JP2019039114A - 熱転写紙用原紙および熱転写紙 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明者らは、加熱処理後に熱転写紙の破断が発生する原因について検討を進めた。その結果、加熱処理の最中に熱転写紙の繊維は熱収縮を起こし、その熱収縮が大きすぎる場合には熱転写紙に破断が発生することが判明した。
さらに、本発明者らは、加熱処理前後におけるMD方向およびCD方向の熱収縮率と、加熱処理後におけるMD方向およびCD方向の破断伸びとの間に所定の関係があるときに、加熱処理による熱収縮が原因の熱転写紙の破断が低減することを見出した。本発明は、このような知見を基に完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は、以下のような構成を有している。
(1)熱転写紙に水性の糊を付与した後に、熱転写紙を基材に密着させる。または、熱転写紙と基材とを合わせてから真空にして両者を密着させる。
(2)基材から外にはみ出した部分の熱転写紙をカッターで切断して除去する。
(3)170℃〜220℃程度の熱を加えて、インク層(熱転写紙上の図柄)を基材に転写させる。
(4)図柄が転写された熱転写紙を基材から剥がす。その際に、基材と熱転写紙をビニール等で覆い、水をかけて冷やすなどの操作が加わる場合もある。
(パルプ)
熱転写紙用原紙は、セルロースパルプを主成分とする。セルロースパルプには特に制限はないが、強度の観点から化学パルプを含有することが好ましい。化学パルプとしては特に限定されないが、広葉樹クラフトパルプ(LKP)または針葉樹クラフトパルプ(NKP)を含有することが好ましい。パルプは晒パルプでもよく、未晒パルプでもよい。さらに、LKPとNKPをいずれも含有することが好ましい。
硫酸バンド(硫酸アルミニウム)は、従来から歩留向上剤やサイズ剤等の定着剤として広く使用されてきている。しかし、熱転写紙用原紙として使用する場合、転写時に200℃前後に加熱されるため、加熱時に硫酸バンドから発生する硫酸イオンがセルロースを加水分解して、加熱後の紙の引張強度を大きく低下させる。そこで、転写時の加熱処理による引張強度の低下を抑制し得る硫酸バンドの添加量について検討を加えた。その結果、熱転写紙用原紙中の硫酸イオンの含有量を0.6mg/l以下とすることが必要であることが判明した。硫酸イオンの含有量は、好ましくは0.1〜0.6mg/lの範囲、より好ましくは、0.2〜0.6mg/lの範囲である。硫酸イオンの含有量を上記範囲内とすることによって、加熱処理後の引張強度の低下を抑制することが可能となる。ここで、紙中の硫酸イオンの含有量は、イオンクロマトグラフを用いて測定することができる。
本発明者らは、繊維配向比が熱転写紙用原紙の加熱時の挙動に影響を与えることを突き止めた。
繊維配向がCD方向に偏れば、繊維が熱収縮した際、CD方向と平行に紙裂けが生じる。一方、繊維配向がMD方向に偏れば、繊維が熱収縮した際、MD方向と平行に紙裂けが生じる。
そこで本発明者らは、転写時の加熱による熱収縮を抑制し得る、繊維配向比について検討を加えた。その結果、超音波伝播速度測定器に基づき測定される繊維配向比は、1.25〜1.50の範囲であることが好ましく、1.31〜1.41の範囲であればより好ましいと判明した。
ジェットワイヤー比とは、パルプ繊維の流出速度とワイヤーの走行速度の比であり、スラリーの流出速度/ワイヤーの走行速度で表される。
縦軸は破断伸びを、横軸は熱収縮率を示す。「●」は加熱時に紙裂けの発生しなかったデータを、「■」は紙裂けの発生したデータを表している。斜めの直線は破断伸びと熱収縮率の比が3.18の直線であり、加熱時に紙裂けが発生した領域と発生しなかった領域とを区分している。
縦軸は破断伸びを、横軸は熱収縮率を示す。「●」は加熱時に紙裂けの発生しなかったデータを、「■」は紙裂けの発生したデータを表している。斜めの直線は破断伸びと熱収縮率の比が3.18の直線であり、加熱時に紙裂けが発生した領域と発生しなかった領域とを区分している。
本実施形態の熱転写紙用原紙は、基材と密着させるときに水性の糊が付与されることから、湿潤引張強度に優れていることが好ましい。さらに、熱転写紙を基材から剥がすときの作業性から、加熱処理後の湿潤引張強度に優れていることが好ましい。本発明者らは、湿潤時の引張強度を向上させるための処方を検討した。従来から紙力増強剤として広く使用されてきたカチオン化澱粉では、湿潤時の引張強度を向上させる効果が十分ではない。そこで、カチオン化澱粉に代わる湿潤紙力増強剤を検討した。その結果、湿潤紙力増強剤としては、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂(PAE)、尿素ホルムアルデヒド系樹脂およびメラミンホルムアルデヒド系樹脂から選ばれる1つ以上が好ましいものであった。
