JP3829748B2 - オフセット印刷用新聞用紙の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、画線部の白ぬけの少ないオフセット印刷適性に優れるオフセット印刷用新聞用紙の製造方法及びそのような新聞用紙を製造するのに適した抄紙機に関する。
【0002】
【従来の技術】
新聞用紙は一般的にメカニカルパルプ(MP)や脱墨パルプ(DIP)を主原料とする紙であり、紙の種類としては中・下級紙に分類される。しかしながら、新聞社は最新ニュースを記事にするためにオフセット輪転機による高速・大量印刷を行うので、一般印刷用紙以上に厳しい品質を要求されている。また、オフセット印刷機は、ここ数年のページ数の増加やカラー印刷の導入により印刷速度の上昇や印圧、転写圧、湿し水等の管理やインキローラーやブランケットの材質、インキ、刷版などの最適な組み合わせが必要であり、オフセット印刷用新聞用紙に求められる品質は、ますます、複雑で多様化している。
【0003】
一方、製紙メーカーのコストダウンや環境に対する意識の向上から、新聞用紙においてもDIPの配合率が徐々に上昇しており、70%を超えるのも珍しくない。DIPの配合率が増加すると、オフセット印刷時の印刷面の品質に様々な問題が起こるが、画線部の白ぬけの問題は最も重要視される問題の一つである。白抜けは一般的には表面強度の弱い裏面に多く発生し、特にタックの高い紅インクのベタ面で起こりやすい傾向があるため、カラー面の増大とともに大きな問題となってきている。これまで、白抜けを抑える方法としては、サイズプレスで塗工する澱粉の塗工量を増加させることや、ポリアクリルアミド等の表面強度向上剤を塗工することなどが実施されているが、いずれの方法も白抜けの発生を完全に抑えることはできず、また、澱粉の塗工量増加は乾燥負荷が大きくなるという問題があり、ポリアクリルアミドの塗工については印刷機のロール汚れを引き起こすという問題があった。また、これらの表面処理剤の塗工量の増加はネッパリ問題(新聞用紙が大量印刷された際、表面処理剤がブランケットに転移、蓄積して引き起こされるトラブル)の発生という問題もある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような状況に鑑み、本発明の課題は、オフセット印刷時に白抜けを発生せず、印刷品質に優れたオフセット印刷用新聞用紙の製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、オフセット印刷時の白抜けの発生は、紙表面上に存在しているベッセル(道管)が、インキがブランケットから転写される際に、インキの粘着力によって、紙から脱落し、ブランケットに取られることが原因であることを見出した。
【0006】
ベッセルは広葉樹材にのみ存在する道管であるが、他の繊維等との結合が弱いために、紙から脱落しやすく、また、脱落してブランケットの画線部に転移した場合、親水性であるために湿し水を吸ってインキがのらないために、白抜けとなる。ベッセル以外にも結合の弱いレイセル(放射柔細胞)等は、紙表面から剥離してブランケット上に転移しやすいが、ベッセルは大きさが0.1〜0.3mm角程度であり、パルプ繊維と比べて大きいため、白抜けとなりやすい。最近、オフセット印刷用新聞用紙の白抜けが増加している背景には、脱墨パルプ高配合による広葉樹材由来のパルプ含有率の増加や新聞用脱墨パルプの古紙原料として広葉樹パルプが比較的多く配合されたコート紙、上質紙、雑誌等の古紙の使用量が増加してきたことが挙げられる。
【0007】
本発明者らは、オフセット印刷時に白抜けのない新聞用紙を得るべく鋭意検討を重ねた結果、抄紙機上のプレスパートの構成を適切にすることによって達成できることを見出した。すなわち、少なくとも2機のプレスロールが設置された抄紙機のプレスパートにおいて、最終プレスロールにて紙のワイヤー面からフェルトを介して脱水が行われる抄紙機でオフセット印刷用新聞用紙を抄造することで、上記課題が解決されることを見出した。また、本発明の製造方法によれば、ベッセルを含むパルプである広葉樹由来のパルプの含有率が3 %以上であっても、白抜けの抑制効果が顕著である。また、ワイヤー面の表面処理剤の塗工量が0.8g/m2以下の低塗工量であっても、白抜けの抑制効果が顕著である。
【0008】
