JP7471078B2 - 軟化抵抗、強度と伸びのバランス、耐摩耗性に優れた多元系合金 - Google Patents
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Description
さらにV、Mo、Nb、W、Ti、Zr、Cu、Al、Mn、Siのいずれか1種以上をV、Mo、Nb、W、Ti、Zr、Cu、Al、Mnについては20原子%以下、Siについては10原子%以下の範囲で含むことで、計100原子%となる多元系合金であって(ただし不可避的不純物を含む。)、合金中の炭化物サイズが円相当径で15μm以下であり、引張強度が750MPa以上かつ、伸びが5%以上であり、混合のエントロピーが1.1R以上であることを特徴とする多元系合金である。
(Co、Cr、Fe、Niをそれぞれ5原子%以上35原子%以下の範囲で含むこと)
主要成分であるCo、Cr、Fe、Niは添加量を等原子%に近づけるほど、混合のエントロピーが増大する。混合のエントロピーが増大することにより、混合状態の安定化、複雑な微細構造による緩和拡散、構成元素の原子半径の差による格子歪からなる高硬度化などの効果がみられる。
Cは、Crと結合して炭化物を形成する元素である。この炭化物は、合金の高硬度に寄与する。この観点から、Cの含有率は0.47原子%以上であることが好ましい。より好ましくは、Cは1.39原子%以上である。さらに特に好ましくは、Cは2.30原子%以上である。
他方、Cの含有率が過剰であると、合金の伸びが低下する。そこで、優れた伸びの観点からは、Cの含有率は8.74原子%以下が好ましい。より好ましくは、Cは6.67原子%以下であり、さらに特に好ましくは、Cは4.53原子%以下である。
上記のCo、Cr、Fe、Ni、Cに加えて、選択的添加成分として、さらに、V、Mo、Nb、W、Ti、Zr、Cu、Al、Mn、Siのいずれか1種以上を添加することができる。添加すると、合金中に微細析出物が生成し、高い軟化抵抗に寄与する。ただし、これらの添加元素の含有率が過剰であると、合金の伸びが低下する。
これらの観点から、V、Mo、Nb、W、Ti、Zr、Cu、Al、Mnについては20原子%以下、Siについては10原子%以下の範囲で含むものとする。
また、Mnについては、好ましくは10原子%未満とする。より好ましくはMnは1原子%未満とする。
Siについては、好ましくはSiは0.5原子%以上8原子%以下とする。より好ましくはSiは1原子%以上5原子%以下とする。
ところで、本発明の多元系合金は、Co、Cr、Fe、Ni、Cに加えて、さらに、V、Mo、Nb、W、Ti、Zr、Cu、Al、Mn、Siのいずれか1種以上を添加してもよい。添加すると、合金中に微細析出物が生成し、高い軟化抵抗に寄与する。
ただしこれらの添加元素の含有率が過剰であると、脆性相が生成し、合金の伸びが低下する。
この観点から、好ましくはBCC相・FCC相・炭化物相以外で5μm以上の析出物が存在しないこととする。より好ましくはBCC相・FCC相・炭化物相以外で1μm以上の析出物が存在しないことが望ましい。
本発明の多元系合金に含有されることが許容される不可避的不純物の元素について説明する。本発明の多元系合金に含有される不可避的不純物の元素としては、例えば、P、S、Sn、Sb、As、O、N等が挙げられる(不可避不純物であれば、これら元素に限られるものではない。)。
ただし、Pについては、好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.002質量%以下とする。
Sについては、好ましくは0.002質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下とする。
Snについては、好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.002質量%以下とする。
Sbについては、好ましくは0.002質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下とする。
Asについては、好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下とする。
また、Oについては、好ましくは0.001質量%以下(10ppm以下)、より好ましくは0.0003質量%以下(3ppm以下)とする。
Nについては、好ましくは0.002質量%以下(20ppm以下)、より好ましくは0.001質量%以下(10ppm以下)とする。
