JP2019026978A - 水彩紙 - Google Patents
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Abstract
【課題】酸性サイズ剤を使用せずとも良好なサイズ性を有し、長期保存性に優れ、さらには良好な紙腰を持った水彩紙を提供すること。【解決手段】天然繊維からなる水彩紙であって、木材パルプを主体とする天然繊維100質量部に対して、アルキルケテンダイマーに代表される中性サイズ剤を0.5〜1.2質量部含み、ステキヒトサイズ度が600〜900秒であり、かつ、コッブ吸水度が14g/m2以下である水彩紙とすることで上記課題を解決することが可能となる。【選択図】なし
Description
本発明は、水彩絵具を使用して描画するのに適した水彩紙に関する。
水彩画を描くためには現在、水彩紙が使用されている。水彩画を描く時に用いる水彩紙は、原料として使用する製紙用パルプの種類に応じて、通常3つのグレードに分けられている。「最高級水彩紙」と呼ばれるものは、コットンパルプをほぼ100%使用して製造されている。次いで「高級水彩紙」と呼ばれるグレードは、コットンパルプに木材パルプを併用して製造されている。単なる「水彩紙」と呼ばれるグレードは、木材パルプのみで製造されている。「最高級水彩紙」と「高級水彩紙」は、上級者向けとして、単なる「水彩紙」は初心者向けとして使用されている。本発明はこの「水彩紙」に関する新規な提案に関するものである。以下、当該初心者向け「水彩紙」は、単に「水彩紙」と記載する。
水彩画では、多量の水で薄めた絵具を使用し、「混色」(絵具が乾く前に更に異なる絵具を混ぜる技法。同じ色を重ねる場合も含む)、「抜取り」(絵具が乾く前にティッシュなどで一部分を拭き取る技法)および「ウェットインウェット」(水あるいは絵具が乾く前に、新たに異なる絵具を置く技法、「ウェットオンウェット」と呼ぶこともある)などの水彩技法を利用する。水彩技法を利用するためには、紙面上で絵具が定着する速度がある程度遅くなければならない。絵具の定着速度は、絵具および紙の種類により異なってくる。通常、水彩紙は水の吸収性を抑え、描き直しが可能なような配慮がなされている。
水の吸収性を抑えるにあたり、一般的にサイズ剤が用いられる。サイズ剤には酸性領域で使用するものと中性領域で使用するものがあり、一般的に前者の方がサイズ効果の高いことが知られている。しかし、酸性サイズ剤は定着剤として硫酸バンドを用いるが、硫酸バンドを用いた酸性紙には、経時での劣化が促進する等、耐久性に問題があり、作品として長期保存できないという問題があった。
これらの問題を解決するために、酸性抄紙した紙に対して炭酸水素ナトリウムを塗布して紙の劣化を防ぐことが提案されている(特許文献1)が、一般的に水彩紙は印刷用紙と比較して厚みがあり、またサイズ性もあるため、紙内部まで中性とすることは困難であり、強度の劣化促進は避けられない。また、紙のこし(こわさ)について配慮していないため、紙が絵具の水分を吸った際に膨潤し、紙に凹凸が生じてしまうおそれがある。
本発明の課題は、酸性サイズ剤を使用することなく良好なサイズ性を有し、長期保存性に優れ、紙腰を併せ持つ水彩紙を提供することにある。
本発明の水彩紙は、中性サイズ剤の中でも特にアルキルケテンダイマー系サイズ剤を使用し、かつ、天然繊維を木材繊維70%以上、水の紙への浸透を一定の範囲に納めることにより前記課題を解決する。
すなわち、本発明は、天然繊維からなる水彩紙であって、中性サイズ剤を含み、ステキヒトサイズ度が600〜900秒であり、かつ、コッブ吸水度が14g/m2以下である水彩紙である。
前記水彩紙において、使用される中性サイズ剤の含有量が天然繊維100質量部に対して0.5〜1.2質量部であることが好ましい。
前記中性サイズ剤はアルキルケテンダイマー系サイズ剤であることが好ましい。
前記天然繊維は木材パルプ70質量%以上が好ましい。
