従来、アーマチュア等を有する電磁アクチュエータを備え、アーマチュアを往復動させることにより、燃料の噴射の開始及び停止を制御する燃料噴射装置(インジェクタ)が知られている(特許文献1参照)。以下、図3及び図4を用いて、このような従来の燃料噴射装置の構成について説明する。
図3及び図4は、従来の燃料噴射装置を示す縦断面図である。なお、図3は、従来の燃料噴射装置101から燃料が噴射されている状態を示している。また、図4は、従来の燃料噴射装置101から燃料が噴射されていない状態を示している。なお、図3及び図4を用いて従来の燃料噴射装置101を説明する際、燃料噴射孔15が形成された側の端部を燃料噴射装置101の下端とし、燃料噴射孔15側の端部とは反対側の端部を燃料噴射装置101の上端として、燃料噴射装置101を説明していく。
燃料噴射装置101は、外郭の一部を構成する部品としてインジェクタハウジング11を備えている。インジェクタハウジング11には、上下方向に貫通する図示せぬ貫通孔が形成されている。この貫通孔には、バルブピストン63が上下方向に移動自在に収容されている。また、インジェクタハウジング11には、燃料通路31も形成されている。この燃料通路31は、一端が燃料供給用接続口51に接続されている。なお、燃料供給用接続口51は、コモンレール4に接続されることとなる。つまり、燃料タンク2からサプライポンプ3によってコモンレール4に供給された燃料は、コモンレール4で蓄積されて高圧燃料となり、燃料供給用接続口51を介して燃料噴射装置1に供給される。
インジェクタハウジング11の下端側には、外郭の一部を構成するノズルボディ14が取り付けられている。このノズルボディ14には、上端から下方へ凹む孔33が形成されている。この孔33には、弁ニードル61が上下方向に移動自在に収容されている。この弁ニードル61の上端部は、バルブピストン63の下端部に当接している。また、孔33の下端部は、弁ニードル61のシート部16となっている。シート部16には、孔33とノズルボディ14の外部とを連通するように、例えば複数の燃料噴射孔15が形成されている。また、孔33の一部には、弁ニードル61の受圧部62と対向する位置に、燃料溜まり室33aが形成されている。この燃料溜まり室33aには、燃料通路32の一端が連通している。燃料通路32の他端は、インジェクタハウジング11の燃料通路31と連通している。
インジェクタハウジング11内の上部には、バルブボディ19が取り付けられている。このバルブボディ19には、下端から上方へ凹む孔18が形成されている。そして、孔18には、バルブピストン63の上部が上下方向に摺動自在に挿入される。これにより、バルブピストン63の頂部63aよりも上方となる孔18部分が、圧力制御室66となる。
また、バルブボディ19には、開閉用オリフィス通路44、圧力導入室42及び導入側オリフィス通路43も形成されている。開閉用オリフィス通路44は、圧力制御室66とバルブボディ19の上端とを連通する通路である。圧力導入室42は、バルブボディ19の側面部に形成されている。導入側オリフィス通路43は、圧力制御室66と圧力導入室42とを連通する通路である。また、インジェクタハウジング11には、圧力導入室42と燃料供給用接続口51とを連通する燃料通路41が形成されている。
なお、開閉用オリフィス通路44は、後述する電磁アクチュエータ170によって上下動(往復動)するボール67で、開閉される。つまり、開閉用オリフィス通路44が開かれた際、燃料供給用接続口51から燃料通路41、圧力導入室42及び導入側オリフィス通路43を介して圧力制御室66に供給された燃料は、開閉用オリフィス通路44から流出する。そして、開閉用オリフィス通路44から流出した燃料は、バルブボディ19の上方に形成された低圧室45に流れ込む。ここで、開閉用オリフィス通路44の流路断面積は、導入側オリフィス通路43の流路断面積よりも大きくなっている。このため、開閉用オリフィス通路44が開かれた際、圧力制御室66の圧力は、燃料供給用接続口51からインジェクタハウジング11内へ流入してくる燃料の圧力よりも低くなる。
また、インジェクタハウジング11の上端部には、筒状のホルダ20の下端部が挿入されている。すなわち、ホルダ20の中心軸の位置は、インジェクタハウジング11の内周面によって定まることとなる。このホルダ20は、ナット21を介して、インジェクタハウジング11に固定されている。そして、インジェクタハウジング11内におけるバルブボディ19よりも上方の空間、及びホルダ20内の空間には、ボール67を上下動させる電磁アクチュエータ170が収容されている。
電磁アクチュエータ170は、ガイド部材171、アーマチュア175、電磁石80、及びバネ186を備える。ガイド部材171は、アーマチュア175を上下方向に摺動自在に支持するものである。このガイド部材171は、例えば筒状のガイド部172と、ガイド部172の外周側に設けられた鍔部173と、を備える。ガイド部172は、上下方向に貫通する貫通孔172aが形成されている。この貫通孔172aにアーマチュア175が挿入されることにより、アーマチュア175は、ガイド部172に摺動自在に支持される。鍔部173には、低圧室45内の燃料が通過する燃料通路173aが形成されている。低圧室45から燃料通路173aに流れ込んだ燃料は、図示せぬ流路を通って、後述の燃料排出用接続口52に流出することとなる。なお、燃料排出用接続口52は、燃料タンク2に接続されている。このため、燃料排出用接続口52に流出した燃料は、燃料排出用接続口52を介して、燃料タンク2に戻される。
