JP5972548B2 - 高温強度に優れたFe基粉末緻密固化成形体の製造方法 - Google Patents

高温強度に優れたFe基粉末緻密固化成形体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、耐酸化性および高温強度に優れたFe基粉末緻密固化成形体の製造方法に関するものである。
従来、フェライト系ステンレスに耐酸化性と高温強度を向上させる研究は、古くから行われてきている。例えば、特開昭54−141314号公報(特許文献1)に開示されているように、Fe−Cr−Al電熱合金の耐酸化性、機械的特性の改善について、C、N量を規制する以外にNb、Zr添加で改善する方法を開示している。さらに、高温強度改善の観点から炭化物、窒化物、酸化物等の析出を制御することで、高温応力負荷下での転位の抑制効果を狙った、さらには常温強度の向上をも目的とした研究、及び特許が多数開示されている。
例えば、炭窒化物の微細析出による高温強度向上の研究として「ナノ析出物活用によるフェライト系耐熱鋼の高強度化を図る技術として、「新日鐵技報第381号(2004)、P61〜65」(非特許文献1)が開示されている。また、特許第2637250号公報(特許文献2)に開示されているように、Fe−Cr−Ni−Al系フェライト合金にAl,Zr,Hf,Ce,La,Nd,Gdを1種以上含みNiAl系金属間化合物が分散析出し、表面にAl23 皮膜を形成させたものが提案されている。
また、特開2002−294411号公報(特許文献3)に開示されているように、3μm以上の炭窒化物を析出させ高温強度を向上させたC−Si−Mn−Ni−Cr−Cu−Nb−W−B−Fe合金が提案されている。また、特公平6−89427号公報(特許文献4)に開示されいるように、Fe−Cr−Ti,Zr,Y,Ca,Cを含むNi基合金が提案されている。
さらに、特許第3759776号公報(特許文献5)に開示されているように、C−Cr−Mo−V−W−Nb−BにTi,Zr,Hfを含有する鉄合金が提案されている。その他にも、特開2002−47540号公報(特許文献6)に開示されているように、フェライト相に、窒化物、炭化物、ほう化物の1種または2種以上、またはそれらの複合化合物、さらには酸化物、金属間化合物の1種または2種以上を分散させた、常温強度、高温クリープ特性に優れた粒子分散型高強度フェライト鋼が提案されている。
さらに、特開2002−60916号公報(特許文献7)に開示されているように、鋼中に硬質粒子分散させることで、硬質粒子の体積率増大とマトリックス結晶粒子径の微細化を図ることを意図した高剛性鋼が提案されている。
特開昭54−141314号公報 特許第2637250号公報 特開2002−294411号公報 特公平6−89427号公報 特許第3759776号公報 特開2002−47540号公報 特開2002−60916号公報 新日鐵技報第381号(2004)、P61〜65
しかし、転位移動抑制のために炭窒化物を多数析出させるには炭窒化物形成元素(例えばZr,Ti,Hf,Nbなど)を添加する必要がある。また、必要以上の添加では炭窒化物が粗大化して転位移動抑制効果が少なくなる場合もある。さらに、Zr,HfやY,Gdなどは、貴金属系や希土類系、レアメタルであり高価なため、結果として耐高温強度特性に優れた合金は高価格にならざるを得ない問題がある。
さらに、高温強度向上には、上記特許であるように炭化物、酸化物および金属間化合物が主として検討されており、窒化物は主に炭窒化複合での効果が開示されているだけで窒化物のみに着目したものは無い。また、これら析出物を基地中に分散させるためには、溶解、鋳造等の従来からの材料製造方法に加えて、追加熱処理等を行う必要があるものが多く、これも耐高温強度特性に優れた合金は高価格にならざるを得ない一因である。そのため、製造方法が単純でかつ貴金属系や希土類系、レアメタルなどを含まない高温強度に優れた材料が求められている。
