JP6810615B2 - 燃料噴射弁の製造方法 - Google Patents
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Description
閉弁時間CTがドライ状態とウェット状態とで異なると、燃料噴射弁の製造時における調整時点と、実際の運転時点とで燃料噴射量が異なってしまうという問題があった。また、噴射量を測定し、不良となったときに、アーマチュアのリフト量を含め燃料噴射弁のどこに不具合があるのかわからないため、燃料噴射弁を全分解し、再調整する必要があった。
また、各図において、詳細部分の図示が適宜簡略化または省略されている。また、重複する説明については、適宜簡略化または省略されている。
<コモンレール式燃料噴射制御装置の基本構成>
本発明の実施の形態における燃料噴射弁(インジェクタ)の製造方法は、いわゆるコモンレール式燃料噴射制御装置に適用されるものである。
図1は、実施の形態に係るコモンレール式燃料噴射制御装置を示す構成図である。
コモンレール式燃料噴射制御装置は、高圧燃料の圧送を行う高圧ポンプ装置50と、この高圧ポンプ装置50により圧送された高圧燃料を蓄えるコモンレール1と、このコモンレール1から供給された高圧燃料をディーゼルエンジン(以下「エンジン3」と称する)の各気筒へ供給する複数の燃料噴射弁2と、エンジン3の動作制御や後述する燃料噴射制御処理などを実行する電子制御ユニット4(図1においては「ECU」と表記)とを主たる構成要素として構成されたものとなっている。
このような構成自体は、従来から良く知られている燃料噴射制御装置の基本的な構成と同一のものである。
係る構成において、燃料タンク9の燃料は、供給ポンプ5により汲み上げられ、調量弁6を介して高圧ポンプ7へ供給されるようになっている。調量弁6には、電磁式比例制御弁が用いられ、その通電量が電子制御ユニット4によって制御されることで、高圧ポンプ7への供給燃料の流量、換言すれば、高圧ポンプ7の吐出量が調整されるものとなっている。
また、供給ポンプ5は、高圧ポンプ装置50の上流側に高圧ポンプ装置50と別体に設けるようにしても、また、燃料タンク9内に設けるようにしても良いものである。
図2は、実施の形態に係る燃料噴射弁の断面図である。
図2に示す公知の燃料噴射弁2は、燃料噴射弁本体30と、燃料噴射弁本体30の先端側に取り付けられたノズル体31と、燃料噴射弁本体30のノズル体31に対向する他端側に取り付けられたソレノイドバルブ32と、により大きく構成されている。ノズル体31内には、ノズル体31の軸方向に摺動可能に配置されたノズルニードル33が配置されている。ノズルニードル33には、長尺状のバルブピストン34が取り付けられている。バルブピストン34は、燃料噴射弁本体30内において、燃料噴射弁本体30の軸方向に摺動可能に配置されている。
燃料噴射弁2は、燃料の無噴射状態において、マグネット40への通電が停止している。アーマチュア41は、バルブスプリング45によりバルブシート43上に着座し、オリフィス44を閉じた状態となる。すると、制御室36には高圧の燃料がコモンレール1より充填されるとともに、ノズルシート部39側にも同様に高圧の燃料が充填されることとなる。この状態で、ノズルニードル33は、制御室36とノズルシート部39とに作用する燃料の受圧面積の差から生じる力、及び、ノズルスプリング33aにより作用する付勢力の合力により、ノズルシート部39側(下方側)に付勢され、ノズルシート部39は閉じた状態となる。よって、燃料は噴射されない。
燃料噴射弁2の噴射時におけるマグネット40への通電時間ET、及び、閉弁時間CTについて説明する。
図3は、実施の形態に係るソレノイドバルブのマグネットの電流値とアーマチュアのリフト量との関係を示した図である。
実施の形態に係る燃料噴射弁2のマグネット40への通電は、図3に示すように、通電開始時間tp1で開始され、通電終了時間tp2になると停止する。このとき、マグネット40の電流値は、通電開始時間tp1から時間の経過と共に急速に上昇し、一旦、あるピーク値に達したのち若干減少する。
