JP2004189965A - フライ用油脂組成物、フライ用油脂結晶成長抑制剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のフライ用油脂組成物は、パーム油由来の油脂を含む液体油脂に、所定のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有してなるものである。パーム油由来の油脂におけるトリグリセリド組成中のPOP含量とPOO含量との比は、1.0>POO/(POO+POP)>0.7である。ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸組成は以下の(1)、(2)及び(3)の条件を満たす。(1)炭素数8〜12の飽和脂肪酸の含有量が10〜30重量部。(2)炭素数14〜22の飽和脂肪酸の含有量が30〜50重量部。(3)炭素数16〜22の不飽和脂肪酸の含有量が20〜50重量部。
【選択図】 なし。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トリグリセリド組成中にPOP(2−オレオ−1,3ジパルミトイルグリセリン)含量と、POO(1−パルミトイル−2,3ジオレオイルグリセリン)含量とが、1.0>POO/(POO+POP)>0.7であるパーム油由来の油脂を含む液体油脂に、低温域での結晶成長を長期間にわたって抑制し、曇りを発生し難くする効果を有する特定のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することを特徴とするフライ用油脂組成物及びフライ用油脂結晶抑制剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、フライ用油脂として用いられる菜種油、米油、パームオレイン油、大豆油、綿実油等の油脂は、常温で液体である。しかし、これらの油脂を冷蔵庫や寒冷地等の低温域で保存すると、油に含有されるロウ成分や高融点トリグリセリドが結晶化する。このような結晶化は油の流動性喪失、白濁、分離を引き起こすため、油の商品価値を低下させる原因となる。
【0003】
パーム油は、溶剤を媒体とする湿式または乾式分別処理を経ることによって、固体脂成分を多く含有するパームステアリン画分と、液体油脂成分を多く含有するパームオレイン画分とに分画される。かかるパームオレイン画分は、さらに湿式または乾式分別処理を経ることによって、パームオレイン低融点画分とパーム中融点画分とに分画される。
【0004】
このパームオレイン低融点画分をフライ用油脂として利用する場合も、上述のように冷蔵庫や寒冷地等の低温域で保存すると、同様の問題を生じる。即ち、油に含有されるロウ成分や高融点トリグリセライドの結晶化によって、油の流動性喪失、白濁、分離が引き起こされ、油の商品価値が低下してしまう。
【0005】
現在、油脂産業においてはパーム油が注目されている。パーム油は、生産量も大豆油に次ぐ世界第2位の植物油脂の座を占めており、油脂産業において不可欠の原料となっている。そして、フライ用油脂等の液体油脂に関しても、パーム油を配合した油脂組成物が従来提案されている。しかし、パーム油由来の油脂については、高融点のトリグリセライド成分であるPOP(2−オレオ−1,3ジパルミトイルグリセリン)等を含有するため、低温での結晶成長に起因して曇りが発生してしまい、そのままでは商品化が困難であった。
【0006】
また、パーム油由来の油脂を含む液体油脂の結晶成長を抑制するためには、特定の脂肪酸組成を有するポリグリセリン脂肪酸エステルの添加が効果的であるということも従来提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開昭63−79560号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平9−176680号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に開示された発明は、そもそもサラダ油の製造法に関するものであって、フライ用油脂に関するものではない。しかも、低温域で保存した場合の結晶成長抑制効果はせいぜい1日程度であって、フライ用油脂に要求される低温保存性を備えているとは言い難い。
【0010】