前記水彩紙はいくつかの水彩技法のうち、特に「ウェットインウェット」(水あるいは絵具が乾く前に、新たに異なる絵具を置く技法)などのサイズ性を活用した技法に用いるのが好ましい。
本発明によれば、酸性サイズ剤を使用することなく水彩技法を用いるのに良好なサイズ性が得られ、かつ長期保存性に優れた水彩紙が得られる。併せて、絵具を使用しても膨張や表面の凹凸といった変形が少ない水彩紙が得られる。
以下、本発明について、その好ましい一実施態様に基づき説明する。
本発明の水彩紙は、天然繊維からなり、中性サイズ剤を含む。
本発明において使用される天然繊維としては、針葉樹および広葉樹などを主原料とした砕木パルプ、亜硫酸パルプ、クラフトパルプ、セミケミカルパルプ、ケミグランドパルプなどの木材パルプの他、リンターパルプ、コットンラグパルプなどのコットンパルプ、ケナフ、麻、楮、三椏、竹、バガス、葦、エスパルトなどの非木材パルプ、およびこれらを変性したパルプが挙げられる。これらの天然繊維を単独で用いてもよいし、2種以上を適宜併用してもよい。また、天然繊維以外にも本発明の性能に影響を及ぼさない範囲で、レーヨン、ビニロン、ナイロン、アクリル、ポリエステル等の合成繊維や化学繊維、またはミクロフィブリル化パルプを混合することができる。
本発明では、添加するサイズ剤に中性サイズ剤を用いる。中性サイズ剤とは、抄紙pHが中性領域で天然繊維に定着できるサイズ剤であり、アルキルケテンダイマー系(以下、AKD系と表記)サイズ剤、アルケニル無水コハク酸系サイズ剤、高級脂肪酸アミド系サイズ剤、スチレン・アクリル系サイズ剤などが使用できるが、本発明ではAKD系サイズ剤を用いるのが好ましい。AKD系サイズ剤を使用した場合、コッブ吸水度が発現しやすいという利点がある。また、中性サイズ剤の含有量は、天然繊維100質量部に対して0.5〜1.2質量部であることが好ましく、0.7〜1.0質量部であることが更に好ましい。0.5質量部より低いと紙の吸水性が高く、水彩技法が使用できない。また、1.2質量部を超えると絵具の定着が悪くなってしまう。0.5〜1.2質量部の範囲内であれば、水彩技法を行うのに適したサイズ性が得られる。酸性サイズ剤は、抄紙pHが酸性領域でないと定着できない。抄紙pHが酸性領域であると、セルロースの加水分解を促進し劣化を進めるため、長期保管が想定される本発明の用途では酸性サイズ剤を使用できない。
本発明において、紙表面の中性サイズ剤による緻密なネットワークを形成するために無機粒子を添加されるのが好ましい。中性サイズ剤はパルプのみに定着するため、中性サイズ剤が均一に分布されなかった場合は、紙表面のうち中性サイズ剤が存在しない部分の面積が大きくなることがあるが、無機粒子を添加することでこの問題が解消できサイズ効果を向上させることができる。具体的に説明すると、中性サイズ剤は無機粒子にも定着するため、無機粒子を添加すると中性サイズ剤が密に分布しやすくなり、紙表面のうち中性サイズ剤が存在しない部分の面積が小さくなるので、中性サイズ剤の効果が高くなるのである。無機粒子が天然繊維100質量部に対して3質量部以上であれば、中性サイズ剤による緻密なネットワークを形成し、均一に分布されるため好ましい。一方、無機粒子の含有量が12質量部より多いと、水彩紙の表面強度が低下し、十分に水彩技法を使用することができなくなる。よって、本発明の無機粒子の含有量は、天然繊維100質量部に対して3〜12質量部であることがより好ましい。無機粒子は、例えば、炭酸カルシウム、湿式カオリン、焼成カオリン、乾式カオリン、二酸化チタン、タルク、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、サチンホワイト、珪藻土、ガラス粉末、シラスバルーン、活性白土などが使用できる。無機粒子は、特に炭酸カルシウム、焼成カオリンおよびタルクからなる群から一種類以上選択されることが、好ましい。
