《第1の実施形態》
以下、第1の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る電解水製造装置10の概略構成を示す図である。電解水製造装置10は、塩水を電気分解することにより、酸性の次亜塩素酸を含む酸性水を生成する装置である。
図1に示されるように、電解水製造装置10は、電解槽11、貯留タンク12、直流電源31、及び制御装置50を備えている。
電解槽11は、樹脂やステンレス鋼などからなる容体である。電解槽11は、例えば直方体状のケーシング11aと、ケーシング11aの内部に配置されるケーシング11bから構成されている。ケーシング11aの内部空間と、ケーシング11bの内部空間は、イオン交換膜21を介して通じている。電解槽11では、ケーシング11aとケーシング11bとが組み合わされることで、ケーシング11bの内部空間が陰極室S2となり、残るケーシング11aの内部空間が陽極室S1となる。
陽極室S1は、管路110を介して、商用の水道設備に接続されるとともに、管路111を介して、貯留タンク12に接続されている。また、陽極室S1の内部には、酸性水を生成するための電極23が配置されている。
陽極室S1には、水道設備から水道水が供給される。陽極室S1に供給される水道水としては、炭酸カルシウムを主成分とするスケールの堆積を防止する観点から、アルカリ成分が少ない軟水を用いることが好ましい。この種の軟水は、例えば、イオン交換樹脂を利用した軟水器を用いることで、生成することができる。水道設備から陽極室S1に供給される水道水は、電磁弁V1によって制御される。この電磁弁V1は、例えばノーマル閉の電磁弁である。電磁弁V1がONのときには、陽極室S1に水道水が供給される。電磁弁V1がオフのときには、陽極室S1への水道水の供給が停止する。
陽極室S1の水位は、ケーシング11aに設けられた水位センサW1によって検出される。水位センサW1としては、静電容量式水位センサ、導電率式水位センサやフロート式水位センサなどを用いることができる。水位センサW1は、例えば陽極室S1の水位が電解に適した定格水位になったときにONとなる接点を有している。
陰極室S2は、ケーシング11bに包囲される空間であり、内部には電極24が配置されている。陰極室S2の内部には塩水が充填される。塩水としては、例えば、水(H2O)に、電解質として塩化ナトリウム(NaCl)を加えることにより生成される塩水、或いは、水に、塩素を含む塩化カリウム(KCl)などの塩を加えることにより生成される塩水が用いられる。塩水の濃度は特に制限されるものではないが、電解時の安定性を考慮すると、ある程度濃度が高い方が好ましい。なかでも塩水として飽和塩化ナトリウムを用いることが好ましい。
イオン交換膜21は、例えば塩素イオンCl−などの陰イオンを通過させる性質を有する陰イオン交換膜である。陰イオン交換膜としては、アストム社のネオセプタ(登録商標)、AGCエンジニアリング社のセレミオン(登録商標)などを用いることができる。
また、イオン交換膜21に代えて、多孔質膜を用いることもできる。多孔質膜としては、ポリオレフィンやフッ素化合物のような化学的に安定な有機高分子材料薄膜に、微多孔を形成して得られる有機微多孔膜や、無機酸化物多孔質膜などを用いることができる。無機酸化物としては種々のものを用いることができる。例えば、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化ニッケル等の微粉末を支持体に塗布したものを用いることができる。特に、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウムを用いることが好ましい。その他の多孔質膜としては、塩素、フッ素系のハロゲン化高分子を有する多孔質ポリマー等を用いることもできる。
陽極となる電極23は、例えば、チタン(Ti)、ステンレス鋼(SUS)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、或いはこれらの合金、クラッド材からなる。電極23は、長方形板状に整形されており、原水を流通させるとともに表面積を増加させるために、複数の貫通孔が形成されている。貫通孔は、開口径が一定のストレート孔であっても、電極23の一側の面と他側の面とで径が異なるテーパー形状に整形されていてもよく、内壁面が曲面になるように整形されていてもよい。
貫通孔の形状は、矩形、円形、楕円形など、任意の形状とすることができる。また、貫通孔は、マトリクス状、或いはハニカム状に規則的に配列されていてもよく、不規則に配列されていてもよい。
電極23の表面には、例えば、白金(Pt)などの貴金属触媒や、酸化イリジウムなどの酸化物触媒が添着されている。
陰極となる電極24も、電極23と同様に構成されている。電極24では、触媒を添着させることなく、チタンやステンレス鋼などの耐食性を有する金属を、そのまま用いることもできる。
直流電源31は、制御装置50の指示に基づいて、電極23と電極24に電圧を印加する。電解水製造装置10では、電極23が陽極となり、電極24が陰極となるように、それぞれの電極23,24に電圧が印加される。
