JP5595049B2 - クラフト紙 - Google Patents

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Description

本発明は、高い引裂強度、引張強度及び割れ防止性を発揮しつつ、印刷適性に優れるクラフト紙に関するものである。
クラフト紙は、木材をクラフト蒸解して得られるクラフトパルプを用いたものであり、主に農産物、化学薬品、小麦粉、セメント等を充填して搬送するための重包装用紙や、事務用封筒、ショッピング袋等の軽包装用紙などに使用されている。かかる包装用紙に対しては、強度が高いこと、加工適性に優れること(罫割れや角割れ等を防止すること)、印刷適性が高いこと等が要求されている。
このような包装用紙に用いられるクラフト紙の原料としては、上述の強度や加工適性の観点から針葉樹クラフトパルプが使用されている。一方、近年では、環境問題の観点から古紙パルプも多く使用されている。かかる古紙パルプを原料とするクラフト紙としては、例えば、対退色性に優れ、古紙パルプを多く配合しても強度的に実用上問題のない古紙配合クラフト紙が提案されている(特開2000−336590号公報)。この古紙配合クラフト紙は、クラフトパルプ0〜50重量%、古紙パルプ50〜100重量%からなるものであり、JIS−P8113の引張強度が3.0kN/m以上で、かつJIS−P8116の引裂き強度が縦方向で500mN以上であること、J.TAPPI No.5のワイヤー面の平滑度が15秒以上であることを特徴とする。
しかしながら、上記従来の古紙配合クラフト紙は、環境問題には配慮しているものの、特に包装用紙に用いられるクラフト紙に要求される高い強度や印刷適性を同時かつ確実に満たすものではない。つまり、高い引裂強度、引張強度及び割れ防止性を発揮しつつ、印刷適性に優れるクラフト紙は提供されていない。
特開2000−336590号公報
本発明は、これらの不都合に鑑みてなされたものであり、高い引裂強度、引張強度、割れ防止性、優れた印刷適性を発揮しつつ、環境問題にも配慮するクラフト紙の提供を目的とするものである。
上記課題を解決するためになされた発明は、
少なくとも表層、中間層及び裏層を備えるクラフト紙であって、
上記表層及び/又は裏層が主原料として新聞用紙由来の古紙パルプを60質量%以上含有する古紙パルプ層であり、
上記古紙パルプ層の原料パルプの離解フリーネスが200cc以上350cc以下であり、
上記古紙パルプ層の灰分が3質量%以上10質量%以下であることを特徴とする。
当該クラフト紙は、少なくとも表層、中間層及び裏層を備える多層構造を有する。かかる表層及び/又は裏層が、主原料として新聞用紙由来の古紙パルプを含有する古紙パルプ層であることで、古紙パルプ層の嵩高さが向上し、クラフト紙の引裂強度、引張強度、割れ防止等の加工適性を向上させると共に、リサイクル等の環境問題にも十分配慮したものとなる。さらに、このような新聞用紙由来の古紙パルプが本来含有する灰分が、当該クラフト紙の古紙パルプ層表面の印刷適性を向上させると共に、当該クラフト紙の不透明度を向上させ、その結果、中間層からの色の露出を防止又は低減することができる。
上記新聞用紙由来の古紙パルプの含有量は60質量%以上である。当該クラフト紙の古紙パルプ層における新聞用紙由来の古紙パルプの含有量を上記範囲とすることで、当該クラフト紙は、高い引裂強度、引張強度及び割れ防止性を発揮しつつ、古紙パルプ層表面における高い印刷適性をもバランス良く発揮することができる。
上記古紙パルプ層の離解フリーネスは200cc以上350cc以下である。この古紙パルプ層の離解フリーネスを上記範囲とすることにより、当該クラフト紙は、高い引裂強度、引張強度、割れ防止性及び印刷適性をバランス良く発揮することができる。
調製上記古紙パルプ層の灰分は3質量%以上10質量%以下である。このように、当該クラフト紙の古紙パルプ層の灰分を上記範囲とすることで、当該クラフト紙は、高い不透明度を発揮すると共に、古紙パルプ層表面に対して良好な印刷適性を付与することができる。
