JP6781256B2 - 抗菌組成物、抗菌膜、抗菌膜付き基材、抗菌膜の製造方法、及び、抗菌膜付き基材の製造方法 - Google Patents

抗菌組成物、抗菌膜、抗菌膜付き基材、抗菌膜の製造方法、及び、抗菌膜付き基材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、抗菌組成物、抗菌膜、抗菌膜付き基材、抗菌膜の製造方法、及び、抗菌膜付き基材の製造方法に関する。
タッチパネル等の物品が細菌等によって汚染されることを防止するための技術として、上記物品(以下、「基材」ともいう。)の表面に抗菌膜を設ける技術が注目されている。
特許文献1には、親水性モノマー及び銀系抗菌剤を含有する組成物を基材上の所定の位置に塗布して塗膜を形成し、塗膜に硬化処理を施すことにより抗菌膜を形成した、抗菌膜付き基材が記載されている。
特開2015−189196号公報
本発明者らは、特許文献1に記載された抗菌膜付き基材の抗菌性の経時変化について検討した。その結果、特許文献1に記載された抗菌膜付き基材は、使用開始から短時間で抗菌作用を示すものの、その後、一定時間経過した後の抗菌作用に改善の余地があることを知見した。また、本発明者らは、特許文献1に記載された親水性モノマー及び銀系抗菌剤を含有する組成物(以下、本段落において、単に「組成物」という。)の経時安定性についても検討した。その結果、特許文献1に記載された組成物は、調製後一定時間経過すると、変色し易く、また、成分が沈降し易いことを知見した。すなわち上記組成物は安定性(組成物が変色しにくいこと、及び、組成物の成分が沈降しにくいこと)の面で改善の余地があることを知見した。
そこで、本発明は、得られる抗菌膜が、所定の期間にわたって抗菌作用を持続的に発揮し、かつ、優れた安定性を有する(以下、「本発明の効果を有する」ともいう。)抗菌組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、抗菌膜、抗菌膜付き基材、抗菌膜の製造方法、及び、抗菌膜付き基材の製造方法を提供することも課題とする。
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した。その結果、銀を含有する抗菌剤と、親水性基を含有するモノマーと、水不溶性の含窒素化合物と、を含有する抗菌組成物が上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
[1] 銀を含有する抗菌剤と、親水性基を含有するモノマーと、水不溶性の含窒素化合物とを含有する抗菌組成物。
[2] 水不溶性の含窒素化合物の含有量に対する、銀の含有量の質量比が0.02〜0.3である、[1]に記載の抗菌組成物。
[3] 水不溶性の含窒素化合物をプロピレングリコールモノメチルエーテルに溶解させ固形分1質量%の溶液としたとき、溶液の回転粘度計を用いて測定した25℃における粘度が10mPa・s以上である、[1]又は[2]に記載の抗菌組成物。
[4] 水不溶性の含窒素化合物がウレタン結合を含有する、[1]〜[3]のいずれかに記載の抗菌組成物。
[5] 銀を含有する抗菌剤が、担体と担体上に担持された銀とを含有し、担体が、リン酸塩及びゼオライトからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]〜[4]のいずれかに記載の抗菌組成物。
[6] 親水性基を含有するモノマーを2種以上含有する、[1]〜[5]のいずれかに記載の抗菌組成物。
[7] 親水性基を含有するモノマーのうち少なくとも1種が、1分子中に、少なくとも1個のポリオキシアルキレン基と、2個以上の重合性基とを含有する、[6]に記載の抗菌組成物。
[8] 親水性基を含有するモノマーが、1分子中に、少なくとも1個のポリオキシアルキレン基と、2個以上の重合性基とを含有する、[1]〜[6]のいずれかに記載の抗菌組成物。
[9] [1]〜[8]のいずれかに記載の抗菌組成物を硬化して得られる抗菌膜。
[10] 膜厚が1〜10μmである、[9]に記載の抗菌膜。
[11] 基材と[9]又は[10]に記載の抗菌膜とを備える抗菌膜付き基材。
[12] 基材の表面に、[1]〜[8]のいずれかに記載の抗菌組成物を塗布して抗菌組成物層を形成する工程と、抗菌組成物層を硬化させて抗菌膜を得る工程とを含有する抗菌膜の製造方法。
[13] 基材の表面に、[9]又は[10]に記載の抗菌膜を形成する工程を含有する抗菌膜付き基材の製造方法。
[14] 抗菌膜を形成する工程が、基材の表面に、[1]〜[8]のいずれかに記載の抗菌組成物を塗布して抗菌組成物層を形成し、抗菌組成物層を硬化させて抗菌膜を得る工程である、[13]に記載の抗菌膜付き基材の製造方法。
本発明によれば、得られる抗菌膜が、所定の期間にわたって抗菌作用を持続的に発揮し、かつ、優れた安定性を有する抗菌組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、抗菌膜、抗菌膜付き基材、抗菌膜の製造方法、及び、抗菌膜付き基材の製造方法を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を含有しないものと共に置換基を含有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を含有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を含有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタアクリレートを表す。また、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルを表す。
[抗菌組成物]
一実施態様に係る抗菌組成物は、銀を含有する抗菌剤(以下、「銀系抗菌剤」ともいう。)と、親水性基を含有するモノマーと、水不溶性の含窒素化合物と、を含有する。
上記抗菌組成物が本発明の効果を奏する機序は必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下のとおり推測している。なお、本発明は、下記の機序により効果が得られるものに限定されるものではない。
本発明者らは、特許文献1に記載された抗菌膜付き基材が、使用開始から一定時間経過した後に抗菌作用が低下する場合がある原因について鋭意検討した。その結果、上記原因が、抗菌膜に含有される銀系抗菌剤から銀イオンが溶出する速度が速すぎる点にあることを初めて知見した。すなわち、銀イオンが溶出する速度が速すぎると、使用開始から短時間で過剰量の銀イオンが溶出してしまい、一定時間経過した後の抗菌作用が低下し易いことを知見した。なお、銀イオンが溶出する速度が適当か否かは、一般的な細菌類の分裂の時間的な間隔(例えば、大腸菌等であれば20分程度、以下本段落において「分裂間隔」という。)を元に判断できる。すなわち、分裂間隔よりも短い時間で放出された銀イオンは、抗菌作用に寄与しにくいため、銀イオンが溶出する速度が速いと判断できる。
