JP6807577B2 - 布帛用害虫防除スプレー - Google Patents

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Description

本発明は、布帛用害虫防除スプレーおよび当該布帛用害虫防除スプレーを使用する害虫防除方法に関する。
従来、害虫防除スプレーは、ヒトや哺乳動物の皮膚や衣類などに使用し、蚊のような吸血昆虫に対する忌避効果を得るものや、衛生害虫または衛生害虫の生息場所に噴霧して殺虫効果を得るものとして、広く知られている。
忌避効果を得るための害虫防除スプレーは、皮膚に直接使用することはもとより、直接または間接的に皮膚と接触する衣類に噴霧して使用することも多い。また、室内や車内等の一定空間に噴霧して、天井や壁そして家具等、または空気中に害虫防除成分を保持させて、長期間忌避効果を得る製品も知られている。
安定した忌避効果を得るためは、空気中、衣類、天井、壁、家具等に害虫防除成分が十分に保持されることが必要である。
しかしながら、空気中に害虫防除成分を長く残存させるには、噴霧する粒子を精密にコントロールする必要(特許文献1、2)がある。また、害虫防除成分の多くは油性であるため、界面活性剤を使用し、水を希釈剤とする水性タイプの害虫防除スプレーにおいても、害虫防除成分が保持される衣類、天井、壁、家具等における染みなどの汚れの原因となり、害虫防除成分の配合量を増やすことは難しいという問題があった。
また、殺虫効果を得るための害虫防除スプレーにおいても、使用の際にやむを得ず壁や家具等に害虫防除成分が噴霧されてしまい、染みなどの汚れが生じるという問題があった。
特開2015−180611号公報 特開2013−099336号公報
本発明は、上記のような状況を鑑みてなされたものであり、衣類、カーテン、ソファー等の布帛にスプレー処理をして、染みなどの汚れの原因となることなく、十分な量の害虫防除成分を布帛表面に保持することができる、布帛用害虫防除スプレーおよび布帛用害虫防除スプレーを使用する害虫防除方法を提供することを課題としている。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、(A)乳化剤、詳しくは、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体または水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子より選択される1種以上と、(B)害虫防除成分を併用し、かつ、噴霧粒子径を特定の範囲のものとすることにより、布帛にスプレー処理しても染みなどの汚れの原因となることなく、十分な量の(B)害虫防除成分を布帛表面に保持させ得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
上記特定の(A)乳化剤を含有する害虫防除スプレーは、これまでに報告例がなく、本発明は、特定の(A)乳化剤を配合し、かつ、噴霧時の粒子径を特定の範囲のものとすることにより、新たな効果が得られることを見出し、上記課題を解決するに至ったものである。
本発明は、具体的には次の事項を要旨とする。
1.(A)乳化剤、(B)害虫防除成分および(C)水を含有し、
前記(A)乳化剤が、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体、または、糖ポリマーの粒子より選択される1種以上であり、
かつ、
噴射距離10cmにおける体積積算分布で50%の粒子径(D50)が130μm以下であることを特徴とする、
布帛用害虫防除スプレー。
2.(B)害虫防除成分が、ピレスロイド系化合物、ディート、3−(N−n−ブチル−N−アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、2−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペリジンカルボン酸1−メチルプロピルエステルから選択される1種以上であることを特徴とする、1.に記載の布帛用害虫防除スプレー。
3.虫除け用であることを特徴とする、1.または2.に記載の布帛用害虫防除スプレー。
4.1.〜3.いずれかに記載の布帛用害虫防除スプレーを使用する、害虫防除方法。
本発明の布帛用害虫防除スプレーは、十分な量の(B)害虫防除成分を布帛表面に保持させることができるので、長期間安定した害虫防除効果を得ることができる。
特に、本発明の布帛用害虫防除スプレーを虫除けスプレーとして使用する場合には、衣類のほか、カーテンやソファーといった布帛製のものに噴霧することにより、それら布帛表面に十分な量の(B)害虫防除成分を保持させることができるので、長期間安定した虫除け効果を得ることができる。さらに、本発明の布帛用害虫防除スプレーは、衣類や布帛製品などに噴霧しても染み残りなどの問題が生じることがないため、好適に使用することができる。
以下、本発明の布帛用害虫防除スプレーおよび当該布帛用害虫防除スプレーを使用する害虫防除方法について詳細に説明する。
本発明の布帛用害虫防除スプレーは、特定の(A)乳化剤を含有するものである。
<(A)成分について>
本発明における(A)乳化剤は、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体(以下、「閉鎖小胞体」ということがある。)、または、水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子(以下、「重縮合ポリマーの粒子」ということがある。)より選択される1種以上のものである。
