本発明の熱交換用シートは、多孔性フィルムと、上記の多孔性フィルムの一方の面の表面にあり親水性樹脂を含む層A(以下、層Aとします)および/又は、上記の多孔性フィルムの上記の一方の面の内側で親水性樹脂を含有する層B(以下、層Bとします)とを有し、上記の層Aと上記の層Bとの合計厚みが、0.1μm以上5.0μm以下である。
ここで、図1は、多孔性フィルムの一方の面の表面にあり親水性樹脂を含む層Aのみを有する熱交換用シートの断面概念図を示す。この形態の熱交換用シート1では、親水性樹脂が多孔性フィルム3の微孔に入り込んでおらず、層Aの全部が多孔性フィルムの一方の面6の上に積層されている。
次に、図2は、多孔性フィルムの一方の面の表面にあり親水性樹脂を含む層Aおよび孔性フィルムの上記一方の面の内側で親水性樹脂を含有する層Bを有する熱交換用シートの断面概念図を示す。この形態の熱交換用シート1は、層Aおよび多孔性フィルムの微孔に親水性樹脂が入り込むことで形成されている層B4を有しており、多孔性フィルムの一方の面6は層Aおよび層Bの界面となっている。
次に、図3は、孔性フィルムの一方の面の内側で親水性樹脂を含有する層Bのみを有する熱交換用シートの断面概念図を示す。この形態の熱交換用シート1では、親水性樹脂の全てが多孔性フィルム3の微孔に入り込んでおり層B4を形成している。この形態の熱交換シートには、多孔性フィルムの一部を含まない層Aは存在しない。
熱交換用シートが層Aのみを有する場合には、層Aと層Bとの合計厚みは層Aの厚みと同じとなり、層Aの厚みは、多孔性フィルムの一方の面に垂直方向上で、多孔性フィルムの一方の面と層Aの多孔性フィルム側の反対側の面との間の距離をいう。
次に、熱交換用シートが層Bのみを有する場合には、層Aと層Bとの合計厚みは層Bの厚みと同じとなり、層Bの厚みは、多孔性フィルムの一方の面に垂直方向上で、多孔性フィルムの一方の面と層Bの多孔性フィルムの一方の面側の反対側の面との間の距離をいう。
層Aと層Bとの合計厚みは、0.10μm以上5.00μm以下であることが重要である。層Aと層Bとの合計厚みが0.10μm以上であることで、多孔性フィルムの微孔を確実に閉塞することができ、給気と排気が確実に隔離されることにより熱交換用シートの気体遮蔽性が優れたものとなる。上記の観点から、好ましくは0.20μm以上、より好ましくは0.30μm以上である。層Aと層Bとの合計厚みが5.00μm以下であることで、層Aおよび/又は層Bにより隔離された給気と排気の距離が近くなり、熱交換用シートの熱と湿度の交換効率が極めて優れたものとなる。上記の観点から、好ましくは1.00μm以下、より好ましくは0.60μm以下である。
ここで、層Aおよび/又は層Bの熱交換用シートにおける役割について説明する。図4は、多孔性フィルムの断面の拡大概念図を示す。この多孔性フィルム3は複数の孔7を有するものである。よって、この多孔性フィルムの一方の面上に給気が配され、この多孔性フィルムの他方の面上に排気が配された場合には、多孔性フィルムの孔7を介して給気と排気が混ざり合ってしまうため、この多孔性フィルムの気体遮蔽性は劣るものとなる。
ここで、図5は、多孔性フィルムの一方の面の表面にあり親水性樹脂を含む層Aのみを有する熱交換用シートの断面の拡大概念図を示す。この熱交換用シートは、複数の孔7を有する多孔性フィルムを有するが、それらの孔7は層A2によって閉塞されている。よって、この熱交換用シート1の一方の面上に給気が配され、この熱交換用シートの他方の面上に排気が配された場合には、給気と排気とは層Aにより隔離され混ざり合うことが抑制されるため、この熱交換用シートの気体遮蔽性は優れたものとなる。
次に、図6は、孔性フィルムの一方の面の内側で親水性樹脂を含有する層Bのみを有する熱交換用シートの断面の拡大概念図を示す。この熱交換用シートも、複数の孔7を有する多孔性フィルムを有するが、それらの孔7も層B4により閉塞されている。よって、この熱交換用シート1の一方の面上に給気が配され、この熱交換用シートの他方の面上に排気が配された場合には、給気と排気とは層Bにより隔離され混ざり合うことが抑制されるため、この熱交換用シートの気体遮蔽性は優れたものとなる。
次に、図7は、多孔性フィルムの一方の面の表面にあり親水性樹脂を含む層Aおよび孔性フィルムの上記一方の面の内側で親水性樹脂を含有する層Bを有する熱交換用シートの断面の拡大概念図を示す。この熱交換用シートも、複数の孔7を有する多孔性フィルムを有するが、それらの孔7も層A2および層B4により閉塞されている。よって、この熱交換用シート1の一方の面上に給気が配され、この熱交換用シートの他方の面上に排気が配された場合には、給気と排気とは層Aおよび層Bにより隔離され混ざり合うことが抑制されるため、この熱交換用シートの気体遮蔽性は優れたものとなる。
上記のとおり、本発明の熱交換用シートが優れた気体遮蔽性を有するのは、その熱交換用シートが層Aおよび/又は層Bを有し、層Aおよび/又は層Bが給気と排気を隔離し、給気と排気とが混ざり合うのを抑制しているためと考えられる。また、熱交換用シートの気体遮蔽性を優れたものとするためには、給気と排気とを隔離している層Aおよび/又は層Bの合計厚みが一定以上、厚いことが重要であり、その観点から層Aおよび/又は層Bの合計厚みは0.1μm以上である必要があるのは上述の通りである。
また、熱交換用シートの気体遮蔽性の程度には、多孔性フィルムの孔の部分において、層Aおよび/又は層Bにより隔離されている給気と排気との間の距離が影響すると考えられる。してみると、本発明の熱交換用シートが層Aのみを有するものであり、その層Aの厚みが0.1μmである場合と、本発明の熱交換用シートが層Bのみを有するものであり、その層Bの厚みが0.1μmである場合とでは、それぞれの熱交換用シートの多孔性フィルムの孔の部分における互いに隔離された給気と排気との間の距離が同程度となるので、それらの熱交換用シートの気体遮蔽性も同程度のものとなる。
層Aおよび/又は層Bは、親水性樹脂を含む塗液(以下、塗液とすることがある。)を多孔性フィルムの第一の面の上に塗工することで形成される。ここで、上述するように、5.0μm以下の極めて薄い合計厚みの層Aおよび/又は層Bを形成するためには、多孔性フィルム上に塗液を極めて薄く塗工する必要がある。しかし、多孔性フィルムは、多数の微孔を有するため、それらの微孔を起点に塗液が弾かれ、極めて薄く塗液を塗工することが困難である。そこで、多孔性フィルムの第一の面の上に極めて薄く塗液を塗工するためには、多孔性フィルムに対する塗液の濡れ性を調整する必要があることを見いだした。また、多孔性フィルムに対する塗液の濡れ性は、多孔性フィルムと塗液の接触角で表すことができ、多孔性フィルムと塗液の接触角は、好ましくは70°以下、より好ましくは60°以下、更に好ましくは50°以下である。そうすることで、多孔性フィルムの第一の面に形成される層Aおよび/又は層Bの合計厚みを適切なものとすることができる。一方で、多孔性フィルムに対する塗液の濡れ性を高め過ぎると、塗液が多孔性フィルムの微孔を通り抜け多孔性フィルムの第一の面の反対側の面から抜けてしまい、多孔性フィルムの微孔を確実に閉塞することが困難になり、気体遮蔽性に劣る熱交換用シートとなる傾向があり、更には、多孔性フィルムの第一の面の反対側に抜けた塗液によるブロッキングが発生する傾向もある。そのため、多孔性フィルムと塗液の接触角は、好ましくは20°以上、より好ましくは30°以上、更に好ましくは40°以上である。
多孔性フィルムに対する塗液の濡れ性は、多孔性フィルムの表面にコロナ処理やプラズマ処理などを施すことによる多孔性フィルムの表面の改質や、親水性樹脂の塗液に用いる溶媒の選定、塗液への界面活性剤の添加の有無、塗液に添加する界面活性剤の選定、塗液の固形分濃度、塗液の粘度により好適な範囲に調整することができる。また、塗液に用いる溶媒としては、水や有機溶剤(アルコール類、エステル類、エーテル類、ケトン類または炭化水素類など)などを挙げることができ、塗液に添加することができる界面活性剤としては、アニオン界面活性剤(硫酸エステル型、リン酸エステル型、ガルボン酸型、スルホン酸型)、両性界面活性剤、非イオン界面活性材または高分子型界面活性剤などを挙げることができる。溶媒に有機溶剤を用いる場合には、融点が低く、相対蒸発速度が高いものを選定することで上記の濡れ性を好適なものとすることができることに加えて、塗工のラインスピードを早くすることができ、熱交換用シートの生産性を優れたものとすることができるため好ましい。融点が低く、相対蒸発速度が高い有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、メチルアセテートエチルアセテート、イソプロピルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ヘキサンなどが挙げられる。ここで、親水性樹脂がポリビニルピロリドンである場合には、その塗液に用いる溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールおよび、それらと水との混合物が好ましい。
