JP2022077137A - 抗ウイルス複合膜形成用キット、抗ウイルス複合膜、および抗ウイルス複合膜付き基材 - Google Patents

抗ウイルス複合膜形成用キット、抗ウイルス複合膜、および抗ウイルス複合膜付き基材 Download PDF

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尚俊 佐藤
Hisatoshi Sato
優介 畠中
Yusuke Hatanaka
良蔵 垣内
Ryozo Kakiuchi
惇平 鈴木
Jumpei SUZUKI
彩子 松本
Ayako Matsumoto
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Abstract

【課題】 長期間の使用に耐えうる耐擦性と優れた抗ウイルス性とを有する抗ウイルス複合膜を提供する。【解決手段】 有機系の抗ウイルス剤および無機系の抗ウイルス剤からなる群から選択される少なくとも1種の抗ウイルス剤と、親水性基を有するモノマーと、を含有する抗ウイルス膜形成用組成物と、含フッ素化合物を含有する機能層形成用組成物と、機能層形成用組成物を用いて形成される機能層の表面に海島構造を付与するための海島構造付与剤と、を有する抗ウイルス複合膜形成用キット。【選択図】なし

Description

本発明は、抗ウイルス複合膜形成用キット、抗ウイルス複合膜、および抗ウイルス複合膜付き基材に関する。
タッチパネル等の物品が細菌やウイルス等によって汚染されることを防止するための技術として、上記物品(以下、「基材」ともいう。)の表面に抗菌、抗ウイルス膜を設ける技術が注目されている。また、昨今の新型コロナウイルス(SARS-CoV2)によるコロナ禍を受け、タッチパネルメーカー等から、製品への標準搭載を視野に入れた、高耐久性の抗ウイルス膜を要望する声が上がっている。
特許文献1には、親水性基を含有するモノマーと銀を含有する抗菌剤とを含有する組成物を基材上の所定の位置に塗布して塗膜を形成し、塗膜に硬化処理を施すことにより抗菌膜を形成した、抗菌膜付き基材が記載されている。
国際公開2018/016207号
本発明者らは、特許文献1に記載された抗菌膜付き基材の抗ウイルス性、および耐擦性について検討した。その結果、特許文献1に記載された抗菌膜付き基材は、抗ウイルス性は示すものの、長期間に亘る耐擦性に改善の余地があることを見出した。
本発明は、長期間の使用に耐えうる耐擦性と優れた抗ウイルス性とを有する抗ウイルス複合膜を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した。その結果、抗ウイルス複合膜の最表層に、滑り性と海島構造とを備える機能層を形成することで、抗ウイルス性と高い耐擦性とを両立できることを見出し、本発明を完成させた。
上記課題を達成することができた本発明を以下に示す。
[1]有機系の抗ウイルス剤および無機系の抗ウイルス剤からなる群から選択される少なくとも1種の抗ウイルス剤と、親水性基を有するモノマーと、を含有する抗ウイルス膜形成用組成物と、
含フッ素化合物を含有する機能層形成用組成物と、
機能層形成用組成物を用いて形成される機能層の表面に海島構造を付与するための海島構造付与剤と、
を有する抗ウイルス複合膜形成用キット。
[2]無機系の抗ウイルス剤が銀を含有する抗ウイルス剤である[1]に記載の抗ウイルス複合膜形成用キット
[3]銀を含有する抗ウイルス剤が、担体と前記担体上に担持された銀とを含有し、
担体が、リン酸塩及びゼオライトからなる群から選択される少なくとも1種である、[2]に記載の抗ウイルス複合膜形成用キット。
[4]抗ウイルス膜形成用組成物が親水性基を有するモノマーを2種以上含有する[1]~[3]のいずれかに記載の抗ウイルス複合膜形成用キット。
[5]有機系の抗ウイルス剤および無機系の抗ウイルス剤からなる群から選択される少なくとも1種の抗ウイルス剤と、親水性基を有するモノマーと、を含有する抗ウイルス膜形成用組成物を硬化した抗ウイルス膜と、
含フッ素化合物を含有する機能層形成用組成物を用いて形成された機能層と
を有し、機能層の表面が海島構造を有する抗ウイルス複合膜。
[6]抗ウイルス膜の膜厚が1~15μmである、[5]に記載の抗ウイルス複合膜。
[7]機能層の膜厚みが0.1~4.0μmである、[5]又は[6]に記載の抗ウイルス複合膜。
[8]基材と[5]~[7]のいずれかに記載の抗ウイルス複合膜とを備える抗ウイルス複合膜付き基材。
本発明によれば、優れた抗ウイルス性と高い耐擦性とを備えた抗ウイルス複合膜を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を含有しないものと共に置換基を含有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を含有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を含有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタアクリレートを表す。また、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルを表す。
一実施態様に係る抗ウイルス複合膜は、有機系の抗ウイルス剤および無機系の抗ウイルス剤からなる群から選択される少なくとも1種の抗ウイルス剤と、親水性基を有するモノマーと、を含有する抗ウイルス膜形成用組成物を硬化した抗ウイルス膜と、含フッ素化合物を含有する機能層形成用組成物を用いて形成された機能層とを有し、前記機能層の表面が海島構造を有する。
抗ウイルス複合膜が本発明の効果を奏する機序は必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下のとおり推測している。なお、本発明は、下記の機序により効果が得られるものに限定されるものではない。
本発明者らは、特許文献1に記載された抗菌膜付き基材が、耐擦性に改善の余地がある原因について検討した。その結果、上記原因が、抗菌/抗ウイルス性を発現させるために設けられた、親水性を有するバインダにあることを初めて見出した。すなわち、抗菌膜内部から銀イオンが溶出するためには、親水性を有し、かつ膜中を水分が容易に移動できるような比較的緩い3次元架橋を有することが抗菌膜に求められるところ、このような抗菌膜は膜強度が低くなっていた。そこで、抗菌膜の表層に、耐擦性を有する機能層を設けることを検討した。
耐擦性を有する機能層としては、含フッ素材料を含有する耐擦層が一般的に挙げられる。しかしながら、このような耐擦層を抗菌膜の表層に設けた場合、含フッ素材料が耐擦層の最表層に偏在することにより膜内外の水分移動が阻害され、その結果として銀イオンの溶出が阻害されることとなっていた。
本発明者らが鋭意検討したところ、この課題を解決するために、耐擦層を海島構造で形成して、膜内外の水分移動の経路を確保することが有用であることを見出した。水分移動の経路が確保されることで、膜中の銀イオン溶出阻害を抑止することができ、抗ウイルス性を発現することができると推測される。
以下、抗ウイルス複合膜(抗ウイルス膜と機能層)について詳細に説明する。
[抗ウイルス膜]
抗ウイルス膜は、有機系の抗ウイルス剤および無機系の抗ウイルス剤からなる群から選択される少なくとも1種の抗ウイルス剤と、親水性基を有するモノマーと、を含有する抗ウイルス膜形成用組成物を用いて形成される。
<抗ウイルス剤>
