以下で、各実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
(実施形態1)
<全体構成>
図1に、本発明の実施形態1に係るクラッチ駆動装置14を備えた車両1の模式図を示す。車両1は、例えば、自動2輪車であり、車体2と、前輪3と、後輪4とを備える。車体2は、図示しないフレームを有する。車体2のフレームには、後輪4に対して回転駆動力を供給するためのエンジンユニット10が取り付けられている。
エンジンユニット10は、エンジン11と、変速機12と、クラッチユニット17とを備えている。クラッチユニット17は、クラッチ13と、クラッチ駆動装置14とを備えている。クラッチ13は、エンジン11の図示しないクランクシャフトの回転を、変速機12に対して伝達可能に構成されている。すなわち、クラッチ13は、変速機12に対する前記クランクシャフトの回転の伝達及び非伝達を切替可能に構成されている。
図2は、クラッチユニット17の概略構成を示す部分断面図である。図2に示すように、クラッチ13は、メインシャフト15上に設けられている。メインシャフト15は、例えば、変速機12の入力軸である。クラッチ13は、クラッチハウジング21と、クラッチハウジング21の内方に配置されるクラッチインナー25とを有する。
クラッチハウジング21は、メインシャフト15が貫通する底部21aと、底部21aの外周に設けられている円筒状の周壁部21bとを有する有底円筒状である。底部21a及び周壁部21bは、一体に形成されている。クラッチハウジング21は、メインシャフト15に対して同心状に配置されている。クラッチハウジング21の周壁部21bの内方には、クラッチインナー25が配置されている。
クラッチハウジング21は、底部21aが減速ギア22と接続されている。減速ギア22は、前記クランクシャフトが有するギア(図示省略)と噛み合うことにより、該ギアと一体で回転する。クラッチハウジング21及び減速ギア22は、前記クランクシャフトの回転に応じて回転し且つメインシャフト15に相対回転可能である。
クラッチインナー25は、クラッチボス26と、プレッシャ部材27と、クラッチスプリング28とを有する。クラッチボス26は、円柱状であり、その中心をメインシャフト15が貫通している。クラッチボス26は、メインシャフト15の外周面上にスプライン結合されている。これにより、クラッチボス26は、メインシャフト15と一体で回転する。
クラッチハウジング21、クラッチボス26及びプレッシャ部材27は、メインシャフト15に対し、メインシャフト15の軸方向に一方から順に並んで配置されている。プレッシャ部材27は、前記軸方向においてクラッチボス26と対向するように、メインシャフト15の軸方向外方に配置されている。クラッチボス26とプレッシャ部材27との間には、複数のクラッチプレート23及び複数の摩擦プレート24が前記軸方向に交互に並んで配置されている。
摩擦プレート24は、クラッチハウジング21の内周面に、クラッチハウジング21と一体で回転可能に設けられている。摩擦プレート24は、クラッチボス26及びプレッシャ部材27に対して回転可能である。
クラッチプレート23は、クラッチボス26の外周面に、クラッチボス26と一体で回転可能に設けられている。プレッシャ部材27は、クラッチボス26と一体で回転可能である。よって、クラッチプレート23は、プレッシャ部材27と一体で回転可能である。クラッチプレート23は、クラッチハウジング21に対して回転可能である。
プレッシャ部材27は、クラッチボス26に対して、前記軸方向に移動可能である。クラッチスプリング28は、前記軸方向において、プレッシャ部材27をクラッチボス26に向けて押すように、設けられている。これにより、クラッチボス26とプレッシャ部材27との間に配置されたクラッチプレート23及び摩擦プレート24が互いに押し付けられる。すなわち、クラッチスプリング28によって、クラッチプレート23と摩擦プレート24とが互いに接続される。このようにクラッチプレート23と摩擦プレート24とが互いに接続された状態で、クラッチプレート23と摩擦プレート24との摩擦により、クラッチボス26とクラッチハウジング21とが一体で回転する。この状態が、クラッチ13の接続状態である。
プレッシャ部材27には、前記軸方向から見て、中央部分に、プッシュロッド29が貫通している。プッシュロッド29は、前記軸方向に延びるように配置されている。前記軸方向において、プッシュロッド29の一方には、フランジ部29aが設けられている。前記軸方向において、プッシュロッド29の他方は、後述するリンク機構16を介してクラッチ駆動装置14に接続されている。プッシュロッド29は、クラッチ駆動装置14の出力によって、前記軸方向に移動可能に構成されている。プッシュロッド29が前記軸方向においてメインシャフト15から離間する方向(図3において右方向)に移動する場合、プッシュロッド29のフランジ部29aによって、プレッシャ部材27がクラッチボス26から前記軸方向に離間する方向に力を受ける。これにより、クラッチスプリング28は圧縮する方向に変形を生じるため、プレッシャ部材27がクラッチプレート23及び摩擦プレート24を押す力が低下する。
よって、摩擦プレート24とクラッチプレート23との接触圧が低下する。これにより、摩擦プレート24とクラッチプレート23との接続が解除されて、クラッチボス26とクラッチハウジング21とが相対回転する。この状態が、クラッチ13の切断状態である。
すなわち、クラッチ13は、プッシュロッド29が前記軸方向に移動することにより、接続状態と切断状態とに切り替えられる。
なお、プレッシャ部材27は、プッシュロッド29に対し、軸受27aを介して回転可能である。これにより、クラッチ13が接続状態の場合に、プレッシャ部材27は、クラッチハウジング21及びクラッチボス26と一体で回転する。
<リンク機構>
図2に示すように、リンク機構16は、回転軸31と、アーム部32とを備える。リンク機構16は、後述するクラッチ駆動装置14の出力を、クラッチ13のプッシュロッド29に伝達する。
回転軸31は、その軸方向の一方が、前記軸方向におけるプッシュロッド29の他方に接続されている。具体的には、前記軸方向におけるプッシュロッド29の他方には、前記軸方向に並んだ複数の歯を有するラック部29bが設けられている。回転軸31には、ラック部29bと噛み合うギア31aが設けられている。
以上の構成により、回転軸31の回転によって、プッシュロッド29は前記軸方向に移動する。すなわち、プッシュロッド29は、回転軸31の回転方向に応じて、前記軸方向に往復移動する。
なお、回転軸31は、クラッチ13、変速機12等が収納されているケーシング20に回転可能に支持されている。
アーム部32は、第1アーム33と、第2アーム34と、調整機構35とを備える。第1アーム33及び第2アーム34は、それぞれ、一方向に長い板状に形成されている。第1アーム33は、回転軸31に、回転軸31と一体で回転可能に接続されている。第2アーム34は、クラッチ駆動装置14の出力軸63に、出力軸63と一体で回転可能に接続されている。第1アーム33と第2アーム34とは、調整機構35を介して接続されている。
アーム部32は、クラッチ駆動装置14の出力軸63の回転を、回転軸31に伝達する。アーム部32は、クラッチ駆動装置14の出力軸63から出力される駆動力をクラッチ13に伝えるとともに、クラッチ13においてクラッチスプリング28等によって生じる反力(以下、クラッチ反力という)を、クラッチ駆動装置14の出力軸63に伝える。すなわち、出力軸63には、クラッチ駆動装置14の出力及びクラッチ13で生じたクラッチ反力が入力される。
調整機構35は、第1アーム33と第2アーム34とを、両者の間隔を調整可能に接続する。詳しくは、調整機構35は、第1調整部材91と、第2調整部材92と、調節ボルト93とを備える。
第1調整部材91は、第1アーム33に回転可能に接続されている。第2調整部材92は、第2アーム34に回転可能に接続されている。すなわち、第1調整部材91及び第2調整部材92は、それぞれ、第1アーム33及び第2アーム34に対し、一方の端部に球状部を有する棒状の接続部材94,95によって回転可能に接続されている。
接続部材94,95は、それぞれ、前記球状部が第1調整部材91及び第2調整部材92の内方に位置する。接続部材94は、第1調整部材91から第1アーム33に向かって延びるとともに、第1アーム33を貫通した状態で第1アーム33に固定されている。接続部材95は、第2調整部材92から第2アーム34に向かって延びるとともに、第2アーム34を貫通した状態で第2アーム34に固定されている。
調節ボルト93は、軸方向に長い柱状である。調節ボルト93には、軸方向の両端部に、螺旋状の溝を有するネジ部93a,93bが設けられている。ネジ部93bは、ネジ部93bのネジ先端側から見て、該ネジ先端からネジ溝が延びる方向が、ネジ部93aにおいてネジ先端からネジ溝が延びる方向とは反対方向である。調節ボルト93は、前記軸方向の中央部分に、他の部分よりも径が大きい大径部93cを有する。大径部93cは、後述するように調節ボルト93を回転させる際に、把持部として機能する。
第1調整部材91及び第2調整部材92には、それぞれ、ネジ穴91a,92aが形成されている。ネジ穴92aは、ネジ穴92aの開口端側から見て、該開口端からネジ溝が延びる方向が、ネジ穴91aにおいて開口端からネジ溝が延びる方向とは反対方向である。ネジ穴91aには、調節ボルト93の軸方向の一方の端部に設けられたネジ部93aが締結される。ネジ穴92aには、調節ボルト93の軸方向の他方の端部に設けられたネジ部93bが締結される。よって、第1調整部材91及び第2調整部材92は、調節ボルト93によって、接続されている。
上述のように、ネジ部93b及びネジ穴92aは、ネジ部93a及びネジ穴91aに対してネジ溝が延びる方向が反対方向である。よって、第1調整部材91及び第2調整部材92に対して調節ボルト93を一方向に回転させることにより、調節ボルト93は、第1調整部材91及び第2調整部材92に対する嵌合長さが増大する。第1調整部材91及び第2調整部材92に対して調節ボルト93を前記一方向とは反対方向に回転させることにより、調節ボルト93は、第1調整部材91及び第2調整部材92に対する嵌合長さが減少する。これにより、第1調整部材91及び第2調整部材92のネジ穴91a,92aに対する調節ボルト93のネジ部93a,93bの位置を変更することができる。すなわち、第1調整部材91と第2調整部材92とは、調節ボルト93によって、両者の間隔を調整可能に接続されている。
なお、第1調整部材91と第2調整部材92との間隔を調節ボルト93によって調整した状態で、ナット96,97を調節ボルト93のネジ部93a,93bに対して締結することにより、第1調整部材91及び第2調整部材92を調節ボルト93に対して固定することができる。
以上のような調整機構35の構成により、第1調整部材91と第2調整部材92との間隔、すなわち第1アーム33と第2アーム34との間隔を調整することができる。
<クラッチ駆動装置の構成>
以下で、図2から図12を用いて、クラッチ駆動装置14の構成について説明する。本実施形態におけるクラッチ駆動装置14は、モータ50(アクチュエータ)の出力に、アシスト機構70によるアシスト力を加えることによって得られる駆動力を、クラッチ13に出力する。
図3に、クラッチ駆動装置14の概略構成を拡大して示す。図2及び図3に示すように、クラッチ駆動装置14は、ケーシング40と、モータ50と、伝達機構60と、アシスト機構70と、摩擦機構80とを備える。
ケーシング40は、ケーシング本体41と、カバー42と、モータ収納部45とを有する。図4は、クラッチ駆動装置14の一部を分解して示す分解斜視図である。この図4に示すように、ケーシング本体41は、筒軸方向に延びる有底筒状である。すなわち、ケーシング本体41は、開口41aを有する。図2及び図3に示すように、ケーシング本体41内には、伝達機構60及びアシスト機構70が収納されている。図4に示すように、ケーシング本体41の底部には、凸部46が一体に形成されている。
図3に示すように、カバー42は、ケーシング本体41の開口41aを覆う。カバー42は、内部に収納空間Vを有する。収納空間V内には、摩擦機構80が配置されている。カバー42は、カバー本体43と、収納カバー部44とを有する。カバー本体43には、収納空間Vの一部を構成する第1凹部43aが形成されている。収納カバー部44には、収納空間Vの一部を構成する第2凹部44aが形成されている。カバー本体43に収納カバー部44が組み合わせられた状態で、第1凹部43a及び第2凹部44aによって収納空間Vが構成される。
カバー42には、収納空間Vが設けられている部分とは異なる部分に、伝達機構60の後述する出力軸63が貫通している。出力軸63は、ケーシング本体41の筒軸方向に、且つ、ケーシング40の外方に向かって延びている。すなわち、出力軸63の軸方向と、ケーシング本体41の筒軸方向とは一致している。
図2及び図3に示すように、モータ収納部45は、ケーシング本体41の底部に接続されている。具体的には、モータ収納部45は、ケーシング本体41に対し、出力軸63の軸方向から見て、出力軸63とは重ならない位置に取り付けられている。
モータ50は、クラッチ13を作動させるための作動駆動力を発生する。モータ50は、モータ収納部45内に、図示しない回転軸が出力軸の軸方向に沿って延びるように配置されている。
伝達機構60は、入力軸61と、中間軸62と、出力軸63とを備える。入力軸61、中間軸62及び出力軸63は、互いに平行に配置されている。入力軸61は、モータ50の出力軸である。よって、中間軸62及び出力軸63は、モータ50の出力軸に対して平行に配置されている。すなわち、入力軸61及び中間軸62は、出力軸63の軸方向に沿って延びている。
入力軸61は、その軸方向の一方が、モータ50が収納されたモータ収納部45内に位置付けられている。入力軸61の軸方向の他方は、ケーシング本体41及びカバー42によって形成された空間内に位置付けられている。入力軸61の軸方向の他方には、周方向に並んだ複数の歯を有するギア61aが設けられている。本実施形態では、ギア61aは、平歯車である。
中間軸62は、その軸方向の一方の端部が、ケーシング本体41によって回転可能に支持されている。中間軸62には、平歯車である中間ギア64が中間軸62と一体で回転可能に設けられている。中間ギア64は、入力軸61のギア61aに噛み合っている。これにより、入力軸61の回転は、中間ギア64を介して中間軸62に伝達される。すなわち、中間軸62は、入力軸61の回転に応じて回転する。
中間軸62には、ケーシング本体41によって回転可能に支持された前記一方の端部よりも軸方向の中央に近い位置に、周方向に並んだ複数の歯を有するギア62aが設けられている。本実施形態では、ギア62aは、中間軸62の軸方向において、中間ギア64よりも一側に設けられた平歯車である。