そして、通電終了時間tp2でマグネット40の磁力がなくなると、アーマチュア41はバルブシート43に向けて降下する。そして、着座時間ta1でアーマチュア41がバルブシート43に着座する。
なお、上述の各時間tp1、tp2・・・等は、エンジン3内のピストン(図示せず)が上死点にあるタイミングを基準として定められるものである。
図3において破線で示す着座時間ta2は、閉弁時間CTが新品中央品の基準値からずれている燃料噴射弁2の通電波形を示している。
すなわち、基準値の第1閉弁時間CT1よりも長い時間をかけてアーマチュア41が最大リフト位置からバルブシート43に着座する。この時の着座時間ta2は、新品中央品の基準の着座時間ta1よりも図3において右側にシフトする。そして、このときの第2閉弁時間CT2は、通電終了時間tp2と着座時間ta2との時間間隔で表され、第1閉弁時間CT1よりも長くなっている。
ここで、閉弁時間CTの新品中央品の基準値である第1閉弁時間CT1と、ばらつき等により基準値からずれた第2閉弁時間CT2との差を閉弁時間差△CTと定義する。
図3に示す場合、通電時間ETは2つの燃料噴射弁2で共通だが、閉弁時間CTが異なることにより、開弁時間VOT1と開弁時間VOT2とに差が生じ、燃料噴射量が異なってしまうこととなる。
ここで、図4を用いて、燃料噴射弁2に燃料の圧力(レール圧P)を変化させて充填したときの通電時間ETと閉弁時間CTとの関係について説明する。
図4は、実施の形態に係る燃料噴射弁の通電時間ETと閉弁時間CTとの関係を示した模式図である。
図4は、横軸に燃料噴射弁2のマグネット40への通電時間ETを示し、縦軸に通電時間ETが終了した時点からアーマチュア41がバルブシート43に着座するまでの時間である閉弁時間CTを示している。
また、燃料噴射弁2に充填される燃料の圧力(レール圧P)を複数のパターンに分けて測定したものである。図4では、レール圧Pが40MPaの場合の閉弁時間CTの範囲を実線で示し、レール圧Pが80MPaの場合の閉弁時間CTの範囲を破線で示し、レール圧Pが120MPaの場合の閉弁時間CTの範囲を鎖線で示している。
また、通電時間ETがET=230μsより長くなると、アーマチュア41がアーマチュア41とマグネット40の下面との間に燃料が圧縮された状態で衝突し、燃料の反発力で跳ね返ってバルブシート43上に着座する。よって、アーマチュア41に初期速度が付加された状態でバルブシート43上まで移動する。したがって、閉弁時間CTが通電時間ETの増加に伴い徐々に短くなる。
アーマチュア41のリフト量の調整は、例えば、調整ナット47を回転させることで行うことができる。
図5は、実施の形態に係る燃料噴射弁の斜視図である。
図6は、実施の形態に係るアーマチュアのリフト量を示す断面図である。
図5に示すように、アーマチュア41のリフト量の調整は、調整ナット47を回転させて行う。調整ナット47を回転させると、マグネット40が燃料噴射弁2の軸方向に移動することにより、図6に示すようにアーマチュア41の上面と、マグネット40の下面との離間距離が相対的に変更される。例えば、図3で説明したように、初期状態でアーマチュア41のリフト量が大きく、基準値より閉弁時間CTが長くなることで燃料噴射量が多くなっている燃料噴射弁2の場合には、図6に示すようにアーマチュア41のリフト量が小さくなるように変更する。すると、閉弁時間CTが短くなり、燃料噴射量が減少して燃料噴射量を基準値内に調整することが可能となる。
次に、燃料噴射弁2の閉弁時間CTの調整方法について説明する。
実施の形態に係る燃料噴射弁2の製造方法では、燃料噴射弁2内に燃料を充填した状態で閉弁時間CTの調整を行う。
図7は、実施の形態に係るアーマチュアのリフト量の調整フロー図である。
ステップ2にて燃料噴射弁2の仮組が完成すると、ステップ3に進む。
ステップ3ではドライ状態で閉弁時間CTを測定し、アーマチュア41のリフト量を仮調整する。
ステップ4で燃料噴射弁2の組み立てが終了する。
ステップ5に進み、燃料噴射弁2を噴射量測定装置に取り付ける。
ステップ11で測定した噴射量が基準値外の時にはステップ13に進み、燃料噴射弁2のノズル側のみを分解する。
次にステップ14に進み、分解した燃料噴射弁2の部品を洗浄する。