有機系の抗ウイルス剤としては、たとえば、界面活性剤系、フェノール系、アルデヒド系、カルボン酸系、エステル系、エーテル系、ニトリル系、過酸化物系、ハロゲン系、ピリジン系、キノリン系、トリアジン系、イソチアゾロン系、イミダゾール系、チアゾール系、アニリド系、ピグアナイド系、ジスルフィド系、チオカーバメイト系、植物抽出系の抗ウイルス剤が挙げられる。抗ウイルス膜形成用組成物中、これらの有機系の抗ウイルス剤は1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
無機系のウイルス剤としては、例えば、銀、銅、亜鉛、アルミニウム、鉄、鉛、ビスマス、チタン、錫、又はニッケル等の金属を含有する抗ウイルス剤が挙げられる。金属の形態としては特に制限されず、金属粒子、金属イオン、及び金属塩(金属錯体を含む)等の形態が挙げられる。
金属を含有する抗ウイルス剤は、担体と担体上に担持された金属とを含有する金属担持単体であってもよい。なお、担体の態様としては銀系抗ウイルス剤の担体として後述するものが挙げられる。
無機系のウイルス剤として、金属を含有する抗ウイルス剤の他に、光触媒が挙げられる。光触媒としては、CdS、ZnS、In 、PbS、Cu S、MoS 、WS 、Sb 、Bi 、ZnCdS 等の硫化物半導体; CdSe、In Se 、WSe 、HgSe、PbSe、CdTe等の金属カルコゲナイト; TiO、ZnO、WO 、CdO、In 、AgO、MnO 、Cu O、Fe 、V 、SnO等の酸化物半導体; GaAs、Si、Se、Cd 、Zn 等の硫化物と酸化物以外の半導体等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはCdS、ZnS等の硫化物半導体; 及びTiO 、ZnO、SnO 、WO 等の酸化物半導体が挙げられ、より好ましくはTiO 、ZnO、SnO 、WO 等の酸化物半導体が挙げられ、さらに好ましくはTiO 、及びZnOが挙げられ、よりさらに好ましくはTiOが挙げられる。
その他にも、水酸化物が挙げられる。水分との反応でアルカリ性を示す材料として、Ca(OH)、Mg(OH)、Mn(OH)、Fe(OH)、Zn(OH)等が挙げられる。抗ウイルス膜形成用組成物中、これらの無機系の抗ウイルス剤は1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
抗ウイルス剤として有機系の抗ウイルス剤を用いる場合は、抗ウイルス剤の含有量は特に制限されないが、得られる抗ウイルス膜の機械的強度がより優れ、本発明の効果がより優れる点で、抗ウイルス膜形成用組成物の全固形分に対して0.1~50質量%であるのが好ましく、1~25質量%であるのがより好ましい。
また、無機系の抗ウイルス剤を用いる場合は、抗ウイルス剤の含有量は特に制限されないが、得られる抗ウイルス膜の機械的強度がより優れ、本発明の効果がより優れる点で、抗ウイルス組成物の全固形分に対して0.01~60質量%であるのが好ましく、0.1~30質量%であるのがより好ましい。
無機系の抗ウイルス剤としては、銀を含有する抗ウイルス剤が好ましい。以下、銀を含有する抗ウイルス剤について詳細に説明する。
<銀を含有する抗ウイルス剤(銀系抗ウイルス剤)>
銀を含有する抗ウイルス剤としては、特に制限されず、公知の銀系抗ウイルス剤を用いることができる。
また、銀の形態は特に制限されず、例えば、金属銀、銀イオン、及び銀塩(銀錯体を含む)等が挙げられる。なお、本明細書では、銀錯体は銀塩の範囲に含まれる。
銀塩としては、特に制限されないが、例えば、酢酸銀、アセチルアセトン酸銀、アジ化銀、銀アセチリド、ヒ酸銀、安息香酸銀、フッ化水素銀、臭素酸銀、臭化銀、炭酸銀、塩化銀、塩素酸銀、クロム酸銀、クエン酸銀、シアン酸銀、シアン化銀、(cis,cis-1,5-シクロオクタジエン)-1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロアセチルアセトン酸銀、ジエチルジチオカルバミン酸銀、フッ化銀(I)、フッ化銀(II)、7,7-ジメチル-1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロ-4,6-オクタンジオン酸銀、ヘキサフルオロアンチモン酸銀、ヘキサフルオロヒ酸銀、ヘキサフルオロリン酸銀、ヨウ素酸銀、ヨウ化銀、イソチオシアン酸銀、シアン化銀カリウム、乳酸銀、モリブデン酸銀、硝酸銀、亜硝酸銀、酸化銀(I)、酸化銀(II)、シュウ酸銀、過塩素酸銀、ペルフルオロ酪酸銀、ペルフルオロプロピオン酸銀、過マンガン酸銀、過レニウム酸銀、リン酸銀、ピクリン酸銀一水和物、プロピオン酸銀、セレン酸銀、セレン化銀、亜セレン酸銀、スルファジアジン銀、硫酸銀、硫化銀、亜硫酸銀、テルル化銀、テトラフルオロ硼酸銀、テトラヨードムキュリウム酸銀、テトラタングステン酸銀、チオシアン酸銀、p-トルエンスルホン酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀、トリフルオロ酢酸銀、及びバナジン酸銀等が挙げられる。
また、銀錯体としては特に制限されないが、例えば、ヒスチジン銀錯体、メチオニン銀錯体、システイン銀錯体、アスパラギン酸銀錯体、ピロリドンカルボン酸銀錯体、オキソテトラヒドロフランカルボン酸銀錯体、及びイミダゾール銀錯体等が挙げられる。
なかでも、抗ウイルス膜がより優れた本発明の効果を有する点で、銀系抗ウイルス剤は、担体と担体上に担持された銀とを含む銀担持担体がより好ましい。
担体の種類は特に制限されず、リン酸亜鉛カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸アルミニウム、及びリン酸チタン等のリン酸塩、ケイ酸カルシウム、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、チタン酸カリウム、含水酸化ビスマス、含水酸化ジルコニウム、ハイドロタルサイト、及びガラス(水溶性ガラスを含む)等が挙げられる。
なかでも、抗ウイルス膜がより優れた本発明の効果を有する点で、担体としてはリン酸亜鉛カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸アルミニウム、ゼオライト、又はガラスが好ましい。
すなわち、銀を含有する抗ウイルス剤としては、抗ウイルス膜がより優れた安定性を有する点で、担体と担体上に担持された銀とを含有し、担体が、リン酸塩及びゼオライトからなる群から選択される少なくとも1種である抗ウイルス剤が好ましい。なお、好ましいリン酸塩としては、例えば、リン酸亜鉛カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸マグネシウム、及びリン酸アルミニウム等が挙げられる。
本明細書において、リン酸塩からなる担体を含有する銀系抗ウイルス剤を「リン酸銀抗ウイルス剤」という。
本明細書において、ゼオライトからなる担体を含有する銀系抗ウイルス剤を「ゼオライト銀抗ウイルス剤」という。
ゼオライトとしては、例えば、チャバサイト、モルデナイト、エリオナイト、クリノプチロライト等の天然ゼオライト、A型ゼオライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト等の合成ゼオライトが挙げられる。
銀系抗ウイルス剤の平均粒径は特に制限されないが、一般に、0.01~10μmが好ましく、0.1~2μmがより好ましい。なお、上記平均粒径は、光学顕微鏡を用いて銀系抗ウイルス剤を観察し、少なくとも10個の任意の銀系抗ウイルス剤の粒子(一次粒子)の直径を測定し、それらを算術平均した値である。
銀系抗ウイルス剤中における銀の含有量は特に制限されないが、銀系抗ウイルス剤の全質量に対して、0.1~80質量%が好ましく、0.3~40質量%がより好ましい。