貯留タンク12は、例えば、樹脂や、ステンレス鋼などの金属からなるタンクである。貯留タンク12の容積は、陽極室S1の容積の約5倍か、それ以上であることが好ましい。貯留タンク12は、電解槽11よりも低い位置に設置され、電解槽11の陽極室S1と管路111を介して接続されている。また、貯留タンク12は、管路112を介して、外部機器と接続されている。貯留タンク12の水位は、例えば水位センサW2によって検出される。水位センサW2としては、静電容量式水位センサ、導電率式水位センサやフロート式水位センサなどを用いることができる。水位センサW2は、例えば貯留タンク12が満水になったときにONとなる接点を有している。
上述したように貯留タンク12の容積VOL1[L]は、陽極室S1の容積VOL2[L]の約5倍かそれ以上であることが好ましい(VOL1≧5×VOL2)。電解水製造装置10では、貯留タンク12の満水時の水量を、4×VOL2[L]以下とする。これにより、陽極室S1の電解水を貯留タンク12に移送しているときに、水位センサW2がONになったとしても、電解水の移送を、陽極室S1が空になるまで継続することができる。
陽極室S1の容積VOL2に対して、塩水を有する陰極室S2の容積を小さくするとともに、陽極室S1で電解水を生成するサイクルを複数回繰り返すごとに塩水を入れ換えるようにする。塩水の入れ換え後、次に塩水の入れ換えを行うまでの繰り返しサイクルは、陽極室S1の容積、陰極室S2の容積、生成される電解水の濃度等で定まるが、1〜20サイクル程度にすることが好ましい。
具体的には、陽極室S1を1L、陰極室S2を0.02Lとすると、塩水の濃度が低下して特性に影響が出るまでに20サイクル要し、塩水のpHが劇物範囲を超えるまでに10サイクルを要した。電解水を生成するために、隔膜越しに損失する電解質の量は極めて少ない。このため、隔膜を介して塩水を隔離するのであれば、陰極室S2の容積は、陽極室S2の容積の1/10〜1/100程度に小さくすることができる。かつ、陽極室S1で電解水を複数サイクル生成した後に、塩水の交換を行うことで、塩水を効率的に消費するとともに、無駄な時間や電力を削減することができる。
また、陽極室S2の容積は、大き過ぎると排水によっても電解水が均一に混ざらないという問題がある。実験では陽極室S2の容積VOL2が5L以内であれば排水による混合で、電解水の濃度が均一化され、それ以上では、排水によっても排水の初めと終わりで、電解水の濃度にかなりの差が出てしまうことを確認した。また、陽極室S2の容積VOL2が小さすぎると、給水や排水の時間比率が増大して、生成能力が低下する。陽極室S2の容積VOL2は、0.5〜5Lの範囲とすることが望ましい。
管路111は、一端が、電解槽11の陽極室S1を構成するケーシング11aの底部に接続されている。そして、他端が、貯留タンク12の上部に接続されている。陽極室S1で生成された電解水は、管路111を介して貯留タンク12へ移送され貯留される。また、貯留タンク12に貯留された電解水は、管路112を介して、電解水のユースポイントとなる外部装置などへ供給される。
管路111,112には、それぞれ電磁弁V2,V3が設けられている。電磁弁V2は、例えばノーマル閉の電磁弁である。陽極室S1で生成された電解水は、電磁弁V2がオンのときに、重力により貯留タンク12へ移送され、電磁弁V2がオフのときには、貯留タンク12への移送が停止する。また、電磁弁V3は、電解水製造装置10のユーザや、外部装置によって制御される電磁弁である。貯留タンク12の電解水は、電磁弁V3が開のときに、ユースポイントへ供給される。電磁弁V3が閉のときには、ユースポイントへの供給が停止する。
制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)、CPUの作業領域となる主記憶部、プログラムや各種パラメータを記憶する補助記憶部などを有するコンピュータである。制御装置50は、補助記憶に記憶されたプログラムに基づいて、上述した、直流電源31、各電磁弁V1,V2を駆動する。
次に、上述のように構成される電解水製造装置10の動作について説明する。図2は、制御装置50が実行する一連の処理を示すフローチャートである。電解水製造装置10は、制御装置50が、図2のフローチャートに準じた処理を行うことで動作する。以下、図2を参照して、制御装置50が実行する処理について説明する。図2のフローチャートに示される一連の処理は、例えば、制御装置50が、ユーザからの開始指令を受け付けることにより開始される。
説明の前提として、各電磁弁V1〜V3は閉(オフ)であり、直流電源31は停止しているものとする。また、陽極室S1及び貯留タンク12の双方は、空の状態であるものとし、陰極室S2には予め塩水が自動的に、又はユーザにより充填されているものとする。
まず、制御装置50は、水位センサW2がオンであるか否かを判断する(ステップS101)。貯留タンク12が満水であるときには、水位センサW2がオンになり、貯留タンク12が満水でないときには、水位センサW2はオフになる。制御装置50は、水位センサW2がオンであると判断した場合には(ステップS101:Yes)、貯留タンク12の電解水がユーザや外部装置によって排水されるのを待ち受ける。