上記知見によれば、課題解決のためには、細菌類の分裂間隔に合わせて、銀系抗菌剤から銀イオンを徐々に放出すること(徐放性)が必要であることが示唆された。
上記実施態様に係る抗菌組成物は、水不溶性の含窒素化合物を含有する。上記水不溶性の含窒素化合物は、銀イオンとAg−Nを含有する錯体を形成するものと推測される。銀イオンが上記錯体を形成すると、上記抗菌組成物を用いて抗菌膜を形成した際、銀イオンが抗菌膜外に放出される速度が抑制されるものと推測される。言い換えれば、上記錯体を経て、銀イオンが徐放されるものと推測される。
従い、上記抗菌組成物を用いて形成された抗菌膜は、所定の期間にわたって抗菌作用を持続的に発揮することができる。
また、水不溶性の含窒素化合物は、上記抗菌組成物の粘度を増加させる作用を有しており、この作用により、成分の沈降抑制に寄与したものと推測される。
更に、水不溶性の含窒素化合物は、抗菌組成物の変色を防止するという予想外の作用もまた有しているものと推測される。
本発明者らは、銀を含有する抗菌剤を含有する抗菌組成物が変色する原因の一つとして、銀イオンが金属銀として凝集してしまう(この状態を「ナノ銀」と呼んでいる。)ことを知見している。
抗菌組成物中で、銀イオンがクラスター状に凝集し、還元作用をうけると、上記ナノ銀(例えば、球状のナノ銀粒子)が生成すると推測される。
水不溶性の含窒素化合物は、上記銀イオンと錯体を形成しやすいため、上記ナノ銀の形成による変色を防ぐ作用があるものと推測される。
上記のとおり、水不溶性の含窒素化合物は、抗菌組成物の粘度を増加させて、抗菌組成物の成分の沈降を抑制するだけではなく、銀イオンと錯体を形成することで、ナノ銀の形成を防ぎ、抗菌組成物の安定性を向上するという予想外の効果を有していると推測される。
以下では、上記実施態様に係る抗菌組成物について、各成分ごとに説明する。
〔銀を含有する抗菌剤(銀系抗菌剤)〕
抗菌組成物は、銀を含有する抗菌剤(以下、「銀系抗菌剤」ともいう。)を含有する。銀を含有する抗菌剤としては特に制限されず、公知の抗菌剤を用いることができる。
また、銀の形態は特に制限されず、例えば、金属銀、銀イオン、及び銀塩(銀錯体を含む)等が挙げられる。なお、本明細書では、銀錯体は銀塩の範囲に含まれる。
銀塩としては、特に制限されないが、例えば、酢酸銀、アセチルアセトン酸銀、アジ化銀、銀アセチリド、ヒ酸銀、安息香酸銀、フッ化水素銀、臭素酸銀、臭化銀、炭酸銀、塩化銀、塩素酸銀、クロム酸銀、クエン酸銀、シアン酸銀、シアン化銀、(cis,cis−1,5−シクロオクタジエン)−1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトン酸銀、ジエチルジチオカルバミン酸銀、フッ化銀(I)、フッ化銀(II)、7,7−ジメチル−1,1,1,2,2,3,3−ヘプタフルオロ−4,6−オクタンジオン酸銀、ヘキサフルオロアンチモン酸銀、ヘキサフルオロヒ酸銀、ヘキサフルオロリン酸銀、ヨウ素酸銀、ヨウ化銀、イソチオシアン酸銀、シアン化銀カリウム、乳酸銀、モリブデン酸銀、硝酸銀、亜硝酸銀、酸化銀(I)、酸化銀(II)、シュウ酸銀、過塩素酸銀、ペルフルオロ酪酸銀、ペルフルオロプロピオン酸銀、過マンガン酸銀、過レニウム酸銀、リン酸銀、ピクリン酸銀一水和物、プロピオン酸銀、セレン酸銀、セレン化銀、亜セレン酸銀、スルファジアジン銀、硫酸銀、硫化銀、亜硫酸銀、テルル化銀、テトラフルオロ硼酸銀、テトラヨードムキュリウム酸銀、テトラタングステン酸銀、チオシアン酸銀、p−トルエンスルホン酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀、トリフルオロ酢酸銀、及びバナジン酸銀等が挙げられる。
また、銀錯体としては特に制限されないが、例えば、ヒスチジン銀錯体、メチオニン銀錯体、システイン銀錯体、アスパラギン酸銀錯体、ピロリドンカルボン酸銀錯体、オキソテトラヒドロフランカルボン酸銀錯体、及びイミダゾール銀錯体等が挙げられる。
銀系抗菌剤としては、例えば、上記銀塩(銀錯体)等の有機系の抗菌剤と、後述する担体を含む無機系の抗菌剤が挙げられるが、その種類は特に制限されない。
なかでも、抗菌組成物がより優れた本発明の効果を有する点で、銀系抗菌剤は、無機系の抗菌剤が好ましく、担体と担体上に担持された銀とを含む銀担持担体がより好ましい。
担体の種類は特に制限されず、リン酸亜鉛カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸アルミニウム、及びリン酸チタン等のリン酸塩、ケイ酸カルシウム、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、チタン酸カリウム、含水酸化ビスマス、含水酸化ジルコニウム、ハイドロタルサイト、及びガラス(水溶性ガラスを含む)等が挙げられる。
なかでも、抗菌組成物がより優れた本発明の効果を有する点で、担体としてはリン酸亜鉛カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸アルミニウム、ゼオライト、又はガラスが好ましく、担体が潮解性を有さず、抗菌組成物がより優れた安定性を有する点で、リン酸亜鉛カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸アルミニウム、又はゼオライトが好ましい。
すなわち、銀を含有する抗菌剤としては、抗菌組成物がより優れた安定性を有する点で、担体と担体上に担持された銀とを含有し、担体が、リン酸塩及びゼオライトからなる群から選択される少なくとも1種である抗菌剤が好ましい。なお、好ましいリン酸塩としては、例えば、リン酸亜鉛カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸アルミニウム等が挙げられる。
本明細書において、リン酸塩からなる担体を含有する銀系抗菌剤を「リン酸銀抗菌剤」という。
本明細書において、ゼオライトからなる担体を含有する銀系抗菌剤を「ゼオライト銀抗菌剤」という。
ゼオライトとしては、例えば、チャバサイト、モルデナイト、エリオナイト、クリノプチロライト等の天然ゼオライト、A型ゼオライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト等の合成ゼオライトが挙げられる。
銀系抗菌剤の平均粒径は特に制限されないが、一般に、0.1〜10μmが好ましく、0.1〜2μmがより好ましい。なお、上記平均粒径は、光学顕微鏡を用いて銀系抗菌剤を観察し、少なくとも10個の任意の銀系抗菌剤の粒子(一次粒子)の直径を測定し、それらを算術平均した値である。
