JP5958417B2 - 燃料噴射制御装置および燃料噴射システム - Google Patents
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Description
図1に示すインジェクタ10は、点火式の内燃機関(ガソリンエンジン)に搭載されており、内燃機関の燃焼室2へ直接燃料を噴射するものである。具体的には、燃焼室2を形成するシリンダヘッド3のうちシリンダの軸線Cと一致する位置に、インジェクタ10を挿入する取付穴4が形成されている。
本実施形態によれば、図8のステップS10において、要求噴射量Qreqがパーシャル最大噴射量Qplmax以下であるか否かを判定し、Qreq≦Qplmaxであることを条件としてパーシャル噴射を選択する。そのため、図7中の符号Q1の如く、供給燃圧によってはパーシャル噴射およびフルリフト噴射のいずれも可能である場合には、パーシャル噴射が選択されるようになる。そのため、微少量の燃料を噴射する場合であっても、フルリフト噴射に比べて高圧で噴射されるようになり、燃料噴霧の微粒化を十分に促進できる。
ここで、本実施形態に反して、パーシャル噴射時においても内燃機関の運転状態に応じて目標圧力Ptrgを設定すると、要求噴射量が微少であることに起因して目標圧力が小さくなり、小さい噴霧粒径で噴射できなくなる場合がある。これに対し本実施形態では、パーシャル噴射時にはシステム最大燃圧Pmax(予め設定しておいた下限圧力以上の値)に目標圧力Ptrgを設定する。そのため、パーシャル噴射時には十分に高い供給燃圧で噴射されるので、パーシャル噴射であっても小さい噴霧粒径となる。よって、噴霧粒径を小さくしつつ微少量の燃料噴射が可能となる。
ECU20は、パーシャル噴射時の目標圧力Ptrgをシステム最大燃圧Pmaxに設定するので、パーシャル噴射時に噴霧粒径が大きくなることを最大限に抑制できる。よって、単位噴射量当りに得られる燃焼エネルギを大きくできる。
ECU20は、パーシャル噴射を選択して噴霧粒径が小さくなることに起因する出力向上量と、パーシャル噴射を選択して高圧ポンプ40の負荷が大きくなることに起因するポンプ損失量とを比較する。そして、出力向上量>ポンプ損失量である(S11:YES)ことを条件としてパーシャル噴射を選択する。そのため、パーシャル噴射により噴霧粒径を小さくしたにもかかわらず、噴射量に対して得られる内燃機関の出力が低下する、といった事態を回避できる。
ECU20は、検出手段S30、S31と、噴射データ取得手段S32、S33と、噴射指令期間設定手段S12、S14と、を備える。検出手段S30、S31は、弁体12の閉弁時期を検出する。噴射データ取得手段S32、S33は、パーシャル噴射時に検出された閉弁時期に基づき、該パーシャル噴射による実噴射量を算出する。噴射データ取得手段S32、S33は、弁体12の開弁指令期間と実噴射量との関係を表した噴射データを取得する。噴射指令期間設定手段S12、S14は、インジェクタ10へ開弁を指令する期間(噴射指令信号)を、要求噴射量および噴射データに基づき設定する。
ここで、本実施形態に反して、可動コアが所定量移動した後に弁体が可動コアに係合して開弁作動を開始する構成のインジェクタの場合、弁体が勢い良く開弁する。つまり、開弁作動する弁体の初速が速い。そのため、サック燃圧の上昇速度が速くなるので、「パーシャル噴射時にはサック燃圧が十分に上昇しないまま噴射が終了するので、小さい噴霧粒径の燃料を噴射できない」といった問題が顕著に現れない。
噴孔17aの形状に関し、燃料噴霧の微粒化を促進させるには、次の2通りの設計思想がある。一つは、噴孔17aの流路長さLを長くすることで、噴孔17a内で燃料と空気のせん断力により燃料が引き裂かれることを促進させて微粒化を図る、噴孔内せん断の思想である。もう一つは、噴孔17aの流路長さLを短くすることで、噴孔17a内での圧力損失を低減させ、噴孔17aから噴射した直後における燃料と空気のせん断力により燃料が引き裂かれることを促進させて微粒化を図る、噴孔外せん断の思想である。本実施形態では、図3に示すようにL<Dに設定しており、噴射後せん断の思想による構造である。