本発明の水彩紙は、内添薬品として、中性サイズ剤および無機粒子の他に、澱粉、カチオン化澱粉、アルファ化澱粉、酸化澱粉、カチオンアクリル澱粉、澱粉グラフト・ポリアクリルアミド系樹脂、PVA及びPAMなどの乾燥紙力増強剤、ポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂、ポリアミン・エピクロロヒドリン樹脂、ポリアミドエポキシ樹脂およびメラミン樹脂などの湿潤紙力増強剤、染料、着色顔料、消泡剤、濾水性・歩留向上剤、粘剤、防滑剤、離型剤、耐水化剤、スライムコントロール剤および防腐・防カビ剤を適宜添加できる。水彩紙は、その表面が水で濡れた状態で、筆などで擦られることで負荷がかかるため、湿潤紙力増強剤を添加して湿潤強度を向上させておくことが好ましい。
本発明を製造する抄紙機は、特に制限はないが、長網抄紙機、短網抄紙機、円網抄紙機およびツインワイヤー抄紙機など一般的に使用される湿式抄紙機が挙げられる。特に、無配向性に近い状態で抄紙することができるため、円網抄紙機を使用することが好ましい。原料となる天然繊維は、必要に応じて、予め叩解されてもよい。叩解手段は特に限定されるものではなく、例えば、ダブルディスクリファイナー、シングルディスクリファイナー、ビーター等の一般的な叩解装置を使用することができる。叩解度についても限定されるものではないが、300〜450mlC.S.F.が好ましく、360〜420mlC.S.F.がより好ましい。特に、これら範囲にすることで、所望の紙腰、サイズ性、表面強度が得られやすくなる。本発明の坪量は特に限定されるものではないが、200〜350g/m2であることが好ましく、220〜310g/m2であることが更に好ましい。
本発明では抄紙工程中に強度やサイズ性の向上などを目的としてサイズプレス等の塗工を施してもかまわない。サイズプレスには澱粉、酸化澱粉、PVAおよびアクリル系樹脂などの紙力増強剤、PAM、AKD系サイズ剤、スチレン・アクリル系サイズ剤およびオレフィン系サイズ剤などの中性サイズ剤などを使用できる。
本発明では、性能に影響のない範囲で、エンボス処理をすることが可能である。エンボス処理を行うことにより、加工前では得られないような意外性のあるタッチや、水彩画の重厚感や立体感を表現することができるようになる。
エンボス処理には、公知技術が用いることができ、オンマシンのエンボス装置やオフマシンのエンボス装置のいずれも採用できる。また、エンボス処理される紙は湿紙であっても乾紙であってもよい。手法としては、例えば、湿紙又は乾紙にゴム、金属、合成樹脂などのエンボスロールで押圧処理する方法、抄紙機上の湿紙に編み模様を形成したフェルトなどの押圧賦型処理する方法および抄紙機上の湿紙にすき入れする方法などが挙げられるが、上記に限定されることはなく、公知の技術を適宜選択してあるいは組み合わせて行うことができる。
本発明のステキヒトサイズ度は600〜900秒である。600秒未満であると、絵具の紙への浸透時間が早くなり、各種水彩技法を用いるのに十分な時間を確保できない。また、900秒を超えると絵具の紙への定着性が悪くなる。
本発明のコッブ吸水度はJIS P8140における接触時間60秒において、14g/m2以下である。これにより水彩紙の紙腰を十分に保つことが本発明で明らかとなった。具体的にはコッブ吸水度を14g/m2以下にすることで、適度な紙のこわさを発現することができるため、水彩紙が絵具の水分を吸った際に繊維が膨潤したり、紙に凹凸が生じることを防ぐことができる。一方、コッブ吸水度が14g/m2を超えると、こわさを発現できないばかりか吸水性が強くなるため、各種水彩技法を行う前に、紙へと絵具が浸透するので適さない。コッブ吸水度を調整にするには、公知の手法を採用すればよく、例えば、叩解度を調整したり、サイズ剤や紙力増強剤等の薬品を適宜内添したり塗工したりすることで達成できる。