上記古紙パルプ層の密度としては、0.4g/cm以上0.7g/cm以下が好ましい。このように、当該クラフト紙の古紙パルプ層の密度を上記範囲とすることで、古紙パルプ層の嵩高さが向上し、その結果、クラフト紙に対してさらに高い引裂強度、引張強度及び割れ防止性を付与することができる。
上記表層、中間層及び裏層が多層抄きにより積層されており、この中間層が1層以上3層以下の層構造を有し、主原料として針葉樹クラフトパルプを含有するとよい。このように、当該クラフト紙の表層、中間層及び裏層が多層抄きにより積層されており、かかる中間層が1層以上3層以下の層構造を有することで、当該クラフト紙は、より一層高い引裂強度及び引張強度を発揮することができる。また、当該クラフト紙の中間層が主原料として針葉樹クラフトパルプを含有することで、当該クラフト紙は、高い引張強度の発揮に加えて不透明度をも向上することができる。
上記灰分は、珪酸を酸化物換算で50質量%以上含有することが好ましい。上記灰分が珪酸を酸化物換算で50質量%以上含有することで、当該クラフト紙の古紙パルプ層の不透明度が向上すると共に、古紙パルプ層表面におけるインクの着肉性を向上することができ、その結果、印刷適性がさらに向上する。
上記古紙パルプ層表面のベック平滑度としては、20秒以上が好ましい。このように、当該クラフト紙の古紙パルプ層表面のベック平滑度が20秒以上であることで、古紙パルプ層表面は良好な平滑性を示し、その結果、インクの着肉性や発色性が向上し、印刷適性が向上する。
以上説明したように、本発明のクラフト紙は、環境問題に配慮しつつ、高い引裂強度、引張強度、割れ防止性、優れた印刷適性を発揮することから、主として包装用として好適に使用され得る。
本発明の一実施形態に係るクラフト紙を示す模式的断面図である。
以下、適宜図面を参照しつつ本発明の実施の形態を詳細する。
図1のクラフト紙1は、表層2、裏層3及び中間層4を備えている。具体的には、このクラフト紙1は、表層2、裏層3及び中間層4が多層抄きにより積層されている構造を有する。
(表層)
表層2は、図1に示す通り、中間層4表面に積層される構造体である。かかる表層2により、クラフト紙1は、後述の通り、(a)加工時の破れ、罫線割れ、角割れ等を防止でき、(b)良好な印刷適性を確保することができ、(c)裏層3(裏層3表面の印刷を含む)及び/又は中間層4の色が表層2から露出することを防止できる。
表層2は、主原料として新聞用紙由来の古紙パルプを含有する古紙パルプ層である。この新聞用紙由来の古紙パルプは、機械パルプを多く含有し、所謂ポーラス構造を有する。その結果、表層2が主原料として新聞用紙由来の古紙パルプを含有することで、表層2の嵩高さが向上し、クラフト紙1の引裂強度、引張強度、割れ防止等の加工適性を向上させると共に、リサイクル等の環境問題にも十分配慮することができる。また、この表層2が主原料として新聞用紙由来の古紙パルプを含有することで、かかる古紙パルプが本来含有する灰分が表層2表面の印刷適性を向上させると共に、不透明度を向上させ、その結果、上述の裏層3及び/又は中間層4の色の表層2からの露出を防止又は低減することができる。
上記新聞用紙由来の古紙パルプの含有量は60質量%以上である。このように、表層2における新聞用紙由来の古紙パルプの含有量を上記範囲とすることで、クラフト紙1は、高い引裂強度、引張強度及び割れ防止性を発揮しつつ、表層2の平滑性が向上することによって高い印刷適性をもバランス良く発揮することができる。
なお、表層2の新聞用紙由来の古紙パルプの含有量が60質量%を超え、更には80質量%を超えるにつれ、クラフト紙1の引裂強度、引張強度及び割れ防止性は若干低下する傾向にあるが、一方で表層2の平滑度が高くなる傾向がある。つまり、表層2の新聞用紙由来の古紙パルプの含有量を60質量%から増量して調製することで、表層2の平滑度を調製することができる。