一方、制御装置50は、水位センサW2がオフであると判断した場合には(ステップS101:No)、電磁弁V1をオンにする(ステップS102)。これにより、水道水が、電解槽11の陽極室S1へ供給される。
次に、制御装置50は、水位センサW1がオンであるか否かを判断する(ステップS103)。陽極室S1が満水であるときには、水位センサW1がオンになり、陽極室S1が満水でないときには、水位センサW1はオフになる。制御装置50は、水位センサW1がオフであると判断した場合には(ステップS103:No)、電磁弁V1のオンを継続する。一方、制御装置50は、水位センサW1がオンであると判断した場合には(ステップS103:Yes)、電磁弁V1をオフにする(ステップS104)。これにより、陽極室S1への水道水の供給が停止する。
次に、制御装置50は、直流電源31を運転する(ステップS105)。これにより、直流電源31によって、電極23,24に電圧が印加される。電極23,24に電圧が印加されると、陰極室S2に貯留された塩水中の塩素イオンCl−が、イオン交換膜21を通過して、陽極室S1へ移動する。陽極室S1へ移動した、塩素イオンCl−は酸化されるとともに、陽極室S1の水(H20)と反応する。これにより、次式(1)に示されるように、陽極室S1では、次亜塩素酸と塩酸を含有し、酸性を呈する酸性水が生成される。
2Cl−+H20→HClO+HCl+2e− …(1)
また、陰極室S2では、ナトリウムイオンNa+が生成される。ナトリウムイオンNa+は、陰極室S2の水酸イオンOH−と反応する。これにより、水酸化ナトリウムが生成される。また、陰極室S2では、水酸イオンOH−の対イオンである水素イオンH+が還元されて水素ガスが生成される。次式(2)に示されるように、陰極室S2では、水酸化ナトリウムを含有し、アルカリ性を呈するアルカリ性水と、水素ガスが生成される。
2Na++2e−+2H20→2NaOH+H2 …(2)
次に、制御装置50は、直流電源31の運転を開始してから、所定の時間が経過したか否かを判断する(ステップS106)。直流電源31の1回あたりの運転時間DTは、電極23及び陽極室S1などの大きさや、陰極室S2に貯留された塩水の濃度、直流電源31の出力電流などによって規定される。制御装置50は、直流電源31の運転を開始してから運転時間DTが経過していないと判断した場合には(ステップS106:No)、直流電源31の運転を継続する。
一方、制御装置50は、直流電源31の運転を開始してから運転時間DTが経過したと判断した場合には(ステップS106:Yes)、直流電源31の運転を停止する(ステップS107)。これにより、陽極室S1は、所定濃度の次亜塩素酸水が生成された状態になっている。
次に、制御装置50は、電磁弁V2をオンにする(ステップS108)。これによって、陽極室S1で生成された電解水が貯留タンク12へ移送される。
次に、制御装置50は、電磁弁V2をオンにしてから、所定の時間が経過したか否かを判断する(ステップS109)。貯留タンク12へ電解水を移送するために要する移送時間TTは、陽極室S1の大きさや、管路111の内径や長さなどによって規定される。制御装置50は、電解水の移送を開始してから移送時間TTが経過していないと判断した場合には(ステップS109:No)、電磁弁V2のオンを維持して、電解水の移送を継続する。
一方、制御装置50は、電解水の移送を開始してから移送時間TTが経過したと判断した場合には(ステップS109:Yes)、電磁弁V2をオフにする。これにより、貯留タンク12への電解水の移送が停止する。以降、制御装置50は、ステップS101〜S110の処理を繰り返し実行する。
以上説明したように本実施形態に係る電解水製造装置10では、電解水が生成される陽極室S1に一定量の水が供給され、陽極室S1が水の出入りのない静水状態にされたうえで、電解が行われる。そして、電解水が生成されたら一旦電解が中止され、陽極室S1の電解水が貯留タンク12へ移送される。このように、所定量の水に対する電解と、生成された電解水の移送とが交互に繰り返されることにより、濃度が一定の電解水が貯留タンク12に貯留する。したがって、連続的な電解水の供給と、高品質な電解水の供給の双方が可能になる。
例えば、陽極室S1に対して水道水などの原水の供給と排出を連続して行う通水式の電解水製造装置では、電解水が継続的に生成される。このため、電解水の連続的な供給が可能であった。しかしながら、通水式の電解水製造装置では、電解水の濃度を一定に維持するのが困難な場合がある。
また、陽極室S1の水を静水状態にして電解を行う貯留式の電解水製造装置では、一定量の水に対して通電を行うことで電解水が生成される。このため、濃度が一定の電解水を容易に生成することができる。しかしながら、電解水を利用するためには、陽極室での電解が完了するまで待つ必要がある。このため、陽極室に生成された電解水を使い果たした場合には、次の電解水が生成されるまで、電解水の使用を控える必要がある。また、1回の電解で得られる電解水の量は、陽極室の容量で決まる。しかし、電極室の容量を大きくすると、電解水の生成が完了するまでの時間が延びてしまうため、電極室の容量を極端に大きくすることは現実的ではない。以上のように、貯留式の電解水製造装置には、電解水を連続的に供給するための課題が存在した。