抗ウイルス膜形成用組成物中における銀系抗ウイルス剤の含有量としては特に制限されないが、抗ウイルス膜形成用組成物の全固形分に対して、銀の含有量として0.001~60質量%(好ましくは、0.01~30質量%)となる量が好ましい。
<親水性基を有するモノマー(親水性モノマー)>
抗ウイルス膜形成用組成物は親水性基を含有するモノマー(以下、「親水性モノマー」ともいう。)を含有する。なお、親水性基を含有するモノマーとは、親水性基と重合性基とを含有する化合物を意図する。
親水性モノマーはバインダとしての作用を有し、上記抗ウイルス膜形成用組成物が後述する重合開始剤を含有する場合には、重合して親水性ポリマーを形成する。
抗ウイルス膜が親水性ポリマーを含有すると、抗ウイルス膜がより親水性を示し、膜内外の水分移動が容易となり、膜内の銀イオン溶出がスムーズに行われる。
親水性基としては特に制限されず、例えば、ポリオキシアルキレン基(例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、オキシエチレン基とオキシプロピレン基がブロック又はランダム結合したポリオキシアルキレン基)、アミノ基、カルボキシル基、カルボキシル基のアルカリ金属塩、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基、スルファモイル基、リン酸基、スルホン酸基、及びスルホン酸基のアルカリ金属塩等が挙げられる。
親水性モノマー中における親水性基の数は特に制限されないが、得られる抗ウイルス膜がより親水性を示す点で、2個以上が好ましく、2~6個がより好ましく、2~3個が更に好ましい。
親水性ポリマーの主鎖の構造は特に制限されず、例えば、ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、及びポリウレア等が挙げられる。
重合性基としては特に制限されず、例えば、ラジカル重合性基、カチオン重合性基、及びアニオン重合性基等が挙げられる。ラジカル重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、アクリルアミド基、ビニル基、スチリル基、及びアリル基等が挙げられる。カチオン重合性基としては、ビニルエーテル基、オキシラニル基、及びオキセタニル基等が挙げられる。なかでも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
親水性モノマー中における重合性基の数は特に制限されないが、得られる抗ウイルス膜の機械的強度がより優れる点で、2個以上が好ましく、2~6個がより好ましく、2~3個が更に好ましい。
また、親水性基を含有するモノマーが、1分子中に少なくとも1個のポリオキシアルキレン基と2個以上の重合性基とを含有することが好ましい。
抗ウイルス膜形成用組成物は、親水性モノマーを2種以上含有することが好ましい。
抗ウイルス膜形成用組成物が含有する親水性モノマーの種類の数の上限としては特に制限されず、一般に5種以下が好ましい。
親水性モノマーを2種以上含有すると、抗ウイルス膜形成用組成物により得られる抗ウイルス膜がより優れた抗ウイルス性を有する。
また、抗ウイルス膜形成用組成物が親水性モノマーを2種以上含有する場合、親水性基を含有するモノマーのうち少なくとも1種が、1分子中に少なくとも1個のポリオキシアルキレン基と2個以上の重合性基とを含有することが好ましい。
(親水性モノマーの好適態様)
親水性モノマーの好適態様の一つとしては、以下の式(1)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2022077137000001
式(1)中、Rは置換基を表す。置換基の種類は特に制限されず、公知の置換基が挙げられ、例えば、ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基(例えば、アルキル基、アリール基)、上記親水性基等が挙げられる。
は重合性基を表す。重合性基の定義は上述したものが挙げられる。
は単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基の種類は特に制限されず、例えば、-O-、-CO-、-NH-、-CO-NH-、-COO-、-O-COO-、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、及び、それらの組み合わせが挙げられる。
はポリオキシアルキレン基を表す。ポリオキシアルキレン基とは、以下の式(2)で表される基を意図する。
式(2) *-(OR-*
式(2)中、Rはアルキレン基(例えば、エチレン基、プロピレン基)を表す。mは2以上の整数を表し、2~10が好ましく、2~6がより好ましい。*は結合位置を表す。nは1~4の整数を表す。
親水性モノマーの具体例としては、ポリオキシアルキレン変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、ポリオキシアルキレン変性ビスフェノールAジアクリレートが挙げられる。
抗ウイルス膜形成用組成物中における親水性モノマーの含有量としては特に制限されないが、より優れた本発明の効果を有する抗ウイルス膜が得られる点で、抗ウイルス膜形成用組成物の全固形分に対して0.1~50質量%であるのが好ましく1~25質量%であるのがより好ましい。
親水性モノマーは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の親水性モノマーを併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
<その他の成分>
抗ウイルス膜形成用組成物は本発明の効果を奏する範囲内において、さらにその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、親水性基を含有しないモノマー、重合開始剤、溶媒、分散剤、変色防止剤、増粘剤、及び他の抗ウイルス剤(上記抗ウイルス剤をのぞく)等が挙げられる。以下では、その他の各成分の態様を説明する。
<<親水性基を含有しないモノマー>>
抗ウイルス膜形成用組成物は、親水性モノマー以外のモノマーを含有することが好ましい。
上記モノマーとは親水性基を含有しないモノマーであって、上述した親水性モノマーとは異なるモノマーを意図する。
上記モノマーとしては、特に制限されず、公知の重合性基を含有するモノマーを用いることができる。例えば、重合性基としては、上述したものが挙げられる。
なかでも、上記モノマーとしては、得られる抗ウイルス膜がより優れた機械的強度を有する点で、1分子中に重合性基を2個以上含有する多官能モノマーが好ましい。多官能モノマーはいわゆる架橋剤として作用する。
多官能モノマー中に含まれる重合性基の数は特に制限されず、得られる抗ウイルス膜がより優れた機械的強度を有する点、及び多官能モノマー自体の取扱いが容易な点で、2~10個が好ましく、2~6個がより好ましい。
多官能モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールポリアクリレート(例えば、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)、及びペンタエリスリトールテトラアクリレートが挙げられる。
抗ウイルス膜形成用組成物中における、親水性基を含有しないモノマーの含有量に対する、親水性モノマーの含有量の質量比(親水性モノマーの質量/親水性基を含有しないモノマーの質量)は特に制限されないが、得られる抗ウイルス膜の親水性の制御がしやすい点で、0.01~10が好ましく、0.1~10がより好ましい。
