JP7198889B1 - クルパック紙及び紙加工品 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐落下衝撃性を有し、かつ柔軟性にも優れるクルパック紙。【解決手段】パルプを含有する紙基材を有するクルパック紙であって、ISO2493-1:2010に準拠して測定される、該クルパック紙の縦方向のISO剛度が、0.70mNm以下であり、該クルパック紙の横方向のISO剛度が、0.45mNm以下であり、JIS Z 1707:2019に準拠して測定される、該クルパック紙の突刺強度が、7.50N以上であることを特徴とするクルパック紙。【選択図】なし

Description

本開示は、クルパック紙及び紙加工品に関する。
従来、包装用紙として、抄紙の際に紙を微細に収縮させることで伸張性能を付与したクルパック紙が用いられている。クルパック紙として、例えば特許文献1では、縦方向及び横方向の比引張り強さなどを制御することで重包装用途でも破袋しにくいクルパック紙が開示されている。
一方、食品用トレイなどの包装容器や、ピロー包装用の袋などの包装体には、主にプラスチック製の材料が使用されてきた。しかしながら、環境への懸念などからプラスチック製容器に代わり、紙を使用した包装材料の検討がなされている。
国際公開第2015/008703号
クルパック紙は柔軟性に優れるものの、突刺強度が低く、例えばピロー包装用の袋の製造において、袋に製品を充填した際の耐落下衝撃性が不十分であった。通常、突刺強度の高い紙は硬くなりやすく、柔軟性に劣るため、クルパック紙の耐落下衝撃性と柔軟性を両立させることは困難であった。
本開示は、耐落下衝撃性を有し、かつ柔軟性にも優れるクルパック紙及びクルパック紙を用いた紙加工品に関する。
すなわち、本開示は、以下の<1>~<8>に関する。
<1>パルプを含有する紙基材を有するクルパック紙であって、
ISO2493-1:2010に準拠して測定される、該クルパック紙の縦方向のISO剛度が、0.70mNm以下であり、該クルパック紙の横方向のISO剛度が、0.45mNm以下であり、
JIS Z 1707:2019に準拠して測定される、該クルパック紙の突刺強度が、7.50N以上である、
ことを特徴とするクルパック紙。
<2>前記クルパック紙の前記縦方向のISO剛度が、0.10~0.20mNmであり、
前記クルパック紙の前記横方向のISO剛度が、0.10~0.20mNmである、
<1>に記載のクルパック紙。
<3>前記クルパック紙の突刺強度が、12.50N以上である、<1>又は<2>に記載のクルパック紙。
<4>前記クルパック紙を離解して得られた前記パルプに対しISO 16065-2:2007に準拠して測定される、前記パルプの長さ加重平均繊維長が、1.2mm~1.9mmである<1>~<3>のいずれか一項に記載のクルパック紙。
<5>前記紙基材の坪量が、30g/m~120g/mである<1>~<4>のいずれかに記載のクルパック紙。
<6>前記クルパック紙の比突刺強度が、0.13N/g以上である、<1>~<5>の
いずれかに記載のクルパック紙。
<7>前記クルパック紙が、前記紙基材の少なくとも一方の面に熱可塑性樹脂層を有する<1>~<6>のいずれかに記載のクルパック紙。
<8><1>~<7>のいずれかに記載のクルパック紙の成形体である紙加工品。
本開示によれば、耐落下衝撃性を有し、かつ柔軟性にも優れるクルパック紙を提供することができる。
耐落下衝撃性および袋柔軟性評価用の袋加工模式図
本開示において、数値範囲を表す「X以上Y以下」や「X~Y」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
縦方向とは紙基材における抄紙方向(MD)であり、繊維が配向する方向と同じである。また、横方向とは抄紙方向に対して垂直方向(CD)である。
クルパック処理とは、上記の通り、抄紙機上で紙を微細に収縮させることによって伸張性能を与える処理である。具体的には、例えば、抄紙機ドライヤーの一部に、ニップロールのあるエンドレスの厚い弾性ゴム製ブランケットを備えたクルパック装置を設置する。湿紙である紙匹をクルパック装置に導入し、ニップロールとブランケットで圧縮する。このとき、あらかじめ伸長させておいたブランケットが収縮することで走行する紙匹を収縮させ(クレープ付与)、破断伸びを高めることができる。なお、できた縮みは後工程で伸びないように乾燥し、固定する。
