JP6805547B2 - プレスフィット端子 - Google Patents

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Description

本発明はプレスフィット端子に関する。
電子制御装置では、電子回路やパワー回路等への接続端子として、プレスフィット端子が用いられている。このプレスフィット端子は、電子回路基板のスルーホール内面と電気的に導通させるものであり、スルーホールに圧入される接続端子のことである。このプレスフィット端子はスルーホールへ圧入する際、端子表面が削れてしまう虞があるため、端子の表面には、メッキ処理等が行われている。
例えば、特許文献1では、以下のような表面処理が行われている。
まず、基材の表面に、下地メッキ層としてNi(ニッケル)メッキを施す。次に、下地メッキ層の表面に、Cu(銅)メッキ及びSn(錫)メッキをこの順序で施す。さらに、これらメッキを施した基材をリフロー処理(加熱処理)する。
このように処理することにより、プレスフィット端子(基材)の表面に、Sn層よりも表面硬度が高いCu−Sn合金層を形成する。
特開2006−114492号公報
(発明が解決しようとする課題)
しかしながらCuの融点がSnの融点よりも高いため、特許文献1の表面処理方法では、リフロー処理時にCuメッキ層を十分に溶融させることが難しく、Snメッキ層中にCuが均一に分散しない、あるいはSnメッキ層の表面までCuを析出できない等の問題が生じやすい。また、表面処理過程において、Cuメッキ層(皮膜)とSnメッキ層(皮膜)との間の膜厚ばらつき等の影響により、基材の表層に形成されるCu−Sn合金層が不均一となる虞がある。
これらの要因によって、上記表面処理方法では、プレスフィット端子の表面メッキ層の表面硬度が部分的に低下し、プレスフィット端子をスルーホールヘ圧入する際に、メッキ層が局所的に削れてしまう問題があった。そのため、当該技術分野においては、従来よりも更に、表面が削られ難いプレスフィット端子が求められていた。
そこで、本発明は、スルーホールへ圧入する際に、表面メッキ層全体が削れ難いプレスフィット端子を提供することを目的とする。
(課題を解決するための手段)
本発明は、内部にスリットが形成されるとともに幅方向に弾性変形可能な圧入部を有するプレスフィット端子であって、基材と、前記基材の表面に形成されたNi皮膜である下地メッキ層と、前記下地メッキ層の表面に形成された、Sn−Ni合金からなり且つ表面にNiが析出している表面メッキ層と、を備え、前記表面メッキ層中のNi含有率が10wt%以上かつ40wt%以下であり、前記下地メッキ層のNi結晶の最大粒径が500ナノメートル以下であり、前記下地メッキ層の厚みが1μm以上且つ2μm以下である。
本発明では、プレスフィット端子の表面にSn−Ni合金からなる表面メッキ層を形成している。
表面メッキ層中にはNiが均一に分散しかつ表面メッキ層の最表面にNiが表れる。そのため、表面メッキ層全体の表面硬度を十分に高くすることが可能である。
従って、プレスフィット端子を電子回路基板のスルーホールに圧入したときに、プレスフィット端子の表面が削られるおそれを小さくすることが可能である。
前記表面メッキ層中のNi含有率が10wt%以上かつ40wt%以下であ
表面メッキ層中のNi含有率が10wt%未満の場合は、表面メッキ層全体の表面硬度が不十分な大きさとなる。そのため、この場合はプレスフィット端子を電子回路基板のスルーホールに圧入したときに、プレスフィット端子の表面が削られるおそれが大きい。
また、表面メッキ層中のNi含有率が40wt%を超える場合は、プレスフィット端子の電子回路基板のスルーホールに対する接触抵抗が大きくなり過ぎてしまう。
しかし、表面メッキ層中のNi含有率を10wt%以上かつ40wt%以下とすれば、このような不具合が発生するおそれを小さくできる。
