JP6183543B2 - 端子対及び端子対を備えたコネクタ対 - Google Patents

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Description

本発明は、端子対及び端子対を備えたコネクタ対に関する。
電線等の電気的接続に用いられる端子の基材には、導電率が高く、優れた延性及び適度な強度を有するCu(銅)やCu合金が多用されている。しかし、Cuは、使用される環境下において、表面に酸化膜や硫化膜等の絶縁性皮膜が形成されるため、相手方端子との間の接触抵抗が高くなるという問題がある。
この問題の対策として、基材の表面にめっき処理を施し、Sn(スズ)めっき膜を形成した端子がある。Snは他の金属と比較して軟らかいため、例えば相手方端子との摺動等により、Snめっき膜の表面に形成される絶縁性皮膜を容易に破壊することができ、金属Snを露出させることができる。それ故、表面にSnめっき膜を有する端子は、良好な電気的接触を容易に形成することができる。
また、Snめっき膜による接触抵抗の低減効果を確保しつつ、相手方端子との摺動する際の摩擦係数を低減するために、Cu合金板条からなる母材の表面に、Cu−Sn合金被覆層と、Sn層とをこの順に形成する技術がある(特許文献1)。Cu−Sn合金は純Snよりも硬いため、Cu−Sn合金とSnとの両方を表面に露出させることにより、低い接触抵抗を維持しつつ摩擦係数を低減させることができ、ひいては端子を挿入する際に必要な挿入力を低減することができる。
特許第3926355号公報
近年では、従来の端子よりも更に摩擦係数を低減することが強く求められている。しかしながら、特許文献1の導電材料よりなる端子は、摩擦係数を低減させようとすると接触抵抗が大きくなるという問題があり、低い接触抵抗を維持しつつ、摩擦係数をより低減することが困難である。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、接触抵抗及び摩擦係数が低い端子対及び該端子対を備えたコネクタ対を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、第1端子に設けられた第1接点部と、第2端子に設けられた第2接点部とを接触させて用いる端子対であって、
上記第1接点部は、金属よりなる第1基材上に形成され、Sn−Pd系合金相及びSn相を有すると共に上記2種の相のうちいずれか一方の相が他方の相に分散された複合被覆層を有し、
上記第1接点部の表面には上記Sn−Pd系合金相及び上記Sn相が共存しており、
上記第2接点部は、金属よりなる第2基材上に形成されたCu−Sn合金層と、該Cu−Sn合金層の一部を覆うSn層とを有し、
上記第2接点部の表面には上記Cu−Sn合金層が露出してなるCu−Sn合金部及び上記Sn層が露出してなるSn部が共存しており、
上記第1接点部と上記第2接点部とを摺動させた際の摩擦係数が、上記第1接点部同士を摺動させた際の摩擦係数及び上記第2接点部同士を摺動させた際の摩擦係数よりも低いことを特徴とする端子対にある。
本発明の他の態様は、上記端子対を備えたコネクタ対であって、
上記第1端子を備えた第1コネクタと、上記第2端子を備えた第2コネクタとを嵌合させて用いることを特徴とするコネクタ対にある。
上記端子対における、上記第1端子に設けられた上記第1接点部は、上記Sn(スズ)−Pd(パラジウム)系合金相及び上記Sn相を有する上記複合被覆層を有しており、表面に上記Sn−Pd系合金相及び上記Sn相が共存している。そのため、上記第1端子は、比較的硬い上記Sn−Pd系合金相による摩擦係数を低減する効果と、比較的軟らかい上記Sn相による接触抵抗を低減する効果との両方を得ることができる。
また、上記第2端子に設けられた上記第2接点部の表面には、上記Cu−Sn合金層が露出してなるCu−Sn合金部及び上記Sn層が露出してなるSn部が共存している。そのため、上述と同様に、比較的硬い上記Cu−Sn合金層による摩擦係数を低減する効果と、比較的軟らかい上記Sn層による接触抵抗を低減する効果との両方を得ることができる。
そして、本発明者らは、鋭意検討の結果、上記特定の構造を有する上記第1接点部と上記第2接点部とを摺動させることにより、上記第1接点部同士を摺動させる場合及び上記第2接点部同士を摺動させる場合に比べて、摩擦係数をより低減することができることを見出した。上記第1端子と上記第2端子とを組み合わせて用いることによる摩擦係数低減効果のメカニズムは現時点では明確ではないが、その効果は後述する実施例より明らかである。
以上のように、上記端子対は、低い接触抵抗を維持しつつ、摩擦係数をより低減することができる。
また、上記コネクタ対は、上記第1コネクタに上記第1端子を備え、上記第2コネクタに上記第2端子を備えている。それ故、上記コネクタ対は、上記第1コネクタ及び上記第2コネクタを嵌合させる際の挿入力を低減することができる。
実施例1における、(a)第1端子の斜視図、(b)第2端子の斜視図。 実施例1における、第1端子のタブ部を第2端子の筒状体部に挿入した状態の一部断面図。 実施例1における、複合被覆層の断面図。 実施例1における、第2接点部の斜視図。 実施例2における、複数の第1端子を備えた第1コネクタの正面図。 図5のVI−VI線矢視断面図。 実施例2における、端子中間体の斜視図。 実験例における、摩擦係数測定の結果を示すグラフ。