本発明者らは、紙基材を製造する際のクルパック処理により、特定のISO剛度及び突刺強度に制御することで、上記課題を解決できることを見出した。ISO剛度は、紙の折り曲げやすさを示しており、突刺強度は、紙の破れづらさを示している。クルパック紙が、上記特定のISO剛度及び突刺強度を有することは、適度な折り曲げやすさを有しつつ破れづらいことを示している。そのため、柔軟性及び耐落下衝撃性に優れるクルパック紙を得ることができると、本発明者らは考えている。
ISO2493-1:2010に準拠して測定される、クルパック紙の縦方向のISO剛度が、0.70mNm以下であり、クルパック紙の横方向のISO剛度が、0.45mNm以下であることが必要である。
ISO剛度が上記上限を超えると、折り曲げにくくなり、柔軟性が低下する。
ISO剛度は、パルプのCSF(カナダ標準ろ水度)、坪量、クルパック処理前後の速度差、紙基材を構成するパルプ広葉樹クラフトパルプ及び針葉樹クラフトパルプの質量比率などにより制御することができる。ISO剛度を大きくするには、パルプのCSFを低くする、坪量を大きくする、クルパック処理前後の速度差を大きくする、紙基材を構成する針葉樹クラフトパルプの質量比率を増やすなどの方法が挙げられる。一方、ISO剛度を小さくするには、パルプのCSFを高める、坪量を小さくする、クルパック処理前後の速度差を小さくする、紙基材を構成する針葉樹クラフトパルプの質量比率を減らすなどの方法が挙げられる。
クルパック紙の縦方向のISO剛度は、好ましくは0.05~0.60mNmであり、より好ましくは0.10~0.20mNmである。
クルパック紙の横方向のISO剛度は、好ましくは0.05~0.35mNmであり、より好ましくは0.10~0.20mNmである。
JIS Z 1707:2019に準拠して測定される、クルパック紙の突刺強度が7.50N以上であることが必要である。
突刺強度が上記下限未満であると、打痕や破れが生じやすくなり、耐落下衝撃性が低下する。
突刺強度は、坪量、クルパック処理前後の速度差、針葉樹クラフトパルプの含有量、クルパック処理時のニップ圧などにより制御することができる。突刺強度を大きくするには、坪量を大きくする、クルパック処理前後の速度差を大きくする、針葉樹クラフトパルプの含有量を増やす、クルパック処理時のニップ圧を小さくするなどの方法が挙げられる。一方、突刺強度を小さくするには、坪量を小さくする、クルパック処理前後の速度差を小さくする、針葉樹クラフトパルプの含有量を減らす、クルパック処理時のニップ圧を大きくするなどの方法が挙げられる。
クルパック紙の突刺強度は、好ましくは8.00N以上であり、より好ましくは12.5以上である。突刺強度の上限は、特に限定されないが、緩衝性低下の観点から、好ましくは18.0N以下である。
クルパック紙を離解して得られたパルプに対しISO 16065-2:2007に準拠して測定される、パルプの長さ加重平均繊維長が、1.2mm~1.9mmであることが好ましく、1.3mm~1.8mmであることがより好ましい。
長さ加重平均繊維長が上記下限未満であると、強度が弱いため耐落下衝撃性が悪化するが、一方で柔軟性が増す。長さ加重平均繊維長が上記上限を超えると、強度が強いため耐落下衝撃性が向上するが、一方で柔軟性が悪化しやすくなる。すなわち、上記範囲であると、袋柔軟性と耐落下衝撃性を両立させることができる。パルプの長さ加重平均繊維長は、使用するパルプの種類などにより制御することができる。
クルパック紙の比突刺強度は、好ましくは0.05N/g以上であり、より好ましくは0.10N/g以上であり、さらに好ましくは0.13N/g以上である。比突刺強度の上限は、特に限定されないが、緩衝性の観点から、好ましくは0.30N/g以下である。上記範囲であると、柔軟性及び耐落下衝撃性に優れる。
なお、比突刺強度は突刺強度を坪量で除した値である。
紙基材の坪量は、30g/m~120g/mであることが好ましく、60g/m~110g/mであることがより好ましく、70g/m~90g/mであることがさらに好ましい。坪量が上記下限未満であると、強度が弱いため耐落下衝撃性が悪化するが、一方で柔軟性が増す。坪量が上記上限を超えると、強度が強いため耐落下衝撃性が向上するが、柔軟性が悪化しやすくなる。上記範囲であると、袋柔軟性と耐落下衝撃性を両立させることができる。
紙基材の厚さは、50μm~300μmであることが好ましく、60μm~200μmであることがより好ましく、70μm~150μmであることがさらに好ましく、100μm~140μmであることがさらにより好ましい。
紙基材の密度は、0.30g/m~1.00g/mであることが好ましく、0.40g/m~0.90g/mであることがより好ましく、0.50g/m~0.80g/mであることがさらに好ましく、0.60g/m~0.70μmg/mであることがさらにより好ましい。