抗ウイルス膜形成用組成物中における、親水性モノマー、及び親水性基を含有しないモノマーの合計量としては、特に制限されないが、得られる抗ウイルス膜がより優れた汚れ除去性を有する点で、抗ウイルス膜形成用組成物の全固形分に対して、20~99.9質量%が好ましく、60~98質量%がより好ましい。
<<重合開始剤>>
抗ウイルス膜形成用組成物はさらに重合開始剤を含有することが好ましい。重合開始剤を含有する抗ウイルス膜形成用組成物により得られる抗ウイルス膜は、より優れた機械的強度を有する。
重合開始剤としては特に制限されず、公知の重合開始剤を用いることができる。
重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤、及び光重合開始剤等が挙げられる。
重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、及びフェニルフォスフィンオキシド等の芳香族ケトン類;α-ヒドロキシアルキルフェノン系化合物(BASF社製、IRGACURE184、127、2959、及び、DAROCUR1173等);フェニルフォスフィンオキシド系化合物(モノアシルフォスフィンオキサイド:BASF社製 IRGACURE TPO、ビスアシルフォスフィンオキサイド:BASF社製 IRGACURE 819);等が挙げられる。
なかでも、反応効率の点で、光重合開始剤が好ましい。
抗ウイルス膜形成用組成物中における重合開始剤の含有量としては特に制限されないが、親水性モノマー、及び親水性基を含有しないモノマーの合計100質量部に対して0.1~15質量部が好ましく、1~6質量部がより好ましい。
なお、重合開始剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の重合開始剤を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
<<溶媒>>
抗ウイルス膜形成用組成物は溶媒を含有することが好ましい。
溶媒としては特に限定されず、水及び/又は有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、及びイソペンタノール等のアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、及びプロピレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、及びエチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、及びエチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、及びジ-n-ブチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n-アミル、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸エチル、及びプロピオン酸ブチル等のエステル系溶媒等が挙げられる。溶媒は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
中でも、より均一な膜厚を有する抗ウイルス膜が得られやすい点で、溶媒は有機溶媒を含有することが好ましく、アルコール系溶媒、及び/又はグリコールエーテル系溶媒を含有することがより好ましく、アルコール系溶媒、及びグリコールエーテル溶媒を含有することが更に好ましい。
抗ウイルス膜形成用組成物の固形分としては、特に限定されないが、抗ウイルス膜形成用組成物がより優れた塗布性を有する点で、5~80質量%が好ましく、20~60質量%がより好ましい。上記固形分になるよう、抗ウイルス膜形成用組成物中に溶媒を含有することが好ましい。
溶媒は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の溶媒を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
<<分散剤、及び変色防止剤>>
抗ウイルス膜形成用組成物は、分散剤及び/又は変色防止剤を含有してもよい。
分散剤としては特に制限されず、公知の分散剤を用いることができる。
分散剤としては、例えば、DISPERBYK-180(BYK社製、水溶性、アルキロールアンモニウム塩)等が挙げられる。
変色防止剤としては特に制限されず、公知の変色防止剤を用いることができる。
変色防止剤としては、例えば、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業社製)等が挙げられる。
抗ウイルス膜形成用組成物中における分散剤の含有量としては特に制限されないが、一般的に、抗ウイルス膜形成用組成物の全固形分に対して、0.01~5質量%が好ましい。
抗ウイルス膜形成用組成物中における変色防止剤の含有量としては特に制限されないが、一般的に、抗ウイルス組成物の全固形分に対して、0.1~5質量%が好ましい。
分散剤、及び/又は変色防止剤は、それぞれ1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の分散剤、及び/又は変色防止剤を併用する場合には、合計含有量がそれぞれ上記範囲内であることが好ましい。
<<増粘剤>>
増粘剤としては特に制限されず、公知の増粘剤を用いることができる。
増粘剤としては、例えば、BYK-410(BYK社製)、DISPARLON PFA-231(楠本化成社製)、TINUVIN PS(BASF社製)等が挙げられるが、これに制限されない。
[抗ウイルス膜形成用組成物の調製方法]
抗ウイルス膜形成用組成物は、上記の各成分を混合することによって調製することができる。なお、上記成分の混合の順番は特に限定されず、たとえば、親水性モノマー、及び必要に応じて親水性基を含有しないモノマーを溶媒中で混合して混合物を得て、この混合物とその他の成分とを混合する態様であってもよい。その際、親水性モノマー、及び必要に応じて親水性基を含有しないモノマーを混合するために用いられる溶媒と、この混合物とその他の成分とを混合するために用いられる溶媒とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
また、抗ウイルス膜形成用組成物が分散剤を含む場合、金属を含む抗ウイルス剤粒子及び分散剤を先に混合して、金属を含む抗ウイルス剤粒子を分散剤中に分散させてもよい。
[抗ウイルス膜]
抗ウイルス膜は、抗ウイルス膜形成用組成物を硬化して得られる抗ウイルス膜である。
抗ウイルス膜の膜厚としては特に制限されないが、0.1~15μmが好ましく、1~10μmがより好ましい。
本明細書において、抗ウイルス膜の膜厚は、抗ウイルス膜のサンプル片を樹脂に包埋して、ミクロトームで断面を削り出し、削り出した断面を走査電子顕微鏡で観察し測定する。抗ウイルス膜の任意の10点の位置における厚みを測定し、それらを算術平均した値を意図する。
[機能層]
本発明の抗ウイルス複合膜は、抗ウイルス膜に加えて、さらに機能層を有する。機能層は、抗ウイルス膜に接して形成されているのが好ましい。
抗ウイルス複合膜が備える機能層は、含フッ素化合物を含有する機能層形成用組成物の硬化物から形成される。機能層形成用組成物は、ラジカル重合性化合物(c1)を含有してもよい。
<ラジカル重合性化合物(c1)(「化合物(c1))>
化合物(c1)は、ラジカル重合性基を有する化合物である。