中間軸62の軸方向の他方は、カバー42によって回転可能に支持されている。中間軸62における軸方向の他方の端部には、後述する摩擦機構80の回転伝達部83が設けられている。具体的には、中間軸62における軸方向の他方の端部には、断面矩形状の回転伝達部83が設けられている(図12参照)。この回転伝達部83を含む中間軸62の一部(中間軸62の軸方向の他端部)は、ケーシング本体41の外方に突出している。回転伝達部83は、摩擦機構80の後述する回転板81の貫通穴81a内に挿入される(図11及び図12参照)。上述のように、回転伝達部83を含む中間軸62の一部をケーシング本体41の外方に突出させることにより、中間軸62に対して摩擦機構80を組み付ける際に、摩擦機構80の位置決めを容易に行うことができる。よって、クラッチ駆動装置14の組み立て作業が容易になる。なお、摩擦機構80は、中間軸62に作用する回転方向のトルクが所定値以下の場合(例えばモータ50の出力が停止している場合など)に、摩擦力によって中間軸62の回転を抑制する。
図3に示すように、出力軸63は、その軸方向の一方が、ケーシング本体41に回転可能に支持されているとともに、前記軸方向の中央部分が、カバー42に回転可能に支持されている。出力軸63は、前記軸方向の他方が、カバー42から外方に突出している。出力軸63における前記軸方向の他方には、リンク機構16の第2アーム34が一体回転可能に接続されている。これにより、出力軸63の回転は、リンク機構16を介してクラッチ13に伝達されるとともに、クラッチ13で生じたクラッチ反力が、リンク機構16を介して出力軸63に入力される。
出力軸63には、平面視で扇形状の出力ギア65(回転体)が、出力軸63と一体で回転可能に設けられている。出力ギア65は、平歯車であり、中間軸62のギア62aに噛み合っている。これにより、中間軸62の回転は、出力ギア65を介して出力軸63に伝達される。すなわち、出力軸63は、中間軸62の回転に応じて回転する。出力ギア65は、出力軸63の軸中心(回転軸)を回転中心として、クラッチ13を切断する際には切断方向に回転し、クラッチ13を接続する際には接続方向に回転する回転体として機能する。
以上のように、出力軸63には、クラッチ駆動装置14の中間軸62の回転が入力されるとともに、クラッチ13で生じたクラッチ反力が入力される。
出力ギア65には、厚み方向の一側に、該厚み方向に突出する円柱状のピン72(伝達部)が設けられている。すなわち、ピン72は、出力軸63の軸方向に沿って延びている。また、本実施形態では、図3及び図4に示すように、ピン72は、出力ギア65の厚み方向の両面のうち、出力軸63の軸方向の一側に位置する面に設けられている。すなわち、ピン72は、出力軸63及び出力ギア65がケーシング40内に配置された状態で、ケーシング本体41の底部に向かって延びるように、出力ギア65に設けられている。よって、ピン72は、出力軸63と一体で回転する出力ギア65の回転に伴って、出力軸63を中心として回転する。ピン72は、出力軸63をケーシング本体41の開口側(以下、単に、出力軸63の軸方向の上方という)から見て、出力ギア65の周方向において、出力ギア65の中央よりも反時計方向の位置に設けられている(図5参照)。ピン72は、後述するアシスト機構70のスプリング71の第1突出部71bに接触している。ピン72は、出力ギア65に対して回転可能である。よって、ピン72は、後述するようにスプリング71の第1突出部71bに接触しつつ移動する際には、回転しながら第1突出部71bに対して移動する。
図3に示すように、アシスト機構70は、コイル状のスプリング71と、上述のピン72とを備える。スプリング71は、軸線を中心として螺旋状に延びる線材を含む。スプリング71は、軸線方向に延びる円筒状である。スプリング71は、線材の一端を他端に対して周方向にねじることにより、該周方向に弾性復元力を生じる、いわゆるトーションスプリングである。本実施形態では、スプリング71の線材は、図5に示すように、線材の一端側である巻き始め側(第1突出部71b)から時計方向に巻かれている。
スプリング71は、出力軸63の軸方向から見て、入力軸61及び中間軸62を囲むように、ケーシング本体41内に配置されている。入力軸61は、スプリング71の内方を挿通している。中間軸62は、その軸方向の一方の端部が、スプリング71の内方に位置付けられたケーシング本体41の一部(後述する凸部46)に回転可能に支持されている。スプリング71は、その軸線が出力軸63と平行に配置されている。スプリング71を構成する線材の一端は、出力軸63に向かって延びている。
図5に、アシスト機構70の概略構成を、出力軸63の軸方向から見た場合の図を示す。図5に示すように、スプリング71の内方には、ケーシング本体41の内面に設けられた円柱状の凸部46(移動規制部)が位置付けられている。凸部46は、スプリング71の内径よりも小さな外径を有する。凸部46は、後述するようにスプリング71が変形を生じた際に、スプリング71の径方向への移動を規制する移動規制部として機能する。凸部46には、入力軸61が挿通する貫通孔46aと、中間軸62における軸方向の一方の端部が挿入される穴部46bとが設けられている。
スプリング71は、凸部46に対し、凸部46において出力軸63に近い部分と接触する。凸部46におけるスプリング71との接触部分を含んだ周方向の一部には、出力軸63の軸方向から見て、円弧状の金属製の接触板47が設けられている。接触板47の両端部は、凸部46に設けられた突出部46cに固定されている。接触板47には、スプリング71が接触する。接触板47を凸部46に設けることにより、後述するようにスプリング71が動作する際に、スプリング71によって凸部46が損傷を受けることを防止できる。
スプリング71は、上述のように、線材の一端が出力軸63に向かって延びている。すなわち、前記線材の一端は、スプリング71の径方向外方に向かって延びている。スプリング71の線材の他端も、スプリング71の径方向外方に向かって延びている。すなわち、スプリング71は、円筒状のコイル部71aと、前記線材の一端を含むとともにコイル部71aから径方向外方に向かって延びる第1突出部71b(出力部)と、前記線材の他端を含むとともにコイル部71aから径方向外方に向かって延びる第2突出部71cとを有する。本実施形態では、第1突出部71b及び第2突出部71cは、出力軸63の軸方向から見て、出力軸63に向かって延びている。
第1突出部71bは、出力軸63の出力ギア65に設けられたピン72に接触している。第2突出部71cは、ケーシング本体41の内面に接触している。図6に示すように、第1突出部71b及び第2突出部71cは、後述するように出力ギア65がクラッチ切断状態の位置に位置付けられた状態で、出力軸63の軸方向から見て、出力軸63の軸中心(回転中心、回転軸)Pとスプリング71の軸線Qとを結ぶ仮想線Mによってケーシング本体41の内部空間が2つの領域X,Yに分けられた場合に、それぞれ、該2つの領域X,Yにおける別の領域に位置付けられている。すなわち、図6に示すように、出力ギア65がクラッチ切断状態の位置に位置付けられた状態で、スプリング71の第1突出部71bは領域Xに位置する一方、第2突出部71cは領域Yに位置している。出力軸63の軸中心Pは、スプリング71の軸線方向から見て、スプリング71の外方に位置する。なお、図6は、説明のために、図5に領域X,Yの範囲を斜線で模式的に示した図である。
これにより、スプリング71は、第2突出部71cがケーシング本体41の内面に接触した状態で、第1突出部71bにおける前記線材の一端がスプリング71の周方向に回転した場合、第1突出部71bが第2突出部71cに対して離れる方向に弾性復元力を生じる。すなわち、クラッチ13がクラッチ切断状態から接続状態になるように、ピン72が、出力軸63の回転に伴って出力軸63の軸線周りに回転した場合、スプリング71の第1突出部71bがピン72によってスプリング71の周方向に押される。よって、スプリング71の線材の一端は、スプリング71の軸線Qを中心として、第2突出部71cにおける線材の他端に近づくように回転する。このようなスプリング71の変形により、スプリング71の周方向において、第1突出部71bが第2突出部71cに対して離れる方向に、スプリング71に弾性復元力が生じる。出力ギア65に設けられたピン72は、スプリング71の第1突出部71bに接触しているため、スプリング71で生じた弾性復元力は、第1突出部71b及びピン72を介して、出力ギア65に伝達される。よって、第1突出部71bは、スプリング71から弾性復元力を出力する出力部として機能する。ピン72は、第1突出部71bに接触することにより、前記弾性復元力を出力ギア65に伝達する伝達部として機能する。
出力ギア65の回転位置とスプリング71の変形との関係を図7(a)〜(c)に模式図によって示す。なお、この図では、説明のために、出力軸63及び出力ギア65を二点鎖線で示し、ピン72及びスプリング71のみを実線で示す。また、この図では、図6と同様、領域X,Yの範囲を、説明のために斜線で示す。なお、図7(a)〜(c)では、図面を簡略化するために、仮想線Mによって分けられた領域X,Yを模式的に示している。
図7(a)〜(c)に示すように、スプリング71は、出力ギア65の回転に伴ってピン72が出力軸63の軸線周りに回転した場合、ピン72と接触する線材の一端が、前記線材の他端に対してスプリング71の周方向に変位する。この際、ピン72とスプリング71の線材の一端を含む第1突出部71bとの接触点Tは、第1突出部71bに沿うように、第1突出部71bに対して往復移動する。なお、接触点Tは、スプリング71の軸線方向から見て、スプリング71よりも径方向外方に位置する。
図7(a)は、クラッチ13が切断状態の際の出力ギア65の回転位置を示す。図7(b)は、クラッチ13が半クラッチ状態(クラッチプレート23と摩擦プレート24との間で、滑りは生じているが、回転方向の力が伝達される状態)の際の出力ギア65の回転位置を示す。図7(c)は、クラッチ13が接続状態の際の出力ギア65の回転位置を示す。
具体的には、出力軸63の軸方向から見て、出力ギア65が図7(a)に示す回転位置に位置付けられている場合、すなわち、出力ギア65に設けられたピン72が、出力軸63の軸中心Pとスプリング71の軸線Qとを結ぶ仮想線Mによってケーシング本体41の内部空間が2つに分けられることにより得られる2つの領域X,Yのうち、領域Xに位置している場合には、ピン72は、スプリング71の第1突出部71bに対し、先端に近い位置で接触している。
そのため、ピン72がスプリング71の弾性復元力によって受ける力は、図7(a)に示すように、出力ギア65に対し、クラッチ13を切断させるように所定の方向(以下、クラッチ切断の回転方向という、図7(a)における二点鎖線の矢印の回転方向)に回転させる力である。すなわち、出力ギア65には、ピン72を介して、スプリング71によって、クラッチ切断の回転方向にトルクが加わる。
なお、図7(a)の場合、スプリング71の第1突出部71bは、ピン72によって、スプリング71の周方向にあまり変位していない。よって、ピン72が、スプリング71の弾性復元力によって受ける力は、後述する図7(b)、(c)の場合よりも小さい。例えば、ピン72は、図7(a)に実線の矢印で示す方向及び大きさの力を、スプリング71の第1突出部71bから受ける。
出力ギア65が図7(b)に示す回転位置に位置付けられる場合、すなわち、ピン72が図7(a)に示す位置よりも仮想線Mに近づいた場合には、スプリング71の第1突出部71bは、線材の一端が領域Yに位置するように、すなわち、第1突出部71bにおける線材の一端が、第2突出部71cにおける線材の他端に近づくように、変位する。例えば、出力ギア65が図7(a)に示す位置から図7(b)に示す位置に変化した場合、ピン72は、スプリング71の第1突出部71bに対し、接触しつつコイル部71aに近づくように移動する。
これにより、スプリング71は、周方向に捻られる。よって、スプリング71は、第1突出部71bが第2突出部71cに対して離れる方向に弾性復元力を生じる。スプリング71の弾性復元力は、図7(b)に実線の矢印で示すように、ピン72に作用する。すなわち、スプリング71の弾性復元力は、ピン72を介して、出力ギア65に対し、クラッチ切断の回転方向(図7(b)における二点鎖線の矢印で示す回転方向)のトルクとして伝達される。これにより、ピン72を介して、スプリング71から出力ギア65にはクラッチ切断の回転方向にアシストする力が伝達される。このとき、ピン72がスプリング71の第1突出部71bから受ける力は、図7(a)の場合に比べて大きい。
出力ギア65が図7(c)に示す回転位置に位置付けられる場合、すなわち、ピン72が、2つの領域X,Yのうち、領域Yに位置している場合には、ピン72によって、スプリング71の第1突出部71bは、第2突出部71cにおける線材の他端により近づくように、変位する。このとき、ピン72は、スプリング71の第1突出部71bに対し、図7(b)に示す位置よりも、線材の一端に近い位置に位置付けられている。
これにより、スプリング71は、周方向にさらに捻られる。スプリング71の弾性復元力は、図7(c)に実線の矢印で示すように、ピン72に作用する。すなわち、スプリング71の弾性復元力は、ピン72を介して、出力ギア65に対し、クラッチ13が接続するように回転させる方向(以下、クラッチ接続の回転方向という、図7(c)における二点鎖線の矢印の回転方向)に作用する。これにより、ピン72を介して、スプリング71から出力ギア65には、クラッチ接続の回転方向にアシストする力が伝達される。
ピン72とスプリング71の第1突出部71bとの接触点Tは、出力ギア65の回転に応じて、出力軸63の軸方向から見て、出力軸63の軸中心Pとスプリング71の軸線Qとを結ぶ仮想線Mを、跨ぐ。ピン72と第1突出部71bとの接触点Tは、出力軸63の軸中心P及びスプリング71の軸線Qとは異なる位置で、且つ、スプリング71の弾性復元力が小さくなる方向に出力ギア65が回転する際(図7の例では、図7(c)、(b)、(a)の順に出力ギア65が回転する際)に、スプリング71の軸線方向から見て、スプリング71の軸線Qに少なくとも一度近づくように移動する。これにより、スプリング71で生じた弾性復元力を、出力ギア65に対し、第1突出部71bが第2突出部71cに対して離れる方向のアシスト力として伝達することができる。このとき、スプリング71の弾性復元力は、第1突出部71b及びピン72を介して、出力ギア65にトルクとして伝達される。
接触点Tとスプリング71の軸線Qとの間隔Dは、出力ギア65の回転に応じて、変化する。すなわち、間隔Dは、出力軸63の軸方向から見て、接触点Tが仮想線Mを跨ぐ際に最も小さい一方、接触点Tが仮想線Mから遠い位置になるほど、大きい。
出力軸63の軸中心Pと、第1突出部71b及びピン72の接触点Tとの距離は、軸中心Pとスプリング71の軸線Qとの距離よりも小さい。このように出力軸63を配置することにより、クラッチ駆動装置14の小型化を図れる。また、スプリング71の軸線Qと接触点Tとの距離は、出力軸63の軸中心Pとスプリング71の軸線Qとの距離よりも小さい。このようにスプリング71を配置することにより、クラッチ駆動装置14の小型化を図れる。
