JP6778149B2 - 変速機及び変速機の制御方法 - Google Patents

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Description

本発明は、変速機及び変速機の制御方法に関する。
特許文献1には、エンジンと、モータジェネレータと、無段変速機と、を備えたハイブリッド車両が開示されている。特許文献1に記載のハイブリッド車両における変速機では、モータジェネレータと無段変速機との間に、前進クラッチもしくは後進ブレーキとして用いられる締結要素が設けられている。
特開2015−67125号公報
特許文献1に記載の変速機では、例えば、DレンジからNレンジにして再びDレンジにした場合に、Nレンジの時間が短いとクラッチパック内の作動油が抜けきらないうちに、再び作動油が供給されることになる。このようにクラッチパック内の作動油が抜けきらないうちに再び作動油が供給されると、クラッチが急締結されてショックが発生するおそれがある。
本発明はこのような技術的課題に鑑みてなされたもので、変速機において締結要素が急締結されることを防止することを目的とする。
本発明のある態様の変速機は、走行用駆動源と駆動輪との間の動力伝達経路上に配置される変速機構と、走行用駆動源と変速機構との間の動力伝達経路上に配置される締結要素と、走行用駆動源により駆動されるオイルポンプから吐出されたオイルを調圧して締結要素へ供給するアクチュエータと、オイルポンプとアクチュエータとを接続する接続流路から分岐する分岐流路と、分岐流路に設けられ、分岐流路の圧力が所定圧力以上なると開弁するバイパス弁と、締結要素の動作を制御する制御装置と、を備えた変速機であって、制御装置は、シフトレンジが走行レンジから非走行レンジに切り替えられて再び走行レンジに切り替えられたときに、非走行レンジの滞在時間が所定時間以内の場合には、分岐流路の圧力を所定圧力以上とすることを特徴とする。
また、本発明のある態様の変速機の制御方法は、走行用駆動源と駆動輪との間の動力伝達経路上に配置される変速機構と、走行用駆動源と変速機構との間の動力伝達経路上に配置される締結要素と、走行用駆動源により駆動されるオイルポンプから吐出されたオイルを調圧して締結要素へ供給するアクチュエータと、オイルポンプとアクチュエータとを接続する設力流路から分岐する分岐流路と、分岐流路に設けられ、分岐流路の圧力が所定圧力以上なると開弁するバイパス弁と、を備えた変速機における変速機の制御方法であって、シフトレンジが走行レンジから非走行レンジに切り替えられて再び走行レンジに切り替えられたときに、非走行レンジの滞在時間が所定時間以内の場合には、分岐流路の圧力を所定圧力以上とすることを特徴とする。
これらの態様によれば、締結要素が急締結されることを防止できる。
本発明の実施形態に係るハイブリッド車両及び自動変速機の構成図である。 本実施形態のハイブリッド車両におけるモード切換マップである。 本実施形態の油圧コントロールバルブユニットの油圧回路である。 本実施形態の制御装置が実行する制御のフローチャートである。 本実施形態の制御装置が実行する制御のフローチャートである。 本実施形態の変形例に係る油圧回路である。
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は、ハイブリッド車両100の全体構成図である。ハイブリッド車両100は、エンジン1と、第1締結要素2と、モータジェネレータ(以下、MGという。)3と、オイルポンプ4と、自動変速機5と、駆動輪8と、制御装置としての統合コントローラ50と、を備える。
自動変速機5は、締結要素としての第2締結要素6と、変速機構としての無段変速機(以下、CVTという。)7と、作動油を貯留するオイルパン30と、油圧コントロールバルブユニット20と、を備える。
エンジン1は、ガソリン、軽油等を燃料とする内燃機関であり、走行用駆動源として機能する。エンジン1は、統合コントローラ50からの指令に基づいて、回転速度、トルク等が制御される。
第1締結要素2は、エンジン1とMG3との間の動力伝達経路上に配置される。第1締結要素2は、ノーマルオープンの油圧式クラッチである。第1締結要素2は、統合コントローラ50からの指令に基づき、オイルポンプ4の吐出圧を元圧として油圧コントロールバルブユニット20によって調圧された油圧によって制御される。第1締結要素2としては、例えば、乾式多板クラッチが用いられる。