上記端子対における第1端子及び第2端子は、用途に応じて、公知の形状を有するオス型端子、メス型端子、PCB(Printed Circuit Board)用コネクタピン等として構成することができる。
<第1端子>
第1端子において、端子形状を形づくる第1基材は、導電性を有する種々の金属から選択可能である。具体的には、第1基材としては、Cu、Al(アルミニウム)、Fe(鉄)、またはこれらの金属を含む合金が好適に用いられる。これらの金属材料は、導電性だけではなく、成形性やバネ性にも優れ、種々の態様の電気接点に適用可能である。第1基材の形状としては、棒状、板状等種々の形状があり、厚み等の寸法は、用途に応じて種々選択可能である。
第1基材上には、複合被覆層を有する第1接点部が存在している。複合被覆層は、少なくとも第1接点部に存在していれば良く、第1端子の全面に存在していても良い。複合被覆層の厚みは、耐摩耗性、電気伝導性などの観点から、0.5〜3μmの範囲が好ましく、1〜2μmの範囲がより好ましい。
複合被覆層におけるSn相は、Snを主成分とする相であり、Sn−Pd系合金相は、SnとPdとの合金を主成分とする相である。ここで、上述した「主成分」とは、各々の相において、最も多く含まれる成分をいう。即ち、Sn相は、主成分としてのSn以外に、後述する第1中間層に含まれることがある元素、Sn−Pd系合金相に取り込まれなかったPd、Cu等の第1基材を構成する元素及び不可避不純物等を含み得る。また、Sn−Pd系合金相は、主成分としての上記合金以外に、第1中間層に含まれることがある元素、第1基材を構成する元素及び不可避不純物等を含み得る。
複合被覆層は、Sn相またはSn−Pd系合金相のいずれか一方の相が他方の相に分散した構造を有する。かかる構造には、例えば、いずれか一方の相が網目状に連なり、その空隙に他方の相が充填されてなる共連続構造や、いずれか一方の相よりなる海相中に他方の相よりなる島相が分散してなる海島構造等が含まれる。接触抵抗を低減する効果及び摩擦係数を低減する効果をより高める観点からは、Sn−Pd系合金相がSn相中に分散している構造を有することが好ましい。
複合被覆層中のPd含有量は、7原子%以下であることが好ましい。ここで、Pd含有量は、複合被覆層に含まれるSnとPdとの合計に対するPdの原子%である。複合被覆層におけるPd含有量が7原子%を超える場合には、第1端子のはんだ濡れ性が悪化するおそれがある。そのため、複合被覆層におけるPd含有量は、はんだ濡れ性の向上の観点から、7原子%以下が好ましい。同じ観点から、Pd含有量は、6.5原子%以下がより好ましく、6原子%以下が更に好ましく、5.5原子%以下が更に好ましく、5原子%以下が特に好ましい。なお、複合被覆層におけるPd含有率は、Sn−Pd系合金相の含有量を十分に確保する観点から、1原子%以上とすることができる。
第1接点部の表面、すなわち複合被覆層の表面には、Sn相とSn−Pd系合金相との両方が存在している。なお、低挿入力化の実現、良好なはんだ濡れ性の確保に悪影響を及ぼさない範囲内であれば、複合被覆層の表面にSn酸化物被膜が存在していてもよい。
複合被覆層の表面におけるSn相とSn−Pd系合金相との存在比率は、例えば、複合被覆層におけるSn相とSn−Pd系合金相の体積比率により規定することができる。この場合、複合被覆層におけるSn−Pd系合金相の体積比率は、1.0〜95.0体積%であることが好ましく、50.0〜95.0体積%であることがより好ましい。この場合には、接触抵抗を低減する効果及び摩擦係数を低減する効果をバランス良く得ることができる。Sn−Pd系合金相の体積比率が1.0体積%未満の場合には、比較的硬いSn−Pd系合金相の含有量が不十分となり、摩擦係数を低減する効果が不十分となるおそれがある。一方、Sn−Pd系合金相の体積比率が95.0体積%を超える場合には、比較的軟らかいSn相の含有量が不十分となり、接触抵抗を低減する効果が不十分となるおそれがある。
また、複合被覆層の表面におけるSn相とSn−Pd系合金相との存在比率は、複合被覆層の表面に露出したSn−Pd系合金相の面積比率により規定してもよい。この面積比率の値は、通常、上述したSn−Pd系合金相の体積比率の値とほぼ一致する。複合被覆層の表面に露出したSn−Pd系合金相の面積比率は、1.0%以上が好ましく、10%以上が好ましく、20%以上が更に好ましく、50%以上が特に好ましい。この場合には、比較的硬いSn−Pd系合金相の存在により、摺動時の摩擦係数を効果的に低減することが可能となる。
また、複合被覆層の表面に露出したSn−Pd系合金相の面積比率は、95%以下が好ましく、80%以下がより好ましい。この場合には、比較的軟らかいSn相の存在により、接触抵抗を小さくしやすくなる。摩擦係数の低減と接触抵抗の低減との両立を図る観点から、上記面積比率は、1.0%以上95%以下であることがより好ましく、50%以上95%以下であることが更に好ましい。
複合被覆層の表面に露出したSn−Pd系合金相の面積比率は、以下のようにして算出することができる。まず、Sn−Pd系合金相を侵さず、Sn相のみを選択的にエッチングできる薬液に浸漬することにより、Sn相を溶解して除去することができる。上記薬液としては、例えば、水酸化ナトリウム10gとp−ニトロフェノール1gとを蒸留水200mlに溶解させた水溶液等を用いることができる。