本発明における閉鎖小胞体または重縮合ポリマーの粒子は、乳化性能に極めて優れているため、これを含有する組成物において、(C)水の量は20〜99重量%の範囲から幅広く選択することができ、乳化の形態や(B)害虫防除成分の量に応じて適宜設定することができる。閉鎖小胞体又は重縮合ポリマーの粒子の量は、(B)害虫防除成分の量に応じて適宜設定されてよく、特に限定されないが、合計で0.0001重量%以上、5重量%以下であってよく、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.75重量%以下という少量でも、乳化状態を維持することができる。なお、上記量は、いずれも固形分含量である。また、乳化の構造は、特に限定されず、O/W型のエマルション構造であってもよく、W/O型のエマルション構造であってもよいが、O/W型のエマルション構造がより好ましい。
本発明における閉鎖小胞体は、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成される。閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質としては、下記の一般式(1)で表されるポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体もしくは一般式(2)で表されるようなジアルキルアンモニウム誘導体、トリアルキルアンモニウム誘導体、テトラアルキルアンモニウム誘導体、ジアルケニルアンモニウム誘導体、トリアルケニルアンモニウム誘導体、またはテトラアルケニルアンモニウム誘導体のハロゲン塩の誘導体を採用するとよい。
Figure 0006807577
式中、エチレンオキシドの平均付加モル数であるEは、3〜100である。Eが過大になると、両親媒性物質を溶解する良溶媒の種類が制限されるため、親水性ナノ粒子の製造の自由度が狭まる。Eの上限は50が好ましく、40がより好ましい。また、Eの下限は5が好ましい。
Figure 0006807577
式中、R及びRは、各々独立して炭素数8〜22のアルキル基またはアルケニル基であり、R及びRは、各々独立して水素または炭素数1〜4のアルキル基であり、XはF、Cl、Br、I又はCHCOOである。
さらに、本発明における閉鎖小胞体は、リン脂質やリン脂質誘導体等を採用してもよい。リン脂質としては、下記の一般式(3)で示される構成のうち、炭素鎖長12のDLPC(1,2−Dilauroyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−choline)、炭素鎖長14のDMPC(1,2−Dimyristoyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−choline)、炭素鎖長16のDPPC(1,2−Dipalmitoyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−choline)が採用可能である。
Figure 0006807577
また、下記の一般式(4)で示される構成のうち、炭素鎖長12のDLPG(1,2−Dilauroyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−glycerol)のNa塩又はNH4塩、炭素鎖長14のDMPG(1,2−Dimyristoyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−glycerol)のNa塩又はNH4塩、炭素鎖長16のDPPG(1,2−Dipalmitoyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−glycerol)のNa塩又はNH4塩を採用してもよい。
Figure 0006807577
両親媒性物質としては、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、ポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。また、両親媒性物質は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の重縮合ポリマーの粒子における重縮合ポリマーは、特に限定されず、天然高分子または合成高分子のいずれであってもよく、用途に応じて適宜選択されてよい。ただし、安全性に優れ、一般的に安価である点で、天然高分子が好ましく、乳化機能に優れる点で以下に述べる糖ポリマーがより好ましい。なお、粒子とは、重縮合ポリマーが単粒子化したもの、またはその単粒子同士が連なったもののいずれも包含する一方、単粒子化される前の凝集体(網目構造を有する)は包含しない。重縮合ポリマーは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記糖ポリマーは、セルロース、デンプン等のグルコシド構造を有するポリマーである。