上述したような問題を解消するために、鋭意開発を進めた結果、Cr:9〜25%、Al:1〜%、Si:0.05〜1.0%、N:0.01〜0.20%、残部Fe、および不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス合金、さらに、これにZr,Ti,Hf,Reの一種または2種以上を0.01〜0.5%まで添加した合金においても、この成分材料を溶解させた後、ガスアトマイズによりNを固溶させた状態で当該合金粉末を得る。
ガスアトマイズ粉末は急冷凝固であり、窒化物の析出がなく、かつ得られた低酸素な合金粉末となっている。これをHIP(熱間等圧プレス)、ホットプレスまたはアップセットまたは押出により固化成形することで固溶Nが基材のAl等と反応し、固化成形後の制御圧延や追加熱処理の必要なく、1μm以下の微細窒化物として分散析出(好ましくは500nm以下、さらに、好ましくは250nm以下)させた状態の成形体にて、高温強度に優れたFe基粉末緻密固化成形体を提供することが可能であることを見出した。
その発明の要旨とするところは、
(1)質量%で、Cr:9〜25%、Al:1〜7%、Si:0.05〜1.0%、N:0.01〜0.20%、残部Fe、および不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼の製造方法であって、フェライト組織中に1μm以下の微細窒化物を分散析出させるに当たり、該フェライト系ステンレス鋼を真空溶解または不活性雰囲気中で溶解後、不活性ガス噴霧でのガスアトマイズにより得られた合金粉末を固化成形することで、フェライト組織中に1μm以下の微細窒化物が400μm平方に30個以上分散してなることを特徴とする高温強度およびクリープ強度に優れたFe基粉末緻密固化成形体の製造方法。
(2)前記(1)に記載のフェライト系ステンレス鋼に、Zr,Ti,Hf,Reの1種または2種以上を合計で0.01〜0.50%含有したフェライト系ステンレス鋼の製造方法であって、フェライト組織中に1μm以下の微細窒化物を分散析出させるに当たり、該フェライト系ステンレス鋼を真空溶解または不活性雰囲気中で溶解後、不活性ガス噴霧でのガスアトマイズにより得られた合金粉末を固化成形することで、フェライト組織中に1μm以下の微細窒化物が400μm平方に30個以上分散してなることを特徴とする高温強度およびクリープ強度に優れたFe基粉末緻密固化成形体の製造方法である。
以上の述べたように、本発明によるフェライト系ステンレス合金、さらに、これにZr,Ti,Hf,Reの一種または2種以上を0.01〜0.5%まで添加した合金においても、この成分材料を溶解させた後、ガスアトマイズによりNを固溶させた状態で当該合金粉末を得ることを可能とした。
ガスアトマイズ粉末は急冷凝固であり、窒化物の析出がなく、かつ得られた低酸素な合金粉末となっている。これをHIP(熱間等圧プレス)、ホットプレスまたはアップセットまたは押出により固化成形することで固溶Nが基材のAl等と反応し、固化成形後の制御圧延や追加熱処理の必要なく、1μm以下の微細窒化物として分散析出(好ましくは500nm以下、さらに、好ましくは250nm以下)させた状態の耐酸化性および高温強度に優れたFe基粉末緻密固化成形体を、製造方法が単純でかつ貴金属系や希土類系、レアメタルなどを含まなく得ることを可能としたことで優れた効果を奏するものである。
以下、本発明に係る限定理由について詳細に説明する。
フェライト組織中に1μm以下の微細窒化物(主としてAlN)が400μm平方に30個以上分散してなることにある。ここで、微細分散窒化物は、前述した特許文献でも開示されているように、酸化物や炭化物と同様に高温応力下での転位の移動を妨げるため、転位集積による粒界三重点でのボイド発生を抑制でき、結果として高い高温強度やクリーブ強度を得る。