図8に、出力ギア65の回転角度(アクチュエータ回転角)と、クラッチ13を操作する際の負荷(クラッチ負荷)によって出力軸63に作用する回転方向のトルク(以下、軸トルクという)と、アシスト機構70によるアシスト力によって出力軸63に生じる軸トルクと、クラッチ負荷(クラッチ反力)及びアシスト力によってそれぞれ出力軸63に生じる軸トルクの合計との関係を示す。図8において、アクチュエータ回転角は、出力軸63の軸方向から見て、出力ギア65が初期の回転位置(図7(c)の位置)から反時計方向に回転する場合において、前記初期の回転位置に対する出力ギア65の回転角度を意味する。
なお、出力ギア65の回転範囲は、ケーシング本体41の内面によって規定される。すなわち、出力ギア65がクラッチ接続の回転方向に回転した際にケーシング本体41の内面に接触する位置が、クラッチ接続の回転方向における出力ギア65の限界回転位置である。出力ギア65がクラッチ切断の回転方向に回転した際にケーシング本体41の内面に接触する位置が、クラッチ切断の回転方向における出力ギア65の限界回転位置である。
本実施形態の場合、前記アクチュエータ回転角は、出力軸63の軸方向から見て、出力ギア65が、図7(c)、図7(b)、図7(a)の順に回転した場合に増大する。
前記クラッチ負荷は、クラッチ13が動作する際にクラッチ駆動装置14がクラッチ13のクラッチスプリング28等から受ける反力(クラッチ反力)に等しい。
クラッチ反力は、クラッチ13が接続状態から切断状態に切り替わる際に、前記アクチュエータ回転角の増加とともに増大する。一方、前記クラッチ反力によって出力軸63に作用する軸トルクは、リンク機構16における第1アーム33と第2アーム34との位置及び長さの関係に基づいて決まるレバー比によって、図8に実線(図中に“クラッチ反力によって発生”と記載された実線)で示すように所定のアクチュエータ回転角で最大になるように変化する。
以下で、前記レバー比について説明する。前記レバー比は、クラッチ駆動装置14の出力軸63に作用する軸トルクと、回転軸31に作用する軸トルクとの比を意味している。本実施形態では、クラッチ駆動装置14は、エンジン11及びクラッチ13に対し、図9及び図10に示すように配置されている。図9は、車両1の上方から見たエンジン11、クラッチ13及びクラッチ駆動装置14を模式的に示した図である。図10は、車両1の側方から見たエンジン11、クラッチ13及びクラッチ駆動装置14を模式的に示した図である。なお、図9及び図10では、エンジン11、クラッチ13及びクラッチ駆動装置14の配置関係を説明するために、他の構成部品の図示を省略するとともに、エンジン11、クラッチ13及びクラッチ駆動装置14を簡略化して図示している。
なお、図9及び図10において、図中の矢印Lは、車両1の左方向を示す。図中の矢印Rは、車両1の右方向を示す。図中の矢印RRは、車両1の後方向を示す。図中の矢印Uは、車両1の上方向を示す。なお、前後左右の方向は、それぞれ、車両1を運転する乗員から見た場合の前後左右の方向を意味する。
図9及び図10に示すように、クラッチ駆動装置14は、クラッチ13の上方で且つエンジン11の後方に配置されている。クラッチ駆動装置14は、車両1の上方から見て、クラッチ13の上方で且つ右方に配置されている。クラッチ駆動装置14は、出力軸63の軸方向が車両1の左右方向に沿うように配置されている。クラッチ13は、回転軸31の軸方向が車両1の上下方向に沿うように配置されている。
クラッチ駆動装置14は、リンク機構16を介して、クラッチ13に接続されている。具体的には、リンク機構16の第1アーム33は、一方の端部が回転軸31に接続されていて、車両1の左方向に延びている。リンク機構16の第2アーム34は、一方の端部がクラッチ駆動装置14の出力軸63に接続されていて、車両1の下方向に延びている。リンク機構16の調整機構35は、第1アーム33と第2アーム34とを回転可能に接続している。調整機構35の第1調整部材91及び第2調整部材92は、それぞれ、板状の第1アーム33及び第2アーム34に対して厚み方向に接続されている。これにより、第1調整部材91及び第2調整部材92は、棒状の接続部材94,95の軸線が捻れの位置関係になるように配置されている。なお、図9及び図10では、リンク機構16の構成を簡略化して示す。
上述のようなリンク機構16の配置において、クラッチ駆動装置14の出力軸63に作用する軸トルクと、回転軸31に作用する軸トルクとの比であるレバー比rtは、下式によって求められる。なお、下式は、リンク機構16が動作した際に調整機構35の傾きに変化が生じないと仮定し、レバー比rtを求めた式である。
rt=cosθ2/cosθ1×L2/L1 (1)
ここで、θ1は、リンク機構16を車両1の側方から見て、回転軸31の軸線に対して平行な基準線に対して、第2アーム34がなす角度である(図10参照)。θ2は、リンク機構16を車両1の上方から見て、出力軸63の軸線に対して平行な基準線に対して、第1アーム33がなす角度である(図9参照)。また、L1は、第2アーム34の長さであり、L2は、第1アーム33の長さである。
式(1)において、第2アーム34の角度θ1が大きくなると、cosθ1が小さくなるため、前記レバー比rtは増大する。よって、クラッチ駆動装置14の出力軸63の回転角度が大きくなると、前記レバー比rtは増大する。すなわち、出力軸63と一体で回転する出力ギア65の回転角度(アクチュエータ回転角)が大きくなると、前記レバー比rtは増大する。
クラッチ反力は、アクチュエータ回転角が大きくなると増大するとともに、該アクチュエータ回転角が大きい場合には、小さい場合に比べて、アクチュエータ回転角の増加量に対するクラッチ反力の増加量が小さい。一方、前記クラッチ反力が出力軸63に作用した場合に出力軸63に生じる軸トルクは、前記レバー比rtが大きくなると小さくなる。そのため、前記軸トルクは、アクチュエータ回転角が大きくなると小さくなる。
以上の点から、図8に示すように、クラッチ反力によって出力軸63に生じる軸トルクは、アクチュエータ回転角が小さい場合には、該アクチュエータ回転角の増加とともに増大する一方、前記アクチュエータ回転角が所定のアクチュエータ回転角を超えると、該アクチュエータ回転角の増加とともに減少する。すなわち、前記軸トルクは、前記所定のアクチュエータ回転角で最大になるように変化する。
本実施形態では、図8において、アクチュエータ回転角がSよりも小さい場合に、クラッチ13が接続状態になる。一方、図8において、アクチュエータ回転角がSよりも大きくなると、クラッチ13は接続状態から切断状態に移行する。また、図8において、Sは、アクチュエータ回転角が増加する場合には、クラッチ13が切断を開始するアクチュエータ回転角であり、アクチュエータ回転角が減少する場合には、クラッチ13のクラッチプレート23と摩擦プレート24とが接続を完了するアクチュエータ回転角である。
なお、図8では、出力軸63に作用する軸トルクが正の範囲(図8において0よりも大きい範囲)を、クラッチ13を接続させる軸トルクの範囲とし、出力軸63に作用する軸トルクが負の範囲(図8において0よりも小さい範囲)を、クラッチ13を切断する軸トルクの範囲とする。
アシスト機構70は、モータ50の回転(作動駆動力)によって、出力ギア65の回転位置が、アクチュエータ回転角が大きくなるように変化、すなわち図7(c)、図7(b)、図7(a)の順に変化することにより、スプリング71から出力ギア65のピン72に作用する力が、所定のアクチュエータ回転角で最大となる放物線状に変化する。これにより、クラッチ駆動装置14のアシスト力によって出力軸63に作用する軸トルク(図8において“アシスト力によって発生”と記載された実線)も、前記所定のアクチュエータ回転角で最大となる放物線状に変化する。
上述のように、出力ギア65のピン72に作用するスプリング71の弾性復元力は、出力ギア65の回転位置に応じて、クラッチ切断の回転方向にアシスト力としてピン72に作用する力の大きさが変化する。これは、スプリング71の第1突出部71bとピン72との接触点Tが、出力ギア65の回転位置に応じて、第1突出部71bに沿って変化することにより、第1突出部71bからピン72に加わる力の向きが変化するとともに、ピン72とスプリング71の第1突出部71bとの接触点Tと、スプリング71の軸線Qとの間隔Dが変化するからである。
なお、本実施形態では、モータ50の駆動及びアシスト機構70によって、すなわちクラッチ駆動装置14のアシスト力によって、出力軸63に作用する軸トルクは、図8に示すように、主に、クラッチ13を切断する軸トルク(図8において、負の領域の軸トルク)である。
クラッチ13が操作される際に発生するクラッチ反力によって出力軸63に作用する軸トルクは、アクチュエータ回転角が増加する場合には、クラッチ13が接続状態から切断状態に移行を開始するアクチュエータ回転角で発生し始める(図8のS)。前記クラッチ反力によって出力軸63に作用する軸トルクは、クラッチ13を接続するように出力軸63を所定の方向(以下、クラッチ接続の回転方向という)に回転させる力によって生じる。なお、前記クラッチ反力は、クラッチ13のクラッチスプリング28の弾性復元力等によって生じる。
前記クラッチ反力によって出力軸63に作用する軸トルクも、既述のレバー比によって、図8に示すように、所望のアクチュエータ回転角で最大となる放物線状に変化する。
これにより、アシスト機構70によって出力軸63に作用する軸トルクと、クラッチ13で生じるクラッチ反力によって出力軸63に作用する軸トルクとを合計した軸トルクは、アクチュエータ回転角に対して図8に太線で示すように、比較的小さい値になる。すなわち、前記合計した軸トルクは、図8に示す半クラッチ領域(半クラッチ状態のアクチュエータ回転角の範囲)内において一定の範囲内の値になる。これにより、クラッチ13の半クラッチ状態を、出力軸63において、比較的小さく且つ安定した軸トルクによって、実現することができる。なお、前記合計した軸トルクは、クラッチ13を作動させる際に必要なモータ50の作動駆動力である。
すなわち、上述のように、アシスト機構70によってアシスト力を発生させることにより、クラッチ13を接続状態から切断状態に容易に切り替えることができるとともに、安定した半クラッチ状態を実現できる。
<摩擦機構>
次に、摩擦機構80の構成を、図2から図4、図11及び図12を用いて説明する。図11は、摩擦機構80を拡大して示す図である。図12は、回転伝達部及び回転板の構成を示す斜視図である。摩擦機構80は、伝達機構60の中間軸62に作用する回転方向のトルクが所定値以下の場合に、中間軸62を、回転板81及び一対の摩擦板82の摩擦によって静止した状態で保持する。これにより、例えば車両が停止している際にモータ50の駆動を停止した場合でも、摩擦機構80によって、クラッチ13の切断状態を保持することが可能である。
詳しくは、摩擦機構80は、回転板81と、一対の摩擦板82と、中間軸62の一方に設けられた回転伝達部83と、スプリング84とを備える。摩擦機構80は、クラッチ駆動装置14のカバー42内に形成された収納空間V内に配置されている。具体的には、図3にも示すように、摩擦機構80は、カバー本体43と収納カバー部44との間に配置されている。よって、本実施形態では、図2及び図3に示すように、摩擦機構80は、出力軸63の軸方向において、伝達機構60が摩擦機構80とモータ50との間に位置するように配置されている。これにより、摩擦機構80を、モータ50と干渉することなく、コンパクトに配置することができる。
図2から図4及び図11に示すように、一対の摩擦板82は、回転板81に対してその厚み方向の一方及び他方に配置されている。すなわち、一対の摩擦板82及び回転板81は、摩擦板82の厚み方向に、摩擦板82、回転板81及び摩擦板82の順に積層されている。一対の摩擦板82は、それぞれ、厚み方向の両面のうち少なくとも回転板81と接触する面が、回転板81と接触することによって所定の摩擦力が得られるような摩擦係数を有する、中空円盤状の部材である。具体的には、摩擦板82は、例えば、表面が研磨処理されたステンレス製の板状部材によって構成されている。一対の摩擦板82及び回転板81は、カバー本体43に設けられた第1凹部43a内に配置されている。一対の摩擦板82のうち一方の摩擦板82は、カバー本体43の第1凹部43aの内面に接触している。
図4に示すように、一対の摩擦板82は、それぞれ、外周部分に複数の位置決め用凸部82aを有する。位置決め用凸部82aは、カバー本体43の第1凹部43a内に一対の摩擦板82が配置された状態で、第1凹部43aの内面に形成された位置決め用凹部43b内に位置付けられる。これにより、一対の摩擦板82が回転板81とともに回転することを抑制できる。
回転板81は、円盤状の金属製部材である。図12に示すように、回転板81には、中央部(回転中心)に、回転板81の厚み方向に貫通する貫通穴81a(穴部)が形成されている。この貫通穴81aは、回転板81を厚み方向から見て矩形状である。貫通穴81aには、中間軸62の一方に設けられた回転伝達部83が貫通する。
回転板81は、その厚み方向から見て、円盤状の回転板81の外周部分に、一対の摩擦板82と接触する接触部81bが設けられている。接触部81bは、回転板81の中央部の厚みよりも大きい厚みを有する。すなわち、接触部81bは、回転板81の中央部よりも回転板81の厚み方向に突出している。これにより、回転板81が一対の摩擦板82の間に配置された状態で、回転板81の接触部81bが一対の摩擦板82に接触する。
回転伝達部83は、既述のとおり、中間軸62の軸方向の端部に設けられている。回転伝達部83は、断面矩形状の柱状である。回転伝達部83は、回転板81の貫通穴81a内に挿入可能に形成されている。これにより、回転伝達部83が回転板81の貫通穴81a内に挿入された状態で中間軸62が回転した場合、中間軸62の回転は回転伝達部83を介して回転板81に伝達される。よって、摩擦機構80は、伝達機構60によって伝達される回転の回転方向とは反対方向に摩擦力を生じる。
なお、図12において、符号Zは、中間軸62の軸線である。この軸線Zが延びる軸線方向は、出力軸63の軸方向と同じ方向である。中間軸62の軸線方向(軸方向)と出力軸63の軸方向とが同じ方向とは、中間軸62と出力軸63との間で回転を伝達可能な範囲であれば、完全に同一の方向以外の方向も含む。
上述のように、回転板81の貫通穴81a内に、中間軸62に設けられた回転伝達部83が挿入されることにより、摩擦機構80は、伝達機構60における入力軸61から出力軸63への動力の伝達経路に対して分離して構成されている。すなわち、摩擦機構80は、伝達機構60に含まれるのではなく、伝達機構60とは別に設けられている。
以上の構成により、回転伝達部83を介して中間軸62の回転を回転板81に伝達しつつ、回転板81が回転伝達部83に対して中間軸62の軸方向に移動することを許容することができる。これにより、回転板81が、傾いた場合または中間軸62の軸方向に変位した場合等でも、回転板81は、回転伝達部83に対して相対変位することができる。
スプリング84は、軸線を中心とする螺旋状に延びる線材を含む。スプリング84は、軸線方向に延びる円筒状である。スプリング84は、前記軸線方向に圧縮されることにより、弾性復元力を生じる圧縮ばねである。スプリング84は、前記軸線方向が、中間軸62の軸方向と一致するように、収納カバー部44内に配置されている。すなわち、スプリング84の軸線は、出力軸63の軸方向と同じ方向に延びている。