このように構成されたガイド部材171は、インジェクタハウジング11内に収容されている。そして、鍔部173がバルブボディ19とナット22に挟み込まれることにより、ガイド部材171は、インジェクタハウジング11に固定されている。すなわち、ガイド部材171の貫通孔172aの中心軸の位置は、インジェクタハウジング11の内周面によって定まることとなる。
アーマチュア175は、アーマチュアボルト178及びアーマチュアプレート176を備える。アーマチュアボルト178は、ガイド部材171の貫通孔172aに挿入され、ガイド部材171に摺動自在に支持されている。すなわち、アーマチュア175の中心軸の位置は、より詳しくはアーマチュアボルト178の中心軸の位置は、ガイド部材171の貫通孔172aによって定まることとなる。アーマチュアボルト178の下端部には、開閉用オリフィス通路44を開閉するボール67が設けられている。
このアーマチュアボルト178には、ガイド部材171の上面172bからガイド部材171の外部へ突出した箇所に、アーマチュアプレート176が取り付けられている。詳しくは、アーマチュアプレート176には、上下方向に貫通する貫通孔177が形成されている。この貫通孔177に、アーマチュアボルト178が摺動自在に挿入されている。ここで、アーマチュアボルト178は、アーマチュアプレート176と共に移動(上下動)するものである。このため、アーマチュアプレート176は、アーマチュアボルトに取り付けられたCリング89と、アーマチュアプレート176をCリング89へ押しつけるバネ88とで、挟み込まれている。これにより、アーマチュアボルト178は、アーマチュアプレート176と共に移動(上下動)することができる。
電磁石80は、磁極81にソレノイドコイル82が設けられた構成となっている。この電磁石80は、アーマチュアプレート176を基準として、ガイド部材171とは反対側に設けられている。すなわち、電磁石80は、アーマチュアプレート176の上方に設けられている。このため、電磁石80は、電磁石80のソレノイドコイル82に通電されると、磁力によってアーマチュア175を引き付ける。すなわち、アーマチュア175を上方へ移動させる。なお、ソレノイドコイル82に供給される電力は、通電用接続口53に接続された図示せぬ電力供給源から供給される。この電磁石80には、上下に貫通する貫通孔83が形成されている。
このように構成された電磁石80は、ホルダ20内に収容される。また、ホルダ20内には、電磁石80の上方に、固定部材185も収容される。そして、ホルダ20の上端部をかしめることにより、ホルダ20の内周面に形成された段部と固定部材185とによって電磁石80が挟持され、電磁石80がホルダ20に固定される。ここで、固定部材185の下面部には、後述のバネ186の上端部近傍が収容される凹部185aが形成されている。また、固定部材185には、上述の燃料排出用接続口52も形成されている。
バネ186は、アーマチュア175を電磁石80から遠ざかる方向へ押すものである。このバネ186は、電磁石80の貫通孔83内に配置されている。また、バネ186の上端部近傍は、固定部材185の凹部185aに収容されている。そして、バネ186の上端は、凹部185aの底部に当接している。また、バネ186の下端は、アーマチュアボルト178の上端部に当接している。これにより、自然長から圧縮された長さに応じた力で、バネ186は、アーマチュア175を電磁石80から遠ざかる方向へ押す。すなわち、バネ186の中心軸の位置は、固定部材185の凹部185aで定まる。また、固定部材185は上述のようにホルダ20内に収容されているので、固定部材185の凹部185aの中心軸の位置は、ホルダ20で定まることとなる。
このように構成された燃料噴射装置101では、コモンレール4からの高圧燃料は、燃料供給用接続口51から燃料通路31,32を介して、燃料溜まり室33a内の弁ニードル61の受圧部62に作用するとる。また、コモンレール4からの高圧燃料は、燃料通路41及び圧力導入室42を介して、圧力制御室66内のバルブピストン63の頂部63aにも作用するようになっている。
また、電磁石80のソレノイドコイル82に通電されていない状態においては、図4に示すように、アーマチュア175及び該アーマチュア175の下端部に設けられたボール67は、バネ186によって押し下げられる。これにより、ボール67が、開閉用オリフィス通路44を閉塞する。また、電磁石80のソレノイドコイル82に通電されている状態においては、図3に示すように、アーマチュア175及び該アーマチュア175の下端部に設けられたボール67は、電磁石80によって上方に引き上げられる。これにより、開閉用オリフィス通路44が開かれる。
したがって、電磁石80のソレノイドコイル82に通電されていない状態では、ボール67によって圧力制御室66が低圧室45側と遮断されている。このため、弁ニードル61は、バルブピストン63を介して受ける圧力制御室66の背圧により、ノズルボディ14のシート部16に押しつけられる。これにより、燃料噴射孔15は閉鎖される。