次いで、Sn相を除去した状態の複合被覆層の表面のSEM(走査型電子顕微鏡)像を取得する。このSEM像にコントラストに基づく2値化処理を施し、2値化像を得る。この2値化像からSn−Pd系合金相の面積比率を求めることができる。なお、2値化処理におけるコントラストの閾値は、2値化像におけるSn−Pd系合金相の輪郭がSEM像におけるSn−Pd系合金相の輪郭と概ね一致するように設定すればよい。
複合被覆層は、表面における光沢度が10〜300%であることが好ましい。この場合には、複合被覆層の表面に露出したSn相とSn−Pd系合金相との比率が適度な範囲となり、摩擦係数低減の効果と接触抵抗低減の効果とをバランスよく得ることができる。上記光沢度が300%を超える場合には、複合被覆層の表面に露出したSn−Pd系合金相の面積比率が低くなり、摩擦係数低減の効果が不十分となるおそれがある。一方、上記光沢度が10%未満の場合には、複合被覆層の表面に露出したSn相の面積比率が低くなり、接触抵抗低減の効果が不十分となるおそれがある。
上述した構造を有する複合被覆層は、例えば、電気めっき法を用いて第1基材上にPdめっき膜及びSnめっき膜を順次積層した後、リフロー処理を施してこれらのめっき膜を加熱し、SnとPdとを合金化させる方法により形成することができる。この場合、Pdめっき膜の膜厚は、例えば、10〜50nmの範囲から適宜選択することができる。また、Snめっき膜の膜厚は、例えば、1〜2μmの範囲から適宜選択することができる。リフロー処理における加熱温度は、230〜400℃程度とすることができる。なお、上述した方法は一例であり、適宜変更することも可能である。
複合被覆層は、第1基材上に直接積層されていても良く、第1基材との間に介在する第1中間層上に積層されていてもよい。第1中間層としては、例えば、複合被覆層の第1基材への密着性を向上させる作用を有する金属層や、複合被覆層への第1基材成分の拡散を抑制する作用を有する金属層等を用いることができる。
第1中間層は、1層の金属層から構成されていても良く、2層以上の金属層から構成されていても良い。第1中間層の材質としては、例えば、Ni(ニッケル)、Ni合金、Cu、Cu合金、Co(コバルト)等を用いることができ、第1基材の材質や第1中間層に求める機能等に応じて適宜選択することができる。
<第2端子>
第2端子において、端子形状を形づくる第2基材は金属材料よりなる。即ち、第2基材としては、第1基材と同様に、Cu、Al、Fe、またはこれらの金属を含む合金が好適に用いられる。
第2基材上には、Cu−Sn合金層及びSn層を有する第2接点部が存在している。Cu−Sn合金層の一部はSn層により覆われており、残部が表面に露出している。Cu−Sn合金層及びSn層は、少なくとも第2接点部上に存在していれば良く、第2端子の全面に存在していても良い。上述した構造を有するCu−Sn合金層及びSn層は、例えば、第2基材上に形成したSnめっき膜にCuめっき膜を積層した状態で、リフロー処理を施してSnとCuとを合金化させることにより形成することができる。
Sn層は、Snを主成分とする層であり、主成分としてのSn以外に、後述する第2中間層に含まれることがある元素、第2基材を構成する元素及び不可避不純物等が含まれ得る。Cu−Sn合金層は、CuとSnとの合金を主成分とする層であり、主成分としての合金以外に、第2中間層に含まれることがある元素、第2基材を構成する元素及び不可避不純物等が含まれ得る。
Cu−Sn合金層におけるCuとSnとの組成比は特に限定されないが、Cu−Sn合金層にCu6Sn5の組成を有する金属間化合物が含まれていることが好ましい。上記特定の金属間化合物は、Snよりも高い硬度を有すると共に、耐熱性及び耐腐食性の両方に優れている。それ故、上記特定の金属間化合物を有する第2端子は、より優れた耐久性を有する。
また、第2基材とCu−Sn合金層との間に、Niよりなる第2中間層が存在していてもよい。第2中間層の存在により、第2基材を構成する金属元素がCu−Sn合金層やSn層へ拡散することを防止できる。また、第2中間層は、第2基材とCu−Sn合金層やSn層との密着性を高める作用を有する。それ故、第2中間層を有する第2端子は、より優れた耐久性を有する。上述の作用効果を十分に得るために、第2中間層の厚みは3μm以下であることがより好ましい。
第2接点部の表面には、Cu−Sn合金層が露出してなるCu−Sn合金部及びSn層が露出してなるSn部が共存している。Cu−Sn合金部及びSn部が共存している状態には、例えば、Sn部中にCu−Sn合金部が散在している構造、及びCu−Sn合金部中にSn部が散在している構造が含まれる。接触抵抗を低減する効果及び摩擦係数を低減する効果をより高める観点からは、Sn部中にCu−Sn合金部が散在している構造を有することが好ましい。
第2端子は、表面に占めるCu−Sn合金部の面積比率を適切に制御することにより、摩擦係数の低減と接触抵抗の低減とを容易に両立させることができる。Cu−Sn合金部の面積比率は、例えば、電子顕微鏡やプローブ顕微鏡等を用いた表面観察により算出することができる。また、以下の方法により測定して得られる表面の光沢度を特定の範囲に制御することによっても、Cu−Sn合金部の面積比率を適切な範囲に制御することができる。
