使用した。
これらの各層の原料を円網多層抄紙機にて、表面層の付け量を80g/m、中層(2〜4層)の付け量を460g/m、裏面層の付け量を80g/mとして、6層構造で抄き合わせ、PVA(日本合成化学株式会社製、ゴーセノールN300)をカレンダー塗工で表面(表面層の表面)に塗工量1.0g/m、裏面(裏面層の裏面)に1.0g/m塗工して、坪量620g/m、厚さ1,000μmのマット台紙(実施例1)を得た。
[実施例2〜6]
裏面には水溶性高分子(塗工剤)を塗工せず、表面に塗工する水溶性高分子(PVA)の塗工量を表1に示す値に調整したことを除く、その他の点は実施例1と同様にして得たマット台紙。
[実施例7〜9]
表面層及び中間層の灰分を表1に示す値に調整したことを除く、その他の点は実施例1と同様にして得たマット台紙。
[実施例10〜15]
中間層に使用する原料パルプのCSFを表1に示す値に調整したこと、裏面に塗工する水溶性高分子(PVA)の塗工量を表1に示す値に調整したこと、及び表面の吸水度を表1に示す値に調整したことを除く、その他の点は実施例1と同様にして得たマット台紙。
[実施例16〜21]
表面層及び中間層に使用する原料パルプのCSFを表1に示す値に調整したこと、及び裏面の吸水度を表1に示す値に調整したことを除く、その他の点は実施例1と同様にして得たマット台紙。
[比較例1]
表面及び裏面に水溶性高分子(PVA)を塗工しなかったことを除くその他の点は実施例1と同様にして得たマット台紙。
[比較例2〜3]
坪量、表面層及び中間層の灰分を表1に示す値に変更し、厚さを表2に示す値に変更したことを除くその他の点は実施例1と同様にして得たマット台紙。
[比較例4〜5]
中間層のCSF、及び表面の吸水度を表1に示す値に変更したことを除くその他の点は実施例1と同様にして得たマット台紙。
[比較例6]
市販されている一般的な段ボール用白ライナー。
[比較例7]
市販されている一般的なマット台紙。
表1中の「原料パルプの配合比率(質量%)」とは、各試料を、後述する層剥離を行い、表面層の繊維比率をJIS−)8120に記載の「紙、板紙及びパルプ繊維組成試験方法」に準拠して測定した値である。
層剥離は以下の手順で行う。まず、各試料から得た各サンプルを室温の水に約1時間浸漬する。水に浸漬した各サンプルを、角を起点として10mmΦ程度の丸棒に捲き付けた後、丸棒を転がして各サンプルをしごく。この操作を各サンプルの四隅の全ての角を起点に繰り返し、各方向からサンプルにしごきの力を加える。これにより、各サンプルの層間の一部が剥離してくるので、これを利用して、表面層、中層、及び裏面層に分離して層剥離を行う。
「濾水度(ml)」とは、上述した層剥離を行った後の試料を約3cmの大きさに裁断して約25gの重さの試験片とし、この試験片を1リットルの水に24時間浸漬した後、JIS−P8220に準拠して標準離解機で15分間離解処理し、試験片が完全に離解していることを目視で確認した後、JIS−P8121に準拠してカナダ標準濾水度試験機にて測定した値である。
また、「吸水度(g/m)」とは、JIS−P8140に記載の「紙及び板紙−吸水度試験方法−コッブ法」に準拠して吸水時間を2分として測定した値である。
これらの全実施例及び比較例について、坪量、厚さ、密度、吸水度、及び剥離強度の物性測定を行い、また、カット適性、カール適性、演出効果、貼合適性、及び生産性を評価する試験を行った結果は、表2に示すとおりであった。なお、この物性測定及び評価試験は、JIS−P8111に準拠して温度23℃±1℃、湿度50±2%の環境条件で行った。
表2中の「坪量(g/m)」とは、各試料全層、すなわちマット台紙の全体の坪量で、JIS−P8124に記載の「紙及び板紙−坪量測定方法」に準拠して測定した値である。
「厚さ(μm)」とは、マット台紙全体の厚さで、JIS−P8118に記載の「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した値である。
「密度(g/cm)」とは、上述した層剥離を行い、各試料から表面層及び中間層(表面層及び裏面層を除いた残りの層)を採取し、この採取した表面層、中間層の付け量及び厚さを測定して算出した値である。また、測定誤差をなくすため、各試料からサンプルを10枚作成して測定し、また、厚さの測定については、各サンプルについてN数20以上行い、最大値、最小値は除外して算出した。
なお、密度測定の場合における層剥離は、基本的には上述した層剥離と同様の作業を行うが、各試料から得られたサンプルは、水に浸漬せずに行った。
「剥離強度(MPA)」とは、TAPPI UM522に従い、Z軸方向の剥離強度を測定した値である。
「カット適性」とは、各試料に、傾斜カットを行って中抜き窓部を設け、この傾斜カット断裁面に発生したケバの状態を目視にて評価したもので、各試料10枚の平均評価である。その評価基準は、◎印の「ケバの発生がほとんどない」、○印の「ケバがわずかに発生するが、改善効果が顕著である」、△印の「ケバの発生があり、改善効果があまりない」、×印の「ケバの発生が多く、商品の欠点となる」の4段階とした。