一方、電磁石80のソレノイドコイル82に通電されている状態では、圧力制御室66の高圧が開閉用オリフィス通路44を介して低圧室45へ開放される。したがって、圧力制御室66におけるバルブピストン63の頂部63aに作用していた高圧が開放され、弁ニードル61は、受圧部62に作用している高圧により上昇する。これにより、燃料噴射孔15が開放されて、該燃料噴射孔15から燃料噴射が行われる。
上述のように構成された従来の燃料噴射装置101においては、燃料噴射毎に噴射される燃料の量がばらつき、このばらつきが大きくなってしまうという課題があった。以下、このばらつきをショット間ばらつきと称することとする。
そして、ショット間ばらつきの大きい燃料噴射装置101が出荷されてエンジンに搭載されると、エンジンから排出される排気ガス中のNOx等が増加してしまう、エンジン音が増大してしまう、エンジンから排出される煙が増大してしまう、あるいは、エンジン出力が不安定になってしまう。そこで、これらの発生を防止するために、燃料噴射装置101の出荷前に、製造された燃料噴射装置101毎にショット間ばらつきを検査することが考えられる。そして、ショット間ばらつきが規定値より大きい燃料噴射装置101を、ショット間ばらつきが規定値以下になるように修正し、出荷することが考えられる。しかしながら、このような方法で上記の課題を防止したのでは、燃料噴射装置101を製造する際の直行率が低下してしまう。
このため、発明者は、ショット間ばらつきの大きい燃料噴射装置101が発生する原因について、検討した。
図5は、従来の燃料噴射装置の燃料噴射時の挙動を示す図である。
ここで、図5(a)は、燃料噴射装置101が燃料噴射する際の、アーマチュア175の挙動を示している。つまり、図5(a)は、燃料噴射装置101が燃料噴射する際の、開閉用オリフィス通路44を開閉するボール67の挙動を示している。なお、図5(a)の横軸は、時間tを示している。そして、図5(a)の横軸の「ta」は、電磁石80のソレノイドコイル82に通電を開始したタイミングを示している。図5(a)の横軸の「tb」は、電磁石80のソレノイドコイル82への通電を終了したタイミングを示している。また、図5(a)の縦軸は、アーマチュア175の位置、換言するとボール67の位置を示している。詳しくは、図5(a)の縦軸の「閉」は、アーマチュア175及び該アーマチュア175に設けられたボール67が図4に示す場所に位置し、ボール67が開閉用オリフィス通路44を閉塞している状態を示している。図5(a)の横軸の「開」は、アーマチュア175及び該アーマチュア175に設けられたボール67が図3に示す場所に位置し、ボール67が開閉用オリフィス通路44を開いている状態を示している。また、図5(a)には、同一の燃料噴射装置101で複数回の燃料噴射を行った際の、最も燃料噴射量が少なかった燃料噴射時のアーマチュア175の挙動を曲線Aで示し、最も燃料噴射量が多かった燃料噴射時のアーマチュア175の挙動を曲線Bで示している。なお、同一の燃料噴射装置101で複数回の燃料噴射を行った際、電磁石80のソレノイドコイル82に通電した時間は全て同じである。
また、図5(b)は、図5(a)に示す挙動でアーマチュア175が動作した際の、燃料噴射装置101から噴射された燃料の流量Q(単位時間当たりに噴射される燃料の量)の変遷を示している。なお、図5(b)の横軸は、時間tを示している。また、図5(b)の縦軸は、燃料噴射装置101から噴射された燃料の流量Qを示している。また、図5(b)には、図5(a)の曲線Aの挙動でアーマチュア175が動作したときに、燃料噴射装置101から噴射された燃料の流量を、曲線Cで示している。また、図5(b)には、図5(a)の曲線Bの挙動でアーマチュア175が動作したときに、燃料噴射装置101から噴射された燃料の流量を、曲線Dで示している。
検討の結果、燃料噴射装置101においては、電磁石80のソレノイドコイル82への通電を終了した後から、ボール67が開閉用オリフィス通路44を閉塞するまでの時間が、燃料噴射毎に異なることがわかった。図5(a)に示すように、最も燃料噴射量が少なかった燃料噴射時と、最も燃料噴射量が多かった燃料噴射時とでは、ソレノイドコイル82への通電終了後から開閉用オリフィス通路44を閉塞するまでの時間が、t1だけ異なっている。また、図5(b)に示すように、燃料噴射装置101においては、最も燃料噴射量が少なかった燃料噴射時と、最も燃料噴射量が多かった燃料噴射時とでは、開閉用オリフィス通路44を閉塞するまでの時間のずれt1に伴って、燃料噴射を終了するタイミングがt2だけ異なることがわかった。つまり、最も燃料噴射量が多かった燃料噴射時には、最も燃料噴射量が少なかった燃料噴射時と比べ、時間t2分だけ燃料を多く噴射するため、燃料噴射量が増大してしまうことがわかった。
そして、ショット間ばらつきの大きな燃料噴射装置101は、上記の時間t1,t2が大きくなるため、ショット間ばらつきが大きくなっていることがわかった。そこで、発明者は、ソレノイドコイル82への通電終了後から開閉用オリフィス通路44を閉塞するまでの時間が燃料噴射毎にずれる原因について、さらに検討した。そして、検討の結果、ソレノイドコイル82への通電終了後から開閉用オリフィス通路44を閉塞するまでの時間が燃料噴射毎にずれる原因は、アーマチュア175の中心軸と、バネ186の中心軸とのずれに起因することを見いだした。換言すると、アーマチュア175の位置を規定するガイド部材171の貫通孔172aの中心軸と、バネ186の位置を規定する固定部材185の凹部185aの中心軸とのずれにより、開閉用オリフィス通路44を閉塞するまでの時間がずれることを見いだした。