【発明の実施の形態】
オフセット印刷時に発生する白抜けは、紙表面に存在する結合力の弱いベッセルが、インキがブランケットから紙へ転写される際に、インキの粘着力によりブランケットに取られることが原因で発生することを見出したが、ベッセルは元々結合力が弱く、その結合力を内添の薬品や外添塗工によって強くするには限界がある。従って、原料パルプ中に存在しているベッセルを抄紙機上でいかに紙表面から排除するかが白抜け防止のポイントであり、排除しきれずに紙表面に結合の弱いベッセルが留まった場合に、印刷時にインキによってブランケットにとられ、白抜けが発生しやすくなる。
【0009】
一般的に紙のワイヤー面(裏)はワイヤーパートでの脱水により微細繊維等が抜けやすいため表面強度がフェルト面(表)面より低くなる傾向にあるので、特に紙のワイヤー面に存在するベッセルを紙から脱落させることが重要である。すなわち、本発明は、最終プレスロールにおいて、ワイヤー面側からフェルトを介して脱水させることによって、紙表面に弱い結合状態で付着しているベッセルを水とともに紙表面から排除するものである。最終プレスロールでワイヤー面側からフェルトを介して脱水を行わない場合、表面強度が弱いワイヤー面に多くのベッセルが存在することになり、ブランケットへ取られるベッセルが多くなり、白抜けの発生が増加するのである。
【0010】
プレスロールの線圧は通常のロールプレスであれば50〜150kN/m、シュープレスであれば、100〜1200kN/m程度であることが望ましいが、特に指定するものではない。また、一般的には、ロール硬度は高く、フェルトは通気性に優れたものほど脱水性は高いが、本発明では特に限定されるものではない。
【0011】
本発明は、パルプ分として広葉樹剤由来のパルプの含有率が3 重量%以上である場合においても、顕著な効果をもたらす。脱墨パルプは、それを回収した時期、場所、条件によっても品質が異なるが、脱墨パルプ中の広葉樹材由来のパルプの含有率は通常30〜70重量%と考えられる。新聞用紙は通常、脱墨パルプ以外のパルプは針葉樹由来のパルプを使用するので、広葉樹材由来の含有率が3 重量%以上となるために必要な脱墨パルプの配合率は、4 重量%以上である。
【0012】
本発明で用いられる抄紙機は、両面脱水機構を有しているギャップフォーマー、ハイブリッドフォーマー、オントップフォーマーなどが望ましいが、これに限定されるものではなく、酸性抄紙、中性抄紙の何れにも使用できる。また、プレス機としては、ストレートスルー型、インバー型、リバース型の何れでも、また何れの組み合わせでも使用でき、また、これらを組み合わせた総体としては、ツインバー+3P型、トライニップ+4P型、トライベント+4P型、バイニッププレスなど一般の抄紙機に使われているものなどが使用でき、脱水方式としては、通常行われているサクションロール方式やグルーブドプレス方式など通常の方法が使用できる。ロールの材質としてはセラミックが望ましいが、特に限定されるものではなく、シュープレスの使用も可能である。
【0013】
本発明で製造されるオフセット印刷用新聞用紙のパルプ原料としては、特に限定されるものではなく、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、脱墨パルプ(DIP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)など、一般的に抄紙原料として使用されているものであればよい。また、得られるオフセット印刷用新聞用紙の物性は、少なくとも、通常のオフセット印刷用新聞用紙程度の引張り強度、引裂き強度、不透明度、摩擦係数などを有するレベルであれば良い。
【0014】
本発明で製造されるオフセット印刷用新聞用紙は、表面強度を向上させるために水溶性高分子を主成分とする表面処理剤を塗工することが好ましい。表面処理剤中の水溶性高分子としては、例えば、澱粉、酵素変性澱粉、熱化学変性澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉(ヒドロキシエチル化澱粉など)、カチオン化澱粉などの澱粉類、ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、カルボキシル変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、末端アルキル変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類、ポリアクリルアミド、カチオン性ポリアクリルアミド、アニオン性ポリアクリルアミド、両性ポリアクリルアミドなどのポリアクリルアミド類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース類などが挙げられる。これらは、単独、もしくは2種類以上混合して用いられる。