次に、クルパック紙に使用しうる材料について説明する。
紙基材を構成するパルプとしては、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等の広葉樹クラフトパルプ;針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等の針葉樹クラフトパルプ;砕木パルプ(GP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミメカニカルパルプ(CMP)、ケミグランドパルプ(CGP)等の機械パルプ;古紙パルプ;ケナフ、バガス、竹、コットン等の非木材繊維パルプ;合成パルプ等が挙げられる。これらのパルプは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
パルプは、広葉樹クラフトパルプ及び針葉樹クラフトパルプから選択される少なくとも1種以上を含有することが好ましく、広葉樹未晒クラフトパルプ及び針葉樹未晒クラフトパルプから選択される少なくとも1種以上を含有することがより好ましく、広葉樹未晒クラフトパルプ及び針葉樹未晒クラフトパルプを含有することがさらに好ましい。
パルプにおける針葉樹クラフトパルプの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上、さらにより好ましくは40質量%以上である。一方、上限は、好ましくは100質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下、さらにより好ましくは85質量%以下である。
パルプにおける広葉樹クラフトパルプの含有量は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、さらにより好ましくは15質量%以上である。一方、上限は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは65質量%以下、さらにより好ましくは60質量%以下である。
パルプの叩解度は、とくに限定するものではないが、カナダ標準濾水度(CSF)として、200~800mLが好ましく、300~700mLがより好ましい。CSFは、JIS P 8121-2:2012「パルプ-ろ水度試験方法-第2部:カナダ標準ろ水度法」に従って測定される。
紙基材には必要に応じ添加剤を用いてもよい。添加剤としては、例えばpH調整剤(炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム等)、乾燥紙力剤(ポリアクリルアミド、澱粉等)、湿潤紙力剤(ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂のいずれか)、内添サイズ剤(ロジン系、アルキルケテンダイマー等)、濾水歩留り向上剤(ポリアクリルアミド樹脂)、消泡剤、填料(炭酸カルシウム、タルク等)、染料等が挙げられる。これらの添加剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。添加剤の含有量は、とくに限定されず、通常用いられている範囲であればよい。
<紙基材の製造方法>
紙基材を製造する方法としては、パルプを含有する紙料を抄紙し、抄紙の際にクルパック処理を行う方法が挙げられる。なお、紙料は、必要に応じて添加剤をさらに含有してもよい。添加剤としては、例えば前術した添加剤が挙げられる。紙料は、パルプスラリーに必要に応じて添加剤を添加することにより調製できる。パルプスラリーは、パルプを水の存在下で叩解することにより得られる。パルプの叩解方法、叩解装置はとくに限定されず、公知の叩解方法、叩解装置を採用しうる。
叩解の際のパルプスラリーの固形分濃度は特に制限されないが、好ましくは0.5~1
0質量%程度であり、より好ましくは1~5質量%程度である。また、紙料又は紙基材におけるパルプの含有量は、とくに限定されず、通常用いられている範囲であればよい。例えば、紙料(固形分)又は紙基材の総質量に対して、60質量%以上100質量%以下が好ましく、80質量%以上100質量%未満がより好ましい。
紙基材の抄紙においては、公知の湿式抄紙機を適宜選択して使用することができる。抄紙機としては、長網式抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機などが挙げられる。これらの抄紙機にクルパック処理を実施可能なクルパック装置を設け、クルパック処理を行えばよい。