前記基材がCu又はCu合金であり、前記基材と前記表面メッキ層との間に、Ni皮膜である下地メッキ層を有し、前記表面メッキ層の厚みが0.3μm以下であり、前記下地メッキ層のNi結晶の最大粒径が500ナノメートル以下であってもよい。
なお、本明細書における「Ni皮膜」には、「Niのみを含有する皮膜」のみならず「Ni及びNi以外の成分を含有する皮膜」が含まれる。
このように構成すれば、基材中のCuが表面メッキ層(Sn)中に拡散するのを、Ni皮膜である下地メッキ層によって抑制できる。また、下地メッキ層の硬度が高くなりかつ表面メッキ層が薄くなるので、プレスフィット端子の表面硬度が高くなる。
前記下地メッキ層が、サッカリン及び1、4−ブチンジオールを光沢剤として含有してもよい。
このように構成すれば、下地メッキ層はNi結晶が細かくなった状態で形成される。従って、下地メッキ層のNi結晶の最大粒径を500nm(ナノメートル)以下とすることが可能になる。
本発明の第一の実施形態のプレスフィット端子を電子回路基板のスルーホールに圧入した状態を示す図である。 プレスフィット端子の圧入部の断面図である。 実施例1、2及び比較例1、2の各プレスフィット端子のメッキ条件や各試験結果を示す表である。 本発明の第二の実施形態に属する実施例3、第三の実施形態に属する実施例4、及び第四の実施形態に属する実施例5のプレスフィット端子のメッキ条件や各試験結果を示す表である。
以下、本発明の第一の実施形態について図1乃至図3を参照して説明する。
プレスフィット端子10は細長形状である。図1に示すように、プレスフィット端子10は、先端側に圧入部11を備えている。この圧入部11には、スリット12が形成されているため、圧入部11はプレスフィット端子10の幅方向に弾性変形可能である。
図1に示した電子回路基板20の表面には電子回路(図示略)が形成されており、スルーホール21の表面には電子回路に接続する金属メッキが施されている。
プレスフィット端子10の圧入部11を電子回路基板20のスルーホール21に対して圧入すると、圧入部11は幅を狭める方向に弾性変形しながらスルーホール21の表面に接触する。そのため、スルーホール21の金属メッキを介してプレスフィット端子10と電子回路基板20の電子回路とが互いに電気的に導通する。
プレスフィット端子10は、板材をプレス加工して得られた基材の表面にメッキ処理を施すことにより製造される。この板材(基材)はCu又はCu合金である。プレス加工によって、板材から図1に示される形状のプレスフィット端子10を加工する。さらに、基材15の表面(プレス加工時に形成された切断面を含む)には、図2に示したように、Ni皮膜である下地メッキ層16が形成されている。下地メッキ層16の厚みは0.5以上かつ2.0μm以下である。下地メッキ層16は、例えばNiイオンを含有するメッキ液を利用した電気メッキにより基材15の表面に形成される。なお、基材15に対して下地メッキ層16を形成する前に、基材15の表面に対して表面処理(電解脱脂、酸洗浄、水洗など)を行うのが好ましい。
さらに図2に示したように、下地メッキ層16の表面にはSn−Ni合金からなる表面メッキ層(皮膜)17が形成されている。
表面メッキ層17は、例えばSnイオン及びNiイオンを含有するSn−Ni合金メッキ液を利用した電気メッキによりプレスフィット端子10の表面に形成される。Sn−Ni合金メッキ液中のSnイオン及びNiイオンの割合やキレート剤などのメッキ条件を工夫することにより、表面メッキ層17中にNiを均一に分散させかつ表面メッキ層17の表面にNiを析出させている。この場合、下地メッキ層16の表面に表面メッキ層17をメッキ処理した後にリフロー処理を行う必要はない。なお、表面メッキ層17をメッキ処理する前に、下地メッキ層16の表面に対して表面処理(酸洗浄、水洗など)を行うのが好ましい。
表面メッキ層17中のNiの含有率は10wt%以上かつ40wt%以下に設定されている。また表面メッキ層17の厚みは0.5以上かつ2.0μm以下である。
