以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の焼結合金は、Mnを含有する。Mnは、焼結合金に高機械強度(特に、スパッタリングターゲット材に適した高靱性)を付与するための必須成分である。Mnの含有量は、焼結合金に含まれる合計原子数を基準として、好ましくは10〜98.5at%、さらに好ましくは15〜95at%、さらに一層好ましくは18〜90at%である。Mnの効果を十分に発揮させる点から、Mnの含有量は10at%以上であることが好ましく、15at%であることがさらに好ましく、18at%以上であることがさらに一層好ましい。また、A群元素が十分に効果を発揮可能なA群元素の含有量を担保する点から、Mnの含有量は98.5at%以下であることが好ましく、95at%以下であることがさらに好ましく、90at%以下であることがさらに一層好ましい。
本発明の焼結合金は、Ga,Zn,Sn,Ge,Al,Coの1種または2種以上からなるA群元素を含有する。A群元素は、焼結合金に高機械強度(特に、スパッタリングターゲット材に適した高靱性)を付与するための必須成分である。A群元素の含有量は、焼結合金に含まれる合計原子数を基準として、好ましくは1.5〜75at%、さらに好ましくは2〜70at%、さらに一層好ましくは5〜65at%である。なお、A群元素が2種以上の元素からなる場合、A群元素の含有量は、2種以上の元素の合計含有量を意味する。A群元素の効果を十分に発揮させる点から、A群元素の含有量は1.5at%以上であることが好ましく、2at%以上であることがさらに好ましく、5at%以上であることがさらに一層好ましい。また、A群元素の含有量が75at%を超えると、A群元素の効果が飽和し、含有量の増加に見合う効果を得ることができないことから、A群元素の含有量は75at%以下であることが好ましく、70at%以下であることがさらに好ましく、65at%以下であることがさらに一層好ましい。
本発明の焼結合金は、必要に応じて、Fe,Ni,Cu,Ti,V,Cr,Si,Y,Zr,Nb,Mo,Ru,Rh,Pd,Ag,In,Ta,W,Re,Ir,Pt,Au,Bi,La,Ce,Nd,Sm,Gd,Tb,Dy,Hoの1種または2種以上からなるB群元素を含有してもよい。B群元素は、焼結合金の機械強度(特に靱性)を高めるためにMnおよびA群元素に追加して添加可能な任意成分である。B群元素の含有量は、焼結合金に含まれる合計原子数を基準として、好ましくは0〜62at%、さらに好ましくは0〜50at%、さらに一層好ましくは0〜45at%である。なお、B群元素が2種以上の元素からなる場合、B群元素の含有量は、2種以上の元素の合計含有量を意味する。B群元素の含有量が62at%を超えると、B群元素の効果が飽和し、含有量の増加に見合う効果を得ることができないことから、B群元素の含有量は62at%以下であることが好ましく、50at%以下であることがさらに好ましく、45at%以下であることがさらに一層好ましい。本発明の焼結合金がB群元素を含む場合、B群元素の効果を十分に発揮させる点から、B群元素の含有量は、2at%以上であることが好ましく、3at%以上であることがさらに好ましく、6at%以上であることがさらに一層好ましい。
本発明の焼結合金は、第1〜第6のMn相から選択された1種または2種以上のMn相を有する。第1〜第6のMn相により焼結合金に高機械強度(特に、スパッタリングターゲット材に適した高靱性)を付与することができる。
第1のMn相は、以下の条件を満たす。
[条件A1−1]第1のMn相が、MnおよびGaをMn:Ga=98:2〜73:27の原子数比で含有する。
[条件A1−2]第1のMn相におけるGa以外のA群元素とB群元素との合計量が、20at%以下である。すなわち、第1のMn相におけるMnとGaとの合計量が、80at%以上である。なお、条件A1−2における「at%」は、第1のMn相に含まれる合計原子数を基準として算出される。
第1のMn相の組成(元素の種類および含有量)が所定の範囲にあることは、エネルギー分散型蛍光X線分析装置を用いて確認することができる。
第1のMn相が条件A1−1および条件A1−2を満たすことにより、第1のMn相が靱性の高いγMn相またはβMn相となるため、第1のMn相により焼結合金に高機械強度(特に、スパッタリングターゲット材に適した高靱性)を付与することができる。第1のMn相におけるMnおよびGaの原子数比がMn:Ga=98:2〜73:27の範囲外(すなわち、Mn/Ga>98/2、または、Mn/Ga<73/27)であるか、あるいは、第1のMn相におけるGa以外のA群元素とB群元素との合計量が20at%を超えると、第1のMn相の靱性が低下し、第1のMn相が脆い相となる。
第1のMn相におけるMnおよびGaの原子数比は、Mn:Ga=98:2〜73:27の範囲内で適宜調整可能であるが、好ましくは、Mn:Ga=92:8〜80:20、さらに好ましくは、Mn:Ga=90:10〜82:18である。
第1のMn相におけるGa以外のA群元素とB群元素との合計量は、20at%以下の範囲で適宜調整可能であるが、好ましくは18at%以下、さらに好ましくは15at%以下である。第1のMn相におけるGa以外のA群元素とB群元素との合計量の下限値は0である。
条件A1−2は、第1のMn相が必ずGa以外のA群元素を含むことを意味しない。すなわち、第1のMn相に含まれるA群元素は、Gaのみで構成されていてもよいし、GaとGa以外の元素(Zn,Sn,Ge,Al,Coの1種または2種以上の元素)とで構成されていてもよい。第1のMn相に含まれるA群元素がGaのみで構成される場合、第1のMn相に含まれるGa以外のA群元素の合計量は0である。第1のMn相に含まれるA群元素がGaとGa以外の元素とで構成される場合、第1のMn相に含まれるGa以外のA群元素の合計量は、好ましくは0超〜15at%、さらに好ましくは0超〜10at%である。なお、第1のMn相に含まれるA群元素を構成する元素の種類は、本発明の焼結合金に含まれるA群元素を構成する元素の種類のうちの一部であってもよいし、全部であってもよい。例えば、本発明の焼結合金に含まれるA群元素がGaのみで構成される場合、第1のMn相に含まれるA群元素は、Gaのみで構成されるが、本発明の焼結合金に含まれるA群元素がGaとGa以外の1種の元素とで構成される場合、第1のMn相に含まれるA群元素は、Gaのみで構成されてもよいし、GaとGa以外の1種の元素とで構成されてもよい。また、本発明の焼結合金に含まれるA群元素がGaとGa以外の2種の元素とで構成される場合、第1のMn相に含まれるA群元素は、Gaのみで構成されてもよいし、GaとGa以外の1種の元素とで構成されてもよいし、GaとGa以外の2種の元素とで構成されてもよい。また、本発明の焼結合金に含まれるA群元素がGaとGa以外の3種の元素とで構成される場合、第1のMn相に含まれるA群元素は、Gaのみで構成されてもよいし、GaとGa以外の1種の元素とで構成されもよいし、GaとGa以外の2種の元素とで構成されてもよいし、GaとGa以外の3種の元素とで構成されてもよい。
第1のMn相に含まれるA群元素がGaとGa以外の元素(Zn,Sn,Ge,Al,Coの1種または2種以上の元素)とで構成される場合、第1のMn相は、Mn:Zn=98:2〜64:36、Mn:Sn=98.5:1.5〜74:26、Mn:Ge=98.5:1.5〜79:21、Mn:Al=98:2〜49:51、Mn:Co=96:4〜51:49の1種または2種以上を満足する原子数比でGa以外のA群元素を含有することが好ましい。第1のMn相におけるMnとGa以外のA群元素との原子数比の好ましい範囲は、第2〜第6のMn相に関して記載される好ましい範囲と同様である。但し、第1のMn相は、上記原子数比を満足するGa以外のA群元素に加えて、上記原子数比を満足しないGa以外のA群元素を含有してもよい。
条件A1−2は、第1のMn相が必ずB群元素を含むことを意味しない。すなわち、第1のMn相は、B群元素を含んでもよいし、含まなくてもよい。第1のMn相がB群元素を含む場合、第1のMn相に含まれるB群元素の合計量は、好ましくは0超〜15at%、さらに好ましくは0超〜10at%である。なお、本発明の焼結合金がB群元素を含まない場合、第1のMn相はB群元素を含まないが、本発明の焼結合金がB群元素を含む場合、第1のMn相はB群元素を含んでもよいし、含まなくてもよい。また、第1のMn相に含まれるB群元素を構成する元素の種類は、本発明の焼結合金に含まれるB群元素を構成する元素の種類のうちの一部であってもよいし、全部であってもよい。例えば、本発明の焼結合金に含まれるB群元素が2種の元素で構成される場合、第1のMn相に含まれるB群元素は、1種の元素で構成されてもよいし、2種の元素で構成されてもよい。また、本発明の焼結合金に含まれるB群元素が3種の元素で構成される場合、第1のMn相に含まれるB群元素は、1種の元素で構成されもよいし、2種の元素で構成されてもよいし、3種の元素で構成されてもよい。
第2のMn相は、以下の条件を満たす。
[条件A2−1]第2のMn相が、MnおよびZnをMn:Zn=98:2〜64:36の原子数比で含有する。
[条件A2−2]第2のMn相におけるZn以外のA群元素とB群元素との合計量が、20at%以下である。すなわち、第2のMn相におけるMnとZnとの合計量は、80at%以上である。なお、条件A2−2における「at%」は、第2のMn相に含まれる合計原子数を基準として算出される。
第2のMn相の組成(元素の種類および含有量)が所定の範囲にあることは、エネルギー分散型蛍光X線分析装置を用いて確認することができる。