また、塗液の粘度は、好ましくは1cP以上とすることで、塗液が多孔性フィルムの微孔を通り抜け多孔性フィルムの第一の面の反対側の面から抜けてしまうことを抑制することができる。上記の観点から、より好ましくは10cP以上、更に好ましく30cP以上である。一方、塗液の粘度は、好ましくは200cP以下、より好ましくは100cP以下、更に好ましくは70cP以下である。そうすることにより、例えばグラビアロールによる塗液の塗工において、塗工面にセルの型が残らず、多孔性フィルムの微孔を確実に閉塞することが可能となる。塗液の粘度は、親水性樹脂の重量平均分子量と、塗液の固形分濃度にて好適な範囲に調整することができる。
塗液の固形分濃度は、塗液に含まれる親水性樹脂や塗液に用いられる溶媒によって好適な範囲に調整することができる。例えば、親水性樹脂として、重量平均分子量90×104のポリビニルピロリドン、溶媒としてメタノールを用いる場合においては、好ましくは10wt%以下、より好ましくは8wt%以下、更に好ましくは6wt%以下である。一方、好ましくは0.5wt%以上、より好ましくは2wt%以上、更に好ましくは4wt%以上である。この範囲とすることで、塗液の粘度および多孔性フィルムに対する塗液の濡れ性を、上述した好ましい範囲とすることができる。
多孔性フィルムは、ポリエチレンやポリプロピレンなどの疎水性樹脂からなるものであることが好ましい。そうすることで、多湿条件下における熱交換用シートの強度が向上し、結露や結氷が発生しても寸法安定性に優れた、耐久性の高い熱交換シートを得ることができる。また、多孔性フィルムが疎水性樹脂からなるものである場合、多孔性フィルムは、さらに塗液を弾きやすいものとなり、その塗液を多孔性フィルムの第一の面の上に薄く塗工することが更に困難となる。しかし、上述のとおり、多孔性フィルムに対する塗液の濡れ性などを好適な範囲とすることで、多孔性フィルムが疎水性樹脂からなるものであっても、層Aおよび/又は層Bの合計厚みが0.10μm以上5.00μm以下と極めて薄い層Aおよび/又は層Bを形成することができる。
また、熱交換用シートが層Aおよび層Bを有する場合において、層Bの厚さと層Aの厚さの比率(層Bの厚さ:層Aの厚さ)が65:35〜15:85場合、熱交換用シートが有する親水性樹脂の目付の下限は、好ましくは0.2g/m2以上、より好ましくは0.3g/m2以上、更に好ましくは0.4g/m2以上である。一方、その目付の上限は、好ましくは4.0g/m2以下、より好ましくは1.2g/m2以下、更に好ましくは0.6g/m2以下である。
熱交換用シートにおける親水性樹脂の目付を上記の下限値以上とすることにより、層Aおよび/または層Bの合計厚みが厚くなり、多孔性フィルムの微孔をより確実に閉塞することができ、層Aおよび/又は層Bにより隔離される給気と排気の距離を一定以上とすることができるため、熱交換用シートの気体遮蔽性が向上する。一方で、その目付を上記の上限値以下とすることにより、層Aおよび/又は層Bの合計厚みが薄くなり、層Aおよび/又は層Bにより隔離される給気と排気の距離が近くなるため、熱交換用シートの熱と湿度の交換効率をより優れたものとすることが可能になる。なお、前述した多孔性フィルムの第一の面に塗布する塗液の塗工量などを適宜調整することで、熱交換用シートが有する親水性樹脂の目付を上記の範囲とすることができる。
熱交換用シートの気体遮蔽性は、熱交換用シートの二酸化炭素遮蔽率で評価をすることができる。すなわち、熱交換用シートの二酸化炭素遮蔽率は気体遮蔽性の指標であり、室内の汚れた空気を、室外へ排出する換気性能に影響する。二酸化炭素遮蔽率が高い熱交換用シートを用いた熱交換素子は有効換気量率が高く、優れた換気性能を有する。一方、二酸化炭素遮蔽率の低い熱交換用シートを用いた熱交換素子は有効換気量率が低く、換気性能が低下する。よって、熱交換用シートの二酸化炭素遮蔽率は60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましい。なお、層Aおよび/又は層Bの合計厚み、熱交換用シートが有する親水性樹脂の目付などを適宜調整することで、熱交換用シートの気体遮蔽性を上記の範囲とすることができる。
熱交換用シートの厚さは、好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは15μm以下であり、一方、好ましくは3μm以上、より好ましくは7μm以上、更に好ましくは10μm以上である。熱交換用シートの厚さを上述した上限値以下とすることで、その熱交換用シートの熱の交換効率と透湿度を向上させることができる。また、厚さを上述した下限値以上とすることにより、その熱交換用シートを熱交換素子に成型する過程におけるコルゲート加工の際の熱と張力に耐えうる強度を有する熱交換用シートとすることができる。なお、熱交換用シートの厚さは、層Aおよび/又は層Bの合計厚みや多孔性フィルムの厚さなどを適宜調整することで、熱交換用シートの厚さを上記の範囲とすることができる。
熱交換用シートの製造方法として、多孔性フィルムの第一の面に塗液を塗工する方法としては、ロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、キスコーター、スクリーンコーター、スピンコーター等のコーティング方式が挙げられ、それらのなかでも、塗液を薄く塗工することができ、塗工速度も速いとの観点からグラビアコーターが好ましい。
塗液の塗工量は、ラインスピード、塗液の固形分濃度、および、塗液の粘度などにより調整することができる。また、グラビアコーターを用いる場合は、グラビアセルの形状、グラビアセルのセル深さ、グラビアロールの周速などでも調整することができる。
塗工装置における塗液を乾燥するための乾燥部は、ロールサポート型やフローティング型などがあり、特に、薄い多孔性フィルムをシワなく搬送させるためには、ロールサポート型が好ましい。更に、エキスパンダーロールにより幅方向に伸ばしながら搬送させ、乾燥させることが好ましい。乾燥温度は、多孔性フィルムに用いられる樹脂の融点以下で加工することが必要であり、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは60℃以下であり、乾燥温度を上記の範囲とすることにより多孔性フィルムの熱による収縮率が5%以下となるため好ましい。
本発明の熱交換用シートが有する多孔性フィルムは、透気性および透湿性を有し、微細な貫通孔、すなわち微孔を多数有している。また、熱交換用シートにおいて多孔性フィルムは、パルプを用いた紙に比べ、多湿条件下において強度が大きく低下することがなく、結露や結氷が発生しても寸法安定性に優れている。そのため、多孔性フィルムを用いた熱交換用シートを含む熱交換素子は長期間、使用することができる。
多孔性フィルムを構成する樹脂は、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド、フッ素系樹脂などいずれでも構わないが、耐熱性、成形性、生産コストの低減などの観点からポリオレフィン樹脂などの疎水性樹脂が好ましい。上記ポリオレフィン樹脂を構成する単量体成分としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチルペンテン−1、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、5−エチル−1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、アリルベンゼン、シクロペンテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネンなどが挙げられ、これらの単独重合体や、これらの単量体成分からなる群から選ばれる少なくとも2種の共重合体、これら単独重合体や共重合体のブレンド物などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。上記の単量体成分以外にも、例えば、ビニルアルコール、無水マレイン酸などを共重合しても構わない。特に多孔性フィルムにおいて、空孔率や細孔径など調整や製膜性、生産コストの低減などの観点から、上記の疎水性樹脂を構成する単量体成分は、エチレンおよびプロピレンからなる群から選ばれる1以上であることがより好ましい。
多孔性フィルムの厚さは、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは15μm以下であり、一方、好ましくは2μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上である。多孔性フィルムの厚さを上述した上限値以下とすることで熱交換用シートの熱および湿度の交換効率を向上させることができる。また、多孔性フィルムの厚さを上述した下限値以上とすることにより、多孔性フィルムの第一の面への塗液の塗工や、その多孔性フィルムを用いた熱交換用シートを熱交換素子に成型する過程におけるコルゲート加工等の際の熱と張力に耐えうる強度を保持するものとすることができる。
多孔性フィルムの空孔率は、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは40%以上である。多孔性フィルムの空孔率は透湿性と相関があると考えられており、空孔率が高くなればなるほど、多孔性フィルムの透湿性は向上し、それを用いた熱交換用シートの透湿性も向上する。