MG3は、エンジン1に対して動力伝達経路上に直列に配置される。MG3は、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型回転電機である。MG3は、統合コントローラ50からの指令に基づいて、インバータ9により作り出された三相交流を印加することにより制御される。MG3は、バッテリ10からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作し、走行用駆動源として機能する。また、MG3は、ロータがエンジン1や駆動輪8から回転エネルギーを受ける場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能し、バッテリ10を充電することができる。
オイルポンプ4は、MG3の回転がベルト4bを介して伝達されることによって動作するベーンポンプである。オイルポンプ4は、CVT7のオイルパン30に貯留される作動油を吸い上げ、油圧コントロールバルブユニット20に油圧を供給する。
第2締結要素6は、MG3とCVT7の間の動力伝達経路上に配置される。第2締結要素6は、前進クラッチ61及び後進ブレーキ62を備える(図3参照)。第2締結要素6は、統合コントローラ50からの指令に基づき、オイルポンプ4の吐出圧を元圧として油圧コントロールバルブユニット20によって調圧された油圧によって制御される。第2締結要素6としては、例えば、ノーマルオープンの湿式多板クラッチが用いられる。
CVT7は、MG3と駆動輪8との間の動力伝達経路上に配置され、車速やアクセル開度等に応じて変速比を無段階に変更することができる。CVT7は、プライマリプーリと、セカンダリプーリと、両プーリに掛け渡されたベルトと、を備える。プーリ圧によりプライマリプーリの可動プーリとセカンダリプーリの可動プーリとを軸方向に動かし、ベルトのプーリ接触半径を変化させることで、変速比を無段階に変更する。なお、プライマリプーリに作用するプーリ圧(以下では、「PRI圧」という。)とセカンダリプーリに作用するプーリ圧(以下では、「SEC圧」という。)は、オイルポンプ4からの吐出圧を元圧として油圧コントロールバルブユニット20によって調圧される。
なお、本実施形態では、オイルポンプ4のみが設けられているが、オイルポンプ4に加えて、バッテリ10から電力の供給を受けて動作する電動オイルポンプをさらに設けてもよい。電動オイルポンプは、例えば、統合コントローラ50からの指令に基づき、オイルポンプ4のみでは油量が不足する場合に駆動され、油圧コントロールバルブユニット20に油圧を供給する。
CVT7の出力軸には、図示しない終減速ギヤ機構を介してディファレンシャル12が接続される。ディファレンシャル12には、ドライブシャフト13を介して駆動輪8が接続される。
統合コントローラ50は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。統合コントローラ50は、複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。具体的には、統合コントローラ50は、自動変速機5を制御するATCU、シフトレンジを制御するSCU、エンジン1及びMG3のハイブリッド制御を行うHCM等によって構成することもできる。
統合コントローラ50には、エンジン1の回転速度を検出する第1回転速度センサ51、第2締結要素6の出力回転速度Nout(=CVT7の入力回転速度)を検出する第2回転速度センサ52、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ53、CVT7のセレクトレンジ(前進、後進、ニュートラル及びパーキングを切り替えるセレクトレバー又はセレクトスイッチの状態)を検出するインヒビタスイッチ54、車速を検出する車速センサ55と、MG3の回転速度を検出する第3回転速度センサ56等からの信号が入力される。統合コントローラ50は、入力されるこれら信号に基づき、エンジン1、第1締結要素2、MG3(インバータ9)、自動変速機5の各種動作を制御する。MG3の回転速度は、第3回転速度センサ56を用いることなく、インバータ9の周波数から計算によって求めてもよい。
統合コントローラ50は、図2に示すモード切換マップを参照して、ハイブリッド車両100の運転モードとして、EVモードとHEVモードとを切り替える。
EVモードは、第1締結要素2を解放し、MG3のみを駆動源として走行するモードである。EVモードは、要求駆動力が低く、バッテリ10の充電量が十分な時に選択される。
HEVモードは、第1締結要素2を締結し、エンジン1とMG3とを駆動源として走行するモードである。HEVモードは、要求駆動力が高い時、あるいは、バッテリ10の充電量が不足する時に選択される。
なお、EVモードとHEVモードとの切り替えがハンチングしないように、EVモードからHEVモードへの切換線は、HEVモードからEVモードへの切換線よりも高車速側かつアクセル開度大側に設定される。