例えば、リボース、キシロース、ラムノース、フコース、グルコース、マンノース、グルクロン酸、グルコン酸等の単糖類の中からいくつかの糖を構成要素として微生物が産生するもの、キサンタンガム、アラビアガム、グァーガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、フコイダン、クインスシードガム、トラガントガム、ローカストビーンガム、ガラクトマンナン、カードラン、ジェランガム、フコゲル、カゼイン、ゼラチン、デンプン、コラーゲン、シロキクラゲ多糖類等の天然高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、セルロース結晶体、デンプン・アクリル酸ナトリウムグラフト重合体、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の半合成高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸塩、ポリエチレンオキシド等の合成高分子が挙げられる。糖ポリマーは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
糖ポリマー粒子としては、寒天等の多糖類混合物、疎水変性アルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、グァーガムまたはこれらの塩を用いることが好ましい。
本発明の布帛用害虫防除スプレーにおける(A)乳化剤は、乳化状態が安定化しやすく、ヒトや動物に対する安全性が高いことより、疎水変性アルキルセルロースが特に好ましい。
疎水変性アルキルセルロースは、水溶性セルロースエーテル誘導体に、疎水性基を導入した化合物であり、下記一般式(5)で表される。
Figure 0006807577
式中、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、−[CHCHO]H、−[CHCH(CH)O]H、−CHCH(OH)CHO−A、−[CHCH(OH)CHO]−A、又は、−[CHCHO]CHCH(OH)CHO−Aから選択される1種以上の基であるが、すべて同時に水素原子、又は、炭素数1〜4のアルキル基である場合を除き、必ず、−CHCH(OH)CHO−A、−[CHCH(OH)CHO]−A、−[CHCHO]CHCH(OH)CHO−Aから選択される1種以上の基を含有する。n’は50〜5000の整数、mは1〜10の整数、Aは疎水性基を示す。
本発明の布帛用害虫防除スプレーに配合する(A)乳化剤として、一般式(5)で表される疎水変性アルキルセルロースが好ましく、中でも、式中「A」で表される疎水性基として、アルキル基が好ましく、炭素数10〜28のアルキル基がより好ましく、特に、炭素数14〜22のアルキル基が好ましく、具体的にはステアロイル基が最も好ましい。
一般式(5)の式中「A」で表される疎水性基がステアロイル基である疎水変性アルキルセルロースの具体例として、例えば、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。この化合物は、サンジェロースの商品名で大同化成工業株式会社から市販されており、このような市販品を本発明の布帛用害虫防除スプレーの配合成分(A)として使用することも可能である。その配合量は、害虫防除スプレー全量に対し、好ましくは、0.001重量%以上、1.0重量%以下であり、より好ましくは、0.005重量%以上、0.5重量%以下であり、さらに好ましくは、0.01重量%以上、0.1重量%以下である。この配合量の範囲であれば、布帛表面上に十分な量の(B)害虫防除成分を保持させることができ、なおかつ、布帛への染み残りなどの原因となることもないので好適である。
<(B)成分について>
本発明における(B)害虫防除成分は、例えば、害虫防除活性を有する以下の公知化合物群を挙げることができ、これらは1種または2種以上を併用することができる。
(1)ピレスロイド系化合物
アクリナトリン、アレスリン、ベータ−シフルトリン、ビフェントリン、シクロプロトリン、シフルトリン、シハロトリン、シペルメトリン、エンペントリン、デルタメトリン、エスフェンバレレート、エトフェンプロックス、フェンプロパトリン、フェンバレレート、フタルスリン、フルシトリネート、フルフェンプロックス、フルメトリン、フルバリネート、ハルフェンプロックス、ペルメトリン、プラレトリン、ピレトリン、シラフルオフェン、テフルトリン、トラロメトリン、トランスフルトリン、テトラメトリン、フェノトリン、シフェノトリン、ラムダシハロトリン、ガンマシハロトリン、フラメトリン、タウフルバリネート、メトフルトリン、ジメフルトリン、メパフルトリン、プロフルトリン、モンフルオロトリン、レスメトリン等。なお、これらの化合物には、光学異性体、立体異性体等が存在する場合があるが、本発明は、これら異性体の単独又は2以上の異性体を任意の割合で含む混合物をも含むものである。
(2)有機リン系化合物
アセフェート、リン化アルミニウム、ブタチオホス、カズサホス、クロルエトキシホス、クロルフェンビンホス、クロルピリホス、クロルピリホスメチル、シアノホス、ダイアジノン、DCIP、ジクロフェンチオン、ジクロルボス、ジメトエート、ジメチルビンホス、ジスルホトン、EPN、エチオン、エトプロホス、エトリムホス、フェンチオン、フェニトロチオン、ホスチアゼート、ホルモチオン、リン化水素、イソフェンホス、イソキサチオン、マラチオン、メスルフェンホス、メチダチオン、モノクロトホス、ナレッド、オキシデプロホス、パラチオン、ホサロン、ホスメット、ピリミホスメチル、ピリダフェンチオン、キナルホス、フェントエート、プロフェノホス、プロパホス、プロチオホス、ピラクロホス、サリチオン、スルプロホス、テブピリムホス、テメホス、テトラクロルビンホス、テルブホス、チオメトン、トリクロルホン、バミドチオン、フォレート等。