クルパック装置としては、公知のものを用いることができる。例えば、ニップロール及びエンドレスの厚い弾性ゴム製ブランケットを備えたクルパック装置が挙げられる。上記の通り、クルパック処理においては、ニップロールとブランケットとの間に紙匹を搬入し、ニップロールとブランケットにより紙匹を圧縮する際に、あらかじめ伸長させておいたブランケットを収縮させることで紙匹を収縮させてクレープを付与する。クルパック装置は、通常、抄紙機のドライヤー装置の一部に設けられ、クレープ化させたのち乾燥し、固定する。以上の様にして紙基材を得ることができる。
クルパック装置を使用した抄紙において、クルパック処理の前後の抄紙速度の差、ニップロールの圧力によって、ISO剛度や突刺強度を制御しうる。
抄紙速度は特に制限されないが、例えば、好ましくは200~1000m/分、より好ましくは300~800m/分、さらに好ましくは400~700m/分の範囲で制御すればよい。クルパック処理の前後の速度差は、特に制限されず、坪量やパルプの材料に応じて、所望のISO剛度や突刺強度が得られるように制御すればよい。好ましくは-5~-60m/分、より好ましくは-10~-50m/分、より好ましくは-15~-40m/分である。ここでのマイナス「-」はクルパック処理後の速度が遅いことを示す。
カレンダーによるニップ圧は、特に制限されず、坪量やパルプの材料、クルパック処理の前後の速度差などに応じて、所望のISO剛度や突刺強度が得られるように制御すればよい。好ましくは100kN/m~200kN/mであり、より好ましくは130kN/m~170kN/mである。
リール水分は、特に制限されず、坪量やパルプの材料、クルパック処理の前後の速度差などに応じて、所望のISO剛度や突刺強度が得られるように制御すればよい。好ましくは2.0~12.0%であり、より好ましくは5.0~9.0%である。
得られた紙基材は、そのままクルパック紙として使用することができる。防水性及び防汚性の向上の観点から、必要に応じて、紙基材の少なくとも一方の面に熱可塑性樹脂層を設けてもよい。また、クルパック紙には、上記効果を損なわない程度に、その他の樹脂層などを設けてもよい。クルパック紙は、紙基材の一方の面に熱可塑性樹脂層を有していてもよいし、紙基材の両方の面に熱可塑性樹脂層を有していてもよい。
熱可塑性樹脂層に使用される熱可塑性樹脂としては特に限定されず、公知の熱可塑性樹脂の中から、適宜選択すればよい。
具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート等のポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリブテン、ポリブタジエン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート;ポリウレタン;ポリアミド;ポリアクリロニトリル;ポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート等のポリエステルが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネートがより好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレンがさらに好ましく、ポリエチレンがよりさらに好ましい。
また、上記の材料の他、樹脂として、バイオマス樹脂や生分解性樹脂を用いてもよい。これらの樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
熱可塑性樹脂は、ラミネート層として、シート基材にラミネートできるものが好ましい。熱可塑性樹脂の中では、押し出しラミネート性とバリア性が優れることからポリエチレンが好ましい。
ポリエチレン(PE)は、大きくは直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)のように区分される。これらの中では、押し出しラミネート性および発泡性に優れることから、低密度ポリエチレン(LDPE)が好ましい。
熱可塑性樹脂層は、公知の製造方法から適宜選択して製造すればよく、例えば、溶融押出法、溶融流延法、カレンダー法等の中から、適宜選択すればよい。熱可塑性樹脂層の厚さは特に制限されないが、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。一方、厚さの上限は、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。