表層2は、上記新聞用紙由来の古紙パルプ以外に、副原料である他のパルプを含有させることができる。この副原料のパルプとしては、例えば広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプなどの化学パルプ;サーモグランドパルプ(TGP)、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)などの機械パルプ;茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙などから製造される離解古紙パルプ;離解・脱墨古紙パルプ;離解・脱墨・漂白古紙パルプ;ケナフ、麻、葦などの非木材繊維から化学的にまたは機械的に製造されたパルプ等が上げられる。中でも、クラフト紙1に対して特に高い割れ防止性を付与することができる広葉樹晒クラフトパルプを使用することが好ましい。
表層2表面における強度や印刷適性等を向上させるため、本発明の目的効果を損なわない範囲で表層2表面に水溶性物質を主成分とする水溶性組成物を塗布することができる。かかる水溶性物質としては、例えばポリアクリルアミド及びその誘導体、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、澱粉、加工澱粉、ポリスチレン−ブタジエン系、ポリ酢酸ビニル系、アクリル系などのラテックス、ワックスエマルジョン等が挙げられる。なお、かかる水溶性物質は、1種単独又は2種以上を混合して使用することができる。
表層2には、上記水溶性物質の他に、本発明の目的効果を損なわない範囲で、任意成分を適宜使用することができる。この任意成分としては、例えば軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、クレー、タルク、焼成カオリン、ホワイトカーボン、デラミカオリン、二酸化チタン、酸化チタン酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子などの填料;アルキルケテンダイマー系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸系サイズ剤、中性ロジンサイズ剤などのサイズ剤;ポリアクリルアミド系高分子、ポリビニルアルコール系高分子、カチオン化澱粉、メラミン/ホルマリン樹脂、尿素/ホルマリン樹脂などの紙力増強剤;アクリルアミド/アミノメチルアクリルアミドの共重合物の塩、カチオン化澱粉、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキサイド、アクリルアミド/アクリル酸ナトリウム共重合物などの歩留り向上剤;紙粉脱落防止剤;湿潤紙力材;厚さ向上剤;嵩高剤;着色剤;染料などを、その種類及び含有量を適宜調製して添加することができる。
表層2の厚さの上限としては、80μmが好ましく、70μmがより好ましい。また、表層2の厚さの下限としては、50μmが好ましく、60μmがより好ましい。このように表層2の厚さを、例えば公知の平坦化処理手段や原料パルプ配合手段にて上記範囲とすることで、表層2の嵩高さが向上し、その結果、クラフト紙1に対して高い引裂強度、引張強度及び割れ防止性を付与することができる。なお、この表層2の厚さが上記下限未満であると、クラフト紙1の割れ防止性が低下する場合がある。また、表層2の厚さが上記上限を超えると、クラフト紙1の引裂強度及び引張強度が低下する場合がある。なお、かかる厚さは、JIS−P8118(厚さ及び密度の試験方法)に準拠した値である。
表層2の坪量の上限としては、75g/mが好ましく、45g/mがより好ましい。また、表層2の坪量の下限としては、20g/mが好ましく、25g/mがより好ましい。このように表層2の坪量を上記範囲とすることで、クラフト紙1の引張強度及び割れ防止性をより一層向上させることができる。なお、表層2の坪量が上記下限未満であると、クラフト紙1に破れ、罫線割れ、角割れ等が発生しやすくなり、加工適性が低下する場合がある。また、表層2の坪量が上記上限を超えると、クラフト紙1の坪量が過度に高くなり、罫線割れ、角割れ等が発生しやすくなり、例えば角底袋として用いる場合の適性が低下するおそれがある。なお、この坪量は、JIS−P8124(坪量測定方法)に準拠した値である。