第2のMn相が条件A2−1および条件A2−2を満たすことにより、第2のMn相が靱性の高いγMn相またはβMn相となるため、第2のMn相により焼結合金に高機械強度(特に、スパッタリングターゲット材に適した高靱性)を付与することができる。第2のMn相におけるMnおよびZnの原子数比がMn:Zn=98:2〜64:36の範囲外(すなわち、Mn/Zn>98/2、または、Mn/Zn<64/36)であるか、あるいは、第2のMn相におけるZn以外のA群元素とB群元素との合計量が20at%を超えると、第2のMn相の靱性が低下し、第2のMn相が脆い相となる。
第2のMn相におけるMnおよびZnの原子数比は、Mn:Zn=98:2〜64:36の範囲内で適宜調整可能であるが、好ましくは、Mn:Zn=98:2〜65:35、さらに好ましくは、Mn:Zn=80:20〜67:33、さらに一層好ましくは、Mn:Zn=75:25〜70:30である。
第2のMn相におけるZn以外のA群元素とB群元素との合計量は、20at%以下の範囲で適宜調整可能であるが、好ましくは18at%以下、さらに好ましくは15at%以下である。なお、第2のMn相におけるZn以外のA群元素とB群元素との合計量の下限値は0である。
条件A2−2は、第2のMn相が必ずZn以外のA群元素を含むことを意味しない。すなわち、第2のMn相に含まれるA群元素は、Znのみで構成されていてもよいし、ZnとZn以外の元素(Ga,Sn,Ge,Al,Coの1種または2種以上の元素)とで構成されていてもよい。第2のMn相に含まれるA群元素がZnのみで構成される場合、第2のMn相に含まれるZn以外のA群元素の合計量は0である。第2のMn相に含まれるA群元素がZnとZn以外の元素とで構成される場合、第2のMn相に含まれるZn以外のA群元素の合計量は、好ましくは0超〜15at%、さらに好ましくは0超〜10at%である。なお、第2のMn相に含まれるA群元素を構成する元素の種類は、本発明の焼結合金に含まれるA群元素を構成する元素の種類のうちの一部であってもよいし、全部であってもよい。例えば、本発明の焼結合金に含まれるA群元素がZnのみで構成される場合、第2のMn相に含まれるA群元素は、Znのみで構成されるが、本発明の焼結合金に含まれるA群元素がZnとZn以外の1種の元素とで構成される場合、第2のMn相に含まれるA群元素は、Znのみで構成されてもよいし、ZnとZn以外の1種の元素とで構成されてもよい。また、本発明の焼結合金に含まれるA群元素がZnとZn以外の2種の元素とで構成される場合、第2のMn相に含まれるA群元素は、Znのみで構成されてもよいし、ZnとZn以外の1種の元素とで構成されてもよいし、ZnとZn以外の2種の元素とで構成されてもよい。また、本発明の焼結合金に含まれるA群元素がZnとZn以外の3種の元素とで構成される場合、第2のMn相に含まれるA群元素は、Znのみで構成されてもよいし、ZnとZn以外の1種の元素とで構成されもよいし、ZnとZn以外の2種の元素とで構成されてもよいし、ZnとZn以外の3種の元素とで構成されてもよい。
第2のMn相に含まれるA群元素がZnとZn以外の元素(Ga,Sn,Ge,Al,Coの1種または2種以上の元素)とで構成される場合、第2のMn相は、Mn:Ga=98:2〜73:27、Mn:Sn=98.5:1.5〜74:26、Mn:Ge=98.5:1.5〜79:21、Mn:Al=98:2〜49:51、Mn:Co=96:4〜51:49の1種または2種以上を満足する原子数比でZn以外のA群元素を含有することが好ましい。第2のMn相におけるMnとZn以外のA群元素との原子数比の好ましい範囲は、第1および第3〜第6のMn相に関して記載される好ましい範囲と同様である。但し、第2のMn相は、上記原子数比を満足するZn以外のA群元素に加えて、上記原子数比を満足しないZn以外のA群元素を含有してもよい。
条件A2−2は、第2のMn相が必ずB群元素を含むことを意味しない。すなわち、第2のMn相は、B群元素を含んでもよいし、含まなくてもよい。第2のMn相がB群元素を含む場合、第2のMn相に含まれるB群元素の合計量は、好ましくは0超〜15at%、さらに好ましくは0超〜10at%である。なお、本発明の焼結合金がB群元素を含まない場合、第2のMn相はB群元素を含まないが、本発明の焼結合金がB群元素を含む場合、第2のMn相はB群元素を含んでもよいし、含まなくてもよい。また、第2のMn相に含まれるB群元素を構成する元素の種類は、本発明の焼結合金に含まれるB群元素を構成する元素の種類のうちの一部であってもよいし、全部であってもよい。例えば、本発明の焼結合金に含まれるB群元素が2種の元素で構成される場合、第2のMn相に含まれるB群元素は、1種の元素で構成されてもよいし、2種の元素で構成されてもよい。また、本発明の焼結合金に含まれるB群元素が3種の元素で構成される場合、第2のMn相に含まれるB群元素は、1種の元素で構成されもよいし、2種の元素で構成されてもよいし、3種の元素で構成されてもよい。
第3のMn相は、以下の条件を満たす。
[条件A3−1]第3のMn相が、MnおよびSnをMn:Sn=98.5:1.5〜74:26の原子数比で含有する。
[条件A3−2]第3のMn相におけるSn以外のA群元素とB群元素との合計量が、20at%以下である。すなわち、第3のMn相におけるMnおよびSnの合計量が、80at%以上である。なお、条件A3−2における「at%」は、第3のMn相に含まれる合計原子数を基準として算出される。
第3のMn相の組成(元素の種類および含有量)が所定の範囲にあることは、エネルギー分散型蛍光X線分析装置を用いて確認することができる。
第3のMn相が条件A3−1および条件A3−2を満たすことにより、第3のMn相が靱性の高いγMn相またはβMn相となるため、第3のMn相により焼結合金に高機械強度(特に、スパッタリングターゲット材に適した高靱性)を付与することができる。第3のMn相におけるMnおよびSnの原子数比がMn:Sn=98.5:1.5〜74:26の範囲外(すなわち、Mn/Sn>98.5/1.5、または、Mn/Sn<74/26)であるか、あるいは、第3のMn相におけるSn以外のA群元素とB群元素との合計量が20at%を超えると、第3のMn相の靱性が低下し、第3のMn相が脆い相となる。
第3のMn相におけるMnおよびSnの原子数比は、Mn:Sn=98.5:1.5〜74:26の範囲内で適宜調整可能であるが、好ましくは、Mn:Sn=98.5:1.5〜76:24、さらに好ましくは、Mn:Sn=95:5〜84:16、さらに一層好ましくは、Mn:Sn=93:7〜85:15である。
第3のMn相におけるSn以外のA群元素とB群元素との合計量は、20at%以下の範囲で適宜調整可能であるが、好ましくは18at%以下、さらに好ましくは15at%以下である。なお、第3のMn相におけるSn以外のA群元素とB群元素との合計量の下限値は0である。
条件A3−2は、第3のMn相が必ずSn以外のA群元素を含むことを意味しない。すなわち、第3のMn相に含まれるA群元素は、Snのみで構成されていてもよいし、SnとSn以外の元素(Ga,Zn,Ge,Al,Coの1種または2種以上の元素)とで構成されていてもよい。第3のMn相に含まれるA群元素がSnのみで構成される場合、第3のMn相に含まれるSn以外のA群元素の合計量は0である。第3のMn相に含まれるA群元素がSnとSn以外の元素とで構成される場合、第3のMn相に含まれるSn以外のA群元素の合計量は、好ましくは0超〜15at%、さらに好ましくは0超〜10at%である。なお、第3のMn相に含まれるA群元素を構成する元素の種類は、本発明の焼結合金に含まれるA群元素を構成する元素の種類のうちの一部であってもよいし、全部であってもよい。例えば、本発明の焼結合金に含まれるA群元素がSnのみで構成される場合、第3のMn相に含まれるA群元素は、Snのみで構成されるが、本発明の焼結合金に含まれるA群元素がSnとSn以外の1種の元素とで構成される場合、第3のMn相に含まれるA群元素は、Snのみで構成されてもよいし、SnとSn以外の1種の元素とで構成されてもよい。また、本発明の焼結合金に含まれるA群元素がSnとSn以外の2種の元素とで構成される場合、第3のMn相に含まれるA群元素は、Snのみで構成されてもよいし、SnとSn以外の1種の元素とで構成されてもよいし、SnとSn以外の2種の元素とで構成されてもよい。また、本発明の焼結合金に含まれるA群元素がSnとSn以外の3種の元素とで構成される場合、第3のMn相に含まれるA群元素は、Snのみで構成されてもよいし、SnとSn以外の1種の元素とで構成されもよいし、SnとSn以外の2種の元素とで構成されてもよいし、SnとSn以外の3種の元素とで構成されてもよい。
第3のMn相に含まれるA群元素がSnとSn以外の元素(Ga,Zn,Ge,Al,Coの1種または2種以上の元素)とで構成される場合、第3のMn相は、Mn:Ga=98:2〜73:27、Mn:Zn=98:2〜64:36、Mn:Ge=98.5:1.5〜79:21、Mn:Al=98:2〜49:51、Mn:Co=96:4〜51:49の1種または2種以上を満足する原子数比でSn以外のA群元素を含有することが好ましい。第3のMn相におけるMnとSn以外のA群元素との原子数比の好ましい範囲は、第1、第2および第4〜第6のMn相に関して記載される好ましい範囲と同様である。但し、第3のMn相は、上記原子数比を満足するSn以外のA群元素に加えて、上記原子数比を満足しないSn以外のA群元素を含有してもよい。
