以下、本発明の実施の形態を適宜図面を参照しつつ詳説する。
図1のキャリアテープ用紙1は、表層2、中層3及び裏層4を有する基紙5を備える。上記表層2は、この表面に塗工液の塗工により形成された樹脂層6aを備えている。また上記裏層4は、この表面に塗工液の塗工により形成された樹脂層6bを備えている。
(基紙)
基紙5の密度の密度は、0.5g/cm3以上0.85g/cm3以下であり、0.7g/cm3以上0.85g/cm3以下が好ましく、0.75g/cm3以上0.83g/cm3以下がさらに好ましい。また、中層3及び/又は裏層4の密度は表層2の密度以上である。
当該キャリアテープ用紙1は、基紙5が上記範囲の低密度であるため、ある程度の水分(結露水等)を基紙5内で吸収することができる。このため、当該キャリアテープ用紙1は結露水との接触によっても膨張しにくく、寸法安定性が高い。
また、当該キャリアテープ用紙1は基紙が低密度化されているため、各層中の多量の空気の存在により断熱性に優れる。このため、当該キャリアテープ用紙1によれば、表面のヒートシールの際に、この熱の紙内部への拡散を抑えることができ、キャリアテープ用紙内部からの水分の蒸発を抑制し、結露の発生自体を抑えることができる。従って、当該キャリアテープ用紙1は、結露(水分)の付着によっても寸法安定性に優れ、かつ、水分の蒸発自体を低減できるため、高温、高湿な条件で保管された後などでも膨張せず、走行不良を起こすことなく良好に使用することができる。
また、当該キャリアテープ用紙1は、上述のとおり表層2等の断熱性に優れ、ヒートシールの際の熱が内側にまで拡散しにくいため、効果的なヒートシールを行うことができ、接着性を高めることができる。さらに当該キャリアテープ用紙1によれば、中層3及び/又は裏層4の密度が表層2の密度以上であるため、パンチングやエンボス加工を用いるキャビティ部等の形成の際、この加工性に優れる。また、当該キャリアテープ用紙1は、上述のように断熱性に優れることで、収容される電子部品のヒートシールの際の熱影響を抑え、不良品発生率を低減することができる。
基紙5の密度が上記下限未満の場合は、強度が低下し、その結果、ヒートシールにおける接着性や、キャビティ部等の加工性が低下する。逆に、基紙5の密度が上記上限を超える場合は、断熱性が低下することによるヒートシールの際の接着性の低下や、水分の付着による寸法安定性の低下による走行性の低下が生じる。
なお、キャリアテープ用紙の密度は、JIS−P8118(厚さ及び密度の試験方法)に準拠して測定した値である。各層の密度については、例えば基紙から表層を剥離した中層及び裏層のみの状態の基紙、及びさらに裏層を剥離し中層のみの状態の基紙それぞれの厚さ及び坪量を測定し、算出して求めることができる。
ここで、各層の密度を表層の密度以上とする手段としては、例えば、各層を構成するパルプ種やフリーネス等を調整する方法、各層の内添剤の量等を調整する方法、表層に嵩高剤を配合する方法、両面に塗工する塗工液の塗工量を調整する方法等を挙げることができる。
基紙5の厚さは、300μm以上であり、320μm以上1,200μm以下が好ましく、350μm以上700μm以下がさらに好ましい。基紙5の厚さが上記下限未満の場合は、断熱性が低下し、その結果、寸法安定性が低いことで走行不良を起こしやすくなったり、ヒートシールにおける接着性が低下したりする。また、薄いことで加工性が低下したり、電子部品の収容性が低下することとなる。逆に、基紙5の厚さが上記上限を超えると、加工性などが低下するおそれや、通常の収納機を用いての走行が困難になる場合がある。なお、この厚さはJIS−P8118(厚さ及び密度の試験方法)に準拠して測定した値である。
基紙5は、多層抄きによりこのような3層構造にすることができる。本発明において、基紙はこの3層構造に限らず、中層を複数有する4層、又はそれ以上の多層構造であってもよい。ここで、多層抄きとするのは、各層間でパルプ繊維同士に適度な絡みあいが生ずるため各層の適度な一体性が得られるからである。また、多層抄きでは、各層の原料の構成を自由に変更でき、例えば、古紙パルプを中層に配合しつつ、表層及び裏層にバージンパルプを使用することや、表層、中層及び裏層の各々で濾水度を調整することができ、各層の目付け量を調整することも容易にでき、本件発明の課題解決に適した基紙の構成を容易に得ることが可能であると共に、リサイクルに貢献する古紙パルプを使用しつつ品質の確保を容易に達成することができるといった利点がある。
また、坪量の高いキャリアテープ用紙においては、多層抄きとすることにより、高い生産性を得ることができるといった利点がある。すなわち、坪量の高いキャリアテープ用紙を単層で製造する場合には、抄紙機での脱水性、乾燥性が極めて悪く、生産スピードが低くなる場合があり、また、低坪量の単層紙を後に貼り合せる製造方法では、単層紙の製造とは別に貼り合せの工程が必要となり生産効率が低下する場合がある。これに対し、多層抄きとするとこれらを解決することができる。
基紙5の各抄紙層(表層2、中層3及び裏層4)に用いる原料パルプとしては、例えば広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ、離解・脱墨・漂白古紙パルプ、あるいは、ケナフ、麻、葦等の非木材繊維から化学的に又は機械的に製造されたパルプ等の公知の種々のパルプから一種又は数種を適宜選択して使用することができる。ただし、表面実装部品への影響を考慮し填料を減少させる必要がある場合は、古紙パルプよりもバージンパルプを使用することが好ましい。