また、特許文献2の発明に開示された油脂組成物は、そもそもショートニングやマーガリン等の原料用油脂に関するものであって、液体のまま保存・使用されるフライ用油脂に関するものではない。また、常温での結晶成長抑制効果が一応あるとは言えども、保存期間の全般を通じて低温域に維持した場合の保存性が高いわけではない。
【0011】
またパーム油は、分別処理により、高融点成分であるパームステアリンと、低融点成分であるパームオレインとに分別することができる。さらにパームオレインは、高融点成分PMF(palm mid fraction)と、低融点成分スーパーオレインとに分別することができる。これらの分別で得られたスーパーオレインでは、高融点のトリグリセライド成分であるPOP(2−オレオ−1,3ジパルミトイルグリセリン)等がかなり低減されているが、それでも曇り点は数℃である。それゆえ、比較的低融点のスーパーオレインであったとしても、低温域で保存したり冬場に保存した場合には、短期間のうちに結晶が析出してしまう。即ち、低温保存性の低いフライ用油脂等の液体油脂に関して、従来その商品化は極めて困難であった。
【0012】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、結晶抑制効果が高く低温保存性に優れたフライ用油脂組成物、フライ用油脂に使用する結晶成長抑制剤を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記実状に鑑み鋭意研究を重ねた結果、トリグリセリド組成中のPOP(2−オレオ−1,3ジパルミトイルグリセリン)含量と、POO(1−パルミトイル−2,3ジオレオイルグリセリン)含量との比が、1.0>POO/(POO+POP)>0.7であるパーム油由来の油脂を含む液体油脂に、特定のポリグリセリン脂肪酸エステルを添加すると、低温での結晶成長を長期間にわたって抑制し、曇りを発生し難くする効果を奏することを新規に知見した。そして、本発明らはこの新規の知見に基づいてさらに鋭意研究を重ねた結果、最終的に下記の発明を完成させるに至ったのである。
【0014】
即ち、本発明のフライ用油脂組成物は、トリグリセリド組成中のPOP(2−オレオ−1,3ジパルミトイルグリセリン)含量と、POO(1−パルミトイル−2,3ジオレオイルグリセリン)含量との比が、1.0>POO/(POO+POP)>0.7であるパーム油由来の油脂を含む液体油脂に、結晶成長を抑制する効果を有する、構成脂肪酸組成が以下の(a)、(b)及び(c)の条件を満たすポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することを特徴とするフライ用油脂組成物であることをその要旨とする。
(a)炭素数8〜12の飽和脂肪酸の含有量が10〜30重量部
(b)炭素数14〜22の飽和脂肪酸の含有量が30〜50重量部
(c)炭素数16〜22の不飽和脂肪酸の含有量が20〜50重量部
【0015】
また、本発明のフライ用油脂結晶成長抑制剤は、トリグリセリド組成中におけるPOP(2−オレオ−1,3ジパルミトイルグリセリン)含量と、POO(1−パルミトイル−2,3ジオレオイルグリセリン)含量との比が、1.0>POO/(POO+POP)>0.7であるパーム油由来の油脂を含む液体油脂に添加されるフライ用油脂結晶成長抑制剤であって、構成脂肪酸組成が以下の(a)、(b)及び(c)の条件を満たすポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することをその要旨とする。
(a)炭素数8〜12の飽和脂肪酸の含有量が10〜30重量部
(b)炭素数14〜22の飽和脂肪酸の含有量が30〜50重量部
(c)炭素数16〜22の不飽和脂肪酸の含有量が20〜50重量部
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した実施形態を詳細に説明する。
本発明で使用される液体油脂は、トリグリセリド組成中のPOP(2−オレオ−1,3ジパルミトイルグリセリン)含量と、POO(1−パルミトイル−2,3ジオレオイルグリセリン)含量とが、1.0>POO/(POO+POP)>0.7であるパーム油由来の油脂を含むものである必要がある。
【0017】