スプリング84は、その軸線が一対の摩擦板82及び回転板81の厚み方向と一致するように、一対の摩擦板82及び回転板81に対して配置されている。スプリング84は、スプリング84の軸線方向の一方が、一対の摩擦板82のうち他方の摩擦板82に接触している。すなわち、一対の摩擦板82及び回転板81は、スプリング84よりも回転伝達部83に近い。しかも、一対の摩擦板82のうち一方の摩擦板82は、カバー本体43の第1凹部43aの内面に接触している。これにより、スプリング84によって、一対の摩擦板82及び回転板81に対して厚み方向に力が加わる。したがって、一対の摩擦板82及び回転板81は、スプリング84とカバー本体43の第1凹部43aの内面との間で、厚み方向に押圧されている。
以上の構成により、スプリング84によって厚み方向に押圧されている一対の摩擦板82と回転板81との間には、摩擦力が生じる。これにより、中間軸62と一体で回転する回転板81には、一対の摩擦板82との間の摩擦力によって、回転を抑制する力が作用する。したがって、中間軸62に作用する回転方向の力が、回転板81と一対の摩擦板82との摩擦力以下の場合には、前記摩擦力によって、回転板81及び中間軸62の回転は抑制される。
既述のように、図8において、クラッチ駆動装置14のアシスト力によって発生する軸トルクとクラッチ13のクラッチ反力によって発生する軸トルクとの合計(図8における太実線)が、クラッチ駆動装置14の出力軸63に作用する軸トルクである。図8に、回転板81と一対の摩擦板82との摩擦力によって、回転板81及び中間軸62の回転が停止する軸トルクの範囲を二点鎖線で示す。すなわち、出力軸63に作用する軸トルクにおいて、二点鎖線の間の範囲(所定値以下)では、回転板81及び中間軸62は、回転板81と一対の摩擦板82との摩擦力によって回転が抑制される。
モータ50の駆動が停止している場合、クラッチプレート23及び摩擦プレート24には、クラッチ13が接続状態になるように、クラッチスプリング28によって互いに押し付けられる力が作用する。これに対し、上述の構成の摩擦機構80をクラッチ駆動装置14に設けることにより、モータ50の駆動が停止している場合でも、クラッチ駆動装置14の伝達機構60の動作が停止する。よって、クラッチ13は作動しない。したがって、上述の構成により、クラッチ13の作動状態(半クラッチ状態または切断状態)をそのまま維持することが可能なセルフロック機構を実現できる。
換言すると、クラッチ駆動装置14の出力軸63に入力されるクラッチ反力及びアシスト力を、出力軸63に生じる軸トルクの合計が図8に示すように所定値以下になるように、設定することで、上述のようなセルフロック機構を実現することができる。すなわち、クラッチ13が接続状態から切断状態に切り替えられる際に、スプリング71から出力軸63に入力される前記アシスト力は、出力軸63にクラッチ13から前記クラッチ反力が入力された後に、最大となることにより、または、クラッチ13が切断状態から接続状態に切り替えられる際に、スプリング71から出力軸63に入力される前記アシスト力は、出力軸63にクラッチ13から入力される前記クラッチ反力が零になる前に最大となることにより、出力軸63に生じる軸トルクの合計を前記所定値以下にすることができ、上述のようなセルフロック機構を実現できる。
また、上述のように、回転板81の貫通穴81a内に中間軸62の回転伝達部83を挿入することにより、中間軸62に対する回転板81の回転方向以外の変位を許容することができる。よって、例えば中間軸62が傾いた場合等でも、回転板81の傾きを防止しつつ、中間軸62の回転を回転板81に伝達することができる。これにより、回転板81を一対の摩擦板82に対してより確実に接触させつつ、中間軸62によって回転板81を回転させることができる。
さらに、上述の構成により、カバー42内に、摩擦機構80の回転板81、摩擦板82及びスプリング84を、組み立てた状態でケーシング本体41内に取り付けることが可能になる。よって、摩擦機構80の組み立て作業性を向上することができる。
しかも、摩擦機構80が収納されるケーシングは、クラッチ駆動装置14のカバー42の一部によって構成されている。これにより、クラッチ駆動装置14の全体の構成をコンパクトな構成にすることができる。
本実施形態に係るクラッチ駆動装置14は、クラッチ13の切断及び接続の各動作を補助するためのアシスト力を供給するクラッチ駆動装置である。クラッチ駆動装置14は、軸線Qを中心に螺旋状に延び、且つ、軸線方向から見て周方向の変形によって該周方向に弾性復元力を生じるスプリング71と、スプリング71の一方の端部に設けられ、スプリング71から前記弾性復元力を出力する第1突出部71bと、スプリング71が前記周方向に変形を生じる際にスプリング71の径方向への移動を規制する凸部46と、スプリング71の軸線Qとは異なる位置で軸線Qに対して平行に延びる出力軸63の軸中心Pを回転中心として、前記クラッチを切断する際には切断方向に回転し、前記クラッチを接続する際には接続方向に回転する出力ギア65と、出力ギア65と一体で回転可能に出力ギア65に設けられ、第1突出部71bに接触することにより、前記弾性復元力を出力ギア65に伝達するピン72とを備える。出力ギア65には、クラッチ13の切断及び接続の各動作によって生じた反力がトルクとして入力されるとともに、スプリング71の前記周方向への変形によって生じた前記弾性復元力が、第1突出部71b及びピン72を介して前記アシスト力として入力される。第1突出部71bとピン72との接触点Tは、出力軸63の軸中心P及びスプリング71の軸線Qとは異なる位置で、且つ、スプリング71の弾性復元力が小さくなる方向に出力ギア65が回転する際に、スプリング71の軸線方向から見て、軸線Qに少なくとも一度近づくように移動する。
軸線Qを中心に螺旋状に延び、且つ、軸線Qの方向から見て周方向の変形によって該周方向に弾性復元力を生じるスプリング71を、凸部46によってスプリング71の径方向への移動を規制することにより、スプリング71の弾性復元力をアシスト力として出力ギア65に付与することができるとともに、装置内にスプリング71の移動スペースが不要になる。よって、クラッチ駆動装置の小型化を図れる。
しかも、上述の構成に加えて、スプリング71の一方の端部に設けられた第1突出部71bと、出力ギア65に設けられたピン72との接触点Tを、出力軸63の軸中心P及びスプリング71の軸線Qとは異なる位置で、且つスプリング71の弾性復元力が小さくなる方向に出力ギア65が回転する際に、スプリング71の軸線方向から見て、軸線Qに少なくとも一度近づくように移動させる。これにより、スプリング71で生じた弾性復元力を、出力ギア65に対し、第1突出部71bが第2突出部71cに対して離れる方向のアシスト力として伝達することができる。このとき、スプリング71の弾性復元力は、第1突出部71b及びピン72を介して、出力ギア65にトルクとして伝達される。
上述の構成により、クラッチ13に対して所望のアシスト力を供給しつつ、従来の構成の装置よりもさらなる装置の小型化を図れる。
本実施形態では、出力軸63の軸中心Pは、スプリング71の軸線方向から見て、スプリング71の外方に位置する。スプリング71の軸線方向から見て、スプリング71の内方に出力軸63の軸中心Pが位置している場合、スプリング71は、出力軸、第1突出部及びピンを含むような大きさの径にする必要がある。これに対し、上述のように、前記軸線方向から見て、出力軸63の軸中心Pを、スプリング71の外方に配置することにより、スプリング71の径を小さくすることができる。よって、スプリング71の小型化を図れる。
本実施形態では、スプリング71の第1突出部71bとピン72との接触点Tは、前記軸線方向から見て、スプリング71よりも径方向外方に位置する。これにより、スプリング71の軸線方向から見て、スプリング71よりも径方向内方に接触点Tが位置する場合に比べて、スプリング71を小型化することができる。
本実施形態では、出力軸63の軸中心Pと、第1突出部71b及びピン72の接触点Tとの距離は、軸中心Pとスプリング71の軸線Qとの距離よりも小さい。
これにより、スプリング71に設けられた第1突出部71bと出力ギア65に設けられたピン72とが接触する接触点Tが、出力軸63の軸中心Pを中心として移動する範囲を、軸中心Pとスプリング71の軸線Qとの間に形成することができる。よって、出力軸63の軸中心Pと接触点Tとの距離が軸中心Pと軸線Qとの距離以上の場合に比べて、接触点Tの移動範囲を小さくすることができる。したがって、クラッチ駆動装置14の小型化を図れる。
本実施形態では、スプリング71の軸線Qと接触点Tとの距離は、接触点Tが仮想線M上に位置している場合に、出力軸63の軸中心Pとスプリング71の軸線Qとの距離よりも小さい。
これにより、スプリング71の軸線Qと第1突出部71b及びピン72の接触点Tとの距離、及び、接触点Tと出力軸63の軸中心Pとの距離を、それぞれ、軸中心Pと軸線Qとの距離よりも小さくすることができる。したがって、出力ギア65及びスプリング71をコンパクトに配置することができる。よって、クラッチ駆動装置14の小型化を図れる。
本実施形態では、第1突出部71bは、スプリング71に一体で設けられている。これにより、クラッチ駆動装置14の部品数を低減することができる。
本実施形態では、ピン72は、出力ギア65の回転と該回転に伴うスプリング71の前記周方向への変形とによって、第1突出部71bと接触しつつ第1突出部71bと相対移動する。
これにより、スプリング71に設けられた第1突出部71bと出力ギア65に設けられたピン72とが接触する接触点Tとスプリング71の軸線Qとの距離を、出力ギア65の回転に応じて変化させることができる。したがって、出力ギア65が回転する際に、スプリング71の軸線方向から見て、接触点Tがスプリング71の軸線Qに少なくとも一度近づくように移動する構成を、簡単な構成によって実現することができる。
本実施形態では、クラッチ駆動装置14は、モータ50から出力ギア65に対して回転トルクを伝達する伝達機構60をさらに備える。伝達機構60は、モータ50から前記回転トルクが入力される入力軸61を有する。入力軸61は、スプリング71の内方に軸線Qに対して平行に延びるように配置されている。
これにより、スプリング71の内方のスペースを有効に活用して入力軸61を配置することができる。したがって、モータ50を備えたクラッチ駆動装置14において、コンパクト化を図れる。
本実施形態では、スプリング71の第1突出部71bとピン72との接触点Tは、出力ギア65が回転する際に、スプリング71の軸線Qと出力軸63の軸中心Pとを結ぶ仮想線Mを通過するように移動する。
これにより、スプリング71の周方向の変形によって生じる弾性復元力を、該周方向のより広範囲で得ることができる。よって、クラッチ13の駆動範囲において、アシスト力によって比較的低い負荷で駆動可能な範囲を拡大することができる。したがって、クラッチ13の駆動における自由度を向上することができる。
しかも、上述の構成により、ピン72に作用する力は、出力ギア65が回転して、第1突出部71bとピン72との接触点Tがスプリング71の軸線Qと出力軸63の軸中心Pとを結ぶ仮想線Mを通過した際に最大になる。これにより、クラッチ反力によって発生する軸トルクが出力ギア65の所定の回転位置で最大値となる構成であっても、所望のアシスト力を得ることができる。
(実施形態2)
図13(a)〜(c)に、実施形態2に係るクラッチ駆動装置のアシスト機構170におけるスプリング171の概略構成を示す。スプリング171は、第1突出部171bがコイル部171aの径方向内方に位置している点で、実施形態1の構成とは異なる。以下では、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分についてのみ説明する。
図13(a)〜(c)に示すように、スプリング171は、線材の一端が円筒状のコイル部171aの径方向内方に位置するように、第1突出部171bがコイル部171aからコイル部171aの径方向内方に向かって延びている。すなわち、第1突出部171bは、スプリング171の線材の一端がコイル部171aの内方に位置付けられるように折り曲げられることによって形成されている。このように第1突出部171bを設けることにより、スプリング171を軸線方向から見て、第1突出部171bと、第1突出部171bに連続するコイル部171aとの間には、屈曲部171dが形成される。図13(a)〜(c)の例では、スプリング171の軸線方向(軸線Qの軸方向)から見て、スプリング171を構成する線材の一端、すなわち第1突出部171bの先端が、コイル部171aの中心に位置している。
ピン172は、出力軸63の軸方向から見て、出力ギア65の周方向において、出力ギア65の中央の位置に設けられている。
出力ギア65は、ピン172が、スプリング171の軸線方向から見て、第1突出部171bとコイル部171aとの間に位置し、且つ第1突出部171bと接触するように、配置されている。すなわち、出力ギア65のピン172は、第1突出部171bに引っ掛かるように配置されている。これにより、クラッチ13がクラッチ切断状態から接続状態になるように出力ギア65が回転した際に、ピン172は、第1突出部171bを第2突出部171cに近づけるように、スプリング171に変形を生じさせる。
図13(a)〜(c)に示すように、スプリング171は、出力ギア65の回転に伴ってピン172が出力軸63の軸線周りに回転した場合、ピン172と接触する第1突出部171bの屈曲部171dが、スプリング171の軸線Qを中心として、スプリング171の周方向に変位する。この際、ピン172とスプリング171の第1突出部171bとの接触点Tは、第1突出部171bに沿うように、第1突出部171bに対して往復移動する。なお、接触点Tは、スプリング171の軸線方向から見て、スプリング171よりも径方向内方に位置する。
図13(a)は、クラッチ13が切断状態の際の出力ギア65の回転位置を示す。図13(b)は、クラッチ13が半クラッチ状態の際の出力ギア65の回転位置を示す。図13(c)は、クラッチ13が接続状態の際の出力ギア65の回転位置を示す。
具体的には、出力軸63の軸方向から見て、出力ギア65が図13(a)に示す回転位置に位置付けられている場合、すなわち、出力ギア65に設けられたピン172が、出力軸63の軸中心Pとスプリング71の軸線Qとを結ぶ仮想線Mによってケーシング本体41の内部空間が2つに分けられることにより得られる2つの領域X,Yのうち、領域Xに位置している場合には、ピン172は、スプリング171の第1突出部171bに対し、基端部(コイル部171aとの接続部分)に近い位置で接触している。
そのため、ピン172がスプリング171の弾性復元力によって受ける力は、図13(a)に示すように、出力ギア65に対し、クラッチ切断の回転方向(図13(a)における二点鎖線の矢印の回転方向)に回転させる力である。すなわち、出力ギア65には、ピン172を介して、スプリング171によって、クラッチ切断の回転方向にトルクが加わる。