本実施形態に係るインジェクタ10は、ハウジング16のコイル領域部16aの少なくとも一部の外周面が、全周に亘って、取付穴4の内周面4aにより囲まれている。ここで、燃焼室2を構成するシリンダヘッド3は高温になるため、コイル領域部16aが取付穴4で囲まれていると、コイル13の温度が高温になりやすい。すると、コイル13の電気抵抗が大きくなるため、通電開始に伴いコイル13に流れる電流値が低くなり、磁気吸引力の上昇速度が遅くなる。つまり、図6(c)中のt0からt1における吸引力上昇速度が遅くなる。すると、開弁直後のサック燃圧が低い期間が長くなるので、この期間における噴霧微粒化の要求が高くなる。
インジェクタ10は、燃焼室2へ燃料を直接噴射する位置に配置されているため、点火プラグ6の近傍に位置する。そのため、インジェクタ10から噴射された燃料が点火プラグ6に付着することを低減させるべく、噴霧粒径を小さくすることが重要になる。そのため、本実施形態の如く直噴配置のインジェクタ10に、「要求噴射量Qreqがパーシャル最大噴射量Qplmax以下である場合にパーシャル噴射を選択する」との構成を採用すれば、「噴霧粒径を小さくできる」といった効果が顕著に発揮されるようになる。
上記第1実施形態では、図8のステップS11において、出力向上量およびポンプ損失量を算出し、その算出結果に基づき出力向上量>ポンプ損失量であるか否かを判定する。これに対し本実施形態では、内燃機関の始動時には、出力向上量およびポンプ損失量を算出することなく出力向上量がポンプ損失量よりも小さいとみなして、フルリフト噴射を選択する。
上記第1実施形態では、図8のステップS10において、パーシャル最大噴射量Qplmaxと要求噴射量Qreqを大小比較し、その比較結果に基づきパーシャル噴射を実施するか否かを判定する。これに対し本実施形態では、内燃機関がアイドル運転している時には、QplmaxとQreqとの大小比較をすることなく要求噴射量Qreqがパーシャル最大噴射量Qplmax以下であるとみなして、パーシャル噴射を選択する。
図11は、シート絞り率と噴霧粒径との関係を示す数値解析結果であり、図11の縦軸はフルリフト噴射した場合の噴霧粒径悪化度を示し、図11の横軸はフルリフト時のシート絞り率を示す。図11に示す解析結果は、シート絞り率が大きいほど噴霧粒径悪化度が大きいことを示す。
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、以下のように変更して実施してもよい。また、各実施形態の特徴的構成をそれぞれ任意に組み合わせるようにしてもよい。
Claims (14)
- 弁体(12)を開弁作動させて噴孔(17a)から燃料を噴射するインジェクタ(10)、および燃料を昇圧して前記インジェクタへ供給する高圧ポンプ(40)を備える燃料噴射システムに適用された、燃料噴射制御装置(20)であって、
開弁作動を開始した前記弁体がフルリフト位置に達した後に閉弁作動を開始するフルリフト噴射、および開弁作動を開始した前記弁体がフルリフト位置に達することなく閉弁作動を開始するパーシャル噴射のいずれで燃料を噴射させるかを選択する選択手段(S10、S11)と、
前記インジェクタへ供給される燃料の圧力が目標圧力となるよう、前記高圧ポンプの作動を制御するポンプ制御手段(S23)と、
を備え、
前記燃料噴射システムがとりうる前記目標圧力の最大値(Pmax)で前記パーシャル噴射を実施したときの最大噴射量を、パーシャル最大噴射量(Qplmax)と呼ぶ場合において、
前記選択手段は、要求噴射量(Qreq)が前記パーシャル最大噴射量以下である場合に、前記パーシャル噴射を選択することを特徴とする燃料噴射制御装置。 - 前記高圧ポンプは、内燃機関の回転トルクで駆動する機械式ポンプであり、
前記パーシャル噴射を選択して噴霧粒径が小さくなることに起因して前記内燃機関の出力効率が向上する量を出力向上量と呼び、前記パーシャル噴射を選択して前記高圧ポンプの負荷が大きくなることに起因して前記内燃機関の出力効率が低下する量をポンプ損失量と呼ぶ場合において、