化合物(c1)におけるラジカル重合性基は特に限定されず、一般に知られているラジカル重合性基を用いることができる。ラジカル重合性基としては、重合性不飽和基が挙げられ、具体的には、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。なお、上記した各基は置換基を有していてもよい。
化合物(c1)は、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましく、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることがより好ましい。
化合物(c1)の分子量は特に限定されず、モノマーでもよいし、オリゴマーでもよいし、ポリマーでもよい。
化合物(c1)の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル
(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート等が好適に例示される。
1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルが挙げられる。具体的には、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート,ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート,ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、高架橋という点ではペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、もしくはジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、又はこれらの混合物が好ましい。
化合物(c1)はポリシルセスキオキサンであっても良い。
化合物(c1)がポリシルセスキオキサンである場合、化合物(c1)は下記一般式(RSA-1)又は(RSA-2)で表される構成単位を有することが好ましい。
Figure 2022077137000002
一般式(RSA-1)及び(RSA-2)中、Lは単結合又は2価の連結基を表す。一般式(RSA-1)中、Raは水素原子又はメチル基を表す。
一般式(RSA-1)及び(RSA-2)中、Lは単結合又は2価の連結基を表す。Lが2価の連結基を表す場合、2価の連結基としては、-O-、-CO-、-COO-、-S-、-SO-、-NR-、炭素数1~20の有機連結基(例えば、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいシクロアルキレン基、置換基を有してもよいアリーレン基など)、又はこれらを2つ以上組み合わせてなる連結基などが挙げられる。上記Rは水素原子又は置換基を表す。
は単結合、又は、炭素数1~10のアルキレン基、-O-、-CO-、-COO-、-S-若しくはこれらを2つ以上組み合わせてなる連結基であることが好ましく、単結合、又は、炭素数1~6のアルキレン基、-O-、-CO-、-COO-、-S-若しくはこれらを2つ以上組み合わせてなる連結基であることがより好ましい。
化合物(c1)がポリシルセスキオキサンである場合、化合物(c1)における上記一般式(RSA-1)又は(RSA-2)で表される構成単位の含有量は、化合物(c1)に含まれる構成単位の全体に対して、10モル%以上100モル%以下であることが好ましく、30モル%以上100モル%以下であることがより好ましく、50モル%以上100モル%以下であることが更に好ましい。
化合物(c1)がポリシルセスキオキサンである場合、化合物(c1)は、上記一般式(RSA-1)又は(RSA-2)で表される構成単位に加えて、その他の任意の構成単位を有していても良い。
化合物(c1)がポリシルセスキオキサンである場合、化合物(c1)のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、好ましくは500~6000であり、より好ましくは1000~4500であり、更に好ましくは1500~3000である。
化合物(c1)がポリシルセスキオキサンである場合、化合物(c1)のGPCによる標準ポリスチレン換算の分子量分散度(Mw/Mn)は、例えば1.0~4.0であり、好ましくは1.1~3.7であり、より好ましくは1.2~3.0であり、さらに好ましくは1.3~2.5である。Mwは重量平均分子量を表し、Mnは数平均分子量を表す。
化合物(c1)の重量平均分子量、数平均分子量及び分子量分散度の測定方法は、前述のポリマー(S)の重量平均分子量及び分子量分散度の測定方法と同様である。
化合物(c1)は一種のみ用いてもよく、構造の異なる二種以上を併用してもよい。
機能層形成用組成物中の化合物(c1)の含有率は、機能層形成用組成物中の全固形分に対して、80質量%以上99.9質量%以下であることが好ましく、85質量%以上99.7質量%以下がより好ましく、90質量%以上99.5質量%以下が更に好ましい。
<含フッ素化合物>
機能層形成用組成物中に含まれる含フッ素化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーいずれでもよい。含フッ素化合物は、機能層中でラジカル重合性化合物(c1)との結合形成あるいは相溶性に寄与する置換基を有していることが好ましい。上記置換基は同一であっても異なっていてもよく、複数個あることが好ましい。上記置換基は重合性基であることが好ましく、ラジカル重合性、カチオン重合性、アニオン重合性、縮重合性及び付加重合性のうちいずれかを示す重合性反応基であることがより好ましい。好ましい置換基の例としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、ヒドロキシ基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシ基、アミノ基等が挙げられる。置換基としては、ラジカル重合性基が好ましく、アクリロイル基又はメタクリロイル基が特に好ましい。
含フッ素化合物はフッ素原子を含まない化合物とのポリマーであってもオリゴマーであってもよい。
含フッ素化合物は、下記一般式(F)で表されるフッ素系化合物が好ましい。
一般式(F): (R)-[(W)-(Rnfmf
(式中、Rは(パー)フルオロアルキル基又は(パー)フルオロポリエーテル基、Wは単結合又は連結基、Rは重合性不飽和基を表す。nfは1~3の整数を表す。mfは1~3の整数を表す。)
一般式(F)において、Rは重合性不飽和基を表す。重合性不飽和基は、紫外線や電子線などの活性エネルギー線を照射することによりラジカル重合反応を起こしうる不飽和結合を有する基(すなわち、ラジカル重合性基)であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、アリル基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、及びこれらの基における任意の水素原子がフッ素原子に置換された基が好ましく用いられる。
一般式(F)において、Rは(パー)フルオロアルキル基又は(パー)フルオロポリエーテル基を表す。
ここで、(パー)フルオロアルキル基は、フルオロアルキル基及びパーフルオロアルキル基のうち少なくとも1種を表し、(パー)フルオロポリエーテル基は、フルオロポリエーテル基及びパーフルオロポリエーテル基のうち少なくとも1種を表す。耐擦性の観点では、R中のフッ素含有率は高いほうが好ましい。