(3)カーバメート系化合物
アラニカルブ、ベンダイオカルブ、ベンフラカルブ、カルバリル、カルボフラン、カルボスルファン、クロエトカルブ、エチオフェンカルブ、フェノブカルブ、フェノチオカルブ、フェノキシカルブ、フラチオカルブ、イソプロカルブ、メトルカルブ、メソミル、メチオカルブ、オキサミル、ピリミカルブ、プロポキスル、XMC、チオジカルブ、キシリルカルブ、アルジカルブ等。
(4)ネライストキシン系化合物
カルタップ、ベンスルタップ、チオシクラム、モノスルタップ、ビスルタップ等。
(5)ネオニコチノイド系化合物
イミダクロプリド、ニテンピラム、アセタミプリド、チアメトキサム、チアクロプリド、ジノテフラン、クロチアニジン等。
(6)ベンゾイル尿素系化合物
クロルフルアズロン、ビストリフルロン、ジアフェンチウロン、ジフルベンズロン、フルアズロン、フルシクロクスロン、フルフェノクスロン、ヘキサフルムロン、ルフェヌロン、ノバルロン、ノバフルムロン、テフルベンズロン、トリフルムロン、トリアズロン等。
(7)フェニルピラゾール系化合物
アセトプロール、エチプロール、フィプロニル、バニリプロール、ピリプロール、ピラフルプロール等。
(8)Btトキシン系化合物
バチルス・チューリンゲンシス菌由来の生芽胞および産生結晶毒素、並びにそれらの混合物。
(9)ヒドラジン系化合物
クロマフェノジド、ハロフェノジド、メトキシフェノジド、テブフェノジド等。
(10)有機塩素系化合物
アルドリン、ディルドリン、ジエノクロル、エンドスルファン、メトキシクロル等。
(11)忌避系化合物
ディート、3−(N−n−ブチル−N−アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル(以下、「IR3535」と称する。)、2−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペリジンカルボン酸1−メチルプロピルエステル(以下、「イカリジン」と称する。)、p−メンタン−3,8−ジオール、ジメチルフタレート、ユーカリプトール、α−ピネン、ゲラニオール、シトロネラール、カンファー、リナロール、カラン−3,4−ジオール等。
本発明の布帛用害虫防除スプレーは、(B)害虫防除成分として、ピレスロイド系化合物、忌避系化合物から選択される1種以上の成分を含有することが好ましく、ピレスロイド系化合物、ディート、IR3535、イカリジンから選択される1種以上の成分を含有することがより好ましい。
本発明の布帛用害虫防除スプレーに配合される(B)害虫防除成分の含有量は、使用目的や使用する場所等に応じて適宜決定すればよいが、布帛用害虫防除スプレー全量に対して、0.001〜50重量%含有することが好ましく、0.01〜30重量%含有することがより好ましい。
本発明の布帛用害虫防除スプレーは、(A)乳化剤と(B)害虫防除成分を使用し、液体担体により液剤を調製してスプレー剤とし、噴射距離10cmにおける体積積算分布で50%の粒子径(以下、「D50」ということがある。)が130μm以下で噴霧して使用するものである。この「D50」は、50μm以上が好ましく、60μm以上がより好ましく、70μm以上が特に好ましい。上記範囲内の「D50」で噴霧することにより、後述する実施例で明らかにするように、布帛の種類や、スプレー容器の仕様に関わらず、目的の粒子径を有していれば、十分な量の(B)害虫防除成分を布帛表面に保持させることができるので、安定した害虫防除効果を得ることができる。しかも、布帛自体に吸収される(B)害虫防除成分を含有する薬液量が少ないため、布帛に染みなどの汚れの原因を残すことが無く、好適に使用することができる。
本発明の布帛用害虫防除スプレーの液剤を調製するにあたっては、通常汎用される界面活性剤を配合しても良いが、成分(A)の乳化剤以外には、界面活性剤を含有しないことがより好ましい。また、液剤を調製する際に、公知の液体担体、ガス状担体、固体担体、その他製剤助剤が使用される。
液体担体としては、例えば、芳香族または脂肪族炭化水素類(キシレン、トルエン、アルキルナフタレン、フェニルキシリルエタン、ケロシン、軽油、ヘキサン、シクロヘキサン、流動パラフィン等)、ハロゲン化炭化水素類(クロロベンゼン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン等)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール等)、エーテル類(ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、乳酸エチル、安息香酸エチル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、ニトリル類(アセトニトリル、イソブチロニトリル等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、ヘテロ環系溶剤(スルホラン、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−オクチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン)、酸アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−ピロリドン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド等)、炭酸アルキリデン類(炭酸プロピレン等)、植物油(大豆油、綿実油等)、植物精油(オレンジ油、ヒソップ油、レモン油等)、および水が挙げられる。特に、本発明の布帛用害虫防除スプレーを虫除けスプレーとして使用する場合には、水性液剤が好ましく、液体担体として水が好適に使用できる。また、水以外の液体担体は、エマルションを壊さない程度の量で配合することができる。