多孔性フィルムの細孔径は、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上、更に好ましくは40nm以上である。一方、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、更に好ましくは60μm以下である。多孔性フィルムの細孔径は、多孔性フィルムの透湿性と相関があると考えられており、その細孔径を上述の下限値以上とすることにより、多孔性フィルムの透湿性は向上し、熱交換用シートの透湿度も向上する。一方で、その細孔径を上述した上限値以下とすることにより、多孔性フィルムに対する塗液の濡れ性が高くなる。それにより、多孔性フィルムの第一の面の上に、塗液を薄く塗工することが可能となる。
多孔性フィルムの透気性は、好ましくは透気度2500秒/100ml以下、より好ましくは300秒/100ml以下、更に好ましくは200秒/100ml以下である。透気性は透湿性と相関があると考えられており、多孔性フィルムの透気度が低くなればなるほど、熱交換用シートの透湿性は向上する。
多孔性フィルムを構成する樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲において、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、中和剤、帯電防止剤や有機粒子からなる滑剤、さらにはブロッキング防止剤や充填剤、非相溶性ポリマーなどの各種添加剤を含有させてもよい。特に、ポリプロピレンなどの熱履歴による酸化劣化を抑制する目的で、酸化防止剤を添加することが好ましい。また、必要に応じて、さらに、コロナ処理、プラズマ処理、界面活性剤含浸、表面グラフト等の親水化処理などの表面修飾を施してもよい。
親水性樹脂を含有する塗液は、親水性樹脂および溶媒のみからなるものであってもよいし、本発明の効果を阻害しない範囲において、親水性樹脂および溶媒に後述する機能剤などの添加剤および/又は上述した界面活性剤などを添加有したものであってもよい。
本発明に用いる親水性樹脂は、末端あるいは側鎖にカルボキシルキ基、カルボニル基、スルホン酸基、アミノ基、水酸基、オキシエチレン基および第四級アンモニウム基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有していれば特に限定はされないが、吸湿性に優れるとの観点からカルボニル基を末端あるいは側鎖に有するものであることが好ましい。具体的には、ウレタン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアミン、ポリビニルメトキシアセタール、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルスルホン酸ナトリム、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられ、これらの単独又は2種以上の混合樹脂などが好適に用いられる。特に吸湿性に優れ、溶剤への溶解性に優れるため、多孔性フィルムに対する塗液の濡れ性を好適なものとでき成膜性にも優れ、さらに熱交換シートとした際にその長期耐久性を優れたものとできるとの観点より、親水性樹脂はカルボニル基を有するものが好ましく、更に好ましくはポリビニルピロリドンである。 また、塗液には、塩化リチウム等のアルカリ金属塩、塩化カルシウムおよび塩化マグネシウム等のアルカリ土類金属塩を添加することもできる。その他、防カビ剤、抗菌剤、制菌剤および難燃剤等の機能剤を添加してもよい。
本発明の熱交換用シートが有する層Aおよび/または層Bが含有する親水性樹脂の少なくとも一部は架橋した硬化性親水性樹脂であることが好ましい。層Aおよび/または層Bが含有する親水性樹脂の少なくとも一部が架橋した硬化性親水性樹脂であることで、熱交換用シートの質量変化率を低いものとすることができる。これは、架橋していない親水性樹脂と比較して、架橋した硬化性親水性樹脂が水に溶出し難い性質を有しているためと推測する。また、硬化性親水性樹脂としては、ウレタン、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンなどを例示でき、透湿性を保ちながら架橋により硬化できるとの観点からポリビニルピロリドンを好適に用いることができる。また、熱交換用シートの質量変化率をより低いものとするためには、層Aおよび/または層Bが含有する親水性樹脂の全てが架橋した硬化性親水性樹脂であることが好ましい。
また、硬化性親水性樹脂を架橋させる手段としては、加熱、紫外線照射、電子線照射およびγ線照射などが挙げられる。用いる硬化性親水性樹脂に応じて好適な手段を採用することが好ましい。ここで、硬化性親水性樹脂がポリビニルピロリドンである場合には、加熱、電子線照射、γ線照射等の手段を好適に採用することができ、これらの手段のなかでも、熱交換用シートの形態がロール形態や梱包形態などであっても、この熱交換用シートの内部まで照射することができ、この熱交換用シートの内部に位置する硬化性親水性樹脂であっても均一に架橋させることができるため、γ線照射を採用することがより好ましい。
次に、本発明の熱交換用シートについて実施例を挙げて詳細に説明する。
[測定方法]
(1)多孔性フィルムおよび熱交換用シートの厚み
厚みは、試料(多孔性フィルムまたは熱交換用シート)の異なる箇所から長さ100mm、幅100mmの試験片を5枚採取し、温度20℃、湿度65%RHで24hr放置後、それぞれの中央と4隅の5点の厚さ(μm)を測定器(DIGIMICRO MF−501、MFC−101(Nikon))を用いてμm単位まで測定し、平均値を値(μm)とした。
(2)層Aおよび/又は層Bの合計厚み
層Aおよび/又は層Bの合計厚みは、次のようにして求めた。すなわち、超高分解能電解放出形走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製SU−8010型)を用いて、10cm×10cmの熱交換用シートの試験片の任意の1辺の一方の端部の断面、その1辺の他方の端部の断面、一方の端部から他方の端部側に2.5cmずらしたA点の断面、A点から他方の端部側に更に2.5cmずらしたB点の断面、B点から他方の端部側に更に2.5cmずらしたC点の断面の5点の断面を倍率3,000〜50,000倍で撮影し、得られた写真を用いて、熱交換用シートの有する層Aおよび/又は層Bの合計厚みを0.01μm単位まで測定した。また、上記の測定は、5枚の熱交換用シートの試験片について行い、得られた合計25点の測定値の平均を層Aおよび/又は層Bの合計厚み(μm)とした。ここで、層Aおよび/又は層Bの合計厚みとは、上述のとおり、熱交換用シートが層Aのみを有する場合には、層Aと層Bとの合計厚みは層Aの厚みと同じとなり、層Aの厚みは、多孔性フィルムの一方の面に垂直方向上で、多孔性フィルムの一方の面と層Aの多孔性フィルム側の反対側の面との間の距離をいい、次に、熱交換用シートが層Bのみを有する場合には、層Aと層Bとの合計厚みは層Bの厚みと同じとなり、層Bの厚みは、多孔性フィルムの一方の面に垂直方向上で、多孔性フィルムの一方の面と層Bの多孔性フィルムの一方の面側の反対側の面との間の距離をいい、さらに、熱交換用シートが層Aおよび層Bを有する場合には、層Aと層Bとの合計厚みは上述した層Aの厚みと上述した層Bの厚みの合計値となる。
(3)多孔性フィルムおよび熱交換用シートの目付
JIS L1906(2000)5.2の方法により目付を測定した。試料(多孔性フィルムまたは熱交換用シート)の異なる箇所から長さ100mm、幅100mmの試験片を5枚採取し、温度20℃、湿度65%RHで24hr放置後、それぞれの質量(g)を量り、その平均値を1m2当たりの質量(g/m2)で表し、5枚の平均値を目付(g/m2)とした。
(4)多孔性フィルムおよび熱交換用シートの密度
上記(1)の厚み及び上記(3)の目付より密度(g/cm3)を下記式にて求めた。
密度(g/cm3)=目付(g/m2)/厚さ(μm)(3)
(5)多孔性フィルムの空孔率
多孔性フィルムの空孔率は、下記式により計算し値とした。
空孔率(%)=(W2−W1)/W2×100
W1:上記(3)にて測定した質量(g)
W2:上記(3)のサンプルが無孔のフィルム(100%充填している)であるときの理論質量(g)。
(6)多孔性フィルムの細孔径
JIS K3832(1990)バブルポイント法により細孔径を測定した。多孔性フィルムの異なる箇所から直径70mmの円形を5枚採取し試験片とし、パームポロメーター(型式CFP−1200AEX、西華産業(株))に試験片をセットし、その試験片の最大細孔径の測定を行い、試験片5枚の平均値を多孔性フィルムの細孔径(nm)とした。
(7)透気度
透気度は、JIS P8117(1998)透気度(ガーレ試験機法)の方法により測定した。長さ100mm、幅100mmの試験片(多孔性フィルム、熱交換用シート、無孔性フィルムまたは紙)を5枚用意した。試験片は温度20℃、湿度65%RHで24hr放置後、同温湿度の環境下で、ガーレ式デンソメータ(型式G−B3C、(株)東洋精機製作所)に試験片を設置し、空気100mlが通過する時間を測定し、5枚の平均値を透気度(秒/100ml)とした。
(8)透湿度