なお、図13(a)の場合、スプリング171の第1突出部171bは、ピン172によって、スプリング171の周方向にあまり変位していない。よって、ピン172が、スプリング171の弾性復元力によって受ける力は、後述する図13(b)、(c)の場合よりも小さい。例えば、ピン172は、図13(a)に実線の矢印で示す方向及び大きさの力を、スプリング171の第1突出部171bから受ける。
出力ギア65が図13(b)に示す回転位置に位置付けられる場合、すなわち、ピン172が仮想線M上に位置している場合には、スプリング171の第1突出部171bは、基端部が領域Yに位置するように、すなわち、第1突出部171bの基端部が、第2突出部171cにおける線材の他端に近づくように、変位する。例えば、出力ギア65が図13(a)に示す位置から図13(b)に示す位置に変化した場合、ピン172は、スプリング171の第1突出部171bに対し、接触しつつ先端に向かって移動する。
これにより、スプリング171は、周方向に捻られる。よって、スプリング171は、第1突出部171bが第2突出部171cに対して離れる方向に弾性復元力を生じる。スプリング171の弾性復元力は、図13(b)に実線の矢印で示すように、ピン172に作用する。すなわち、スプリング171の弾性復元力は、ピン172を介して、出力ギア65に対し、クラッチ切断の回転方向(図13(b)における二点鎖線の矢印で示す回転方向)のトルクとして伝達される。これにより、ピン172を介して、スプリング171から出力ギア65にはクラッチ切断の回転方向にアシストする力が伝達される。このとき、ピン172がスプリング171の第1突出部171bから受ける力は、図13(a)の場合に比べて大きい。
出力ギア65が図13(c)に示す回転位置に位置付けられる場合、すなわち、ピン172が、2つの領域X,Yのうち、領域Yに位置している場合には、ピン172によって、スプリング171の第1突出部171bは、第2突出部171cにおける線材の他端により近づくように、変位する。このとき、ピン172は、スプリング171の第1突出部171bに対し、図13(b)に示す位置よりも、基端部に近い位置に位置付けられている。
これにより、スプリング171は、周方向にさらに捻られる。スプリング171の弾性復元力は、図13(c)に実線の矢印で示すように、ピン172に作用する。すなわち、スプリング171の弾性復元力は、ピン172を介して、出力ギア65に対し、クラッチ接続の回転方向(図13(c)における二点鎖線の矢印の回転方向)に作用する。これにより、ピン172を介して、スプリング171から出力ギア65には、クラッチ接続の回転方向にアシストする力が伝達される。
ピン172とスプリング171の第1突出部171bとの接触点Tは、出力ギア65の回転に応じて、出力軸63の軸方向から見て、出力軸63の軸中心Pとスプリング171の軸線Qとを結ぶ仮想線Mを、跨ぐ。ピン172と第1突出部171bとの接触点Tは、出力軸63の軸中心P及びスプリング171の軸線Qとは異なる位置で、且つ、スプリング171の弾性復元力が小さくなる方向に出力ギア65が回転する際(図13の例では、図13(c)、(b)、(a)の順に出力ギア65が回転する際)に、スプリング171の軸線方向から見て、スプリング171の軸線Qに少なくとも一度近づくように移動する。これにより、スプリング171で生じた弾性復元力を、出力ギア65に対し、第1突出部171bが第2突出部171cに対して離れる方向のアシスト力として伝達することができる。このとき、スプリング171の弾性復元力は、第1突出部171b及びピン172を介して、出力ギア65にトルクとして伝達される。
接触点Tとスプリング171の軸線Qとの間隔Dは、出力ギア65の回転に応じて、変化する。すなわち、間隔Dは、出力軸63の軸方向から見て、接触点Tが仮想線Mを跨ぐ際に最も小さい一方、接触点Tが仮想線Mから遠い位置になるほど、大きい。
出力軸63の軸中心Pと、第1突出部171b及びピン72の接触点Tとの距離は、軸中心Pとスプリング171の軸線Qとの距離よりも小さい。また、スプリング171の軸線Qと接触点Tとの距離は、出力軸63の軸中心Pとスプリング171の軸線Qとの距離よりも小さい。
以上の構成によっても、実施形態1の構成と同様、アシスト機構170は、モータ50の回転(作動駆動力)によって、出力ギア65の回転位置が、アクチュエータ回転角が大きくなるように変化、すなわち図13(c)、図13(b)、図13(a)の順に変化することにより、スプリング171から出力ギア65のピン172に作用する力が、所定のアクチュエータ回転角で最大となる放物線状に変化する。これにより、アシスト機構170のアシスト力によって出力軸63に作用する軸トルクも、前記所定のアクチュエータ回転角で最大となる放物線状に変化する。
(実施形態3)
図14(a)〜(c)に、実施形態3に係るクラッチ駆動装置のアシスト機構270におけるスプリング271の概略構成を示す。出力軸63が、スプリング271の軸線方向から見て、スプリング271の内方に位置している点で、実施形態2の構成とは異なる。以下では、実施形態2と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態2と異なる部分についてのみ説明する。
図14(a)〜(c)に示すように、スプリング271は、線材の一端が円筒状のコイル部271aの径方向内方に位置するように、第1突出部271bがコイル部271aからコイル部271aの径方向内方に向かって延びている。すなわち、第1突出部271bは、スプリング271の線材の一端がコイル部271aの内方に位置付けられるように折り曲げられることによって形成されている。このように第1突出部271bを設けることにより、スプリング271を軸線方向から見て、第1突出部271bと、第1突出部271bに連続するコイル部271aとの間には、屈曲部271dが形成される。図14(a)〜(c)の例では、スプリング271の軸線方向から見て、スプリング271を構成する線材の一端、すなわち第1突出部271bの先端が、コイル部271aの中心に位置している。
出力軸63は、スプリング271の軸線方向から見て、スプリング271の内方に位置している。ピン272は、出力軸63の軸方向から見て、出力ギア65の周方向において、出力ギア65の中央よりも時計方向の位置に設けられている。
出力ギア65は、ピン272が、スプリング271の軸線方向から見て、第1突出部271bとコイル部271aとの間に位置し、且つ第1突出部271bと接触するように、配置されている。すなわち、出力ギア65のピン272は、第1突出部271bに引っ掛かるように配置されている。これにより、出力ギア65が回転した際に、ピン272は、第1突出部271bを第2突出部271cに近づけるように、スプリング271に変形を生じさせる。
図14(a)〜(c)に示すように、スプリング271は、出力ギア65の回転に伴ってピン272が出力軸63の軸線周りに回転した場合、ピン272と接触する第1突出部271bの屈曲部271dが、スプリング271の軸線Qを中心として、スプリング271の周方向に変位する。この際、ピン272とスプリング271の第1突出部271bとの接触点Tは、第1突出部271bに沿うように、第1突出部271bに対して往復移動する。なお、接触点Tは、スプリング271の軸線方向から見て、スプリング271よりも径方向内方に位置する。
図14(a)は、クラッチ13が切断状態の際の出力ギア65の回転位置を示す。図14(b)は、クラッチ13が半クラッチ状態の際の出力ギア65の回転位置を示す。図14(c)は、クラッチ13が接続状態の際の出力ギア65の回転位置を示す。
具体的には、出力軸63の軸方向から見て、出力ギア65が図14(a)に示す回転位置に位置付けられている場合、すなわち、出力ギア65に設けられたピン272が、出力軸63の軸中心Pとスプリング271の軸線Qとを結ぶ仮想線Mによってケーシング本体41の内部空間が2つに分けられることにより得られる2つの領域X,Yのうち、領域Xに位置している場合には、ピン272は、スプリング271の第1突出部271bに対し、先端に近い位置で接触している。
そのため、ピン272がスプリング271の弾性復元力によって受ける力は、図14(a)に示すように、出力ギア65に対し、クラッチ切断の回転方向(図14(a)における二点鎖線の矢印の回転方向)に回転させる力である。すなわち、出力ギア65には、ピン272を介して、スプリング271によって、クラッチ切断の回転方向にトルクが加わる。
なお、図14(a)の場合、スプリング271の第1突出部271bは、ピン272によって、スプリング271の周方向にあまり変位していない。よって、ピン272が、スプリング271の弾性復元力によって受ける力は、後述する図14(b)、(c)の場合よりも小さい。例えば、ピン272は、図14(a)に実線の矢印で示す方向及び大きさの力を、スプリング271の第1突出部271bから受ける。
出力ギア65が図14(b)に示す回転位置に位置付けられる場合、すなわち、ピン272が仮想線M上に位置している場合には、第1突出部271bの屈曲部271dが、第2突出部271cにおける線材の他端に近づくように、変位する。例えば、出力ギア65が図14(a)に示す位置から図14(b)に示す位置に変化した場合、ピン272は、スプリング271の第1突出部271bに対し、接触しつつ屈曲部271dに向かって移動する。
これにより、スプリング271は、周方向に捻られる。よって、スプリング271は、第1突出部271bが第2突出部271cに対して離れる方向に弾性復元力を生じる。スプリング271の弾性復元力は、図14(b)に実線の矢印で示すように、ピン272に作用する。すなわち、スプリング271の弾性復元力は、ピン272を介して、出力ギア65に対し、クラッチ切断の回転方向(図14(b)における二点鎖線の矢印で示す回転方向)のトルクとして伝達される。これにより、ピン272を介して、スプリング271から出力ギア65にはクラッチ切断の回転方向にアシストする力が伝達される。このとき、ピン272がスプリング271の第1突出部271bから受ける力は、図14(a)の場合に比べて大きい。
出力ギア65が図14(c)に示す回転位置に位置付けられる場合、すなわち、ピン272が、2つの領域X,Yのうち、領域Yに位置している場合には、ピン272によって、スプリング271の第1突出部271bの屈曲部271dは、第2突出部271cにおける線材の他端により近づくように、変位する。このとき、ピン272は、スプリング271の第1突出部271bに対し、図14(b)に示す位置よりも、屈曲部271dに近い位置に位置付けられている。
これにより、スプリング271は、周方向にさらに捻られる。スプリング271の弾性復元力は、図14(c)に実線の矢印で示すように、ピン272に作用する。すなわち、スプリング271の弾性復元力は、ピン272を介して、出力ギア65に対し、クラッチ接続の回転方向(図14(c)における二点鎖線の矢印の回転方向)に作用する。これにより、ピン272を介して、スプリング271から出力ギア65には、クラッチ接続の回転方向にアシストする力が伝達される。
ピン272とスプリング271の第1突出部271bとの接触点Tは、出力ギア65の回転に応じて、出力軸63の軸方向から見て、出力軸63の軸中心Pとスプリング271の軸線Qとを結ぶ仮想線Mを、跨ぐ。ピン272と第1突出部271bとの接触点Tは、出力軸63の軸中心P及びスプリング271の軸線Qとは異なる位置で、且つ、スプリング271の弾性復元力が小さくなる方向に出力ギア65が回転する際(図14の例では、図14(c)、(b)、(a)の順に出力ギア65が回転する際)に、スプリング271の軸線方向から見て、スプリング271の軸線Qに少なくとも一度近づくように移動する。これにより、スプリング271で生じた弾性復元力を、出力ギア65に対し、第1突出部271bが第2突出部271cに対して離れる方向のアシスト力として伝達することができる。このとき、スプリング271の弾性復元力は、第1突出部271b及びピン272を介して、出力ギア65にトルクとして伝達される。
接触点Tとスプリング271の軸線Qとの間隔Dは、出力ギア65の回転に応じて、変化する。すなわち、間隔Dは、出力軸63の軸方向から見て、接触点Tが仮想線Mを跨ぐ際に最も小さい一方、接触点Tが仮想線Mから遠い位置になるほど、大きい。
出力軸63の軸中心Pと、第1突出部271b及びピン272の接触点Tとの距離は、軸中心Pとスプリング271の軸線Qとの距離よりも小さい。また、スプリング271の軸線Qと接触点Tとの距離は、接触点Tが仮想線M上に位置している場合に、出力軸63の軸中心Pとスプリング271の軸線Qとの距離よりも小さい。
以上の構成によっても、実施形態1の構成と同様、アシスト機構270は、モータ50の回転(作動駆動力)によって、出力ギア65の回転位置が、アクチュエータ回転角が大きくなるように変化、すなわち図14(c)、図14(b)、図14(a)の順に変化することにより、スプリング271から出力ギア65のピン272に作用する力が、所定のアクチュエータ回転角で最大となる放物線状に変化する。これにより、アシスト機構270のアシスト力によって出力軸63に作用する軸トルクも、前記所定のアクチュエータ回転角で最大となる放物線状に変化する。
(実施形態4)
図15(a)〜(c)に、実施形態4に係るクラッチ駆動装置のアシスト機構370の概略構成を示す。出力ギア65に設けられたピン372とスプリング371との間に、リンク375が設けられている点で、実施形態1の構成とは異なる。以下では、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分についてのみ説明する。
図15(a)〜(c)に示すように、アシスト機構370は、出力ギア65に設けられたピン372と、スプリング371と、ピン372とスプリング371とを接続するリンク375とを備える。
スプリング371は、軸線方向から見て、線材の一端がU字状に折り曲げられている。すなわち、第1突出部371bは、前記軸線方向から見て、U字状に形成されている。ピン372は、出力軸63を軸方向の上方から見て、出力ギア65の周方向において、出力ギア65の中央よりも反時計方向の位置に設けられている。
リンク375は、平面視でL字状に形成された平板状の部材である。すなわち、リンク375は、屈曲部375aを有する。リンク375の一方の端部は、凸部46の中央に回転可能に接続されている。リンク375において屈曲部375aと他方の端部との間には、屈曲部375aから前記他方の端部に向かって長い長円状のスライド穴375bが設けられている。リンク375のスライド穴375b内には、出力ギア65に設けられたピン372がスライド移動可能に配置されている。これにより、リンク375は、出力ギア65に設けられたピン372に対して一方向にスライド移動可能に接続されている。なお、図15(a)〜(c)では、凸部46は、簡略化して図示している。