表層2の密度の上限としては、0.7g/cmが好ましく、0.6g/cmがより好ましい。また、表層2の密度の下限としては、0.4g/cmが好ましく、0.5g/cmがより好ましい。このように表層2の密度を上記範囲とすることで、表層2の嵩高さが向上し、クラフト紙1に対して高い引裂強度、引張強度及び割れ防止性を付与すると共に、クラフト紙1の軽量性及び加工容易性をも向上させることができる。なお、表層2の密度が上記下限未満であると、クラフト紙1の引裂強度及び引張強度が低下すると共に、表層2の不透明性が低下するおそれがある。また、表層2の密度が上記上限を超えると、クラフト紙1の割れ防止性が低下し、加工適性や取扱いの容易性が低下するおそれがある。なお、かかる密度は、JIS−P8118(厚さ及び密度の試験方法)に準拠した値である。
表層2の原料パルプの離解フリーネスの上限としては、350ccが好ましく、330ccがより好ましい。また、表層2の原料パルプの離解フリーネスの下限としては、200ccが好ましく、250ccがより好ましい。このように表層2の原料パルプの離解フリーネスを上記範囲とすることで、クラフト紙1は、高い引裂強度、引張強度、割れ防止性及び印刷適性をバランス良く発揮することができる。なお、この表層2の原料パルプの離解フリーネスが上記下限未満であると表層2の繊維が短くなり、クラフト紙1の引裂強度、引張強度、割れ防止性が低下すると共に、濾水性が低下し生産効率が低下するおそれがある。また、この表層2の原料パルプの離解フリーネスが上記上限を超えると、表層2が破れやすくなると共に、表層2表面の地合いがフロック調となり、印刷適性が低下するおそれがある。なお、この離解フリーネスは、JIS−P8220に準拠して標準離解機にて天然繊維を離解処理した後、JIS−P8121に準拠してカナダ標準濾水度試験機にて濾水度を測定した値である。
表層2の灰分の上限は、10質量%であり、8質量%がより好ましい。また、表層2の灰分の下限は、3質量%であり、4質量%がより好ましい。このように表層2の灰分を上記範囲とすることで、表層2は、高い不透明度を発揮すると共に、表面に対して良好な印刷適性を付与することができる。なお、この表層2の灰分が上記下限未満であると、表層2に裏抜け等が発生しやすくなり、印刷適性が低下する場合がある。また、この表層2の灰分が上記上限を超えると、表層2に紙粉が発生しやすくなり、印刷適性が低下する場合がある。なお、この灰分は、JIS−P8251(紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法−525℃燃焼法)に準拠して測定した値である。
表層2の灰分は、珪酸を酸化物換算で50質量%以上含有するとよい。このように、表層2の灰分が珪酸を酸化物換算で50質量%以上含有することで、表層2の不透明度が向上すると共に、表層2表面におけるインクの着肉性を向上させ、その結果、印刷特性を向上することができる。この表層2の灰分における珪酸の含有量が酸化物換算で50質量%未満であると、後述の裏層3や中間層4からの下地の色の影響を受けやすくなり、表層2の色目が不安定となる場合があり、また、表層2におけるインクの吸収性が低下し、インクの着肉性や発色性が低下する場合がある。
表層2表面のベック平滑度は、20秒以上であるとよい。このように、表層2表面のベック平滑度が20秒以上であることで、表層2表面は良好な平滑性を示し、その結果、インクの着肉性や発色性を向上させ、印刷適性を向上させることができる。なお、かかるベック平滑度は、JIS−P8119(ベック平滑度試験機による平滑度試験方法)に準拠し、デジベック平滑度試験機(東洋精機株式会社製)を使用して測定した値である。
(裏層)