条件A3−2は、第3のMn相が必ずB群元素を含むことを意味しない。すなわち、第3のMn相は、B群元素を含んでもよいし、含まなくてもよい。第3のMn相がB群元素を含む場合、第3のMn相に含まれるB群元素の合計量は、好ましくは0超〜15at%、さらに好ましくは0超〜10at%である。なお、本発明の焼結合金がB群元素を含まない場合、第3のMn相はB群元素を含まないが、本発明の焼結合金がB群元素を含む場合、第3のMn相はB群元素を含んでもよいし、含まなくてもよい。また、第3のMn相に含まれるB群元素を構成する元素の種類は、本発明の焼結合金に含まれるB群元素を構成する元素の種類のうちの一部であってもよいし、全部であってもよい。例えば、本発明の焼結合金に含まれるB群元素が2種の元素で構成される場合、第3のMn相に含まれるB群元素は、1種の元素で構成されてもよいし、2種の元素で構成されてもよい。また、本発明の焼結合金に含まれるB群元素が3種の元素で構成される場合、第3のMn相に含まれるB群元素は、1種の元素で構成されもよいし、2種の元素で構成されてもよいし、3種の元素で構成されてもよい。
第4のMn相は、以下の条件を満たす。
[条件A4−1]第4のMn相が、MnおよびGeをMn:Ge=98.5:1.5〜79:21の原子数比で含有する。
[条件A4−2]第4のMn相におけるGe以外のA群元素とB群元素との合計量が、20at%以下である。すなわち、第4のMn相におけるMnおよびGeの合計量が、80at%以上である。なお、条件A4−2における「at%」は、第4のMn相に含まれる合計原子数を基準として算出される。
第4のMn相の組成(元素の種類および含有量)が所定の範囲にあることは、エネルギー分散型蛍光X線分析装置を用いて確認することができる。
第4のMn相が条件A4−1および条件A4−2を満たすことにより、第4のMn相が靱性の高いγMn相またはβMn相となるため、第4のMn相により焼結合金に高機械強度(特に、スパッタリングターゲット材に適した高靱性)を付与することができる。第4のMn相におけるMnおよびGeの原子数比がMn:Ge=98.5:1.5〜79:21の範囲外(すなわち、Mn/Ge>98.5/1.5、または、Mn/Ge<79/21)であるか、あるいは、第4のMn相におけるGe以外のA群元素とB群元素との合計量が20at%を超えると、第4のMn相の靱性が低下し、第4のMn相が脆い相となる。
第4のMn相におけるMnおよびGeの原子数比は、Mn:Ge=98.5:1.5〜79:21の範囲内で適宜調整可能であるが、好ましくは、Mn:Ge=94:6〜88:12、さらに好ましくは、Mn:Ge=93:7〜89:11である。
第4のMn相におけるGe以外のA群元素とB群元素との合計量は、20at%以下の範囲で適宜調整可能であるが、好ましくは18at%以下、さらに好ましくは15at%以下である。なお、第4のMn相におけるGe以外のA群元素とB群元素との合計量の下限値は0である。
条件A4−2は、第4のMn相が必ずGe以外のA群元素を含むことを意味しない。すなわち、第4のMn相に含まれるA群元素は、Geのみで構成されていてもよいし、GeとGe以外の元素(Ga,Zn,Sn,Al,Coの1種または2種以上の元素)とで構成されていてもよい。第4のMn相に含まれるA群元素がGeのみで構成される場合、第4のMn相に含まれるGe以外のA群元素の合計量は0である。第4のMn相に含まれるA群元素がGeとGe以外の元素とで構成される場合、第4のMn相に含まれるGe以外のA群元素の合計量は、好ましくは0超〜15at%、さらに好ましくは0超〜10at%である。なお、第4のMn相に含まれるA群元素を構成する元素の種類は、本発明の焼結合金に含まれるA群元素を構成する元素の種類のうちの一部であってもよいし、全部であってもよい。例えば、本発明の焼結合金に含まれるA群元素がGeのみで構成される場合、第4のMn相に含まれるA群元素は、Geのみで構成されるが、本発明の焼結合金に含まれるA群元素がGeとGe以外の1種の元素とで構成される場合、第4のMn相に含まれるA群元素は、Geのみで構成されてもよいし、GeとGe以外の1種の元素とで構成されてもよい。また、本発明の焼結合金に含まれるA群元素がGeとGe以外の2種の元素とで構成される場合、第4のMn相に含まれるA群元素は、Geのみで構成されてもよいし、GeとGe以外の1種の元素とで構成されてもよいし、GeとGe以外の2種の元素とで構成されてもよい。また、本発明の焼結合金に含まれるA群元素がGeとGe以外の3種の元素とで構成される場合、第4のMn相に含まれるA群元素は、Geのみで構成されてもよいし、GeとGe以外の1種の元素とで構成されもよいし、GeとGe以外の2種の元素とで構成されてもよいし、GeとGe以外の3種の元素とで構成されてもよい。
第4のMn相に含まれるA群元素がGeとGe以外の元素(Ga,Zn,Sn,Al,Coの1種または2種以上の元素)とで構成される場合、第4のMn相は、Mn:Ga=98:2〜73:27、Mn:Zn=98:2〜64:36、Mn:Sn=98.5:1.5〜74:26、Mn:Al=98:2〜49:51、Mn:Co=96:4〜51:49の1種または2種以上を満足する原子数比でGe以外のA群元素を含有することが好ましい。第4のMn相におけるMnとGe以外のA群元素との原子数比の好ましい範囲は、第1〜第3、第5および第6のMn相に関して記載される好ましい範囲と同様である。但し、第4のMn相は、上記原子数比を満足するGe以外のA群元素に加えて、上記原子数比を満足しない原子数比でGe以外のA群元素を含有してもよい。
条件A4−2は、第4のMn相が必ずB群元素を含むことを意味しない。すなわち、第4のMn相は、B群元素を含んでもよいし、含まなくてもよい。第4のMn相がB群元素を含む場合、第4のMn相に含まれるB群元素の合計量は、好ましくは0超〜15at%、さらに好ましくは0超〜10at%である。なお、本発明の焼結合金がB群元素を含まない場合、第4のMn相はB群元素を含まないが、本発明の焼結合金がB群元素を含む場合、第4のMn相はB群元素を含んでもよいし、含まなくてもよい。また、第4のMn相に含まれるB群元素を構成する元素の種類は、本発明の焼結合金に含まれるB群元素を構成する元素の種類のうちの一部であってもよいし、全部であってもよい。例えば、本発明の焼結合金に含まれるB群元素が2種の元素で構成される場合、第4のMn相に含まれるB群元素は、1種の元素で構成されてもよいし、2種の元素で構成されてもよい。また、本発明の焼結合金に含まれるB群元素が3種の元素で構成される場合、第4のMn相に含まれるB群元素は、1種の元素で構成されもよいし、2種の元素で構成されてもよいし、3種の元素で構成されてもよい。
第5のMn相は、以下の条件を満たす。
[条件A5−1]第5のMn相は、MnおよびAlをMn:Al=98:2〜49:51の原子数比で含有する。
[条件A5−2]第5のMn相におけるAl以外のA群元素とB群元素との合計量が、20at%以下である。すなわち、第5のMn相におけるMnおよびAlの合計量が、80at%以上である。なお、条件A5−2における「at%」は、第5のMn相に含まれる合計原子数を基準として算出される。
第5のMn相の組成(元素の種類および含有量)が所定の範囲にあることは、エネルギー分散型蛍光X線分析装置を用いて確認することができる。
第5のMn相が条件A5−1および条件A5−2を満たすことにより、第5のMn相が靱性の高いγMn相またはβMn相となるため、第5のMn相により焼結合金に高機械強度(特に、スパッタリングターゲット材に適した高靱性)を付与することができる。第5のMn相におけるMnおよびAlの原子数比がMn:Al=98:2〜49:51の範囲外(すなわち、Mn/Al>98/2、または、Mn/Al<49/51)であるか、あるいは、第5のMn相におけるAl以外のA群元素とB群元素との合計量が20at%を超えると、第5のMn相の靱性が低下し、第5のMn相が脆い相となる。
第5のMn相におけるMnおよびAlの原子数比は、Mn:Al=98:2〜49:51の範囲内で適宜調整可能であるが、好ましくは、Mn:Al=96:4〜59:41、さらに好ましくは、Mn:Al=90:10〜65:35である。
第5のMn相におけるAl以外のA群元素とB群元素との合計量は、20at%以下の範囲で適宜調整可能であるが、好ましくは18at%以下、さらに好ましくは15at%以下である。なお、第5のMn相におけるAl以外のA群元素とB群元素との合計量の下限値は0である。
条件A5−2は、第5のMn相が必ずAl以外のA群元素を含むことを意味しない。すなわち、第5のMn相に含まれるA群元素は、Alのみで構成されていてもよいし、AlとAl以外の元素(Ga,Zn,Sn,Ge,Coの1種または2種以上の元素)とで構成されていてもよい。第5のMn相に含まれるA群元素がAlのみで構成される場合、第5のMn相に含まれるAl以外のA群元素の合計量は0である。第5のMn相に含まれるA群元素がAlとAl以外の元素とで構成される場合、第5のMn相に含まれるAl以外のA群元素の合計量は、好ましくは0超〜15at%、さらに好ましくは0超〜10at%である。なお、第5のMn相に含まれるA群元素を構成する元素の種類は、本発明の焼結合金に含まれるA群元素を構成する元素の種類のうちの一部であってもよいし、全部であってもよい。例えば、本発明の焼結合金に含まれるA群元素がAlのみで構成される場合、第5のMn相に含まれるA群元素は、Alのみで構成されるが、本発明の焼結合金に含まれるA群元素がAlとAl以外の1種の元素とで構成される場合、第5のMn相に含まれるA群元素は、Alのみで構成されてもよいし、AlとAl以外の1種の元素とで構成されてもよい。また、本発明の焼結合金に含まれるA群元素がAlとAl以外の2種の元素とで構成される場合、第5のMn相に含まれるA群元素は、Alのみで構成されてもよいし、AlとAl以外の1種の元素とで構成されてもよいし、AlとAl以外の2種の元素とで構成されてもよい。また、本発明の焼結合金に含まれるA群元素がAlとAl以外の3種の元素とで構成される場合、第5のMn相に含まれるA群元素は、Alのみで構成されてもよいし、AlとAl以外の1種の元素とで構成されもよいし、AlとAl以外の2種の元素とで構成されてもよいし、AlとAl以外の3種の元素とで構成されてもよい。