特にキャリアテープ用紙1の表層2及び/又は裏層4においては、低密度性、電子部品を収納する凹部や貫通孔形成の役割、トップテープやカバーテープとの接着性等、各種品質特性等をバランスよく、効率的に達成するために、LBKPとNBKPとを混合して用いることが好ましい。
特に、表層2においてはNBKPを5質量%以上70質量%以下含有することが好ましく、30質量%以上60%以下含有することがさらに好ましい。このようにNBKPの含有量を比較的高くすることで、低密度化を達成できる。
表層2のNBKPの含有量が5質量%以下の場合は、十分な低密度化を達成できなくなる場合がある。逆に、表層2のNBKPの含有量が70質量%を超えると、表面性が悪くなる結果、良好な地合いを得ることが難しくなり、トップカバーテープ等との接着性にばらつきが生じやすく、トップカバーテープ等を剥離する際にキャリアテープの走行が安定しないことがある。
また、表層2の低密度化のためには、LBKP及びNBKPに加えて、TMPを混合して用いることも好ましい。このTMPの含有量としては、5質量%以上20質量%以下が好ましい。
表層2のTMPの含有量が5質量%未満の場合は、パルプの配合比のみによっては十分な低密度化を達成することができない。逆に、表層2のTMPの含有量が20質量%を超える場合は、表面性が悪くなる結果、良好な地合いを得ることが難しくなり、トップカバーテープ等との接着性にばらつきが生じやすく、トップカバーテープ等を剥離する際にキャリアテープの走行が安定しないことがある。
他方、特に中層3においては、機械パルプを含有させることが好ましい。また、機械パルプに加え、LBKP及びNBKPを混合して用いるのが好ましい。機械パルプを含有させることにより、中層3の地合を良好にし、地合ムラを起点とした折れ、しわの発生が防止される。さらに、機械パルプを含有させることで中層3の柔軟性が向上し、カセットリール等に捲き付ける場合に発生する湾曲した形状に適応できる特性となり、折れ、しわ防止効果をいっそう発揮する。
好適な機械パルプとしては、グランドウッドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、プレッシャライズドグランドウッドパルプ(PGW)などが挙げられる。これら機械パルプの中でも結束繊維や紙粉の発生が少ないサーモメカニカルパルプ(TMP)、プレッシャライズドグランドウッドパルプ(PGW)が特に好ましい。
中層3における機械パルプの含有量は5質量%以上が好ましく、10質量%以上とすることが中層3にクッション性を持たせ、表面の折れ、しわを防止する点でより好ましい。なお、機械パルプの含有量が多いと、強度が低くなり、断面からの紙粉発生や中層3での層間剥離の懸念があるため、30質量%以下、特には20質量%以下が好ましい。
ここで中層3に機械パルプを含有させるにあたって、古紙パルプをその原料とすることで機械パルプを含有させることが可能である。例えば、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ、又は離解・脱墨・漂白古紙パルプ等を中層の原料とすればよい。これらの古紙パルプの中でも、特に中層3の原料としては、表面強度や剛度、引張強度や層間強度などが高く、かつ機械パルプを含みクッション性に優れる茶古紙やクラフト封筒古紙から製造される古紙パルプが、紙中の灰分が10%未満でありキャリアテープ用紙に用いた場合に強度低下が少なく好適である。
ここで、基紙に用いる原料パルプのフリーネスは400〜480ccとすることが好ましく、450〜480ccとすることがより好ましい。このようにフリーネスを比較的高い値に設定することで基紙の低密度化を比較的容易に達成することができる。なお、特に低密度化が必要な表層に用いる原料パルプにおいて、上記範囲のフリーネスとすることが好ましい。
原料パルプのフリーネスが上記下限未満の場合は、容易な低密度化が困難になるおそれがある。逆に、このフリーネスが上記上限を超える場合は、緻密度合いが悪くなり、シールの際の作業性や、接着性が低下したり、加工適性が低下するおそれがある。
なお、フリーネスは、各層を手作業にて層間剥離させ、JIS−P8220に準拠して標準離解機にて各層の試料パルプを離解処理したのちに、JIS−P8121に準拠してカナダ標準濾水度試験機にて測定した濾水度の値である。
一方、キャリアテープ用紙1においては、表層2及び裏層4のフリーネスを表層2及び裏層4に隣接する中層3のフリーネスと100cc以下の範囲内のフリーネス差異とすることが好ましく、より好ましくは90cc以内の差異に抑えることが高温、高湿な条件で保管された後等でもキャリアテープ用紙の変形やカールが少なく、走行不良を起こすことなく良好に使用でき、コアに捲き取る際の屈曲追随性に優れるキャリアテープを得ることができるためより好ましい。表層2及び裏層4のフリーネスを裏層4に隣接する中層3のフリーネスよりも100cc以下のフリーネス差異に調節することにより、カール調整がより容易となる。ただし、表層2及び裏層4のフリーネスが裏層4に隣接する中層3のフリーネスよりも100ccを超えて差が生じる場合には、表層2及び裏層4と裏表層2及び面層4に隣接する中層3との繊維の絡み合いが悪くなり、キャリアテープとしたときに直径約50mmのコアに捲き取る際、あるいは捲き戻される際に発生する湾曲形状の変化にともなう曲げ応力やしごきの力による層間剥離が生ずるおそれが高まるためフリーネスの差は100cc以下とするのが望ましい。なお、層間剥離が生じた場合にはトップカバーテープを剥離する際にキャリアテープの走行が安定しないし、さらにチップ状電子部品を所定位置にセットできないなどの不都合が発生する。