【0015】
表面処理剤で用いられる水溶性高分子は、表面強度向上(言い換えれば、紙粉抑制)の点では、主体的な役割を果たす。しかし、一方で、水溶性高分子は、新聞用紙固有の問題であるネッパリ問題(新聞用紙が大量印刷された際、表面処理剤がブランケットに転移、蓄積して引き起こされるトラブル)の原因ともなる。表面強度向上効果、ネッパリ問題とのバランスを考えれば、水溶性高分子としては、前述の例の中でも、澱粉類を好ましく使用でき、その中でも、酸化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉が、最も好ましい。
【0016】
表面処理剤の塗布量は、製造されるオフセット印刷用新聞用紙の品質(サイズ性、カラー印刷適性など)に応じて決定されるべきであり、特に限定されるものではないが、塗布量(両面当たり)としては0.1〜2.0g/m2が適当である。例えば、塗布量が0.1g/m2未満の場合、サイズ性付与、及び表面強度向上の点で、表面処理剤の効果が十分に発揮されない。一方、塗布量が2.0g/m2より高い場合、ネッパリ問題を引き起こす可能性が高くなる。特に本発明においては、表面処理剤が澱粉類である場合、紙のワイヤー面側の塗布量0.1〜0.8g/m2範囲で十分な白抜け抑制の効果が得られる。
【0017】
【実施例】
以下、実施例にて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、脱墨パルプ中の広葉樹材由来のパルプ含有率は以下に示す方法にて測定した。
【0018】
<広葉樹(L)材由来のパルプ含有率の測定方法>
離解後の繊維を顕微鏡観察で観察し、目視でカウントした。
【0019】
[実施例1]
製紙用原料パルプとして、新聞脱墨パルプ(ろ水度150ml、広葉樹材由来のパルプ含有率25重量%)、TMP(ろ水度80ml)、NKP(ろ水度500ml)を80:15:5の配合割合で混合したパルプスラリーに、填料としてパルプ絶乾重量当たりホワイトカーボンを1.0重量%となるように添加して紙料を調製した。この紙料を用いて、ギャップフォーマー型抄紙機にて、プレスパートをツインバープレス+ストレートプレスとし、最終プレスロールであるストレートプレスをシュープレスとして、線圧1000kN/mでワイヤー面からフェルトを介して脱水し、抄速1000m/分で、坪量43g/m2の新聞用紙原紙を抄造し、さらにオンマシーンのサイズプレスコーターで澱粉を塗工量がフェルト面、ワイヤー面ともに0.5g/m2となるように塗工し、オフセット印刷用新聞用紙を得た。このオフセット印刷用新聞用紙について、以下に示す方法にて、オフセット印刷時の白抜けを評価し、結果を表1に示した。
【0020】
<白抜け評価方法>
東芝オフセット輪転機を用い、印刷速度900rpm、湿し水膜厚0.9μmでインクテック製紅インキ(R紅K)を2万部印刷した。オフセット印刷用新聞用紙のワイヤー面について、ベタ部の白抜け数を目視で測定し、100cm2あたりの個数で評価した。
【0021】
[実施例2]
プレスパートの最終プレスロールにおいて、線圧を950kN/mにした以外は、実施例1と同様にしてオフセット印刷用新聞用紙を製造し、オフセット印刷時の白抜けを評価し、結果を表1に示した。
【0022】
[実施例3]
プレスパートの最終プレスロールにおいて、線圧を800kN/mにした以外は、実施例1と同様にしてオフセット印刷用新聞用紙を製造し、オフセット印刷時の白抜けを評価し、結果を表1に示した。
【0023】
[比較例1]
プレスパートの最終プレスロールにおいてフェルト面からフェルトを介して脱水した以外は、実施例1と同様にしてオフセット印刷用新聞用紙を製造し、オフセット印刷時の白抜けを評価し、結果を表1に示した。
【0024】
