JP6786153B2 - 分離液状調味料 - Google Patents
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例えば、ドレッシング等の分離液状調味料に配合する場合、冷蔵庫等で低温保管すると、油相部分(特に容器壁面や水相との境界)に白濁や結晶物が発生して、商品価値を損なうことがあった。また、この問題を避けるためにオリーブオイルの配合量を減らすと、オリーブオイル特有の風味や健康効果が失われてしまい、商品価値を高めることが困難であった。
また、未精製のオリーブオイルと高オレイン酸低リノレン酸菜種油をブレンドすることで、耐冷性に優れ、かつ、オリーブオイルの良好な風味が保持できる食用油(特許文献2)が提案されているが、この技術も、3日間という短期間での耐冷性を検討するのみで、長期保存時の耐冷性については検討されていない。
(2)前記油相を、分離液状調味料に合計で10〜60質量%含有することを特徴とする(1)に記載の分離液状調味料。
(3)前記未精製のオリーブオイルが、エキストラバージンオリーブオイルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の分離液状調味料。
(4)油相と水相を含む分離液状調味料において該油相部分の白濁及び/又は結晶物の発生を抑制する方法であって、該油相中に未精製のオリーブオイル、0℃で液状の油脂、及びHLBが2〜6であり、構成脂肪酸のうち炭素数10〜16の飽和脂肪酸が60質量%以下、炭素数18〜22の不飽和脂肪酸が40質量%以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルを含有し、該油相全体に対する含有量が、該未精製のオリーブオイル25〜85質量%、該0℃で液状の油脂14.98〜74.98質量%、該ポリグリセリン脂肪酸エステル0.02〜0.5質量%に調製することを含んでなる方法。
なお、本発明における低温(低温保管等)とは、温度が0℃〜10℃の範囲を指すものである。また、本発明において、油相に白濁や結晶物が発生するとは、具体的には、油相全体、容器壁面、又は水相との境界に、白色の微細な結晶物や曇りが発生して、油相の澄明性が損なわれた状態を指すものである。
本発明における分離液状調味料とは、油相と水相とを含む調味料であり、静置時には油相と水相とがほぼ分離しており、使用時に振盪するなどして混ぜ合わせて使用されるものであり、具体的には、ドレッシング、タレ、ソース、又はその他これらに類する食品を指す。本発明の分離液状調味料の好ましい態様としてはドレッシングが挙げられ、より具体的には、日本農林規格(JAS)において定義される「分離液状ドレッシング」等が挙げられる。
[油相]
本発明における油相とは、従来の分離液状調味料の油相成分と同様のものが使用できる。具体的には、未精製のオリーブオイル、0℃で液状の油脂、及びHLBが2〜6であり、構成脂肪酸のうち炭素数10〜16の飽和脂肪酸が60質量%以下、炭素数18〜22の不飽和脂肪酸が40質量%以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルの他に、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の油脂や、油溶性の色素、抗酸化剤、乳化剤、香料等を用いることができる。
本発明の分離液状調味料中の油相の含有量は、10〜60質量%が好ましく、30〜60質量%がより好ましく、50〜60質量%が最も好ましい。油相の含有量が上記の範囲にあると、本発明の分離液状調味料は、オリーブオイルの風味がしっかりと感じられ、低温で長期保存しても油相に結晶物や曇りが発生しないので好ましい。
本発明における未精製のオリーブオイルとは、選別・洗浄されたオリーブ果実を粉砕・攪拌し、油と絞り粕に分離することで、製造されたものである。分離には現在主流になっている「遠心分離法」に加え、昔ながらの伝統的製法である「圧搾法」も用いることができる。なお、未精製オリーブオイルは必要に応じて、ろ過が行われるが、脱酸処理、脱色処理、及び脱臭処理を経ていないオリーブオイルである。
前記未精製のオリーブオイルとしては、エキストラバージンオリーブオイル、バージンオリーブオイル、オーディナリーバージンオリーブオイル等(名称は国際オリーブオイル協会の定めた基準によるもの)を用いることができる。
また、前記未精製のオリーブオイルは、酸度3.3以下のものが好ましく、中でも、エキストラバージンオリーブオイル及び/又はバージンオリーブオイルを用いることが好ましい。さらに、エキストラバージンオリーブオイルを用いることが風味の点で特に好ましい。