また、ガス状担体としては、例えば、ブタンガス、フロンガス、(HFO、HFC等の)代替フロン、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル、および炭酸ガスが挙げられ、固体担体としては、例えば、粘土類(カオリン、珪藻土、ベントナイト、クレー、酸性白土等)、合成含水酸化珪素、タルク、セラミック、その他の無機鉱物(セリサイト、石英、硫黄、活性炭、炭酸カルシウム、水和シリカ等)、多孔質体等が挙げられる。
その他の製剤用補助剤としては、固着剤、分散剤、溶解助剤および安定剤等、具体的には例えばカゼイン、ゼラチン、多糖類(でんぷん、アラビアガム、セルロース誘導体、アルギン酸等)、リグニン誘導体、糖類、合成水溶性高分子(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸等)、安息香酸エステルや塩類、BHT(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、およびBHA(2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールと3−tert−ブチル−4−メトキシフェノールとの混合物)が挙げられる。
本発明では、さらに必要に応じて共力剤、防錆剤、防腐剤、pH調整剤、香料等の成分を適宜添加し得る。これらの成分としては、この分野で慣用されているものを使用することができ、具体的には、共力剤としてはピペロニルブトキサイド、オクタクロロジプロペニルエーテル、MGK264、サイネピリン等を、防錆剤としてはカーレンNo.955、No.906、No.954、No.958、No.970(いずれも商標:三洋化成工業株式会社)等を、防腐剤としてはパラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、イソチアゾリノン、サリチル酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム等を、pH調整剤としては酢酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、サリチル酸、安息香酸等の有機酸類やリン酸等の無機酸類、その塩類をそれぞれ例示できる。
本発明の布帛用害虫防除スプレーは、(A)乳化剤、(B)害虫防除成分および(C)水を使用して製剤化し、得られた液剤をスプレー容器に充填することにより、スプレー剤として使用することができる。スプレー容器としては、噴射距離10cmにおける体積積算分布で50%の粒子径(D50)が130μm以下で噴霧することができるものであれば、限定されるものではない。スプレー容器としては、液体製剤を容易に充填でき、スプレー剤として機能するものであればよいが、汎用性やスプレー精度の高さを考慮すると、以下の3つのスプレー容器が好ましい。
(1)噴霧可能なポンプ式ノズルを装着したミスト式スプレー容器:このスプレー容器は、大気圧でスプレーでき、加圧ガスなどを必要とせず、かつ容器構造も比較的単純であるので安全性が高く、携帯用に向くスプレー容器である。構造は吸い上げ式のチューブを装着した押し出しポンプ式のノズルと、これを固定し、内容物を充填するねじ式容器からなる。
(2)トリガー式スプレー容器:この容器は、内容物を充填する容器本体の口部にピストル状のトリガー式スプレー装置が装着されたものであり、大気圧でスプレーを操作でき、スプレー容器として汎用性の高いものである。ここでいうトリガー式スプレー容器には、スプレー機能を高めるために、トリガー式スプレー容器の一部を改良したものも全て含まれる。
(3)エアゾール式スプレー容器:この容器は、容器内へ噴射剤を充填することによって、上記2つのスプレー容器では実現できない連続スプレーを可能とするものである。ここでいうエアゾール式スプレー容器には、エアゾール式容器の噴射装置部分に改良を施したもの等もすべて含まれる。一般的に本スプレー容器を用いたスプレーでは、大気圧下で実施する上記2つのスプレー容器に比べ、より細かな霧が可能となる。エアゾール式スプレー容器で使用する噴射剤としては、ジメチルエーテル、液化石油ガス、炭酸ガス、窒素ガス、アルゴンガス、空気、酸素ガス、フロンガス等を挙げることができ、これらは単独であるいは2種以上併用して用いられる。
特に、本発明の布帛用害虫防除スプレーを虫除けスプレーとして使用する場合には、使い勝手がよいことから、(1)ミスト式スプレー容器または(2)トリガー式スプレー容器が好適である。