透湿度は、JIS Z0208(1976)透湿度(カップ法)の方法により測定した。使用したカップは、直径60mmで深さ25mmである。試験片(多孔性フィルム、熱交換用シート、無孔性フィルムまたは紙)は、直径70mmの円形のものを5枚用意した。試験片は、温度20℃、湿度65%RHで24hr放置した。次に、その試験片を、水分測定用塩化カルシウム(和光純薬工業製)の入ったカップに設置し、初期重量(T0)を測定し、温度20℃、湿度65%RHに設定した恒温恒湿槽内で1時間、2時間、3時間、4時間および5時間静置し、その際の質量(それぞれT1、T2、T3、T4、T5)を測定した。下記式により透湿度を求め、5枚の平均値を透湿度(g/m2/hr)とした。
透湿度(g/m2/hr)={[(T−T0)/T0)+((T−T1)/T1)+((T−T2)/T2)+((T−T3)/T3)+((T−T4)/T4)+((T−T5)/T5)]/5}×100。
(9)重量平均分子量(Mw)
親水性樹脂を溶媒(例えばポリビニルピロリドンであればクロロホルム)に溶解させて測定溶液とし、これをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量を求めた。測定数は5回とし、その平均値を重量平均分子量とした。
(10)熱交換用シートが有する親水性樹脂の目付
長さ100mm、幅100mmの熱交換用シートの試験片を5枚用意し、それらを温度20℃、湿度65%RHで24hr放置し、それらの初期質量(g)を測定する。次に、溶媒(例えば、親水性樹脂が、ポリビニルピロリドンであればエタノールなど)にて、5枚の試験片の表面及び裏面を2回ずつ拭き取り、次に、それらを200mlの溶媒に2分間浸漬し、再度、200mlの溶媒に2分間浸漬させ、続いて、それらの試験片を温度20℃、湿度65%RHで24hr放置し、試験片から親水性樹脂を除去した後、5枚の試験片の質量(g)を測定し、下記式より付着量を計算し、試験片5枚の平均値を値(g/m2)とした。
熱交換用シートが有する親水性樹脂の目付(g/m2)
=(初期質量(g)−親水性樹脂を除去した質量(g))/0.01(m2)。
(11)多孔性フィルムおよび熱交換用シートの二酸化炭素遮蔽率
幅0.36m、長さ0.60m、高さ0.36m(0.078m3)のボックスの開口部(20cm×20cm)に熱交換用シートまたは多孔性フィルムの試験片(25cm×25cm)を貼り、ボックス内の濃度が8,000ppmとなるように二酸化炭素注入口から二酸化炭素を注入し、1時間後のボックス内の二酸化炭素濃度(ppm)を測定し、次式により二酸化炭素遮蔽率(%)を計算した。二酸化炭素濃度は、測定機(testo535((株)テストー))を用いて評価した。
二酸化炭素遮蔽率(%)
={(1時間後のボックス内の二酸化炭素濃度−外気二酸化炭素濃度炭素濃度)/(ボックス内の初期二酸化炭素濃度−外気二酸化炭素濃度)}×100。
(12)接触角
接触角は、長さ100mm、幅100mmの多孔性フィルムの試験片を5枚用意し、温度25℃、湿度50%RHで24hr放置する。その後、それぞれの試験片の中央部分の接触角を接触角計(DMs−400(協和界面科))と塗液を用いて、液量1μLの液滴法にて測定し、5枚の試験片の接触角の測定値の平均値を接触角(°)とした。
(13)塗液の粘度
塗液の粘度は、TVB15形粘度計(東機産業株式会社)を用いて測定した。110mlスクリュー管に25℃の塗液を80ml入れ、ロータM−2、回転数100rpm、測定時間60秒間にて測定し、3回測定した平均値を値(cP)とした。
(14)熱交換用シートの耐久性処理
熱交換用シートにおける結露の耐久性処理は次の通り行った。
上記(7)透気度、および、上記(11)二酸化炭素遮蔽率に用いた熱交換用シートの試験片を、温度55℃、湿度90%RHの条件の恒温恒湿槽にて100hr処理する。
(15)熱交換用シートの耐久性評価
耐久性評価における透湿度は、上記(14)耐久性処理にて処理した熱交換用シートの試験片の透湿度を、上記(8)透湿度の方法にて評価した。また、耐久性評価における二酸化炭素遮蔽率は、上記(14)耐久性処理にて処理した熱交換用シートの試験片の二酸化炭素遮蔽率を、上記(11)二酸化炭素遮蔽率の方法にて評価した。
次に、耐久性評価を下記の通り行った。
◎:「耐久性処理後の透湿度(g/m2/hr)」が「耐久性処理前の透湿度−10以上」であり、かつ、「耐久性処理後の二酸化炭素遮蔽率(%)」が「耐久性処理前の二酸化炭素遮蔽率−10以上」である。
○:「耐久性処理後の透湿度(g/m2/hr)」が「耐久性処理前の透湿度−20以上−10未満」であり、かつ、「耐久性処理後の二酸化炭素遮蔽率(%)」が「耐久性処理前の二酸化炭素遮蔽率−20以上−10未満」である。
×:「耐久性処理後の透湿度(g/m2/hr)」が「耐久性処理前の透湿度−20未満」であり、かつ、「耐久性処理後の二酸化炭素遮蔽率(%)」が「耐久性処理前の二酸化炭素遮蔽率−20未満」である。
(16)熱交換用シートの質量変化率
熱交換用シートの質量変化率が下記の方法にて算出した。すなわち、上記「(3)多孔性フィルムおよび熱交換用シートの目付」の測定方法にて用いた5枚の試験片を温度20℃、湿度65%RHで24hr静置した後、これら5枚の試験片それぞれの質量T1(g)を測定した。質量T1(g)(以下、T1とする)の測定後、水温20℃の水を2L入れた3Lのビーカーに5枚の試験片を浸漬させた。そして、5枚の試験片の浸漬開始から3秒後に5枚の試験片を3Lのビーカーから取り出し、これら5枚の試験片を室温50℃の恒温機室内に静置し乾燥させた。次に、5枚の試験片の恒温機室内への静置開始30分後に、これら5枚の試験片を恒温機室内から取り出し、温度20℃、湿度65%RHで24hr静置した後、これら5枚の試験片それぞれの質量T2(g)(以下、T2とする)を測定した。そして、T1からT2を減じた値をT1で除し、さらに、得られた値に100を乗じることで5枚の試験片個々の質量変化率を算出し、5枚の試験片個々の質量変化率の平均値を熱交換用シートの質量変化率(%)とした。
(実施例1)
多孔性フィルムとして、目付6.9g/m2、厚さ12μm、密度0.58g/cm3、空孔率43%、細孔径33nmのポリエチレン多孔性フィルムを用いた。物性は、透湿度101g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率2%、透気度158秒/100mlであった。
親水性樹脂として、重量平均分子量90×104のポリビニルピロリドン(K−85W 株式会社日本触媒)を用いた。
塗液は、上に示したポリビニルピロリドン5wt%、メタノール80wt%、水15wt%を混ぜ合わせ作成した。塗液の粘度は、41cPであった。また、上に示した多孔性フィルムと上に示した塗液の接触角は48°であった。
熱交換シートの製造方法は、マイクログラビアコーターを用いて、上に示した多孔性フィルムの表面に2g/m2(WET)を塗工した。その後、温度60℃のロールサポート型乾燥炉にて40秒間乾燥し、巻き取り、熱交換用シートとした。
熱交換用シートは、目付7.0g/m2、厚さ12μm、密度0.58g/cm3であり、層Aのみを有するものであった。熱交換用シートが有する親水性樹脂の目付は0.1g/m2、層Aの厚みは0.11μmであった。
熱交換用シートの物性は、透湿度82g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率23%であり、透湿性に優れ、気体遮蔽性を有する熱交換用シートを得た。
(実施例2)
多孔性フィルムとして、実施例1に記載のポリエチレン多孔性フィルムを用いた。
親水性樹脂として、実施例1に記載のポリビニルピロリドンを用いた。
塗液は、実施例1に記載の塗液を用いた。
熱交換用シートの製造方法は、マイクログラビアコーターを用いて、上に示した多孔性フィルムの表面に8g/m2(WET)を塗工した。その後、温度60℃のロールサポート型乾燥炉にて40秒間乾燥し、巻き取り、熱交換用シートとした。
熱交換用シートは、目付7.3g/m2、厚さ12μm、密度0.60g/cm3であり、層Aのみを有するものであった。熱交換用シートが有する親水性樹脂の目付は0.4g/m2、層Aの厚みは0.18μmであった。
熱交換用シートの物性は、透湿度78g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率64%であり、透湿性に優れ、気体遮蔽性に優れる熱交換用シートを得た。
(実施例3)
多孔性フィルムとして、実施例1に記載のポリエチレン多孔性フィルムを用いた。
親水性樹脂として、実施例1に記載のポリビニルピロリドンを用いた。
塗液は、実施例1に記載の塗液を用いた。
熱交換シートの製造方法は、マイクログラビアコーターを用いて、上に示した多孔性フィルムの表面に12g/m2(WET)を塗工した。その後、温度60℃のロールサポート型乾燥炉にて40秒間乾燥し、巻き取り、熱交換用シートとした。
熱交換用シートは、目付7.5g/m2、厚さ12μm、密度0.61g/cm3であり、層Aのみを有するものであった。熱交換用シートが有する親水性樹脂の目付は0.6g/m2、層Aの厚みは0.24μmであった。
熱交換用シートの物性は、透湿度81g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率72%であり、透湿性に優れ、気体遮蔽性に優れる熱交換用シートを得た。
また、耐久性処理後の熱交換用シート物性は、透湿度82g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率71%であった。耐久性評価は「◎」であり、耐久性に優れた熱交換用シートであることを確認できた。