本実施形態に係る電解水製造装置10では、通水式の電解水製造装置の利点である電解水の連続的な供給と、貯留式の電解水製造装置の利点である高品質な電解水の供給を両立することが可能となる。
また、本実施形態に係る電解水製造装置10では、高品質な電解水の連続的な供給と、装置の簡素化を実現することができる。
電解水に含まれる次亜塩素酸等の濃度は、電解時の電流値、電解槽の電解効率の他、電解槽に供給される原水の通水量に依存して変化する。電解時の電流値は所定の値に制御することが容易であり、電解槽の電解効率は予め求めることが可能である。しかしながら、原水の通水量は、原水の圧力変動や、電解水の排水先の背圧変動の影響を受けて変動する。このため、例えば、通水式の電解水製造装置10では、電解水の濃度を一定に維持するための定流量弁を配管経路に装着したり、流量計を用いて原水の供給量や電解水の排水量を監視し、原水の供給管路や電解水の排水管路に設けられた制御バルブを調整する制御が行われる。
しかしながら、定流量弁は一定流量に制御できる水圧範囲に制約があるほか、精度も高くない。また、流量計と制御バルブを用いることで、原水の供給量や電解水の排水量を精度よく制御することができるが、流量計や制御バルブは比較的サイズが大きく高価である。そのため、小型の電解水製造装置には適用が困難である。
本実施形態に係る電解水製造装置10は、定流量弁や、流量計及び制御バルブなどを必要としない。そのため、電解水の連続的な供給を実現しつつ、装置を簡素化し小型化することが可能となる。その結果、装置の製造コストや、ランニングコストを低減することができる。
また、本実施形態に係る電解水製造装置10は、電解水を貯留する貯留タンク12を備えている。したがって、電解水製造装置10の稼働状況にかかわらず、電解水を供給することが可能となる。
通水式の電解水製造装置は、需要の変動にかかわらず一定量の電解水を供給することしかできないが、電解水製造装置10では、貯留タンク12の容量が許す限り、電解水の供給量が変動したとしても、安定した供給が可能になる。また、貯留式の電解水製造装置のように、電解水の生成を待つことなく、安定した電解水の供給が可能になる。
本実施形態では、電解水製造装置自体が貯留タンク12を備えているが、貯留タンク12は、電解水製造装置と切り離されていてもよい。
また、水位センサW2は、管路111の先端に一体的に取り付けられていてもよい。たとえば、貯留タンクとして既存のタンクを用いる場合、管路111の先端に水位センサW2が設けられていれば、管路111を既存のタンクに適切に取り付けることで、電解水製造装置が上述した動作を行うことが可能になる。
既存のタンクとしてバケツのような容器を用いる場合、タンクに水位センサW2を取り付けるのが困難であることが考えられる。この場合は、制御フローのステップS101の処理として、電解水の量を受け付けて、受け付けた値を超えるかどうかで電解を行うか否かを判断すればよい。例えば、容量7Lのバケツを電解水製造装置の下に配置して、これに電解水を供給する場合、陽極室S2の容積VOL2が1Lであれば、ユーザ等は、例えばこの倍数の6Lを電解水製造装置に入力する。電解水の供給量6Lを受け付けた電解水製造装置は、6回の電解水の生成及び排水を行う。これにより、バケツに6Lの電解水が供給される。この場合においても、電極室S1の容積VOL2が大き過ぎると、一般的に用いられている容器に対して、1回あたりの生成量が荒すぎることになる。そのため、上述したように、電極室S1の容積VOL2は、0.5〜5Lであることが望ましい。
本実施形態では、陰極室S2の塩水を入れ替えることなく、陽極室S1で酸性水を複数回生成する場合について説明した。これに限らず、陰極室S2の塩水の入れ替えを、適宜行うこととしてもよい。例えば、陰極室S2に対して、塩水を自動的に給排水する機構を備える装置の場合には、酸性水を生成するための電解を行うことにより陰極室S2の塩水の濃度が低下したときに、適宜塩水の交換を行うこととしてもよい。
具体的には、陽極室S1での電解処理と給排水が5回行われる毎に1度、陰極室S2の塩水を交換するための塩水の排水及び給水を自動的に行う。陰極室S2の塩水を自動的に交換するための機構としては、陽極室S1へ原水を供給する機構と同様に、電磁弁を備え陰極室S1へ接続される塩水の供給管路と排水管路などから構成することができる。
《第2の実施形態》
次に、第2の実施形態を図面に基づいて説明する。第1の実施形態と同一又は同等の構成については、同等の符号を用いるとともに、その説明を省略又は簡略する。
図3は、第2の実施形態に係る電解水製造装置10Aの概略構成を示す図である。電解水製造装置10Aは、塩水を電気分解することにより、酸性の次亜塩素酸を含む酸性水と、アルカリ性の水酸化ナトリウムを含むアルカリ性水と、を生成する装置である。電解水製造装置10Aは、電解槽11が陽極室S1,陰極室S2,中間室S3に区画されている点で、第1の実施形態に係る電解水製造装置10と相違している。