第5のMn相に含まれるA群元素がAlとAl以外の元素(Ga,Zn,Sn,Ge,Coの1種または2種以上の元素)とで構成される場合、第5のMn相は、Mn:Ga=98:2〜73:27、Mn:Zn=98:2〜64:36、Mn:Sn=98.5:1.5〜74:26、Mn:Ge=98.5:1.5〜79:21、Mn:Co=96:4〜51:49の1種または2種以上を満足する原子数比でAl以外のA群元素を含有することが好ましい。第5のMn相におけるMnとAl以外のA群元素との原子数比の好ましい範囲は、第1〜第4および第6のMn相に関して記載される好ましい範囲と同様である。但し、第5のMn相は、上記原子数比を満足するAl以外のA群元素に加えて、上記原子数比を満足しないAl以外のA群元素を含有してもよい。
条件A5−2は、第5のMn相が必ずB群元素を含むことを意味しない。すなわち、第5のMn相は、B群元素を含んでもよいし、含まなくてもよい。第5のMn相がB群元素を含む場合、第5のMn相に含まれるB群元素の合計量は、好ましくは0超〜15at%、さらに好ましくは0超〜10at%である。なお、本発明の焼結合金がB群元素を含まない場合、第5のMn相はB群元素を含まないが、本発明の焼結合金がB群元素を含む場合、第5のMn相はB群元素を含んでもよいし、含まなくてもよい。また、第5のMn相に含まれるB群元素を構成する元素の種類は、本発明の焼結合金に含まれるB群元素を構成する元素の種類のうちの一部であってもよいし、全部であってもよい。例えば、本発明の焼結合金に含まれるB群元素が2種の元素で構成される場合、第5のMn相に含まれるB群元素は、1種の元素で構成されてもよいし、2種の元素で構成されてもよい。また、本発明の焼結合金に含まれるB群元素が3種の元素で構成される場合、第5のMn相に含まれるB群元素は、1種の元素で構成されもよいし、2種の元素で構成されてもよいし、3種の元素で構成されてもよい。
第6のMn相は、以下の条件を満たす。
[条件A6−1]第6のMn相は、MnおよびCoをMn:Co=96:4〜51:49の原子数比で含有する。
[条件A6−2]第6のMn相におけるCo以外のA群元素とB群元素との合計量が、20at%以下である。すなわち、第6のMn相におけるMnおよびCoの合計量が、80at%以上である。なお、条件A6−2における「at%」は、第6のMn相に含まれる合計原子数を基準として算出される。
第6のMn相の組成(元素の種類および含有量)が所定の範囲にあることは、エネルギー分散型蛍光X線分析装置を用いて確認することができる。
第6のMn相が条件A6−1および条件A6−2を満たすことにより、第6のMn相が靱性の高いγMn相またはβMn相となるため、第6のMn相により焼結合金に高機械強度(特に、スパッタリングターゲット材に適した高靱性)を付与することができる。第6のMn相におけるMnおよびCoの原子数比がMn:Co=96:4〜51:49の範囲外(すなわち、Mn/Co>96/4、または、Mn/Co<51/49)であるか、あるいは、第6のMn相におけるCo以外のA群元素とB群元素との合計量が20at%を超えると、第6のMn相の靱性が低下し、第6のMn相が脆い相となる。
第6のMn相におけるMnおよびCoの原子数比は、Mn:Co=96:4〜51:49の範囲内で適宜調整可能であるが、好ましくは、Mn:Co=83:17〜64:36、さらに好ましくは、Mn:Co=80:20〜70:30である。
第6のMn相におけるCo以外のA群元素とB群元素との合計量は、20at%以下の範囲で適宜調整可能であるが、好ましくは18at%以下、さらに好ましくは15at%以下である。なお、第6のMn相におけるCo以外のA群元素とB群元素との合計量の下限値は0である。
条件A6−2は、第6のMn相が必ずCo以外のA群元素を含むことを意味しない。すなわち、第6のMn相に含まれるA群元素は、Coのみで構成されていてもよいし、CoとCo以外の元素(Ga,Zn,Sn,Ge,Alの1種または2種以上の元素)とで構成されていてもよい。第6のMn相に含まれるA群元素がCoのみで構成される場合、第6のMn相に含まれるCo以外のA群元素の合計量は0である。第6のMn相に含まれるA群元素がCoとCo以外の元素とで構成される場合、第6のMn相に含まれるCo以外のA群元素の合計量は、好ましくは0超〜15at%、さらに好ましくは0超〜10at%である。なお、第6のMn相に含まれるA群元素を構成する元素の種類は、本発明の焼結合金に含まれるA群元素を構成する元素の種類のうちの一部であってもよいし、全部であってもよい。例えば、本発明の焼結合金に含まれるA群元素がCoのみで構成される場合、第6のMn相に含まれるA群元素は、Coのみで構成されるが、本発明の焼結合金に含まれるA群元素がCoとCo以外の1種の元素とで構成される場合、第6のMn相に含まれるA群元素は、Coのみで構成されてもよいし、CoとCo以外の1種の元素とで構成されてもよい。また、本発明の焼結合金に含まれるA群元素がCoとCo以外の2種の元素とで構成される場合、第6のMn相に含まれるA群元素は、Coのみで構成されてもよいし、CoとCo以外の1種の元素とで構成されてもよいし、CoとCo以外の2種の元素とで構成されてもよい。また、本発明の焼結合金に含まれるA群元素がCoとCo以外の3種の元素とで構成される場合、第6のMn相に含まれるA群元素は、Coのみで構成されてもよいし、CoとCo以外の1種の元素とで構成されもよいし、CoとCo以外の2種の元素とで構成されてもよいし、CoとCo以外の3種の元素とで構成されてもよい。
第6のMn相に含まれるA群元素がCoとCo以外の元素(Ga,Zn,Sn,Ge,Alの1種または2種以上の元素)とで構成される場合、第6のMn相は、Mn:Ga=98:2〜73:27、Mn:Zn=98:2〜64:36、Mn:Sn=98.5:1.5〜74:26、Mn:Ge=98.5:1.5〜79:21、Mn:Al=98:2〜49:51の1種または2種以上を満たす原子数比でCo以外のA群元素を含有することが好ましい。第6のMn相におけるMnとCo以外のA群元素との原子数比の好ましい範囲は、第1〜第5のMn相に関して記載される好ましい範囲と同様である。但し、第6のMn相は、上記原子数比を満足するCo以外のA群元素に加えて、上記原子数比を満足しないCo以外のA群元素を含有してもよい。
条件A6−2は、第6のMn相が必ずB群元素を含むことを意味しない。すなわち、第6のMn相は、B群元素を含んでもよいし、含まなくてもよい。第6のMn相がB群元素を含む場合、第6のMn相に含まれるB群元素の合計量は、好ましくは0超〜15at%、さらに好ましくは0超〜10at%である。なお、本発明の焼結合金がB群元素を含まない場合、第6のMn相はB群元素を含まないが、本発明の焼結合金がB群元素を含む場合、第6のMn相はB群元素を含んでもよいし、含まなくてもよい。また、第6のMn相に含まれるB群元素を構成する元素の種類は、本発明の焼結合金に含まれるB群元素を構成する元素の種類のうちの一部であってもよいし、全部であってもよい。例えば、本発明の焼結合金に含まれるB群元素が2種の元素で構成される場合、第6のMn相に含まれるB群元素は、1種の元素で構成されてもよいし、2種の元素で構成されてもよい。また、本発明の焼結合金に含まれるB群元素が3種の元素で構成される場合、第6のMn相に含まれるB群元素は、1種の元素で構成されもよいし、2種の元素で構成されてもよいし、3種の元素で構成されてもよい。
本発明の焼結合金において、第1〜第6のMn相の合計面積率は、10%以上であることが好ましい。これにより焼結合金に高機械強度(特に、スパッタリングターゲット材に適した高靱性)を付与することができる。焼結合金の靱性は、第1〜第6のMn相の合計面積率が増加するほど、向上する。第1〜第6のMn相の合計面積率は、さらに好ましくは25%以上、さらに一層好ましくは28%以上である。第1〜第6のMn相の合計面積率の上限値は、好ましくは100%、さらに好ましくは95%である。
「第1〜第6のMn相の合計面積率」は、Mn相の合計面積率を算出する際に、第1〜第6のMn相の面積は考慮するが、第1〜第6のMn相以外のMn相の面積は考慮しないことを意味するにすぎない。したがって、本発明の焼結合金は、第1〜第6のMn相以外のMn相を有していてもよい。また、本発明の焼結合金は、第1〜第6のMn相のすべてを有する必要はない。例えば、本発明の焼結合金が第1のMn相を有するが、その他のMn相を有しない場合、「第1〜第6のMn相の合計面積率」は、第1のMn相の合計面積率を意味し、本発明の焼結合金が第1および第2のMn相を有するが、その他のMn相を有しない場合、「第1〜第6のMn相の合計面積率」は、第1および第2のMn相の合計面積率を意味する。
第1〜第6のMn相の合計面積率の測定は、次の通り実施する。焼結合金から試験片を採取し、試験片の断面を研磨する。走査型電子顕微鏡およびエネルギー分散型蛍光X線分析装置を使用して、研磨した断面をミクロ組織観察する。ミクロ組織観察は、それぞれ60μm×50μmの面積を有する10個の領域に対して実施する。観察されたMn相が第1〜第6のMn相のいずれかに該当するか否かをエネルギー分散型蛍光X線分析装置により同定する。10個の領域のそれぞれにおいて、第1〜第6のMn相のいずれかに該当するMn相の面積を測定し、10個の領域における第1〜第6のMn相の合計面積を算出する。そして、式:10個の領域における第1〜第6のMn相の合計面積/10個の領域の合計面積(3000μm2×10=30000μm2)に基づいて、第1〜第6のMn相の合計面積率を算出する。