銀系抗菌剤中における銀の含有量は特に制限されないが、銀系抗菌剤の全質量に対して、0.1〜10質量%が好ましく、0.3〜5質量%がより好ましい。
抗菌組成物中における銀系抗菌剤の含有量としては特に制限されないが、一般的に抗菌組成物の全固形分に対して、銀の含有量として0.001〜10質量%(好ましくは、0.01〜5質量%)となる量が好ましい。
また、銀系抗菌剤として有機系の抗菌剤を用いる場合は、抗菌剤の含有量は特に制限されないが、得られる抗菌膜の機械的強度がより優れ、本発明の効果がより優れる点で、抗菌組成物の全固形分に対して1〜10質量%が好ましい。
更に、銀系抗菌剤として無機系の抗菌剤を用いる場合は、抗菌剤の含有量は特に制限されないが、得られる抗菌膜の機械的強度がより優れ、本発明の効果がより優れる点で、抗菌組成物の全固形分に対して0.01〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
また、後述する水不溶性の含窒素化合物の含有量との関係では、水不溶性の含窒素化合物の含有量に対する、銀の含有量の質量比(銀の含有量(質量)/水不溶性の含窒素化合物の含有量(質量))が0.02〜0.3であることが好ましく、0.05〜0.2であることがより好ましい。
上記含有量の質量比が0.02〜0.3の範囲内にあると、抗菌組成物により得られる抗菌膜は、抗菌作用をより持続的に発揮しやすい。
〔親水性基を含有するモノマー(親水性モノマー)〕
抗菌組成物は親水性基を含有するモノマー(以下、「親水性モノマー」ともいう。)を含有する。なお、親水性基を含有するモノマーとは、親水性基と重合性基とを含有する化合物を意図する。
親水性モノマーはバインダーとしての作用を有し、上記抗菌組成物が後述する重合開始剤を含有する場合には、重合して親水性ポリマーを形成する。
抗菌組成物により得られる抗菌膜が親水性ポリマーを含有すると、抗菌膜がより親水性を示し、水等を用いて抗菌膜を洗浄すると、抗菌膜上に付着した汚染物質をより容易に除去することができる。
親水性基としては特に制限されず、例えば、ポリオキシアルキレン基(例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、オキシエチレン基とオキシプロピレン基がブロック又はランダム結合したポリオキシアルキレン基)、アミノ基、カルボキシル基、カルボキシル基のアルカリ金属塩、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基、スルファモイル基、リン酸基、スルホン酸基、及びスルホン酸基のアルカリ金属塩等が挙げられる。なかでも、抗菌組成物により得られる抗菌膜がより優れたハードコート性、及び/又は、耐カール性を有する点で、親水性基としては、ポリオキシアルキレン基が好ましい。なお、ハードコート性、及び、耐カール性とは、実施例に記載の方法により評価することができる抗菌膜の物性を意図する。
親水性モノマー中における親水性基の数は特に制限されないが、得られる抗菌膜がより親水性を示す点で、2個以上が好ましく、2〜6個がより好ましく、2〜3個が更に好ましい。
上記親水性ポリマーの主鎖の構造は特に制限されず、例えば、ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、及びポリウレア等が挙げられる。
重合性基としては特に制限されず、例えば、ラジカル重合性基、カチオン重合性基、及びアニオン重合性基等が挙げられる。ラジカル重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、アクリルアミド基、ビニル基、スチリル基、及びアリル基等が挙げられる。カチオン重合性基としては、ビニルエーテル基、オキシラニル基、及びオキセタニル基等が挙げられる。なかでも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
親水性モノマー中における重合性基の数は特に制限されないが、得られる抗菌膜の機械的強度がより優れる点で、2個以上が好ましく、2〜6個がより好ましく、2〜3個が更に好ましい。
また、親水性基を含有するモノマーが、1分子中に少なくとも1個のポリオキシアルキレン基と2個以上の重合性基とを含有することが好ましい。
抗菌組成物は、親水性モノマーを2種以上含有することが好ましい。
抗菌組成物が含有する親水性モノマーの種類の数の上限としては特に制限されず、一般に5種以下が好ましい。
親水性モノマーを2種以上含有すると、抗菌組成物により得られる抗菌膜がより優れた抗菌性を有する。
また、抗菌組成物が親水性モノマーを2種以上含有する場合、親水性基を含有するモノマーのうち少なくとも1種が、1分子中に少なくとも1個のポリオキシアルキレン基と2個以上の重合性基とを含有することが好ましい。
上記の親水性モノマーを含有する抗菌組成物により得られる抗菌膜は、より優れたハードコート性、及び低カール性を有する。
(親水性モノマーの好適態様)
親水性モノマーの好適態様の一つとしては、以下の式(1)で表される化合物が挙げられる。
式(1)中、Rは置換基を表す。置換基の種類は特に制限されず、公知の置換基が挙げられ、例えば、ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基(例えば、アルキル基、アリール基)、上記親水性基等が挙げられる。
は重合性基を表す。重合性基の定義は上述したものが挙げられる。
は単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基の種類は特に制限されず、例えば、−O−、−CO−、−NH−、−CO−NH−、−COO−、−O−COO−、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、及び、それらの組み合わせが挙げられる。
はポリオキシアルキレン基を表す。ポリオキシアルキレン基とは、以下の式(2)で表される基を意図する。
式(2) *−(OR−*
式(2)中、Rはアルキレン基(例えば、エチレン基、プロピレン基)を表す。mは2以上の整数を表し、2〜10が好ましく、2〜6がより好ましい。*は結合位置を表す。nは1〜4の整数を表す。
親水性モノマーの具体例としては、ポリオキシアルキレン変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、ポリオキシアルキレン変性ビスフェノールAジアクリレートが挙げられる。
抗菌組成物中における親水性モノマーの含有量としては特に制限されないが、より優れた本発明の効果を有する抗菌組成物が得られる点で、抗菌組成物の全固形分に対して0.1〜50質量%が好ましく1〜25質量%がより好ましい。