図6は、従来の燃料噴射装置において、ソレノイドコイルへの通電終了後から開閉用オリフィス通路を閉塞するまでの時間が燃料噴射毎にずれる原因を説明するための説明図である。
電磁石80によって上方に引き上げられていたアーマチュア175は、電磁石80のソレノイドコイル82への通電が終了すると、バネ186によって押し下げられる。これにより、アーマチュア175の下端部に設けられたボール67が開閉用オリフィス通路44を閉塞する。この結果、上述のように燃料噴射孔15が閉塞されて、燃料の噴射が終了する。
ここで、バネ186の中心軸の位置は、該バネ186の上端部近傍を収容する固定部材185の凹部185aで定まる。また、バネ186によって押し下げられるアーマチュア175の中心軸の位置は、アーマチュアボルト178を摺動自在に支持するガイド部材171の貫通孔172aによって定まることとなる。このため、ガイド部材171の貫通孔172aの中心軸と、固定部材185の凹部185aの中心軸とがずれていると、図6に示すように、バネ186は、アーマチュア175を斜め下方向に押すこととなる。したがって、アーマチュア175には、横方向荷重F1が作用することとなる。
アーマチュア175に横方向荷重F1が作用すると、ガイド部材171の貫通孔172a内において、アーマチュアボルト178が傾く。これにより、アーマチュアボルト178が貫通孔172aの内周面の上部近傍に押しつけられ、貫通孔172aの内周面に横方向荷重F2が作用する。また、アーマチュアボルト178が貫通孔172aの内周面の下部近傍に押しつけられ、貫通孔172aの内周面に横方向荷重F3が作用する。そして、これらの横方向荷重F2,F3により、アーマチュアボルト178が貫通孔172a内で摺動する際、横方向荷重F2,F3の大きさに応じた摺動抵抗が発生する。そして、アーマチュアボルト178が貫通孔172a内で摺動する際の摺動抵抗が大きいほど、ソレノイドコイル82への通電終了後から開閉用オリフィス通路44を閉塞するまでの時間が長くなる。
また、燃料噴射の開始及び停止によってアーマチュア175の上下動を繰り返すことにより、アーマチュアボルト178が貫通孔172a内で回転する。すなわち、貫通孔172aに対するアーマチュアボルト178のすわり状態が変化する。また、燃料噴射の開始及び停止によってアーマチュア175の上下動を繰り返すうち、アーマチュアボルト178とは独立して、バネ186も固定部材185の凹部185a内で回転する。すなわち、凹部185aに対するバネ186のすわり状態が変化する。このため、バネ186がアーマチュア175を押し下げる際に発生する横方向荷重F1の大きさ、及び該横方向荷重F1によって発生する横方向荷重F2,F3の大きさも、燃料噴射毎に異なってくる。すなわち、燃料噴射毎に、アーマチュアボルト178が貫通孔172a内で摺動する際の摺動抵抗が異なってくる。したがって、燃料噴射毎に、ソレノイドコイル82への通電終了後から開閉用オリフィス通路44を閉塞するまでの時間が異なってくる。
このような理由により、ガイド部材171の貫通孔172aの中心軸と固定部材185の凹部185aの中心軸とのずれが大きいと、ショット間ばらつきが大きくなる。
上述のような発明者の検討結果に基づくと、ガイド部材171の貫通孔172aの中心軸と固定部材185の凹部185aの中心軸とのずれを小さくすることにより、ショット間ばらつきを小さくできることがわかる。しかしながら、従来の燃料噴射装置101においては、ガイド部材171の貫通孔172aの中心軸と固定部材185の凹部185aの中心軸とのずれは、複数の部品を介して定められることとなる。詳しくは、ガイド部材171の貫通孔172aの中心軸と固定部材185の凹部185aの中心軸とのずれは、インジェクタハウジング11及びホルダ20を介して定められることとなる。
このため、燃料噴射装置101において、ガイド部材171の貫通孔172aの中心軸と固定部材185の凹部185aの中心軸とのずれを小さくしようとすると、ガイド部材171、インジェクタハウジング11、ホルダ20、及び固定部材185を高精度に加工する必要がある。さらに、燃料噴射装置101において、ガイド部材171の貫通孔172aの中心軸と固定部材185の凹部185aの中心軸とのずれを小さくしようとすると、高精度に加工された上述の部品を高精度に組み立てることが必要となる。したがって、ガイド部材171の貫通孔172aの中心軸と固定部材185の凹部185aの中心軸とのずれが小さくなるように燃料噴射装置101を製造することは、非常に困難である。
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、ショット間ばらつきを抑制でき、製造も容易な燃料噴射装置を得ることを目的とする。
本発明に係る燃料噴射装置は、一端が第1面に開口する第1貫通孔が形成されたガイド部材と、一部が前記第1貫通孔に摺動自在に挿入されており、前記第1面から前記ガイド部材の外部へ突出した箇所にアーマチュアプレートを有するアーマチュアと、前記アーマチュアプレートを基準として前記ガイド部材とは反対側に設けられ、通電時に前記アーマチュアを引き付ける電磁石と、前記アーマチュアを前記電磁石から遠ざかる方向へ押すバネと、を備え、前記電磁石へ通電することにより、前記アーマチュアが前記電磁石側へ移動して燃料噴射孔が開かれ、燃料を噴射する燃料噴射装置であって、前記ガイド部材は、前記第1面とは反対側の面である第2面に開口する凹部を有し、前記第1貫通孔の他端は、該凹部の底部に開口しており、前記アーマチュアは、前記第2面から前記ガイド部材の外部へ突出した箇所に鍔部を有し、前記バネは、一部が前記ガイド部材の前記凹部に収容され、一端が前記凹部の前記底部を押し、他端が前記鍔部を押す構成となっている。