パーム油由来の油脂を含む液体油脂の典型例としては、パーム油に対する乾式分別や湿式分別等の処理により得られたパーム低融点画分に、食用液体油を混合した液体油脂を挙げることができる。そのほかにも、1)パーム油に対して精製、エステル交換または水素添加等の処理を行ったものに食用液体油を混合した液体油脂や、2)前記パーム低融点画分に対して精製、エステル交換または水素添加等の処理を行ったものに食用液体油を混合した液体油脂や、3)これらの液体油脂に対してさらに精製、エステル交換または水素添加等の処理を行ったものなどを挙げることができる。
【0018】
つまり、各種処理を行って得られたものが結果として1.0>POO/(POO+POP)>0.7という数値範囲を満たしていればよいのであって、パーム油由来の油脂を含む液体油脂の作出方法については、特に限定されるものではない。
【0019】
また、POO+POP含量は、トリグリセリド組成中の15〜45重量%の範囲、特には20〜40重量%の範囲であることが好ましい。このトリグリセリド組成中のPOP(2−オレオ−1,3ジパルミトイルグリセリン)含量、及びPOO(1−パルミトイル−2,3ジオレオイルグリセリン)含量は、HPLC測定方法(AOCS Official Method Ce 5b−89に準ずる)によって得られる。
【0020】
本発明で使用される液体油脂とは、具体的には食用液体油脂を意味する。かかる食用液体油脂としては特に限定されることはなく、例えば、菜種油、米油、大豆油、綿実油、コーン油、オリーブ油、紅花油、サフラワー油、ごま油、ひまわり油等の食用液体油脂及びこれらの調合油等、動植物油からエステル交換や分別結晶等の方法により製造された食用液体油脂などを挙げることができる。
【0021】
本発明で使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルとは、ポリグリセリンと脂肪酸とを反応させて得られるエステルであって、構成脂肪酸組成が以下の(a)、(b)及び(c)の条件全てを満たすポリグリセリン脂肪酸エステルである必要がある。
(a)炭素数8〜12の飽和脂肪酸の含有量が10〜30重量部
(b)炭素数14〜22の飽和脂肪酸の含有量が30〜50重量部
(c)炭素数16〜22の不飽和脂肪酸の含有量が20〜50重量部
【0022】
その理由は、この構成脂肪酸組成の範囲から外れたポリグリセリン脂肪酸エステルを使用したとしても十分な結晶成長抑制効果が得られないからである。なお、炭素数8〜12の飽和脂肪酸、炭素数14〜22の飽和脂肪酸、炭素数16〜22の不飽和脂肪酸の含有量は、基本的にはそれぞれの好適範囲内において任意に設定することが許容される。
【0023】
ここで、炭素数14〜22の飽和脂肪酸の含有量は、上記好適範囲内において、炭素数8〜12の飽和脂肪酸の含有量よりもいくぶん多く(例えば1.5倍〜3.0倍程度に)設定されることがよりよい。また、炭素数16〜22の不飽和脂肪酸の含有量は、上記好適範囲内において、炭素数8〜12の飽和脂肪酸の含有量よりも多く設定されることがよりよく、かつ、炭素数14〜22の飽和脂肪酸の含有量よりも少なく設定されることがよりよい。
【0024】
具体的を挙げると、仮に炭素数8〜12の飽和脂肪酸の含有量を15〜25重量部とした場合、炭素数14〜22の飽和脂肪酸の含有量は、40〜45重量部程度に設定されることが特に好ましい。実際に行った後述の評価試験では、かかる条件を設定した試験区で極めてよい結果を得ているからである。
【0025】
また、仮に炭素数8〜12の飽和脂肪酸の含有量を15〜25重量部とし、炭素数14〜22の飽和脂肪酸の含有量を40〜45重量部とした場合、炭素数16〜22の不飽和脂肪酸の含有量は、35〜40重量部程度に設定されることが特に好ましい。実際に行った後述の評価試験では、かかる条件を設定した試験区で極めてよい結果を得ているからである。
【0026】
本発明で使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸の成分(a)の具体例としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸等から選択される1種の脂肪酸、またはこれらの脂肪酸の2種以上の混合物を挙げることができる。(b)の具体例としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、べへン酸等から選択される1種の脂肪酸、またはこれらの脂肪酸の2種以上の混合物を挙げることができる。(c)の具体例としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等から選択される1種の脂肪酸、またはこれらの脂肪酸の2種以上の混合物を挙げることができる。