(パー)フルオロアルキル基は、炭素数1~20の基が好ましく、より好ましくは炭素数1~10の基である。 (パー)フルオロアルキル基は、直鎖構造(例えば-CFCF、-CH(CFH、-CH(CFCF、-CHCH(CFH)であっても、分岐構造(例えば-CH(CF、-CHCF(CF、-CH(CH)CFCF、-CH(CH)(CFCFH)であっても、脂環式構造(好ましくは5員環又は6員環で、例えばパーフルオロシクロへキシル基及びパーフルオロシクロペンチル基並びにこれらの基で置換されたアルキル基)であってもよい。
(パー)フルオロポリエーテル基は、(パー)フルオロアルキル基がエーテル結合を有している場合を指し、1価でも2価以上の基であってもよい。フルオロポリエーテル基としては、例えば-CHOCHCFCF、-CHCHOCHH、-CHCHOCHCH17、-CHCHOCFCFOCFCFH、フッ素原子を4個以上有する炭素数4~20のフルオロシクロアルキル基等が挙げられる。また、パーフルオロポリエーテル基としては、例えば、-(CFO)pf-(CFCFO)qf-、-[CF(CF)CFO]pf―[CF(CF)]qf-、-(CFCFCFO)pf-、-(CFCFO)pf-などが挙げられる。
上記pf及びqfはそれぞれ独立に0~20の整数を表す。ただしpf+qfは1以上の整数である。
pf及びqfの総計は1~83が好ましく、1~43がより好ましく、5~23がさらに好ましい。
上記含フッ素化合物は、耐擦性に優れるという観点から-(CFO)pf-(CFCFO)qf-で表されるパーフルオロポリエーテル基を有することが特に好ましい。
本発明においては、含フッ素化合物は、パーフルオロポリエーテル基を有し、かつ重合性不飽和基を一分子中に複数有することが好ましい。
一般式(F)において、Wは連結基を表す。Wとしては、例えばアルキレン基、アリーレン基及びヘテロアルキレン基、並びにこれらの基が組み合わさった連結基が挙げられる。これらの連結基は、更に、オキシ基、カルボニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルイミノ基及びスルホンアミド基等、並びにこれらの基が組み合わさった官能基を有してもよい。
Wとして、好ましくは、エチレン基、より好ましくは、カルボニルイミノ基と結合したエチレン基である。
含フッ素化合物のフッ素原子含有量には特に制限は無いが、20質量%以上が好ましく、30~70質量%がより好ましく、40~70質量%がさらに好ましい。
好ましい含フッ素化合物の例としては、ダイキン化学工業(株)製のR-2020、M-2020、R-3833、M-3833及びオプツールDAC(以上商品名)、DIC社製のメガファックF-171、F-172、F-179A、RS-78、RS-90、ディフェンサMCF-300及びMCF-323(以上商品名)が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
耐擦性の観点から、一般式(F)において、nfとmfの積(nf×mf)は2以上が好ましく、4以上がより好ましい。
重合性不飽和基を有する含フッ素化合物の重量平均分子量(Mw)は、分子排斥クロマトグラフィー、例えばゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定できる。
含フッ素化合物のMwは400以上50000未満が好ましく、400以上30000未満がより好ましく、400以上25000未満が更に好ましい。
含フッ素化合物の含有率は特に限定されないが、機能層形成用組成物中の全固形分に対して、0.01~5質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましく、0.5~5質量%であることが更に好ましく、0.5~2質量%であることが特に好ましい。
<ラジカル重合開始剤>
機能層形成用組成物は、ラジカル重合開始剤を含むことが好ましい。
ラジカル重合開始剤は一種のみ用いてもよく、構造の異なる二種以上を併用してもよい。また、ラジカル重合開始剤は光重合開始剤でも良く、熱重合開始剤でも良い。
ラジカル重合開始剤としては、公知のいずれのラジカル重合開始剤でも用いることができる。
機能層形成用組成物中のラジカル重合開始剤の含有率は、特に限定されるものではないが、例えばラジカル重合性化合物(c1)100質量部に対して、0.1~200質量部が好ましく、1~50質量部がより好ましい。
<溶媒>
機能層形成用組成物は、溶媒を含んでいても良い。
溶媒としては、前述の抗ウイルス膜形成用組成物が含んでいても良い溶媒と同様である。
機能層形成用組成物における溶媒の含有率は、機能層形成用組成物の塗布適性を確保できる範囲で適宜調整することができる。例えば、機能層形成用組成物の全固形分100質量部に対して、50~500質量部とすることができ、好ましくは80~200質量部とすることができる。
機能層形成用組成物は、通常、液の形態をとる。
機能層形成用組成物の固形分の濃度は、通常、10~90質量%であり、好ましくは15~80質量%であり、特に好ましくは20~70質量%である。
<その他添加剤>
機能層形成用組成物は、上記以外の成分を含有していてもよく、たとえば、無機粒子、有機粒子、レベリング剤、防汚剤、帯電防止剤、溶媒等を含有していてもよい。
機能層形成用組成物は、以上説明した各種成分を同時に又は任意の順序で順次混合することにより調製することができる。調製方法は特に限定されるものではなく、調製には公知の攪拌機等を用いることができる。
[機能層の厚み]
機能層の膜厚は、5.0μm未満であることが好ましく、0.1~4.0μmであることがより好ましく、0.1~3.0μmであることが更に好ましい。
<耐擦傷性>
抗ウイルス複合膜は、優れた耐擦性を有する。
抗ウイルス複合膜は、#0000番のスチールウールで1kg/2cm×2cmの荷重をかけながら、機能層の表面を往復2000回擦った場合に傷が生じないものであることが好ましく、往復2500回擦った場合に傷が生じないことがより好ましい。
耐擦性は具体的には実施例に記載した方法で測定した。
[海島構造付与剤]
機能層は、抗ウイルス膜に対向する表面とは反対側の表面に海島構造を有している。本発明の抗ウイルス複合膜形成用キットは、機能層に海島構造を付与するための付与剤を備えている。このような海島構造付与剤としては、たとえば水、グリセロール、エチレングリコール、メタノールなどが挙げられる。機能層表面を海島構造化するための方法については後述する。
[抗ウイルス複合膜付き基材]
抗ウイルス複合膜付き基材は、基材と、抗ウイルス膜と、機能層とをこの順に有する積層体であって、抗ウイルス膜が抗ウイルス膜形成用組成物の硬化物を含み、機能層が機能層形成用組成物の硬化物を含む。
<基材>
基材は、抗ウイルス複合膜を支持する役割を果たすものであれば、その種類は特に制限されない。基材は、各種装置の一部(例えば、前面板)を構成するものであってもよい。
基材の形状は特に制限されないが、板状、フィルム状、シート状、チューブ状、繊維状、及び粒子状等が挙げられる。抗ウイルス複合膜が配置される基材表面の形態は特に制限されず、平坦面、凹面、凸面、及び、これらの組み合わせ等が挙げられる。
基材を構成する材料は特に制限されず、例えば、金属、ガラス、セラミックス、及びプラスチック(樹脂)等が挙げられる。なかでも、取り扱い性の点で、プラスチックが好ましい。言い換えれば、樹脂基材が好ましい。
[抗ウイルス複合膜付き基材の製造方法]
抗ウイルス複合膜付き基材は、下記工程(I)~(V)を経て製造することができる。
(I)基材上に、抗ウイルス膜形成用組成物を塗布して抗ウイルス塗膜を形成する工程
(II)抗ウイルス塗膜を硬化して、抗ウイルス膜を形成する工程
(III)抗ウイルス膜上に、機能層形成用組成物を塗布して機能層塗膜を形成する工程