「カール適性」とは、マット台紙である各試料の表面層の表面に、表面素材を貼合し、乾燥して形成したマットボードのカールの発生した状態を目視にて評価したものである。その評価基準は、◎印の「カールの発生がほとんどない」、○印の「カールの発生が多少あるが、改善効果が顕著である」、△印の「カールが発生があり、改善効果があまりない」、×印の「カールの発生が多く、現在市販されているマット台紙と同レベル」の4段階とした。
「演出効果」とは、マット台紙である各試料の表面層の表面に表面素材を貼合した後、各試料に傾斜カットを行って中抜き窓部を設け、この傾斜カット断裁面を利用することによる額に収納される作品の演出効果を目視にて評価したもので、各試料10枚の平均評価である。その評価基準は、◎印の「断裁面にケバの発生、及び層剥離(層分離)がほとんどなく、断面がシャープで額に収容される作品と一体性があり、作品の演出効果が高い」、○印の「ケバの発生、及び層剥離が多少あるが、作品の演出効果が良好である」、△印の「ケバの発生、及び層剥離があり、作品の演出効果があまりない」、×印の「ケバの発生、及び層剥離が多く、作品の演出効果がほとんどなく、現在市販されているマット台紙と同レベルである。」の4段階とした。
「貼合適性」とは、各試料の表面層の表面に貼合した表面材料との接着性、貼合の際に塗工・含浸される糊等の水分が、各試料の裏面まで浸透度合いなどの貼合適性を総合的に評価したものである。その評価基準は、◎印の「貼合適性が非常に良い」、○印の「貼合適性は問題ない」、△印の「現在市販されているマット台紙と同レベルで、貼合適性はあまり改善されていない」、×印の「貼合適性は悪い」の4段階とした。
また、「生産性」とは、抄紙機にて各製造条件のマット台紙をテスト抄造した際の生産性を評価した。
その評価基準は、◎印の「現在市販されているマット台紙と同等以上である」、○印の「現在市販されているマット台紙と比較すると、生産性が低下するおそれがある」、△印の「現在市販されているマット台紙と比較して、生産性が約1〜4%低下する」、×印の「現在市販されているマット台紙と比較して、生産性が5%以上低下する」の4段階とした。
表2から分かるように、本発明に係るマット台紙、すなわち実施例1ないし実施例21に係るマット台紙は、カール適性及びカット適性に優れ、また額に収容された作品を演出する効果も高く、貼合適性、生産性にも優れることが分かる。
一般的な額の構成を示す概略断面図である。 マットボードの構成を示す概略断面図である。
符号の説明
1 額
2 額縁
3 作品
4 グレージング
5 マットボード
6 マウントボード
7 バックボード
8 グレージングとマットボードとの間に形成される空間
9 マット台紙
10 表面素材
11 中抜き窓部
12 断裁面

Claims (5)

  1. 額装用のマットボードに用いられ、表面層と、裏面層と、前記表面層及び前記裏面層の間に中間層とを有する、厚さが700〜1,200μm、坪量が430〜750g/m の多層抄きのマット台紙であって、
    前記表面層の原料パルプは、LBKPを30〜70質量%、NBKPを20〜50質量%、機械パルプを5〜50質量%の割合で含有し、また、濾水度が前記中間層の原料パルプの濾水度よりも10ml以上高く、
    前記表面層の付け量は40〜120g/m であり、
    少なくとも前記表面層の表面に、水溶性高分子を塗工または含浸し、
    前記表面層の表面は、JIS−P8140に基づく吸水度が10〜60g/mであることを特徴とするマット台紙。
  2. 前記各層の原料パルプ繊維のカヤニ数平均繊維長が1.0〜2.0mmであり、
    前記表面層の原料パルプの濾水度が250〜450mlで、前記中間層の原料パルプの濾水度が230〜430mlであり、また前記表面層の原料パルプ中には、填料が2〜10質量%含有され、また少なくとも前記表面層の密度が前記中間層の密度よりも3%以上高いことを特徴とする請求項1に記載のマット台紙。
  3. 前記裏面層は、サイズ剤の配合量が前記裏面層の原料パルプに対して固形分換算で0.1質量%未満であり、また前記裏面層の裏面は、JIS−P8140による吸水度が200〜2,000g/mであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマット台紙。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のマット台紙の表面に、表面素材を貼合して形成されたことを特徴とする額装用のマットボード。
  5. JIS−P8151プリント・サーフ試験機法(面積式流量計形プリント・サーフ試験機)にて、ソフトバッキングを用いてクランプ装置のバッキングを1.0MPAとして測定したときの平滑度が3.0〜8.0μmになるように、カレンダー装置にて前記マット台紙の表裏面を平滑化処理した後、前記マット台紙の表面に前記表面素材を貼合することを特徴とする請求項4に記載の額装用のマットボード。
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