表面メッキ層17においてNiが均一に分散しかつ表面メッキ層17の表面にNiが析出しているため表面メッキ層17全体の表面硬度は十分に高い。そのため、プレスフィット端子10の圧入部11を電子回路基板20のスルーホール21に圧入したときに、圧入部11の表面である表面メッキ層17がスルーホール21の表面によって削られるおそれは小さい。
従って、プレスフィット端子10と電子回路基板20とを確実に導通させることが可能である。
なお、仮に表面メッキ層17中のNi含有率が10wt%未満の場合は、表面メッキ層17全体の表面硬度が不十分な大きさとなる。そのため、この場合はプレスフィット端子10の圧入部11を電子回路基板20のスルーホール21に圧入したときに、圧入部11の表面メッキ層17が削られるおそれが大きい。
また、仮に表面メッキ層17中のNi含有率が40wt%を超える場合は、Niが所望の割合となるようにSn−Ni合金メッキをプレスフィット端子10に施すのが難しくなる。さらに、この場合はプレスフィット端子10の圧入部11の電子回路基板20のスルーホール21に対する接触抵抗が大きくなり過ぎてしまう。
しかし、本実施形態のように表面メッキ層17中のNi含有率を10wt%以上かつ40wt%以下とすれば、このような不具合が発生するおそれを小さくできる。
またプレスフィット端子10では基材15と表面メッキ層17との間に下地メッキ層16が介在している。
そのため基材15中のCuが表面メッキ層17(Sn)中に拡散するのを、下地メッキ層16によって抑制できる。
続いて、本発明の実施例(実施例1)を比較例と対比させながら説明する。なお、実施例1及び各比較例のプレスフィット端子の基材はほぼ同じ寸法である。また、各基材の材質はCuである。
(実施例1)
実施例1のプレスフィット端子は上記実施形態のプレスフィット端子10と同じ製法によって製造されたものである。図3の表に示すように、実施例1のプレスフィット端子の下地メッキ層の厚みは1.0μmであり、表面メッキ層の厚みは2.0μmである。さらに表面メッキ層中のNi含有率は10wt%である。
(実施例2)
実施例2のプレスフィット端子は上記実施形態のプレスフィット端子10と同じ製法によって製造されたものである。図3の表に示すように、実施例2のプレスフィット端子の下地メッキ層の厚みは1.0μmであり、表面メッキ層の厚みは2.0μmである。さらに表面メッキ層中のNi含有率は35wt%である。
(比較例1)
比較例1のプレスフィット端子は上記実施形態のプレスフィット端子10と同じ製法によって製造されたものである。図3の表に示すように、比較例1のプレスフィット端子の下地メッキ層の厚みは1.0μmであり、表面メッキ層の厚みは2.0μmである。さらに表面メッキ層中のNi含有率は5wt%である。
(比較例2)
図3の表に示す比較例2のプレスフィット端子は、上記実施形態のプレスフィット端子10とは異なる製法によって製造されたものである。即ち、比較例2のプレスフィット端子は、基材の表面にNiメッキ層を形成した後にNiメッキ層の表面にSnメッキ層を形成し、その後にプレスフィット端子をリフロー処理することにより製造される。この下地メッキ層16は、Niイオンを含有するメッキ液を利用した電気メッキにより形成される。この場合、リフロー処理の過程で、Snメッキ層及びNiメッキ層が溶融するので、Snメッキ層とNiメッキ層との境界部でSn−Ni合金が形成される。しかし、表面メッキ層が厚く形成されているため、リフロー処理の過程で、NiはSnメッキ層の内部で拡散し難く、そのため表面メッキ層の最表面にNiが表れていない。なお、このメッキ液には光沢剤は添加されていない。
比較例2のプレスフィット端子のNiメッキ層(下地メッキ層)の厚みは1.0μmであり、Snメッキ層(表面メッキ層)の厚みは2.0μmである。また、Snメッキ層(表面メッキ層)中のNi含有率は30wt%である。
続いて、実施例1、2及び比較例1、2の性能評価試験の結果について説明する。
(削れ抑制試験)