本発明の焼結合金において、大きさが2μm以上である第1〜第6のMn相の密度が、30000μm2当たり1個以上であることが好ましく、3000μm2当たり1個以上であることがさらに好ましい。これにより焼結合金に高機械強度(特に、スパッタリングターゲット材に適した高靱性)を付与することができる。本発明の焼結合金の靱性は、第1〜第6のMn相の大きさが増加するほど、また、第1〜第6のMn相の密度が増加するほど、向上する。所定面積当たり1個以上存在する第1〜第6のMn相の大きさは、2μm以上である限り特に限定されないが、好ましくは5μm以上、さらに好ましくは8μm以上である。第1〜第6のMn相の大きさの上限値は、好ましくは500μm、さらに好ましくは400μmである。大きさが2μm以上である第1〜第6のMn相の密度が30000μm2当たり1個以上である場合、大きさが2μm以上である第1〜第6のMn相の個数は30000μm2当たり1個以上である限り特に限定されないが、好ましくは30000μm2当たり3個以上、さらに好ましくは30000μm2当たり5個以上である。大きさが2μm以上である第1〜第6のMn相の密度が3000μm2当たり1個以上である場合、大きさが2μm以上である第1〜第6のMn相の個数は3000μm2当たり1個以上である限り特に限定されないが、好ましくは3000μm2当たり3個以上、さらに好ましくは30000μm2当たり5個以上である。
「大きさが2μm以上である第1〜第6のMn相」は、Mn相の密度を算出する際に、第1〜第6のMn相の個数は考慮するが、第1〜第6のMn相以外のMn相の個数は考慮しないことを意味するにすぎない。したがって、本発明の焼結合金は、第1〜第6のMn相以外のMn相を有していてもよい。また、本発明の焼結合金は、第1〜第6のMn相のすべてを有する必要はない。例えば、本発明の焼結合金が第1のMn相を有するが、その他のMn相を有しない場合、「大きさが2μm以上である第1〜第6のMn相」は、大きさが2μm以上である第1のMn相を意味し、本発明の焼結合金が第1および第2のMn相を有するが、その他のMn相を有しない場合、「大きさが2μm以上である第1〜第6のMn相」は、大きさが2μm以上である第1および第2のMn相を意味する。
大きさが2μm以上である第1〜第6のMn相の密度の測定は、次の通り実施する。焼結合金から試験片を採取し、試験片の断面を研磨する。走査型電子顕微鏡およびエネルギー分散型蛍光X線分析装置を使用して、研磨した断面をミクロ組織観察する。ミクロ組織観察は、それぞれ60μm×50μmの面積を有する10個の領域に対して実施する。観察されたMn相が第1〜第6のMn相のいずれかに該当するか否かをエネルギー分散型蛍光X線分析装置により同定する。Mn相の長径(すなわち、Mn相に外接する円の直径)をMn相の大きさとし、10個の領域のそれぞれに存在するMn相の大きさを測定する。10個の領域のそれぞれにおいて、第1〜第6のMn相のいずれかに該当し、大きさが2μm以上であるMn相の個数をカウントし、10個の領域における大きさが2μm以上の第1〜第6のMn相の合計個数を算出する。そして、10個の領域における大きさが2μm以上の第1〜第6のMn相の合計個数が1個以上である場合、「大きさが2μm以上である第1〜第6のMn相の密度が、30000μm2当たり1個以上である」とする。また、10個の領域のすべてにおいて、第1〜第6のMn相のいずれかに該当し、大きさが2μm以上であるMn相が1個以上観察された場合、「大きさが2μm以上である第1〜第6のMn相の密度が、3000μm2当たり1個以上である」とする。
後述する実施例に示すように、焼結合金におけるMn相の大きさは、Mn相の主体となるアトマイズ粉末等の原料粉末(以下「Mn相形成用原料粉末」という場合がある)の粒径に依存し、実施例で観察されたMn相形成用原料粉末の粒径の範囲は2μm〜500μmであった。特に粒径が30μm〜180μmの粒子が多く観察された。焼結合金が有するMn相の数は、Mn形成用原料粉末に含まれる粒子の数とほぼ同等である。すなわち、焼結合金中のMn相の割合は、Mn相形成用原料粉末とその他の原料粉末との混合比におおむね依存する。表5に示す本発明例56〜79のように、所定の条件を満たす単一の原料粉末を使用する場合、焼結合金の全体が、第1〜第6のMn相のいずれかに該当するMn相により形成されるので、第1〜第6のMn相の合計面積率は100%となる。
本発明の焼結合金において、抗折強度が100MPa以上であることが好ましい。抗折強度が100MPa以上である焼結合金は、高機械強度(特に、スパッタリングターゲット材に適した高靱性)を有する。本発明の焼結合金の靱性は、抗折強度が増加するほど、向上する。抗折強度は、さらに好ましくは120MPa以上、さらに一層好ましくは130MPa以上である。抗折強度の上限値は、例えば、400MPaである。
抗折強度の測定は、次の通り実施する。焼結合金からワイヤーで割り出した、縦4mm、幅25mm、厚さ3mmの試験片を、三点曲げ試験によって評価する。三点曲げ試験は、支点間距離20mmで、縦4mm、幅25mmの面を圧下し、その時の応力(N)を測定し、次式に基づき、三点曲げ強度を算出する。
三点曲げ強度(MPa)=(3×応力(N)×支点間距離(mm)/(2×試験片の幅(mm)×(試験片の厚さ(mm)2)
本発明の焼結合金において、相対密度が90%以上であることが好ましい。これにより焼結合金に高機械強度(特に、スパッタリングターゲット材に適した高靱性)を付与することができる。本発明の焼結合金の靱性は、相対密度が増加するほど、向上する。相対密度は、さらに好ましくは95%以上、さらに一層好ましくは98%以上である。
焼結合金の相対密度は、次の通り実施する。焼結合金の相対密度(%)は、アルキメデス法に基づき測定される値であり、焼結合金の理論密度に対する焼結合金の実測密度の百分率(焼結合金の実測密度/焼結合金の理論密度×100)として定義される。焼結合金の実測密度(g/cm3)は、焼結合金の空中重量を、焼結合金の体積(=焼結合金の水中重量/計測温度における水比重)で除して算出される。焼結合金の理論密度ρ(g/cm3)は、式:ρ=〔(m1/100)/ρ1+(m2/100)/ρ2+(m3/100)/ρ3+・・・+(mi/100)/ρi〕−1によって算出される。なお、式中、m1〜miはそれぞれ焼結合金の構成物質の含有量(重量%)を示し、ρ1〜ρiはそれぞれm1〜miに対応する構成物質の密度(g/cm3)を示す)。
本発明の焼結合金は、原料粉末を所定の比率で混合し、混合粉末(粉末冶金用組成物)を圧縮形成して成形体を形成する工程(以下「成形工程」という)、および、該成形体を焼結して焼結体を形成する工程(以下「焼結工程」という)を含む粉末冶金法により製造することができる。
成形工程は、例えば、粉末冶金用組成物を金型へ充填し、加圧して粉末成形体を形成することにより実施することができる。粉末冶金用組成物を金型へ充填する前に、金型の内面に高級脂肪酸系潤滑剤を塗布してもよい。高級脂肪酸系潤滑剤は、高級脂肪酸であってもよいし、高級脂肪酸の金属塩であってもよい。高級脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸等が挙げられ、その金属塩としては、例えば、リチウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩等が挙げられる。高級脂肪酸系潤滑剤の具体例としては、ステアリン酸亜鉛が挙げられる。成形工程は、プレス等の公知の成形方法を使用して実施することができる。成形圧力は、通常10〜350MPaであり、成形温度は、通常600〜1550℃である。
焼結工程は、例えば、成形工程で得られた粉末成形体を加熱して焼結することにより実施することができる。焼結温度は、通常600〜1550℃であり、焼結時間は、通常1〜10時間である。焼結雰囲気は、真空雰囲気、不活性ガス雰囲気、窒素雰囲気等の酸化防止雰囲気であることが好ましい。2種類以上の原料粉末を混合して焼結する場合、焼結に伴う物質移動(例えば拡散)を抑えた方が、焼結体中の組織の組成をコントロールしやすいことから、焼結温度は、1000℃以下であることが好ましく、900℃以下であることがさらに好ましく、800℃以下であることがさらに一層好ましい。
成形工程および焼結工程は同時に実施することもできる。成形工程および焼結工程を同時に実施する方法としては、例えば、ホットプレス、熱間静水圧プレス、粉末押し出し法、粉末鍛造法等が挙げられる。
第1のMn相の母体となる原料粉末としては、Mn−Ga系合金粉末を使用することができる。Mn−Ga系合金粉末は、MnおよびGaに加えて、Ga以外のA群元素および/またはB群元素を含有してもよい。第1のMn相を有する焼結合金の原料粉末としては、Mn−Ga系合金粉末のみを使用してもよいし、Mn−Ga系合金粉末に加えて、目的組成に足りない元素を補う純金属粉末および/または合金粉末を使用してもよい。
Mn−Ga系合金粉末としては、以下の条件を満たすMn−Ga系合金粉末を使用することができる。
[条件B1−1]Mn−Ga系合金粉末を構成する各合金粒子が、MnおよびGaをMn:Ga=98:2〜73:27の原子数比で含有する。
[条件B1−2]Mn−Ga系合金粉末を構成する各合金粒子におけるGa以外のA群元素とB群元素との合計量が、20at%以下である。すなわち、Mn−Ga系合金粉末を構成する各合金粒子におけるMnとGaとの合計量が、80at%以上である。なお、条件B1−2における「at%」は、Mn−Ga系合金粉末を構成する各合金粒子に含まれる合計原子数を基準として算出される。
Mn−Ga系合金粉末を構成する各合金粒子の組成(元素の種類および含有量)が所定の範囲にあることは、エネルギー分散型蛍光X線分析装置を用いて確認することができる。