本発明における0℃で液状の油脂とは、0℃において液体状であり透明性を有する食用油脂であれば特に限定されないが、例えば、大豆油、菜種油、ハイオレイック菜種油、とうもろこし油、サフラワー油、ひまわり油、綿実油、アマニ油等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。未精製のオリーブオイルの風味に影響を与えないという点で、菜種油を使用することが好ましい。
本発明におけるポリグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリン重合体と脂肪酸とがエステル結合した化合物である。本発明におけるポリグリセリン脂肪酸エステルは、本発明の分離液状調味料の油相中に0.02〜0.5質量%含有する。また、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの油相中の含有量は、0.04〜0.3質量%が好ましく、0.06〜0.2質量%がより好ましく、0.08〜0.15質量%がもっとも好ましい。また、本発明におけるポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBは2〜6であり、3〜5が好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルの油相中の含有量とHLBが上記の範囲にあると、本発明の分離液状調味料が、乳化剤特有の異味を感じず、オリーブオイルの風味が良好であり、且つ、水相と油相の境界面における白濁や結晶物の発生が抑制されたものになる。
ここで、HLB値は、界面活性剤における親水性と疎水性のバランスを表す数値であり、例えば、「改訂三版 油脂化学便覧」(日本油化学協会編)に記載された方法により測定することができる。
ここで、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸組成は、例えば、「基準油脂分析試験法」(日本油化学協会編)に記載された方法により測定することができる。
本発明における水相とは、従来の分離液状調味料の水相成分と同様のものが使用できる。具体的には、本発明の効果を損なわない範囲で、食酢等の液状調味料、食塩、糖、スパイス、フレーバー等の呈味料、更に安定剤、着色料等の各種添加剤、及び粉砕した野菜や果実の固形分が挙げられる。また、加水時に使用する水は、特に限定されず、水道水、井水、精製水、イオン交換水等を用いることができる。
本発明の分離液状調味料中の水相の含有量は、40〜90質量%が好ましく、40〜70質量%がより好ましく、40〜50質量%が最も好ましい。油相の含有量が上記の範囲にあると、本発明の分離液状調味料は、オリーブオイルの風味がしっかりと感じられるので好ましい。
本発明の分離液状調味料は、通常の分離液状調味料の製造方法に従って製造できる。例えば、本発明の分離液状調味料の一つの態様であるドレッシングの製造方法の場合、油相と水相を別々に調製し、重層して製造する。具体的には、原料油脂に油溶性のポリグリセリン脂肪酸エステルを均一に溶解し油相部を調製し、それとは別に、水相の原料(例えば、糖類、増粘多糖類、酢、食塩、水等)を加熱撹拌して原料を均一に分散させ水相部を調製する。水相部の加熱攪拌は加圧、減圧又は常圧下で可能であり、通常は常圧下で行われる。加熱温度に特に制限はなく、原材料が溶解、殺菌がなされる温度であればよく、通常は40〜95℃の温度で、好ましくは60〜95℃の温度で行われる。攪拌は原料が均一に分散できるものであればどのようなものでも実施することができ、例えば、プロペラ、ホモミキサー、ブレンダー、ディスパー、パドルミキサー、スタティックミキサー、超音波等の攪拌機又は方法を用いることができる。その後、常温程度まで冷却し、得られた水相部に、別で調製した油相部を加えて重層することによってドレッシングを得る。
下記表1に示す構成脂肪酸組成及びHLBを示すポリグリセリン脂肪酸エステル(PGFE1〜3)を常法により得た。なお、表中の「PGFE」はポリグリセリン脂肪酸エステルを指し、例えば「C16:0」は、炭素数16の脂肪酸であって不飽和結合を有さない飽和脂肪酸、「C18:1」は炭素数18で2重結合を1つ有する不飽和脂肪酸を指す。なお、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸組成は、「基準油脂分析試験法」(日本油化学協会編)、HLBは、「改訂三版 油脂化学便覧」(日本油化学協会編)に記載された方法により測定した。
油相と水相から成る組成物をモデル実験として、低温保存下における白濁及び結晶物の発生と風味の検証を行った。表2及び3の配合に従い、60℃に加温した未精製のオリーブオイル(商品名:BOSCOエキストラバージンオリーブオイル,日清オイリオグループ(株)製)、及び0℃で液状の油脂(商品名:日清キャノーラ油,日清オイリオグループ(株)製)との混合油脂に、上記で製造したポリグリセリン脂肪酸エステルを均一に溶解後、室温まで徐冷し、水を加えて実施例1及び2並びに比較例1〜6を調製した。次に各調製物を100mLの透明サンプル瓶に充填・密封し、5℃恒温槽中に、遮光下で2週間静置保管した。