親水性モノマーは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の親水性モノマーを併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
〔水不溶性の含窒素化合物〕
抗菌組成物は、水不溶性の含窒素化合物を含有する。本明細書において、水不溶性とは、実質的に水に不溶であることを意図する。実質的に水に不溶であるとは、以下の試験法により測定した溶解量が0.1g以下であることを意図する。
・試験方法
25℃の条件下で、100gの蒸留水に、含窒素化合物を0.5g加えて5分間攪拌し、溶液を得る。得られた溶液をろ過し、固形物を得る。上記固形物を、105℃で60分間乾燥させ、不溶分を得て、これを秤量する。溶解量は、以下の式により算出する。
(式) 溶解量(g)=0.5−不溶分
また、含窒素化合物とは、その構造中に窒素原子を含有する化合物を意図する。
窒素原子を含有する化合物の態様としては特に制限されないが、例えば、窒素原子を含有する置換基を有する化合物が挙げられる。上記置換基としては特に制限されないが、例えば、シアノ基、アミノ基(第1級、第2級、又は第3級)、アジド基、アゾ基、アミド基、ウレタン基(ウレタン結合)、ウレア基、及び窒素原子を含有する芳香族性複素環基等が挙げられる。
なかでも、より優れた本発明の効果を有する抗菌組成物が得られる点で、水不溶性の含窒素化合物がウレタン結合を含有することが好ましい。
水不溶性の含窒素化合物としては、以下の粘度特性を有することが好ましい。以下の粘度特性を有する水不溶性の含窒素化合物は、抗菌組成物の粘度を増加させやすい。従って、以下の粘度特性を有する水不溶性の含窒素化合物を含有する抗菌組成物は、より優れた安定性を有する。なお、本明細書においては、以下の粘度特性を有する水不溶性の含窒素化合物を「増粘剤」ともいう。
・粘度特性
水不溶性の含窒素化合物をプロピレングリコールモノメチルエーテルに溶解させ固形分1質量%の溶液としたとき、上記溶液の回転粘度計を用いて測定した25℃における粘度が10mPa・s以上である。
回転粘度計を用いて測定した上記溶液の25℃における粘度は、10mPa・s以上が好ましく、15mPa・s以上がより好ましい。なお、上記粘度の上限値としては特に制限されないが、取り扱い性の点で、500mPa・s以下が好ましい。
なお、本段落において、優れた取り扱い性とは、抗菌組成物の製造時に、水不溶性の含窒素化合物をその他の各成分と容易に混合することができる状態を意図する。
水不溶性の含窒素化合物の含有量としては特に制限されないが、抗菌組成物の全固形分に対して、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜7質量%がより好ましい。また、水不溶性の含窒素化合物の含有量に対する銀の含有量の質量比が上述のとおりであることが好ましい。
なお、水不溶性の含窒素化合物は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の水不溶性の窒素化合物を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
水不溶性の含窒素化合物の具体例としては、例えば、BYK−D410(BYK社製、ウレタン結合を含有する、上記の方法により測定した粘度が、28mPa・sであり増粘剤に該当する)、DISPARLON PFA−231(楠本化成社製、ウレタン結合を含有しない、上記の方法により測定した粘度が17mPa・sであり増粘剤に該当する)、及びTINUVIN PS(BASF社製、ウレタン結合を含有しない、上記の方法により測定した粘度が2.1mPa・sであり増粘剤に該当しない)等が挙げられるが、これに制限されない。
〔その他の成分〕
抗菌組成物は本発明の効果を奏する範囲内において、さらにその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、親水性基を含有しないモノマー、重合開始剤、溶媒、分散剤、変色防止剤、及び抗菌剤(銀系抗菌剤をのぞく)等が挙げられる。以下では、その他の各成分の態様を説明する。
<親水性基を含有しないモノマー>
抗菌組成物は、親水性モノマー以外のモノマーを含有することが好ましい。
上記モノマーとは親水性基を含有しないモノマーであって、上述した親水性モノマーとは異なるモノマーを意図する。
上記モノマーとしては、特に制限されず、公知の重合性基を含有するモノマーを用いることができる。例えば、重合性基としては、上述したものが挙げられる。
なかでも、上記モノマーとしては、得られる抗菌膜がより優れた機械的強度を有する点で、1分子中に重合性基を2個以上含有する多官能モノマーが好ましい。多官能モノマーはいわゆる架橋剤として作用する。
多官能モノマー中に含まれる重合性基の数は特に制限されず、得られる抗菌膜がより優れた機械的強度を有する点、及び多官能モノマー自体の取扱いが容易な点で、2〜10個が好ましく、2〜6個がより好ましい。
多官能モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールポリアクリレート(例えば、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)、及びペンタエリスリトールテトラアクリレートが挙げられる。
抗菌組成物中における、親水性基を含有しないモノマーの含有量に対する、親水性モノマーの含有量の質量比(親水性モノマーの質量/親水性基を含有しないモノマーの質量)は特に制限されないが、得られる抗菌膜の親水性の制御がしやすい点で、0.01〜10が好ましく、0.1〜10がより好ましい。
抗菌組成物中における、親水性モノマー、及び親水性基を含有しないモノマーの合計量としては、特に制限されないが、得られる抗菌膜がより優れた汚れ除去性を有する点で、抗菌組成物の全固形分に対して、60〜99.9質量%が好ましく、80〜98質量%がより好ましい。
<重合開始剤>
抗菌組成物はさらに重合開始剤を含有することが好ましい。重合開始剤を含有する抗菌組成物により得られる抗菌膜は、より優れた機械的強度を有する。
重合開始剤としては特に制限されず、公知の重合開始剤を用いることができる。
重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤、及び光重合開始剤等が挙げられる。
重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、及びフェニルフォスフィンオキシド等の芳香族ケトン類;α−ヒドロキシアルキルフェノン系化合物(BASF社製、IRGACURE184、127、2959、及び、DAROCUR1173等);フェニルフォスフィンオキシド系化合物(モノアシルフォスフィンオキサイド:BASF社製 IRGACURE TPO、ビスアシルフォスフィンオキサイド:BASF社製 IRGACURE 819);等が挙げられる。