実施例1、2及び比較例1、2の各プレスフィット端子の圧入部を電子回路基板20のスルーホール21に圧入(挿入)した後、メッキの削れ屑の量を目視で確認した。具体的には、各プレスフィット端子をスルーホール21に挿入した後、挿入された状態のままで、スルーホール21の周囲に集まったメッキの削り屑の有無を目視で評価した。その結果、図3の表に示したように、実施例1、2では削れ屑は確認されなかった。一方、比較例1、2では、削れ屑が確認された。
比較例1のプレスフィット端子は表面メッキ層中のNi含有率が5wt%であり、実施例1、2と比べてNi含有率が低い。そのため表面メッキ層の表面硬度が不十分であり、それ故、削れ具合が実施例1、2よりも大きくなったものと推測される。
比較例2のプレスフィット端子は、リフロー処理することによりSnメッキ層及びNiメッキ層を溶融させて、Snメッキ層とNiメッキ層との境界部でSn−Ni合金を形成している。しかし、表面メッキ層が厚く形成されているため、リフロー処理の過程で、Snメッキ層中にNiが均一に拡散していない。つまり、表面メッキ層の最表面にはNiが表れないか又は殆ど表れない状態となる。この場合、表面メッキ層の表面硬度が低くなるので、表面メッキ層がスルーホール21によって削られたものと推測される。
(表面硬度試験)
ビッカース硬度試験によって実施例1、2及び比較例1、2の各プレスフィット端子の表面硬度を測定した。なお、ビッカース硬度試験は、マイクロビッカス硬度計(製造者名:株式会社フユーチュアテック、製品名:FM−ARS900)を用いて行った。
その結果、図3の表に示したように、実施例1、2のプレスフィット端子は十分な硬度を有することが確認できた。その一方で、比較例1、2のプレスフィット端子は硬度が不十分であることが確認できた。
このような結果になった原因は、削れ抑制試験の場合と同じと考えられる。
(クラック試験)
実施例1、2及び比較例1、2の各プレスフィット端子の圧入部を電子回路基板20のスルーホール21に圧入した後に圧入部をスルーホール21から引き抜いたときに、圧入部の表面メッキ層にクラックが発生しているか否かを目視により確認した。その結果、図3の表に示したように、すべてのプレスフィット端子でクラックは発生していなかった。
(総合評価)
以上の結果から、実施例1、2の総合評価は合格(○)、比較例1、2は不合格(×)と判定した。
続いて本発明の第二の実施形態について主に図4を参照して説明する。なお、第一の実施形態と同じ部材には同じ符号を付すに止めて、その詳細な説明は省略する。
本実施形態のプレスフィット端子10の基本構造は第一の実施形態と同じである。即ち、本実施形態のプレスフィット端子10も、板材をプレス加工して得られた基材の表面にメッキ処理を施すことにより製造される。さらにこのプレスフィット端子10は、基材15、下地メッキ層16、及び表面メッキ層17を備えている。
Cu又はCu合金である基材15の表面(プレス加工時に形成された切断面を含む)には、Ni皮膜である下地メッキ層16が形成されている。下地メッキ層16の厚みは1.5以上かつ2.0μm以下である。
下地メッキ層16は、例えばNiイオンを含有するメッキ液を利用した電気メッキにより基材15の表面に形成される。このメッキ液には、一次光沢剤としてのサッカリン及び二次光沢剤としての1、4−ブチンジオールが含まれている。なお、基材15に対して下地メッキ層16を形成する前に、基材15の表面に対して表面処理(電解脱脂、酸洗浄、水洗など)を行うのが好ましい。
さらに下地メッキ層16の表面にはSn−Ni合金からなりかつ厚みが0.3μm以下である表面メッキ層(皮膜)17が形成されている。
表面メッキ層17は、例えば以下の要領で形成される。即ち、まずSnイオンを含有するメッキ液を利用した電気メッキにより、下地メッキ層16の表面にSn層を形成する。次いで、プレスフィット端子10をリフロー処理する。すると下地メッキ層16及び表面メッキ層17が溶融する。また、表面メッキ層17の厚みが薄く形成されているため、リフロー処理の過程で、表面メッキ層17の最表面までNiが拡散し(表面メッキ層の内部でNiが均一に拡散し)、表面メッキ層17の最表面にNiが表れる。このようにして、表面メッキ層17はSn−Ni合金となる。
