JP6152762B2 - 活性エネルギー線硬化型金属用含水被覆材組成物及び積層品 - Google Patents
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Description
従来使用されている活性エネルギー線硬化型被覆材組成物の多くは、塗装時の作業性を向上させるために希釈溶剤として有機溶剤を含んでいる。この有機溶剤は塗装時に大気に放出され大気汚染を引き起こす一因となることから、環境保全及び大気汚染防止の観点から有機溶剤の使用量の削減が求められている。例えば、プラスチック成型品用として、溶剤として水を使用することで有機溶剤の使用量を減らした活性エネルギー線硬化型被覆材組成物が知られている。(特許文献1)
本発明の目的は、金属に対して優れた付着性を有し、金属表面のトップコートとして必要な耐擦傷性を有する硬化物層を形成できる活性エネルギー線硬化型金属用含水被覆材組成物、及びその硬化物層が積層された積層品を提供することである。
本発明の活性エネルギー線硬化型金属用含水被覆材組成物(以下、「本組成物」ともいう。)は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、及び水を含む。本組成物は、金属の表面、特に樹脂成型品の表面に設けたアルミニウム、錫、クロム等の金属薄膜を傷や汚れから保護するためのトップコートとして使用される。
(A)成分は、脂環式骨格及び/又は複素環式骨格を有する1又は2官能の(メタ)アクリレートである。
(B)成分は、アルキレンオキサイド変性グリセリントリ(メタ)アクリレートである。中でもエチレンオキサイド変性グリセリントリ(メタ)アクリレート及びプロピレンオキサイド変性グリセリントリ(メタ)アクリレートが好ましく、エチレンオキサイド変性グリセリントリ(メタ)アクリレートがより好ましい。(B)成分は、単独で、又は二種以上を併せて用いることができる。
(C)成分は、(A)成分及び(B)成分以外の(メタ)アクリレートであって、(メタ)アクリロイルオキシ基を2以上含む2官能以上の(メタ)アクリレートである。(C)成分としては、従来から知られている各種の(メタ)アクリレートモノマーや(メタ)アクリレートオリゴマーが使用出来る。例えば、ウレタンポリ(メタ)アクリレート類、エポキシポリ(メタ)アクリレート類、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート類、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、等の(メタ)アクリレート類が挙げられる。
(D)成分は、(メタ)アクリロイルオキシ基含有リン酸エステルである。(D)成分としては、例えば、カヤマーPM−21(商品名、日本化薬社製)、リン酸モノマー3PMA(大阪有機化学工業社製)、リン酸モノマー3PA(大阪有機化学工業社製)等が挙げられる。(D)成分としては、このような市販品でも、公知の方法で合成したものでもよい。
(E)成分は任意成分であり、水酸基を有するビニル系単量体単位を含む(共)重合体である。水酸基を有するビニル系単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。(E)成分としては、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレートとメチルメタクリレートを共重合したものが好ましいものとして例示できる。
本組成物には、溶剤としての水を、本組成物に含まれる単量体成分及び重合体成分の合計100質量部に対して25〜40質量部を含む。本組成物の溶剤は、水だけでもよいが、有機溶剤との混合溶剤とすることが好ましく、混合溶剤に占める水の割合は25〜45質量%が好ましい。水の使用割合は多いほど有機溶剤の使用量を低減することができ、少ないほど塗装後の溶剤乾燥時間を短くすることができる。使用する水としては、純水が好ましいが、工業的に使用されている水質であれば水道水や井戸水等も使用可能である。
本組成物は硬化させるために紫外線等の活性エネルギー線を用いる。そのため、本組成物には光重合開始剤を含有させることが効果的である。
本組成物には、その他物性を調節する目的で、(A)〜(D)成分以外の単量体及び(E)成分以外の重合体、並びにレベリング剤、消泡剤、沈降防止剤、潤滑剤、研磨剤、防錆剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤及び重合禁止剤等の添加剤を含めることができる。
本発明は、金属の表面に本組成物の硬化物の層が積層された積層品である。このような積層品としては、樹脂成型品の表面上に金属薄膜層が積層されており、当該金属薄膜層上に本組成物の硬化物の層が積層された積層品が挙げられる。
金属薄膜層が積層された樹脂成型品の金属薄膜層の表面に被覆材組成物の硬化物層を形成させた積層樹脂成型品の表面に、1mm間隔で樹脂基材まで達するクロスカットをカッターナイフで入れ、1mm2の碁盤目を100個作成し、その上にセロハンテープを貼りつけ、急激に剥がし、剥離した碁盤目を数える碁盤目剥離試験により評価した。判定は以下の基準で行った。
◎ :剥離なし。
〇 :升目剥離の数が升目10個以内。
△ :升目剥離の数が11〜50個。
× :升目剥離の数が51〜100個