(実施例4)
多孔性フィルムとして、実施例1に記載のポリエチレン多孔性フィルムを用いた。
親水性樹脂として、重量平均分子量105×104のポリビニルピロリドン(K−95W 株式会社日本触媒)を用いた。
塗液は、上に示したポリビニルピロリドン5wt%、メタノール80wt%、水15wt%を混ぜ合わせ作成した。物性は、粘度73cPであった。また、上に示した多孔性フィルムと上に示した塗液の接触角は55°であった。
熱交換用シートの製造方法は、バーコーターを用いて、上に示した多孔性フィルムの表面に12g/m2(WET)を塗工した。その後、温度60℃の防爆型乾燥機にて40秒間乾燥し、熱交換用シートとした。
熱交換用シートは、目付7.5g/m2、厚さ12μm、密度0.60g/cm3であり、層Aのみを有するものであった。熱交換用シートが有する親水性樹脂の目付は0.6g/m2、層Aの厚みは0.43μmであった。
熱交換用シートの物性は、透湿度88g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率100%であり、透湿性に優れ、気体遮蔽性に優れる熱交換用シートを得た。
また、耐久性処理後の熱交換用シート物性は、透湿度87g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率100%であった。耐久性評価は「◎」であり、耐久性に優れた熱交換用シートであることを確認できた。
(実施例5)
多孔性フィルムとして、実施例1に記載のポリエチレン多孔性フィルムを用いた。
親水性樹脂として、重量平均分子量8×104のポリビニルピロリドン(K−30W 株式会社日本触媒)を用いた。
塗液は、上に示したポリビニルピロリドン20wt%、メタノール70wt%、水10wt%を混ぜ合わせ作成した。物性は、粘度27cPであった。また、上に示した多孔性フィルムと上に示した塗液の接触角は58°であった。
熱交換用シートの製造方法は、バーコーターを用いて、上に示した多孔性フィルムの表面に3.0g/m2(WET)を塗工した。その後、温度60℃の防爆型乾燥機にて40秒間乾燥し、熱交換用シートとした。
熱交換用シートは、目付7.5g/m2、厚さ12μm、密度0.62g/cm3であり、層Aのみを有するものであった。熱交換用シートが有する親水性樹脂の目付は0.6g/m2、層Aの厚みは0.19μmであった。
熱交換用シートの物性は、透湿度76g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率71%であり、透湿性に優れ、気体遮蔽性に優れる熱交換用シートを得た。
また、耐久性処理後の熱交換用シート物性は、透湿度75g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率59%であった。耐久性評価は「○」であり、耐久性の有る熱交換用シートであることを確認できた。
(実施例6)
多孔性フィルムとして、実施例1に記載のポリエチレン多孔性フィルムを用いた。
親水性樹脂として、実施例1に記載のポリビニルピロリドンを用いた。
塗液は、実施例1に記載の塗液を用いた。
熱交換用シートの製造方法は、マイクログラビアコーターを用いて、上に示した多孔性フィルムの表面に16g/m2(WET)を塗工した。その後、温度60℃のロールサポート型乾燥炉にて40秒間乾燥し、巻き取り、熱交換用シートとした。
熱交換用シートは、目付7.7g/m2、厚さ12μm、密度0.62g/cm3であり、層Aのみを有するものであった。熱交換用シートが有する親水性樹脂の目付は0.8g/m2、層Aの厚みは0.36μmであった。
熱交換用シートの物性は、透湿度85g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率100%であり、透湿性に優れ、気体遮蔽性に優れる熱交換用シートを得た。
また、耐久性処理後の熱交換用シート物性は、透湿度87g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率100%であった。耐久性評価は「◎」であり、耐久性に優れた熱交換用シートであることを確認できた。
また、熱交換用シートの質量変化率は7.2%であった。
(実施例7)
多孔性フィルムとして、実施例1に記載のポリエチレン多孔性フィルムを用いた。
親水性樹脂として、実施例1に記載のポリビニルピロリドンを用いた。
塗液は、実施例1に記載の塗液を用いた。
熱交換用シートの製造方法は、マイクログラビアコーターを用いて、上に示した多孔性フィルムの表面に24g/m2(WET)を塗工した。その後、温度60℃のロールサポート型乾燥炉にて40秒間乾燥し、巻き取り、熱交換用シートとした。
熱交換用シートは、目付8.1g/m2、厚さ12μm、密度0.65g/cm3であり、層Aのみを有するものであった。熱交換用シートが有する親水性樹脂の目付は1.2g/m2、層Aの厚みは0.41μmであった。
熱交換用シートの物性は、透湿度86g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率100%であり、透湿性に優れ、気体遮蔽性に優れる熱交換用シートを得た。
(実施例8)
多孔性フィルムとして、実施例1に記載のポリエチレン多孔性フィルムを用いた。
親水性樹脂として、実施例1に記載のポリビニルピロリドンを用いた。
塗液は、上に示したポリビニルピロリドン5wt%、水94wt%、界面活性剤プライサーフM208F(第一工業製薬株式会社)1wt%を混ぜ合わせ作成した。物性は、粘度39cPであった。また、上に示した多孔性フィルムと上に示した塗液の接触角は53°であった。
熱交換用シートの製造方法は、塗液をバーコーターを用いて、上に示した多孔性フィルムの表面に24g/m2(WET)を塗工した。その後、温度80℃の防爆型乾燥機にて120秒間乾燥し、巻き取り、熱交換用シートとした。
熱交換用シートは、目付8.1g/m2、厚さ12μm、密度0.65g/cm3であり、層Aのみを有するものであった。熱交換用シートが有する親水性樹脂の目付は1.2g/m2、層Aの厚みは0.38μmであった。
熱交換用シートの物性は、透湿度80g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率100%であり、透湿性に優れ、気体遮蔽性に優れる熱交換用シートを得た。
また、耐久性処理後の熱交換用シート物性は、透湿度78g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率100%であった。耐久性評価は「◎」であり、耐久性に優れた熱交換用シートであることを確認できた。
(実施例9)
多孔性フィルムとして、実施例1に記載のポリエチレン多孔性フィルムを用いた。
親水性樹脂として、実施例1に記載のポリビニルピロリドンを用いた。
塗液は、実施例1に記載の塗液を用いた。
熱交換用シートの製造方法は、マイクログラビアコーターを用いて、上に示した多孔性フィルムの表面に36g/m2(WET)を塗工した。その後、温度60℃のロールサポート型乾燥炉にて40秒間乾燥し、巻き取り、熱交換用シートとした。
熱交換用シートは、目付8.7g/m2、厚さ13μm、密度0.68g/cm3であり、層Aのみを有するものであった。熱交換用シートが有する親水性樹脂の目付は1.8g/m2、層Aの厚みは0.72μmであった。
熱交換用シートの物性は、透湿度82g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率100%であり、透湿性に優れ、気体遮蔽性に優れる熱交換用シートを得た。
(実施例10)
多孔性フィルムとして、実施例1に記載のポリエチレン多孔性フィルムを用いた。
親水性樹脂として、実施例1に記載のポリビニルピロリドンを用いた。
塗液は、実施例1に記載の塗液を用いた。
熱交換用シートの製造方法は、バーコーターを用いて、上に示した多孔性フィルムの表面に108g/m2(WET)を塗工した。その後、温度60℃の防爆型乾燥機にて120秒間乾燥し、熱交換用シートとした。
熱交換用シートは、目付12.3g/m2、厚さ14μm、密度0.88g/cm3であり、層Aのみを有するものであった。熱交換用シートが有する親水性樹脂の目付は5.4g/m2、層Aの厚みは1.95μmであった。
熱交換用シートの物性は、透湿度62g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率100%であり、透湿性に優れ、気体遮蔽性に優れる熱交換用シートを得た。
(実施例11)
多孔性フィルムとして、実施例1に記載のポリエチレン多孔性フィルムを用いた。
親水性樹脂として、実施例1に記載のポリビニルピロリドンを用いた。
塗液は、実施例1に記載の塗液を用いた。
熱交換用シートの製造方法は、バーコーターを用いて、上に示した多孔性フィルムの表面に180g/m2(WET)を塗工した。その後、温度60℃の防爆型乾燥機にて120秒間乾燥し、熱交換用シートとした。
熱交換用シートは、目付15.9g/m2、厚さ17μm、密度0.96g/cm3であり、層Aのみを有するものであった。熱交換用シートが有する親水性樹脂の目付は9.0g/m2、層Aの厚みは4.62μmであった。