(IV)機能層塗膜を海島構造化する工程
(V)海島構造化した機能層塗膜を硬化して機能層を形成する工程
-工程(I)-
工程(I)は、基材上に、抗ウイルス膜形成用組成物を塗布して抗ウイルス塗膜を形成する工程である。
抗ウイルス膜形成用組成物の塗布方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができる。例えば、スプレー法、押し出しコーティング法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、コンマコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ダイコート法等が挙げられる。
抗ウイルス塗膜の膜厚としては特に制限されないが、乾燥膜厚として、0.1~15μmが好ましい。
また、抗ウイルス膜形成用組成物を塗布した後、溶媒を除去するために加熱処理を行ってもよい。その場合の加熱処理の条件としては特に制限されず、例えば、加熱温度としては、50~200℃が好ましく、加熱時間としては、15~600秒が好ましい。
なお、工程Iにおいて用いることができる基材としては、上述したものが挙げられる。
-工程(II)-
工程(II)は、抗ウイルス塗膜を硬化する工程である。
抗ウイルス塗膜の硬化は、光(典型的には電離放射線)の照射又は加熱により行われることが好ましい。
光(典型的には電離放射線)の種類については、特に制限はなく、X線、電子線、紫外線、可視光、赤外線などが挙げられるが、紫外線が好ましく用いられる。例えば抗ウイルス塗膜が紫外線硬化性であれば、紫外線ランプにより10mJ/cm~2000mJ/cmの照射量の紫外線を照射して硬化性化合物を硬化するのが好ましい。50mJ/cm~1800mJ/cmであることがより好ましく、100mJ/cm~1500mJ/cmであることが更に好ましい。紫外線ランプ種としては、メタルハライドランプや高圧水銀ランプ等が好適に用いられる。
熱により硬化する場合、温度に特に制限はないが、50~200℃が好ましく、80~120℃がより好ましい。加熱処理の時間としては特に制限されないが、例えば、15~600秒が好ましい。
-工程(III)-
工程(III)は、抗ウイルス膜上に、機能層形成用組成物を塗布して機能層塗膜を形成する工程である。
機能層形成用組成物の塗布方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができる。例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ダイコート法等が挙げられる。
-工程(IV)-
工程(IV)は機能層塗膜を海島構造化する工程である。海島構造化する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができるが、例えば、工程(III)後の機能層塗膜上に、海島構造付与剤(たとえば水)をミスト状に噴霧することで、機能層塗膜上に微小な液滴を形成する。機能層塗膜内に含まれるフッ素成分は、塗布~硬化プロセスの間に、空気界面側へ移動して膜表面に偏在するが、親水性の液滴部分を避けるようにフッ素が分布するため、海島構造を形成することが可能である。
-工程(V)-
工程(V)は、機能層塗膜を硬化する工程である。
機能層塗膜の硬化は、光(典型的には電離放射線)の照射又は加熱により行われることが好ましい。
光(典型的には電離放射線)の種類については、特に制限はなく、X線、電子線、紫外線、可視光、赤外線などが挙げられるが、紫外線が好ましく用いられる。例えば機能層塗膜が紫外線硬化性であれば、紫外線ランプにより10mJ/cm~2000mJ/cmの照射量の紫外線を照射して硬化性化合物を硬化するのが好ましい。50mJ/cm~1800mJ/cmであることがより好ましく、100mJ/cm~1500mJ/cmであることが更に好ましい。紫外線ランプ種としては、メタルハライドランプや高圧水銀ランプ等が好適に用いられる。
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されない。
[抗ウイルス膜形成用組成物の調製]
表1に記載の成分を表中の添加量で混合して抗ウイルス膜形成用組成物を得た。
表中の各成分は以下の通りである。
・NKエステル(登録商標)A-9550(新中村化学工業社製;ジペンタエリスリトールポリアクリレート;1分子中に重合性基を複数含有する多官能アクリレート化合物、具体的には5官能アクリレートと6官能アクリレートの混合物;親水性基を含有しないモノマーに該当する。)
・NKエステル A-GLY-9E(新中村化学工業社製;エトキシ化されたグリセリントリアクリレート;1分子中に、ポリオキシアルキレン基とアクリロイル基とをそれぞれ3個ずつ含有する;親水性モノマーに該当する。)
・SPAK;3-スルホプロピルアクリレートカリウム塩(Polysciences社製;1分子中に、スルホン酸基のアルカリ金属塩とアクリロイル基とを1個ずつ含有する;親水性モノマーに該当する。)
・Irgacure(登録商標)184(BASF社製;1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン;アルキルフェノン系光重合開始剤に該当する。)
・ノバロンAG300(東亜合成社製;リン酸Zr系Ag;銀含有量は3質量%;銀系抗ウイルス剤に該当する;リン酸銀抗ウイルス剤に該当する;固形分100質量%)
・バクテライトMP102SVC13(富士ケミカル社製;リン酸CaZn系Ag;銀含有量は1質量%、銀系抗ウイルス剤に該当する;リン酸銀抗ウイルス剤に該当する;固形分25質量%)
・イオンピュアWPA(石塚硝子社製;ガラス系Ag;銀含有率は1.6質量%;銀系抗ウイルス剤に該当する;固形分100質量%)
・DISPERBYK-180(BYK Chemie社製;アルキロールアンモニウム塩;分散剤に該当する;固形分50質量%(イソプロピルアルコール希釈))
・トクソーIPA(isopropyl alcohol)工業用(商品名)(トクヤマ社製;アルコール系溶媒に該当する)
なお、上記表中「質量%」とは、混合物の全質量に対する質量%を示している。
Figure 2022077137000003
[機能層形成用組成物の調製]
表2に記載の成分を表中の添加量で混合して機能層形成用組成物を得た。
表中の各成分は以下の通りである。
・DPHA-76(東新油脂社製;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物;モノマーに該当する)
・RS-90(DIC社製;1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンと反応性含フッ素オリゴマーの混合物;含フッ素化合物に該当する)
・Irgacure(登録商標)127(BASF社製;ビスヒドロキシアルキルアセトフェノン誘導体;重合開始剤に該当する)
・MEK:メチルエチルケトン
なお、上記表中「質量%」とは、混合物の全質量に対する質量%を示している。
Figure 2022077137000004
[抗ウイルス膜付き基材の作製]
表1および表2に記載の抗ウイルス膜形成用組成物および機能層形成用組成物を用いて、以下の方法より抗ウイルス複合膜付き基材を得た。
すなわち、表1に記載の抗ウイルス膜形成用組成物を、PET(Polyethylene terephthalate)シート(東洋紡社製コスモシャインA4300)の表面上に塗布し、90℃で1分乾燥させた。その後、UV(ultraviolet)照射により親水性モノマー等を硬化させて、厚み5μmの抗ウイルス膜が付いた基材を形成した。