図3に示されるように、電解水製造装置10Aは、電解槽11、貯留タンク12A,12B、直流電源31、及び制御装置50を備えている。
電解槽11は、樹脂やステンレス鋼などからなる容体である。電解槽11の内部は、1組のイオン交換膜21,22によって、陽極室S1,陰極室S2,中間室S3に区分されている。イオン交換膜21は、例えば塩素イオンCl−などの陰イオンを通過させる性質を有する陰イオン交換膜である。また、イオン交換膜22は、例えばナトリウムイオンNa+などの陽イオンを通過させる性質を有する陽イオン交換膜である。
陰イオン交換膜としては、アストム社のネオセプタ(登録商標)、AGCエンジニアリング社のセレミオン(登録商標)などを用いることができる。陽イオン交換膜としては、例えば、イー・アイ・デュポン社のNAFION(登録商標)112,115,117や、旭硝子株式会社のフレミオン(登録商標)、旭化成株式会社のACIPLEX(登録商標)などを用いることができる。また、イオン交換膜21,22の双方、或いは一方に代えて、多孔質膜を用いることもできる。
中間室S3は、2つのイオン交換膜21,22によって挟まれる空間である。中間室S3は、塩化ナトリウム(NaCl)を電解質とする水が充填される。
陽極室S1は、イオン交換膜21を介して、中間室S3に隣接する空間である。陽極室S1には、酸性水を生成するための電極23が配置される。また、陰極室S2は、イオン交換膜22を介して、中間室S3に隣接する空間である。陰極室S2は、アルカリ性水を生成するための電極24が配置される。
陽極室S1及び陰極室S2は、管路110を介して、商用の水道設備に接続されている。また、陽極室S1は、管路111Aを介して、貯留タンク12Aに接続され、陰極室S2は、管路111Bを介して、貯留タンク12Bに接続されている。
陽極室S1及び陰極室S2には、水道設備から水道水が供給される。水道設備から陽極室S1に供給される水道水は、電磁弁V11によって制御され、水道設備から陰極室S2に供給される水道水は、電磁弁V12によって制御される。電磁弁V11,V12は、例えばノーマル閉の電磁弁である。陽極室S1の水位は、水位センサW1によって検出される。また、陰極室S2の水位は、水位センサW3によって検出される。
貯留タンク12A,12Bは、相互に同等の構成を有し、電解槽11よりも低い位置に設置されている。貯留タンク12Aは、電解槽11の陽極室S1と管路111Aを介して接続されている。また、貯留タンク12Bは、電解槽11の陰極室S2と管路111Bを介して接続されている。貯留タンク12A,12Bの水位は、例えば水位センサW2,W4によって検出される。また、貯留タンク12A,12Bには、オーバーフロー管120が設けられ、貯留される電解水の水位の上限が規定されている。
管路111Aは、一端が、陽極室S1の底部に接続され、他端が、貯留タンク12Aの上部に接続されている。陽極室S1で生成された電解水は、管路111Aを介して貯留タンク12Aへ移送され貯留される。また、貯留タンク12Aに貯留された電解水は、管路112Aを介して、電解水のユースポイントとなる外部装置などへ供給される。
管路111Bは、一端が、陰極室S2の底部に接続され、他端が、貯留タンク12Bの上部に接続されている。陰極室S2で生成された電解水は、管路111Bを介して貯留タンク12Bへ移送され貯留される。また、貯留タンク12Bに貯留された電解水は、管路112Bを介して、電解水のユースポイントとなる外部装置などへ供給される。
管路111A,112Aには、それぞれ電磁弁V21,V31が設けられている。電磁弁V21は、例えばノーマル閉の電磁弁である。陽極室S1で生成された電解水は、電磁弁V21がオンのときに、貯留タンク12Aへ移送され、電磁弁V21がオフのときには、貯留タンク12Aへの移送が停止する。また、電磁弁V31は、電解水製造装置10Aのユーザや、外部装置によって制御される電磁弁である。貯留タンク12Aの電解水は、電磁弁V31が開のときに、ユースポイントへ供給される。電磁弁V31が閉のときには、ユースポイントへの供給が停止する。
同様に、管路111B,112Bには、それぞれ電磁弁V22,V32が設けられている。陰極室S2で生成された電解水は、電磁弁V22がオンのときに、貯留タンク12Bへ移送される。電磁弁V22がオフのときには、貯留タンク12Bへの移送が停止する。また、貯留タンク12Bの電解水は、電磁弁V32が開のときに、ユースポイントへ供給される。電磁弁V32が閉のときには、ユースポイントへの供給が停止する。
制御装置50は、補助記憶に記憶されたプログラムに基づいて、上述した、直流電源31、各電磁弁V11,V12,V21,V22を駆動する。
次に、上述のように構成される電解水製造装置10Aの動作について説明する。図4は、制御装置50が実行する一連の処理を示すフローチャートである。電解水製造装置10Aは、制御装置50が、図4のフローチャートに準じた処理を行うことで動作する。以下、図4を参照して、制御装置50が実行する処理について説明する。
説明の前提として、各電磁弁V11,V12,V21,V22は閉であり、直流電源31は停止しているものとする。また、陽極室S1,陰極室S2、及び貯留タンク12A,12Bは、空の状態であり、中間室S3には塩水が充填されているものとする。