裏層3は、図1に示す通り、中間層4裏面に積層する構造体である。この裏層3は、上述の表層2の場合と同様に、クラフト紙1に対して(a)加工時の破れ、罫線割れ、角割れ等の防止効果、(b)良好な印刷適性の確保、(c)表層2(表層2表面の印刷を含む)及び/又は中間層4の色の裏層3からの露出防止効果を付与することができる。
裏層3は、上述の表層2の場合と同様に新聞用紙由来の古紙パルプを主原料とし、副原料として上記広葉樹晒クラフトパルプ等を含有することができ、さらには、上記水溶性組成物や任意成分を含有させることもできる。また、裏層3の厚さ、坪量、密度、離解フリーネス、灰分、ベック平滑度等についても、上述の表層2の場合と同様である。
(中間層)
中間層4は、図1に示す通り、表層2及び裏層3に挟着される構造体である。この中間層4により、クラフト紙1は、(a)高い引張強度を発揮でき、(b)加工時の破れ、罫線割れ、角割れ等を防止でき、(c)表層2(表層2表面の印刷を含む)及び/又は裏層3(裏層3表面の印刷を含む)の色の露出を遮蔽することができる。
中間層4を構成する原料パルプの種類としては、特に限定されず、上述の表層2の場合と同様の原料パルプを使用することができる。この原料パルプのうち、クラフト紙1に対して高い引張強度を付与するために、広葉樹クラフトパルプ(広葉樹晒クラフトパルプ、広葉樹未晒クラフトパルプ)、針葉樹クラフトパルプ(針葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹未晒クラフトパルプ)、クラフト封筒古紙等を使用することが好ましく、中でも、高い引張強度に加えて不透明度を向上できる針葉樹クラフトパルプを使用することがより好ましい。また、この中間層4には、上述の表層2の場合と同様に、上記任意成分を含有させることもできる。
中間層4の坪量の上限としては、80g/mが好ましく、70g/mがより好ましく、60g/mが特に好ましい。また、中間層4の坪量の下限としては、10g/mが好ましく、30g/mがより好ましく、40g/mが特に好ましい。このように、中間層4の坪量を上記範囲とすることで、クラフト紙1の引張強度及び割れ防止性をより一層向上させると共に、不透明度をも向上させることができる。なお、中間層4の坪量が上記下限未満であると、クラフト紙1の引張強度及び不透明度が低下する場合がある。また、中間層4の坪量が上記上限を超えると、クラフト紙1の引裂強度及び引張強度は向上するものの、割れ防止性が低下するおそれがある。なお、この坪量は、JIS−P8124(坪量測定方法)に準拠した値である。
中間層4の原料パルプの離解フリーネスの上限としては、500ccが好ましく、480ccがより好ましく、450ccが特に好ましい。また、中間層4の原料パルプの離解フリーネスの下限としては、300ccが好ましく、350ccがより好ましく、380ccが特に好ましい。このように中間層4の原料パルプの離解フリーネスを上記範囲とすることで、クラフト紙1は、高い引裂強度、引張強度、割れ防止性及び印刷適性をバランス良く発揮することができる。なお、かかる中間層4の原料パルプの離解フリーネスが上記下限未満であると、クラフト紙1の引裂強度、引張強度、割れ防止性が低下するおそれがある。また、この中間層4の原料パルプの離解フリーネスが上記上限を超えると、クラフト紙1が破れやすくなる傾向にある。なお、かかる離解フリーネスは、JIS−P8220に準拠して標準離解機にて天然繊維を離解処理した後、JIS−P8121に準拠してカナダ標準濾水度試験機にて濾水度を測定した値である。
(クラフト紙)
表層2、裏層3及び中間層4を備えるクラフト紙1全体の坪量の上限としては200g/mが好ましく、170g/mがより好ましい。また、クラフト紙1全体の坪量の下限としては100g/mが好ましく、120g/mがより好ましい。このようにクラフト紙1全体の坪量を上記範囲とすることで、クラフト紙1を、その用途に応じた様々な種類の包装用紙として好適に使用することができる。なお、この坪量は、JIS−P8124(坪量測定方法)に準拠した値である。