前記の紙腰として、紙の曲げこわさが55mN以上であることが好ましく、60mN以上であることがより好ましい。55mNより低いと紙腰が弱く、紙が水を吸った際に繊維が膨潤し、紙に凹凸が生じてしまう。
本発明天然繊維は木材パルプが70質量部以上であることが好ましい。非木材パルプが30質量部を超えると、水彩紙を使用時に繊維の毛羽立ちが発生したり、サイズ性が不十分であったり、コッブ吸水度が高くなるため、混色、抜取り、ウェットインウェットのような各種水彩技法を用いるのに適さない場合がある。
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、勿論本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の質量部とは、固形分換算とする。
[実施例1]
天然繊維として木材パルプ:非木材パルプ=70:30で混合したパルプ100質量部を370ml C.S.F.に叩解し、これに対してAKD系サイズ剤(商品名:「サイズパインK−903−20」、荒川化学工業社製)0.5質量部、タルク(商品名:「タルクN80」、日本タルク社製)4.9質量部、炭酸カルシウム(商品名:「タマパール TP−121」、奥多摩工業社製)0.5質量部、カチオン化澱粉(商品名「エースK−100」、王子コーンスターチ社製)3.6質量部、紙力増強剤(商品名「DH4160」、星光PMC社製)0.4質量部、湿潤紙力増強剤(商品名「WS−4024」、星光PMC社製)0.2質量部となるようにそれぞれ添加し、十分に混合して抄紙原料とした。なお、上記木材パルプはNBKP:LBKP=70:30で配合したものを使用し、非木材パルプはコットンパルプを使用した。この抄紙原料を、長網抄紙機を使用して、エンボス処理を施した抄紙を行い、坪量240g/m2の水彩紙を得た。
天然繊維として木材パルプ:非木材パルプ=70:30で混合したパルプ100質量部を370ml C.S.F.に叩解し、これに対してAKD系サイズ剤(商品名:「サイズパインK−903−20」、荒川化学工業社製)0.5質量部、タルク(商品名:「タルクN80」、日本タルク社製)4.9質量部、炭酸カルシウム(商品名:「タマパール TP−121」、奥多摩工業社製)0.5質量部、カチオン化澱粉(商品名「エースK−100」、王子コーンスターチ社製)3.6質量部、紙力増強剤(商品名「DH4160」、星光PMC社製)0.4質量部、湿潤紙力増強剤(商品名「WS−4024」、星光PMC社製)0.2質量部となるようにそれぞれ添加し、十分に混合して抄紙原料とした。なお、上記木材パルプはNBKP:LBKP=70:30で配合したものを使用し、非木材パルプはコットンパルプを使用した。この抄紙原料を、長網抄紙機を使用して、エンボス処理を施した抄紙を行い、坪量240g/m2の水彩紙を得た。
[実施例2]
パルプ100質量部に添加するAKD系サイズ剤を1.0質量部とした以外は実施例1と同様にして水彩紙を得た。
パルプ100質量部に添加するAKD系サイズ剤を1.0質量部とした以外は実施例1と同様にして水彩紙を得た。
[実施例3]
パルプ100質量部に添加するAKD系サイズ剤を1.2質量部とした以外は実施例1と同様にして水彩紙を得た。
パルプ100質量部に添加するAKD系サイズ剤を1.2質量部とした以外は実施例1と同様にして水彩紙を得た。
[実施例4]
パルプの叩解度を460ml C.S.F.とした以外は実施例2と同様として水彩紙を得た。
パルプの叩解度を460ml C.S.F.とした以外は実施例2と同様として水彩紙を得た。
[比較例1]
パルプ100質量部に添加するAKD系サイズ剤を、0.3質量部とした以外は実施例2と同様にして水彩紙を得た。
パルプ100質量部に添加するAKD系サイズ剤を、0.3質量部とした以外は実施例2と同様にして水彩紙を得た。
[比較例2]
パルプ100質量部に添加するAKD系サイズ剤を、1.5質量部とした以外は実施例2と同様にして水彩紙を得た。