また、ハイブリッド車両100はトルクコンバータを備えていないので、図2に示すWSC領域(発進・減速停車時に使用される車速がVSP1以下の低車速領域、VSP1は、例えば、10km/h)では、統合コントローラ50は、第2締結要素6をスリップさせながら発進及び停止するWSC制御(スリップ制御)を行う。
具体的には、CVT7のシフトレンジが非走行レンジ(N、P等)から走行レンジ(D、R等)に切り替えられてハイブリッド車両100が発進する場合は、統合コントローラ50は、第2締結要素6に供給される油圧を徐々に増大させ、第2締結要素6をスリップさせながら徐々に締結する。そして、車速がVSP1に到達すると、統合コントローラ50は、第2締結要素6を完全締結し、WSC制御を終了する。
また、CVT7のシフトレンジが走行レンジ(D、R等)でハイブリッド車両100が走行しており、ハイブリッド車両100が減速してVSP1まで車速が低下した場合は、統合コントローラ50は、第2締結要素6に供給される油圧を徐々に低下させ、第2締結要素6をスリップさせながら徐々に解放する。そして、ハイブリッド車両100が停車すると、統合コントローラ50は、第2締結要素6を完全に解放する。
次に、図3を参照して、油圧コントロールバルブユニット20の構成について説明する。図3は、油圧コントロールバルブユニット20の油圧回路図である。
油圧コントロールバルブユニット20は、ライン圧調整弁102と、パイロット圧弁(減圧弁)103と、ライン圧ソレノイドバルブ104と、アクチュエータとしての前後進切替機構用ソレノイドバルブ105と、PRI圧ソレノイドバルブ106と、SEC圧ソレノイドバルブ107と、レンジセレクトバルブ108と、ライン圧流路109と、バイパス弁110と、パイロット圧流路114と、を備える。以下では、ソレノイドバルブをSOLと称す。
オイルポンプ4は、ライン圧流路109及びライン圧流路109から分岐した分岐流路111,112,113を通じて、ライン圧調整弁102、パイロット圧弁103、PRI圧SOL106及びSEC圧SOL107と接続される。ライン圧流路109はライン圧PLの油路を構成する。ライン圧PLは、PRI圧やSEC圧の元圧となる油圧である。
ライン圧調整弁102は、ライン圧流路109から分岐した分岐流路111に設けられ、オイルポンプ4から吐出された油圧を調整してライン圧PLを生成する。ライン圧調整弁102が調圧時にリリーフするオイルは、潤滑系に供給される。
パイロット圧弁103は、ライン圧流路109から分岐した分岐流路112に設けられ、ライン圧PLを減圧する。パイロット圧弁103によって減圧された油圧は、パイロット圧流路114を通じてライン圧SOL104や前後進切替機構用SOL105に供給される。
ライン圧SOL104は、リニアソレノイドバルブであり、制御電流に応じた制御油圧を生成する。ライン圧SOL104が生成した制御油圧は、ライン圧調整弁102に供給され、ライン圧調整弁102は、ライン圧SOL104が生成した制御油圧に応じて作動することで調圧を行う。このため、ライン圧SOL104への制御電流によってライン圧PLの指令値を設定することができる。
前後進切替機構用SOL105は、リニアソレノイドバルブであり、制御電流に応じた油圧を生成する。前後進切替機構用SOL105が生成した油圧は、運転者の操作に応じて作動するレンジセレクトバルブ108を介して前進クラッチ61や後進ブレーキ62に供給される。
PRI圧SOL106は、ライン圧流路109から分岐した分岐流路113に設けられる。PRI圧SOL106は、リニアソレノイドバルブであり、制御電流に応じてPRI圧を生成する。このため、PRI圧SOL106への制御電流によってPRI圧の指令値を設定することができる。PRI圧SOL106が生成したPRI圧は、PRI室71に供給される。PRI圧は例えば、制御電流に応じた制御油圧を生成するSOLと、当該SOLが生成した制御油圧に応じてライン圧PLからPRI圧を生成する調圧弁とによって生成されてもよい。
SEC圧SOL107は、ライン圧流路109から分岐した分岐流路113に設けられる。SEC圧SOL107は、リニアソレノイドバルブであり、制御電流に応じてSEC圧を生成する。このため、SEC圧SOL107への制御電流によってSEC圧の指令値を設定することができる。SEC圧SOL107が生成したSEC圧は、SEC室72に供給される。SEC圧は例えば、制御電流に応じた制御油圧を生成するSOLと、当該SOLが生成した制御油圧に応じてライン圧PLからSEC圧を生成する調圧弁とによって生成されてもよい。
バイパス弁110は、パイロット圧流路114から分岐した分岐流路115に設けられる。分岐流路115のバイパス弁110よりも下流側は、分岐流路111におけるライン圧調整弁102の下流側に接続される。バイパス弁110は、分岐した分岐流路115の圧力が所定圧未満のときは、ばねの付勢力によって閉弁し、分岐流路115を遮断する。これに対し、バイパス弁110は、分岐流路115の圧力が所定圧力以上になると開弁し、パイロット圧流路114内のオイルを潤滑系にリリーフする。なお、本実施形態では、ライン圧流路109とパイロット圧流路114とが、オイルポンプ4と前後進切替機構用ソレノイドバルブ105とを接続する接続流路に相当する。