【0027】
また、本発明で使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルの水酸基価は特に限定されないが、好ましくは60以下であることがよい。水酸基価が60を超えると、ポリグリセリン脂肪酸エステルの油脂への相溶性が悪化し、結晶成長抑制効果に悪影響を生じるという問題が出てくるからである。かかる水酸基価は30以下であることがより好ましく、1〜20であることが特に好ましい。なお、ここでいう水酸基価とは、基準油脂分析試験法に基づき、1gの試料に含まれる遊離の水酸基をアセチル化するために必要な酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を指す。
【0028】
また、本発明で使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルのヨウ素価は特に限定されないが、好ましくは20〜40であることがよい。ヨウ素価が20未満である場合や40を超える場合には、油脂結晶成長抑制効果が低下する傾向があるからである。かかるヨウ素価は25〜40であることがより好ましく、30〜40であることが特に好ましい。ここでいうヨウ素価とは、基準油脂分析試験法に基づき、試料にフッ素、塩素、ヨウ素等のハロゲンを作用させた場合に吸収されるハロゲンの量をヨウ素に換算し、試料100gに対するg数で表したものを指す。
【0029】
本発明で使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルをフライ用油脂へ添加する方法については、特に制限されるものではなく、従来公知の任意の手法を採用することが可能である。また、フライ用油脂に対するポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量については特に限定されないが、強いて言えばフライ用油脂に対して0.005〜0.1重量部、好ましくは0.01〜0.05重量部とすることが適当である。その理由は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを多量に添加するとフライ用油脂の風味に影響を及ぼす一方、添加量が少ないと結晶成長抑制効果が十分に発揮されなくなるおそれがあるからである。
【0030】
なお、本発明のフライ用油脂結晶成長抑制剤は、その組成中に、ポリグリセリン脂肪酸エステル成分のみを含むものであってもよいほか、低温での結晶成長を特に助長しないものであれば、ポリグリセリン脂肪酸エステル成分以外の成分を若干含むものであってもよい。前記ポリグリセリン脂肪酸エステル成分以外の成分としては、例えば色素や香料などを挙げることができる。
【0031】
【実施例】
以下、本発明を具体化したいくつかの実施例を紹介する。勿論、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0032】
[合成例1〜7]
特定のポリグリセリンと混合脂肪酸とを触媒の存在下で反応させ、表1に示す組成を持つポリグリセリン脂肪酸エステルをそれぞれ合成した。なお、表1に示す合成例1〜4では、いずれも脂肪酸組成が上記好適範囲の条件を満たすように設定されている。一方、合成例5〜7では、いずれも脂肪酸組成が上記好適範囲の条件からあえて逸脱するように設定されている。なお、各合成例についての水酸基価及びヨウ素価を表1に併せて示す。
【表1】
【0033】
[実施例1〜8]
有機溶剤(アセトン、ヘキサン等)を媒体として分別処理を行うことにより、トリグリセリド組成中のPOP(2−オレオ−1,3ジパルミトイルグリセリン)含量が10.8重量%、POO(1−パルミトイル−2,3ジオレオイルグリセリン)含量が33.5重量%であるパーム油脂を得た。また同様に、トリグリセリド組成中のPOP(2−オレオ−1,3ジパルミトイルグリセリン)含量が12.0重量%、POO(1−パルミトイル−2,3ジオレオイルグリセリン)含量が31.0重量%であるパーム油(つまりパーム油の低融点画分)を得た。
【0034】
これらのパーム油の低融点画分と菜種油とを配合(配合比率60:40(POP含量6.6重量%、POO含量21.7重量%))した後、上記合成例1〜4から選択されるポリグリセリン脂肪酸エステルを添加(添加量0.02重量部/対油)することにより、いくつかのフライ用油脂組成物(即ち実施例1〜8のフライ用油脂組成物)を製造した。表2に、POP、POOの含量と、菜種油との配合割合を示す。