リンク375の屈曲部375aには、リンク375の厚み方向に突出する接続ピン378が設けられている。接続ピン378は、スプリング371の第1突出部371bの内方に位置付けられることにより、第1突出部371bと接続されている。
以上の構成において、図15(a)〜(c)に示すように、出力ギア65に設けられたピン372が出力軸63を中心として回転すると、リンク375は、凸部46に回転可能に接続された一方の端部を中心として、回転する。このとき、ピン372は、リンク375のスライド穴375bに対してスライド移動する。すなわち、ピン372とリンク375のスライド穴375bの周縁部との接触点Tは、スライド穴375bに沿うように移動する。なお、接触点Tは、スプリング371の軸線方向から見て、スプリング371よりも径方向外方に位置する。
スプリング371は、上述のような出力軸63を中心としたピン372の回転に応じて、第1突出部371bが第2突出部371cに対して周方向に移動するように、変形を生じる。スプリング371におけるこのような変形によって、スプリング371には弾性変形が生じる。スプリング371で生じた弾性復元力は、リンク375を介してピン372に作用する。本実施形態では、リンク375及びスプリング371の第1突出部371bが、スプリング371から弾性復元力を出力する出力部379に含まれる。
図15(a)は、クラッチ13が切断状態の際の出力ギア65の回転位置を示す。図15(b)は、クラッチ13が半クラッチ状態の際の出力ギア65の回転位置を示す。図15(c)は、クラッチ13が接続状態の際の出力ギア65の回転位置を示す。
具体的には、出力軸63の軸方向から見て、出力ギア65が図15(a)に示す回転位置に位置付けられている場合、すなわち、出力ギア65に設けられたピン372が、出力軸63の軸中心Pとスプリング371の軸線Qとを結ぶ仮想線Mによってケーシング本体41の内部空間が2つに分けられることにより得られる2つの領域X,Yのうち、領域Xに位置している場合には、第1突出部371bも領域Xに位置する。このとき、リンク375のスライド穴375bに対するピン372の位置は、スライド穴375bにおいてリンク375の他方の端部に近い位置である。よって、ピン372とリンク375のスライド穴375bの周縁部との接触点Tも、スライド穴375bにおいてリンク375の他方の端部に近い位置である。
そのため、ピン372がスプリング371の弾性復元力によって受ける力は、図15(a)に示すように、出力ギア65に対し、クラッチ切断の回転方向(図15(a)における二点鎖線の矢印の回転方向)に回転させる力である。すなわち、出力ギア65には、ピン372を介して、スプリング371によって、クラッチ切断の回転方向にトルクが加わる。
なお、図15(a)の場合、スプリング371の第1突出部371bは、ピン372によって、スプリング371の周方向にあまり変位していない。よって、ピン372が、スプリング371の弾性復元力によって受ける力は、後述する図15(b)、(c)の場合よりも小さい。例えば、ピン372は、図15(a)に実線の矢印で示す方向及び大きさの力を、リンク375を介して、スプリング371の第1突出部371bから受ける。
出力ギア65が図15(b)に示す回転位置に位置付けられる場合、すなわち、ピン372が仮想線M上に位置している場合には、第1突出部371bも図15(a)に示す位置よりも仮想線Mに近い。このとき、リンク375のスライド穴375bに対するピン372の位置は、スライド穴375bにおいて屈曲部375aに近い位置である。よって、ピン372とリンク375のスライド穴375bの周縁部との接触点Tも、スライド穴375bにおいて屈曲部375aに近い位置である。
これにより、スプリング371は、第1突出部371bが第2突出部371cに近づくように、周方向に捻られる。したがって、スプリング371は、第1突出部371bが第2突出部371cに対して離れる方向に弾性復元力を生じる。スプリング371の弾性復元力は、図15(b)に実線の矢印で示すように、ピン372に作用する。すなわち、スプリング371の弾性復元力は、ピン372を介して、出力ギア65に対し、クラッチ切断の回転方向(図15(b)における二点鎖線の矢印で示す回転方向)のトルクとして伝達される。これにより、ピン372を介して、スプリング371から出力ギア65にはクラッチ切断の回転方向にアシストする力が伝達される。このとき、ピン372がリンク375を介してスプリング371の第1突出部371bから受ける力は、図15(a)の場合に比べて大きい。
出力ギア65が図15(c)に示す回転位置に位置付けられる場合、すなわち、ピン372が、2つの領域X,Yのうち、領域Yに位置している場合には、第1突出部371bは、図15(b)の場合よりも、第2突出部371cに近づく。このとき、リンク375のスライド穴375bに対するピン372の位置は、スライド穴375bにおいて長手方向の中央付近の位置である。よって、ピン372とリンク375のスライド穴375bの周縁部との接触点Tも、スライド穴375bの長手方向の中央付近の位置である。
これにより、スプリング371で生じる弾性復元力は、図15(c)に実線の矢印で示すように、ピン372に作用する。すなわち、スプリング371の弾性復元力は、ピン372を介して、出力ギア65に対し、クラッチ接続の回転方向(図15(c)における二点鎖線の矢印の回転方向)に作用する。これにより、ピン372を介して、スプリング371から出力ギア65には、クラッチ接続の回転方向にアシストする力が伝達される。
ピン372は、出力ギア65の回転に応じて、出力軸63の軸方向から見て、出力軸63の軸中心Pとスプリング371の軸線Qとを結ぶ仮想線Mを、跨ぐ。ピン372とスライド穴375bの周縁部との接触点Tは、出力軸63の軸中心P及びスプリング371の軸線Qとは異なる位置で、且つ、スプリング371の弾性復元力が小さくなる方向に出力ギア65が回転する際(図15の例では、図15(c)、(b)、(a)の順に出力ギア65が回転する際)に、スプリング371の軸線方向から見て、スプリング371の軸線Qに少なくとも一度近づくように移動する。これにより、スプリング371で生じた弾性復元力を、出力ギア65に対し、第1突出部371bが第2突出部371cに対して離れる方向のアシスト力として伝達することができる。このとき、スプリング371の弾性復元力は、第1突出部371b及びピン372を介して、出力ギア65にトルクとして伝達される。
接触点Tとスプリング371の軸線Qとの間隔Dは、出力ギア65の回転に応じて、変化する。すなわち、間隔Dは、出力軸63の軸方向から見て、接触点Tが仮想線Mを跨ぐ際に最も小さい一方、接触点Tが仮想線Mから遠い位置になるほど、大きい。
出力軸63の軸中心Pと、第1突出部371b及びピン72の接触点Tとの距離は、軸中心Pとスプリング371の軸線Qとの距離よりも小さい。また、スプリング371の軸線Qと接触点Tとの距離は、接触点Tが仮想線M上に位置している場合に、出力軸63の軸中心Pとスプリング371の軸線Qとの距離よりも小さい。
以上の構成によっても、実施形態1の構成と同様、アシスト機構370は、モータ50の回転(作動駆動力)によって、出力ギア65の回転位置が、アクチュエータ回転角が大きくなるように変化、すなわち図15(c)、図15(b)、図15(a)の順に変化することにより、スプリング371から出力ギア65のピン372に作用する力が、所定のアクチュエータ回転角で最大となる放物線状に変化する。これにより、アシスト機構370のアシスト力によって出力軸63に作用する軸トルクも、前記所定のアクチュエータ回転角で最大となる放物線状に変化する。
本実施形態では、出力部379は、出力ギア65の回転及びスプリング371の前記周方向への変形に応じて相対回転するリンク375を含む。これにより、クラッチ駆動装置14の設計自由度を向上できる。
(実施形態5)
図16(a)〜(c)に、実施形態5に係るクラッチ駆動装置のアシスト機構470の概略構成を示す。この実施形態は、出力ギア65に設けられたピン472とスプリング371との間に設けられたリンク475の構成が、実施形態4におけるリンク375の構成とは異なる。以下では、実施形態4と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態4と異なる部分についてのみ説明する。
図16(a)〜(c)に示すように、アシスト機構470は、出力ギア65に設けられたピン472と、スプリング371と、ピン472とスプリング371とを接続するリンク475とを備える。ピン472は、出力軸63を軸方向の上方から見て、出力ギア65の周方向において、出力ギア65の中央よりも時計方向の位置に設けられている。
リンク475は、第1リンク部476と、第2リンク部477とを有する。第1リンク部476及び第2リンク部477は、それぞれ、一方向に長い平板状に形成されている。第1リンク部476は、長手方向の中央部分で幅方向(短手方向)に屈曲していて、平面視でV字状に形成されている。第1リンク部476の長手方向中央部分には、厚み方向に突出する接続ピン478が設けられている。接続ピン478は、スプリング371の第1突出部371bの内方に位置付けられることにより、第1突出部371bと接続されている。
第1リンク部476は、長手方向の一方が、凸部46の中心に回転可能に支持されている。第1リンク部476は、長手方向の他方が、第2リンク部477の長手方向の一方に回転可能に接続されている。第2リンク部477は、長手方向の他方が、出力ギア65のピン472に回転可能に接続されている。
これにより、図16(a)〜(c)に示すように、リンク475は、出力ギア65に設けられたピン472が出力軸63を中心として回転すると、第1リンク部476が長手方向の一方の端部を中心として回転するとともに、第2リンク部477が長手方向の一方を中心として第1リンク部476に対して回転する。これにより、スプリング371は、第1突出部371bが第2突出部371cに近づくように変形を生じる。スプリング371で生じた弾性復元力は、リンク475を介してピン472に作用する。本実施形態では、リンク475及びスプリング371の第1突出部371bが、スプリング371から弾性復元力を出力する出力部479に含まれる。
図16(a)は、クラッチ13が切断状態の際の出力ギア65の回転位置を示す。図16(b)は、クラッチ13が半クラッチ状態の際の出力ギア65の回転位置を示す。図16(c)は、クラッチ13が接続状態の際の出力ギア65の回転位置を示す。
具体的には、出力軸63の軸方向から見て、出力ギア65が図16(a)に示す回転位置に位置付けられている場合、出力ギア65に設けられたピン472は、出力軸63の軸中心Pとスプリング371の軸線Qとを結ぶ仮想線Mによってケーシング本体41の内部空間が2つに分けられることにより得られる2つの領域X,Yのうち、領域Xに位置する。
そのため、ピン472がスプリング371の弾性復元力によって受ける力は、図16(a)に示すように、出力ギア65に対し、クラッチ切断の回転方向(図16(a)における二点鎖線の矢印の回転方向)に回転させる力である。すなわち、出力ギア65には、ピン472を介して、スプリング371によって、クラッチ切断の回転方向にトルクが加わる。図16に示すように、ピン472がスプリング371の弾性復元力によって受ける力は、第2リンク部477の長手方向と一致する。
なお、図16(a)の場合、スプリング371の第1突出部371bは、ピン472によって、スプリング371の周方向にあまり変位していない。よって、ピン472が、リンク475を介してスプリング371の弾性復元力によって受ける力は、後述する図16(b)、(c)の場合よりも小さい。例えば、ピン472は、図16(a)に実線の矢印で示す方向及び大きさの力を、スプリング371の第1突出部371bから受ける。
出力ギア65が図16(b)に示す回転位置に位置付けられる場合、すなわち、リンク475が仮想線Mを跨いでいるとともに、ピン472が仮想線Mに近い場合には、第1突出部371bは図16(a)に示す位置よりも仮想線Mに近い。よって、スプリング371は、第1突出部371bが第2突出部371cに近づくように、周方向に捻られる。これにより、スプリング371は、第1突出部371bが第2突出部371cに対して離れる方向により大きな弾性復元力を生じる。スプリング371の弾性復元力は、図16(b)に実線の矢印で示すように、ピン472に作用する。すなわち、スプリング371の弾性復元力は、ピン472を介して、出力ギア65に対し、クラッチ切断の回転方向(図16(b)における二点鎖線の矢印で示す回転方向)のトルクとして伝達される。これにより、ピン472を介して、スプリング371から出力ギア65にはクラッチ切断の回転方向にアシストする力が伝達される。このとき、ピン472がスプリング371の第1突出部371bから受ける力は、図16(a)の場合に比べて大きい。
出力ギア65が図16(c)に示す回転位置に位置付けられる場合、すなわち、ピン472が、2つの領域X,Yのうち、領域Yに位置している場合には、第2リンク部477が長手方向の一方を中心として第1リンク部476に対して回転する。このとき、第2リンク部477は、出力ギア65とともに回転する。
これにより、スプリング371で生じる弾性復元力は、図16(c)に実線の矢印で示すように、ピン472に作用する。すなわち、スプリング371の弾性復元力は、ピン472を介して、出力ギア65に対し、クラッチ接続の回転方向(図16(c)における二点鎖線の矢印の回転方向)に作用する。これにより、ピン472を介して、スプリング371から出力ギア65には、クラッチ接続の回転方向にアシストする力が伝達される。
ピン472は、出力ギア65の回転に応じて、出力軸63の軸方向から見て、出力軸63の軸中心Pとスプリング371の軸線Qとを結ぶ仮想線Mを、跨ぐ。
以上の構成によっても、実施形態1の構成と同様、アシスト機構470は、モータ50の回転(作動駆動力)によって、出力ギア65の回転位置が、アクチュエータ回転角が大きくなるように変化、すなわち図16(c)、図16(b)、図16(a)の順に変化することにより、スプリング371から出力ギア65のピン472に作用する力が、所定のアクチュエータ回転角で最大となる放物線状に変化する。これにより、アシスト機構470のアシスト力によって出力軸63に作用する軸トルクも、前記所定のアクチュエータ回転角で最大となる放物線状に変化する。
なお、特に図示しないが、本実施形態では、ピン472とリンク475の第2リンク部477との接触点が、伝達部と出力部との接触点に対応する。
(実施形態6)
図17(a)〜(c)に、実施形態6に係るクラッチ駆動装置のアシスト機構570の概略構成を示す。この実施形態に係るアシスト機構570では、スプリング71の第1突出部71bに接触するピン572の構成が、実施形態1の構成とは異なる。以下では、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分についてのみ説明する。