基紙5においては、各層を形成するための原料パルプ又はパルプスラリー中に、内添剤を必要に応じて添加することができる。この内添剤としては、例えば硫酸バンド等の薬品定着剤、ロジン等のサイズ剤、澱粉等の紙力増強剤、ポリアクリルアマイド等の濾水・歩留り向上剤、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂等の耐水化剤、消泡剤、塩基性染料、酸性染料、アニオン性直接染料、カチオン性直接染料等の染料等を適宜用いることができる。内添される内添サイズ剤及び紙力増強剤については、以下に詳述する。
(内添サイズ剤)
上記基紙5の各層には、通常、内添サイズ剤が内添される。上記内添サイズ剤は、サイズ性を有することで、特に断面における低吸水性を高めることができ、高温、高湿な条件で保管された後等でも、走行不良を起こすことなく良好に使用できるという当該キャリアテープ用紙1の効果を高める。
特に、中層3が内添サイズ剤を含有し、この内添サイズ剤の中層3における含有量が、表層2における含有量以上であるとよい。内添サイズ剤の中層3における含有量を表層2における含有量以上とすることで、基紙5の芯となる中層3の密度を表層2の密度以上とすることができる。このような当該キャリアテープ用紙1によれば、中層3の強度が相対的に高くなり加工性、寸法安定性等をより高めることができる。
ここで、各層の内添サイズ剤の含有量は、各層のパルプスラリーにおける全固形分に対する内添サイズ剤の含有量(配合量)とする。なお、他の内添剤の含有量も同様である。
また、本件発明者らの知見では、キャリアテープ用紙抄造時に含有された内添サイズ剤が、抄紙時の脱水及び乾燥により表層2や裏層4表面に移動し、基紙の表面等に設けた樹脂層6a及び6bの効果を阻害する場合が有る。そこで、内添サイズ剤の各層の含有量を調整する、すなわち、表層2及び裏層4における内添サイズ剤の含有量を中層における含有量以下とすることで、樹脂層6a及び6bを形成する樹脂との相溶性が抑えられ、内添サイズ剤が表出することを抑制することができる。従って、当該キャリアテープ用紙1によれば、断面における低吸水性を維持しながら、断熱性、寸法安定性、表面に貼着されるカバーテープとの接着性等を高めることができる。
この内添サイズ剤の中層3における含有量としては、0.3質量%以上2質量%以下が好ましく、0.3質量%以上1質量%以下がさらに好ましい。中層3における内添サイズ剤の含有量を0.3質量%以上とすることで、当該キャリアテープ1は断面吸水性を効果的に低下させることができる。一方、内添サイズ剤の含有量を2質量%以下とすることで、この内添サイズ剤が表面又は裏面に表出し、断熱性やカバーテープ等との接着性を低下させることをより効果的に抑えることができる。
また、この内添サイズ剤は、基紙の表層2及び/又は裏層4の少なくとも一方の層に含有させることも可能であるが、表層2及び裏層4における含有量としては0.02質量%以上0.12質量%以下であることが、基紙5の低密度化のため、また、塗工液の適度な含浸のため好ましい。内添サイズ剤の表面近傍の含有量を抑えることで、低密度化の達成と共に、塗工液とこの内添サイズ剤とが相溶することによるトップカバーテープ等との接着性の低下を効果的に抑えることができる。
なお、基紙の各層における内添サイズ剤の含有量又は含有率を調整する手段としては、例えば、各層における原料スラリー中に添加する内添サイズ剤の量を調整すること等が挙げられる。
内添サイズとしては、例えばロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー、スチレンマレイン酸、アルケニル無水コハク酸等を1種又は2種以上適宜選択して用いることができる。これらの中でも、本発明者らの知見では、塗工液に用いられる表面サイズ剤やワックス(エマルジョン)との組み合わせにおいて、ロジン(エマルジョン)系内添サイズ剤が塗工液との相溶性制御に効果的であるため好適に用いることができる。
(紙力増強剤)
上記基紙5は紙力増強剤を含有していることが好ましい。基紙5が紙力増強剤を含有することで、局所的な水分の吸収によっても基紙5の変形を一定程度抑えることができる、つまり寸法安定性を高め、また、成形性向上を図ることができる。
この紙力増強剤としては、従来から紙用途に用いられる、例えばポリアクリルアミド系樹脂(PAM)、酸化澱粉、カチオン化澱粉等を1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
本件発明者らの知見では、キャリアテープ用紙抄造時に中層3に含有させた紙力増強剤が、内添サイズ剤と同様、抄紙時の脱水及び乾燥により表層2や裏層4側に移動し、表層等が有する樹脂層の効果を阻害する場合が有る。そこで、中層3における紙力増強剤の含有量を表層2及び/又は裏層4の含有量以下にすることが好ましい。