なかでも、反応効率の点で、光重合開始剤が好ましい。
抗菌組成物中における重合開始剤の含有量としては特に制限されないが、親水性モノマー、及び親水性基を含有しないモノマーの合計100質量部に対して0.1〜15質量部が好ましく、1〜6質量部がより好ましい。
なお、重合開始剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の重合開始剤を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
<溶媒>
抗菌組成物は溶媒を含有することが好ましい。
溶媒としては特に限定されず、水及び/又は有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、及びイソペンタノール等のアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、及びプロピレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、及びエチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、及びエチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、及びジ−n−ブチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸エチル、及びプロピオン酸ブチル等のエステル系溶媒等が挙げられる。溶媒は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
中でも、より均一な膜厚を有する抗菌膜が得られやすい点で、溶媒は有機溶媒を含有することが好ましく、アルコール系溶媒、及び/又はグリコールエーテル系溶媒を含有することがより好ましく、アルコール系溶媒、及びグリコールエーテル溶媒を含有することが更に好ましい。
抗菌組成物の固形分としては、特に限定されないが、抗菌組成物がより優れた塗布性を有する点で、5〜80質量%が好ましく、20〜60質量%がより好ましい。上記固形分になるよう、抗菌組成物中に溶媒を含有することが好ましい。
溶媒は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の溶媒を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
<分散剤、及び変色防止剤>
抗菌組成物は、分散剤及び/又は変色防止剤を含有してもよい。上記分散剤、及び変色防止剤は、水不溶性の含窒素化合物とは異なる化合物を意図する。
分散剤としては特に制限されず、公知の分散剤を用いることができる。
分散剤としては、例えば、DISPERBYK−180(BYK社製、水溶性、アルキロールアンモニウム塩)等が挙げられる。
変色防止剤としては特に制限されず、公知の変色防止剤を用いることができる。
変色防止剤としては、例えば、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業社製)等が挙げられる。
抗菌組成物中における分散剤の含有量としては特に制限されないが、一般的に、抗菌組成物の全固形分に対して、0.01〜5質量%が好ましい。
抗菌組成物中における変色防止剤の含有量としては特に制限されないが、一般的に、抗菌組成物の全固形分に対して、0.1〜5質量%が好ましい。
分散剤、及び/又は変色防止剤は、それぞれ1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の分散剤、及び/又は変色防止剤を併用する場合には、合計含有量がそれぞれ上記範囲内であることが好ましい。
<抗菌剤(銀系抗菌剤をのぞく)>
抗菌組成物は、銀系抗菌剤とは異なる抗菌剤を含有してもよい。
銀系抗菌剤とは異なる抗菌剤としては特に制限されず、公知の抗菌剤を用いることができる。
抗菌剤としては、例えば、亜鉛、鉄、鉛、ビスマス、チタン、錫、又はニッケル等の金属を含有する抗菌剤が挙げられる。上記金属の形態としては特に制限されず、金属粒子、金属イオン、及び金属塩(金属錯体を含む)等の形態が挙げられる。
なお、上記金属を含有する抗菌剤は、担体と担体上に担持された上記金属とを含有する金属担持単体であってもよい。なお、担体の態様としては銀系抗菌剤の担体として上述したものが挙げられる。
銀系抗菌剤とは異なる抗菌剤の含有量としては特に制限されず、抗菌組成物の全固形分に対して、0.01〜5質量%が好ましい。
銀系抗菌剤とは異なる抗菌剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の銀系抗菌剤とは異なる抗菌剤を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
〔抗菌組成物の製造方法〕
抗菌組成物は、上記の各成分を混合することによって調製することができる。なお、上記成分の混合の順番は特に限定されないが、親水性モノマー、及び必要に応じて親水性基を含有しないモノマーを溶媒中で混合して混合物を得て、この混合物とその他の成分とを混合する態様であってもよい。その際、親水性モノマー、及び必要に応じて親水性基を含有しないモノマーを混合するために用いられる溶媒と、この混合物とその他の成分とを混合するために用いられる溶媒とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
また、抗菌組成物が分散剤を含む場合、金属を含む抗菌剤粒子及び分散剤を先に混合して、金属を含む抗菌剤粒子を分散剤中に分散させてもよい。
〔抗菌組成物の用途〕
上記抗菌組成物は、抗菌膜の製造、及び抗菌膜付き基材の製造に用いることができる。より具体的には、例えば、上記抗菌組成物を含有するインクを作製し、インクジェット法等によって基材(例えば、紙が挙げられる。紙面には、なんらかの文字及び/又は図画が印刷されていてもよい)の表面に抗菌膜(抗菌コート)を形成する態様が挙げられる。
なお抗菌膜の形成には、抗菌組成物層にUV(ultra violet)照射を行う方法が挙げられる。すなわち、上記抗菌組成物は、UVインクジェットインクとしても用いることができる。
[抗菌膜]
他の実施態様に係る抗菌膜は、抗菌組成物を硬化して得られる抗菌膜である。上記抗菌組成物としては、既に説明したとおりである。
なお、抗菌膜の膜厚としては特に制限されないが、0.1〜15μmが好ましく、1〜10μmがより好ましい。
膜厚が1μm以上だと、抗菌膜はより優れたハードコート性を有する。
一方、膜厚が10μm以下だと、抗菌膜はより優れた耐カール性を有する。