本発明の布帛用害虫防除スプレーは、上述のエアゾール式スプレー容器に充填して使用することも可能である。その際、エアゾール式スプレー容器に充填する液剤に使用する液体担体としては、(C)水が必須成分であり、液体担体として次に上げる有機溶剤を、エマルションを壊さない範囲で併用して配合することもできる。
好ましい有機溶剤としては、脂肪酸エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、ヘテロ環系溶剤、エステル系溶剤、及びアルコール系溶剤から選ばれる1種又は2種以上が挙げられ、具体的には、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸メチル、オレイン酸イソブチル、ラウリン酸ヘキシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、乳酸エチル、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ブチルプロピレンジグリコール、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、スルホラン、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−オクチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、炭酸プロピレン、メタノール、エタノール、イソプロパノール等があげられるが、これらに限定されない。なかでも、炭素数の総数が15〜22の範囲のミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸イソブチル等の高級脂肪酸エステル、N−メチル−2−ピロリドン、エタノール、イソプロパノール、炭酸プロピレンが適している。
本発明の布帛用害虫防除スプレーを、上述のエアゾール式スプレー容器に充填する場合に使用する噴射剤としては、公知のものを広く使用することができ、例えば液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル、炭酸ガス、窒素ガス等を挙げることができる。この布帛用害虫防除スプレーにおいては、噴射剤量が害虫防除スプレー全体の10〜95容量%、特に30〜90容量%とし、原液(成分(A)、(B)および、(C)や製剤助剤等の総量)が全体の90〜5容量%、特に70〜10容量%とすることができる。本発明の布帛用害虫防除スプレーを製造するに際しては、この分野で慣用されている方法を広く使用し得る。そのうち代表的な方法としては、(A)乳化剤、(B)害虫防除成分および(C)水や必要に応じてその他の液体担体や配合成分を添加し、必要ならば加熱(30〜50℃)混合して均一な溶液を作製した後、防錆剤、防腐剤等を加え、得られる原液をエアゾール式スプレー容器に入れ、噴射剤を充填して製品とする方法等を挙げることができる。このようにして得られる本発明の布帛用害虫防除スプレーは、長期間過酷な条件下においても安定で、均一な状態を維持することができ、所望する時にワンタッチで微粒子として空気中に噴射し得る。
本発明の布帛用害虫防除スプレーを虫除けスプレーとして使用する場合には、ヒトの皮膚に間接的または直接的に触れることもあるため、皮膚に潤いを与えるなどの薬効成分を、エマルションを壊さない範囲で適宜配合してもよい。これら薬効成分としては、アボカドエキス、アマチャエキス、アルテアエキス、アルニカエキス、アンズエキス、アンズ核エキス、イチョウエキス、ウイキョウエキス、ウコンエキス、ウーロン茶エキス、エチナシ葉エキス、オウバクエキス、オオムギエキス、オランダカラシエキス、オレンジエキス、加水分解コムギ末、加水分解シルク、カモミラエキス、カロットエキス、カワラヨモギエキス、カルカデエキス、キウイエキス、キナエキス、キューカンバーエキス、グアノシン、クマザサエキス、クルミエキス、グレープフルーツエキス、クレマティスエキス、酵母エキス、コンフリーエキス、コケモモエキス、サイコエキス、サイタイ抽出液、サルビアエキス、サボンソウエキス、ササエキス、サンザシエキス、シイタケエキス、ジオウエキス、シコンエキス、シナノキエキス、シモツケソウエキス、ショウブ根エキス、シラカバエキス、スギナエキス、スイカズラエキス、セイヨウキズタエキス、セイヨウサンザシエキス、セイヨウニワトコエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、ゼニアオイエキス、センブリエキス、タイソウエキス、タイムエキス、チョウジエキス、チガヤエキス、トマトエキス、納豆エキス、ノバラエキス、ハイビスカスエキス、バクモンドウエキス、パセリエキス、パリエタリアエキス、ヒキオコシエキス、ビサボロール、フキタンポポエキス、フキノ蜂蜜、トウエキス、ブクリョウエキス、ブッチャーブルームエキス、ブドウエキス、プロポリス、ヘチマエキス、ペパーミントエキス、ボダイジュエキス、ホップエキス、マツエキス、マロニエエキス、ミズバショウエキス、ムクロジエキス、モモ葉エキス、ヤグルマギクエキス、ユーカリエキス、リンゴエキス、レタスエキス、レンゲソウエキス、ローズエキス、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキス等が挙げられる。
本発明の布帛用害虫防除スプレーは、虫除けとして衣類に直接噴霧して使用するか、蚊などの吸血昆虫を防除したい空間にあるカーテンやソファー等の布帛製品に噴霧して使用する。特に、本発明の布帛用害虫防除スプレーは、虫除けスプレーとして使用することが好適である。