即ち、第2接点部の光沢度を50〜1000%の範囲内とすることにより、摩擦係数の低減と接触抵抗の低減とを容易に両立させることができる。第2接点部の表面に露出したCu−Sn合金部は、Sn部に比べて光沢度が小さいため、Cu−Sn合金部の占める面積比率が大きいほど上記光沢度が低い傾向がある。それ故、上記光沢度を上記特定の範囲内に制御することにより、第2接点部の表面におけるCu−Sn合金部とSn部との面積比率を適切な範囲に制御し、ひいては接触抵抗を低減する効果と、摩擦係数を低減する効果とをバランスよく得ることができる。
上記光沢度が1000%を越える場合には、Cu−Sn合金部の占める面積比率が過度に小さくなるため、摩擦係数を低減する効果が不十分となるおそれがある。一方、上記光沢度が50%未満の場合には、Cu−Sn合金部の占める面積比率が過度に大きくなるため、接触抵抗を低減する効果が不十分となるおそれがある。従って、接触抵抗の低減と摩擦係数の低減とを両立させる観点から、上記光沢度を50〜1000%の範囲内に制御することが好ましい。同様の観点から、上記光沢度を100〜800%の範囲内に制御することがより好ましい。
なお、第2接点部の光沢度は、JIS Z 8741−1997に準拠した方法を用い、入射角20°で測定した値とする。
また、Sn層のみを溶解させて除去した状態において測定して得られるCu−Sn合金層の光沢度が10〜80%である場合にも、上述と同様に、摩擦係数の低減と接触抵抗の低減とを容易に両立させることができる。これは、以下の理由によるものと考えられる。
Cu−Sn合金部は、Sn層により覆われていたCu−Sn合金層の表面に比べて平滑な表面を有しており、Sn層のみを溶解して除去した状態においては、Cu−Sn合金部の光沢度が、Sn層に覆われていたCu−Sn合金層の光沢度よりも高くなる。そのため、Cu−Sn合金部の占める面積比率が大きいほど上記光沢度が高い傾向がある。それ故、上記光沢度を上記特定の範囲内に制御することにより、第2接点部の表面におけるCu−Sn合金部とSn部との面積比率を適切な範囲に制御し、ひいては接触抵抗の低減と摩擦係数の低減とを容易に両立させることができる。
上記光沢度が10%未満の場合には、Cu−Sn合金部の占める面積比率が過度に小さくなるため、摩擦係数を低減する効果が不十分となるおそれがある。一方、上記光沢度が80%を超える場合には、Cu−Sn合金部の占める面積比率が過度に大きくなるため、接触抵抗を低減する効果が不十分となるおそれがある。従って、接触抵抗の低減と摩擦係数の低減とを両立させる観点から、上記光沢度を10〜80%の範囲内に制御することが好ましい。同様の観点から、上記光沢度を15〜70%の範囲内に制御することがより好ましい。
なお、Cu−Sn合金層の光沢度は、JIS Z 8741−1997に準拠した方法を用い、入射角60°で測定した値とする。
また、Sn層は、Cu−Sn合金層を侵さず、Sn層のみを選択的に溶解できる薬液に浸漬することにより除去することができる。上記薬液としては、例えば、水酸化ナトリウム10gとp−ニトロフェノール1gとを蒸留水200mlに溶解させた水溶液等を用いることができる。
上述した第2接点部の光沢度及びCu−Sn合金層の光沢度は、いずれも、以下に例示する方法により調整することができる。すなわち、第2基材の表面に凹凸形状を付与するための表面処理(後述)の条件を変更して凸部の密度や大きさを調節する方法を採用することができる。また、Sn層の厚みを変更することにより、Cu−Sn合金層の表面に現れる対応凹部(後述)へのSn層の充填量を調節する方法を採用してもよい。光沢度の制御の正確性及び処理の簡便性の観点からは、後者の方法が好適である。
第2基材の表面には、予め凸部と凹部とを有する凹凸形状が付与されていてもよい。この場合には、Cu−Sn合金層が上記凹凸形状に沿って形成されると共に、上記凹部に起因してCu−Sn合金層の表面に現れる対応凹部がSn層により充填された構造を容易に実現できる。そして、上述の構造においては、上記凸部の頂部近傍に形成されたCu−Sn合金層が、第2接点部の表面に露出しやすくなる。すなわち、この場合には、第2接点部の表面にCu−Sn合金部とSn部とが共存した状態をより容易に実現することができる。その結果、接触抵抗及び摩擦係数の両方を確実に低減することができる。なお、上述した第2基材表面の凹凸形状は、例えば、従来公知の機械研磨処理等により形成することができる。
第2接点部が上述した構造を有する場合には、Sn層の充填量が少ないと、表面に露出したCu−Sn合金部とSn部との高低差が過度に大きくなるおそれがある。そして、上述した高低差が過度に高い場合には、Cu−Sn合金部及びSn部の両方を第1接点部に接触させることが難しく、接触抵抗及び摩擦係数が増大するおそれがある。かかる問題を回避する観点からは、第2接点部の表面における算術平均粗さRaが、いずれの方向に沿って測定しても3.0μm以下となり、かつ、Raが0.15μm以下となる測定方向を少なくとも一方向有するように表面形状を制御することが好ましい。なお、表面形状の制御は、例えば、第2基材に付与する凹凸形状の高低差の制御やSn層の充填量の調整等によって行うことができる。
また、第2接点部が上述した構造を有する場合には、Cu−Sn合金層の厚みとSn層の厚みとの合計は、0.5〜5.0μmの範囲内であることが好ましい。これにより、接触抵抗の低減と、摩擦係数の低減とをより容易に両立させることができる。上記厚みの合計が0.5μm未満の場合には、Cu−Sn合金層及びSn層の両方の厚みが不十分となるため、接触抵抗を低減する効果及び摩擦係数を低減する効果が不十分となるおそれがある。一方、上記厚みの合計が5μmを超える場合には、比較的硬いCu−Sn合金層の厚みが過度に厚くなり、第2端子の加工性の低下及び生産性の低下を招くおそれがある。