熱交換用シートの物性は、透湿度51g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率100%であり、透湿性が有り、気体遮蔽性に優れる熱交換用シートを得た。
(実施例12)
多孔性フィルムとして、実施例1に記載のポリエチレン多孔性フィルムを用いた。
親水性樹脂として、重量平均分子量9×104のカルボキシメチルセルロース(CMCダイセル1220 ダイセルファインケム株式会社)を用いた。
塗液は、上に示したカルボキシメチルセルロース5wt%、水94wt%、界面活性剤プライサーフM208F(第一工業製薬株式会社)1wt%を混ぜ合わせ作成した。物性は、粘度64cPであった。また、上に示した多孔性フィルムと上に示した塗液の接触角は63°であった。
熱交換用シートの製造方法は、バーコーターを用いて、上に示した多孔性フィルムの表面に24g/m2(WET)を塗工した。その後、温度80℃の防爆型乾燥機にて120秒間乾燥し、熱交換用シートとした。
熱交換用シートは、目付8.1g/m2、厚さ13μm、密度0.62g/cm3であり、層Aのみを有するものであった。熱交換用シートが有する親水性樹脂の目付は1.2g/m2、層Aの厚みは1.12μmであった。
熱交換用シートの物性は、透湿度86g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率55%であり、透湿性に優れ、気体遮蔽性に優れる熱交換用シートを得た。
また、耐久性処理後の熱交換用シート物性は、透湿度87g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率42%であった。耐久性評価は「○」であり、耐久性の有る熱交換用シートであることを確認できた。
(実施例13)
多孔性フィルムとして、目付4.0g/m2、厚さ7μm、密度0.57g/cm3、空孔率32%、細孔径27nmのポリエチレン多孔性フィルムを用いた。物性は、透湿度98g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率3%、透気度250秒/100mlであった。
親水性樹脂として、実施例1に記載のポリビニルピロリドンを用いた。
塗液は、上に示したポリビニルピロリドン5wt%、メタノール60wt%、水35wt%を混ぜ合わせ作成した。物性は、粘度42cPであった。また、上に示した多孔性フィルムと上に示した塗液の接触角は51°であった。
熱交換用シートの製造方法は、バーコーターを用いて、上に示した多孔性フィルムの表面に16g/m2(WET)を塗工した。その後、温度60℃の防爆型乾燥機にて40秒間乾燥し、熱交換用シートとした。
熱交換用シートは、目付4.8g/m2、厚さ7μm、密度0.65g/cm3であり、層Aのみを有するものであった。熱交換用シートが有する親水性樹脂の目付は0.8g/m2、層Aの厚みは0.44μmであった。
熱交換用シートの物性は、透湿度83g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率100%であり、透湿性に優れ、気体遮蔽性に優れる熱交換用シートを得た。
(実施例14)
多孔性フィルムとして、目付8.3g/m2、厚さ14μm、密度0.59g/cm3、空孔率39%、細孔径31nmのポリエチレン多孔性フィルムを用いた。物性は、透湿度95g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率4%、透気度268秒/100mlであった。
親水性樹脂として、実施例1に記載のポリビニルピロリドンを用いた。
塗液は、実施例13に記載の塗液を用いた。また、上に示した多孔性フィルムと上に示した塗液の接触角は53°であった。
熱交換用シートの製造方法は、バーコーターを用いて、上に示した多孔性フィルムの表面に16g/m2(WET)を塗工した。その後、温度60℃の防爆型乾燥機にて40秒間乾燥し、熱交換用シートとした。
熱交換用シートは、目付9.1g/m2、厚さ14μm、密度0.63g/cm3であり、層Aのみを有するものであった。熱交換用シートが有する親水性樹脂の目付は0.8g/m2、層Aの厚みは0.39μmであった。
熱交換用シートの物性は、透湿度84g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率100%であり、透湿性に優れ、気体遮蔽性に優れる熱交換用シートを得た。
(実施例15)
多孔性フィルムとして、目付10.6g/m2、厚さ20μm、密度0.53g/cm3、空孔率45%、細孔径28nmのポリエチレン多孔性フィルムを用いた。物性は、透湿度94g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率3%、透気度222秒/100mlであった。
親水性樹脂として、実施例1に記載のポリビニルピロリドンを用いた。
塗液は、実施例1に記載の塗液を用いた。また、上に示した多孔性フィルムと上に示した塗液の接触角は50°であった。
熱交換用シートの製造方法は、バーコーターを用いて、上に示した多孔性フィルムの表面に16g/m2(WET)を塗工した。その後、温度60℃の防爆型乾燥機にて40秒間乾燥し、熱交換用シートとした。
熱交換用シートは、目付11.4g/m2、厚さ20μm、密度0.56g/cm3であり、層Aのみを有するものであった。熱交換用シートが有する親水性樹脂の目付は0.8g/m2、層Aの厚みは0.42μmであった。
熱交換用シートの物性は、透湿度85g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率100%であり、透湿性に優れ、気体遮蔽性に優れる熱交換用シートを得た。
(実施例16)
多孔性フィルムとして、目付7.1g/m2、厚さ20μm、密度0.36g/cm3、空孔率62%、細孔径44nmのポリプロピレン多孔性フィルムを用いた。物性は、透湿度104g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率3%、透気度201秒/100mlであった。
親水性樹脂として、実施例1に記載のポリビニルピロリドンを用いた。
塗液は、上に示したポリビニルピロリドン7wt%、メタノール60wt%、水33wt%を混ぜ合わせ作成した。物性は、粘度54cPであった。また、上に示した多孔性フィルムと上に示した塗液の接触角は48°であった。
熱交換用シートの製造方法は、バーコーターを用いて、上に示した多孔性フィルムの表面に16g/m2(WET)を塗工した。その後、温度60℃の防爆型乾燥機にて40秒間乾燥し、熱交換用シートとした。
熱交換用シートは、目付7.9g/m2、厚さ20μm、密度0.39g/cm3であり、層Aのみを有するものであった。熱交換用シートが有する親水性樹脂の目付は0.8g/m2、層Aの厚みは0.41μmであった。
熱交換用シートの物性は、透湿度87g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率96%であり、透湿性に優れ、気体遮蔽性に優れる熱交換用シートを得た。
(実施例17)
多孔性フィルムとして、目付8.3g/m2、厚さ20μm、密度0.42g/cm3、空孔率54%、細孔径19nmのポリプロピレン多孔性フィルムを用いた。物性は、透湿度79g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率6%、透気度2,088秒/100mlであった。
親水性樹脂として、実施例1に記載のポリビニルピロリドンを用いた。
塗液は、実施例13に記載の塗液を用いた。また、上に示した多孔性フィルムと上に示した塗液の接触角は44°であった。
熱交換用シートの製造方法は、バーコーターを用いて、上に示した多孔性フィルムの表面に16g/m2(WET)を塗工した。その後、温度60℃の防爆型乾燥機にて40秒間乾燥し、熱交換用シートとした。
熱交換用シートは、目付9.1g/m2、厚さ20μm、密度0.44g/cm3であり、層Aのみを有するものであった。熱交換用シートが有する親水性樹脂の目付は0.8g/m2、層Aの厚みは0.45μmであった。
熱交換用シートの物性は、透湿度63g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率100%であり、透湿性に優れ、気体遮蔽性に優れる熱交換用シートを得た。
(実施例18)
実施例6に記載の熱交換用シートにγ線(線源がコバルト60であり、吸収線量25kGy)を照射した。
γ線照射後の熱交換用シートの高耐久性評価における質量変化率は0.1%であり、高耐久性に優れた熱交換用シートであることを確認できた。
(比較例1)
多孔性フィルムとして、実施例1に記載のポリエチレン多孔性フィルムを用いた。
親水性樹脂として、実施例1に記載のポリビニルピロリドンを用いた。
塗液は、実施例1に記載の塗液を用いた。また、上に示した多孔性フィルムと上に示した塗液の接触角は50であった。
熱交換用シートの製造方法は、バーコーターを用いて、上に示した多孔性フィルムの表面に346g/m2(WET)を塗工した。その後、温度60℃の防爆型乾燥機にて180秒間乾燥し、熱交換用シートとした。
熱交換用シートは、目付24.2g/m2、厚さ23μm、密度1.07g/cm3であり、層Aのみを有するものであった。熱交換用シートが有する親水性樹脂の目付は17.3g/m2、層Aの厚みは10.70μmであった。