この紙力増強剤としては、ポリアクリルアミド系樹脂(PAM)が好ましく、更に好ましくはカチオン性ポリアクリルアミド樹脂を用いることで、塗工液(樹脂層)の樹脂との相溶性が抑えられ、紙力増強剤が表出することを抑制することができる。従って、当該キャリアテープ用紙1によれば、吸水による紙の変形を抑制しながら、断熱性や表面に貼着されるカバーテープ等との接着性を維持することができる。
この紙力増強剤の中層3における含有量としては、0.05質量%以上1質量%以下が好ましく、0.1質量%以上0.3質量%以下がさらに好ましい。中層3における紙力増強剤の含有量を0.05質量%以上とすることで、当該キャリアテープ1は吸水による基紙の変形を効果的に低下させることができる。一方、紙力増強剤の含有量を1質量%以下とすることで、この紙力増強剤が表面又は裏面に表出し、カバーテープ等との接着性を低下させることをより効果的に抑えることができる。
また、この紙力増強剤の基紙の表層2及び/又は裏層4の少なくとも一方の層における含有量としては0.05質量%以上0.5質量%以下が好ましく、0.1質量%以上0.25質量%以下がさらに好ましい。このように紙力増強剤の表面近傍の含有量を中層と比べ同等又は抑えることで、樹脂層6a及び6bにこの紙力増強剤が相溶することによるトップカバーテープ等との接着性の低下などをより効果的に抑えることができる。また、表層2や裏層4における紙力増強剤の含有量を抑えることで、基紙5の低密度化を達成でき、寸法安定性、ひいては走行性を向上させることができる。
なお、基紙の各層における紙力増強剤の含有量又は含有率を調整する手段としては、上述した内添サイズ剤と同様に、例えば、対応する各層における原料スラリー中に添加する紙力増強剤の量を調整すること等が挙げられる。
(内添サイズ剤と紙力増強剤との関係)
なお、上記内添サイズ剤と紙力増強剤との中層3における含有比(質量比)としては、10:0.2以上10:5以下が好ましく、10:3以上10:5以下がさらに好ましい。上記内添サイズ剤と紙力増強剤との表層2又は裏層4における含有比(質量比)としては、10:10以上10:40以下が好ましく、10:15以下10:30以下がさらに好ましい。このように内添サイズ剤と紙力増強剤との含有量を同程度とすることで、吸水性及び吸水による変形の発生を共に高いレベルでより抑えることができる。
(樹脂層)
次に、表層2の表面に塗工液の塗工により形成された樹脂層6aについて詳述する。
樹脂層6a(塗工液)に含まれる樹脂としては、SP値9以上11以下であり、かつ質量平均分子量1,000以上500,000以下であるものがよい。当該キャリアテープ用紙1によれば、表層2表面に樹脂層6aを備えることで、この樹脂層6aが熱の移動を遮断することで断熱性をさらに高める効果を有する。特に、セルロースから形成されるパルプ繊維との相溶性等の点から、樹脂層6aに上記特定範囲のSP値及び分子量を有する樹脂を含有させることで、この樹脂が基紙5内部まで浸透しにくくなり、表面に被膜した状態を形成することができる。当該キャリアテープ用紙1は、このような樹脂層6aを有することで、より優れた断熱性を発揮することができる。
上記表面サイズ剤の溶解性パラメータは、9以上11以下が好ましいが、9.5以上10.5以下がさらに好ましい。本発明のキャリアテープ用紙から製造されるキャリアテープの表面に貼着されるカバーテープは、一般にポリエチレンを主成分として含むホットメルト性ポリオレフィン樹脂から形成され、これらの樹脂のSP値は一般に8〜12程度である。また、パルプ繊維を構成するセルロースのSP値は、15〜16とされている。一方、2種の物質の接着性はそれぞれのSP値が近似している程高くなるから、キャリアテープのテープ接着面に、SP値が9〜11、さらに好ましくは9.5〜10.5である樹脂を含む樹脂層を設けることで良好な接着性を得ることが可能になる。また、セルロースのSP値と差のあるSP値を有する樹脂を含む塗工液を塗工することで、塗工液中の樹脂が基紙内部まで浸透しにくく、表面に薄い密度の高い樹脂層を形成することができる。このような樹脂層の形成により、当該キャリアテープ用紙1の断熱性がさらに高まる。
溶解性パラメータが、9以上11以下の好適に用いられる樹脂として、SP値が9.3のロジン系化合物(商標;サイズパインE−50、荒川化学工業社製)、SP値が9.7のポリエチレンイミン系樹脂(商標;ポリミンSN、ビーエーエスエフジャパン製)、SP値が10.5のポリスチレン−アクリル共重合物(商標;ポリマロン1308S、荒川化学工業社製)等を挙げることができる。
なお、本発明において、溶解性パラメータ(Solubility parameter:SP値)とは、2成分系正則溶液(Regular solution)の凝集エネルギー密度の平方根(単位(cal:cm−3)1/2)をいう。溶解パラメータ(SP値)は、「最新紙加工便覧」(昭和63年8月20日、テックタイムス発行)の第523〜524行に記載の方法等により算出することができる。