また、本実施形態では、走行用駆動源(エンジン1又はMG3)が停車時においてアイドル回転状態となっている場合に、省エネルギー化(燃費向上又は電費向上)のため、アイドル回転時の回転速度を所定回転速度以下に保持している。そのため、停車時においてはパイロット圧流路114及び分岐流路115の油圧が所定圧未満となっており、バイパス弁110は、閉弁状態となる。バイパス弁110が閉弁していると、バイパス弁110よりも下流にオイルが流れず、分岐流路115に流れ込むオイルのクラッチパックへの分配割合が、バイパス弁110の開弁時と比較して増加する。
このように構成されたハイブリッド車両100において、例えば、走行停止後にシフトレンジが、Dレンジ(走行レンジ)からNレンジ(非走行レンジ)に切り替えられて再びDレンジ(非走行レンジ)に切り替えられる(以下では、「DND切換操作」ともいう。)ことがある。このような場合に、Nレンジに位置している時間(以下、「Nレンジの滞在時間」ともいう。)が短いと、第2締結要素6(この場合、前進クラッチ61)のクラッチパック(図示せず)内の油圧が抜けきらないうちに、再びクラッチパックに多くの油量が供給されることになる。このようにクラッチパック内の油圧が抜けきらないうちに再び多くの油量が供給されると、第2締結要素6が急締結されてショックが発生するおそれがある。
そこで、統合コントローラ50は、このようなDND切換操作時に第2締結要素6が急締結されてショックが発生することを防止するための制御(以下、「セレクトショック防止制御」ともいう。)を行う。具体的には、Dレンジ(走行レンジ)からNレンジ(非走行レンジ)に切り替えられて再びDレンジ(非走行レンジ)に切り替えられた場合に、統合コントローラ50は、Nレンジの滞在時間が所定時間以内であれば、オイルポンプ4の回転速度を上昇させて、分岐流路115の圧力を所定圧力以上とすることでバイパス弁110を開弁させる。以下に、統合コントローラ50が実行するセレクトショック防止制御について、図4及び図5に示すフローチャートを参照しながら、詳しく説明する。
ステップS11では、CVT7に供給されるオイルの温度(油温Tcvt)を取得する。具体的には、分岐流路113の油温を分岐流路113に設けられた温度センサ57によって検出し、統合コントローラ50に送信する。CVT7に供給されるオイルの油温Tcvtと第2締結要素6に供給されるオイルの油温はほぼ等しいので、本実施形態ではCVT7に供給されるオイルの油温Tcvtを検出することによって、第2締結要素6に供給されるオイルの油温を検出している。なお、これに代えて、第2締結要素6に供給されるオイルの油温を直接検出してもよい。
ステップS12では、検出された油温Tcvtが閾値Tset以上であるかを判定する。油温Tcvtが閾値Tset以上である場合には、ステップS13に進み、油温Tcvtが閾値Tset未満である場合には、制御を終了する。
油温Tcvtが閾値Tset以上の場合、つまり、油温Tcvtが高温である場合には、オイルの粘度が低下する。このため、DND切換操作時において油温Tcvtが高温であると、油温Tcvtが低温の時に比べて、オイルが前進クラッチ61のクラッチパック内に早く流入するおそれがある。これに対し、油温Tcvtが閾値Tset未満の場合には、オイルの粘度が大きくなるので、オイルが前進クラッチ61のクラッチパックに流入する速度が遅くなる。このため、油温Tcvtが閾値Tset未満の場合には、オイルポンプ4の回転速度を上昇させなくても、ショックが発生する可能性を考慮する必要があまりない。
そこで、本実施形態では、ステップS12において、CVT7(前進クラッチ61)に供給されるオイルの油温Tcvtに基づく判定を行い、油温Tcvtが閾値Tset未満の場合には、制御を終了する。
なお、ステップS12による判定は、例えば、オイルの粘度による影響が軽微である場合には、行わなくてもよい。
ステップS13では、車両レンジ信号Rngを取得する。具体的には、CVT7のセレクトレンジ(車両レンジ信号Rng)をインヒビタスイッチ54によって検出し、統合コントローラ50に送信する。
ステップS14では、シフトレンジが切り替わったかを判定する。具体的には、車両レンジ信号Rngに基づいて、シフトレンジが、DレンジからNレンジに切り替わったか否かを判定する。シフトレンジが、DレンジからNレンジに切り替わっていれば、ステップS15に進み、シフトレンジが、DレンジからNレンジに切り替わっていなければ、制御を終了する。