なお、表面メッキ層17をメッキ処理する前に、下地メッキ層16の表面に対して表面処理(酸洗浄、水洗など)を行うのが好ましい。
一次光沢剤としてのサッカリン及び二次光沢剤としての1、4−ブチンジオールが含まれているメッキ液を利用して下地メッキ層16が形成されている。そのため、下地メッキ層16はNi結晶が細かくなった状態で形成される。より詳細には、下地メッキ層16のNi結晶の最大粒径は500nm(ナノメートル)以下となる。このように下地メッキ層16中のNi結晶が細かくなるので、下地メッキ層16の硬度が高くなる。なお、この下地メッキ層16の硬度が高くなる理由は、以下のように推定される。即ち、下地メッキ層16のNi結晶が細かくなったことにより、下地メッキ層16(Ni皮膜)中のNi結晶粒子間の滑りが抑制され、皮膜硬度が高くなったと考えられる。また、下地メッキ層16中のサッカリン及び1、4-ブチンジオールがNi結晶粒子表面に付着することにより、Ni結晶粒子間の滑りが抑制され、皮膜硬度が高くなったと考えられる。
さらに、表面メッキ層17の内側には、表面メッキ層17よりも厚くかつ硬度がSnより高い下地メッキ層16(Ni層)が位置している。そのため、圧入部11の表面硬度は極めて大きくなる。具体的には、圧入部11の表面硬度は400Hv以上となる。
そのため、プレスフィット端子10の圧入部11を電子回路基板20のスルーホール21に圧入したときに、圧入部11の表面である表面メッキ層17がスルーホール21の表面によって削られるおそれは小さい。従って、プレスフィット端子10と電子回路基板20とを確実に導通させることが可能である。
さらに、本実施形態のプレスフィット端子10の表面メッキ層17(Sn層)の厚みが0.3μm以下なので、プレスフィット端子10の圧入部11をスルーホール21から引き抜くときに、表面メッキ層17が潰れ難い。
そのため、プレスフィット端子10の圧入部11をスルーホール21から引き抜くのに必要な荷重である引抜き荷重が大きくなる。換言すると、スルーホール21に圧入されたプレスフィット端子10が、スルーホール21から不意に抜け出すおそれは小さい。
なお、仮に光沢剤(サッカリン及び1、4−ブチンジオール)が含まれていないメッキ液を利用して下地メッキ層16を形成すると、下地メッキ層16はNi結晶が大きくなった状態で形成される。即ち、下地メッキ層16はNi結晶の最大粒径が500nmより大きくなる。そのため下地メッキ層16の硬度は低くなる。その結果、圧入部11の表面硬度が小さくなる。そのためこの場合は、プレスフィット端子10の圧入部11をスルーホール21から引き抜くときに、表面メッキ層17の表面が潰れ易い。従って、この場合は圧入部11のスルーホール21に対する引抜き荷重は小さくなる。
また、仮に表面メッキ層17(Sn層)を0.3μmより大きくすると、圧入部11をスルーホール21から引き抜くときに(下地メッキ層16より柔らかい)表面メッキ層17が潰れ易くなる。従って、この場合は圧入部11のスルーホール21に対する引抜き荷重は小さくなる。
続いて、本発明の実施例3について説明する。なお、実施例3のプレスフィット端子の基材として、実施例1と同様の基材を用いた。
(実施例3)
実施例3のプレスフィット端子は第二の実施形態のプレスフィット端子10と同じ製法によって製造されたものである。図4の表に示すように、実施例3のプレスフィット端子の下地メッキ層16の厚みは2.0μmであり、表面メッキ層17の厚みは0.2μmである。また、表面メッキ17層中のNi含有率は25wt%である。さらに下地メッキ層16を形成する際に使用するメッキ液には、一次光沢剤としてのサッカリン及び二次光沢剤としての1、4−ブチンジオールが含まれている。