パルプ100質量部に添加するAKD系サイズ剤を、1.5質量部とした以外は実施例2と同様にして水彩紙を得た。
[比較例3]
パルプの叩解度を500ml C.S.F.とした以外は実施例2と同様として水彩紙を得た。
パルプの叩解度を500ml C.S.F.とした以外は実施例2と同様として水彩紙を得た。
[比較例4]
実施例2のパルプをコットンパルプ100%とした以外は、実施例1と同様にして水彩紙を得た。
実施例2のパルプをコットンパルプ100%とした以外は、実施例1と同様にして水彩紙を得た。
[比較例5]
実施例2のパルプをコットンパルプ100%とし、叩解度を450 ml C.S.Fとした以外は、実施例1と同様にして水彩紙を得た。
実施例2のパルプをコットンパルプ100%とし、叩解度を450 ml C.S.Fとした以外は、実施例1と同様にして水彩紙を得た。
[比較例6]
実施例2のAKD系サイズ剤を高級脂肪酸系サイズ剤(商品名「NS−815」、東邦化学工業社製)に変更した以外は同様にして水彩紙を得た。
実施例2のAKD系サイズ剤を高級脂肪酸系サイズ剤(商品名「NS−815」、東邦化学工業社製)に変更した以外は同様にして水彩紙を得た。
[比較例7]
AKD系サイズ剤を酸性抄紙用サイズ剤(商品名「CC1404」、星光PMC社製)に変更し、硫酸バンド(商品名「硫酸バンド」、日本軽金属社製)を1.5質量部添加した以外は実施例2と同様にして水彩紙を得た。
AKD系サイズ剤を酸性抄紙用サイズ剤(商品名「CC1404」、星光PMC社製)に変更し、硫酸バンド(商品名「硫酸バンド」、日本軽金属社製)を1.5質量部添加した以外は実施例2と同様にして水彩紙を得た。
[比較例8]
サイズ剤添加量を1.5質量部とした以外は比較例7と同様にして水彩紙を得た。
サイズ剤添加量を1.5質量部とした以外は比較例7と同様にして水彩紙を得た。
[比較例9]
比較例7の水彩紙に、下記塗液1を両面あたりの塗布量が固形分で3.5g/m2(炭酸水素ナトリウムが0.23g/m2)となるようにサイズプレスを用いて両面に塗工し、水彩紙を得た。
比較例7の水彩紙に、下記塗液1を両面あたりの塗布量が固形分で3.5g/m2(炭酸水素ナトリウムが0.23g/m2)となるようにサイズプレスを用いて両面に塗工し、水彩紙を得た。
<塗液1>
酸化デンプン(商品名:エースY、王子コーンスターチ社製):100質量部
表面サイズ剤(商品名:ポリマロン1329、荒川化学工業製):4質量部
炭酸水素ナトリウム(pKa6.35):7質量部
水:1500質量部
酸化デンプン(商品名:エースY、王子コーンスターチ社製):100質量部
表面サイズ剤(商品名:ポリマロン1329、荒川化学工業製):4質量部
炭酸水素ナトリウム(pKa6.35):7質量部
水:1500質量部
このようにして得た水彩紙を、23±1℃かつ50±2%r.h.の条件下で、密封されたポリエチレン製の袋中で1週間放置した後、以下の物性測定および評価を行った。
ステキヒトサイズ度:JIS P8122(2004)に従い、紙のサイズ度を測定した。
コッブ吸水度:JIS P8140(1998)に従い、接触時間60秒における紙の吸水度を測定した。
叩解度:JIS P8121−2(2012)に従い、叩解度を測定した。
曲げこわさ:JAPAN TAPPI No.40(2000)に従い、紙のこわさを測定した。
加速劣化処理試験:JIS P8154−1(2008)に従い劣化処理を144時間行った後、JIS P8133−1(2013)に従い冷水抽出pHを測定した。一般的に中性紙として定義されるpH6.0以上であれば問題ないが、pHが6.0を下回ると酸化劣化が促進されやすくなるため、長期保管には適さない。
水彩画適性:水彩絵具を多量の水で溶き、筆を使用し紙面に「混色」、「抜取り」(絵具が乾く前にティッシュなどで一部分を拭き取る技法)および「ウェットインウェット」(水あるいは絵具が乾く前に、新たに異なる絵具を置く技法)などの水彩技法が利用できるか官能評価を行なった。評価判定は以下の4段階で行ない、○以上であれば実用上問題ない。