ステップS15では、車両レンジ信号Rngを取得する。具体的には、CVT7のセレクトレンジ(車両レンジ信号Rng)をインヒビタスイッチ54によって検出し、統合コントローラ50に送信する。
ステップS16では、シフトレンジが前進レンジであるか否かを判定する。具体的には、車両レンジ信号Rngに基づいて、シフトレンジが、NレンジからDレンジに切り替わったか否かを判定する。シフトレンジが、NレンジからDレンジに切り替わっていれば、ステップS17に進み、シフトレンジが、Nレンジのままであれば、ステップS18に進む。
ステップS18では、滞在時間タイマーをスタートさせる。具体的には、統合コントローラ50は、内蔵したタイマーによって、シフトレンジがNレンジに切り替わってからの経過時間(Nレンジの滞在時間Time_rng)の計測を開始する。滞在時間タイマーをスタートさせると、ステップS15に戻る。
ステップS17では、滞在時間Time_rngが閾値Time_t以内であるか否かを判定する。滞在時間Time_rngが閾値Time_t以内であれば、ステップS19に進み、滞在時間Time_rngが閾値Time_t以内でなければ、制御を終了する。
ステップS19では、統合コントローラ50は、オイルポンプ4の回転速度Npを上昇させる。
ここで、オイルポンプ4の回転速度Npを上昇させること、具体的には、分岐流路115の圧力を所定圧力以上とすることでバイパス弁110を開弁させること(分岐流路115の油量を増加させること)の効果について説明する。
本実施形態のハイブリッド車両100では、Nレンジ選択中は、第1締結要素2を解放し、エンジン1からの動力伝達経路を遮断している。また、上述のように、オイルポンプ4は、MG3の回転がベルト4bを介して伝達されることによって駆動される。このため、Nレンジ選択中、各油圧機器に油圧を供給するために、MG3を一定の回転速度(アイドリング回転速度)で回転させている。このとき、バイパス弁110は、ばねの付勢力により閉弁している。この状態で、シフトレンジがNレンジからDレンジに切り替えられると、パイロット圧流路114内のオイルは、バイパス弁110を通じて潤滑系にリリーフされることなく、前進クラッチ61のクラッチパックに流入することになる。
これに対して、MG3が一定の回転速度(アイドリング回転速度)で回転している状態からMG3の回転速度を上昇させると、オイルポンプ4の回転速度が上昇し、ライン圧流路109、パイロット圧流路114及び分岐流路115内の油量が増加する。パイロット圧流路114及び分岐流路115内の油量が増加し、分岐流路115内の圧力がバイパス弁110の開弁圧(所定圧力)を上回ると、バイパス弁110が開弁する。バイパス弁110が開弁すると、パイロット圧流路114内のオイルの一部が分岐流路115及びバイパス弁110を通じて潤滑系にリリーフされる。これにより、前進クラッチ61のクラッチパックに流入する油量が減少する。このように、DND切換操作において、シフトレンジがNレンジからDレンジに切り替えられたときにオイルポンプ4の回転速度Npを上昇させる(分岐流路115の油量を増加させる)と、分岐流路115の圧力を所定圧力以上となってバイパス弁110が開弁するので、前進クラッチ61のクラッチパックに供給される油量が減少する。これにより、前進クラッチ61の締結動作が遅くなるので、前進クラッチ61の急締結が防止され、ショックの発生を防止できる。
以上のように、本実施形態では前後進切替機構用ソレノイドバルブ105へ供給される油量(前進クラッチ61のクラッチパックに供給される油量)を低減する手法として、分岐流路115の油量を増加することでバイパス弁110を開いている。
当該手法のメリットについて比較例と比較しながら説明する。
<比較例1>
前後進切替機構用ソレノイドバルブ105へ供給される油量を低減するために、パイロット圧弁103の減圧度を上げることが比較例1として考えられる。しかし、パイロット圧弁103の減圧度は可変値ではなく固定値であるので、パイロット圧弁103の減圧度を車両状況に応じて変更することはできない。また、当該固定値は定常走行時に適切な油圧がパイロット圧として供給されるように設定されているため、本願の課題を解決するためだけに当該固定値を変更することは好ましくない。よって、分岐流路115の油量を増加することでバイパス弁110を開く本実施形態の手法は比較例1よりも適切な手法であるといえる。
<比較例2>
前後進切替機構用ソレノイドバルブ105へ供給される油量を低減するために、ライン圧PLを下げることが比較例2として考えられる。しかし、本実施形態のように走行レンジが選択されて車両を発進させる必要がある状況においてはPRI室71及びSEC室72へ充分な油量を供給する必要があるので、ライン圧PLを下げることは適切ではない。よって、分岐流路115の油量を増加することでバイパス弁110を開く本実施形態の手法は比較例2よりも適切な手法であるといえる。