図17(a)〜(c)に示すように、出力ギア65に設けられているピン572は、径方向に突出する突出部572aを有する。突出部572aは、出力軸63の軸方向から見て、先端部分が鋭角に形成されている。ピン572は、前記軸方向から見て、突出部572aとは反対側に、半円状の円柱部572bを有する。すなわち、ピン572は、円柱状の部材に突出部572aが一体に設けられた形状を有する。ピン572は、出力軸63を軸方向の上方から見て、出力ギア65の周方向において、出力ギア65の中央よりも時計方向の位置に設けられている。
ピン572は、スプリング71の第1突出部71bに接触している。よって、ピン572は、出力ギア65が回転した際に、第1突出部71bに接触しつつ、第1突出部71bに対して移動する。この際、ピン572が第1突出部71bと接触する位置は、出力ギア65の回転に応じてピン572の周方向に移動する。上述のように、ピン572は、円柱状の部材に突出部572aが設けられた部材であるため、出力ギア65の回転に応じて、ピン572の突出部572aまたは円柱部572bが第1突出部71bに接触する。
図17(a)〜(c)に示すように、スプリング71は、出力ギア65の回転に伴ってピン572が出力軸63の軸線周りに回転した場合、ピン572と接触する第1突出部71bが、第2突出部71cに対してスプリング71の周方向に変位する。この際、ピン572とスプリング71の第1突出部71bとの接触点Tは、第1突出部71bに沿うように、第1突出部71bに対して往復移動する。なお、接触点Tは、スプリング71の軸線方向から見て、スプリング71よりも径方向外方に位置する。
図17(a)は、クラッチ13が切断状態の際の出力ギア65の回転位置を示す。図17(b)は、クラッチ13が半クラッチ状態の際の出力ギア65の回転位置を示す。図17(c)は、クラッチ13が接続状態の際の出力ギア65の回転位置を示す。
具体的には、出力軸63の軸方向から見て、出力ギア65が図17(a)に示す回転位置に位置付けられている場合、すなわち、出力ギア65に設けられたピン572とスプリング71の第1突出部71bとの接触点Tが、出力軸63の軸中心Pとスプリング71の軸線Qとを結ぶ仮想線Mの近傍に位置している場合には、ピン572は、スプリング71の第1突出部71bに対し、突出方向の中央付近に接触している。この際、ピン572は、突出部572aの先端部分が、第1突出部71bに接触している。
そのため、ピン572がスプリング71の弾性復元力によって受ける力は、図17(a)に示すように、出力ギア65に対し、クラッチ切断の回転方向(図17(a)における二点鎖線の矢印の回転方向)に回転させる力である。すなわち、出力ギア65には、ピン572を介して、スプリング71によって、クラッチ切断の回転方向にトルクが加わる。
なお、図17(a)の場合、ピン572と第1突出部71bとの接触点Tは、仮想線Mによってケーシング本体41の内部空間が2つに分けられることにより得られる2つの領域X,Yのうち、領域Yに位置している。一方、ピン572は、突出部572aがスプリング71の第1突出部71bに接触しているため、ピン572の円柱部572bは、2つの領域X,Yのうち、領域Xに位置している。例えば、ピン572は、図17(a)に実線の矢印で示す方向及び大きさの力を、スプリング71の第1突出部71bから受ける。
出力ギア65が図17(b)に示す回転位置に位置付けられる場合、すなわち、ピン572の円柱部572bが仮想線M上に位置している場合には、ピン572の突出部572aと円柱部572bとの接続部分がスプリング71の第1突出部71bに接触する。この際、ピン572とスプリング71の第1突出部71bとの接触点Tは、第1突出部71bの基端部(コイル部71aとの接続部分)に近い位置である。例えば、出力ギア65が図17(a)に示す位置から図17(b)に示す位置に変化した場合、接触点Tはスプリング71の第1突出部71bの基端部に近づくように移動し、第1突出部71bは、第2突出部71cに近づくように変位する。
これにより、スプリング71は、周方向に捻られる。よって、スプリング71は、第1突出部71bが第2突出部71cに対して離れる方向に弾性復元力を生じる。スプリング71の弾性復元力は、図17(b)に実線の矢印で示すように、ピン572に作用する。すなわち、スプリング71の弾性復元力は、ピン572を介して、出力ギア65に対し、クラッチ切断の回転方向(図17(b)における二点鎖線の矢印で示す回転方向)のトルクとして伝達される。これにより、ピン572を介して、スプリング71から出力ギア65にはクラッチ切断の回転方向にアシストする力が伝達される。このとき、ピン572がスプリング71の第1突出部71bから受ける力は、図17(a)の場合に比べて大きい。
出力ギア65が図17(c)に示す回転位置に位置付けられる場合、すなわち、ピン572が、2つの領域X,Yのうち、領域Yに位置している場合には、ピン572によって、スプリング71の第1突出部71bは、第2突出部71cにより近づくように、変位する。このとき、ピン572は、スプリング71の第1突出部71bに対し、図17(b)に示す位置よりも、先端部に近い位置に位置付けられている。
これにより、スプリング71は、周方向にさらに捻られる。スプリング71の弾性復元力は、図17(c)に実線の矢印で示すように、ピン572に作用する。すなわち、スプリング71の弾性復元力は、ピン572を介して、出力ギア65に対し、クラッチ接続の回転方向(図17(c)における二点鎖線の矢印の回転方向)に作用する。これにより、ピン572を介して、スプリング71から出力ギア65には、クラッチ接続の回転方向にアシストする力が伝達される。
本実施形態に係るアシスト機構570の構成では、ピン572とスプリング71の第1突出部71bとの接触点Tは、出力ギア65の回転に応じて、出力軸63の軸方向から見て、出力軸63の軸中心Pとスプリング71の軸線Qとを結ぶ仮想線Mを、跨がない。すなわち、出力ギア65の回転に応じて、接触点Tは、2つの領域X,Yのうち、領域Yのみを移動する。このように、接触点Tが仮想線Mを跨がない場合でも、ピン572と第1突出部71bとの接触点Tは、出力軸63の軸中心P及びスプリング71の軸線Qとは異なる位置で、且つ、スプリング71の弾性復元力が小さくなる方向に出力ギア65が回転する際(図17の例では、図17(c)、(b)、(a)の順に出力ギア65が回転する際)に、スプリング71の軸線方向から見て、スプリング71の軸線Qに少なくとも一度近づくように移動する。これにより、スプリング71で生じた弾性復元力を、出力ギア65に対し、第1突出部71bが第2突出部71cに対して離れる方向のアシスト力として伝達することができる。このとき、スプリング71の弾性復元力は、第1突出部71b及びピン572を介して、出力ギア65にトルクとして伝達される。
接触点Tとスプリング71の軸線Qとの間隔Dは、出力ギア65の回転に応じて、変化する。例えば図17(a)〜(c)に示す例では、間隔Dは、出力軸63の軸方向から見て、ピン572とスプリング71の第1突出部71bとの接触点Tが仮想線M上に位置している際に最も小さい一方、接触点Tが仮想線Mから遠い位置になるほど、大きい。
なお、間隔Dは、ピン572の形状を変えることによって、変化させることができる。よって、アシスト機構570によって得られるアシスト力を、ピン572の形状によって、変化させることができる。これにより、所望のアシスト力を得ることが可能になる。
出力軸63の軸中心Pと、第1突出部71b及びピン572の接触点Tとの距離は、軸中心Pとスプリング71の軸線Qとの距離よりも小さい。また、スプリング71の軸線Qと接触点Tとの距離は、接触点Tが仮想線M上に位置している場合に、出力軸63の軸中心Pとスプリング71の軸線Qとの距離よりも小さい。
以上の構成によっても、実施形態1の構成と同様、アシスト機構570は、モータ50の回転(作動駆動力)によって、出力ギア65の回転位置が、アクチュエータ回転角が大きくなるように変化、すなわち図17(c)、図17(b)、図17(a)の順に変化することにより、スプリング71から出力ギア65に設けられたピン572に作用する力が、所定のアクチュエータ回転角で最大となる放物線状に変化する。これにより、アシスト機構570のアシスト力によって出力軸63に作用する軸トルクも、前記所定のアクチュエータ回転角で最大となる放物線状に変化する。
(実施形態7)
図18(a)〜(c)に、実施形態7に係るクラッチ駆動装置のアシスト機構670の概略構成を示す。この実施形態に係るアシスト機構670では、出力ギア65におけるピン672の位置が、実施形態1の構成とは異なる。以下では、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分についてのみ説明する。
ピン672は、実施形態1におけるピン72と同様、円柱状の部材であり、出力ギア65に、出力ギア65の厚み方向に突出するように設けられている。
図18(a)〜(c)に示すように、ピン672は、出力ギア65を前記軸方向の上方から見て、出力ギア65の周方向において、出力ギア65の中央よりも時計方向に位置している。これにより、出力ギア65を前記軸方向の上方から見て、出力ギア65が時計方向に回転した際に、ピン672が、スプリング71の第1突出部71bと接触する。
図18(a)〜(c)に示すように、スプリング71は、出力ギア65の回転に伴ってピン672が出力軸63の軸線周りに回転した場合、ピン672と接触する線材の一端が、前記線材の他端に対してスプリング71の周方向に変位する。この際、ピン672とスプリング71の線材の一端を含む第1突出部71bとの接触点Tは、第1突出部71bに沿うように、第1突出部71bに対して移動する。なお、接触点Tは、スプリング71の軸線方向から見て、スプリング71よりも径方向外方に位置する。
図18(a)は、クラッチ13が切断状態の際の出力ギア65の回転位置を示す。図18(b)は、クラッチ13が半クラッチ状態の際の出力ギア65の回転位置を示す。図18(c)は、クラッチ13が接続状態の際の出力ギア65の回転位置を示す。
具体的には、出力軸63の軸方向から見て、出力ギア65が図18(a)に示す回転位置に位置付けられている場合、すなわち、出力ギア65に設けられたピン672が、出力軸63の軸中心Pとスプリング71の軸線Qとを結ぶ仮想線M上に位置している場合には、ピン672は、スプリング71の第1突出部71bに対し、基端部の近くに位置している。
そのため、ピン672がスプリング71の弾性復元力によって受ける力は、図18(a)に示すように、出力ギア65に対し、クラッチ切断の回転方向(図18(a)における二点鎖線の矢印の回転方向)に回転させる力である。すなわち、出力ギア65には、ピン672を介して、スプリング71によって、クラッチ切断の回転方向にトルクが加わる。
なお、図18(a)の場合、ピン672と第1突出部71bとの接触点Tは、仮想線Mによってケーシング本体41の内部空間が2つに分けられることにより得られる2つの領域X,Yのうち、領域Yに位置している。例えば、ピン672は、図18(a)に実線の矢印で示す方向及び大きさの力を、スプリング71の第1突出部71bから受ける。
出力ギア65が図18(b)に示す回転位置に位置付けられる場合、すなわち、ピン672が2つの領域X,Yのうち、領域Yに位置するとともに、出力ギア65の周方向における中央が仮想線M上に位置している場合には、ピン672はスプリング71の第1突出部71bに対して突出方向の中央付近で接触する。
これにより、スプリング71は、周方向に捻られる。よって、スプリング71は、第1突出部71bが第2突出部71cに対して離れる方向に弾性復元力を生じる。スプリング71の弾性復元力は、図18(b)に実線の矢印で示すように、ピン672に作用する。すなわち、スプリング71の弾性復元力は、ピン672を介して、出力ギア65に対し、クラッチ切断の回転方向(図18(b)における二点鎖線の矢印で示す回転方向)のトルクとして伝達される。これにより、ピン672を介して、スプリング71から出力ギア65にはクラッチ切断の回転方向にアシストする力が伝達される。
出力ギア65が図18(c)に示す回転位置に位置付けられる場合、すなわち、ピン672が、2つの領域X,Yのうち、領域Yに位置するとともに、出力ギア65の半分以上が領域Yに位置している場合には、ピン672は、スプリング71の第1突出部71bに対し、図18(b)に示す位置よりも、先端部に近い位置に位置付けられている。
これにより、スプリング71の弾性復元力は、図18(c)に実線の矢印で示すように、ピン672に作用する。すなわち、スプリング71の弾性復元力は、ピン672を介して、出力ギア65に対し、クラッチ接続の回転方向(図18(c)における二点鎖線の矢印の回転方向)に作用する。これにより、ピン672を介して、スプリング71から出力ギア65には、クラッチ接続の回転方向にアシストする力が伝達される。
本実施形態に係るアシスト機構670の構成では、ピン672とスプリング71の第1突出部71bとの接触点Tは、出力ギア65の回転に応じて、出力軸63の軸方向から見て、出力軸63の軸中心Pとスプリング71の軸線Qとを結ぶ仮想線Mを、跨がない。すなわち、出力ギア65の回転に応じて、接触点Tは、2つの領域X,Yのうち、領域Yのみを移動する。ピン672と第1突出部71bとの接触点Tは、出力軸63の軸中心P及びスプリング71の軸線Qとは異なる位置で、且つ、スプリング71の弾性復元力が小さくなる方向に出力ギア65が回転する際に、スプリング71の軸線方向から見て、スプリング71の軸線Qに少なくとも一度近づくように移動する。これにより、スプリング71で生じた弾性復元力を、出力ギア65に対し、第1突出部71bが第2突出部71cに対して離れる方向のアシスト力として伝達することができる。このとき、スプリング71の弾性復元力は、第1突出部71b及びピン672を介して、出力ギア65にトルクとして伝達される。
本実施形態に係るアシスト機構670の構成でも、接触点Tとスプリング71の軸線Qとの間隔Dは、出力ギア65の回転に応じて、変化する。間隔Dは、出力軸63の軸方向から見て、ピン672と第1突出部71bとの接触点Tが仮想線M上に位置している際に最も小さい一方、接触点Tが仮想線Mから遠い位置になるほど、大きい。本実施形態の場合では、クラッチ13が切断状態のとき(図18(a))に、間隔Dが最も小さい。よって、クラッチ13が切断状態から接続状態に切り替わる際に、間隔Dは大きくなる。
出力軸63の軸中心Pと、第1突出部71b及びピン672の接触点Tとの距離は、軸中心Pとスプリング71の軸線Qとの距離よりも小さい。また、スプリング71の軸線Qと接触点Tとの距離は、接触点Tが仮想線M上に位置している場合に、出力軸63の軸中心Pとスプリング71の軸線Qとの距離よりも小さい。
以上の構成により、アシスト機構670は、モータ50の回転(作動駆動力)によって、出力ギア65の回転位置が、アクチュエータ回転角が大きくなるように変化、すなわち図18(c)、図18(b)、図18(a)の順に変化することにより、スプリング71から出力ギア65に設けられたピン672に作用する力が、クラッチ13を切断する方向に徐々に大きくなる。これにより、図19に示すように、アシスト機構670のアシスト力によって出力軸63に作用する軸トルクも、アクチュエータ回転角が大きくなるほど、クラッチ13の切断の回転方向に作用するトルクが大きくなるように変化する。