後述する実施例において詳細に説明するが、本発明の布帛用害虫防除スプレーは、従来処方の害虫防除スプレーに比べて、布帛に噴霧した場合、布帛の表面に保持される(B)害虫防除成分量が飛躍的に向上し、布帛自体に吸収される(B)害虫防除成分量が大きく低減することが明らかとなった。すなわち、本発明の布帛用害虫防除スプレーは、布帛の表面上に(B)害虫防除成分が、従来処方のものよりも多く保持されるため、長期間安定した害虫防除効果を得ることができる。さらに、布帛自体に吸収される(B)害虫防除成分量が少ないため、従来処方の害虫防除スプレーに比べて、布帛に染みなどの問題が生じることなく好適に使用することができる。本発明の布帛用害虫防除スプレーが奏するこれらの効果は、本発明者が多くの実験を行い初めて確認した格別顕著な効果である。
また、本発明の布帛用害虫防除スプレーを使用する布帛製品としては、衣類のほかに、主に屋内空間にあるカーテン、ソファー、クッション、カーペット、壁紙等、また車内にあるシート等を挙げることができる。
以下、製剤例及び試験例等により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。
まず、本発明の(B)害虫防除成分を含有する組成物の製剤例を示す。なお、実施例において、特に明記しない限り、部は重量部を意味する。
<試験検体>
表1に示す組成において、液剤(実施検体、比較検体)を調整した。得られた試験検体は、振とう後、一定期間は均一な懸濁製剤であることを確認した。
比較検体は、従来公知のディートを含有する一般的な液剤処方である。また、疎水変性アルキルセルロースは、市販されているステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用した。
Figure 0006807577
本発明の布帛用害虫防除スプレーを、以下3種類の試験布帛1〜3それぞれに噴霧し、布帛表面の残存性、布帛裏面への浸透性について、下記試験方法に従い評価を行った。
試験布帛1:10cm×10cmのポリエステル製布帛
目付け:70g/m
試験布帛2:10cm×10cmのナイロン製布帛
目付け:70g/m
試験布帛3:10cm×10cmの綿製布帛
目付け:100g/m
各評価は、上記試験検体(実施検体、比較検体)を下記スプレー容器A〜Fに充填したものを使用した。
スプレー容器A:狭角噴射トリガー式スプレー(噴射量:1ml)
噴霧粒子径(D50):175.4μm
スプレー容器B:広角噴射トリガー式スプレー(噴射量:1ml)
噴霧粒子径(D50):137.1μm
スプレー容器C:トリガー式スプレー(噴射量:0.3ml)
噴霧粒子径(D50):104.1μm
スプレー容器D:ミスト式スプレー(噴射量:0.15ml)
噴霧粒子径(D50):81.6μm
スプレー容器E:ミスト式スプレー(噴射量:0.075ml)
噴霧粒子径(D50):92.4μm
スプレー容器F:ミスト式スプレー(噴射量:0.075ml)
噴霧粒子径(D50):89.9μm
なお、上記噴射量は、1回の操作(例えば、1プッシュ)で噴射される量を、噴霧粒子径(D50)は以下の測定方法による数値を意味する。
スプレー容器A、Bは株式会社吉野工業所製、スプレー容器C〜Fは株式会社三谷バルブ製である。
<噴霧粒子径(D50)>
噴霧粒子の平均粒子径(D50)は、粒度分布測定装置により測定され、自動演算処理装置により解析されたD50(累積50%)を意味する。具体的には、粒度分布測定装置のレーザー光発光部より受光部に照射されるレーザービームと、試験検体を充填したスプレー容器A〜Fの噴射口との距離が10cm程度となる位置から、噴射物がレーザービームを垂直に通過するように試験検体を噴射する。噴射中に測定を行い、噴射物の粒度分布を自動演算処理装置により解析することで求めることができる。測定器はマイクロトラック・ベル株式会社製の「LDSA―1400A」を使用した。
<布帛表面の残存性試験>
試験布帛の表面に向けて概略垂直方向5cmの距離から、表2〜4に記載した噴霧量を噴霧した。1分後に試験布帛の表面にろ紙を接触させて、試験布帛の表面上の試験検体をろ紙に吸収させ、その重量を測定した。試験は3回行い、噴霧量に対するろ紙が吸収した試験検体の重量(平均値)の割合を算出し、布帛表面の残存性評価の指標とした。
<布帛裏面への浸透性試験>
試験布帛の裏面にろ紙をあて、試験布帛の表面に向けて概略垂直方向5cmの距離から、表2〜4に記載した噴霧量を噴霧した。30秒後にろ紙を試験布帛から取り、ろ紙に浸透した試験検体の重量を測定した。試験は3回行い、噴霧量に対するろ紙に浸透した試験検体の重量(平均値)の割合を算出し、布帛裏面への浸透性評価の指標とした。
試験布帛1〜3それぞれの結果を、表2〜4に示す。
試験布帛1:ポリエステル製布帛の結果
Figure 0006807577
試験布帛2:ナイロン製布帛の結果
Figure 0006807577
試験布帛3:綿製布帛の結果
Figure 0006807577
表2〜4の「布帛表面の残存性」の結果より、本発明の(A)乳化剤を含有する実施検体を、噴射距離10cmにおける体積積算分布で50%の粒子径(D50)が130μm以下となるスプレー容器C〜Fを使用して噴霧すると、ポリエステル、ナイロン、綿等の布帛の種類や、スプレー容器の仕様に関わらず、目的の粒子径を有していれば、布帛の表面に保持される実施検体が飛躍的に向上することが確認された。これに対し、一般的な液剤処方(比較検体)を使用した場合には、何れのスプレー容器や布帛においても、布帛の表面に保持される比較検体が少ないことが明らかとなった。