一方、本発明成分内の合金を一般的な鋳造法にて製造しても、鋳造法では凝固速度が遅いため、高融点のAlN(融点2516℃)の生成・成長が起こるため、アトマイズ法で得られた急速凝固粉末とは異なり、窒化物がミクロンオーダーで生成する。これを鍛造、圧延等、熱間加工し、熱処理を施しても凝固時にAlNが成長し終えているため、本発明範囲の分散度になりえず、また、鋳造材を後工程で粉砕等して粉末形状とし、これを固化成形しても成形体内部は1μmを超える窒化物が大多数となり、転位移動抑制効果が少なくなる。したがって、これら粗大窒化物は高温応力下における転位移動抑制効果が少ないため、同じ成分でも強度が異なる。
また、水アトマイズ法による粉末製造法もあるが、水アトマイズ法では溶湯金属の冷却および粉砕に水媒体を用いるため、反応により得られた粉末の酸素量がガスアトマイズ法に比べて高くなる。このため、熱間固化成形で酸化物の反応が先に起こり、結果として微細窒化物の分散度が良好となりえない。したがって、高温応力下における窒化物の転位移動抑制効果が少ないため、同じ成分でも強度が異なる。
以上より、本発明によるフェライト系ステンレス合金、さらに、これにZr,Ti,H
f,Reの一種または2種以上を0.01〜0.5%まで添加した合金をガスアトマイズで得られた粉末を高温固化成形した材料にのみ、高い高温強度やクリーブ強度が得られる。
さらに、本発明による高Cr、高Al含有フェライト系ステンレス合金鋼の製造方法としては、例えば真空溶解または不活性雰囲気中で溶解後に、不活性ガス噴霧でのガスアトマイズにより合金粉末を得、またはガスアトマイズにて得られた合金粉末に窒化処理を追加してNを0.2%以下固溶させた合金粉末を得、これをHIP、ホットプレスまたはアップセットまたは押出により固化成形する方法が挙げられる。こうした製造方法によると本発明鋼が安定して得られる。
上述から、本発明では特にCr−Al系フェライト系ステンレス合金鋼の内部に窒化物
分散度が重要で、当該フェライト系ステンレス合金、さらに、これにZr,Ti,Hf,Reの一種または2種以上を0.01〜0.5%まで添加した合金においても、この成分材料を溶解させた後、ガスアトマイズにより大気と遮断した状態で噴霧することで、窒化物であるAlN等を析出させず、Nを固溶させた状態で当該合金粉末を得る。
また、ガスアトマイズ粉末は急冷凝固なためNは窒化物として析出せず固溶状態であり、かつ低酸素な合金粉末が得られる。この状態、もしくは、さらにNを窒化処理等で0.20%を上限に固溶させた状態にて、これをHIP(熱間等圧プレス)、ホットプレスまたはアップセットまたは押出により固化成形することで固溶Nが基材のAl等と反応し、固化成形後の制御圧延や追加熱処理の必要なく、1μm以下(好ましくは500nm以下、さらに、好ましくは250nm以下)の微細窒化物として分散析出させることにある。1μmを超える窒化物であると、高温応力下での転位の移動を妨げ、転位集積による粒界三重点でのボイド発生を抑制する効果が十分でなくなる。
この効果は酸化物や金属間化合物の微細析出物がある、無しに関わらず、フェライト組織中に1μm以下の微細窒化物が400μm平方に30個以上分散させることが必要である。しかし、1μm以下の微細窒化物が400μm平方に30個未満では、その効果が十分でないことから、その下限を30個とした。好ましくは500nm以下の微細窒化物が250μm平方に30個以上、さらに、より好ましくは250nm以下の微細析出物が250μm平方に10個以上あることが望ましい。
以下、Fe−Si−Cr−Al系の同一成分にて本発明材と従来材での析出状況の詳細を説明する。図1は、本発明材と従来材での窒化物析出状況を金属顕微鏡にて比較した図である。この図に示すように、図1(a)は本発明材での窒化物析出状況であり、図1(b)は従来材での窒化物析出状況である。この両者を比較しても分かるように、図1(b)は粗大な窒化物の存在がみられるに対し、図1(a)は微細窒化物が多量に存在していることが分かる。