焼結に伴う物質移動(例えば拡散)により、Mn−Ga系合金粉末と、その他の原料粉末に由来するMn、Ga、Ga以外のA群元素およびB群元素のうちの1種または2種以上とから第1のMn相を形成する場合、Mn−Ga系合金粉末としては、条件B1−1および条件B1−2の一方または両方を満たさないMn−Ga系合金粉末を使用することができる。Mn−Ga系合金粉末におけるMnおよびGaの原子数比がMn:Ga=98:2〜73:27の範囲外(すなわち、Mn/Ga>98/2、または、Mn/Ga<73/27)であっても、焼結に伴う物質移動(例えば拡散)により、Mn相におけるMnおよびGaの原子数比をMn:Ga=98:2〜73:27の範囲内とすることができる。また、Mn−Ga系合金粉末におけるGa以外のA群元素とB群元素との合計量が20at%を超えていても、焼結に伴う物質移動(例えば拡散)により、Mn相におけるGa以外のA群元素とB群元素の合計量を20at%以下とすることができる。
第2のMn相の母体となる原料粉末としては、Mn−Zn系合金粉末を使用することができる。Mn−Zn系合金粉末は、MnおよびZnに加えて、Zn以外のA群元素および/またはB群元素を含有してもよい。第2のMn相を有する焼結合金の原料粉末としては、Mn−Zn系合金粉末のみを使用してもよいし、Mn−Zn系合金粉末に加えて、目的組成に足りない元素を補う純金属粉末および/または合金粉末を使用してもよい。
Mn−Zn系合金粉末としては、以下の条件を満たすMn−Zn系合金粉末を使用することができる。
[条件B2−1]Mn−Zn系合金粉末を構成する各合金粒子が、MnおよびZnをMn:Zn=98:2〜64:36の原子数比で含有する。
[条件B2−2]Mn−Zn系合金粉末を構成する各合金粒子におけるZn以外のA群元素とB群元素との合計量が、20at%以下である。すなわち、Mn−Zn系合金粉末を構成する各合金粒子におけるMnとZnとの合計量が、80at%以上である。なお、条件B2−2における「at%」は、Mn−Zn系合金粉末を構成する各合金粒子に含まれる合計原子数を基準として算出される。
Mn−Zn系合金粉末を構成する各合金粒子の組成(元素の種類および含有量)が所定の範囲にあることは、エネルギー分散型蛍光X線分析装置を用いて確認することができる。
焼結に伴う物質移動(例えば拡散)により、Mn−Zn系合金粉末と、その他の原料粉末に由来するMn、Zn、Zn以外のA群元素およびB群元素のうちの1種または2種以上とから第2のMn相を形成する場合、Mn−Zn系合金粉末としては、条件B2−1および条件B2−2の一方または両方を満たさないMn−Zn系合金粉末を使用することができる。Mn−Zn系合金粉末におけるMnおよびZnの原子数比がMn:Zn=98:2〜64:36の範囲外(すなわち、Mn/Zn>98/2、または、Mn/Zn<64/36)であっても、焼結に伴う物質移動(例えば拡散)により、Mn相におけるMnおよびZnの原子数比をMn:Zn=98:2〜64:36の範囲内とすることができる。また、Mn−Zn系合金粉末におけるZn以外のA群元素とB群元素との合計量が20at%を超えていても、焼結に伴う物質移動(例えば拡散)により、Mn相におけるZn以外のA群元素とB群元素との合計量を20at%以下とすることができる。
第3のMn相の母体となる原料粉末としては、Mn−Sn系合金粉末を使用することができる。Mn−Sn系合金粉末は、MnおよびSnに加えて、Sn以外のA群元素および/またはB群元素を含有してもよい。第3のMn相を有する焼結合金の原料粉末としては、Mn−Sn系合金粉末のみを使用してもよいし、Mn−Sn系合金粉末に加えて、目的組成に足りない元素を補う純金属粉末および/または合金粉末を使用してもよい。
Mn−Sn系合金粉末としては、以下の条件を満たすMn−Sn系合金粉末を使用することができる。
[条件B3−1]Mn−Sn系合金粉末を構成する各合金粒子が、MnおよびSnをMn:Sn=98.5:1.5〜74:26の原子数比で含有する。
[条件B3−2]Mn−Sn系合金粉末を構成する各合金粒子におけるSn以外のA群元素とB群元素との合計量が、20at%以下である。すなわち、Mn−Sn系合金粉末を構成する各合金粒子におけるMnとSnとの合計量が、80at%以上である。なお、条件B3−2における「at%」は、Mn−Sn系合金粉末を構成する各合金粒子に含まれる合計原子数を基準として算出される。
Mn−Zn系合金粉末を構成する各合金粒子の組成(元素の種類および含有量)が所定の範囲にあることは、エネルギー分散型蛍光X線分析装置を用いて確認することができる。
焼結に伴う物質移動(例えば拡散)により、Mn−Sn系合金粉末と、その他の原料粉末に由来するMn、Sn、Sn以外のA群元素およびB群元素のうちの1種または2種以上とから第3のMn相を形成する場合、Mn−Sn系合金粉末としては、条件B3−1および条件B3−2の一方または両方を満たさないMn−Sn系合金粉末を使用することができる。Mn−Sn系合金粉末におけるMnおよびSnの原子数比がMn:Sn=98.5:1.5〜74:26の範囲外(すなわち、Mn/Sn>98.5/1.5、または、Mn/Sn<74/26)であっても、焼結に伴う物質移動(例えば拡散)により、Mn相におけるMnおよびSnの原子数比をMn:Sn=98.5:1.5〜74:26の範囲内とすることができる。また、Mn−Sn系合金粉末におけるSn以外のA群元素とB群元素との合計量が20at%を超えていても、焼結に伴う物質移動(例えば拡散)により、Mn相におけるSn以外のA群元素とB群元素との合計量を20at%以下とすることができる。
第4のMn相の母体となる原料粉末としては、Mn−Ge系合金粉末を使用することができる。Mn−Ge系合金粉末は、MnおよびGeに加えて、Ge以外のA群元素および/またはB群元素を含有してもよい。第4のMn相を有する焼結合金の原料粉末としては、Mn−Ge系合金粉末のみを使用してもよいし、Mn−Ge系合金粉末に加えて、目的組成に足りない元素を補う純金属粉末および/または合金粉末を使用してもよい。
Mn−Ge系合金粉末としては、以下の条件を満たすMn−Ge系合金粉末を使用することができる。
[条件B4−1]Mn−Ge系合金粉末を構成する各合金粒子が、MnおよびGeをMn:Ge=98.5:1.5〜79:21の原子数比で含有する。
[条件B4−2]Mn−Ge系合金粉末を構成する各合金粒子におけるGe以外のA群元素とB群元素との合計量が、20at%以下である。すなわち、Mn−Ge系合金粉末を構成する各合金粒子におけるMnとGeとの合計量が、80at%以上である。なお、条件B4−2における「at%」は、Mn−Ge系合金粉末を構成する各合金粒子に含まれる合計原子数を基準として算出される。
Mn−Ge系合金粉末を構成する各合金粒子の組成(元素の種類および含有量)が所定の範囲にあることは、エネルギー分散型蛍光X線分析装置を用いて確認することができる。
焼結に伴う物質移動(例えば拡散)により、Mn−Ge系合金粉末と、その他の原料粉末に由来するMn、Ge、Ge以外のA群元素およびB群元素のうちの1種または2種以上とから第4のMn相を形成する場合、Mn−Ge系合金粉末としては、条件B4−1および条件B4−2の一方または両方を満たさないMn−Ge系合金粉末を使用することができる。Mn−Ge系合金粉末におけるMnおよびGeの原子数比がMn:Ge=98.5:1.5〜79:21の範囲外(すなわち、Mn/Ge>98.5/1.5、または、Mn/Ge<79:21)であっても、焼結に伴う物質移動(例えば拡散)により、Mn相におけるMnおよびGeの原子数比をMn:Ge=98.5:1.5〜79:21の範囲内とすることができる。また、Mn−Ge系合金粉末におけるGe以外のA群元素とB群元素との合計量が20at%を超えていても、焼結に伴う物質移動(例えば拡散)により、Mn相におけるGe以外のA群元素とB群元素との合計量を20at%以下とすることができる。
第5のMn相の母体となる原料粉末としては、Mn−Al系合金粉末を使用することができる。Mn−Al系合金粉末は、MnおよびAlに加えて、Al以外のA群元素および/またはB群元素を含有してもよい。第5のMn相を有する焼結合金の原料粉末としては、Mn−Al系合金粉末のみを使用してもよいし、Mn−Al系合金粉末に加えて、目的組成に足りない元素を補う純金属粉末および/または合金粉末を使用してもよい。
Mn−Al系合金粉末としては、以下の条件を満たすMn−Al系合金粉末を使用することができる。
[条件B5−1]Mn−Al系合金粉末を構成する各合金粒子が、MnおよびAlをMn:Al=98:2〜49:51の原子数比で含有する。
[条件B5−2]Mn−Al系合金粉末を構成する各合金粒子におけるAl以外のA群元素とB群元素との合計量が、20at%以下である。すなわち、Mn−Al系合金粉末を構成する各合金粒子におけるMnとAlとの合計量が、80at%以上である。なお、条件B5−2における「at%」は、Mn−Al系合金粉末を構成する各合金粒子に含まれる合計原子数を基準として算出される。
Mn−Al系合金粉末を構成する各合金粒子の組成(元素の種類および含有量)が所定の範囲にあることは、エネルギー分散型蛍光X線分析装置を用いて確認することができる。
焼結に伴う物質移動(例えば拡散)により、Mn−Al系合金粉末と、その他の原料粉末に由来するMn、Al、Al以外のA群元素およびB群元素のうちの1種または2種以上とから第5のMn相を形成する場合、Mn−Al系合金粉末としては、条件B5−1および条件B5−2の一方または両方を満たさないMn−Al系合金粉末を使用することができる。Mn−Al系合金粉末におけるMnおよびAlの原子数比がMn:Al=98:2〜49:51の範囲外(すなわち、Mn/Al>98/2、または、Mn/Al<49/51)であっても、焼結に伴う物質移動(例えば拡散)により、第5のMn相におけるMnおよびAlの原子数比をMn:Al=98:2〜49:51の範囲内とすることができる。Mn−Al系合金粉末におけるAl以外のA群元素とB群元素との合計量が20at%を超えていても、焼結に伴う物質移動(例えば拡散)により、Mn相におけるAl以外のA群元素とB群元素との合計量を20at%以下とすることができる。