ステップ15に進み、燃料噴射弁2の再組み立てをする。
ステップ16に進み、再び燃料噴射弁を暖気運転し、内部に高圧の燃料を充填する。そして、ステップ11に戻り、再び燃料の噴射量を測定する。
実施の形態に係る燃料噴射弁2の製造方法によれば、運転時(ウェット状態)を想定して、ウェット状態で燃料噴射量の調整を行うため、製造時における調整時点と、実際の運転時点とで燃料噴射量が異なることがなくなり、運転時に正確な噴射量を得ることができる。
また、燃料の圧力に対する閉弁時間CTの不感帯内で通電時間ETを設定し、閉弁時間CTを計測することで、燃料の圧力の影響を受けず、正確な閉弁時間CTを計測することができる。
さらに、噴射量を測定し不良となったときに、アーマチュア41のリフト量はウェット状態で調整済みのため、再調整が必要な部位がアーマチュア41のリフト量関連以外の例えばノズル側のみに限定される。すると、燃料噴射弁2の分解箇所が限定されるため、製造時の工程上のロスを低減することができる。
Claims (7)
- 燃料噴射弁の高圧流路に燃料を充填するステップと、
ソレノイドバルブのマグネットへの通電を開始してから通電を停止するまでの通電時間を設定するステップと、
前記マグネットへの通電を開始するステップと、
前記マグネットへの通電を停止するステップと、
前記マグネットへの通電を停止してから前記マグネットに逆起電力のピーク値が発生するまでの閉弁時間を計測するステップと、
前記通電時間に対応する前記閉弁時間が基準値となるようにアーマチュアのリフト量を調整するステップと、
を有し、
前記通電時間は、前記高圧流路に充填される燃料の圧力により、前記閉弁時間が影響を受けない不感帯において設定される燃料噴射弁の製造方法。 - 前記不感帯は、前記通電時間の変化に対して前記閉弁時間が有する極大値と極小値との間の通電時間として規定される請求項1に記載の燃料噴射弁の製造方法。
- 前記不感帯の通電時間は、230μs以上350μs以下の値を含む請求項1または2に記載の燃料噴射弁の製造方法。
- 燃料噴射弁の高圧流路に燃料を充填するステップと、
ソレノイドバルブのマグネットへの通電を開始してから通電を停止するまでの通電時間を設定するステップと、
前記マグネットへの通電を開始するステップと、
前記マグネットへの通電を停止するステップと、
前記マグネットへの通電を停止してから前記マグネットに逆起電力のピーク値が発生するまでの閉弁時間を計測するステップと、
前記通電時間に対応する前記閉弁時間が基準値となるようにアーマチュアのリフト量を調整するステップと、
を有し、
前記アーマチュアのリフト量を調整するステップの後に、燃料噴射量を測定するステップを有し、測定した前記燃料噴射量が基準値を満たさないときには、燃料噴射弁のノズル体のみを分解、洗浄、再組み立てするステップを有する燃料噴射弁の製造方法。 - 燃料噴射弁の高圧流路に燃料を充填するステップと、
ソレノイドバルブのマグネットへの通電を開始してから通電を停止するまでの通電時間を設定するステップと、
前記マグネットへの通電を開始するステップと、
前記マグネットへの通電を停止するステップと、
前記マグネットへの通電を停止してから前記マグネットに逆起電力のピーク値が発生するまでの閉弁時間を計測するステップと、
前記通電時間に対応する前記閉弁時間が基準値となるようにアーマチュアのリフト量を調整するステップと、
を有し、
前記通電時間が、前記通電時間と前記閉弁時間の関係において前記閉弁時間が極大値となった後極小値に低下するまでの間に対応する通電時間に設定される燃料噴射弁の製造方法。 - 前記高圧流路に燃料を充填するステップの前に、前記高圧流路が空の状態で前記アーマチュアのリフト量を仮調整するステップを有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料噴射弁の製造方法。
- 前記アーマチュアのリフト量は、前記マグネットの位置を変更する調整ナットを回動して調整する請求項1〜6のいずれか1項に記載の燃料噴射弁の製造方法。
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