クラフト紙1全体の厚さの上限としては、280μmが好ましく、240μmがより好ましい。また、クラフト紙1全体の厚さの下限としては、150μmが好ましく、180μmがより好ましい。このように、クラフト紙1全体の厚さを上記範囲とすることで、クラフト紙1を、その用途に応じた様々な種類の包装用紙として好適に使用することができる。なお、この厚さは、JIS−P8118(厚さ及び密度の試験方法)に準拠した値である。
クラフト紙1の引裂強度としては縦1090mN以上、横1190mN以上であるとよい。また、クラフト紙1の引張強度としては縦6.2kN/m以上、横2.5kN/m以上であるとよい。このように、クラフト紙1の引裂強度や引張強度が上記範囲であることで、クラフト紙1は良好な強度を発揮し、特に包装用紙として様々な用途に広く好適に使用され得る。なお、この引裂強度はJIS−P8116(紙−引裂強さ試験方法−エルメンドルフ形引裂試験機法)に準拠した値であり、引張強度はJIS−P8113(紙及び板紙−引張特性の試験方法−第2部:定速伸張法)に準拠した値である。
(クラフト紙の製造方法)
クラフト紙1は、上述の通り、表層2、裏層3及び中間層4が多層抄きにより積層されている。クラフト紙1の製造方法としては、一般的に製紙用途で使用される方法を用いることができる。具体的には、上記主原料のパルプ等を含む原料スラリーに対し、任意成分等を添加したものをワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート、リールパートを経て抄紙し、これを巻き取ることで製造することができる。なお、クラフト紙1の抄紙方法については、特に限定されず、例えば酸性抄紙法、中性抄紙法、アルカリ性抄紙法等を用いることができる。また、抄紙機についても特に限定されず、例えば長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網抄紙機、円網短網コンビネーション抄紙機等の抄紙機を使用することができる。
上記表層2及び/又は裏層3から構成される古紙パルプ層を製造するための原料パルプとしては、古紙パルプの製造工程の離解工程において、パルパー等を用いた離解により、新聞用紙由来の古紙パルプを解繊し離解パルプ化して得られたパルプに対して、叩解等の毛羽立たせを軽度として得られた物がより好ましい。なぜなら、このようにして得られた新聞用紙由来の古紙パルプの繊維長を長くすることができ、その結果、表層2の嵩高さが向上し、クラフト紙1の引裂強度、引張強度、割れ防止等の加工適性をより一層向上させることができるからである。
また、上記表層2及び/又は裏層3から構成される古紙パルプ層を製造するための原料パルプとしては、古紙パルプの製造工程において、脱墨工程や漂白工程を行わないことで得られた物が特に好ましい。なぜなら、このようにして得られた新聞古紙由来の古紙パルプの繊維のダメージが軽減し表層2の嵩高さが向上することとなり、クラフト紙1の引裂強度、引張強度、割れ防止等の加工適性をより一層向上させることができる。さらに、かかる脱墨工程や漂白工程を行わないことで、新聞用紙に元来含まれる填料の含有量を低下させることなく、クラフト紙1の不透明度及び印刷特性をより一層向上させることができるからである。
クラフト紙1の製造工程において、古紙パルプ層(表層2及び/又は裏層3)表面に平滑化処理を施すことができる。このように古紙パルプ層表面に平滑化処理を施すことで、古紙パルプ層表面のベック平滑度を向上させ、より一層高い印刷適性を付与することができる。かかる平滑化処理は、例えば加圧可能なロール間でクラフト紙1を加圧処理することにより実施するとよい。また、かかる平滑化処理を施す際に、クラフト紙1の古紙パルプ層表面に接するロールは、平滑な表面を有し、加熱可能な金属製ロールであるとよい。