下地メッキ層16のNi結晶の最大粒径は0.5μm(500nm)以下である。Ni結晶の粒径は、プレスフィット端子の断面画像を電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM 製造者名:日立製作所株式会社 製品名:SU−70)で撮影し、撮影画像中のNi結晶の粒子径(グレインサイズ)を電子線後方散乱回折分析装置(製造者名:Oxford Instruments社 製品名:INCA X-act)により測定した。なお、後述する実施例4、5のNi結晶の最大粒径も、これと同じ装置及び方法により測定している。
続いて、実施例3の性能評価試験の結果について説明する。
(削れ抑制試験)
実施例3のプレスフィット端子の圧入部を電子回路基板20のスルーホール21に圧入(挿入)した後、メッキの削れ屑の量を目視で確認した。具体的には、プレスフィット端子をスルーホール21に挿入した後、挿入された状態のままで、スルーホール21の周囲に集まったメッキの削り屑の有無を目視で評価した。その結果、図4の表に示したように、実施例3において削れ屑は確認されなかった。
後述するように実施例3のプレスフィット端子の圧入部の表面硬度は極めて高い。そのため、実施例3の圧入部の表面メッキ層は殆ど削れなかったものと推測される。
(表面硬度試験)
ビッカース硬度試験によって実施例3のプレスフィット端子の表面硬度を測定した。なお、ビッカース硬度試験は、マイクロビッカス硬度計(製造者名:株式会社フユーチュアテック、製品名:FM−ARS900)を用いて行った。
その結果、図4の表に示したように、実施例3のプレスフィット端子は極めて大きな表面硬度(400Hv以上の表面硬度)を有することが確認できた。
(引抜き荷重試験)
実施例3のプレスフィット端子に荷重測定器を接続し、圧入部を電子回路基板20のスルーホール21に圧入した後に荷重測定器を引っ張ることにより圧入部をスルーホール21から引き抜いた。そして圧入部がスルーホール21から引き抜かれたときの荷重を自動荷重試験器(製造者名:日本計測システム株式会社、製品名:MAXシリーズ卓上型)で測定した。
その結果、図4の表に示したように、実施例3の引抜き荷重は十分な大きさとなった。
(総合評価)
以上の結果から、実施例3の総合評価は合格(○)と判定した。
続いて本発明の第三の実施形態について主に図4を参照して説明する。なお、第一及び第二の実施形態と同じ部材には同じ符号を付すに止めて、その詳細な説明は省略する。
本実施形態のプレスフィット端子10の基本構造は第一、第二の実施形態と同じである。
基材15の表面(プレス加工時に形成された切断面を含む)には、Ni皮膜である下地メッキ層16が形成されている。下地メッキ層16の厚みは1.5以上かつ2.0μm以下である。
下地メッキ層16は、例えばNiイオンを含有するメッキ液を利用した電気メッキにより基材15の表面に形成される。但し、このメッキ液には、光沢剤としてのサッカリン及び1、4−ブチンジオールは含まれていない。なお、基材15に対して下地メッキ層16を形成する前に、基材15の表面に対して表面処理(電解脱脂、水洗など)を行うのが好ましい。
さらに下地メッキ層16の表面にはSn−Ni合金からなりかつ厚みが0.3μm以下である表面メッキ層(皮膜)17が形成されている。
表面メッキ層17は、例えば第二の実施形態と同じ要領により形成される。
さらに、表面メッキ層17の内側には、表面メッキ層17よりも厚くかつ硬度がSnより高い下地メッキ層16(Ni層)が位置している。そのため、圧入部11の表面硬度は大きくなる。具体的には、圧入部11の表面硬度は330Hv以上となる。
そのため、プレスフィット端子10の圧入部11を電子回路基板20のスルーホール21に圧入したときに、圧入部11の表面である表面メッキ層17がスルーホール21の表面によって削られるおそれは小さい。従って、プレスフィット端子10と電子回路基板20とを確実に導通させることが可能である。