合金中に炭化物が存在することで、高温域での軟化抵抗の向上、耐摩耗性の向上に寄与する。もっとも、合金中の炭化物サイズが過剰に大きくなると、合金の伸びが低下する。そこで、合金中の炭化物サイズは、15μm以下とする。好ましくは、合金中の炭化物サイズは、13μm以下とする。さらにより好ましくは、合金中の炭化物サイズは、10μm以下とする。
まず、本発明の混合のエントロピーは以下の式(1)で求めることができる。
表1に、本発明の実施例および比較例の各多元系合金の化学成分を原子%で示す。
まず、実施例、比較例として、表1に示す組成のように、等モル組成のCoCrFeNiをベースとしてC量を振った原料、加えて等モル組成のCoCrFeNiに1元素添加してC量を振った原料、Co、Cr、Fe、Niの添加量がそれぞれ異なる原料について、それぞれガスアトマイズ法により所定の成分の粉末を作製し、300μm以下に分級した。
ガスアトマイズは、アルミナ製坩堝を溶解に用い、坩堝下の直径5mm のノズルから合金溶湯を出湯し、これに高圧アルゴンを噴霧することで実施した。その後、1170℃でHIP処理して固化成形し、1100℃で鍛造加工を行ったのち、空冷した。
さらに、比較例として、上記の作製法のほかに、等モル組成のCoCrFeNiをベースとしてC量を振った原料に対して、アーク溶解法によって鋳造材を作製した。
炭化物サイズは、鍛造後の試料から、縦10mm、横10mm、長さ10mmの角材を切り出し、走査型電子顕微鏡(SEM)にて4000倍の反射電子像を確認し、画像解析ソフトにより円相当径の炭化物のサイズを算出した。
なお、比較例15~18のように炭化物の形状が編み目状のものは塊状ではないのでサイズが観念できないものとして、評価外とした。
各実施例、比較例の混合のエントロピー(ΔSmix)は、表1の化学成分と式(1)に基づいて算出した。
硬さの評価方法として、鍛造後もしくは鋳造後の各試料についてロックウェル硬さ試験を行った。試験は鍛造後もしくは鋳造後熱処理なしの試料と、鍛造後もしくは鋳造後870℃、1時間熱処理後の試料に対して試験を行った。表2では、室温でのロックウェル硬さと870℃熱処理後のロックウェル硬さの差分の値を「室温と870℃熱処理後のロックウェル硬さの差分」として示している。
また、実施例No.10の合金の室温でのロックウェル硬さは、103.4HRBであり、870℃熱処理後のロックウェル硬さは103.1HRBであった。
実施例No.15の合金の室温でのロックウェル硬さは、104.0HRBであり、870℃熱処理後のロックウェル硬さは101.4HRBであった。
強度と伸びの評価方法として、鍛造後もしくは鋳造後の試料において、JIS14A号 φ5試験片(φ5×GL25mm)を作製し、室温引張試験を行った。
耐摩耗性の評価方法として、鍛造後もしくは鋳造後の試料において、大越式摩耗試験を行った。なお、大越式摩耗試験の条件は、縦19mm、横41mm、厚さ6mmの試験片に対し、相手材リングSCM420、荷重6.3kg、摩耗距離200m、摩耗速度2.38m/s、および乾式とした。
析出物サイズは、鍛造後の試料から、縦10mm、横10mm、長さ10mmの角材を切り出し、走査型電子顕微鏡(SEM)にて4000倍の反射電子像を確認した。
これらの結果から、本発明の多元系合金は、例えば870℃などの高温における軟化抵抗が高いこと、強度と伸びのバランスが優れていること、耐摩耗性に優れていることが確認された。
Claims (2)
- Co、Cr、Fe、Niの各元素をそれぞれ5原子%以上35原子%以下の範囲で含み、Cを0.47原子%以上8.74原子%以下の範囲で含むことで、計100原子%となる多元系合金であって(ただし不可避的不純物を含む。)、
合金中の炭化物サイズが円相当径で1.1μm以上15μm以下であり、引張強度が750MPa以上かつ、伸びが5%以上であり、混合のエントロピーが1.1R以上であることを特徴とする多元系合金。 - Co、Cr、Fe、Niの各元素をそれぞれ5原子%以上35原子%以下の範囲で含み、Cを0.47原子%以上8.74原子%以下の範囲で含み、
さらにV、Mo、Nb、W、Ti、Zr、Cu、Al、Mn、Siのいずれか1種以上をV、Mo、Nb、W、Ti、Zr、Cu、Al、Mnについては20原子%以下、Siについては10原子%以下の範囲で含むことで、計100原子%となる多元系合金であって(ただし不可避的不純物を含む。)、
合金中の炭化物サイズが円相当径で1.1μm以上15μm以下であり、引張強度が750MPa以上かつ、伸びが5%以上であり、混合のエントロピーが1.1R以上であることを特徴とする多元系合金。
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