まず、制御装置50は、水位センサW2,W4の双方がオンであるか否かを判断する(ステップS201)。貯留タンク12A,12Bが満水であるときには、水位センサW2,W4がオンになり、貯留タンク12A,12Bが満水でないときには、水位センサW2,W4はオフになる。制御装置50は、水位センサW2,W4の双方がオンであると判断した場合には(ステップS201:Yes)、貯留タンク12A,12Bの電解水がユーザや外部装置によって排水されるのを待ち受ける。
一方、制御装置50は、水位センサW2,W4の少なくとも一方がオフであると判断した場合には(ステップS201:No)、電磁弁V11,V12をオンにする(ステップS202)。これにより、水道水が、電解槽11の陽極室S1及び陰極室S2へ供給される。
次に、制御装置50は、水位センサW1がオンであるか否かを判断する(ステップS203)。陽極室S1が満水であるときには、水位センサW1がオンになり、陽極室S1が満水でないときには、水位センサW1はオフになる。制御装置50は、水位センサW1がオフであると判断した場合には(ステップS203:No)、電磁弁V11のオンを継続する。一方、制御装置50は、水位センサW1がオンであると判断した場合には(ステップS203:Yes)、電磁弁V11をオフにする(ステップS204)。これにより、陽極室S1への水道水の供給が停止する。
次に、制御装置50は、水位センサW3がオンであるか否かを判断する(ステップS205)。陰極室S2が満水であるときには、水位センサW3がオンになり、陰極室S2が満水でないときには、水位センサW3はオフになる。制御装置50は、水位センサW3がオフであると判断した場合には(ステップS205:No)、電磁弁V12のオンを継続する。一方、制御装置50は、水位センサW3がオンであると判断した場合には(ステップS205:Yes)、電磁弁V12をオフにする(ステップS206)。これにより、陰極室S2への水道水の供給が停止する。
次に、制御装置50は、水位センサW1,W3の双方がオンであるか否かを判断する(ステップS207)。制御装置50は、水位センサW1,W3の少なくとも一方がオフであると判断した場合には(ステップS207:No)、ステップS203〜S206の処理を繰り返し実行する。
一方、制御装置50は、水位センサW1,W3の双方がオンであると判断した場合には(ステップS207:Yes)、直流電源31を運転する(ステップS208)。これにより、電極23と電極24の間にある中間室S3から、塩水中の塩素イオンCl−が、イオン交換膜21を通過して、陽極室S1へ移動する。陽極室S1へ移動した、塩素イオンCl−は酸化されるとともに、陽極室S1の水(H20)と反応する。これにより、次式(3)に示されるように、陽極室S1では、次亜塩素酸と塩酸を含有し、酸性を呈する酸性水が生成される。
2Cl−+H20→HClO+HCl+2e− …(3)
また、中間室S3から、ナトリウムイオンNa+が、イオン交換膜22を通過して、陰極室S2へ移動する。陰極室S2へ移動したナトリウムイオンNa+は、陰極室S2の水酸イオンOH−と反応する。これにより、水酸化ナトリウムが生成される。また、陰極室S2では、水酸イオンOH−の対イオンである水素イオンH+が還元されて水素ガスが生成される。次式(4)に示されるように、陰極室S2では、水酸化ナトリウムを含有し、アルカリ性を呈するアルカリ性水と、水素ガスが生成される。
2Na++2e−+2H20→2NaOH+H2 …(4)
次に、制御装置50は、直流電源31の運転を開始してから、所定の時間が経過したか否かを判断する(ステップS209)。制御装置50は、直流電源31の運転を開始してから所定の時間が経過していないと判断した場合には(ステップS209:No)、直流電源31の運転を継続する。
一方、制御装置50は、直流電源31の運転を開始してから所定の時間が経過したと判断した場合には(ステップS209:Yes)、直流電源31の運転を停止する(ステップS210)。これにより、陽極室S1では、次亜塩素酸水を主成分とする酸性水が生成され、陰極室S2では水酸化ナトリウムを主成分とするアルカリ性水が生成された状態になっている。
次に、制御装置50は、電磁弁V21,V22をオンにする(ステップS211)。これによって、陽極室S1で生成された電解水が貯留タンク12Aへ移送され、陰極室S2で生成された電解水が貯留タンク12Bへ移送される。
次に、制御装置50は、電磁弁V21,V22をオンにしてから、所定の時間が経過したか否かを判断する(ステップS212)。制御装置50は、所定の時間が経過していないと判断した場合には(ステップS212:No)、電磁弁V21,V22のオンを継続する。
一方、制御装置50は、電解水の移送を開始してから所定の時間が経過したと判断した場合には(ステップS212:Yes)、電磁弁V21,V22をオフにする。これにより、貯留タンク12A,12Bへの電解水の移送が停止する。以降、制御装置50は、ステップS201〜S213の処理を繰り返し実行する。