図2は、本発明材と従来材での窒化物析出状況を走査型電子顕微鏡で比較した図である。析出物はエネルギー分散X線分析装置にて同定を行っている。この図に示すように図2(a)は本発明材での窒化物(AlN)析出状況であり、図2(b)は従来材での窒化物析出状況である。図1と同様、図2(b)は500nm以上の粗大な窒化物の存在がみられ、500nm以下の窒化物が少ないのに対し、図2(a)は500nm以下の微細窒化物が多量に存在している。この図の面積は約125μm平方であり、本発明材では500nmの窒化物が28個の存在を確認できるのに対し、従来材は6個しか存在を確認できず、500nm以上の窒化物が大半である。
さらに、図3に高温引張試験後の本発明材と従来材で窒化物析出状況と転位移動の抑制状況を透過型電子顕微鏡で比較した図である。図3(a)は本発明材での窒化物(AlN)析出状況であり、図1や図2では確認できなかった250nm以下のAlN窒化物が多数観測されるのに対し、図3(b)の従来材では250nm以下のAlN窒化物は2個のみ観察される。その上、応力負荷された材料であるため、本発明材の図3(a)では微細AlNにより線状の刃状転位の移動が抑制されピン止め効果があるのに対し、従来材では転位の移動が抑制されないため、転位そのものが窒化物近辺に認められなかった。
さらに、本発明材において、窒化物の大きさが1μmを超える場合にピン止め効果が少
ない理由を図4に示す。図4の250nmの析出物では刃状転位の移動を抑制しているのが分かるのに対し、1μmの析出物では転位は析出物を迂回して移動している。そのため、本発明における窒化物の大きさは1μm以下、好ましくは500nm以下とし、さらに、分散度についても1μm以下の微細窒化物が400μm平方に30個未満では、その効果が十分でないことから、その下限を30個とした。好ましくは500nm以下の微細窒化物が250μm平方に30個以上、さらに、より好ましくは250nm以下の微細析出物が250μm平方に10個以上あることが望ましいため下限を設けた。
以下、本発明に係るFe基合金の限定理由について説明する。
Cr:9〜25%、
Crは、ステンレス鋼としての耐食性を確保し、フェライト相を安定化させるとともに耐酸化性および高温耐食性を高めさらに合金中に固溶して高温クリープ強度を高めるのに不可欠の元素であるが、9%未満ではその効果が十分に得られないため、9%以上の添加が必要であるが、しかし、25%を超えるとコストが高くなり、また、熱間加工性が劣化することから、その範囲を9〜25%とした。さらに好ましくは18〜25%である。
Al:1〜
Alは、本発明ではNと反応させて、AlNを後工程で析出させるのに必須の元素である。しかし、1%未満ではその効果が十分でなく、また、%を超えると冷間加工性が劣化することから、その範囲を1〜%とした。さらに好ましくは4〜%である。
Si:0.05〜1.0%
Siは、一般的な脱酸材であり、かつ、本発明では高温強度および耐酸化性を改善する元素である。しかし、0.05%ではその効果が十分でなく、また、1.0%を超えると材料自体の熱間加工性や冷間加工性に悪影響を及ぼすため、その範囲を0.05〜1.0%とした。さらに好ましくは0.1〜1.0%である。
N:0.01〜0.20%
Nは、本発明ではAlと反応させて、AlNを後工程で析出させるのに必須の元素である。しかし、0.01%未満では基地中に固溶したままで、AlN析出させる効果が充分でなく、また0.20%を超えると本発明範囲では基地がフェライト相であるため固溶限を超えて粗大な窒化物が析出し、後工程における1μm以下の窒化物を微細分散させる効果が少なくなる。そのため、範囲を0.01〜0.20%とした。
Zr,Ti,Hf,Reの1種または2種以上を合計で0.01〜0.5%
Zr,Ti,Hf,Reは、窒化物形成元素であって、転位移動抑制のために窒化物を多数析出させるために有効な元素である。また、高温環境における耐酸化特性を改善する効果もある。本発明ではAlN析出物に加えて更なる窒化物を析出させ、より高温強度および高温クリープ強度を向上させる効果があり、必要に応じて添加することができる。しかし、必要以上の添加では窒化物が粗大化して転位移動抑制効果が少なくなる場合がある。さらに、Zr,HfやGdなどは、貴金属系や希土類系、レアメタルであり高価なため、コスト高となることから、それら元素の合計の上限を0.5%とした。