本明細書において、抗菌膜の膜厚は、抗菌膜のサンプル片を樹脂に包埋して、ミクロトームで断面を削り出し、削り出した断面を走査電子顕微鏡で観察し測定する。抗菌膜の任意の10点の位置における厚みを測定し、それらを算術平均した値を意図する。
[抗菌膜付き基材]
他の実施態様に係る抗菌膜付き基材は、基材と上記抗菌膜とを備える。抗菌膜付き基材は、基材と抗菌膜とを備えた積層体であることが好ましい。抗菌膜付き基材の態様としては、基材の少なくとも一部の表面上に抗菌膜を備える態様、基材の一方の表面上に抗菌膜を備える態様、及び基材の両側の表面上に抗菌膜を備える態様が挙げられる。
〔基材〕
基材は、抗菌膜を支持する役割を果たすものであれば、その種類は特に制限されない。基材は、各種装置の一部(例えば、前面板)を構成するものであってもよい。
基材の形状は特に制限されないが、板状、フィルム状、シート状、チューブ状、繊維状、及び粒子状等が挙げられる。抗菌膜が配置される基材表面の形態は特に制限されず、平坦面、凹面、凸面、及び、これらの組み合わせ等が挙げられる。
基材を構成する材料は特に制限されず、例えば、金属、ガラス、セラミックス、及びプラスチック(樹脂)等が挙げられる。なかでも、取り扱い性の点で、プラスチックが好ましい。言い換えれば、樹脂基材が好ましい。
[抗菌膜の製造方法]
他の実施態様に係る抗菌膜の製造方法は、以下の工程を含有する。
(工程A)基材の表面に、抗菌組成物を塗布して抗菌組成物層を形成する工程
(工程B)抗菌組成物層を硬化させて抗菌膜を得る工程
(工程A)
工程Aは、基材の表面に、抗菌組成物を塗布して抗菌組成物層を形成する工程である。基材の表面に抗菌組成物を塗布する方法としては特に制限されず、公知の塗布法を用いることができる。
基材の表面に抗菌組成物を塗布する方法としては、例えば、スプレー法、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、インクジェット法、及びダイコーティング法等が挙げられる。
抗菌組成物層の膜厚としては特に制限されないが、乾燥膜厚として、0.1〜15μmが好ましい。
また、抗菌組成物を塗布した後、溶媒を除去するために加熱処理を行ってもよい。その場合の加熱処理の条件としては特に制限されず、例えば、加熱温度としては、50〜200℃が好ましく、加熱時間としては、15〜600秒が好ましい。
なお、工程Aにおいて用いることができる基材としては、上述したものが挙げられる。
(工程B)
工程Bは、抗菌組成物層を硬化させて抗菌膜を得る工程である。
抗菌組成物層を硬化させる方法としては特に制限されないが、例えば、加熱処理及び/又は露光処理が挙げられる。
露光処理としては、特に制限されないが、例えば、紫外線ランプにより100〜600mJ/cmの照射量の紫外線を照射して抗菌組成物層を硬化する態様が挙げられる。
紫外線照射の場合、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、及びメタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等が利用できる。
加熱処理の温度としては特に制限されないが、例えば、50〜150℃が好ましく、80〜120℃がより好ましい。加熱処理の時間としては特に制限されないが、例えば、15〜600秒が好ましい。
[抗菌膜付き基材の製造方法]
他の実施態様に係る抗菌膜付き基材の製造方法は、基材の表面に、抗菌膜を形成する工程を含有する抗菌膜付き基材の製造方法である。
抗菌膜を形成する工程としては、特に制限されないが、以下のいずれかの態様が好ましい。なお、基材については上述したものが挙げられる。
<好適態様1>
基材の表面に抗菌組成物を塗布して抗菌組成物層を形成し、抗菌組成物層を硬化させて抗菌膜を得る工程。
上記好適態様1については、抗菌膜の製造方法としてすでに説明した態様と同様である。
<好適態様2>
基材と抗菌膜とを貼り合せる工程。
上記好適態様2としては、基材及び/又は抗菌膜の少なくとも一部に接着剤を塗布して基材及び/又は抗菌膜上に接着剤層を形成した後、基材と抗菌膜とを貼り合わせ、必要に応じて接着剤を硬化させる方法が挙げられる。
接着剤としては特に制限されず、公知の接着剤を用いることができる。
接着剤としては、例えば、ホットメルトタイプ、熱硬化タイプ、光硬化タイプ、反応硬化タイプ、及び硬化の不要な感圧接着タイプ等が挙げられる。各接着剤の素材として、アクリレート系、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、エポキシ系、エポキシアクリレート系、ポリオレフィン系、変性オレフィン系、ポリプロピレン系、エチレンビニルアルコール系、塩化ビニル系、クロロプレンゴム系、シアノアクリレート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリスチレン系、及び、ポリビニルブチラール系等の化合物を使用することができる。
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されない。
[モノマー混合物の調製]
表1に記載の各モノマー及び溶媒を混合して、モノマーの混合物を得た。
表中の各成分は以下の通りである。
・NKエステル(登録商標)A−9550(新中村化学工業社製;ジペンタエリスリトールポリアクリレート;1分子中に重合性基を複数含有する多官能アクリレート化合物、具体的には5官能アクリレートと6官能アクリレートの混合物;親水性基を含有しないモノマーに該当する。)
・NKエステル A−GLY−9E(新中村化学工業社製;エトキシ化されたグリセリントリアクリレート;1分子中に、ポリオキシアルキレン基とアクリロイル基とをそれぞれ3個ずつ含有する;親水性モノマーに該当する。)
・ライトアクリレート(登録商標)130A(共栄化学社製;メトキシ−ポリエチレングリコールアクリレート;1分子中に、ポリオキシアルキレン基とアクリロイル基とを1個ずつ含有する;親水性モノマーに該当する。)
・3−スルホプロピルアクリレートカリウム塩(Polysciences社製;1分子中に、スルホン酸基のアルカリ金属塩とアクリロイル基とを1個ずつ含有する;親水性モノマーに該当する。)
・PPME(商品名)(東邦化学社製;リン酸メタクリロイルオキシエチル;1分子中にリン酸基とメタクリロイル基とを1個ずつ含有する;親水性モノマーに該当する。)
・アクアロン(登録商標)KH−10(第一工業製薬社製;ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸アンモニウム;ビニル基含有アルキルエーテル硫酸アンモニウム;親水性モノマーに該当する。)
・Irgacure(登録商標)184(BASF社製;1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン;アルキルフェノン系光重合開始剤に該当する。)