また、Cu−Sn合金層の厚みは、0.1〜3.0μmの範囲内であることが好ましい。Cu−Sn合金層の厚みが0.1μm未満の場合には、摩擦係数低減の効果が不十分となるおそれがある。一方、Cu−Sn合金層の厚みが3.0μmを超える場合には、第2端子の加工性の低下及び生産性の低下を招くおそれがある。
また、Sn層の厚みは、平均値として0.2〜5.0μmの範囲内であり、かつ、上記対応凹部における最大の厚みが1.2〜20μmの範囲内であることが好ましい。Sn層の厚みが上述の特定の範囲よりも薄い場合には、接触抵抗を低減する効果が不十分となるおそれがある。また、Sn層の厚みが上述の特定の範囲よりも厚い場合には、摩擦係数低減の効果が不十分となるおそれがある。
(実施例1)
上記端子対の実施例について、図を用いて説明する。図2に示すように、端子対1は、第1端子2に設けられた第1接点部3と、第2端子4に設けられた第2接点部5とを接触させて用いるよう構成されている。図3に示すように、第1接点部3は、金属よりなる第1基材31上に形成され、Sn−Pd系合金相321及びSn相322を有すると共に上記2種の相のうちいずれか一方の相が他方の相に分散された複合被覆層32を有している。また、第1接点部3の表面30にはSn−Pd系合金相321及びSn相322が共存している。
図4に示すように、第2接点部5は、金属よりなる第2基材51上に形成されたCu−Sn合金層52と、Cu−Sn合金層52の一部を覆うSn層53とを有している。また、第2接点部5の表面50にはCu−Sn合金層52が露出してなるCu−Sn合金部520及びSn層53が露出してなるSn部530が共存している。以下、詳説する。
<第1端子2>
本例において、複合被覆層32を有する第1端子2は、端子対1におけるオス型端子(図1(a)参照)を構成している。第1端子2は、電線を接続するバレル部21と、バレル部21に連なる筒状体部22と、筒状体部22に連なるタブ部23とを有している。第1端子2は略棒状を呈しており、バレル部21、筒状体部22及びタブ部23が一列に並んでいる。本例の第1端子2は、タブ部23上のみに複合被覆層32を有している。また、図2に示すように、第1接点部3はタブ部23に設けられている。
図1(a)に示すように、筒状体部22は、第1端子2の長手方向に伸びた略角筒状を呈している。筒状体部22の一方の開口端221にはタブ部23が連なっており、他方の開口端222にはバレル部21が連なっている。タブ部23は、筒状体部22の一方の開口端221を基端として第1端子2の長手方向に延設されており、延伸方向に垂直な断面が扁平な形状を呈している。バレル部21は、電線の端末部から露出させた導体を固定するワイヤバレル部211と、電線の絶縁被覆部を固定するインシュレーションバレル部212とを有している。
図2に示すように、タブ部23は、後述する第2端子4の筒状体部42に挿入した状態において、弾性片部43により筒状体部42の天板部424に向けて押圧される。これに伴い、タブ部23に設けられた第1接点部3と、弾性片部43に設けられた第2接点部5との間に電気的接続が形成される。
第1端子2は、例えば、以下に例示する方法により作製することができる。まず、Cu合金よりなる板状の第1基材31を準備し、脱脂洗浄等の前処理を行う。次いで、後にタブ部23となる部分にのみめっき膜が形成されるように、第1基材31の表面をマスキング材で被覆する。なお、第1端子2の全面に複合被覆層32を形成する場合には、マスキング材は不要である。
次いで、電気めっき法により厚み1〜3μmのNiめっき膜、厚み10〜50nmのPdめっき膜、厚み1〜2μmのSnめっき膜を第1基材31上に順次積層する。めっき膜を形成した後、230〜400℃の温度で加熱するリフロー処理を施すことにより、SnとPdとを合金化させ、複合被覆層32を形成する。このとき、Niめっき膜からNiが複合被覆層32に拡散し、Ni−Sn合金を形成することがある。本例の条件を採用する場合には、図3に示すように、複合被覆層32と第1基材31との間に、複合被覆層32に拡散しなかったNiよりなるNi層331と、Ni−Sn合金層332とから構成される第1中間層33が形成される。
その後、複合被覆層32を形成した第1基材31にプレス加工を施し、第1端子2の形状に成形する。以上により第1端子2を得ることができる。
<第2端子4>
Cu−Sn合金層52及びSn層53を有する第2端子4は、端子対1におけるメス型端子(図1(b)参照)を構成している。第2端子4は略棒状を呈しており、電線を接続するバレル部41と、バレル部41に連なる筒状体部42とを有している。
筒状体部42は、第2端子4の長手方向に伸びた略角筒状を呈している。筒状体部42の一方の開口端421は、タブ部23を挿入できるように開放されている。また、他方の開口端422にはバレル部41が連なっている。バレル部41は、第1端子2と同様に、ワイヤバレル部411とインシュレーションバレル部412とを有している。
図2に示すように、筒状体部42の内部には、弾性片部43が設けられている。弾性片部43は、筒状体部42の底板部423が内側後方へ折り返されて形成されており、筒状体部42内に挿入された状態のタブ部23を、底板部423に対面する天板部424側へ押圧する。本例の第2端子4は、弾性片部43上のみにCu−Sn合金層52及びSn層53を有している。