さらに、本実施形態のプレスフィット端子10の表面メッキ層17(Sn層)の厚みが0.3μm以下なので、プレスフィット端子10の圧入部11をスルーホール21から引き抜くときに、表面メッキ層17が潰れ難い。
そのため、プレスフィット端子10の圧入部11をスルーホール21から引き抜くのに必要な荷重である引抜き荷重が大きくなる。換言すると、スルーホール21に圧入されたプレスフィット端子10が、スルーホール21から不意に抜け出すおそれは小さい。
続いて、第三の実施形態の実施例である実施例4について説明する。なお、実施例4のプレスフィット端子の基材として、実施例1と同様の基材を用いた。
(実施例4)
実施例4のプレスフィット端子は第二の実施形態のプレスフィット端子10と異なる製法によって製造されたものである。図4の表に示すように、実施例4のプレスフィット端子の下地メッキ層の厚みは2.0μmであり、表面メッキ層の厚みは0.2μmである。さらに表面メッキ層中のNi含有率は25wt%である。但し、下地メッキ層を形成する際に使用するメッキ液には、一次光沢剤としてのサッカリン及び二次光沢剤としての1、4−ブチンジオールが含まれていない。
続いて、実施例4の性能評価試験の結果について説明する。
(削れ抑制試験)
実施例3と同じ要領により、実施例4のプレスフィット端について、メッキの削り屑を目視で評価した。その結果、図4の表に示したように、実施例4において削り屑は確認されなかった。
後述するように実施例4のプレスフィット端子の圧入部の表面硬度は相応の高さである。そのため、実施例4の圧入部の表面メッキ層は殆ど削れなかったものと推測される。
(表面硬度試験)
実施例3と同じ要領でビッカース硬度試験を行い、実施例4のプレスフィット端子の表面硬度を測定した。
その結果、図4の表に示したように、実施例4のプレスフィット端子は相応の高さの表面硬度(330Hv以上の表面硬度)を有することが確認できた。即ち、比較例1及び2と比較して、2倍以上の高い表面硬度を有することが確認できた。
(引抜き荷重試験)
実施例3と同じ要領で、実施例4のプレスフィット端子の圧入部がスルーホール21から引き抜かれたときの荷重を測定した。
その結果、図4の表に示したように、実施例4の引抜き荷重は相応の大きさであることが確認された。
(総合評価)
以上の結果から、実施例4の総合評価は合格(○)と判定した。
続いて本発明の第四の実施形態について主に図4を参照して説明する。なお、第一乃至第三の実施形態と同じ部材には同じ符号を付すに止めて、その詳細な説明は省略する。
本実施形態のプレスフィット端子10の基本構造は第一乃至第三の実施形態と同じである。
基材15の表面(プレス加工時に形成された切断面を含む)には、Ni皮膜である下地メッキ層16が形成されている。下地メッキ層16の厚みは1.5以上かつ2.0μm以下である。
下地メッキ層16は、第二の実施形態と同じ要領により成形される。即ち、下地メッキ層16は、例えばNiイオンを含有するメッキ液を利用した電気メッキにより基材15の表面に形成される。このメッキ液には、一次光沢剤としてのサッカリン及び二次光沢剤としての1、4−ブチンジオールが含まれている。
さらに下地メッキ層16の表面にはSn−Ni合金からなりかつ厚みが0.3μm以下である表面メッキ層(皮膜)17が形成されている。
表面メッキ層17は、例えば第二及び第三の実施形態と同じ要領により形成される。
さらに、表面メッキ層17の内側には、表面メッキ層17よりも厚くかつ硬度がSnより高い下地メッキ層16(Ni層)が位置している。そのため、圧入部11の表面硬度は大きくなる。具体的には、圧入部11の表面硬度は270Hv以上となる。
そのため、プレスフィット端子10の圧入部11を電子回路基板20のスルーホール21に圧入したときに、圧入部11の表面である表面メッキ層17がスルーホール21の表面によって削られるおそれは小さい。従って、プレスフィット端子10と電子回路基板20とを確実に導通させることが可能である。