上記樹脂の質量平均分子量としては1,000〜500,000が好ましく、5,000以上50,000以下がさらに好ましい。この質量平均分子量が上記下限未満の場合は、基紙内部にこの樹脂が浸透しやすくなる場合がある。逆に、この質量平均分子量が上記上限を超える場合は、塗工液の塗布性が低下し、均一な樹脂層を形成できなくなる場合がある。
上記樹脂としては、スチレン・メタクリル酸系樹脂、スチレン・マレイン酸系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂などの共重合体等を使用することができる。これらの中でも、スチレン・メタクリル酸系樹脂が、より好ましくはスチレン・メタクリル酸共重合物のアンモニウム塩が後述するワックスエマルジョン、特にはパラフィンワックスエマルジョンとの親和性に優れ好適である。また、スチレン・メタクリル酸系樹脂は、溶解性パラメーターが10近傍であり、スチレン・メタクリル酸系樹脂を用いるとカバーテープとの接着性を維持しながら毛羽立ちのないキャリアテープ用紙を得ることができる。
スチレン・メタクリル酸系樹脂の融点は、80℃以上120℃以下とするのが好ましく、85℃以上110℃以下とするのがさらに好ましい。融点を120℃以下とすることにより、ヒートシール時の熱エネルギーによる熱融着が十分となり、十分なヒートシール接着性能向上効果を得ることができる。一方、80℃以上とすることにより、過剰に熱融着して、カバーテープ剥離時にキャリアテープの表面が毛羽立ち、または紙層破壊が生じるおそれがなくなる。
上記塗工液には、上記樹脂と共にワックスが含有されるとよい。上記ワックスとしてはパラフィンワックスが好ましい。パラフィンワックスは、上記樹脂の機能を損なうことなく好適に用いられる。
上記塗工液には、さらに水溶性高分子が含有されるとよい。上記樹脂及びワックスと水溶性高分子との配合割合は、固形分質量比で、5〜30:10とするのが好ましく、15〜25:10とするのが更に好ましい。
水溶性高分子に対する上記樹脂及びワックスの配合割合を5:10以上とすることにより、十分なヒートシール接着性能向上効果を得ることができ、30:10以下とすることにより、キャリアテープ用紙の表面強度が向上し、塗工設備等への汚れ付着がなく製造時の操作性がより向上する。
上記水溶性高分子としては、澱粉、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド(PAM)等から、1種又は2種以上を使用することができる。なかでも、表面強度やトップカバーテープ等との接着性、耐熱性などの点からポリビニルアルコール(PVA)又は澱粉を用いることが好ましい。
水溶性高分子の質量平均分子量としては、用いる水溶性高分子の種類によって差があるが、5万以上とするのが好ましい。また、ポリビニルアルコール(PVA)を用いる場合、その重合度は1,000〜2,000が好ましい。また、ケン化度は97%以上が好ましく、98%以上がさらに好ましい。ケン化度が高いPVAは、断面吸水度を好ましい範囲に調整することが容易になり、高温、高湿な条件で保管された後等でも、走行不良を起こすことなく良好に使用でき、トップカバーテープ等との接着性にも優れ、更に誘電率が絶縁体なみであり、電子部品の静電気対策に効果があり、皮膜強度が高く、吸湿性も低いため、カバーテープとのヒートシール接着性に優れ、紙粉発生の抑制に効果を発揮する。
樹脂層6aは、上記塗工液を塗工することによって容易に設けられるが、この塗工液における固形分濃度は、2質量%以上10質量%以下とするのが、断熱性、カバーテープとのピール強度及び表面の毛羽立ち防止効果のバランスの点で好ましく、4質量%以上7質量%とするのがさらに好ましい。
上記表面の塗工液の塗工又は含浸量は特に限定されないが、固形分合計量でキャリアテープ用紙1の表層2表面に0.05g/m2以上4.0g/m2以下とするのが好ましい。塗工又は含浸量を0.05g/m2以上とすることにより、キャリアテープ表面からの毛羽立ち発生がより抑制され、4.0g/m2以下とすることにより、キャリアテープ表面のカスによる欠陥の発生や中層まで表面処理剤が浸透することを抑えることができる。
裏層4の表面に形成される樹脂層6bも、樹脂層6aと同様に塗工液の塗工によって形成することができる。この塗工液は、樹脂層6aを形成する際に用いるものと同様であるので、説明を省略する。
なお、この樹脂層6bを形成するために裏層4表面に塗工される塗工液の塗工又は含浸量としては、表層2表面の塗工液の塗工又は含浸量に対して、固形分比で100%以上300%以下、より好ましくは120%以上200%以下とするのが好ましい。裏面への塗工又は含浸量をこの範囲とすることにより、裏層4の密度を表層2の密度以上とすることができる。このように、裏層4の密度を表層2の密度以上とすることで、全体として低密度な基紙2において裏層4の強度を高め、加工性を高めることができる。また、裏面への塗工又は含浸量をこの範囲とすることで、基紙の表裏差を軽減し、後述するカール値への調整が容易となり、また、キャリアテープの折れ、しわの問題を改善することができ、トップカバーテープを安定的に剥離することができる。
(キャリアテープ用紙)
当該キャリアテープ用紙1の断面吸水度としては、600秒以上900秒以下であり、700秒以上850秒以下が好ましい。断面吸水度とは、キャリアテープ用紙を厚みが40mm以上50mm以下となる範囲で荷重10Kg/cm2で重ね合わせ、断裁機にて抄紙流れ方向に切断し、切断面に対しJIS−P3001(1976)に記載の吸油度試験方法に準拠し、軽油に替えて純水を用い、純水を1滴滴下し、全部吸収し終わるまでの秒数である。