長手方向における弾性片部43の略中央部には、半球状を呈するように天板部424側へ突出した第2接点部5が形成されている。第2接点部5は、筒状体部42内にタブ部23が挿入された状態において、弾性片部43の押圧力によりタブ部23に押し付けられる。これに伴い、第1接点部3と第2接点部5との間に電気的接続が形成される。
第2端子4は、以下に例示する方法により作製することができる。まず、凹部と凸部とを有する凹凸形状が予め表面に付与された、Cu合金よりなる板状の第2基材51を準備し、脱脂洗浄等の前処理を行う。次いで、後に弾性片部43となる部分にのみめっき膜が形成されるように、第2基材51の表面をマスキング材で被覆する。なお、第2端子4の全面にCu−Sn合金層52等を形成する場合には、マスキング材は不要である。
次いで、電気めっき法によりNiめっき膜、Cuめっき膜及びSnめっき膜を第2基材51上に順次積層する。その後、第2基材51にリフロー処理を施してCuとSnとを合金化させる。これにより、第2基材51の凹凸形状に沿ってCu−Sn合金層を形成する。このとき、合金化しなかったSnは、リフロー処理により溶融してCu−Sn合金層52における対応凹部に充填され、Sn層53となる。また、本例の条件を採用する場合には、図4に示すように、Niめっき膜よりなる第2中間層54が第2基材51とCu−Sn合金層52との間に形成される。
その後、Cu−Sn合金層52及びSn層53を形成した第2基材51にプレス加工を施し、第2端子4の形状に成形する。以上により第2端子4を得ることができる。
次に、本例の作用効果を説明する。端子対1は、第1接点部3を備えた第1端子2と、第2接点部5を備えた第2端子4とから構成されている。そして、第1接点部3及び第2接点部5は、それぞれ、上記特定の構造を有している。それ故、第1接点部3同士を摺動させる場合及び第2接点部5同士を摺動させる場合に比べて、第1接点部3と第2接点部5とを摺動させる際の摩擦係数をより低減することができる。
本例の端子対1は、例えば、自動車用ワイヤーハーネスを構成する電線の端末部等に接続して用いることができる。また、本例においては、複合被覆層32を有する第1端子2がオス型端子であり、Cu−Sn合金層52及びSn層53を有する第2端子4がメス型端子である端子対1の例を説明したが、第1端子2をメス型端子とし、第2端子4をオス型端子としてもよい。
(実施例2)
本例は、コネクタピンとメス型端子とからなる端子対を備えたコネクタ対10の例である。コネクタ対10は、複合被覆層32を有する複数の第1端子20を備えた第1コネクタ10a(図5、図6参照)と、Cu−Sn合金層52及びSn層53を有する複数の第2端子4を備えた第2コネクタ(図示略)とから構成されている。なお、各コネクタに設けられた端子の位置及び個数は、用途に応じて適宜変更することができる。
第1コネクタ10aは、PCB用コネクタとして構成されており、複数の第1端子20がハウジング6を貫通して配置されている。ハウジング6は、図5及び図6に示すように略直方体状を呈しており、第2端子4が貫通する底壁部61と、底壁部61の外周縁部から立設された側壁部62とを有している。
図には示さないが、第2コネクタは、ハウジングと、ハウジングを貫通して配置された複数の第2端子4とを有している。第2コネクタのハウジングは、第1コネクタ10aのハウジング6に嵌合可能に形成されている。また、第2端子4は、ハウジング同士が嵌合した状態において、筒状体部42内に第1接点部3が挿入される位置に設けられている。なお、本例の第2端子4は、実施例1と同様の構成を有するメス型端子である。
本例の第1端子20は、コネクタピンとして構成されており、その一端に第1接点部3を有し、他端にはんだ付け部24を有している。第1端子20は、図6に示すように、ハウジング6内に配置された第1接点部3を基端として底壁部61へ向けて延設されている。また、第1端子20は、底壁部61を貫通してハウジング6の外方へ突出し、底壁部61とはんだ付け部24との間が直角に屈曲されている。はんだ付け部24は、プリント基板PのスルーホールHに挿入され、はんだ付けによりプリント基板P上の回路に接続される。
本例の第1端子20は、板材を用いて作製してもよく、線材を用いて作製してもよい。板材を用いて作製する場合には、打ち抜き加工を施した後に実施例1と同様の方法により第1基材31上に複合被覆層32を形成し、図7に示す端子中間体200を作製する。端子中間体200は、後に第1端子20となる複数のピン部201がキャリア部202により連なった構造を有している。インサート成形により端子中間体200をハウジング6に固定した後、キャリア部202を切り離すことにより、第1コネクタ10aを得ることができる。
上述の方法により第1端子20を作製する場合には、打ち抜き加工により形成された破面203(図7参照)を含む第1端子20の略全面が複合被覆層32により覆われるため、第1基材31が表面に露出することを防止することができる。その結果、第1端子20は優れたはんだ濡れ性を有し、はんだ付け部24とプリント基板Pとの良好な電気的接続を長期間に亘って維持することができる。