第6のMn相の母体となる原料粉末としては、Mn−Co系合金粉末を使用することができる。Mn−Co系合金粉末は、MnおよびCoに加えて、Co以外のA群元素および/またはB群元素を含有してもよい。第6のMn相を有する焼結合金の原料粉末としては、Mn−Co系合金粉末のみを使用してもよいし、Mn−Co系合金粉末に加えて、目的組成に足りない元素を補う純金属粉末および/または合金粉末を使用してもよい。
Mn−Co系合金粉末としては、以下の条件を満たすMn−Co系合金粉末を使用することができる。
[条件B6−1]Mn−Co系合金粉末を構成する各合金粒子が、MnおよびCoをMn:Co=96:4〜51:49の原子数比で含有する。
[条件B6−2]Mn−Co系合金粉末を構成する各合金粒子におけるCo以外のA群元素とB群元素との合計量が、20at%以下である。すなわち、Mn−Co系合金粉末を構成する各合金粒子におけるMnとCoとの合計量が、80at%以上である。なお、条件B6−2における「at%」は、Mn−Co系合金粉末を構成する各合金粒子に含まれる合計原子数を基準として算出される。
Mn−Co系合金粉末を構成する各合金粒子の組成(元素の種類および含有量)が所定の範囲にあることは、エネルギー分散型蛍光X線分析装置を用いて確認することができる。
焼結に伴う物質移動(例えば拡散)により、Mn−Co系合金粉末と、その他の原料粉末に由来するMn、Co、Co以外のA群元素およびB群元素のうちの1種または2種以上とから第6のMn相を形成する場合、Mn−Co系合金粉末としては、条件B6−1および条件B6−2の一方または両方を満たさないMn−Co系合金粉末を使用することができる。Mn−Co系合金粉末におけるMnおよびCoの原子数比がMn:Co=96:4〜51:49の範囲外(すなわち、Mn/Co>96/4、または、Mn/Co<51/49)であっても、焼結に伴う物質移動(例えば拡散)により、第6のMn相におけるMnおよびCoの原子数比をMn:Co=96:4〜51:49の範囲内とすることができる。また、Mn−Co系合金粉末におけるCo以外のA群元素とB群元素との合計量が20at%を超えていても、焼結に伴う物質移動(例えば拡散)により、Mn相におけるCo以外のA群元素とB群元素との合計量を20at%以下とすることができる。
本発明のスパッタリングターゲット材は、本発明の焼結合金を含んでなる。本発明のスパッタリングターゲット材は、本発明の焼結合金を常法に従って所望の形状に加工することにより製造することができる。本発明の焼結合金は、高機械強度(特に、スパッタリングターゲット材に適した高靱性)を有するので、スパッタリングターゲット材の材料として好適である。本発明の焼結合金を含んでなるスパッタリングターゲット材によれば、スパッタリングによる成膜中に割れの発生を防止することができる。
以下、本発明について実施例により具体的に説明する。
本発明例1〜55では、表1〜4に示す原料粉末を表1〜4に示す混合比で配合し、V型混合器で30分混合することにより、表1〜4に示す合金組成に調整した後、外径220mm、内径210mm、長さ200mmのSC製の缶に脱気装入した。なお、原料粉末は、次の通り作製した。溶解原料を秤量し、減圧Arガス雰囲気あるいは真空雰囲気の耐火物坩堝内で誘導加熱溶解した後、坩堝下部の直径8mmのノズルより出湯し、Arガスによりアトマイズした。得られたガスアトマイズ粉末から、粒径が500μm以上の成形に向かない粗粉末を除去し、除去後のガスアトマイズ粉末を原料粉末として使用した。
上記の粉末充填ビレットを表1〜4に記載の成形温度、圧力120MPa、保持時間3時間の条件で熱間静水圧プレスによって焼結し、焼結体を作製した。上記の方法で作製した固化成形体を、ワイヤーカット、旋盤加工、平面研磨により、直径180mm、厚さ7mmの円盤状に加工し、スパッタリングターゲット材を作製した。なお、2種類以上の粉末を混合し焼結する場合、拡散を抑えた方が、焼結体中の組織の組成比をコントロールしやすいことから、成形温度は1000度以下、望ましくは900度以下、さらに望ましくは800度以下とした。
本発明例1〜37および55では、Mn相の母体となる原料粉末(以下「Mn相形成用原料粉末」という場合がある)として、
条件B1−1および条件B1−2を満たすMn−Ga系合金粉末、
条件B2−1および条件B2−2を満たすMn−Zn系合金粉末、
条件B3−1および条件B3−2を満たすMn−Sn系合金粉末、
条件B4−1および条件B4−2を満たすMn−Ge系合金粉末、
条件B5−1および条件B5−2を満たすMn−Al系合金粉末、ならびに、
条件B6−1および条件B6−2を満たすMn−Co系合金粉末
のうちの1種または2種以上を使用し、
条件A1−1および条件A1−2を満たす第1のMn相、
条件A2−1および条件A2−2を満たす第2のMn相、
条件A3−1および条件A3−2を満たす第3のMn相、
条件A4−1および条件A4−2を満たす第4のMn相、
条件A5−1および条件A5−2を満たす第5のMn相、ならびに、
条件A6−1および条件A6−2を満たす第6のMn相
のうちの1種または2種以上のMn相をミクロ組織中に有する焼結合金を作製した。焼結に伴って物質移動(例えば拡散)が生じるので、Mn相は、Mn相形成用原料粉末のみから形成されるわけではない。すなわち、焼結に伴う物質移動(例えば拡散)により、Mn相形成用原料粉末と、その他の原料粉末に由来するMn、A群元素およびB群元素のうちの1種または2種以上とからMn相が形成され得る。
本発明例38〜54では、Mn相の母体となる原料粉末(以下「Mn相形成用原料粉末」という場合がある)として、
条件B1−1および条件B1−2の一方または両方を満たさないMn−Ga系合金粉末、
条件B2−1および条件B2−2の一方または両方を満たさないMn−Zn系合金粉末、
条件B3−1および条件B3−2の一方または両方を満たさないMn−Sn系合金粉末、
条件B4−1および条件B4−2の一方または両方を満たさないMn−Ge系合金粉末、
条件B5−1および条件B5−2の一方または両方を満たさないMn−Al系合金粉末、ならびに、
条件B6−1および条件B6−2の一方または両方を満たさないMn−Co系合金粉末
のうちの1種または2種以上を使用し、
条件A1−1および条件A1−2を満たす第1のMn相、
条件A2−1および条件A2−2を満たす第2のMn相、
条件A3−1および条件A3−2を満たす第3のMn相、
条件A4−1および条件A4−2を満たす第4のMn相、
条件A5−1および条件A5−2を満たす第5のMn相、ならびに、
条件A6−1および条件A6−2を満たす第6のMn相
のうちの1種または2種以上のMn相をミクロ組織中に有する焼結合金を作製した。Mn相形成用原料粉末におけるMnおよびA群元素の原子数比が所望の範囲外であっても、焼結に伴う物質移動(例えば拡散)により、Mn相におけるMnおよびA群元素の原子数比が所望の範囲内となる。なお、本発明例49〜54の焼結合金は、第1〜第6のMn相のうちの1種または2種以上に加えて、第1〜第6のMn相以外のMn相(下線部)を有する。
表5に示す本発明例56〜79では、溶解原料を秤量し、減圧Arガス雰囲気あるいは真空雰囲気の耐火物坩堝内で誘導加熱溶解した後、坩堝下部の直径8mmのノズルより出湯し、Arガスによりアトマイズした。得られたガスアトマイズ粉末から、粒径が500μm以上の成形に向かない粗粉末を除去し、除去後のガスアトマイズ粉末を原料粉末として使用した。原料粉末を、外径220mm、内径210mm、長さ200mmのSC製の缶に脱気装入した。上記の粉末充填ビレットを表5に記載の成形温度、圧力120MPa、保持時間4時間の条件で熱間静水圧プレスによって焼結し、焼結体を作製した。上記の方法で作製した固化成形体を、ワイヤーカット、旋盤加工、平面研磨により、直径180mm、厚さ7mmの円盤状に加工し、スパッタリングターゲット材を作製した。
なお、原料粉末は、アトマイズ粉末に限定するものではない。焼結方法は、大気焼結、真空焼結、HIP、ホットプレス、SPS、熱間押し出し等であってもよい。
本発明例1〜79および比較例80〜87について、第1〜第6のMn相の個数、大きさ、合計面積率、抗折強度および相対密度を以下の通り評価した。
[個数]
スパッタリングターゲット材の端材から試験片を採取し、試験片の断面を研磨した。走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社(JEOL Ltd.)製走査型電子顕微鏡JSM−6490LV)およびエネルギー分散型蛍光X線分析装置(OXFORD INSTRUMENTS社製エネルギー分散型蛍光X線分析装置7914)を使用して、研磨した断面をミクロ組織観察した。ミクロ組織観察は、それぞれ60μm×50μmの面積を有する10個の領域に対して実施した。観察されたMn相が第1〜第6のMn相のいずれかに該当するか否かをエネルギー分散型蛍光X線分析装置により同定した。
その結果、本発明例1〜55の焼結合金では、10個の領域のすべてにおいて、第1〜第6のMn相のいずれかに該当するMn相が1個以上観察された。一方、比較例80〜87の焼結合金では、10個の領域のいずれにおいても、第1〜第6のMn相のいずれかに該当するMn相が1個も観察されなかった。なお、表1〜4および表6中の「個数」において、「A」は、10個の領域のすべてにおいて、第1〜第6のMn相のいずれかに該当するMn相が1個以上観察されたことを意味し、「B」は、10個の領域のいずれにおいても、第1〜第6のMn相のいずれかに該当するMn相が1個も観察されなかったことを意味する。