一方、表2〜4の「布帛裏面への浸透性」の結果より、本発明の(A)乳化剤を含有する実施検体を、噴射距離10cmにおける体積積算分布で50%の粒子径(D50)が130μm以下となるスプレー容器C〜Fを使用して噴霧すると、ポリエステル、ナイロン、綿等の布帛の種類や、スプレー容器の仕様に関わらず、目的の粒子径を有していれば、布帛自体に吸収される実施検体の量が大きく低減することが確認された。これに対し、一般的な液剤処方(比較検体)を使用した場合には、何れのスプレー容器や布帛においても、布帛自体に吸収される比較検体が多いことが明らかとなった。
これらの結果より、本発明の布帛用害虫防除スプレーは、布帛の種類や、スプレー容器の仕様に関わらず、目的の粒子径を有していれば、噴霧した布帛表面上に(B)害虫防除成分を、従来処方のものよりも多く保持させ得ることができることが明らかとなった。これにより、本発明の布帛用害虫防除スプレーは、長期間安定した害虫防除効果を得ることができる。また、本発明の布帛用害虫防除スプレーは、布帛自体に吸収される薬液量が少ないため、従来処方の害虫防除スプレーに比べて、布帛に染みなどの問題が生じることなく好適に使用することができることも確認された。
本発明の布帛用害虫防除スプレーが奏するこれらの効果は、本発明者が多くの実験を行い初めて確認した格別顕著な効果である。
<白残りについての検討>
虫除けスプレーを皮膚や衣類に噴霧すると、有効成分が均一に塗布されずに、皮膚や衣類上に「白残り」する現象が問題となっている。本発明の布帛用害虫防除スプレーにおいて、この「白残り」が抑制される噴霧条件について検討を行った。
その結果、噴霧粒子の平均粒子径(D50)を特定の範囲のものとすることにより、「白残り」が抑制されることが明らかとなった。
この検討は、上記実施検体を上記スプレー容器A〜Fそれぞれに充填したものを使用して行った。以下、詳細に説明する。
<布帛への白残り評価試験>
15cm×15cmの黒色綿布表面に向けて、概略垂直方向10cmの距離から、噴霧全量が1.0〜1.2mlの範囲内となるように試験検体を噴霧し、風乾後黒色綿布上の白残りを、3名のパネラーによる目視確認により評価した。
評価基準は、白残りが確認されない場合を「〇」、白残りがわずかに確認できる場合を「△」、白残りが目立つ場合を「×」とした。
<濡れ直径(cm)>
ろ紙表面に向けて概略垂直方向10cmの距離から、噴霧全量が1.0〜1.2mlの範囲内となるように実施検体を噴霧し、噴霧直後のろ紙表面の濡れ部分の直径(cm)を測定した。
それぞれの結果を、表5に示す。
Figure 0006807577
表5の結果より、本発明の布帛用害虫防除スプレーは、噴射距離10cmにおける体積積算分布で50%の粒子径(D50)が130μm以下であることにより、布帛上における白残りを有効に抑制できることが確認された。また、本発明の布帛用害虫防除スプレーは、1.0〜1.2ml噴霧した場合においても、布帛上の濡れ範囲が広いことも確認された。
本発明の布帛用害虫防除スプレーは、本発明の(A)乳化剤を含有し、かつ、噴射距離10cmにおける体積積算分布で50%の粒子径(D50)が130μm以下とすることにより、布帛の種類や、スプレー容器の仕様に関わらず、目的の粒子径を有していれば、(B)害虫防除成分を布帛表面に十分な量を保持させることができるので、従来処方の害虫防除スプレーに比べて、安定した害虫防除効果を得ることができる。しかも、布帛自体に吸収される(B)害虫防除成分を含有する薬液量が少ないため、布帛に染みなどの汚れの原因を残すことが無く、好適に使用することができる。
特に、本発明の布帛用害虫防除スプレーを虫除けスプレーとして使用すると、虫除け効果を長期間維持することができ、衣類に噴霧しても染み残りなどの問題が生じることがないため、好適に使用することができる。

Claims (4)

  1. (A)乳化剤、(B)害虫防除成分および(C)水を含有し、
    前記(A)乳化剤が、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体、または、糖ポリマーの粒子より選択される1種以上であり、
    かつ、
    噴射距離10cmにおける体積積算分布で50%の粒子径(D50)が130μm以下であることを特徴とする、
    布帛用害虫防除スプレー。
  2. (B)害虫防除成分が、ピレスロイド系化合物、ディート、3−(N−n−ブチル−N−アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、2−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペリジンカルボン酸1−メチルプロピルエステルから選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の布帛用害虫防除スプレー。
  3. 虫除け用であることを特徴とする、請求項1または2に記載の布帛用害虫防除スプレー。
  4. 請求項1〜3いずれかに記載の布帛用害虫防除スプレーを使用する、害虫防除方法。
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