サイズ剤としては公知のものを使用することができる。サイズ剤の中では、ロジン系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸(ASA)系サイズ剤、カチオンポリマー系サイズ剤およびアルキルケテンダイマー(AKD)系サイズ剤から選ばれる1つ以上を含有することが好ましい。特に、酸性の硫酸バンドの添加量を低減化させているため、サイズ発現性の理由から、酸性ロジン系サイズ剤より中性ロジン系サイズ剤の方が好ましい。
100×[(調湿時の引張強度)−(220℃、25分間の加熱処理後の引張強度)]/(調湿時の引張強度) で求められる。加熱処理後の引張強度低下率が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。加熱処理後の引張強度低下率が20%を超えると、熱転写後に基材から熱転写紙を剥がす際に熱転写紙が破れを引き起こして、作業性が低下する。
晒針葉樹クラフトパルプ(NKP)および晒広葉樹クラフトパルプ(LKP)をダブルディスクリファイナー(以下DDRと称す)を用いて、それぞれ叩解度360mlまで叩解した。叩解したNKP15質量%と叩解したLKP85質量%をそれぞれミキシングチェストにて混合した。次に、硫酸バンドとポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂(PAE系湿潤紙力増強剤)をそれぞれパルプ成分に対して0.6質量%、0.35質量%となるように添加した。次いで、ポリアクリルアミド系紙力増強剤(PAM系紙力増強剤)をパルプ成分に対して0.5質量%となるように添加し、さらに、中性ロジン系サイズ剤をパルプ成分に対して1質量%となるように添加して、紙料を調製した。調製した紙料を用いて、ヤンキードライヤーを有する抄紙機で抄紙を行い、繊維配向比1.36で坪量30g/m2の熱転写紙用原紙を得た。
実施例1と同様にして調製した紙料を用いて、ヤンキードライヤーを有する抄紙機で抄紙を行い、繊維配向比1.40で坪量30g/m2の熱転写紙用原紙を得た。
実施例1と同様にしてパルプを混合した後、硫酸バンドとPAE系湿潤紙力増強剤をそれぞれパルプ成分に対して0.6質量%、0.16質量%となるように添加した。次いで、PAM系紙力増強剤をパルプ成分に対して0.27質量%となるように添加し、さらに、中性ロジン系サイズ剤をパルプ成分に対して0.35質量%となるように添加して、紙料を調製した。調製した紙料を用いて、ヤンキードライヤーを有する抄紙機で抄紙を行い、繊維配向比1.20で坪量30g/m2の熱転写紙用原紙を得た。
実施例1と同様にしてパルプを混合した後、硫酸バンドをパルプ成分に対して1.2質量%となるように添加した。次いで、カチオン化澱粉をパルプ成分に対して0.4質量%となるように添加し、その後、PAM系紙力増強剤をパルプ成分に対して0.27質量%となるように添加し、さらに、酸性ロジン系サイズ剤をパルプ成分に対して0.27質量%となるように添加して、紙料を調製した。調製した紙料を用いて、ヤンキードライヤーを有する抄紙機で抄紙を行い、繊維配向比1.20で坪量31g/m2の熱転写紙用原紙を得た。
市中で入手した実際に使用されている国内他社製品である。
市中で入手した実際に使用されている国外他社製品である。
各項目の評価方法は、下記に示す通りである。
JIS P 8124:2011に準拠して測定を行った。下4桁まで測定可能な電子天秤を用いて重量を測定し、坪量を算出した。
JIS P 8118:1998に準拠して、密度を測定した。
2gの試料を適度な大きさに切り、イオン交換水100cc中で1時間煮た後、孔径0.45μmのフィルター(アドバンテック社製、シリンジフィルター25HP045AN)で濾過処理を行った。その後、イオンクロマトグラフ(ダイオネクス社製、ICS2000)を用いて硫酸イオン量の測定を行った。
JIS P 8155:2010に規定された方法に準拠して、平滑面の平滑度の測定を行った。測定機として王研式平滑度透気度計(旭精工社製)を用いた。
超音波の伝播速度の角度分布からシートの繊維配向性を測定する装置(SST−2500,野村商事株式会社製)を用いて測定した。
JIS P 8113:2006に規定された方法に準拠して、JIS P 8111:1998に規定された調湿環境下にて調湿後のMD方向の引張強度の測定を行った。測定機として、横型引張試験機(L & W社製、CODE SE-064)を用いた。
恒温乾燥機にて220℃の環境下で25分間放置した後、JIS P 8111:1998に規定された調湿環境下にさらに15分間放置した後、JIS P 8113:2006に規定された方法に準拠して、MD方向の引張強度の測定を行った。測定機として、横型引張試験機(L & W社製、CODE SE-064)を用いた。
恒温乾燥機にて220℃の環境下で25分間放置した後、JIS P 8111:1998に規定された調湿環境下にさらに15分間放置した後、JIS P 8135:1998の一般法として規定された方法に準拠して、MD方向の湿潤引張強度の測定を行った。測定機として、縦型引張試験機(A & D社製、テンシロン)を用いた。
恒温乾燥機にて220℃の環境下で25分間放置した後、JIS P 8111:1998に規定された調湿環境下にさらに15分間放置した後、JIS P 8113:2006に規定された方法に準拠して、MDおよびCD方向の破断伸びの測定を行った。測定機として、横型引張試験機(L&W社製、CODE SE−064)を用いた。