また、本発明に係る燃料噴射装置の前記アーマチュアは、第2貫通孔が形成された前記アーマチュアプレートと、前記鍔部を有し、前記ガイド部材の前記第1貫通孔及び前記アーマチュアプレートの前記第2貫通孔に挿入され、前記アーマチュアプレートと共に移動するアーマチュアボルトと、を備えていてもよい。
本発明に係る燃料噴射装置においては、アーマチュアは、ガイド部材の第1貫通孔で摺動自在に支持される。また、このガイド部材には凹部が形成されており、従来の燃料噴射装置101のバネ186に相当するバネの一部は、当該凹部に収容される。すなわち、本発明に係る燃料噴射装置においては、アーマチュアの中心軸及びバネの中心軸の位置は、ガイド部材によって定められることとなる。このため、本発明に係る燃料噴射装置においては、アーマチュアの中心軸とバネの中心軸とのずれは、ガイド部材を加工する際の加工誤差のみとなる。したがって、本発明に係る燃料噴射装置は、容易に、アーマチュアの中心軸とバネの中心軸とのずれを小さくすることができる。したがって、本発明に係る燃料噴射装置は、ショット間ばらつきを抑制でき、製造も容易となる。
ここで、本発明に係る燃料噴射装置のアーマチュアは、アーマチュアプレートとアーマチュアボルトとが別体で構成された所謂2パーツタイプのアーマチュアであってもよい。2パーツタイプのアーマチュアの場合、アーマチュアプレートとアーマチュアボルトとが一体形成された所謂1パーツタイプのアーマチュアと比べ、バネで押される箇所とガイド部材で支持される箇所との距離が離れる。このため、2パーツタイプのアーマチュアの場合、1パーツタイプのアーマチュアと比べ、アーマチュアボルトとガイド部材との間に発生する上述の横方向荷重F2,F3が大きくなりやすい。したがって、2パーツタイプのアーマチュアを備えた燃料噴射装置は、ショット間ばらつきが大きくなりやすい。このため、ショット間ばらつきが大きくなりやすい2パーツタイプのアーマチュアを備えた燃料噴射装置に本発明を採用することは、特に有用である。
実施の形態.
以下、本発明の燃料噴射装置に関する実施の形態について具体的に説明する。ただし、本実施の形態は本発明の一態様を示すものであり、本発明を限定するものではなく、本発明の範囲内で任意に変更することが可能である。
なお、以下では、本実施の形態に係る燃料噴射装置1を説明する際、燃料噴射孔15が形成された側の端部を燃料噴射装置1の下端とし、燃料噴射孔15側の端部とは反対側の端部を燃料噴射装置1の上端として、燃料噴射装置1を説明していく。また、本実施の形態に係る燃料噴射装置1の各構成を説明する際、上述した従来の燃料噴射装置101と同じ構成については、燃料噴射装置101と同じ符号を付すこととする。
図1及び図2は、本発明の実施の形態に係る燃料噴射装置を示す縦断面図である。なお、図1は、本実施の形態に係る燃料噴射装置1から燃料が噴射されている状態を示している。また、図2は、本実施の形態に係る燃料噴射装置1から燃料が噴射されていない状態を示している。
燃料噴射装置1は、外郭の一部を構成する部品としてインジェクタハウジング11を備えている。インジェクタハウジング11には、上下方向に貫通する図示せぬ貫通孔が形成されている。この貫通孔には、バルブピストン63が上下方向に移動自在に収容されている。また、インジェクタハウジング11には、燃料通路31も形成されている。この燃料通路31は、一端が燃料供給用接続口51に接続されている。なお、燃料供給用接続口51は、コモンレール4に接続されることとなる。つまり、燃料タンク2からサプライポンプ3によってコモンレール4に供給された燃料は、コモンレール4で蓄積されて高圧燃料となり、燃料供給用接続口51を介して燃料噴射装置1に供給される。
インジェクタハウジング11の下端側には、外郭の一部を構成するノズルボディ14が取り付けられている。このノズルボディ14には、上端から下方へ凹む孔33が形成されている。この孔33には、弁ニードル61が上下方向に移動自在に収容されている。この弁ニードル61の上端部は、バルブピストン63の下端部に当接している。また、孔33の下端部は、弁ニードル61のシート部16となっている。シート部16には、孔33とノズルボディ14の外部とを連通するように、例えば複数の燃料噴射孔15が形成されている。また、孔33の一部には、弁ニードル61の受圧部62と対向する位置に、燃料溜まり室33aが形成されている。この燃料溜まり室33aには、燃料通路32の一端が連通している。燃料通路32の他端は、インジェクタハウジング11の燃料通路31と連通している。
インジェクタハウジング11の内の上部には、バルブボディ19が取り付けられている。このバルブボディ19には、下端から上方へ凹む孔18が形成されている。そして、孔18には、バルブピストン63の上部が上下方向に摺動自在に挿入される。これにより、バルブピストン63の頂部63aよりも上方となる孔18部分が、圧力制御室66となる。