本件発明者らが見出した知見によると、断面吸水度が600秒未満では、結露による水を断面で局所的に早く吸収するので、局所的に厚み変動が起こりやすく、操業性の低下を招く問題を発現する。一方、断面吸水度が900秒を超えると、結露による水の吸収の影響は受け難いものの、層間強度の低下や紙粉発生を招く問題を発現する場合があるとともに、抄紙機系内の汚れや製造コストアップの問題が生じる。
当該キャリアテープ用紙1は、表面におけるトップカバーテープとのピール強度が1,000mN以上1,500mN以下であることが好ましく、1,100mN以上1,400mN以下であることがより好ましい。ピール強度が1,000mN未満であると、トップカバーテープとの接着性が不十分で、電子部品取り出し工程において予期しない剥離トラブルが生じる場合がある。一方、1,500mNを超えると、トップカバーテープとの接着性が過剰となり電子部品取り出し工程において基紙表面の毛羽立ちや紙層破壊が生じるおそれがある。
<ピール強度の測定方法>
なお、ピール強度は、以下の試験方法に準じて測定されるものである。
キャリアテープ用紙及びキャリアテープ用カバーテープ(日本マタイ社製、商品名「NCテープ」)を、それぞれ幅8mm、長さ300mmに切り出してサンプルを作製する。得られたサンプルについて、幅方向で端から1mm、6mmの位置にそれぞれ1mm幅で2カ所、160℃で1秒間ヒートシールし、23℃、湿度50%環境下にて15分間放置する。次に、万能引張試験機を使用し、500mm/分の速度で180度剥離させ、剥離した際の加重をもってピール強度とする。
さらに、当該キャリアテープ用紙は、下記(1)〜(6)の手順で測定される裏層側へのカール評価値が3〜10mmであることが好ましく、5〜8mmであることがさらに好ましい。裏層側へのカール評価値が3mm未満の場合は、リール捲き付け時あるいは捲き付け状態において、折れ、しわの発生の防止効果が小さく、裏層側へのカールが10mmを超える場合には、トップカバーテープ剥離時に表層側への折れ、しわが発生しやすくなる。ここで、当該カール評価値は、下記の手順から明らかになるとおり、巻き癖カールなどの外力要因によって発生する反り性ではなく、キャリアテープ用紙が本来固有にもっている反り性を評価するものである。
<カール評価値の測定方法>
カール評価値は、下記(1)〜(6)の手順により測定する。
(1)被測定キャリアテープ用紙を流れ方向10cm、幅方向10cmの正方形に裁断して測定用試料とする。
(2)被測定キャリアテープ用紙1枚につき5枚の試料を作成する。
(3)裁断された各試料を23℃の恒温環境下において湿度を65%RH、25%RH、65%RH、85%RHの順に連続的に変化させる吸脱湿処理を行う。このとき前記各湿度下においては2時間の維持時間を設ける。
(4)吸脱湿処理を3サイクル繰り返した後、さらに各試料を23℃、65%RHの環境下に3時間放置し、その後に各試料の反り具合を測定する。
(5)反り具合の測定は、反った試料の凸面を下方にして水平台上に載置し、かかる状態において4箇所各頂点から前記水平台の試料載置面までの距離をそれぞれ測定し、この4箇所測定値の平均値を基準カール値とする。
(6)5枚の試料の基準カール値の平均値をそのキャリアテープ用紙のカール評価値(mm)とする。
さらに、当該キャリアテープ用紙は、TAPPI UM522に準じて測定したZ軸方向の層間強度が1.1〜1.7であることが好ましく、1.3〜1.6であることがより好ましい。層間強度を1.1〜1.7とするためには、各層の原料の選択・調整、濾水度の調整、目付け量の調整、紙力増強剤の添加、層間に澱粉などの接着剤を噴霧するなどの方法により達成することができる。層間強度が1.1未満の場合には、層同士の繊維の絡み合いが悪くなり、リール等に捲き付ける時に発生する湾曲した形状への変化にともなう応力歪みによって、層間剥離が生じてしまう場合がある。他方、層間強度が1.7を超える場合には、紙力増強剤の添加量を多くする、層間に澱粉などの接着剤を多く噴霧するなどの対応が必要で、基紙の層間強度としても過剰な品質となり、不必要なコストアップを招くことになる。また、薬品に頼らない場合には、少なくとも各層の原料パルプ、濾水度、目付け量などをほぼ同一にする必要が生じ、本形態が所望するカール値を達成することが難しくなる。
さらに、当該キャリアテープ用紙は、表層のTAPPI T459 om−83に準じて測定した表面強度が12A以上であることが好ましく、14Aであることがより好ましい。表面強度を12A以上とするためには、原料配合率や原料パルプスラリーのフリーネス、水溶性高分子を塗工・含浸するなどの方法により達成することができる。トップカバーテープを接着する側の表面の表面強度が12A未満の場合には、トップカバーテープを剥離する工程にて、キャリアテープ用紙表面のパルプ繊維がとられ、紙粉となって操業性を悪化させる原因となる。
当該キャリアテープ用紙は、15〜20cm程度の幅の中原反に裁断された後に、製品幅(例えば8mm幅)に裁断され、パンチ加工等の適宜の加工が施され、搬送対象部品収納用のキャビティ部やテープ送り用のマージナル部等が形成されることで、キャリアテープとなる。