熱交換用シートの物性は、透湿度34g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率100%であり、気体遮蔽性に優れるが、透湿性が低い熱交換用シートを得た。
(比較例2)
多孔性フィルムとして、実施例1に記載のポリエチレン多孔性フィルムを用いた。
親水性樹脂として、実施例1に記載のポリビニルピロリドンを用いた。
塗液は、上に示したポリビニルピロリドン5wt%、水95wt%を混ぜ合わせ作成した。物性は、粘度44cPであった。また、上に示した多孔性フィルムと上に示した塗液の接触角は117°であった。
熱交換用シートの製造方法は、バーコーターを用いて、上に示した多孔性フィルムの表面に24g/m2(WET)を塗工したが、多孔性フィルムが塗液を弾き、均一に塗工することができなかった。
(比較例3)
多孔性フィルムとして、目付12.7g/m2、厚さ25μm、密度0.51g/cm3、空孔率48%、細孔径32nmのポリテトラフルオロエチレン多孔性フィルムを用いた。物性は、透湿度92g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率3%、透気度246秒/100mlであった。
親水性樹脂として、オキシレン基を30wt%含むポリウレタンを用いた。
塗液は、上に示したポリウレタン20wt%、水79wt%、界面活性剤プライサーフM208F(第一工業製薬株式会社)1wt%を混ぜ合わせ作成した。物性は、粘度28cPであった。また、上に示した多孔性フィルムと上に示した塗液の接触角は57°であった。
熱交換用シートの製造方法は、バーコーターを用いて、上に示した多孔性フィルムの表面に356g/m2(WET)を塗工した。その後、温度60℃の防爆型乾燥機にて180秒間乾燥し、熱交換用シートとした。
熱交換用シートは、目付30.5g/m2、厚さ35μm、密度0.87g/cm3であり、層Aのみを有するものであった。熱交換用シートが有する親水性樹脂の目付は17.8g/m2、層Aの厚みは10.20μmであった。
熱交換用シートの物性は、透湿度31g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率100%であり、気体遮蔽性に優れるが、透湿性が低い熱交換用シートであった。
また、耐久性処理後の熱交換用シート物性は、透湿度30g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率100%であった。耐久性評価は「◎」であるが、透湿性が低い熱交換用シートであることを確認できた。
(比較例4)
多孔性フィルムとして、目付10.4g/m2、厚さ20μm、密度0.52g/cm3、空孔率47%、細孔径32nmのポリテトラフルオロエチレン多孔性フィルムを用いた。物性は、透湿度93g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率3%、透気度237秒/100mlであった。
親水性樹脂として、エーテル基を有するポリウレタンを用いた。
塗液は、上に示したポリウレタン20wt%、水79wt%、界面活性剤プライサーフM208F(第一工業製薬株式会社)1wt%を混ぜ合わせ作成した。物性は、粘度31cPであった。また、上に示した多孔性フィルムと上に示した塗液の接触角は54°であった。
熱交換用シートの製造方法は、バーコーターを用いて、上に示した多孔性フィルムの表面に362g/m2(WET)を塗工した。その後、温度60℃の防爆型乾燥機にて180秒間乾燥し、熱交換用シートとした。
熱交換用シートは、目付28.5g/m2、厚さ31μm、密度0.93g/cm3であり、層Aのみを有するものであった。熱交換用シートが有する親水性樹脂の目付は18.1g/m2、層Aの厚みは10.50μmであった。
熱交換用シートの物性は、透湿度33g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率100%であり、気体遮蔽性に優れるが、透湿性が低い熱交換用シートであった。
また、耐久性処理後の熱交換用シート物性は、透湿度33g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率100%であった。耐久性評価は「◎」であるが、透湿性が低い熱交換用シートであることを確認できた。
(比較例5)
基材として、目付35.0g/m2、厚さ53μm、密度0.66g/cm3の片艶クラフト紙(城山製紙株式会社)を用いた。物性は、透湿度32g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率1%、透気度22秒/100mlであった。
塗液は、セルロースが4.8wt%のビスコースをロールコーターにより塗布し、濃度11%の硫酸水溶液浴に連続的に浸漬させてセルロースを再生させ、水洗を行い、各々0.6wt%の水酸化ナトリウムと硫化ナトリウムとの混合水溶液浴により脱硫処理を行った。その後、0.6wt%次亜塩素酸ナトリウム水溶液浴により漂白処理を行って、十分水洗し、乾燥させ、熱交換用シートを得た。
熱交換用シートは、目付37.5g/m2、厚さ53μm、密度0.71g/cm3であり、熱交換用シートが有する親水性樹脂は目付2.5g/m2であり、親水性樹脂が熱交換用シート内部に全て含浸されているため、熱交換用シートの親水性樹脂を含有する層の厚さは53.00μmであった。
熱交換用シートの物性は、透湿度25g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率100%であり、気体遮蔽性に優れるが、透湿性が低い熱交換用シートであった。
また、耐久性処理後の物性は、透湿度24g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率100%であった。耐久性評価は「◎」であるが、透湿性が低い熱交換用シートであることを確認できた。
(比較例6)
基材として、比較例5に記載の片艶クラフト紙を用いた。
塗液は、セルロースが4.8wt%のビスコースをロールコーターにより塗布し、濃度11%の硫酸水溶液浴に連続的に浸漬させてセルロースを再生させ、水洗を行い、各々0.6wt%の水酸化ナトリウムと硫化ナトリウムとの混合水溶液浴により脱硫処理を行った。その後、0.6wt%次亜塩素酸ナトリウム水溶液浴により漂白処理を行って、十分水洗し、乾燥させた。得られた紙を、25wt%塩化リチウム(本荘ケミカル株式会社)水溶液にて含浸させ、マングルで搾り、乾燥させることで熱交換用シートを得た。
熱交換用シートは、目付42.2g/m2、厚さ53μm、密度0.80g/cm3であり、熱交換用シートが有する親水性樹脂は目付2.5g/m2、熱交換用シートが有する塩化リチウムは目付4.7g/m2であり、親水性樹脂が熱交換用シート内部に全て含浸されているため、熱交換用シートの親水性樹脂を含有する層の厚さは53.00μmであった。
熱交換用シートの物性は、透湿度83g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率100%であり、透湿性に優れ、気体遮蔽性に優れる熱交換用シートであった。
また、耐久性処理後の物性は、透湿度29g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率100%であった。耐久性評価は「×」であり、気体遮蔽性に優れるが、透湿性が低い熱交換用シートであることを確認できた。
(比較例7)
基材として、比較例5に記載の片艶クラフト紙を用いた。
親水性樹脂として、実施例1に記載のポリビニルピロリドンを用いた。
塗液は、実施例8に記載の塗液を用いた。
熱交換用シートの製造方法は、バーコーターを用いて、上に示した片艶クラフト紙の表面に12g/m2(WET)を塗工した。その後、温度80℃の防爆型乾燥機にて120秒間乾燥し、熱交換用シートとした。
熱交換用シートは、目付35.6g/m2、厚さ53μm、密度0.67g/cm3であり、親水性樹脂を含有する層は片艶クラフト紙の一部を含まない層のみからなるものであった。熱交換用シートが有する親水性樹脂の目付は0.6g/m2、親水性樹脂を含有する層の厚みは0.13μmであった。
熱交換用シートの物性は、透湿度19g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率100%であり、気体遮蔽性に優れるが、透湿性が低い、熱交換用シートであった。
(比較例8)
基材として、針葉樹晒しクラフトパルプを2.9wt%で叩解し、ダブルディスクリファイナーを用いて叩解した。その後、長網抄紙機により、目付22.0g/m2、厚さ20μm、密度1.10g/cm3の原紙を製造した。物性は、透湿度24g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率98%、透気度10,000秒/100mlであった。
親水性樹脂として、実施例1に記載のポリビニルピロリドンを用いた。
塗液は、実施例8に記載の塗液を用いた。
熱交換用シートの製造方法は、バーコーターを用いて、上に示した原紙を片艶クラフト紙の表面に12g/m2(WET)を塗工した。その後、温度80℃の防爆型乾燥機にて120秒間乾燥し、熱交換用シートとした。