・MFG(商品名)(日本乳化剤社製;メチルプロピレングリコール;グリコールエーテル系溶媒に該当する。)
なお、上記表中「質量%」とは、混合物の全質量に対する質量%を示している。
[抗菌組成物の調製]
表2に記載の各成分を混合して、各実施例、及び比較例に係る抗菌組成物を調製した。表中の各成分は以下の通りである。
・ノバロンAG300(東亜合成社製;リン酸Zr系Ag;銀含有量は3質量%;銀系抗菌剤に該当する;リン酸銀抗菌剤に該当する;固形分100質量%)
・バクテライトMP102SVC13(富士ケミカル社製;リン酸CaZn系Ag;銀含有量は1質量%、銀系抗菌剤に該当する;リン酸銀抗菌剤に該当する;固形分25質量%)
・ゼオミックAW10N(シナネンゼオミック社製;ゼオライト系Ag;銀含有率は0.5質量%;銀系抗菌剤に該当する;ゼオライト銀抗菌剤に該当する;固形分100質量%)
・イオンピュアWPA(石塚硝子社製;ガラス系Ag;銀含有率は1.6質量%;銀系抗菌剤に該当する;固形分100質量%)
・ノバロンVZ100(東亜合成社製;ガラス系Zn;銀系抗菌剤とは異なる抗菌剤に該当する;固形分100質量%)
・A〜H(表1中のモノマーの混合物A〜Hに該当する)
・アイカアイトロンZ−949−1L(アイカ工業社製;親水性モノマー、親水性基を含有しないモノマー、及び重合開始剤を含有する;固形分30質量%)
・BYK−D410(BYK Chemie社製;変性ウレアウレタン化合物;水不溶性の含窒素化合物に該当する;ウレタン結合を含有する;増粘剤に該当する;固形分52質量%)
・DISPARLON PFA−231(楠本化成社製;脂肪族アマイド化合物;水不溶性の含窒素化合物に該当する;増粘剤に該当する;固形分20質量%)
・TINUVIN PS(BASF社製;変性ベンゾトリアゾール;水不溶性の含窒素化合物に該当する;ウレタン結合を含有しない;増粘剤に該当しない;固形分10質量%(イソプロピルアルコール希釈))
・DISPARLON 4200−20(楠本化成社製;ポリオレフィンワックス;水不溶性含窒素化合物に該当しない(水不溶性だが、窒素原子を含有しない);固形分20質量%)
・DISPERBYK−180(BYK Chemie社製;アルキロールアンモニウム塩;分散剤に該当する;固形分50質量%(イソプロピルアルコール希釈))
・3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業社製;変色防止剤に該当する;固形分100質量%)
・トクソーIPA(isopropyl alcohol)工業用(商品名)(トクヤマ社製;アルコール系溶媒に該当する)
なお、表2中、各成分の含有量(表中の数値)は、抗菌組成物の全質量に対する質量%として示した。
[抗菌膜付き基材の作製]
各実施例及び比較例に記載の抗菌組成物を用いて以下の方法より抗菌膜付き基材を得た。
抗菌組成物を、PET(Polyethylene terephthalate)シート(東洋紡社製コスモシャインA4300)の表面上に、表3の各欄に記載した膜厚の抗菌膜が得られるように抗菌組成物を塗布し、120℃で2分乾燥させた後、UV(ultraviolet)照射により親水性モノマー等を硬化させて抗菌膜付き基材を形成した。
[抗菌膜の性能評価]
以下の方法により抗菌膜の性能を評価した。結果は表3−1及び表3−2に示した。
〔抗菌組成物の安定性:変色〕
抗菌組成物を容量100mlのバイアル瓶に80ml入れ、25℃の恒温槽で静置し、24時間、及び48時間経過後の抗菌組成物の変色を目視で評価した。
結果は以下の基準により評価した。実用上「A」又は「B」が好ましい。
(評価基準)
A:48時間静置した後に、抗菌組成物の変色は観察されなかった。
B:24時間静置した後に、抗菌組成物の変色は観察されなかったが、48時間静置した後に、抗菌組成物の変色が観察された。
C:24時間静置した後に、抗菌組成物の変色が観察された。
〔抗菌組成物の安定性:沈降〕
抗菌組成物80mlを容量100mlのバイアル瓶に入れ、25℃の恒温槽で24時間静置した。その後、抗菌組成物が分離して上澄み液が生じているかを観察し、抗菌組成物の液面からの上澄み液部分の高さを測定した。
沈降性を以下の基準に基づき評価した。実用上「A」又は「B」が好ましい。
(評価基準)
A:上澄み液部分の高さが、5mm以下だった。
B:上澄み液部分の高さが、5mm超10mm以下だった。
C:上澄み液部分の高さが、10mm超だった。
〔抗菌作用の持続性:銀イオンの徐放性〕
下記の方法により、抗菌膜からの銀イオンの溶出量を評価した。
JIS Z 2801:2010に規定された1/500普通ブイヨン培地を抽出液として用いた。この抽出液の温度を35±1℃に制御して、抗菌膜付き基材中の抗菌膜(抗菌膜の面積:4cm(2cm×2cm))と抽出液(液量:9mL)とを5分間接触させた。なお、抗菌膜と抽出液とを接触させる方法としては、抽出液中に抗菌膜付き基材を浸漬する方法を採用した。
抗菌膜付き基材と抽出液とを5分間接触させた後、抽出液から抗菌膜付き基材を回収して、抽出液に抽出された銀イオン量(ng)を測定した。抽出液中の銀イオン量の測定は、原子吸光分析装置(イエナ製contrAA700)を用いて実施し、あらかじめ作成した検量線より銀イオン量を求めた。次に、得られた銀イオン量を、抗菌膜の抽出液との接触面積(4cm)で除して、単位面積当たりの銀イオン量(ng/cm)を算出した。抗菌膜の抽出液との接触面積とは、抗菌膜と抽出液とを接触させた際に抗菌膜表面の抽出液と接触していた面積を意図する。
結果は以下の基準により評価した。実用上「A」又は「B」が好ましい。
(評価基準)
A:抽出液と5分間接触させたときの銀イオン溶出量が、10ng/cm以下だった。
B:抽出液と5分間接触させたときの銀イオン溶出量が、10ng/cm超15ng/cm以下だった。
C:抽出液と5分間接触させたときの銀イオン溶出量が、15ng/cm超だった。
上記と同様の試験を、接触時間を30分に変更して行った。
なお、接触時間を30分とした場合の溶出量は、得られた銀イオン溶出量の数値から、上記の接触時間を5分とした場合に得られた銀イオン溶出量の数値を引くことにより求めた。
すなわち、表3−1及び表3−2に示した「接触時間30min」の結果は、接触時間5分超〜接触時間30分の銀イオン溶出量を示している。
結果は以下の基準により評価した。実用上「A」又は「B」が好ましい。
(評価基準)
A:抽出液と30分間接触させたときの銀イオン溶出量が、20ng/cm以上だった。
B:抽出液と30分間接触させたときの銀イオン溶出量が、15ng/cm以上20ng/cm未満だった。
C:抽出液と30分間接触させたときの銀イオン溶出量が、15ng/cm未満だった。
〔抗菌性〕