なお、このような平滑化処理は、上述の平滑化処理の他に、クラフト紙1を抄紙する過程で、例えば一対の金属ロールを一組又は複数組備えたカレンダーロールによるカレンダー処理(マシンカレンダーによるカレンダー処理)、金属製ロールと樹脂製ロールとを一組又は複数組備えたカレンダーロールによるカレンダー処理(ソフトカレンダーによるカレンダー処理)、ヤンキードライヤーによる乾燥処理等により実施することもできる。
なお、本発明のクラフト紙は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明のクラフト紙は、中間層が2層又は3層の層構造を有するよう構成することができる。具体的には、(1)表層、2層の中間層及び裏層の4層構造とすることや、(2)表層、3層の中間層及び裏層の5層構造とすることができる。このように本発明のクラフト紙における中間層を2層又は3層構造とすることで、本発明のクラフト紙は、より一層高い引裂強度及び引張強度を発揮することができる。なお、かかる中間層の総数を4層以上とする場合には、引裂強度及び引張強度は向上するものの、割れ防止性が低下するおそれがある。
また、本発明のクラフト紙は、JIS−P3401に規定されたクラフト紙3種の品質基準を満たすよう製造することもできる。例えば、かかるクラフト紙がJIS−P3401に規定された種類記号SS−120の基準を満たす場合は、このクラフト紙は、主として軽包装(角底袋)用の紙袋に使用される。
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
[実施例1〜21]
(クラフト紙の製造)
<1>表層
表層を構成する主原料パルプとして、上述した古紙パルプの製造工程の離解工程における叩解等の毛羽立たせを軽度とし、さらに脱墨工程及び漂白工程を行わない条件で製造した古紙パルプ、副原料パルプとして広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)を表1に示す含有量で混合して、離解フリーネスを表1に示すように調製した後、硫酸バンド40kg/t、サイズ剤(近代化学工業株式会社製R22)を固形分換算で3kg/t、乾燥紙力剤(ハリマ化成株式会社製RB33)を15kg/t添加して表層用の原料スラリーを調製した。
<2>裏層
上記表層の場合と同様にして、裏層用の原料スラリーを調製した。
<3>中間層
中間層を構成する原料パルプとして、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)を100質量%とした以外は、上記表層の場合と同様にして、中間層用の原料スラリーを調製した。
次に、上記表層の原料スラリー、裏層の原料スラリー及び中間層の原料スラリーを、ワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート、カレンダーパートを経て表層、中間層及び裏層の3層構造のクラフト紙を得た。なお、ワイヤーパートではKフォーマを、プレスパートではオープンドローを有するストレートスルー型を、ドライヤーパートではダブルデッキドライヤーを用いて抄紙した。カレンダーパートでは、マルチニップカレンダーを用いて平坦化処理を行った。このような抄紙処理及び平坦化処理を調製することで、厚さ(表層、裏層それぞれの厚さ)及び坪量(表層、裏層それぞれの坪量及び全体の坪量)を表1のように変化させた。
[実施例22]
中間層を構成する原料パルプを広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)として調製した以外は、実施例1〜21と同様である。
[実施例23]
中間層を構成する原料パルプをクラフト封筒古紙として調製した以外は、実施例1〜21と同様である。
[比較例1]
表層、裏層それぞれを構成する主原料パルプ及び副原料パルプの含有量を表1のように調製した以外は、実施例1〜21と同様である。
[比較例2〜3]
表層、裏層それぞれの灰分を表1のように調製した以外は、実施例1〜21と同様である。
[比較例4〜5]
表層、裏層それぞれの離解フリーネスを表1のように調製した以外は、実施例1〜21と同様である。
[比較例6]