<比較例3>
最終的に前進クラッチ61へ供給される油量を低減するために、前進クラッチ61に残留した油が抜けきるまで、前後進切替機構用ソレノイドバルブ105を一定時間閉じることが比較例3として考えられる。ところが、本実施形態のように走行レンジが選択されて車両を発進させる必要がある状況においては、発進ラグの低減のため前進クラッチ61を極力早く締結することが適切である。一方、比較例3のようにすると前進クラッチ61の締結までの時間が延び発進ラグが大きくなる。よって、分岐流路115の油量を増加することでバイパス弁110を開く本実施形態の手法は比較例3よりも適切な手法であるといえる。
引き続き、ステップS20以下のフローについて説明する。
ステップS20では、オイルポンプ4の回転速度Nprを取得する。具体的には、統合コントローラ50は、まず、第3回転速度センサ56で検出された第2締結要素6の入力回転速度に相当するMG3の回転速度を取得する。そして、MG3の回転速度と、MG3とオイルポンプ4との間の変速比と、に基づいてオイルポンプ4のその時点での回転速度Nprを算出する。なお、オイルポンプ4の回転軸に回転速度を検出するセンサを設けてもよい。
ステップS21では、回転速度Nprが閾値Npt以上であるか否かを判定する。具体的には、統合コントローラ50は、上述のようにして算出されたオイルポンプ4の回転速度Nprが閾値Npt以上であるか否かを判定する。回転速度Nprが閾値Npt以上であれば、ステップS22に進み、回転速度Nprが閾値Npt未満であれば、ステップS25に進む。
ステップS25では、セレクト制御をディレーする(遅延させる)。具体的には、オイルポンプ4の回転速度Nprが目標とする回転速度Ntまで到達していない場合には、統合コントローラ50は、回転速度Nprが回転速度Ntに到達するまで、第2締結要素6(前進クラッチ61)を締結する動作を実行しない。そして、ステップS20に戻る。
上述のように、ステップS21において、回転速度Nprが閾値Npt以上である場合には、ステップS22に進む。ステップS22では、セレクト制御を開始する。具体的には、統合コントローラ50は、前後進切替機構用ソレノイドバルブ105及びレンジセレクトバルブ108を制御して、第2締結要素6をスリップさせながら発進するWSC制御を実行する。
そして、WSC制御が完了すると、前進クラッチ61を完全締結する。これにより、NレンジからDレンジへの切り替えが完了する。その後、統合コントローラ50は、回転速度アップ要求を取り消し、制御を終了する。
このように、本実施形態では、DND切換操作時に、Nレンジの滞在時間Time_rngが閾値Time_t以下の場合には、統合コントローラ50は、オイルポンプ4の回転速度Npを上昇させる。これにより、分岐流路115の圧力が所定圧力以上となってバイパス弁110が開弁するので、前進クラッチ61のクラッチパックに供給される油量が減少する。これにより、第2締結要素6の締結動作を遅くすることができるので、前進クラッチ61の急締結が防止され、ショックの発生を防止できる。
また、本実施形態のハイブリッド車両100においては、例えば、シフトレンジがNレンジの時に、NレンジからDレンジに切り替えた時に前進クラッチ61の締結時間を短縮するために、第2締結要素6に一定の油圧を供給しマイクロスリップ状態にしておく場合がある。このような場合には、オイルが前進クラッチ61のクラッチパックに早く流入してしまうと、前進クラッチ61が急締結してしまい、ショックが発生するおそれが高まる。そこで、このような場合には、本実施形態のセレクトショック防止制御を行うことにより、その効果がより顕著になる。
DND切換操作時に、オイルポンプ4の回転速度Nprが所定の回転速度(閾値Npt)に到達していない場合には、バイパス弁110が開弁していないおそれがある。このため、本実施形態では、DND切換操作時に、オイルポンプ4の回転速度Nprが所定の回転速度(閾値Npt)に到達するまでは、第2締結要素6を締結する動作を実行しないように構成することもできる。これにより、ショックの発生をより確実に防止できる。
本実施形態では、油温Tcvtが閾値Tset未満の場合には、オイルの粘度が大きくなるので、前進クラッチ61に流入するオイルの速度が遅くなる。したがって、油温Tcvtが閾値Tset未満の場合には、前進クラッチ61が急締結する可能性が小さいので、オイルポンプ4の回転速度Nprを上昇させないように構成することもできる。これにより、エネルギーの消費を抑制できる。