また、板材に替えて線材を第1基材31として用いることもできる。即ち、線材の表面にめっき膜を形成した後にリフロー処理を施し、複合被覆層32を形成する。その後、プレス加工等により線材をコネクタピンの形状に成形し、インサート成形によりハウジング6に固定することにより、第1コネクタ10aを作製することができる。この場合にも、第1端子20の略全面が複合被覆層32により覆われるため、はんだ付け部24とプリント基板Pとの良好な電気的接続を長期間に亘って維持することができる。
その他は実施例1と同様である。なお、図5〜図7において用いた符号のうち、実施例1において用いた符号と同一のものは、実施例1と同様の構成要素等を表す。
本例のように、上記特定の構造を有する端子対をコネクタ対10に適用することにより、コネクタ対10を嵌合させる際の挿入力をより低減することができる。挿入力を低減する効果は、各コネクタに設けられる端子の個数が増加するほど顕著なものとなる。すなわち、多数の端子を有する多極コネクタは、単極コネクタに比べて端子間の摺動部分の面積が増大するため、より大きな挿入力が必要となる。これに対し、上記特定の構造を有する端子対を用いた多極コネクタは、個々の端子対における摩擦係数が小さいため、第1端子20と第2端子4との摺動に伴う摩擦力を低減することができる。それ故、多極コネクタにおける挿入力を効果的に低減することができる。
なお、本例においては、複合被覆層32を有する第1端子20をコネクタピンとし、Cu−Sn合金層52及びSn層53を有する第2端子4をメス型端子とすることが好ましい。第2端子4をコネクタピンとする場合には、第2端子4の略全面にCu−Sn合金層52及びSn層53を形成するために、打ち抜き加工等により第2基材51を端子形状に成形した後にめっき処理を行う必要がある。しかしながら、この場合には、端子形状に成形する際の変形のため、第2基材51の表面形状を制御することが難しい。それ故、所望の特性を有する第2接点部5を形成することが難しく、接触抵抗低減の効果及び摩擦係数低減の効果が不十分となるおそれがある。一方、第1端子20をコネクタピンとする場合には、第1基材31を端子形状に成形した後に複合被覆層32を形成することができるため、かかる問題を防止することができる。
(実験例)
本例は、第1接点部3と第2接点部5とを摺動させた際の摩擦係数を測定した例である。摩擦係数の測定には、以下の手順により作成した固定試験片及び可動試験片を用いた。なお、固定試験片及び可動試験片の形状は、実施例1における第1接点部3(タブ部23)及び第2接点部5を模擬している。
<固定試験片>
・作製方法
Cu合金板よりなる第1基材31を準備し、脱脂洗浄等の前処理を行った。次いで、電気めっき法により厚み2.0μmのNiめっき膜、厚み20nmのPdめっき膜、厚み1.0μmのSnめっき膜を第1基材31上に順次積層した。その後、大気雰囲気下にて300℃で加熱するリフロー処理をめっき膜に施し、固定試験片を得た。なお、本例の固定試験片における複合被覆層32中のPd濃度は、リフロー処理する前のSnめっき膜及びPdめっき膜の厚み、元素の密度、原子量から算出した結果、3.0原子%であった。
・SEM(走査型電子顕微鏡)観察
固定試験片から平板状の試料を切り出し、断面をSEMにより観察した。その結果、固定試験片は、第1基材31上に、Ni層331、Ni−Sn合金層332及び複合被覆層32が順次積層された構造(図3参照)を有していることを確認した。また、複合被覆層32は、Sn相322よりなる海相中にSn−Pd系合金相321よりなる島相が分散した海島構造を有していることを確認した。
次に、上記試料からSn相322をエッチングにより除去し、エッチング後の試料表面のSEM像を取得した。図には示さないが、Sn相322を除去した状態の表面には、略直方体状を呈するSn−Pd系合金相321が分散して存在していた。また、Sn−Pd系合金相321の間には、Sn相322の除去により露出したNi−Sn合金層332が観察された。
次いで、得られたSEM像に、コントラストに基づく2値化処理を施した。これにより得られた2値化像からSn−Pd系合金相321の面積比率を求めたところ、複合被覆層32の表面に露出したSn−Pd系粒子312の面積比率は70%であった。
・光沢度測定
固定試験片から平板状の試料を採取し、変角光沢計(スガ試験機株式会社製「UGV−6P」)を用いて表面の光沢度を測定したところ、60%であった。
<可動試験片>
・作製方法
Cu合金よりなり、予め凹凸形状513が表面に付与された板状の第2基材51を準備し、脱脂洗浄等の前処理を行った。次いで、電気めっき法により、Niめっき膜、Cuめっき膜及びSnめっき膜を第2基材51上に順次積層した。その後、めっき膜を加熱するリフロー処理を施した。その後、第2基材51にプレス加工を施し、半径1mmの半球状を呈するエンボス部を形成した。以上により、第2接点部5に相当する積層構造(図4参照)を有する可動試験片を作製した。
・SEM観察
可動試験片の表面をSEMにより観察したところ、比較的明るく観察されるSn部530中に、Sn部530よりも暗く観察されるCu−Sn合金部520が散在していた(図示略)。また、隣り合うCu−Sn合金部520の間隔は、最小で約5μmであり、最大で約97μmであった。また、Sn層53の平均の厚み及び第2中間層54の厚みは、いずれも1μmであった。
・光沢度測定
可動試験片から平板状の試料を採取し、変角光沢計を用いて表面50の光沢度を測定したところ、350%であった。