[大きさ]
スパッタリングターゲット材の端材から試験片を採取し、試験片の断面を研磨した。走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社(JEOL Ltd.)製走査型電子顕微鏡JSM−6490LV)およびエネルギー分散型蛍光X線分析装置(OXFORD INSTRUMENTS社製エネルギー分散型蛍光X線分析装置7914)を使用して、研磨した断面をミクロ組織観察した。ミクロ組織観察は、それぞれ60μm×50μmの面積を有する10個の領域に対して実施した。観察されたMn相が第1〜第6のMn相のいずれかに該当するか否かをエネルギー分散型蛍光X線分析装置により同定した。Mn相の長径(すなわち、Mn相に外接する円の直径)をMn相の大きさとし、10個の領域のそれぞれに存在するMn相の大きさを測定した。
その結果、本発明例1〜55の焼結合金では、10個の領域のすべてにおいて、第1〜第6のMn相のいずれかに該当し、大きさが2μm以上であるMn相が1個以上観察された。一方、比較例80〜87の焼結合金では、10個の領域のいずれにおいても、第1〜第6のMn相のいずれかに該当し、大きさが2μm以上であるMn相が1個も観察されなかった。なお、表1〜4および表6中の「大きさ」において、「S」は、10個の領域のすべてにおいて、第1〜第6のMn相のいずれかに該当し、大きさが30μm〜180μmであるMn相が1個以上観察されたことを意味し、「A」は、10個の領域のすべてにおいて、第1〜第6のMn相のいずれかに該当し、大きさが2μm〜500μmであるMn相が1個以上観察されたことを意味し、「B」は、10個の領域のいずれにおいても、第1〜第6のMn相のいずれかに該当し、大きさが2μm以上であるMn相が1個も観察されなかったこと(すなわち、10個の領域のいずれにおいても、大きさが2μm未満であるMn相しか観察されなかったこと)を意味する。
[合計面積率]
スパッタリングターゲット材の端材から試験片を採取し、試験片の断面を研磨した。走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社(JEOL Ltd.)製走査型電子顕微鏡JSM−6490LV)およびエネルギー分散型蛍光X線分析装置(OXFORD INSTRUMENTS社製エネルギー分散型蛍光X線分析装置7914)を使用して、研磨した断面をミクロ組織観察した。ミクロ組織観察は、それぞれ60μm×50μmの面積を有する10個の領域に対して実施した。観察されたMn相が第1〜第6のMn相のいずれかに該当するか否かをエネルギー分散型蛍光X線分析装置により同定した。10個の領域のそれぞれにおいて、第1〜第6のMn相のいずれかに該当するMn相の面積を測定し、10個の領域における第1〜第6のMn相の合計面積を算出した。そして、式:10個の領域における第1〜第6のMn相の合計面積/10個の領域の合計面積(3000μm2×10)に基づいて、第1〜第6のMn相の合計面積率を算出した。
その結果、本発明例1〜55の焼結合金では、第1〜第6のMn相の合計面積率が10%以上であった。一方、比較例80〜87の焼結合金では、第1〜第6のMn相の合計面積率が10%未満であった。なお、表1〜4および表6中の「面積率」において、「A」は、第1〜第6のMn相の合計面積率が10%以上であったことを意味し、「B」は、第1〜第6のMn相の合計面積率が10%未満であったことを意味する。
上記と同様に、本発明例56〜79の焼結合金のミクロ組織観察を実施した。本発明例56〜79の焼結合金では、条件B1−1および条件B1−2を満たすMn−Ga系合金粉末、条件B2−1および条件B2−2を満たすMn−Zn系合金粉末、条件B3−1および条件B3−2を満たすMn−Sn系合金粉末、条件B4−1および条件B4−2を満たすMn−Ge系合金粉末、条件B5−1および条件B5−2を満たすMn−Al系合金粉末、ならびに、条件B6−1および条件B6−2を満たすMn−Co系合金粉末のうちの1種である単一の原料粉末が使用されたので、焼結合金の全体が第1〜第6のMn相のいずれかに該当するMn相により形成され、したがって、第1〜第6のMn相の合計面積率は100%であった。
[相対密度]
焼結合金の相対密度(%)は、アルキメデス法に基づき測定される値であり、焼結合金の理論密度に対する焼結合金の実測密度の百分率(焼結合金の実測密度/焼結合金の理論密度×100)として定義される。焼結合金の実測密度(g/cm3)は、焼結合金の空中重量を、焼結合金の体積(=焼結合金の水中重量/計測温度における水比重)で除して算出した。焼結合金の理論密度ρ(g/cm3)は、式:ρ=〔(m1/100)/ρ1+(m2/100)/ρ2+(m3/100)/ρ3+・・・+(mi/100)/ρi〕−1によって算出した。なお、式中、m1〜miはそれぞれ焼結合金の構成物質の含有量(重量%)を示し、ρ1〜ρiはそれぞれm1〜miに対応する構成物質の密度(g/cm3)を示す)。
その結果、本発明例1〜79の焼結合金も比較例80〜87の焼結合金も、相対密度が90%以上であった。
[抗折強度]
抗折強度の測定は、次の通り実施する。焼結合金からワイヤーで割り出した、縦4mm、幅25mm、厚さ3mmの試験片を、三点曲げ試験によって評価した。三点曲げ試験は、支点間距離20mmで、縦4mm、幅25mmの面を圧下し、その時の応力(N)を測定し、次式に基づき、三点曲げ強度を算出した。
三点曲げ強度(MPa)=(3×応力(N)×支点間距離(mm)/(2×試験片の幅(mm)×(試験片の厚さ(mm)2)
その結果、本発明例1〜79の焼結合金では、抗折強度が100MPa以上であった。一方、比較例80〜87の焼結合金では、抗折強度が100MPa未満であった。
比較例80の焼結合金は、焼結に伴う物質移動(例えば拡散)により形成されたMn−Ge相,Mn−Co相を有するが、これらのMn相は第1〜第6のMn相のいずれにも該当しないため、高機械強度(特に、スパッタリングターゲット材に適した高靱性)を有さず、スパッタリングターゲット材としては脆く使えない。
比較例81の焼結合金は、焼結に伴う物質移動(例えば拡散)により形成されたMn−Ge相,Mn−Al相を有するが、これらのMn相は第1〜第6のMn相のいずれにも該当しないため、高機械強度(特に、スパッタリングターゲット材に適した高靱性)を有さず、スパッタリングターゲット材としては脆く使えない。
比較例82の焼結合金は、Mn−Al単相で形成されているが、このMn相は第1〜第6のMn相のいずれにも該当しないため、高機械強度(特に、スパッタリングターゲット材に適した高靱性)を有さず、スパッタリングターゲット材としては脆く使えない。
比較例83の焼結合金は、焼結に伴う物質移動(例えば拡散)により形成されたMn−Ga相,Mn−Zn相を有するが、これらのMn相は第1〜第6のMn相のいずれにも該当しないため、高機械強度(特に、スパッタリングターゲット材に適した高靱性)を有さず、スパッタリングターゲット材としては脆く使えない。
比較例84の焼結合金は、Mn−Zn単相で形成されているが、このMn相は第1〜第6のMn相のいずれにも該当しないため、高機械強度(特に、スパッタリングターゲット材に適した高靱性)を有さず、スパッタリングターゲット材としては脆く使えない。
比較例85の焼結合金は、Mn−Sn単相で形成されているが、このMn相は第1〜第6のMn相のいずれにも該当しないため、高機械強度(特に、スパッタリングターゲット材に適した高靱性)を有さず、スパッタリングターゲット材としては脆く使えない。
比較例86の焼結合金は、Mn−Ga単相で形成されているが、このMn相は第1〜第6のMn相のいずれにも該当しないため、高機械強度(特に、スパッタリングターゲット材に適した高靱性)を有さず、スパッタリングターゲット材としては脆く使えない。
比較例87の焼結合金は、Mn−Co単相で形成されているが、このMn相は第1〜第6のMn相のいずれにも該当しないため、高機械強度(特に、スパッタリングターゲット材に適した高靱性)を有さず、スパッタリングターゲット材としては脆く使えない。
これに対して、本発明例1〜79の焼結合金は、第1〜第6のMn相のうちの1種または2種以上のMn相をミクロ組織中に有するので、高機械強度(特に、スパッタリングターゲット材に適した高靱性)を有する。なお、本発明例49〜54は、第1〜第6のMn相以外のMn相(下線部)を有するが、第1〜第6のMn相のうちの1種または2種以上を有するので、高機械強度(特に、スパッタリングターゲット材に適した高靱性)を有する。すなわち、本発明例1〜79の焼結合金は、十分に抗折強度を有し、スパッタリングによる成膜中に割れのないスパッタリングターゲット材として有用である。
以上説明したように、靱性のあるγMn、βMn相を活用するために原料粉末の成分組成を限定し、焼結合金中に特定の組成を有するMn相を導入することにより、焼結合金に高機械強度(特に、スパッタリングターゲット材に適した高靱性)を付与することができ、これによりスパッタリング中に生じ得るスパッタリングターゲット材の割れを防止することができるという知見に基づいて、本発明は完成された。すなわち、本発明によれば、高機械強度(特に、スパッタリングターゲット材に適した高靱性)を有する焼結合金および該焼結合金を含んでなるスパッタリングターゲット材が提供される。本発明の焼結合金およびスパッタリングターゲット材は、十分な抗折強度(すなわち、スパッタリングターゲット材に適した高靱性)を有し、スパッタリングによる成膜中に生じ得るスパッタリングターゲット材の割れを防止することができる。