以上説明したように本実施形態に係る電解水製造装置10Aでは、電解水が生成される陽極室S1及び陰極室S2に一定量の水が供給され、陽極室S1及び陰極室S2が水の出入りのない静水状態とされたうえで、電解が行われる。そして、電解水が生成されたら一旦電解が中止され、陽極室S1及び陰極室S2の電解水が、それぞれ貯留タンク12A,12Bへ移送される。このように、所定量の水に対する電解と、生成された電解水の移送が交互に繰り返されることにより、濃度が一定の電解水が貯留タンク12A,12Bに貯留する。したがって、連続的な電解水の供給と、高品質な電解水の供給の双方が可能になる。また、本実施形態に係る電解水製造装置10Aでは、高品質な電解水の連続的な供給と、装置の簡素化を実現することができる。
また、本実施形態に係る電解水製造装置10Aは、次亜塩素酸を主成分とする陽極水と、水酸化ナトリウムを主成分とする陰極水をそれぞれ貯留する貯留タンク12A,12Bを備えている。したがって、陽極水と陰極水をそれぞれ独立して使用することが可能となる。
例えば、従来の通水式電解水製造装置では、同量の陽極水と陰極水を使用しない場合には、余剰な一方の電解水を廃棄せざるを得なかった。しかしながら、本実施形態に係る電解水製造装置10Aでは、陽極水と陰極水を別々に貯留することで、それぞれ独立して使用することが可能となる。
また、電解水製造装置10Aに、貯留タンク12Aの電解水と、貯留タンク12Bの電解水を混合するための混合機構を設けることもできる。これにより、所望のpH値の電解水を得ることができ、電解水製造装置の利用拡大を図ることができる。
《第3の実施形態》
次に、第3の実施形態を図面に基づいて説明する。上記実施形態と同一又は同等の構成については、同等の符号を用いるとともに、その説明を省略又は簡略する。
図5は、第3の実施形態に係る電解水製造装置10Bの概略構成を示す図である。電解水製造装置10Bは、塩水タンク13を備えている点と、貯留タンク12が、電解槽11と同じ高さないしは上方になるように配置されている点で、第1の実施形態に係る電解水製造装置10と相違している。
塩水タンク13は、塩水を貯留するタンクである。塩水タンク13は、管路113,114を介して、電解槽11に接続される。管路114には、循環ポンプ51が設けられている。循環ポンプ51は、制御装置50の指示に基づいて、塩水タンク13の塩水を、電解槽11の陰極室S2に供給する。これにより、塩水が、電解槽11の陰極室S2と塩水タンク13の間を循環する。陰極室S2から塩水タンク13に戻る塩水の量は、例えば、不図示の圧力調整バルブによって調整される。
貯留タンク12は、電解槽11の下方ではなく、電解槽11が設置されるフロアと同等ないしは上方のレベルのフロアに設置されている。貯留タンク12と電解槽11とを接続する管路111には、電磁弁の代わりに移送ポンプ52が設けられている。移送ポンプ52は、制御装置50の指示に基づいて、陽極室S1で生成された電解水を、貯留タンク12へ移送する。
本実施形態に係る電解水製造装置10Bでは、塩水タンク13と陰極室S2との間で塩水が循環する。このため、陰極室S2での塩水の濃度変化が抑制され、結果的に安定して電解水を生成することが可能となる。
また、本実施形態に係る電解水製造装置10Bは、移送ポンプ52を備えている。そのため、貯留タンク12を、電解槽11の下方に配置する必要がなく、例えば電解槽11の横や、電解槽11から離れたところに設置することができる。したがって、電解水製造装置を設置する際の自由度が向上する。例えば、電解水製造装置を設置するところの天井が低い場合や、貯留タンクを、電解槽より高いところに配置する必要がある場合にも、電解水製造装置を設置することが可能になる。
《第4の実施形態》
次に、第4の実施形態を図面に基づいて説明する。上記実施形態と同一又は同等の構成については、同等の符号を用いるとともに、その説明を省略又は簡略する。
図6は、第4の実施形態に係る電解水製造装置10Cの概略構成を示す図である。電解水製造装置10Cは、複数の電解槽11を備えている点で、第1の実施形態に係る電解水製造装置10と相違している。
図6に示されるように、電解水製造装置10Cは、電解槽11、電極23,24、イオン交換膜21からなるユニットU1,U2を備えている。各ユニットU1,U2の陽極室S1は、ユニットU1,U2に共通の貯留タンク12に接続されている。そして、各ユニットU1,U2は、制御装置50によって、図2示されるフローチャートに従って制御される。
本実施形態に係る電解水製造装置10Cは、電解槽11を備える複数のユニットU1,U2を備えている。したがって、電解水の生成量を増加させるとともに、故障に対する信頼性を向上することができる。
例えば、通水式の電解水製造装置において、電解水の生成量を増加させるためには、電極の面積を大きくすることによって電解時の電流を大きくし、単位時間当たりに生成される電解水の量を増加させることが一般的には行われる。しかし、電解時の電流を大きくすると、電解槽内の電流分布が不均一になりやすく、生成される電解水が所望の性状とならない場合や、電解槽の発熱を招くことがある。また、電解水製造装置も大型化する。