JIS−Z−2801:2010に準拠し、被検菌には大腸菌を使用し、菌液への接触時間を3時間に変更して試験を実施した。試験後の菌数(個/cm)を測定し、以下の基準に従って評価を行った。実用上「A」又は「B」が好ましい。
(評価基準)
A:生菌数が5個/cm2未満であった。
B:生菌数が5個/cm2以上10個/cm2未満だった。
C:生菌数が10個/cm2以上だった。
〔ハードコート性〕
抗菌膜のハードコート性は以下の方法により評価した。
鉛筆引っかき硬度試験機(安田精機製作所社製「553−M」)を用いて、抗菌膜付き基材の抗菌膜の鉛筆硬度を測定した。試験は、JIS K 5600に準拠して実施した。
結果は以下の基準に基づいて評価した。実用上「A」又は「B」が好ましい。
(評価基準)
A:抗菌膜の鉛筆硬度が、2H以上であった。
B:抗菌膜の鉛筆硬度が、H以上2H未満であった。
C:抗菌膜の鉛筆硬度が、H未満であった。
〔耐カール性〕
上記抗菌膜付き基材を10cm角にカットして試験片を得た。上記試験片を平らな台に静置し、四隅の浮き上がりをそれぞれ測定し、その最大値をカール値とした。
耐カール性は以下の基準により評価した。実用上「A」又は「B」が好ましい。
(評価基準)
A:カール値が、10mm以下だった。
B:カール値が、10mm超15mm以下だった。
C:カール値が、15mm超だった。
表3−1に示した結果から、銀を含有する抗菌剤と、親水性基を含有するモノマーと、水不溶性の含窒素化合物とを含有する実施例の抗菌組成物は所望の効果を有することがわかった。一方で、表3−2に示した結果から、比較例の抗菌組成物は上記効果を有していないことがわかった。
抗菌組成物中における水不溶性の含窒素化合物の含有量に対する、銀の含有量の質量比が0.02〜0.3である実施例2の抗菌組成物を用いて作製した抗菌膜は、実施例1の抗菌組成物を用いて作製した抗菌膜と比較して、より優れた銀イオンの徐放性、及び抗菌性を有していた。また、実施例2の抗菌組成物は、実施例6の抗菌組成物と比較してより優れた安定性を有しており、得られる抗菌膜はより優れた銀イオンの徐放性、及び抗菌性を有していた。
水不溶性の含窒素化合物が増粘剤である実施例4、及び実施例7の抗菌組成物は、実施例22の抗菌組成物と比較して、より優れた安定性を有していた(より沈降しにくかった)。
水不溶性の含窒素化合物がウレタン結合を有する実施例4の抗菌組成物は、実施例7の抗菌組成物と比較して、より優れた安定性を有しており(より変色しにくかった)、得られる抗菌膜は、より優れた銀イオンの徐放性を有していた。
銀を含有する抗菌剤がリン酸銀抗菌剤又はゼオライト銀抗菌剤である実施例8、及び9の抗菌組成物は、実施例10の抗菌組成物と比較してより優れた安定性を有しており(より変色しにくかった)、得られる抗菌膜はより優れた銀イオンの徐放性を有していた。
親水性基を含有するモノマーを2種以上含有する実施例4の抗菌組成物は、実施例14の抗菌組成物と比較して、得られる抗菌膜がより優れた銀イオンの徐放性を有し、かつ、より優れた抗菌性を有していた。
親水性基を含有するモノマーのうち、少なくとも1種が1分子中に少なくとも1個のポリオキシアルキレン基と2個以上の重合性基とを含有する実施例4の抗菌組成物は、実施例16の抗菌組成物と比較して、得られる抗菌膜がよりすぐれたハードコート性、及び耐カール性を有していた。
膜厚が1〜10μmである、実施例19及び実施例20の抗菌膜は、実施例18の抗菌膜と比較してより優れたハードコート性を有し、実施例21の抗菌膜と比較してより優れた耐カール性を有していた。

Claims (14)

  1. 銀を含有する抗菌剤と、
    親水性基を含有するモノマーと、
    水不溶性の含窒素化合物とを含有し、
    前記水不溶性の含窒素化合物の含有量に対する、前記銀の含有量の質量比が0.02〜0.3であり、
    前記銀を含有する抗菌剤が、担体と前記担体上に担持された銀とを含有し、
    前記水不溶性の含窒素化合物が、シアノ基、アミノ基、アジド基、アゾ基、アミド基、 ウレタン結合、ウレア基、及び、窒素原子を含有する芳香族性複素環基からなる群より選 択される少なくとも1種の置換基を有する、抗菌組成物。
  2. 前記水不溶性の含窒素化合物が、アミド基、ウレタン結合、ウレア基、及び、窒素原子 を含有する芳香族性複素環基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基を有する 、請求項1に記載の抗菌組成物。
  3. 前記水不溶性の含窒素化合物がウレタン結合を含有する、請求項1又は2に記載の抗菌組成物。
  4. 前記水不溶性の含窒素化合物をプロピレングリコールモノメチルエーテルに溶解させ固形分1質量%の溶液としたとき、前記溶液の回転粘度計を用いて測定した25℃における粘度が10mPa・s以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗菌組成物。
  5. 前記担体が、リン酸塩及びゼオライトからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜のいずれか一項に記載の抗菌組成物。
  6. 前記親水性基を含有するモノマーを2種以上含有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の抗菌組成物。
  7. 前記親水性基を含有するモノマーのうち少なくとも1種が、1分子中に、
    少なくとも1個のポリオキシアルキレン基と、
    2個以上の重合性基とを含有する、請求項に記載の抗菌組成物。
  8. 前記親水性基を含有するモノマーが、1分子中に、
    少なくとも1個のポリオキシアルキレン基と、
    2個以上の重合性基とを含有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の抗菌組成物。
  9. 請求項1〜のいずれか一項に記載の抗菌組成物を硬化して得られる抗菌膜。
  10. 膜厚が1〜10μmである、請求項に記載の抗菌膜。
  11. 基材と請求項又は10に記載の抗菌膜とを備える抗菌膜付き基材。
  12. 基材の表面に、請求項1〜のいずれか一項に記載の抗菌組成物を塗布して抗菌組成物層を形成する工程と、
    前記抗菌組成物層を硬化させて抗菌膜を得る工程とを含有する抗菌膜の製造方法。
  13. 基材の表面に、請求項又は10に記載の抗菌膜を形成する工程を含有する抗菌膜付き基材の製造方法。
  14. 前記抗菌膜を形成する工程が、
    前記基材の表面に、請求項1〜のいずれか一項に記載の抗菌組成物を塗布して抗菌組成物層を形成し、前記抗菌組成物層を硬化させて抗菌膜を得る工程である、請求項12に記載の抗菌膜付き基材の製造方法。
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