また、例えば、CVT7の入力軸に第2締結要素6のクラッチパックが固定され、入力軸にオイルの流出入口が設けられている場合がある。この場合には、クラッチパックが回転することによりクラッチパック内のオイルに遠心力が作用するため、走行レンジから非走行レンジに切り替えた時に、クラッチパック内からオイルが排出されにくくなることがある。このようにクラッチパック内のオイルに遠心力が作用すると、クラッチパック内からオイルが完全に排出されるまでに時間がかかることがある。したがって、このような構成の場合に、本実施形態のセレクトショック防止制御を行うことにより、その効果がより顕著になる。
なお、上記実施形態では、DレンジからNレンジに切り替えられて再びDレンジに切り替えられた場合を例に説明したが、DレンジからPレンジに切り替えられて再びDレンジに切り替えられた場合、あるいは、RレンジからNレンジまたはPレンジに切り替えられて再びRレンジに切り替えられた場合に対して同様の制御を行ってもよい。
また、上記実施形態では、HEVモードとEVモードとを切り替えるハイブリッド車両を例に説明したが、これに限らず、各種ハイブリッド車両、モータのみの駆動力で駆動される電気自動車、あるいはエンジンのみで駆動される車両などにも適用できる。
以上のように構成された自動変速機5の主な作用効果についてまとめて説明する。
本実施形態の自動変速機5では、統合コントローラ50は、シフトレンジが走行レンジから非走行レンジに切り替えられて再び走行レンジに切り替えられたときに、非走行レンジの滞在時間Time_rngが所定時間(閾値Time_t)以内の場合には、分岐流路115の圧力を所定圧力以上とする。
分岐流路115の圧力を所定圧力以上にし、バイパス弁110を開弁させることで、締結要素(第2締結要素6)に供給される油量が減少する。これにより、締結要素(第2締結要素6)の締結動作を遅くすることができるので、締結要素(第2締結要素6)の急締結を防止でき、ショックの発生を防止できる(請求項1、7に対応する効果)。
また、セレクトショック防止制御時において、統合コントローラ50は、オイルポンプ4の回転速度Npを上昇させることにより、分岐流路115の圧力を所定圧力以上とする。
常に走行用駆動源(MG3)により駆動されるオイルポンプ4の回転速度Npを上昇させるのではなく、シフトレンジが走行レンジから非走行レンジに切り替えられて再び走行レンジに切り替えられたときで、且つ、非走行レンジの滞在時間が所定時間以内の場合等の所定条件が成立した場合に限定して走行用駆動源(MG3)により駆動されるオイルポンプの回転速度を上昇させているので、所定条件が成立した場合以外では、走行用駆動源(MG3)の回転速度を落とす(下げる)ことができ、省エネルギー化(燃費向上又は電費向上)が可能となる(請求項2に対応する効果)。
本実施形態の自動変速機5では、統合コントローラ50は、シフトレンジが走行レンジから非走行レンジに切り替えられて再び走行レンジに切り替えられたときに、締結要素(第2締結要素6)に供給されるオイルの温度が所定温度以上であって、かつ、非走行レンジの滞在時間Time_rngが所定時間(閾値Time_t)以内の場合に、オイルポンプ4の回転速度Npを上昇させる。
この構成では、オイルの粘度が高い所定温度(閾値Tset)未満の場合には、オイルポンプ4の回転速度Npを上昇させないので、エネルギーの消費を抑制できる(請求項3に対応する効果)。
本実施形態の自動変速機5では、統合コントローラ50は、シフトレンジが走行レンジから非走行レンジに切り替えられて再び走行レンジに切り替えられたときに、オイルポンプ4が所定の回転速度(閾値Npt)に到達するまでは、締結要素(第2締結要素6)を締結する動作を実行しない。
オイルポンプ4が所定の回転速度(閾値Npt)に到達していない場合には、バイパス弁110が開弁していないおそれがある。したがって、オイルポンプ4が所定の回転速度(閾値Npt)に到達するまでは、締結要素(第2締結要素6)を締結する動作を実行しないことにより、ショックの発生をより確実に防止できる(請求項4に対応する効果)。
本実施形態の自動変速機5は、走行用駆動源はエンジン1とMG3とを有し、締結要素(第2締結要素6)は、MG3とCVT7との間の動力伝達経路上に配置される。
例えば、非走行レンジから走行レンジに切り替えた時に締結要素(第2締結要素6)の締結時間を短縮するために、シフトレンジが非走行レンジの時に、締結要素(第2締結要素6)にあらかじめ一定の油圧を供給しておく場合がある。このような場合には、オイルが締結要素(第2締結要素6)に早く流入してしまうと、締結要素(第2締結要素6)が急締結してしまい、ショックが発生するおそれが高まる。そこで、このような場合には、本実施形態のセレクトショック防止制御を行うことにより、その効果がより顕著となる(請求項5に対応する効果)。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