熱転写紙を20cm×20cmの大きさで切り出し、JIS P 8111:1998に規定された調湿環境下で、MDおよびCD方向の長さを測定した後、恒温乾燥機にて220℃の環境下で25分間加熱し、再びMDおよびCD方向の長さの測定を行った。以下の計算式により、熱収縮率を算出した。
熱収縮率=(加熱前の長さmm−加熱後の長さmm)/加熱前の長さmm×100
JIS P 8140:1998に規定された30秒法に準拠して、下4桁まで測定可能な電子天秤を用いて測定を行った。
上記実施例ならびに比較例で得られた熱転写紙用原紙の平滑面上に、インクジェット印刷機(株式会社ミマキエンジニアリング製、JV5−320DS)を用いて、昇華性インク(株式会社ミマキエンジニアリング製、Sb52)による木目柄の印刷を行い、印刷面の相対評価を行った。
○:鮮明に印刷がなされている
△:若干色目が劣るところがある
×:抜け、かすれが目立つ
印刷性の確認で得られた熱転写紙から10cm×10cmの大きさを切り出し、アルミニウム板に印刷面を接触するように圧着させ、小型ホットプレス機(東洋精機社製、MINI PRESS-10 MP−SNH)用いて、220℃で30秒間、5kNの荷重で熱プレスを行い、転写された画像の鮮明さについて相対評価を行った。
○:鮮明に転写がなされている
△:若干色目が劣るところがある
×:色目が薄く不鮮明である
10cm×10cmの熱転写紙用原紙を用いて、恒温乾燥機にて105℃の環境下で15分間放置した後、30秒間水に含浸させた。その後、水を含浸させた紙をカッターで切断し、その切り口から耐水性の相対評価を行った。
○:問題なく切断可能である
△:若干切り口が荒れるが切断可能である
×:途中で破れが生じ、切断できない
100cm×50cmのアルミニウムの基材上に、120cm×70cmの印刷性の確認で得られた熱転写紙を水性糊を用いて貼り付け、ホットプレス機を用いて熱転写を行い、剥がす際の作業性を評価した。
○:効率よく作業可能である
△:若干作業性が悪化するが、作業可能である
×:効率よく作業できない
印刷性の確認で得られた熱転写紙から10cm×10cmの大きさを切り出し、アルミニウム板に印刷面を接触するように圧着させ、小型ホットプレス機(東洋精機社製、MINI PRESS-10 MP−SNH)用いて、220℃で25分間、5kNの荷重で熱プレスを行い、MD方向およびCD方向における熱転写紙の紙裂けについてそれぞれ相対評価を行った。
○:紙裂けが生じない
×:紙裂けが生じる
一方、比較例1の熱転写紙用原紙はMD方向の紙裂けが発生し、作業性に劣るものであった。比較例2と比較例3の熱転写紙用原紙は、加熱処理による引張強度低下率が大きく、耐水性と作業性に劣るものであった。比較例4の熱転写紙用原紙は、平滑面の王研式平滑度が低く、印刷性に劣るものであった。
Claims (8)
- セルロースパルプを主成分とし、
密度が0.75〜0.85g/cm3であり、
坪量が20〜50g/m2であり、
片方の面が平滑面であり、
220℃で25分間加熱した場合、加熱後におけるMD方向の破断伸びが、加熱前後におけるMD方向の熱収縮率の3.18倍以上であり、かつ、加熱後におけるCD方向の破断伸びが、加熱前後におけるCD方向の熱収縮率の3.18倍以上である
ことを特徴とする熱転写紙用原紙。 - 紙中に含有される硫酸イオン量が0.6mg/l以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱転写紙用原紙
- 繊維配向比が1.25〜1.50であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱転写紙用原紙
- カチオン化澱粉の含有量が0.01質量%以下であり、
湿潤紙力増強剤の含有量が0.10〜0.35質量%である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱転写紙用原紙。 - 220℃で25分間の加熱処理による引張強度低下率が20%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱転写紙用原紙。
- 220℃で25分間の加熱処理後の湿潤引張強度が0.60kN/m以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱転写紙用原紙。
- 被転写材が金属、セラミックスまたは樹脂からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱転写紙用原紙。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱転写紙用原紙と、当該熱転写紙用原紙の平滑面側に形成されたインク層とを有し、前記インク層がインクとバインダー樹脂を含有することを特徴とする熱転写紙。
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