得られたクルパック紙の用途は特に制限されず、適宜成形体とすることで、包装紙、包装袋、包装容器などの包装体、カップ、トレイなどの各種容器といった紙加工品に使用しうる。例えば、紙皿、紙カップ、紙トレイなどの紙容器や、横型ピロー包装用、縦型ピロー包装用、三方シール包装用、四方シール包装用、給袋式充填包装用、チューブ包装用、スティック包装用の袋などに使用しうる。特に、柔軟性および耐落下衝撃性に優れるため、上述した袋用途において好適に使用することができる。
以下、各物性の測定方法について記載する。
<ISO剛度>
クルパック紙の縦方向及び横方向のISO剛度は、ISO2493-1:2010(紙及び板紙-曲げ抵抗試験方法-第1部:定速たわみ)に準拠して測定する。
具体的には、調温及び調湿処理として、23±5℃、50±10%の環境下に1日静置したクルパック紙を、幅38mm、長さ70mmに切り出したサンプルを準備する。こわさ試験機(L&W BENDING RESISTANCE TESTERコードNo.16-D、Lorentzen&Wattre社製)にて、曲げ長さを10mm、曲げ角度を15°に設定した上で、MD(縦方向)、CD(横方向)それぞれの曲げ抗力を測定した後、下記の式にてISO剛度を算出する。
Figure 0007198889000001
<突刺強度・比突刺強度>
クルパック紙の突刺強度は、JIS Z 1707:2019(食品包装用プラスチックフィルム通則)に準拠して測定する。
具体的には、調温及び調湿処理として、23±5℃、50±10%の環境下に1日静置
したクルパック紙を用いて、引張試験機(型式RTC-1210A、株式会社エーアンドディ製)にて、突刺用の治具(株式会社エーアンドディ製)を使用し、突刺速度50mm/minに設定した上で突刺強度を測定する。
また、突刺強度を坪量で除して、比突刺強度を算出する。
<パルプの長さ加重平均繊維長>
クルパック紙におけるパルプの長さ加重平均繊維長は、ISO 16065-2:2007に準拠して測定する。具体的には以下の通りである。
クルパック紙を40cm角に切り出し、それをイオン交換水に浸し、固形分濃度2質量%に調整した上で、24時間浸漬する。24時間浸漬した後、標準型離解機(熊谷理機工業株式会社製)を用いて、30分間離解処理を行い、パルプを繊維状に離解する。クルパック紙が樹脂層を有する場合には、樹脂層を除いた離解後のスラリー(パルプ繊維の分散液)を分取する。
得られたパルプ繊維のサンプルを用いて、繊維長測定機(型式FS-5 UHDベースユニット付、バルメット社製)を使用して、「長さ加重平均繊維長(ISO)」を測定する。なお、「長さ加重平均繊維長(ISO)」は0.2mm以上7.6mm以下の繊維を選択して計算した長さ加重平均繊維長である。
<坪量>
紙基材の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定する。
なお、クルパック紙が紙基材に加えて樹脂層を有する場合には、公知の方法及び下記の手順で樹脂層の材料、厚さ及び密度などを特定したうえで、紙基材の坪量を算出しうる。具体的には、所定の大きさにカットした、樹脂層を有するクルパック紙の重量(全重量)を測定し、その後、樹脂層を有するクルパック紙をセルラーゼなどの酵素水溶液に含浸させ、紙基材を完全に溶解させたことを確認の後、樹脂層のみの重量(樹脂層重量)を測定し、全重量から樹脂層重量を差し引くことで紙基材のみの重量を算出し、紙基材の坪量を測定する。
<厚さ>
紙基材の厚さ(紙厚)は、JIS P 8118:2014に準拠して測定する。なお、クルパック紙が紙基材に加えて樹脂層を有する場合には、クルパック紙の断面の電子顕微鏡(SEM)の観察像から、紙基材層、および熱可塑性樹脂層のそれぞれについて、厚みを測定する。
<密度>
紙基材の密度は、上述した測定方法により得られた厚さ及び坪量から算出する。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。また、特にことわりがない限り、「部」は、「質量部」を表す。また、実施例および比較例の操作は、特にことわりがない限り、室温(20~25℃)、常湿(40~50%RH)の条件で行った。
<実施例1>
木材をパルプ化(蒸解)したNUKP(針葉樹未晒クラフトパルプ)とLUKP(広葉樹未晒クラフトパルプ)を55:45の比率(質量比)で使用し、叩解時のスラリー濃度2質量%にて、CSF(カナダ標準ろ水度)が600mLとなるまで叩解して、パルプを調製した。
上記パルプを使用し、固形分換算でパルプ100部に対し、合成サイズ剤(荒川化学工業株式会社製、SPS400)0.15部、硫酸バンド1.2部、歩留まり剤としてポリアクリルアミド樹脂(星光PMC株式会社製、DS4433)0.65部、及び高分子凝集剤(歩留まり剤)として非イオン性ポリアクリルアミド(アライドコロイド製、パーコール47)0.035部を添加し、紙料を調製した。