【0035】
[比較例1〜12]
有機溶剤(アセトン、ヘキサン等)を媒体として分別処理を行うことにより、トリグリセリド組成中のPOP(2−オレオ−1,3ジパルミトイルグリセリン)含量が20.4重量%、POO(1−パルミトイル−2,3ジオレオイルグリセリン)含量が28.5重量%であるパーム油脂を得た。
【0036】
このパーム油と菜種油とを配合(配合比率60:40(POP含量12.36重量%、POO含量18.7重量%))した後、上記合成例1〜7から選択されるポリグリセリン脂肪酸エステルを添加(添加量0.02重量部/対油)することにより、いくつかのフライ用油脂組成物(即ち比較例1〜10のフライ用油脂組成物)を製造した。表2に、POP、POOの含量と、菜種油との配合割合を示す。
【0037】
なお、比較例1〜6は、「1.0>POO/(POO+POP)>0.7」という条件を満たす反面、脂肪酸組成に関する条件を満たしていない、という共通点を有している。比較例7,8は、脂肪酸組成に関する条件を満たす反面、「1.0>POO/(POO+POP)>0.7」という条件を満たしていない、という共通点を有している。
【0038】
さらに、このパーム油と菜種油とを配合(配合比率60:40(POP含量12.36重量%、POO含量18.7重量%))するだけで、ポリグリセリン脂肪酸エステルを全く添加しないフライ用油脂組成物(即ち比較例11,12のフライ用油脂組成物)も併せて製造した。表2に、POP、POOの含量と、菜種油との配合割合を示す。
【表2】
【0039】
[評価試験の方法及び結果]
各実施例及び各比較例のフライ用油脂組成物を5℃の恒温槽中に放置して、結晶の析出により曇りが生じるまでの時間を測定した。その結果も表2に示す。
【0040】
表2によると、比較例7〜12では、1週間以内という短い期間であるにもかかわらず結晶が析出してしまい、低温域での保存性が極めて悪かった。比較例1〜6では、比較例7〜12に比べて若干保存性がよいとは言えども、2週間以内で結晶が析出するという結果となった。従って、これら比較例のフライ用油脂はいずれも実用レベルに達しておらず、その商品化が可能であるとは言い難いものであった。
【0041】
これに対して実施例1〜8については、2週間を経過した時点でも何ら結晶の析出が認められず、一部のもの(実施例1,2,3,5,6,7)については1ヶ月という長期間を経過した時点でも何ら結晶の析出が認められなかった。つまり、各実施例のフライ用油脂組成物では、特定の条件を満たすポリグリセリン脂肪酸エステルの適量の添加によって結晶成長が著しく抑制された結果、従来品に比べて低温域での保存性が飛躍的に向上していた。以上の結果から明白なように、本発明によれば、従来商品化が極めて困難であったフライ用油脂等の液体油脂に関して、その低温保存性を実用レベルにまで引き上げることができ、その商品化も十分可能になることが実証された。
【0042】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1)トリグリセリド組成中におけるPOP(2−オレオ−1,3ジパルミトイルグリセリン)含量と、POO(1−パルミトイル−2,3ジオレオイルグリセリン)含量との比が、1.0>POO/(POO+POP)>0.7であるパーム油由来の油脂を含む液体油脂に、構成脂肪酸組成が以下の(a)、(b)及び(c)の条件を満たすポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することを特徴とするフライ用油脂組成物。
(a)炭素数8〜12の飽和脂肪酸の含有量が15〜25重量部
(b)炭素数14〜22の飽和脂肪酸の含有量が35〜45重量部
(c)炭素数16〜22の不飽和脂肪酸の含有量が25〜45重量部
(2)トリグリセリド組成中におけるPOP(2−オレオ−1,3ジパルミトイルグリセリン)含量と、POO(1−パルミトイル−2,3ジオレオイルグリセリン)含量との比が、1.0>POO/(POO+POP)>0.7であるパーム油由来の油脂を含む液体油脂に、構成脂肪酸組成が以下の(a)、(b)及び(c)の条件を満たすポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することを特徴とするフライ用油脂組成物。