[抗ウイルス複合膜付き基材の作製]
上記で得られた抗ウイルス膜付き基材が有する抗ウイルス膜の表面上に、機能層形成用組成物を塗布し、120℃で1分乾燥させた後、UV(ultraviolet)照射によりモノマー等を硬化させて、厚み0.9μmの機能層を形成し、抗ウイルス複合膜付き基材を得た。
なお、比較例1、比較例2以外は、機能層形成用組成物を塗布した後に、塗布膜表面に水をミスト状に噴霧し、海島構造を形成した。比較例2は水を噴霧しないで機能層を形成した。機能層の有無、海島構造の有無は表3にまとめた。
Figure 2022077137000005
[抗ウイルス複合膜の性能評価]
以下の方法により抗ウイルス複合膜の性能を評価した。結果は表4に示した。
〔抗ウイルス性〕
(i-1)
試験はISO 21702「プラスチック及び非多孔質表面の抗ウイルス活性の測定」の方法に準じて行った。具体的には、抗ウイルス複合膜付き基材から5cm×5cmの試験片を採取し、プラスチックシャーレに入れ、試験片の機能層の上に、A香港型インフルエンザウイルス(A/Hong Kong/8/68(H3N2))のウイルス液(以下、「原液」ということがある)100μLを滴下し、室温(25℃)で24時間作用させた。このとき上記試験片と上記ウイルス液との接触面積を一定にするため、上記試験片の機能層表面をポリエチレンテレフタレートフィルム(大きさ4cm×4cm)により覆った。次に、SCDLP培地10mLを添加し、ピペッティングによりウイルスを洗い出し、作用を停止させた。その後、各作用後のウイルス液の濃度が原液の10-2~10-5になるまで(各作用後のウイルス液の量を、滴下した原液の量(100μL)の10~10倍にするのと同じ濃度になるまで)MEM希釈液にて希釈し、サンプル液(原液、ウイルス液の濃度が原液の10-2、10-3、10-4、及び10-5の5種類)を作成した。続いて、作成した各サンプル液について、6穴プレートシャーレに培養したMDCK細胞(Madin-Darby canine kidney cell)にサンプル液100μLを接種し、60分間静置してウイルスを上記MDCK細胞へ吸着させ、0.7質量%寒天培地を重層し、インキュベータを使用し、温度34℃、5%COで48時間培養した後、ホルマリン固定、メチレンブルー染色を行い、形成されたプラーク数をカウントした。各サンプル液の結果から、ウイルスの感染価(PFU(Plaque-forming unit)/0.1mL)の常用対数を算出した。
(i-2)コントロールフィルムの感染価の測定
コントロールフィルムとして、PET(Polyethylene terephthalate)シート(東洋紡社製コスモシャインA4300)から5cm×5cmの試験片を採取したこと以外は、上記(i-1)と同様にして、コントロールフィルムの感染価の常用対数を算出した。
(i-3)抗ウイルス性の評価
コントロールフィルムの感染価の常用対数と抗ウイルス性フィルムの感染価の常用対数との差(以下、「対数減少値」ということがある)を抗ウイルス性の指標として算出した。なお対数減少値が3であったとは、抗ウイルス複合膜付き基材の感染価がコントロールフィルムの感染価の1/1000であったことを意味する。
(評価基準)
A:対数減少値が4以上であった。
B:対数減少値が2以上、4未満だった。
C:対象減少値が2未満だった。
〔抗ウイルス膜の水接触角〕
抗ウイルス膜付き基材が有する抗ウイルス膜表面の水接触角測定を、測定温度を25℃とし、液適法で測定した。具体的には、接触角計(使用機器:協和界面科学株式会社製 全自動接触角計DM700)を用い、以下の測定条件で測定した。
・注射針:星盛堂医療器工業K.K社製 22G
・超純水:関東化学社製、規格Ultrapur
・液安定時間:1000ms
・手法:針先から抗ウイルス膜の表面に着液した液滴の接触角を解析した。
接触角の導出方法は、θ/2法で行った。抗ウイルス膜表面に着液した水は、自らの持つ表面張力で丸くなり、球の一部を形成する。このときの形状をCCDカメラ画像として取り込み、画像処理により液滴の左右端点と頂点を見つけ、液滴画像の半径(r)と高さ(h)を求めた。求めた値を下式へ代入して接触角θを求めた。
θ=2arctan(h/r)
〔耐擦性〕
各実施例及び比較例の抗ウイルス複合膜付き基材の機能層の表面を、ラビングテスターを用いて、以下の条件で擦り試験を行うことで、耐擦性の指標とした。
評価環境条件:25℃、相対湿度60%
擦り材:スチールウール(日本スチールウール(株)製、グレードNo.#0000番) 試料と接触するテスターの擦り先端部(2cm×2cm)に巻いて、バンド固定
移動距離(片道):13cm
擦り速度:13cm/秒
荷重:250g/cm2
先端部接触面積:2cm×2cm
擦り回数:往復250回、往復2500回
擦り試験後、機能層とは逆側の面(基材の表面)に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、スチールウールと接触していた部分に傷が生じたときの擦り回数を計測し評価した。
A:往復2500回擦った場合に傷が生じない
C:往復250回擦った場合に傷が生じる
Figure 2022077137000006
表4に示した結果から、本発明の抗ウイルス複合膜は優れた抗ウイルス性と高い耐擦性を兼ね備えることがわかった。一方で、比較例の抗ウイルス複合膜は上記効果を有していないことがわかった。実施例1、実施例4、および比較例3を比較すると、抗ウイルス膜の水接触角が低く、より親水的な抗ウイルス膜を有するほど、高い抗ウイルス性能を示していた。比較例2は、海島構造を有さない機能層であるため、耐擦性は高いが、抗ウイルス膜の内外で水分の移動が阻害されるため、抗ウイルス性能が低かった。

Claims (8)

  1. 有機系の抗ウイルス剤および無機系の抗ウイルス剤からなる群から選択される少なくとも1種の抗ウイルス剤と、親水性基を有するモノマーと、を含有する抗ウイルス膜形成用組成物と、
    含フッ素化合物を含有する機能層形成用組成物と、
    前記機能層形成用組成物を用いて形成される機能層の表面に海島構造を付与するための海島構造付与剤と、
    を有する抗ウイルス複合膜形成用キット。
  2. 前記無機系の抗ウイルス剤が銀を含有する抗ウイルス剤である請求項1に記載の抗ウイルス複合膜形成用キット
  3. 前記銀を含有する抗ウイルス剤が、担体と前記担体上に担持された銀とを含有し、
    前記担体が、リン酸塩及びゼオライトからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2に記載の抗ウイルス複合膜形成用キット。
  4. 前記抗ウイルス膜形成用組成物が前記親水性基を有するモノマーを2種以上含有する請求項1~3のいずれか一項に記載の抗ウイルス複合膜形成用キット。
  5. 有機系の抗ウイルス剤および無機系の抗ウイルス剤からなる群から選択される少なくとも1種の抗ウイルス剤と、親水性基を有するモノマーと、を含有する抗ウイルス膜形成用組成物を硬化した抗ウイルス膜と、
    含フッ素化合物を含有する機能層形成用組成物を用いて形成された機能層と
    を有し、前記機能層の表面が海島構造を有する抗ウイルス複合膜。
  6. 前記抗ウイルス膜の膜厚が1~15μmである、請求項5に記載の抗ウイルス複合膜。
  7. 機能層の膜厚みが0.1~4.0μmである、請求項5又は6に記載の抗ウイルス複合膜。
  8. 基材と請求項5~7のいずれか一項に記載の抗ウイルス複合膜とを備える抗ウイルス複合膜付き基材。
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