上記の紙料を用いて伸縮装置(クルパック製)を備えた湿式抄紙機(ベルフォームIII型、三菱重工業株式会社製)にて、抄紙速度600m/分、リール水分7.0%で、クルパック処理前後の速度差を-20m/分、クルパック処理時のニップロールとブランケット間のニップ圧15kN/mにて抄紙し、紙の表面にクレープが付与された坪量80g/mの紙基材を得た。得られた紙基材を実施例1のクルパック紙とした。
<実施例2>
クルパック処理前後の速度差を-28.0m/分に変えた以外は、実施例1と同様の条件でクルパック紙を得た。
<実施例3>
クルパック処理前後の速度差を-30.0m/分に変えた以外は、実施例1と同様の条件でクルパック紙を得た。
<実施例4>
クルパック処理前後の速度差を-37.0m/分に変え、パルプの吐出量を調整することで坪量100g/mに変えた以外は、実施例1と同様の条件でクルパック紙を得た。
<実施例5>
叩解後のCSF(カナダ標準ろ水度)が380mLとなるまで叩解した以外は、実施例1と同様の条件でクルパック紙を得た。
<実施例6>
木材をパルプ化(蒸解)したNUKP(針葉樹未晒クラフトパルプ)とLUKP(広葉樹未晒クラフトパルプ)を40:60の質量比率に変え、クルパック処理前後の速度差を-25.0m/分に変えた以外は、実施例1と同様の条件でクルパック紙を得た。
<実施例7>
木材をパルプ化(蒸解)したNUKP(針葉樹未晒クラフトパルプ)とLUKP(広葉樹未晒クラフトパルプ)を90:10の質量比率に変え、クルパック処理前後の速度差を-40.0m/分に変えた以外は、実施例1と同様の条件でクルパック紙を得た。
<実施例8>
クルパック処理前後の速度差を-16.0m/分に変え、パルプの吐出量を調整することで坪量50g/mに変えた以外は、実施例1と同様の条件でクルパック紙を得た。
<実施例9>
木材をパルプ化(蒸解)したNUKP(針葉樹未晒クラフトパルプ)とLUKP(広葉樹未晒クラフトパルプ)を30:70の質量比率に変え、クルパック処理前後の速度差を-25.0m/分に変えた以外は、実施例1と同様の条件でクルパック紙を得た。
<実施例10>
木材をパルプ化(蒸解)したNUKP(針葉樹未晒クラフトパルプ)とLUKP(広葉樹未晒クラフトパルプ)を100:0の質量比率に変え、クルパック処理前後の速度差を-40.0m/分に変えた以外は、実施例1と同様の条件でクルパック紙を得た。
<実施例11>
水性アクリル粘着剤(EA-G34、東洋モートン株式会社製)100質量部に対して、硬化剤(CAT-EP8、東洋モートン株式会社製)3質量部を混合した塗工液を作製した。得られた塗工液を、実施例8で得られたクルパック紙の片面に、熱乾燥後の塗工量が10g/mとなるように、リバースロールコーターを用いて塗工した後、105℃、10秒間の条件で乾燥した。粘着剤を塗工した面に、リニアローデンシティポリエチレンフィルム(フタムラ化学株式会社製、LL-XLTN 25μm)をラミネートして、ク
ルパック紙を得た。
<実施例12>
実施例2で得られたクルパック紙を用いた以外は、実施例11と同様の条件でクルパック紙を得た。
<実施例13>
実施例11で作製した塗工液を、実施例5で得られたクルパック紙の片面に、熱乾燥後の塗工量が10g/mとなるように、リバースロールコーターを用いて塗工した後、105℃、10秒間の条件で乾燥した。粘着剤を塗工した面に、ナイロンフィルム(三菱ケミカル株式会社製、スーパーニール 15μm)をラミネートした。さらに実施例11で
作製した塗工液を、ラミネートした面に、熱乾燥後の塗工量が10g/mとなるように、リバースロールコーターを用いて塗工した後、105℃、10秒間の条件で乾燥した。粘着剤を塗工した面に、リニアローデンシティポリエチレンフィルム(フタムラ化学株式会社製、LL-XLTN 25μm)をラミネートして、クルパック紙を得た。
<比較例1>
木材をパルプ化(蒸解)したNUKP(針葉樹未晒クラフトパルプ)とLUKP(広葉樹未晒クラフトパルプ)を45:55の質量比率に変え、クルパック処理を行わず、パルプの吐出量を調整することで坪量30g/mに変えた以外は、実施例1と同様の条件で紙基材を得た。
<比較例2>
木材をパルプ化(蒸解)したNUKP(針葉樹未晒クラフトパルプ)とLUKP(広葉樹未晒クラフトパルプ)を45:55の質量比率に変え、クルパック処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の条件で紙基材を得た。
<比較例3>