(キャリアテープ用紙の製造方法)
当該キャリアテープ用紙1は、上述のように公知の方法で多層抄きして基紙5を得て、この基紙の表裏面に塗工液を塗工することにより、樹脂層6a及び6bを形成することによって、製造することができる。
なお、当該キャリアテープ用紙1が備える基紙5を上記範囲の低密度とする手段としては特に限定されないが、抄紙の際のパルプ種、フリーネス等を選択する方法、後述する平滑化処理の際の圧力を調整する方法などが挙げられる。
塗工液を基紙5の表裏面に塗工するために用いる塗工装置は、特に限定されるものではなく、例えば、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、バーコーター及びゲートロールコーター、サイズプレス等のロールコーター、ベルバパコーター、カレンダー塗工機等を適宜使用することができる。
ここで、例えば裏面への塗工量を表面側への塗工量よりも多くする場合には、例えば、基紙の表裏層に塗工又は含浸する塗工液中の成分の濃度を変えたり、各面に対する塗工回数を変えたりすればよい。例えば、カレンダー塗工機によって裏層に2回塗工し、表層に1回塗工するなどすればよい。
塗工液を塗工した後には、カレンダー装置にて基紙の表裏面を平滑化処理することが好ましい。表面平滑化処理するためのカレンダー装置としては特に限定されるものではなく例えばマシンカレンダー、ソフトカレンダー、ヤンキードライヤー等が適宜使用される。表面平滑化処理は、JIS−P8151のプリント・サーフ試験機法(面積式流量計形プリント・サーフ試験機)にて、ソフトバッキングを用いてクランプ装置のバッキングを1.0MPaとして測定したときの平滑度が5.0〜8.0μmとなるようにするのが好ましい。
なお、本発明のキャリアテープ用紙は上記実施形態に限定されるものではない。例えば樹脂層は、基紙の表層及び裏層の両面ではなく、表層にのみ設けられていてもよいし、樹脂層を備えていなくともよい。樹脂層が表層のみの場合、又は樹脂層を備えていない場合においても、当該キャリアテープ用紙は、基紙が低密度であり、高温、高湿な条件で保管された後等でも、走行不良を起こすことなく良好に使用でき、かつ、ヒートシールによるシールとの接着性及び加工性に優れる。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
以下に詳述する表層、中層及び裏層がこの順に積層された構造の基紙の表面に下記塗工液を塗工し、その後、乾燥及びカレンダー処理を行って実施例1のキャリアテープ用紙を得た。
表層については、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)10質量%、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)90質量%の割合のパルプスラリーを、抄造後離解した際のカナディアンスタンダードフリーネス(CSF)が420ccになるように調整した。これにパルプ全量(固形分換算)に対し、内添サイズ剤として変性ロジンエマルジョン(近代化学工業社製「R50」)を固形分換算で0.08質量%、紙力増強剤としてカチオン性の変性ポリアクリルアミド(星光PMC社製「DS4356」)を固形分換算で0.20質量%添加し、さらに硫酸バンドを添加してpHを5に調整した抄紙原料を使用した。
中層については、NBKP50質量%、LBKP40質量%、サーモメカニカルパルプ(TMP)10質量%の割合のパルプスラリーを、抄造後離解した際のカナディアンスタンダードフリーネス(CSF)が400ccになるように調節した。これにパルプ全量(固形分換算)に対し、内添サイズ剤として変性ロジンエマルジョン(近代化学工業社製「R50」)を固形分換算で0.60質量%、紙力増強剤としてカチオン性の変性ポリアクリルアミド(星光PMC社製「DS4356」)を固形分換算で0.20質量%添加し、さらに硫酸バンドを添加してpHを5に調整した抄紙原料を使用した。
裏層については、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)10質量%、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)90質量%の割合のパルプスラリーを、抄造後離解した際のカナディアンスタンダードフリーネス(CSF)が420ccになるように調節した。これにパルプ全量(固形分換算)に対し、内添サイズ剤として変性ロジンエマルジョン(近代化学工業社製「R50」)を固形分換算で0.08質量%、紙力増強剤としてカチオン性の変性ポリアクリルアミド(星光PMC社製「DS4356」)を固形分換算で0.20質量%内添し、さらに硫酸バンドを添加してpHを5に調整した抄紙原料を使用した。
これらの抄紙原料を円網多層抄紙機にて、表層の目付け量を60g/m2、裏層の目付け量を80g/m2として、中層と抄き合せ3層構造の多層抄き紙(基紙)とした。この基紙に下記に示すように調整した塗工液をカレンダー塗工機で表面、裏面それぞれに所定量塗工して、実施例1にかかる厚さ390μmのキャリアテープ用紙を得た。
(塗工液の調整)