◎:水彩技法を利用するのに適している。
〇:絵の具の水分を吸っても凹凸が生じない等、水彩技法を問題なく利用できる。
△:若干水彩絵具の定着が速い、若しくは遅い、または絵具の水分を吸うと紙の凹凸が生じる。
×:水彩技法を利用できない。
◎:水彩技法を利用するのに適している。
〇:絵の具の水分を吸っても凹凸が生じない等、水彩技法を問題なく利用できる。
△:若干水彩絵具の定着が速い、若しくは遅い、または絵具の水分を吸うと紙の凹凸が生じる。
×:水彩技法を利用できない。
総合評価:加速劣化処理試験および水彩画適性の結果を基に総合的に◎、〇、△、×で評価した。◎および○であれば実用上問題ないレベルである。
実施例および比較例の評価結果を表2に示す。実施例2と比較例1、実施例2と比較例6の結果より、コッブ吸水度が14を超えると曲げこわさが低くなり、紙腰が弱くなることが明らかとなった。コッブ吸水度が低い比較例は水彩絵具を吸った後に紙の凹凸が生じた。比較例2はステキヒトサイズ度が900秒を超えており、絵具の紙への定着が極端に悪かった。酸性サイズ剤を使用した比較例7と比較例8は加速劣化処理試験による酸化劣化がひどく、一方で実施例の水彩紙は良好なサイズ性を維持したまま保存性が大幅に向上していた。比較例9は酸性サイズ剤を使用しており、これに炭酸水素ナトリウムを塗布しているが、比較例7と同様に酸化劣化の問題が生じた。また、実施例2と比較例4、5より、繊維構成を非木材100%にした場合には、サイズ性が低下することが明らかである。このように本発明の水彩紙はサイズ性に優れ、適度な紙腰を有し、かつ、保存性にも優れる。
Claims (5)
- 天然繊維からなる水彩紙であって、中性サイズ剤を含み、ステキヒトサイズ度が600〜900秒であり、かつ、コッブ吸水度が14g/m2以下である水彩紙。
- 天然繊維100質量部に対して中性サイズ剤を0.5〜1.2質量部含む、請求項1に記載の水彩紙。
- 中性サイズ剤がアルキルケテンダイマーである、請求項1または2に記載の水彩紙。
- 前記天然繊維が木材パルプ70質量%以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の水彩紙。
- 混色、抜取りおよびウェットインウェットのいずれか一つ以上の水彩技法に用いる、請求項1〜4のいずれかに記載の水彩紙。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017149431A JP2019026978A (ja) | 2017-08-01 | 2017-08-01 | 水彩紙 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2022175740A1 (fr) * | 2021-02-17 | 2022-08-25 | Redgrass Sa | Palette humide pour peinture à l'eau |
-
2017
- 2017-08-01 JP JP2017149431A patent/JP2019026978A/ja active Pending
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WO2022175740A1 (fr) * | 2021-02-17 | 2022-08-25 | Redgrass Sa | Palette humide pour peinture à l'eau |
CH718358A1 (fr) * | 2021-02-17 | 2022-08-31 | Redgrass Sa | Palette humide pour peinture à l'eau. |
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