木材をパルプ化(蒸解)したNUKP(針葉樹未晒クラフトパルプ)とLUKP(広葉樹未晒クラフトパルプ)を45:55の質量比率に変え、クルパック処理を行わず、パルプの吐出量を調整することで坪量100g/mに変えた以外は、実施例1と同様の条件で紙基材を得た。
<比較例4>
木材をパルプ化(蒸解)したNUKP(針葉樹未晒クラフトパルプ)とLUKP(広葉樹未晒クラフトパルプ)を45:55の質量比率に変え、クルパック処理前後の速度差を-15.0m/分に変えた以外は、実施例1と同様の条件で紙基材を得た。
<比較例5>
比較例1で得られたクルパック紙を用いた以外は、実施例11と同様の条件でクルパック紙を得た。
<比較例6>
比較例2で得られたクルパック紙を用いた以外は、実施例11と同様の条件でクルパック紙を得た。
得られたクルパック紙又は紙基材を用いて以下の評価を実施した。
<袋柔軟性評価>
得られたクルパック紙又は紙基材を切り出して、縦方向(MD)が200mm、横方向(CD)が150mmとなるシート1を得た。シート1に、幅10mmの両面テープ2(型式:スコッチ超強力両面テープ プレミアゴールド スーパー多用途PPS-10、3M社製)を、図1に示すように貼り付け、縦方向(MD)の中央(端から100mmの位置)で半分に折り込み、隙間が生じないように固定し、袋3を得た。
上記袋3へ水を充填し、水が零れるまでの充填量を評価した。数値が大きいほど良好であることを示す。
4:水の充填量が150mL以上。
3:水の充填量が100mL以上150mL未満。
2:水の充填量が50mL以上100mL未満。
1:水の充填量が50mL未満。
<耐落下衝撃性評価>
得られたクルパック紙又は紙基材から、上記の<袋柔軟性評価>で作製した袋3と同様の袋を作製した。袋3へ重量50gの円盤型分銅(商品番号:201900401、株式会社村上衡器製作所製)を1つ充填し、<袋柔軟性評価>で使用した幅10mmの両面テープで密閉して、分銅を充填した袋を作製した。分銅を充填した袋は、調温及び調湿処理として、23±5℃、50±10%の環境下に1日静置した。
調温及び調湿処理後の袋を、袋の天面4(充填口)を上側にして、30cmの高さからSUS板の上に落下させた。さらに、落下させた袋を、今度は袋の底面5を上側にして同様に落下させた。上記の落下試験(落下回数は1つの袋につき2回)を、新たに作製した袋を使用して1水準につき合計5試験実施し、耐落下衝撃性を評価した。数値が大きいほど良好であることを示す。
4:5試験全てにおいて、袋に破れ、打痕は生じなかった。
3:5試験全てにおいて、袋に破れは生じなかったが、打痕は生じた。
2:1~4試験において、袋に破れが生じた。
1:5試験全てにおいて、袋に破れが生じた。
実施例1~8及び比較例1~4の各物性と、評価結果を表1に示す。
Figure 0007198889000002
1:シート、2:両面テープ、3:袋、4:袋の天面、5:袋の底面

Claims (8)

  1. パルプを含有する紙基材を有するクルパック紙であって、
    ISO2493-1:2010に準拠して測定される、該クルパック紙の縦方向のISO剛度が、0.70mNm以下であり、該クルパック紙の横方向のISO剛度が、0.45mNm以下であり、
    JIS Z 1707:2019に準拠して測定される、該クルパック紙の突刺強度が、7.50N以上である、
    ことを特徴とするクルパック紙。
  2. 前記クルパック紙の前記縦方向のISO剛度が、0.10~0.20mNmであり、
    前記クルパック紙の前記横方向のISO剛度が、0.10~0.20mNmである、
    請求項1に記載のクルパック紙。
  3. 前記クルパック紙の突刺強度が、12.50N以上である、請求項1又は2に記載のクルパック紙。
  4. 前記クルパック紙を離解して得られた前記パルプに対しISO 16065-2:2007に準拠して測定される、前記パルプの長さ加重平均繊維長が、1.2mm~1.9mmである請求項1~3のいずれか一項に記載のクルパック紙。
  5. 前記紙基材の坪量が、30g/m~120g/mである請求項1~4のいずれか一項に記載のクルパック紙。
  6. 前記クルパック紙の比突刺強度が、0.13N/g以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載のクルパック紙。
  7. 前記クルパック紙が、前記紙基材の少なくとも一方の面に熱可塑性樹脂層を有する請求項1~6のいずれか一項に記載のクルパック紙。
  8. 請求項1~7のいずれか一項に記載のクルパック紙の成形体である紙加工品。
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