熱交換用シートは、目付22.6g/m2、厚さ21μm、密度1.10g/cm3であり、親水性樹脂を含有する層は片艶クラフト紙の一部を含まない層のみからなるものであった。熱交換用シートが有する親水性樹脂の目付は0.6g/m2、親水性樹脂を含有する層の厚みは0.53μmであった。
熱交換用シートの物性は、透湿度18g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率100%であり、気体遮蔽性に優れるが、透湿性が低い、熱交換用シートであった。
(比較例9)
基材として比較例8に記載の原紙を用いた。
親水性樹脂として、実施例1に記載のポリビニルピロリドンを用いた。
塗液は、実施例8に記載の塗液を用いた。
熱交換用シートの製造方法は、バーコーターを用いて、上に示した原紙を片艶クラフト紙の表面に24g/m2(WET)を塗工した。その後、温度80℃の防爆型乾燥機にて120秒間乾燥し、熱交換用シートとした。
熱交換用シートは、目付23.2g/m2、厚さ21μm、密度1.10g/cm3であり、親水性樹脂を含有する層は片艶クラフト紙の一部を含まない層のみからなるものであった。熱交換用シートが有する親水性樹脂の目付は1.2g/m2、親水性樹脂を含有する層の厚みは10.2μmであった。
熱交換用シートの物性は、透湿度16g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率100%であり、気体遮蔽性に優れるが、透湿性が低い、熱交換用シートであった。
(比較例10)
基材として比較例8に記載の原紙を用いた。
親水性樹脂として、実施例1に記載のポリビニルピロリドンを用いた。
塗液は、実施例8に記載の塗液を用いた。
熱交換シートの製造方法は、バーコーターを用いて、上に示した原紙を片艶クラフト紙の表面に120g/m2(WET)を塗工した。その後、温度80℃の防爆型乾燥機にて120秒間乾燥し、熱交換用シートとした。
熱交換用シートは、目付28.0g/m2、厚さ25μm、密度1.12g/cm3であり、親水性樹脂を含有する層は片艶クラフト紙の一部を含まない層のみからなるものであった。熱交換用シートが有する親水性樹脂の目付は6.0g/m2、親水性樹脂を含有する層の厚みは5.07μmであった。
熱交換用シートの物性は、透湿度11g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率100%であり、気体遮蔽性に優れるが、透湿性が低い、熱交換用シートであった。
(比較例11)
フィルム(無孔)として、目付18.0g/m2、厚さ20μm、密度0.90g/cmのポリエチレンフィルム(無孔)を用いた。物性は、透湿度0g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率100%、透気度10,000秒/100ml以上であった。
親水性樹脂として、実施例1に記載のポリビニルピロリドンを用いた。
塗液は、実施例1に記載の塗液を用いた。
熱交換用シートの製造方法は、バーコーターを用いて、上に示したフィルムの表面に12g/m2(WET)を塗工した。その後、温度60℃の防爆型乾燥機にて40秒間乾燥し、熱交換用シートとした。
熱交換用シートは、目付18.6g/m2、厚さ21μm、密度0.91g/cm3であり、親水性樹脂を含有する層は片艶クラフト紙の一部を含まない層のみからなるものであった。熱交換用シートが有する親水性樹脂の目付は0.6g/m2、親水性樹脂を含有する層の厚みは0.54μmであった。
熱交換用シートの物性は、透湿度0g/m2/hr、二酸化炭素遮蔽率100%であり、気体遮蔽性に優れるが、透湿性が無い熱交換用シートであった。
表1および2には、同じ多孔性フィルムに同じ塗液を、その塗液の塗工量(WET)を変えて塗布して得られた熱交換用シートについてまとめた。表1および2に示すとおり、多孔性フィルムに塗工する塗液の塗工量(WET)が多くなるほど層Aおよび/又は層Bの合計厚みが厚くなり、熱交換用シートが有する親水性樹脂の目付が大きくなっている。具体的に、実施例1〜3、6、7および9〜11の熱交換用シートでは、多孔性フィルムに塗工する塗液の塗工量(WET)を調整し、その層Aおよび/又は層Bの合計厚みが5μm以下、かつ、熱交換用シートが有する親水性樹脂の目付が10g/m2以下となっている。そして、それらの熱交換用シートの透湿度は50g/m2/hr以上、かつ、それらの熱交換用シートの二酸化炭素遮蔽率は20%以上であり、透湿性および気体遮蔽性に極めて優れた熱交換用シートとなっている。結果、それらの熱交換用シートを用いた熱交換素子も、極めて優れた熱交換効率、湿度交換効率および有効換気量率を有するものとなっている。その一方で、比較例1、3および4の熱交換用シートは、熱交換用シートの層Aおよび/又は層Bの合計厚みが10.20μm以上、かつ、熱交換用シートが有する親水性樹脂の目付が17.3g/m2以上となっており、それらの熱交換用シートの透湿度は34g/m2/hr以下と透湿性に劣るものであった。
表3には、同じ多孔性フィルムに異なる塗液を塗工して得られた熱交換用シートをまとめている。表3に示すとおり、実施例3〜5の熱交換用シートは、それらに用いる塗液に含まれる親水性樹脂の重量平均分子量を変えたものである。それらの塗液の粘度と、多孔性フィルムと塗液の接触角を適正範囲に調整することで、親水性樹脂の重量平均分子量が異なる場合であっても、熱交換用シートの層Aおよび/又は層Bの合計厚みを5μm以下とすることができ、それらの熱交換用シートの透湿度および気体遮蔽性を優れたものとすることができる。また、実施例7、8および12の熱交換用シートは、塗液に用いる溶媒の種類、塗液への界面活性剤の添加量および塗液に用いる親水性樹脂の種類からなる群より選ばれる少なくとも1種を変えて作製されたものである。このような場合であっても、塗液の粘度や、多孔性フィルムに対する塗液の濡れ性(すなわち、接触角)を適正範囲に調整することで、熱交換用シートの層Aおよび/又は層Bの合計厚みを5μm以下とすることができ、それらの熱交換用シートの透湿度および気体遮蔽性を優れたものとすることができる。その中でも、実施例8は、親水性樹脂としてPVPを用いることで、接触角が53°となり、実施例12と比べ、塗液をより均一に塗工することができ、二酸化炭素遮蔽率をより高くすることができる。また、実施例7は、親水性樹脂としてPVPとすることで、溶媒として有機溶媒を用いることができ、実施例12と比べ、塗工工程における乾燥温度と乾燥時間を低減することが可能となり、生産性を良好なものとすることができる。一方で、比較例2の熱交換用シートは、多孔性フィルムに対する塗液の濡れ性が不適切(すなわち、接触角が117°)であるため、多孔性フィルムが塗液を弾いてしまい、層Aおよび/又は層Bを形成することができなかった。
表4には、異なる基板(多孔性フィルムまたは紙)に同じ塗液を塗工して得られた熱交換用シートをまとめている。表4に示すとおり、実施例3は、熱交換用シートに用いる多孔性フィルムの透湿度が101g/m2/hrと高い。そのため、層Aおよび/又は層Bにより多孔性フィルムの孔を塞いだ熱交換用シートは、その透湿度が81g/m2/hrと優れている。一方、比較例5、7は、基板がパルプを用いた紙であり、透気度は22秒/100mlと低いが厚さが53μmと厚いため、透湿度が32g/m2/hrと低い。そのため、その紙に塗液を塗工し紙の孔を塞いだ熱交換用シートにおいても透湿度は19、25g/m2/hrと低いものとなる。比較例6は、塗液に塩化リチウムを含ませたものを用いている。そうするとこで、熱交換用シートの透湿度が83g/m2/hrと優れたものとなる。しかしながら、耐久性処理後の透湿度が29g/m2/hrと低下し、耐久性に劣るものであった。比較例8〜10では、基板としてパルプを用いた紙を採用しており、その紙の厚さは20μmと薄いが、その紙の透気度は10000秒/100ml以上と高く、透湿度が24g/m2/hrと低い。そのため、塗液を塗工することにより、紙の孔を塞いだ熱交換用シートにおいても透湿度は11〜18g/m2/hrと低いものとなる。比較例11は、無孔のフィルムであり、その透湿度が極めて低いものとなっている。そのため、そのフィルムに塗液を塗工しても、その透湿度は極めて低いものとなる。
表5には、異なる多孔性フィルムに塗液を塗工して得られた熱交換用シートをまとめている。表5に示すとおり、実施例13〜15において多孔性フィルムの厚さは20、14、7μmであり、細孔径は28、31、27μmとした構成であるが、塗液を適宜調整することで、透湿度がより優れたものとなった。また、実施例16は実施例15、17に対して、多孔性フィルムの厚みが20μmと同じで、細孔径が44nmと大きい。そうすることで、多孔性フィルムの透湿度が高くなり、それを用いた熱交換用シートにおいても、その透湿度87g/m2/hrと優れたものとなった。
表6には、γ線照射による架橋有無の熱交換用シートをまとめている。表6に示す通り、実施例18は、γ線を照射したことにより硬化性親水性樹脂であるPVPが架橋しており、架橋したPVPが水に不溶となったため実施例18の熱交換用シートの質量変化率は小さいものであったと推測する。一方で、実施例6の熱交換用シートにおいてはγ線の照射をおこなっておらず、PVPは架橋をしていない状態となっている。よって、架橋していないPVPが水に可溶であることで実施例6の熱交換用シートの質量変化率は大きいものであったと推測する。