貯留式の電解水製造装置の電解槽や補機類の構造は、一般的な通水式の電解水製造装置の電解槽や補機類の構造に比較してシンプルである。そこで、電解水製造装置10Cでは、電解槽を含むユニットを複数搭載し、それぞれのユニットで生成された電解水を共通の貯留タンクに貯留する構造とした。これにより、見かけ上の電解水の生成量を増加させることができる。
このような構成とすることで、各ユニットを構成する電解槽として、標準的な仕様の電解槽を設定しておき、電解水製造装置の仕様に応じて、各ユニットの数を2つ以上に増加させることで、所望の仕様の電解水製造装置を実現することができる。電解槽の仕様を標準化することで、電解水製造装置の工程管理、品質管理を簡素化することができ、ひいては製品の製造コストやランニングコストを削減することができる。
また、本実施形態に係る電解水製造装置10Cのように、複数のユニットを備えていると、万が一いずれかのユニットの電解槽に不具合が発生したとしても、残りのユニットを使用して、電解水生成能力は低下するものの、電解水の生成を継続することがでる。したがって、電解水製造装置の信頼性を大幅に向上することが可能となり、電解水の供給が工場全体の操業を左右するような場合に適した装置となる。
《第5の実施形態》
次に、第5の実施形態を図面に基づいて説明する。上記実施形態と同一又は同等の構成については、同等の符号を用いるとともに、その説明を省略又は簡略する。
図7は、第5の実施形態に係る電解水製造装置10Dの概略構成を示す図である。電解水製造装置10Dは、陽極室S1に供給する水を貯留する貯留タンク14を有している点で、第1の実施形態に係る電解水製造装置10と相違している。
図7に示されるように、貯留タンク14は、電解槽11の上方に配置されている。貯留タンク14には、電解を行う前に、水道水や井戸水などの原水が予め充填される。貯留タンク14と陽極室S1は、管路110によって接続されている。管路110に設けられた電磁弁V1がオンになると、貯留タンク14に貯留された原水が重力によって陽極室S1に供給される。電解水製造装置10Dにおいても、制御装置50によって、図2示されるフローチャートに従った制御が実行される。
本実施形態に係る電解水製造装置10Dは、水道水や井戸水などの原水を予め充填することが可能な貯留タンク14を有している。したがって、電解水製造装置の可搬性を向上したり、設置場所の自由度を向上することが可能となる。
例えば、上記実施形態に係る電解水製造装置10,10A〜10Cでは、陽極室S1に供給される水が水道水やポンプで送水される井戸水等の加圧された水を前提としている。そのため、電磁弁V1,V11,V12を開にするだけで、陽極室S1へ原水を供給することが可能となっていた。しかしながら、この種の電解水製造装置では、水道設備等への配管による接続が必須である。そのため、電解水製造装置の可搬性や、設置場所の自由度が劣っている。
可搬性に優れる電解水製造装置としては、ポット形状の電解槽を有する小型の貯留式電解水製造装置が市販されている。しかしながら、このような電解水製造装置は、小型で1回あたりの電解水の生成量も小さい。また、連続的に電解水を供給することが困難であり、生成された電解水を消費すると、再度電解水を生成するための時間が必要となる。
本実施形態に係る電解水製造装置10Dは、電解水を貯留するための貯留タンク12と、原水を貯留するための貯留タンク14の双方を備えている。そのため、通水式の電解水製造装置の利点である電解水の連続的な供給と、貯留式の電解水製造装置の利点である高品質な電解水の供給を両立するとともに、可搬性や設置場所の自由度を向上させることが可能となる。
以上詳述した通り、本発明の電解水製造装置によれば、従来の通水式電解水製造装置や貯留式電解水製造装置がそれぞれ有していた各種課題を解決し、拡張性に優れた電解水製造装置を提供することが可能となる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態によって限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、図3に示されるように、電解槽11の陽極室S1や陰極室S2の上部に引き込まれた管路110を介して、電解槽11に原水を供給する場合について説明した。これに限らず、一例として図8に示されるように、電解槽11の下部まで引き込まれた管路110A,110Bを介して、電解槽11に原水を供給することとしてもよい。
電解槽11の下部まで延設された管路110A,110Bに、正転及び逆転が可能な移送ポンプ53,54を設けたり、供給用と排水用のポンプを設けたりすることで、管路110A,110Bを用いて、原水の供給のみならず、原水の排水が可能となる。これにより装置の簡素化及び小型化を実現することができる。
なお、図8に示される例では、管路110A,110Bが、電解槽11の上部から下部へ引き込まれている。これに限らず、管路110A,110Bを、電解槽11の底部に接続することとしてもよい。
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施しうるものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。