例えば、オイルポンプ4をエンジン1によって駆動するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、MG3によって駆動するオイルポンプ4によって分岐流路115へ供給する油量を増加させることを例に説明したが、これに代えて、走行用駆動源とは別の駆動源で動くサブオイルポンプ、例えば、上述したバッテリ10から電力の供給を受けて動作する電動オイルポンプを駆動して分岐流路115へ供給する油量を増加させてもよい。さらに、図6に示すように、パイロット圧流路114にアキュムレータ80を設けるとともに、パイロット圧流路114とアキュムレータ80の間に開閉弁81を設けた構成としてもよい。この場合、セレクトショック防止制御時において、分岐流路115へ供給する油量を増加させるときに、開閉弁81を開弁すればよい。なお、アキュムレータ80及び開閉弁81をライン圧流路109に設けてもよい。
100 ハイブリッド車両
1 エンジン(走行用駆動源)
2 第1締結要素
3 MG(走行用駆動源)
4 オイルポンプ
5 自動変速機
6 第2締結要素(締結要素)
7 CVT(変速機構)
8 駆動輪
20 油圧コントロールバルブユニット
50 統合コントローラ(制御装置)
57 温度センサ
61 前進クラッチ
62 後進ブレーキ
105 前後進切替機構用ソレノイドバルブ(アクチュエータ)
109 ライン圧流路(接続流路)
110 バイパス弁
115 分岐流路(接続流路)

Claims (7)

  1. 走行用駆動源と駆動輪との間の動力伝達経路上に配置される変速機構と、
    前記走行用駆動源と前記変速機構との間の動力伝達経路上に配置される締結要素と、
    前記走行用駆動源により駆動されるオイルポンプから吐出されたオイルを調圧して前記締結要素へ供給するアクチュエータと、
    前記オイルポンプと前記アクチュエータとを接続する接続流路から分岐する分岐流路と、
    前記分岐流路に設けられ、前記分岐流路の圧力が所定圧力以上なると開弁するバイパス弁と、
    前記締結要素の動作を制御する制御装置と、
    を備えた変速機であって、
    前記制御装置は、
    シフトレンジが走行レンジから非走行レンジに切り替えられて再び前記走行レンジに切り替えられたときに、前記非走行レンジの滞在時間が所定時間以内の場合には、前記分岐流路の圧力を前記所定圧力以上とすることを特徴とする変速機。
  2. 請求項1に記載の変速機であって、
    前記制御装置は、
    前記オイルポンプの回転速度を上昇させることにより、前記分岐流路の圧力を前記所定圧力以上とすることを特徴とする変速機。
  3. 請求項1または2に記載の変速機であって、
    前記制御装置は、
    前記シフトレンジが前記走行レンジから前記非走行レンジに切り替えられて再び前記走行レンジに切り替えられたときに、前記締結要素に供給される前記オイルの温度が所定温度以上であって、かつ、前記非走行レンジの滞在時間が前記所定時間以内の場合に、前記オイルポンプの回転速度を上昇させることを特徴とする変速機。
  4. 請求項2または3に記載の変速機であって、
    前記制御装置は、
    前記シフトレンジが前記走行レンジから前記非走行レンジに切り替えられて再び前記走行レンジに切り替えられたときに、前記オイルポンプが所定の回転速度に到達するまでは、前記締結要素を締結する動作を実行しないことを特徴とする変速機。
  5. 請求項1から4のいずれか1つに記載の変速機であって、
    前記走行用駆動源は、エンジンとモータとを有し、
    前記締結要素は、前記モータと前記変速機構との間の動力伝達経路上に配置されることを特徴とする変速機。
  6. 請求項1から5のいずれか1つに記載の変速機を備えたことを特徴とする車両。
  7. 走行用駆動源と駆動輪との間の動力伝達経路上に配置される変速機構と、
    前記走行用駆動源と前記変速機構との間の動力伝達経路上に配置される締結要素と、
    前記走行用駆動源により駆動されるオイルポンプから吐出されたオイルを調圧して前記締結要素へ供給するアクチュエータと、
    前記オイルポンプと前記アクチュエータとを接続する接続流路から分岐する分岐流路と、
    前記分岐流路に設けられ、前記分岐流路の圧力が所定圧力以上なると開弁するバイパス弁と、
    を備えた変速機を制御する変速機の制御方法であって、
    シフトレンジが走行レンジから非走行レンジに切り替えられて再び前記走行レンジに切り替えられたときに、前記非走行レンジの滞在時間が所定時間以内の場合には、前記分岐流路の圧力を前記所定圧力以上とすることを特徴とする変速機の制御方法。
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