また、バルブボディ19には、開閉用オリフィス通路44、圧力導入室42及び導入側オリフィス通路43も形成されている。開閉用オリフィス通路44は、圧力制御室66とバルブボディ19の上端とを連通する通路である。圧力導入室42は、バルブボディ19の側面部に形成されている。導入側オリフィス通路43は、圧力制御室66と圧力導入室42とを連通する通路である。また、インジェクタハウジング11には、圧力導入室42と燃料供給用接続口51とを連通する燃料通路41が形成されている。
なお、開閉用オリフィス通路44は、後述する電磁アクチュエータ70によって上下動(往復動)するボール67で、開閉される。つまり、開閉用オリフィス通路44が開かれた際、燃料供給用接続口51から燃料通路41、圧力導入室42及び導入側オリフィス通路43を介して圧力制御室66に供給された燃料は、開閉用オリフィス通路44から流出する。そして、開閉用オリフィス通路44から流出した燃料は、バルブボディ19の上方に形成された低圧室45に流れ込む。ここで、開閉用オリフィス通路44の流路断面積は、導入側オリフィス通路43の流路断面積よりも大きくなっている。このため、開閉用オリフィス通路44が開かれた際、圧力制御室66の圧力は、燃料供給用接続口51からインジェクタハウジング11内へ流入してくる燃料の圧力よりも低くなる。
また、インジェクタハウジング11の上端部には、筒状のホルダ20の下端部が挿入されている。このホルダ20は、ナット21を介して、インジェクタハウジング11に固定されている。そして、インジェクタハウジング11内におけるバルブボディ19よりも上方の空間、及びホルダ20内の空間には、ボール67を上下動させる電磁アクチュエータ70が収容されている。
電磁アクチュエータ70は、ガイド部材71、アーマチュア75、電磁石80、及びバネ86を備える。ガイド部材71は、アーマチュア75を上下方向に摺動自在に支持するものである。このガイド部材71は、例えば筒状のガイド部72と、ガイド部72の外周側に設けられた鍔部73と、を備える。ガイド部72は、上下方向に貫通する貫通孔72aが形成されている。貫通孔72aの一端は、ガイド部材71の上面72b(つまりガイド部72の上面)に開口している。この貫通孔72aにアーマチュア75が挿入されることにより、アーマチュア75は、ガイド部72に摺動自在に支持される。また、ガイド部72は、下面72cに開口する凹部74を有する。この凹部74は、後述のように、バネ86の一部を収容するものである。この凹部74の中心軸は、上述の貫通孔72aの中心軸と同軸上に配置されている。そして、上述の貫通孔72aの他端は、凹部74の底部74aに開口している。
ここで、貫通孔72aが、本発明の第1貫通孔に相当する。上面72bが、本発明の第1面に相当する。下面72cが、本発明の第2面に相当する。
鍔部73には、低圧室45内の燃料が通過する燃料通路73aが形成されている。低圧室45から燃料通路73aに流れ込んだ燃料は、図示せぬ流路を通って、後述の燃料排出用接続口52に流出することとなる。なお、燃料排出用接続口52は、燃料タンク2に接続されている。このため、燃料排出用接続口52に流出した燃料は、燃料排出用接続口52を介して、燃料タンク2に戻される。
このように構成されたガイド部材71は、インジェクタハウジング11内に収容されている。そして、鍔部73がバルブボディ19とナット22に挟み込まれることにより、ガイド部材71は、インジェクタハウジング11に固定されている。
アーマチュア75は、アーマチュアボルト78及びアーマチュアプレート76を備える。アーマチュアボルト78は、その一部がガイド部材71の貫通孔72aに挿入され、ガイド部材71に摺動自在に支持されている。すなわち、アーマチュア75の中心軸の位置は、より詳しくはアーマチュアボルト78の中心軸の位置は、ガイド部材71の貫通孔72aによって定まることとなる。アーマチュアボルト78の下端部には、開閉用オリフィス通路44を開閉するボール67が設けられている。
このアーマチュアボルト78には、ガイド部材71の上面72bからガイド部材71の外部へ突出した箇所に、アーマチュアプレート76が取り付けられている。詳しくは、アーマチュアプレート76には、上下方向に貫通する貫通孔77が形成されている。この貫通孔77に、アーマチュアボルト78が摺動自在に挿入されている。ここで、アーマチュアボルト78は、アーマチュアプレート76と共に移動(上下動)するものである。このため、アーマチュアプレート76は、アーマチュアボルトに取り付けられたCリング89と、アーマチュアプレート76をCリング89へ押しつけるバネ88とで、挟み込まれている。これにより、アーマチュアボルト78は、アーマチュアプレート76と共に移動(上下動)することができる。
ここで、貫通孔77が、本発明の第2貫通孔に相当する。
また、本実施の形態に係るアーマチュア75は、ガイド部材71の下面72cからガイド部材71の外部へ突出した箇所に、鍔部79を有している。詳しくは、鍔部79は、アーマチュアボルト78に設けられている。なお、鍔部79は、アーマチュアボルト78と一体成形されてもよいし、アーマチュアボルト78とは別体で構成されてもよい。
ここで、アーマチュア75の構成は、上述の構成に限定されるものではない。例えば、アーマチュアプレート76の貫通孔77にアーマチュアボルト78に嵌入することにより、アーマチュアプレート76及びアーマチュアボルト78を固定し、アーマチュアプレート76及びアーマチュアボルト78が共に移動できる構成としてもよい。また例えば、アーマチュア75は、アーマチュアプレート76とがアーマチュアボルト78とが別体で構成された所謂2パーツタイプではなく、アーマチュアプレート76及びアーマチュアボルト78を一体形成した所謂1パーツタイプとしてもよい。