前記選択手段(S11)は、前記出力向上量が前記ポンプ損失量よりも大きいことを条件として前記パーシャル噴射を選択することを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射制御装置。 - 前記選択手段は、前記内燃機関の始動時には、前記ポンプ損失量が前記出力向上量よりも大きいとみなすことを特徴とする請求項2に記載の燃料噴射制御装置。
- 前記弁体の閉弁時期を検出する検出手段(S30、S31)と、
前記パーシャル噴射を実施した時に検出された閉弁時期および前記要求噴射量に基づき、前記インジェクタへ開弁を指令する期間を設定する噴射指令期間設定手段(S12、S14)と、
を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の燃料噴射制御装置。 - 前記パーシャル噴射を実施した時に検出された閉弁時期に基づき、該パーシャル噴射による実噴射量を算出し、前記弁体の開弁指令期間と前記実噴射量との関係を表した噴射データを取得する噴射データ取得手段(S32、S33)を備え、
前記噴射指令期間設定手段は、前記インジェクタへ開弁を指令する期間を、前記噴射データおよび前記要求噴射量に基づき設定することを特徴とする請求項4に記載の燃料噴射制御装置。 - 前記インジェクタは、
コイル(13)への通電に伴い電磁吸引力を生じさせる固定コア(14)、および前記固定コアに吸引されて前記弁体とともに移動する可動コア(15)を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の燃料噴射制御装置。 - 前記インジェクタは、
前記可動コアの移動開始と同時に前記弁体も開弁作動を開始するように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の燃料噴射制御装置。 - 前記インジェクタは、前記噴孔の流路長さ(L)が前記噴孔の入口直径(D)よりも小さい構造であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の燃料噴射制御装置。
- 前記選択手段は、
前記要求噴射量が前記パーシャル最大噴射量以下であるか否かを判定する判定手段(S10)を有するとともに、
前記要求噴射量が前記パーシャル最大噴射量以下であると判定されていることを条件として前記パーシャル噴射を選択することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の燃料噴射制御装置。 - 前記選択手段は、前記インジェクタが搭載された内燃機関がアイドル運転している時には、前記パーシャル噴射を選択することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の燃料噴射制御装置。
- 前記インジェクタは、内燃機関の燃焼室(2)へ燃料を直接噴射する位置に配置されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の燃料噴射制御装置。
- 前記内燃機関は、点火装置(6)により着火して燃焼させる点火式内燃機関であることを特徴とする請求項11に記載の燃料噴射制御装置。
- 前記インジェクタは、
コイル(13)への通電により生じた磁束の通路となる磁気回路の一部を形成して電磁力を生じさせる固定コア(14)と、
前記電磁力により吸引されて前記弁体とともに移動する可動コア(15)と、
内燃機関の所定箇所(3a)に形成された取付穴(4)に挿入して取り付けられており、かつ、前記コイルを内部に収容するハウジング(16)を有し、
前記ハウジングは、前記コイルへの通電により生じた磁束の通路を構成する磁気回路の一部を形成する円筒形状であり、
前記ハウジングのうち前記コイルを収容する領域の部分をコイル領域部(16a)と呼ぶ場合において、該コイル領域部の少なくとも一部の外周面が、全周に亘って、前記取付穴の内周面(4a)により囲まれていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1つに記載の燃料噴射制御装置。 - 請求項1〜13のいずれか1つに記載の燃料噴射制御装置と、
前記インジェクタと、
前記高圧ポンプと、
を備えることを特徴とする燃料噴射システム。
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