更に、予め準備したSn層53のみを溶解させる水溶液に、上記試料を30分間浸漬してCu−Sn合金層52を露出させた。この状態でCu−Sn合金層52の光沢度を測定したところ、35%であった。なお、上記水溶液は、水酸化ナトリウム10gとp−ニトロフェノール1gとを蒸留水200mlに溶解させたものである。また、試料を浸漬する際の水溶液の温度は室温とした。
<摩擦係数測定>
可動試験片と固定試験片とを鉛直方向に重ね合わせ、固定試験片の表面にエンボス部を当接させた。この状態において、ピエゾアクチュエータにより可動試験片と固定試験片との間に3Nの鉛直荷重を印加した。そして、鉛直荷重を維持した状態で可動試験片を10mm/分の速度で水平方向に強制的に移動させ、移動中に固定試験片に加わる摩擦力をロードセルにより測定した。得られた摩擦力を垂直荷重で除することにより、摩擦係数を算出した。
図8に、摩擦係数の測定結果を示す(符号E1)。なお、図8の縦軸は摩擦係数の値であり、横軸は可動試験片の変位量である。また、図8には、本例との比較のために、第1接点部3同士を摺動させた際の摩擦係数(符号C1)及び表面にSnめっき膜を有する従来の接点部同士を摺動させた際の摩擦係数(符号C2)を示した。即ち、符号C1は、上記固定試験片にプレス加工を施してエンボス部を形成した試験片を可動試験片として用いた際の摩擦係数を測定した結果である。また、符号C2は、従来のリフローSnめっき材、即ち、Cu合金板上に厚さ1μmのSnめっき膜を形成した後にリフロー処理を施してなる板材から作製された可動試験片及び固定試験片を摺動させた際の摩擦係数を測定した結果である。
図8より知られるように、第1接点部3と第2接点部5とを摺動させた際の摩擦係数(符号E1)は、第1接点部3同士の摩擦係数(符号C1)及び従来の接点部同士の摩擦係数(符号C2)に比べて低い値を示すとともに、長期間に渡って低い摩擦係数を維持した。以上の結果から、上記特定の構造を有する端子対1は、低い接触抵抗を維持しつつ、摩擦係数を従来よりも低減できることが理解できる。

Claims (11)

  1. 第1端子に設けられた第1接点部と、第2端子に設けられた第2接点部とを接触させて用いる端子対であって、
    上記第1接点部は、金属よりなる第1基材上に形成され、Sn−Pd系合金相及びSn相を有すると共に上記2種の相のうちいずれか一方の相が他方の相に分散された複合被覆層を有し、
    上記第1接点部の表面には上記Sn−Pd系合金相及び上記Sn相が共存しており、
    上記第2接点部は、金属よりなる第2基材上に形成されたCu−Sn合金層と、該Cu−Sn合金層の一部を覆うSn層とを有し、
    上記第2接点部の表面には上記Cu−Sn合金層が露出してなるCu−Sn合金部及び上記Sn層が露出してなるSn部が共存しており、
    上記第1接点部と上記第2接点部とを摺動させた際の摩擦係数が、上記第1接点部同士を摺動させた際の摩擦係数及び上記第2接点部同士を摺動させた際の摩擦係数よりも低いことを特徴とする端子対。
  2. 上記Sn−Pd系合金相が上記Sn相中に分散している構造を有していることを特徴とする請求項1に記載の端子対。
  3. 上記複合被覆層中のPd含有量が7原子%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の端子対。
  4. 上記複合被覆層における上記Sn−Pd系合金相の体積比率が1.0〜95.0体積%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の端子対。
  5. 上記複合被覆層の表面に露出した上記Sn−Pd系合金相の面積比率が1.0〜95%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の端子対。
  6. 上記複合被覆層の表面における光沢度が10〜300%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の端子対。
  7. 上記第2接点部の表面は、上記Sn部中に上記Cu−Sn合金部が散在している構造を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の端子対。
  8. 上記第2接点部の光沢度が50〜1000%であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の端子対。
  9. 上記Sn層のみを溶解させて除去した状態において測定して得られる上記Cu−Sn合金層の光沢度が10〜80%であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の端子対。
  10. 上記第1端子はコネクタピンであり、上記第2端子はメス型端子であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の端子対。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の端子対を備えたコネクタ対であって、
    上記第1端子を備えた第1コネクタと、上記第2端子を備えた第2コネクタとを嵌合させて用いることを特徴とするコネクタ対。
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