保管開始から2週間目に、5℃恒温槽からサンプル瓶を取り出し、下記の指標に基づき、白濁及び結晶物の発生の評価と風味評価を行った。評価結果を表2及び3に示す。
(白濁及び結晶物の発生の評価)
サンプル瓶の状態で、油相部分を目視で観察して評価した。評価基準は下記の通りである。
◎:白濁や微細な結晶物が認められない
○:サンプル瓶の油相の壁面、水相との界面のいずれかに、白濁及び/又は微細な結晶物が僅かに認められるが問題ない程度である
×:油相全体、サンプル瓶の油相の壁面、水相との界面のいずれかに、白濁及び/又は微細な結晶物が明確に認められる
(風味評価)
サンプル瓶を上下に振盪して、油相と水相とが十分に混ざった混合液とする。前記混合液を2mL、口に含み風味を評価した。評価基準は下記の通りである。
◎:オリーブオイルの風味が「○」よりもさらに優れている
○:オリーブオイルの風味に優れている
×:乳化剤の風味が勝り、オリーブオイルの風味が劣っている
表4及び5の配合に従い、未精製のオリーブオイル(商品名:BOSCOエキストラバージンオリーブオイル,日清オイリオグループ(株)製)と、0℃で液状の油脂(商品名:日清キャノーラ油,日清オイリオグループ(株)製)とを撹拌機付きの加温可能な容器に投入し、60℃に加温した後、各ポリグリセリン脂肪酸エステルを均一に溶解し、室温まで冷却して油相部を調製した。また、表4及び5の配合に従い、グラニュー糖、醸造酢、食塩、及び水を撹拌機付きの加温可能な容器に投入し、撹拌しながら品温が90℃になるまで加熱保持して原料を溶解し、その後、室温まで冷却して水相部を調製した。次に、200mLの透明のサンプル瓶に水相部を充填後、油相部を重層して密封し分離液状ドレッシング(オリーブオイルドレッシング)を製造した。
製造した分離液状ドレッシングを5℃恒温槽中に、遮光下で8週間静置保管し、保管開始から1週目と8週目に、5℃恒温槽からサンプル瓶を取り出し、下記の指標に基づき、白濁及び結晶物の発生の評価と風味評価を行った。評価結果を表4及び5に示す。
(白濁及び結晶物の発生の評価)
サンプル瓶の状態で、油相部分を目視で観察して評価した。評価基準は下記の通りである。
◎:白濁や微細な結晶物が認められない
○:サンプル瓶の油相の壁面、水相との界面のいずれかに、白濁及び/又は微細な結晶物がごく僅かに認められるが、商品として許容できる
×:油相全体、サンプル瓶の油相の壁面、水相との界面のいずれかに、白濁及び/又は微細な結晶物が明確に認められ、商品として許容できない
(風味評価)
サンプル瓶を上下に振盪して、油相と水相とが十分に混ざった混合液とする。前記混合液を2mL、口に含み風味を評価した。評価基準は下記の通りである。
◎:オリーブオイルの風味が「○」よりもさらに優れている
○:オリーブオイルの風味に優れている
×:他の風味が勝り、オリーブオイルの風味が劣っている
Claims (4)
- 油相と水相を含む分離液状調味料であって、該油相中に未精製のオリーブオイル、0℃で液状の油脂、及びHLBが2〜6であり、構成脂肪酸のうち炭素数10〜16の飽和脂肪酸が30〜60質量%、炭素数18〜22の不飽和脂肪酸(ただし、エルカ酸を除く)が40〜60質量%であるポリグリセリン脂肪酸エステルを含有し、該油相全体に対する含有量が、該未精製のオリーブオイル25〜85質量%、該0℃で液状の油脂14.98〜74.98質量%、該ポリグリセリン脂肪酸エステル0.02〜0.5質量%であることを特徴とする分離液状調味料。
- 前記油相を、分離液状調味料に合計で10〜60質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の分離液状調味料。
- 前記未精製のオリーブオイルが、エキストラバージンオリーブオイルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の分離液状調味料。
- 油相と水相を含む分離液状調味料において該油相部分の白濁及び/又は結晶物の発生を抑制する方法であって、該油相中に未精製のオリーブオイル、0℃で液状の油脂、及びHLBが2〜6であり、構成脂肪酸のうち炭素数10〜16の飽和脂肪酸が30〜60質量%、炭素数18〜22の不飽和脂肪酸(ただし、エルカ酸を除く)が40〜60質量%であるポリグリセリン脂肪酸エステルを含有し、該油相全体に対する含有量が、該未精製のオリーブオイル25〜85質量%、該0℃で液状の油脂14.98〜74.98質量%、該ポリグリセリン脂肪酸エステル0.02〜0.5質量%に調製することを含んでなる方法。
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