樹脂としてスチレン・メタクリル酸共重合体樹脂(質量平均分子量9,000、融点100℃、近代化学工業社製「ケイコートSA930」、SP値10.0)、ワックスとしてパラフィンワックス(ハリマ化成社製「ハリコートRK」)及びポリビニルアルコール(日本合成化学社製「ゴーセノールN300」)をそれぞれの固形分量が10:6:7となるように水に混合し、調製した塗工液を表面に2.3g/m2塗工した。なお、実施例において塗工量は固形分換算した値である。
また、上記塗工液を裏面に3.45g/m2塗工した。
[実施例2〜11及び比較例1〜3]
表1及び表2に示すように、各種条件を変化させて実施例2〜11及び比較例1〜3のキャリアテープ用紙を得た。なお、中層の目付量及びカレンダー線圧を調整して、各キャリアテープ用紙の厚さ及び密度を表3のとおり変化させた。その他の条件は変化させなかった。
表1中、実施例9で用いたロジンサイズ剤は、星光PMC社製「FR1900」、実施例10で用いたAKDサイズ剤は、星光PMC社製「AD1602」である。
表2中、実施例6の塗工液に用いたロジン系化合物(SP値8.5)はミサワセラミックス社製「RFサイズ880L−50」であり、実施例7の塗工液に用いたポリアクリロニトリル重合物は、アクリロニトリル100部、蒸留水180部、及び石鹸フレーク4.5部を重合容器に仕込み混合し、これに過酸化水素0.35部、第一硫酸鉄0.02部、ステアリン酸0.6部、ピロリン酸ナトリウム0.1部、及び塩化カリウム0.3部をさらに加え、この混合液を30℃に加温し、攪拌しながら24時間重合して得られたポリアクリロニトリル水分散重合物(重量平均分子量:80,000)である。
<評価試験>
以上のようにして作成した各実施例及び各比較例に係るキャリアテープ用紙についての評価試験を行った。結果は、表3に示す。なお、物性測定及び評価試験は、JIS−P8111に準拠して温度23℃±1℃、湿度50±2%の環境条件で行った。各測定方法及び試験方法についての詳細は以下のとおりである。
(厚さ)
JIS−P8118「厚さ及び密度の試験方法」に準拠して厚さを測定した。
(密度)
JIS−P8118「厚さ及び密度の試験方法」に準拠して密度を測定した。各層の密度については、基紙から表層を剥離した中層及び裏層のみの状態の基紙、及びさらに裏層を剥離し中層のみの状態の基紙それぞれの厚さ及び坪量を測定し、算出して求めた。
(断面吸水度)
各キャリアテープについて、上述した方法で断面吸水度を測定した。
(表面強度)
TAPPI T459 om−83に準じて表層の表面強度を測定した。
(ピール強度)
各キャリアテープ用紙の表面において、カバーテープとのピール強度を前述した試験法により測定した。なお、カバーテープとしては、「NCテープ」(日本マタイ社製)を用いた。
<部品取り出し試験(毛羽立ち及び走行性)>
各キャリアテープ用紙について、下記のようにして部品取り出し試験を行った。
得られたキャリアテープ用紙を裁断して、キャリアテープ原紙を得た。このキャリアテープ原紙をボトムカバーテープと共にチップ状電子部品装填装置に掛け、電子部品装填用キャビティ部形成、ボトムカバー紙貼合、電子部品装填、ヒートシールによるトップカバーテープ貼合を行って、表面実装品としての電子部品が収容されてなるキャリアテープを得た。次に、電子部品取り出し装置にてカバーテープの剥離及び走行試験を行い、以下の点で評価した。
(トップカバーテープ剥離時の毛羽立ち)
トップカバーテープ剥離後のキャリアテープ表面を観察し、ヒートシールされていた箇所の毛羽立ち量を確認した。毛羽立ちがないものを◎、わずかに毛羽立ちがあるものの電子部品取り出しに影響がなかったものを○、毛羽立ちにより電子部品取り出し作業に微少な影響があったものを△、毛羽立ちにより電子部品取り出し作業に重大なトラブルが発生したものを×とした。
(走行性)
断面に水滴を一滴ずつ垂らしながら、キャリアテープの走行性を評価した。キャリアテープの走行性が非常に良好であるものを◎、走行性が良好であるものを○、走行性が不安定であるものを△、走行性が悪いものを×とした。
(加工性)
各キャリアテープ用紙を8mm幅のテープ状にスリットして、JIS−C806−3に準拠し、東京ウエルズ社製のTWA−6500型穿孔機で2mm間隔で、幅方向(A値)1.12mm、流れ方向(B値)0.62mmの金型(1005電子部品用)を用いて角孔をあけた。20個分の角孔部分を表面から実体顕微鏡で撮影し、拡大写真により角孔寸法を測定した。角孔の流れ方向の長さ(b)最狭部の平均値(n=20)が0.58mm以上であるものを◎、角孔の流れ方向の長さ(b)最狭部の平均値(n=20)が0.56mm以上であるものを○、角孔の流れ方向の長さ(b)最狭部の平均値(n=20)が0.54mm以上であるものを△、角孔の流れ方向の長さ(b)最狭部の平均値(n=20)が0.54mm未満であるものを×とした。
表3に示すように、実施例1〜11のキャリアテープ用紙は、各評価において優れていることが分かる。すなわち、本発明のキャリアテープ用紙は、低密度であり断面吸水度が好適な範囲に制御されて、結露水(水滴)が付着した状態であっても走行性に優れ、ヒートシールによるトップシールとの接着性(ピール強度)及び加工性等に優れていることがわかる。また、各層の密度は、内添サイズ剤の含有量(配合量)、パルプ種、フリーネス、塗工液の塗工量等によって調整できることがわかる。