さらに、本実施形態のプレスフィット端子10の表面メッキ層17(Sn層)の厚みが0.4μm以下なので、プレスフィット端子10の圧入部11をスルーホール21から引き抜くときに、表面メッキ層17が潰れ難い。
そのため、プレスフィット端子10の圧入部11をスルーホール21から引き抜くのに必要な荷重である引抜き荷重が大きくなる。換言すると、スルーホール21に圧入されたプレスフィット端子10が、スルーホール21から不意に抜け出すおそれは小さい。
続いて、第四の実施形態の実施例である本発明の実施例5について説明する。なお、実施例5のプレスフィット端子の基材として、実施例1と同様の基材を用いた。
(実施例5)
実施例5のプレスフィット端子は第二の実施形態のプレスフィット端子10と同じ製法によって製造されたものである。図4の表に示すように、実施例5のプレスフィット端子の表面メッキ層の厚みは0.4μmである。さらに、この表面メッキ層中のNi含有率は10wt%である。
続いて、実施例5の性能評価試験の結果について説明する。
(削れ抑制試験)
実施例3と同じ要領により、実施例5のプレスフィット端子についてメッキの削り屑を目視で評価した。その結果、図4の表に示したように、実施例5において削り屑は確認されなかった。
後述するように実施例5のプレスフィット端子の圧入部の表面硬度は相応の高さである。そのため、実施例5のプレスフィット端子の圧入部は殆ど削れなかったものと推測される。
(表面硬度試験)
実施例3と同じ要領でビッカース硬度試験を行い、実施例5のプレスフィット端子の表面硬度を測定した。
その結果、図4の表に示したように、実施例5のプレスフィット端子は相応の高さの表面硬度(270Hv以上の表面硬度)を有することが確認できた。即ち、比較例1及び2と比較して、2倍以上の高い表面硬度を有することが確認できた。
(引抜き荷重試験)
実施例3と同じ要領で、実施例5のプレスフィット端子の圧入部がスルーホール21から引き抜かれたときの荷重を測定した。
その結果、図4の表に示したように、実施例5の引抜き荷重は相応の大きさであることが確認された。
(総合評価)
以上の結果から、実施例5の総合評価は合格(○)と判定した。
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるべきものではない。
例えば、プレスフィット端子10の基材の主成分をCuとは異なる金属により構成してもよい。
第一の実施形態のプレスフィット端子10から下地メッキ層16を省略してもよい。
10・・・プレスフィット端子、11・・・圧入部、12・・・スリット、15・・・基材、16・・・下地メッキ層、17・・・表面メッキ層、20・・・電子回路基板、21・・・スルーホール。

Claims (3)

  1. 内部にスリットが形成されるとともに幅方向に弾性変形可能な圧入部を有するプレスフィット端子であって、
    基材と、
    前記基材の表面に形成されたNi皮膜である下地メッキ層と、
    前記下地メッキ層の表面に形成された、Sn−Ni合金からなり且つ表面にNiが析出している表面メッキ層と、
    を備え、
    前記表面メッキ層中のNi含有率が10wt%以上かつ40wt%以下であり、
    前記下地メッキ層のNi結晶の最大粒径が500ナノメートル以下であり、
    前記下地メッキ層の厚みが1μm以上且つ2μm以下である、
    プレスフィット端子。
  2. 請求項1に記載のプレスフィット端子において、
    前記基材がCu又はCu合金であり、
    前記表面メッキ層の厚みが0.3μm以下である、
    プレスフィット端子。
  3. 請求項1又は2に記載のプレスフィット端子において、
    前記下地メッキ層が、サッカリン及び1、4−ブチンジオールを光沢剤として含有する、プレスフィット端子。
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