電磁石80は、磁極81にソレノイドコイル82が設けられた構成となっている。この電磁石80は、アーマチュアプレート76を基準として、ガイド部材71とは反対側に設けられている。すなわち、電磁石80は、アーマチュアプレート76の上方に設けられている。このため、電磁石80は、電磁石80のソレノイドコイル82に通電されると、磁力によってアーマチュア75を引き付ける。すなわち、アーマチュア75を上方へ移動させる。なお、ソレノイドコイル82に供給される電力は、通電用接続口53に接続された図示せぬ電力供給源から供給される。この電磁石80には、アーマチュアボルト78の上端部と電磁石80との干渉を防止する等の目的により、上下に貫通する貫通孔83が形成されている。
このように構成された電磁石80は、ホルダ20内に収容される。また、ホルダ20内には、電磁石80の上方に、固定部材85も収容される。そして、ホルダ20の上端部をかしめることにより、ホルダ20の内周面に形成された段部と固定部材85とによって電磁石80が挟持され、電磁石80がホルダ20に固定される。なお、固定部材85には、上述の燃料排出用接続口52も形成されている。
バネ86は、アーマチュア75を電磁石80から遠ざかる方向へ押すものである。このバネ86は、一部がガイド部72の凹部74に収容されている。そして、バネ86の上端は、凹部74の底部74aを押している。また、バネ86の下端は、アーマチュア75の鍔部79の上面を押している。これにより、自然長から圧縮された長さに応じた力で、バネ86は、アーマチュア75を電磁石80から遠ざかる方向へ押す。すなわち、バネ86の中心軸の位置は、ガイド部72の凹部74で定まる。つまり、本実施の形態に係る燃料噴射装置1においては、アーマチュア75の中心軸及びバネ86の中心軸の位置は、同一の部材であるガイド部72で定まることとなる。
なお、本実施の形態1では、ガイド部72の凹部74の底部74aとバネ86との間に、シム87を設けている。すなわち、バネ86の上端は、シム87を介して、凹部74の底部74aを押している。このように構成することにより、シム87の厚みを調節することで、バネ86がアーマチュア75を押し下げる力の大きさを調節することができる。
このように構成された燃料噴射装置1では、コモンレール4からの高圧燃料は、燃料供給用接続口51から燃料通路31,32を介して、燃料溜まり室33a内の弁ニードル61の受圧部62に作用する。また、コモンレール4からの高圧燃料は、燃料通路41及び圧力導入室42を介して、圧力制御室66内のバルブピストン63の頂部63aにも作用するようになっている。
また、電磁石80のソレノイドコイル82に通電されていない状態においては、図2に示すように、アーマチュア75及び該アーマチュア75の下端部に設けられたボール67は、バネ86によって押し下げられる。これにより、ボール67が、開閉用オリフィス通路44を閉塞する。また、電磁石80のソレノイドコイル82に通電されている状態においては、図1に示すように、アーマチュア75及び該アーマチュア75の下端部に設けられたボール67は、電磁石80によって上方に引き上げられる。これにより、開閉用オリフィス通路44が開かれる。
したがって、電磁石80のソレノイドコイル82に通電されていない状態では、ボール67によって圧力制御室66が低圧室45側と遮断されている。このため、弁ニードル61は、バルブピストン63を介して受ける圧力制御室66の背圧により、ノズルボディ14のシート部16に押しつけられる。これにより、燃料噴射孔15は閉鎖される。
一方、電磁石80のソレノイドコイル82に通電されている状態では、圧力制御室66の高圧が開閉用オリフィス通路44を介して低圧室45へ開放される。したがって、圧力制御室66におけるバルブピストン63の頂部63aに作用していた高圧が開放され、弁ニードル61は、受圧部62に作用している高圧により上昇する。これにより、燃料噴射孔15が開放されて、該燃料噴射孔15から燃料噴射が行われる。
そして、電磁石80のソレノイドコイル82への通電を終了すると、電磁石80によって上方に引き上げられていたアーマチュア75は、バネ86によって押し下げられる。これにより、アーマチュア175の下端部に設けられたボール67が開閉用オリフィス通路44を閉塞する。この結果、上述のように燃料噴射孔15が閉塞されて、燃料の噴射が終了する。
ここで、図3~図6で説明したように、従来の燃料噴射装置101は、アーマチュア175の中心軸とバネ186の中心軸とのずれに起因して、ショット間ばらつきが大きくなってしまう場合があった。換言すると、アーマチュア175の位置を規定するガイド部材171の貫通孔172aの中心軸と、バネ186の位置を規定する固定部材185の凹部185aの中心軸とのずれに起因して、ショット間ばらつきが大きくなってしまう場合があった。また、従来の燃料噴射装置101においては、ガイド部材171の貫通孔172aの中心軸と、固定部材185の凹部185aの中心軸とは、複数の部品を介して定められる。このため、従来の燃料噴射装置101は、ガイド部材171の貫通孔172aの中心軸と固定部材185の凹部185aの中心軸とのずれを小さくしようとすると、高精度に加工された部品を高精度に組み立てることが必要であった。したがって、ガイド部材171の貫通孔172aの中心軸と固定部材185の凹部185aの中心軸とのずれが小さくなるように燃料噴射装置101を製造することは、非常に困難であった。