積層樹脂成型品を80℃、相対湿度85%の恒温恒湿器に24時間入れ、その後、初期付着性の場合と同様に碁盤目剥離試験により評価した。
積層樹脂成型品の表面をスチールウール(#0000、ボンスター社製)で約1Kgの荷重で表面を5往復擦り、成型品の表面の傷つき易さを目視にて観察し、以下の基準で耐擦傷性を評価した。
◎:傷の跡がない。
○:僅かに傷跡がある。
△:傷跡がはっきりと残っている。
×:傷跡が多く残っている。
4つ口フラスコにトルエン500部を仕込み、内温が80℃になるように加温した。次いで、内温を80℃に保ち、フラスコ内を攪拌しながら、単量体としてN−(n−ブトキシメチル)アクリルアミド150部(30%)、メチルメタクリレート200部(40%)及びスチレン150部(30%)と、重合触媒としてアゾビスイソブチルニトリル1部との混合物を、2時間等速滴下によりフラスコ内に滴下した。その後、1時間毎にアゾビスイソブチルニトリル0.2部を合計4回追加投入しながら6時間攪拌し、GPC測定によるポリスチレン換算による質量平均分子量が3.0×104の共重合体を50%含むトルエン溶液を得た。この共重合体のトルエン溶液100部と、DPHA(日本化薬社製、商品名:KAYARAD DPHA)30部、EO変性水素化ビスフェノールAジアクリレート(第一工業製薬社製、商品名:ニューフロンティアHBPE―4)10部、テトラフルフリルアクリレート(大阪有機化学工業社製、商品名:ビスコート#150)5部、ベンゾフェノン5部、酢酸ブチル80部及びイソブタノール100部を混合し、攪拌してアンダーコート材組成物を調製した。
幅5cm、長さ9cm及び厚さ3mmのABS樹脂成型品のテストピースに、前述したアンダーコート材組成物を硬化後の膜厚が10μmとなるようにスプレー塗装した。この後、塗装された樹脂成型品のテストピースを、60℃の温風乾燥器中に5分間保持して有機溶剤を揮発させた。
被覆材組成物の組成を表1に示す組成に変更した以外は実施例1と同様にして積層樹脂成型品を得た。得られた積層樹脂成型品の評価結果を表1に示す。
A−DCP:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学工業社製、商品名:NKエステルA−DCP)
FA−512A:ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(日立化成工業社製、商品名:ファンクリルFA−512A)
A−DOG:ジオキサングリコールジアクリレート(新中村化学工業社製、商品名:NKエステルA−DOG)
A−GLY−9E:エチレンオキサイド9モル変性グリセリントリアクリレート(新中村化学工業社製、商品名:NKエステルA−GLY−9E)
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製、商品名:KAYARAD DPHA)
PM−21:メタクリロイルオキシ基含有リン酸エステル(日本化薬社製、商品名:カヤマーPM−21)
MB−7115:メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、メタクリル酸位を有するアクリル共重合体。(三菱レイヨン社製、商品名:ダイヤナールMB−7115、水酸基価:86mgKOH/g、ポリスチレン換算の重量平均分子量:1.2万)
HCPK:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャリティーケミカル社製、商品名:イルガキュアー184)
IPA:イソプロピルアルコール
PM:メトキシプロパノール
一方、比較例1は(A)成分が多く、(C)成分が少ないので耐擦傷性が低く、比較例2は(A)成分が少なく、(C)成分が多いので付着性が低く、比較例3は(D)成分を含まないので付着性が低く、比較例4は(C)成分が少ないので耐擦傷性が低くかった。
Claims (4)
- 脂環式骨格及び/又は複素環式骨格を有する1又は2官能の(メタ)アクリレート(A)、アルキレンオキサイド変性グリセリントリ(メタ)アクリレート(B)、(A)成分及び(B)成分以外の2官能以上の(メタ)アクリレート(C)、(メタ)アクリロイルオキシ基含有リン酸エステル(D)、及び水を含む活性エネルギー線硬化型金属用含水被覆材組成物であって、当該組成物に含まれる単量体成分及び重合体成分の合計に対して、(A)成分が15〜60質量%、(B)成分が25〜50質量%、(C)成分が10〜50質量%、及び(D)成分が0.2〜2質量%、並びに、水酸基を有するビニル系単量体単位を含む(共)重合体(E)が0〜25質量%であり、当該組成物に含まれる単量体成分及び重合体成分の合計100質量部に対して、水を25〜40質量部を含む組成物。
- 前記(E)成分は、水酸基価が50〜100mgKOH/gでポリスチレン換算の重量平均分子量が1万〜3万の(共)重合体である請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型金属用含水被覆材組成物。
- 金属の表面に、請求項1又は請求項2に記載の活性エネルギー線硬化型金属用含水被覆材組成物の硬化物の層が積層された積層品。
- 樹脂成型品の表面上に金属薄膜層が積層されており、当該金属薄膜層上に請求項1又は請求項2に記載の活性エネルギー線硬化型金属用含水被覆材組成物の硬化物の層が積層された積層品。
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