[比較例2]
プレスパートの最終プレスロールにおいて、フェルト面からフェルトを介して脱水した以外は、実施例2と同様にしてオフセット印刷用新聞用紙を製造し、オフセット印刷時の白抜けを評価し、結果を表1に示した。
【0025】
[比較例3]
プレスパートの最終プレスロールにおいて、フェルト面からフェルトを介して脱水した以外は、実施例3と同様にしてオフセット印刷用新聞用紙を製造し、オフセット印刷時の白抜けを評価し、結果を表1に示した。
【0026】
【表1】
表1に示されるように、広葉樹材由来のパルプの含有率が20%であっても、最終プレスロールにてワイヤー面からフェルトを介して脱水することにより、顕著に白抜けが抑制された。また、最終プレスロールの線圧が高い方が白抜けの抑制に効果があった。
【0027】
[実施例4]
製紙用原料パルプとして、新聞脱墨パルプ(ろ水度150ml、広葉樹材由来のパルプ含有率20重量%)、TMP(ろ水度80ml)、NKP(ろ水度500ml)を15:65:20で配合割合で混合したパルプスラリーに、填料として炭酸カルシウムをパルプ絶乾重量当たり0.8重量%となるように添加して紙料を調製した。この紙料を用いて、ギャップフォーマー型抄紙機にて、プレスパートをトライニッププレス+ストレートプレス(シュープレス)として、最終プレスであるストレートプレス線圧1000kN/mでワイヤー面からフェルトを介して脱水し、抄速1200m/分で、坪量41g/m2の新聞用紙原紙を抄造し、さらにオンマシーンのサイズプレスコーターで澱粉を塗工量がフェルト面、ワイヤー面ともに0.5g/m2となるように塗工し、オフセット印刷用新聞用紙を製造し、実施例1と同様の方法でオフセット印刷時の白抜けを評価し、結果を表2に示した。
【0028】
[実施例5]
プレスパートの最終プレスロールにおいて、線圧を950kN/mにした以外は、実施例4と同様にしてオフセット印刷用新聞用紙を製造し、オフセット印刷時の白抜けを評価し、結果を表2に示した。
【0029】
[実施例6]
プレスパートの最終プレスロールにおいて、線圧を800kN/mにした以外は、実施例4と同様にしてオフセット印刷用新聞用紙を製造し、オフセット印刷時の白抜けを評価し、結果を表2に示した。
【0030】
[比較例4]
プレスパートをトライニッププレスで最終プレスロールをシュープレスとし、線圧1000kN/mでフェルト面からフェルトを介して脱水した以外は、実施例4と同様にしてオフセット印刷用新聞用紙を製造し、オフセット印刷時の白抜けを評価し、結果を表2に示した。
【0031】
[比較例5]
プレスパートをトライニッププレスとして、最終プレスロール線圧950kN/mで、フェルト面からフェルトを介して脱水した以外は、実施例5と同様にしてオフセット印刷用新聞用紙を製造し、オフセット印刷時の白抜けを評価し、結果を表2に示した。
【0032】
[比較例6]
プレスパートをトライニッププレスとして、最終プレスロール線圧800kN/mで、フェルト面からフェルトを介して脱水した以外は、実施例6と同様にしてオフセット印刷用新聞用紙を製造し、オフセット印刷時の白抜けを評価し、結果を表2に示した。
【0033】
【表2】
表2に示されるように、広葉樹材由来のパルプの含有率が2%と低くとも、最終プレスロールにてフェルト面からフェルトを介して脱水した比較例4〜6では白抜けの発生が多かった。一方、最終プレスロールにてワイヤー面からフェルトを介して脱水した実施例4〜6では顕著に白抜けが抑制された。
Claims (2)
- 抄速が 1,000m/ 分以上であり、少なくとも2機のプレスが設置されており、かつ最終プレスがシュープレスである抄紙機において、全パルプに対して脱墨パルプ由来の広葉樹パルプを 3 重量%以上含有する紙料を抄紙して得られる湿紙を、該シュープレスにて線圧 800kN/m 以上で、紙のワイヤー面からフェルトを介して脱水し、更に表面処理剤を塗工することにより、ワイヤー面の白抜けを 5 個 /100cm 2 以下とすることを特徴とするオフセット印刷用新聞用紙の製造方法。
- ワイヤー面の澱粉塗工量が 0.1 〜 0.8g/m 2 であることを特徴とする請求項1記載のオフセット印刷用新聞用紙の製造方法。
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