一方、本実施の形態に係る燃料噴射装置1においては、アーマチュア75は、ガイド部材71の貫通孔72aで摺動自在に支持される。また、このガイド部材71には凹部74が形成されており、従来の燃料噴射装置101のバネ186に相当するバネ86の一部は、当該凹部74に収容される。すなわち、本実施の形態に係る燃料噴射装置1においては、アーマチュア75及びバネ86の中心軸の位置は、ガイド部材71によって定められることとなる。このため、本実施の形態に係る燃料噴射装置1においては、アーマチュア75の中心軸とバネ86の中心軸とのずれは、ガイド部材71を加工する際の加工誤差のみとなる。したがって、本実施の形態に係る燃料噴射装置1は、容易に、アーマチュア75の中心軸とバネ86の中心軸とのずれを小さくすることができる。したがって、本実施の形態に係る燃料噴射装置1は、ショット間ばらつきを抑制でき、製造も容易となる。
以上、本実施の形態に係る燃料噴射装置1は、一端が第1面に開口する貫通孔72aが形成されたガイド部材71と、一部が貫通孔72aに摺動自在に挿入されており、前記第1面からガイド部材71の外部へ突出した箇所にアーマチュアプレート76を有するアーマチュア75と、アーマチュアプレート76を基準としてガイド部材71とは反対側に設けられ、通電時にアーマチュア75を引き付ける電磁石80と、アーマチュア75を電磁石80から遠ざかる方向へ押すバネ86と、を備え、電磁石80へ通電することにより、アーマチュア75が電磁石80側へ移動して燃料噴射孔15が開かれ、燃料を噴射する燃料噴射装置である。そして、本実施の形態に係る燃料噴射装置1においては、ガイド部材71は、前記第1面とは反対側の面である第2面に開口する凹部74を有し、貫通孔72aの他端は該凹部74の底部74aに開口しており、アーマチュア75は、前記第2面からガイド部材71の外部へ突出した箇所に鍔部79を有している。そして、本実施の形態に係る燃料噴射装置1のバネ86は、一部がガイド部材71の凹部74に収容され、一端が凹部74の底部74aを押し、他端が鍔部79を押す構成となっている。
このため、本実施の形態に係る燃料噴射装置1においては、アーマチュア75及びバネ86の中心軸の位置は、ガイド部材71によって定められることとなる。このため、本実施の形態に係る燃料噴射装置1においては、アーマチュア75の中心軸とバネ86の中心軸とのずれは、ガイド部材71を加工する際の加工誤差のみとなる。したがって、本実施の形態に係る燃料噴射装置1は、容易に、アーマチュア75の中心軸とバネ86の中心軸とのずれを小さくすることができる。したがって、本実施の形態に係る燃料噴射装置1は、ショット間ばらつきを抑制でき、製造も容易となる。
また、本実施の形態に係る燃料噴射装置1のアーマチュア75は、アーマチュアプレート76とアーマチュアボルト78とが別体で構成された2パーツタイプのアーマチュアとなっている。2パーツタイプのアーマチュアの場合、アーマチュアプレートとアーマチュアボルトとが一体形成された所謂1パーツタイプのアーマチュアと比べ、バネで押される箇所とガイド部材で支持される箇所との距離が離れる。このため、2パーツタイプのアーマチュアの場合、1パーツタイプのアーマチュアと比べ、アーマチュアボルトとガイド部材との間に発生する上述の横方向荷重F2,F3が大きくなりやすい。したがって、2パーツタイプのアーマチュアを備えた燃料噴射装置は、ショット間ばらつきが大きくなりやすい。このため、ショット間ばらつきが大きくなりやすい2パーツタイプのアーマチュアを備えた燃料噴射装置として、本実施の形態1に係る燃料噴射装置1の構成を採用することは、特に有用である。
なお、図5からわかるように、従来の燃料噴射装置101でショット間ばらつきが大きくなる場合でも、最も燃料噴射量が少なかった燃料噴射時と、最も燃料噴射量が多かった燃料噴射時とでは、燃料の噴射開始工程における挙動は概略同じとなる。換言すると、最も燃料噴射量が少なかった燃料噴射時と、最も燃料噴射量が多かった燃料噴射時とでは、電磁石80のソレノイドコイル82へ通電を開始した際、アーマチュア175が電磁石80側へ引き上げられるまでの時間が概略同じとなる。これは、アーマチュア175が電磁石80側へ引き上げられる際に該アーマチュア175にかかる力が、アーマチュア175がバネ186によって押し下げられる際に該アーマチュア175にかかる力と比べ、大きいからである。
このことから、従来の燃料噴射装置101においてショット間ばらつきを低減する1つの方法として、バネ186の押し力を増大させるという方法も考えられる。しかしながら、この方法では、電磁石80によるアーマチュア175の引き上げ力も増大させなければならない。電磁石80のソレノイドコイル82へ通電し、電磁石80の磁力によってアーマチュア175を引き上げる際、バネ186の押し下げ力に抗してアーマチュア175を引き上げなければならないからである。これでは、電磁石80の消費電力が増大してしまう。したがって、本実施の形態に係る燃料噴射装置1は、電磁石80の消費電力の増大を防止しつつショット間ばらつきを抑制できると言うこともできる。