表層、裏層それぞれを構成する主原料パルプを針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)として表1のように調製した以外は、実施例1〜21と同様である。
[比較例7]
表層、裏層それぞれを構成する主原料パルプを広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)として表1のように調製した以外は、実施例1〜21と同様である。
(引裂強度の測定)
実施例及び比較例の引裂強度は、JIS−P8116(紙−引裂強さ試験方法−エルメンドルフ形引裂試験機法)に準拠して測定した。その結果を表2に示した。
(引張強度の測定)
実施例及び比較例の引張強度は、JIS−P8113(紙及び板紙−引張特性の試験方法−第2部:定速伸張法)に準拠して測定した。その結果を表2に示した。
(罫割れ)
実施例及び比較例の罫割れは、以下の評価基準により評価した。その結果を表2に示した。
◎:3mm未満の割れが1〜2個ある。
○:3mm以上5mm未満の割れが1〜2個ある。
△:3mm以上5mm未満の割れが3〜4個ある。
×:5mm以上の割れが多数ある。
(平滑度)
実施例及び比較例の平滑度は、J.TAPPI No.5−2:2000に準拠し、王研式平滑度計(ASAHI−SEIKO社製)を使用して、表層表面及び裏層表面の平滑度を測定した。その結果を表2に示した。
(印刷適性)
実施例及び比較例の印刷適性は、オフセット印刷機(型番:ローランドRVK−3B、マン・ローランド社製)を使用し、3000部/時間の印刷速度で、印刷インキ(墨、商品名:TYハイプラスLZ、東洋インキ(株)製)にてクラフト紙の表層表面にベタ印刷を行った。このようにして得られた印刷物について、ベタ部の着肉ムラ及び擦れの状態を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。その結果を表2に示した。
◎:ベタ部全体で、着肉ムラ及び擦れが全く認められない。
○:ベタ部の一部で、着肉ムラ又は擦れが僅かに認められる程度である。
△:ベタ部の一部で、着肉ムラ及び擦れが認められる。
×:ベタ部全体で、着肉ムラ及び擦れが多く認められる。
Figure 0005595049
Figure 0005595049
(評価)
表2に示す通り、実施例1〜23は、比較例1〜7と比較して全体的に高い引裂強度及び引張強度を発揮する傾向が認められ、かかる傾向は特に比較例7との比較において顕著であった。また、実施例1〜23は、比較例1〜7と比較して全体的に高い罫割れ防止性及び印刷適性を発揮する傾向が認められた。
以上のように、本発明のクラフト紙は、新聞用紙由来の古紙パルプを用いて製造されるものであり、資材調達及び加工の容易性に優れ、低コスト化や大量生産を実現することができ、広く好適に使用され得る。
1 クラフト紙
2 表層
3 裏層
4 中間層

Claims (4)

  1. 多層抄きにより積層され、少なくとも表層、中間層及び裏層を備えるクラフト紙であって、
    上記表層及び/又は裏層が主原料として新聞用紙由来の古紙パルプを60質量%以上含有する古紙パルプ層であり、
    上記古紙パルプ層の原料パルプの離解フリーネスが200cc以上350cc以下であり、
    上記古紙パルプ層の灰分が3質量%以上10質量%以下であり、
    上記中間層が、1層以上3層以下の層構造を有し、主原料として針葉樹クラフトパルプを含有することを特徴とするクラフト紙。
  2. 上記古紙パルプ層の密度が0.4g/cm以上0.7g/cm以下である請求項1に記載のクラフト紙。
  3. 上記灰分が珪酸を酸化物換算で50質量%以上含有する請求項1又は請求項2に記載のクラフト紙。
  4. 上記古紙パルプ層表面のベック平滑度が20秒以上である請求項1、請求項2又は請求項3に記載のクラフト紙。
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