(a)炭素数8〜12の飽和脂肪酸の含有量が15〜25重量部
(b)炭素数14〜22の飽和脂肪酸の含有量が40〜45重量部
(c)炭素数16〜22の不飽和脂肪酸の含有量が35〜40重量部
(3)炭素数8〜12の飽和脂肪酸の含有量が、炭素数14〜22の飽和脂肪酸の含有量よりも多く設定されるとともに、炭素数16〜22の不飽和脂肪酸の含有量が、炭素数8〜12の飽和脂肪酸の含有量よりも多く設定されかつ炭素数14〜22の飽和脂肪酸の含有量よりも少なく設定されている請求項1または2に記載のフライ用油脂組成物(、あるいは請求項3に記載のフライ用油脂結晶成長抑制剤)。
(4)ポリグリセリン脂肪酸エステルの水酸基価が60以下である請求項1,2、前記(1)〜(3)のいずれか1つに記載のフライ用油脂組成物(、あるいは請求項3に記載のフライ用油脂結晶成長抑制剤)。
(5)ポリグリセリン脂肪酸エステルのヨウ素価が20〜40である請求項1,2、前記(1)〜(3)のいずれか1つに記載のフライ用油脂組成物(、あるいは請求項3に記載のフライ用油脂結晶成長抑制剤)。
(6)ポリグリセリン脂肪酸エステルの水酸基価が60以下かつヨウ素価が20〜40である請求項1,2、前記(1)〜(3)のいずれか1つに記載のフライ用油脂組成物(、あるいは請求項3に記載のフライ用油脂結晶成長抑制剤)。
(7)ポリグリセリン脂肪酸エステルの水酸基価が30以下かつヨウ素価が25〜40である請求項1,2、前記(1)〜(3)のいずれか1つに記載のフライ用油脂組成物(、あるいは請求項3に記載のフライ用油脂結晶成長抑制剤)。
(8)ポリグリセリン脂肪酸エステルの水酸基価が1〜20かつヨウ素価が30〜40である請求項1,2、前記(1)〜(3)のいずれか1つに記載のフライ用油脂組成物(、あるいは請求項3に記載のフライ用油脂結晶成長抑制剤)。
【0043】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1〜3に記載の発明によれば、トリグリセリド組成中のPOP(2−オレオ−1,3ジパルミトイルグリセリン)含量と、POO(1−パルミトイル−2,3ジオレオイルグリセリン)含量との比が、1.0>POO/(POO+POP)>0.7であるパーム油由来の油脂を含む液体油脂に、フライ用結晶成長抑制剤にある特定のポリグリセリン脂肪酸エステルを添加することにより、油脂結晶成長を著しく抑制することができ、これにより従来に比べて低温保存性を飛躍的に向上させることができる。
Claims (3)
- トリグリセリド組成中におけるPOP(2−オレオ−1,3ジパルミトイルグリセリン)含量と、POO(1−パルミトイル−2,3ジオレオイルグリセリン)含量との比が、1.0>POO/(POO+POP)>0.7であるパーム油由来の油脂を含む液体油脂に、構成脂肪酸組成が以下の(a)、(b)及び(c)の条件を満たすポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することを特徴とするフライ用油脂組成物。
(a)炭素数8〜12の飽和脂肪酸の含有量が10〜30重量部
(b)炭素数14〜22の飽和脂肪酸の含有量が30〜50重量部
(c)炭素数16〜22の不飽和脂肪酸の含有量が20〜50重量部 - ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が0.005〜0.1重量部/対油である請求項1記載のフライ用油脂組成物。
- トリグリセリド組成中におけるPOP(2−オレオ−1,3ジパルミトイルグリセリン)含量と、POO(1−パルミトイル−2,3ジオレオイルグリセリン)含量との比が、1.0>POO/(POO+POP)>0.7であるパーム油由来の油脂を含む液体油脂に添加されるフライ用油脂結晶成長抑制剤であって、構成脂肪酸組成が以下の(a)、(b)及び(c)の条件を満たすポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することを特徴とするフライ用油脂結晶成長抑制剤。
(a)炭素数8〜12の飽和脂肪酸の含有量が10〜30重量部
(b)炭素数14〜22の飽和脂肪酸の含有量が30〜50重量部
(c)炭素数16〜22の不飽和脂肪酸の含有量が20〜50重量部
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