よって、図19に示すように、クラッチが接続状態から切断状態に切り替わる際に、アクチュエータ回転角が大きくなるとクラッチ反力によって出力軸63に生じる軸トルクが増加する構成であっても、該軸トルクを、アシスト機構670のアシスト力により出力軸63に作用する軸トルクを用いて、相殺することができる。したがって、上述のようにクラッチ反力が変化する構成において、例えば、クラッチユニットがリンク機構を介することなくクラッチ駆動装置14の出力軸63と回転軸31とが同期回転する構成を有する場合等でも、アシスト機構670のアシスト力によって、クラッチ13を駆動させる際の駆動力を軽減することが可能になる。よって、モータ50の作動駆動力を低減することができる。
なお、図19において、Sは、アクチュエータ回転角が増加する場合には、クラッチ13が切断を開始するアクチュエータ回転角であり、アクチュエータ回転角が減少する場合には、クラッチ13のクラッチプレート23と摩擦プレート24とが接続を完了するアクチュエータ回転角である。
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
前記各実施形態では、スプリング71,171,271,371の周方向において、第1突出部71b,171b,271b,371bを、第2突出部71c,171c,271c,371cに近づけるように変位させることによって得られた弾性復元力を、ピン72,572,672に伝達することにより、アシスト力として利用している。
しかしながら、図20(a)〜(c)に示すように、第1突出部771bを第2突出部771cからスプリング771の周方向に離間させることによって得られた弾性復元力を、ピン772に伝達することにより、アシスト力として利用してもよい。
詳しくは、図20(a)〜(c)に示すように、スプリング771は、コイル部771aと、第1突出部771bと、第2突出部771cとを備える。スプリング771は、出力軸63の軸方向の上方から見て、第1突出部771bが、第2突出部771cに対しスプリング771の周方向に反時計方向の位置に設けられている。スプリング771は、第1突出部771bを巻き始め側とすると、スプリング771を軸方向における第1突出部771b側から見て、線材が反時計方向に巻かれている。すなわち、スプリング771は、前記各実施形態におけるスプリング71,171,271,371とは逆巻きのスプリングである。なお、第2突出部771cは、ケーシング本体41に対して移動しないように、例えばケーシング本体41などに固定されている。
第1突出部771bが第2突出部771cに対してスプリング771の周方向に離間するように変形することによって、スプリング771には弾性復元力が生じる。第1突出部771bを第2突出部771cに対して前記周方向に離間させた際、スプリング771は、径が大きくなるように変形する。
ピン772は、出力軸63を軸方向の上方から見て、出力ギア65の周方向において、出力ギア65の中央よりも時計方向の位置に設けられている。
図20(a)〜(c)に示すように、スプリング771は、出力ギア65の回転に伴ってピン772が出力軸63の軸線周りに回転した場合、ピン772と接触する第1突出部771bが、スプリング771の周方向に変位する。この際、ピン772とスプリング771の第1突出部771bとの接触点Tは、第1突出部771bに沿うように、第1突出部771bに対して往復移動する。
図20(a)は、クラッチ13が切断状態の際の出力ギア65の回転位置を示す。図20(b)は、クラッチ13が半クラッチ状態の際の出力ギア65の回転位置を示す。図20(c)は、クラッチ13が接続状態の際の出力ギア65の回転位置を示す。
具体的には、出力軸63の軸方向から見て、出力ギア65が図20(a)に示す回転位置に位置付けられている場合、すなわち、出力ギア65に設けられたピン772が、出力軸63の軸中心Pとスプリング771の軸線Qとを結ぶ仮想線Mによってケーシング本体41の内部空間が2つに分けられることにより得られる2つの領域X,Yのうち、領域Xに位置している場合には、ピン772は、スプリング771の第1突出部771bに対し、突出方向の中央と基端部(コイル部771aとの接続部分)との間の位置で接触している。
そのため、ピン772がスプリング771の弾性復元力によって受ける力は、図20(a)に示すように、出力ギア65に対し、クラッチ切断の回転方向(図20(a)における二点鎖線の矢印の回転方向)に回転させる力である。すなわち、出力ギア65には、ピン772を介して、スプリング771によって、クラッチ切断の回転方向にトルクが加わる。
なお、図20(a)の場合、スプリング771の第1突出部771bは、ピン772によって、スプリング771の周方向にあまり変位していない。よって、ピン772が、スプリング771の弾性復元力によって受ける力は、後述する図20(b)、(c)の場合よりも小さい。例えば、ピン772は、図20(a)に実線の矢印で示す方向及び大きさの力を、スプリング771の第1突出部771bから受ける。
出力ギア65が図20(b)に示す回転位置に位置付けられる場合、すなわち、ピン772が仮想線M上に位置している場合には、ピン772は、第1突出部771bに対して基端部の位置で接触する。この際、スプリング771の第1突出部771bは、基端部が領域Yに位置するように、すなわち、第1突出部771bの基端部が、第2突出部771cから離間するように、変位する。例えば、出力ギア65が図20(a)に示す位置から図20(b)に示す位置に変化した場合、ピン772は、スプリング771の第1突出部771bに対し、接触しつつ基端部に向かって移動する。
これにより、スプリング771は、周方向に捻られる。よって、スプリング771は、第1突出部771bが第2突出部771cに対して近づく方向に弾性復元力を生じる。スプリング771の弾性復元力は、図20(b)に実線の矢印で示すように、ピン772に作用する。すなわち、スプリング771の弾性復元力は、ピン772を介して、出力ギア65に対し、クラッチ切断の回転方向(図20(b)における二点鎖線の矢印で示す回転方向)のトルクとして伝達される。これにより、ピン772を介して、スプリング771から出力ギア65にはクラッチ切断の回転方向にアシストする力が伝達される。このとき、ピン772がスプリング771の第1突出部771bから受ける力は、図20(a)の場合に比べて大きい。
出力ギア65が図20(c)に示す回転位置に位置付けられる場合、すなわち、ピン772が、2つの領域X,Yのうち、領域Yに位置している場合には、ピン772によって、スプリング771の第1突出部771bは、第2突出部771cに対してより離間するように、変位する。このとき、ピン772は、スプリング771の第1突出部771bに対し、図20(b)に示す位置よりも、先端に近い位置に位置付けられている。
これにより、スプリング771は、周方向にさらに捻られる。スプリング771の弾性復元力は、図20(c)に実線の矢印で示すように、ピン772に作用する。すなわち、スプリング771の弾性復元力は、ピン772を介して、出力ギア65に対し、クラッチ接続の回転方向(図20(c)における二点鎖線の矢印の回転方向)に作用する。これにより、ピン772を介して、スプリング771から出力ギア65には、クラッチ接続の回転方向にアシストする力が伝達される。
ピン772とスプリング771の第1突出部771bとの接触点Tは、出力ギア65の回転に応じて、出力軸63の軸方向から見て、出力軸63の軸中心Pとスプリング771の軸線Qとを結ぶ仮想線Mを、跨ぐ。ピン772と第1突出部771bとの接触点Tは、出力軸63の軸中心P及びスプリング771の軸線Qとは異なる位置で、且つ、スプリング771の弾性復元力が小さくなる方向に出力ギア65が回転する際(図20の例では、図20(c)、(b)、(a)の順に出力ギア65が回転する際)に、スプリング771の軸線方向から見て、スプリング771の軸線Qに少なくとも一度近づくように移動する。これにより、スプリング771で生じた弾性復元力を、出力ギア65に対し、第1突出部771bが第2突出部771cに対して近づく方向のアシスト力として伝達することができる。このとき、スプリング771の弾性復元力は、第1突出部771b及びピン772を介して、出力ギア65にトルクとして伝達される。
接触点Tとスプリング771の軸線Qとの間隔Dは、出力ギア65の回転に応じて、変化する。すなわち、間隔Dは、出力軸63の軸方向から見て、接触点Tが仮想線Mを跨ぐ際に最も小さい一方、接触点Tが仮想線Mから遠い位置になるほど、大きい。
出力軸63の軸中心Pと、第1突出部771b及びピン772の接触点Tとの距離は、軸中心Pとスプリング771の軸線Qとの距離よりも小さい。また、スプリング771の軸線Qと接触点Tとの距離は、接触点Tが仮想線M上に位置している場合に、出力軸63の軸中心Pとスプリング771の軸線Qとの距離よりも小さい。
以上の構成によっても、実施形態1等の構成と同様、アシスト機構は、モータ50の回転(作動駆動力)によって、出力ギア65の回転位置が、アクチュエータ回転角が大きくなるように変化、すなわち図20(c)、図20(b)、図20(a)の順に変化することにより、スプリング771から出力ギア65のピン772に作用する力が、所定のアクチュエータ回転角で最大となる放物線状に変化する。これにより、クラッチ駆動装置の駆動力によって出力軸63に作用する軸トルクも、前記所定のアクチュエータ回転角で最大となる放物線状に変化する。
なお、上述のような構成を有するスプリング771を、前記各実施形態の構成に適用してもよい。
前記各実施形態では、クラッチ13は、クラッチ駆動装置から出力されるアシスト力がゼロの場合に、接続状態である、いわゆるノーマルクローズタイプの構成である。しかしながら、クラッチ13は、クラッチ駆動装置から出力されるアシスト力がゼロの場合に、切断状態である、いわゆるノーマルオープンタイプの構成であってもよい。
詳しくは、図21に示すように、アクチュエータ回転角が大きくなると、クラッチ13でクラッチ反力が小さくなるとともに、クラッチ駆動装置によって生じるアシスト力も小さくなるように、クラッチ13及びクラッチ駆動装置が構成されていてもよい。すなわち、図21の場合では、アクチュエータ回転角が大きいと、クラッチ13は切断状態であり、アクチュエータ回転角が小さくなると、クラッチ13は切断状態から接続状態に切り替わる。図21において、アクチュエータ回転角がゼロの状態で、クラッチ13は接続状態である。また、図21において、Sは、アクチュエータ回転角が小さくなる場合には、クラッチ13が接続を開始するアクチュエータ回転角であり、アクチュエータ回転角が大きくなる場合には、クラッチ13は切断が完了したアクチュエータ回転角である。
このような構成においても、クラッチ駆動装置で生じたアシスト力によって、クラッチの切替動作に必要なモータ50の作動駆動力を低減することができる。
前記各実施形態では、出力ギア65に設けられたピン72,172,272,372,472,672は、円柱状である。しかしながら、スプリング71,171,271,371で生じた弾性復元力を伝達することにより、クラッチ13の切替動作に必要な作動駆動力を低減可能な構成であれば、ピンの形状は、どのような形状であってもよい。同様に、前記各実施形態におけるスプリング71,171,271,371の形状も、クラッチ13の切替動作に必要な作動駆動力を低減可能な弾性復元力を発生可能な構成であれば、どのような形状であってもよい。
前記各実施形態では、スプリング71,171,271,371の第1突出部71b,171b,271b,371bに、ピン72,172,272,572,672を直接、接触している。しかしながら、スプリング71,171,271,371の第1突出部71b,171b,271b,371bに、別部材を設けて、該別部材にピン72,172,272,572,672を接触させてもよい。
前記実施形態5では、リンク475は、第1リンク部476及び第2リンク部477を有する。しかしながら、スプリング371の弾性復元力を出力ギア65に伝達可能なリンクの構成であれば、リンクは、3つ以上のリンク部材によって構成されていてもよい。
前記実施形態1では、クラッチ13のプッシュロッド29は、リンク機構16に接続された回転軸31によって、メインシャフト15の軸方向に移動する。しかしながら、リンク機構16を用いずに、クラッチ駆動装置14の出力を直接、回転軸31に伝達してもよい。
前記実施形態1では、クラッチ駆動装置14の出力及びクラッチ13で生じたクラッチ反力が入力される伝達部材の一例として、出力軸63が挙げられている。しかしながら、伝達部材は、例えば出力ギア65や回転軸31などのように、モータ50及びアシスト機構70の出力と、クラッチ13で生じたクラッチ反力とが入力される構成部品であれば、出力軸63以外の構成部品であってもよい。
前記実施形態1では、クラッチ駆動装置14は、入力軸61から出力軸63に、中間軸62を介して回転を伝達する。しかしながら、入力軸61と出力軸63とがギアによって直接、回転を伝達するように構成されていてもよい。
前記実施形態1では、クラッチ駆動装置14は、セルフロック機構の一例として、摩擦機構80を備えている。しかしながら、他の構成によって、セルフロックの機能を実現してもよい。クラッチ駆動装置14は、摩擦機構80等のセルフロック機構を備えていなくてもよい。
前記実施形態1では、クラッチ駆動装置14は、クラッチ13を作動させるための作動駆動力を発生させるモータ50を備えている。しかしながら、クラッチ駆動装置14は、前記作動駆動力を発生可能な他の駆動源を有していてもよい。
前記実施形態1では、クラッチ駆動装置14において、入力軸61の回転を出力軸63に伝達するギア61a,62a、中間ギア64及び出力ギア65は、平歯車である。しかしながら、これらのギアの少なくとも一部が平歯車で、残りは他の形状の歯車であってもよい。また、上述のギアの全てが、平歯車以外の形状の歯車であってもよい。
前記実施形態1では、入力軸61にギア61aが設けられているとともに、中間軸62にもギア62aが設けられている。ギア61aは、入力軸61と一体で設けられていてもよいし、別の部品によって構成されていてもよい。ギア62aは、中間軸62と一体で設けられていてもよいし、別の部品によって構成されていてもよい。
前記実施形態1では、ケーシング40の筒軸方向と、入力軸61、中間軸62及び出力軸63の軸方向と、スプリング71の軸線方向とは、同じ方向である。しかしながら、ケーシング40の筒軸方向と、入力軸61及び出力軸63の軸方向と、スプリング71の軸線方向とが、それぞれ異なる方向であってもよい。
前記各実施形態では、クラッチ駆動装置は、トーションスプリングであるスプリング71,171,271,371を備えている。しかしながら、クラッチ駆動装置は、クラッチ13の駆動に対するアシスト力を出力可能に構成されていれば、例えば、板ばねによって構成されたスプリングなど、トーションスプリングであるスプリング以外の構成を備えていてもよい。
前記実施形態では、車両1の例として自動2輪車を説明したが、車両1は3輪車や4輪車など、クラッチを駆動させるクラッチ駆動装置を備えた構成であれば、どのような構成であってもよい。