以下、本発明について実施例によって具体的に説明する。
表1に示す成分組成となるように原料配合し、誘導加熱を行い溶解した後、ガスアトマズにてFe−Si−Cr−Al−N系合金粉末で、かつNを固溶させた状態の粉末を得る(後で窒化処理しても可、窒化処理はN2 ガス窒化等が望ましい)。これを900〜1200℃の温度でHIPにて固化成形したものである。但し、No.はNo.3と同じ組成を狙ったキャニング−押出であり、No.はNo.1と同じ組成を狙ったアプセットによる固化成形材である。No.はNo.1と同じ組成を狙ったホットプレスによる固化成形材である。これにより固溶しているNと合金中のAlと反応、さらにはZr,Cr等の添加元素もNと反応する。但し、固相反応で拡散度合が小さくなるため、1μm以下に微細析出分散する。好ましくは500nm以下に析出させるものとする。これはNが粉末表面より拡散するため、被表面積が大きい粉末であれば、Nは粉末表面付近濃度が高く、これが高温、圧力付与された状態での固化成形時に固相拡散し、より安定状態である窒化物として反応しやすくなるためと考えられる。
一方、同じ組成の材料の大気溶解、鋳造した材料、もしくはその材料を粉砕もしくはそ
の他の方法で粉末とし、固化成形してもAlNを始めとする窒化物が冷却速度の遅い溶湯凝固時に析出するため1μm以上のものが多くなり、かつ分散個数も少なくなるため、高温特性が良くないことが分かる。さらに、水アトマイズ法による同一組成材料粉末製造では溶湯金属の冷却および粉砕に水媒体を用いるため、反応により得られた粉末の酸素量がガスアトマイズ法に比べて高くなる。このため、熱間固化成形で酸化物の反応が先に起こり、結果として微細窒化物の分散度が良好となり得ないことも分かる。なお、表2に示す高温特性としては、600℃における高温引張試験結果での伸び・絞りおよび強度を示すものであり、また、クリープ破断時間は、1000℃での荷重98MPaでの破断時間で表したものである。
表1および表2に示すように、No.1〜は、本発明例であり、No.10〜17は比較例である。
比較例No.10は、No.1と同じ組成を狙うが鋳造、1150℃にて鍛造して仕上、800℃焼鈍を施した材料である。このように成分が同じであっても粉末固化成形でないため、窒化物の微細分散度が足りず、高温強度の値は同等ながら、伸び、絞り値も低く、クリープ破断時間もNo.1に比べて1/3となっている。
比較例No.11は、No.1と同じ組成を狙うが、水アトマイズ法による粉末製造を行い、1150℃の温度でHIPにて固化成形したものである。水アトマイズ法により得られた粉末は、酸素量が高くなる。このため、熱間固化成形で酸化物の反応が先に起こり、結果として窒化物の微細分散度が良好と足りず、高温強度の値は同等ながら、伸び、絞り値も低く、クリープ破断時間もNo.1に比べて1/2となっている。
比較例No.12は、Cr含有量が低いために、高温特性である、伸び、絞りおよび強度が悪く、クリープ破断時間も極めて短い。比較例No.13は、Cr含有量が高いために、窒化物の微細分散個数が少なく、また、高温特性である、伸び、絞りおよび強度が悪く、クリープ破断時間も本発明No.1に比べて1/2となっている。比較例No.14は、Al含有量が低く、かつSi含有量が高いために、窒化物の微細分散個数が少なく、また、高温特性である、伸び、絞りが悪く、クリープ破断時間も本発明No.1に比べて1/4となっている。
比較例No.15は、Al含有量が高く、かつTi含有量が高いために、窒化物の微細分散個数が少なく、また、高温特性である、伸び、絞りが悪く、クリープ破断時間がやや短い。比較例No.16は、Cr含有量が低く、Al含有量が高く、N含有量は低く、かつZr含有量が高いために、窒化物の微細分散個数が少なく、また、高温特性である、伸び、絞りが悪く、クリープ破断時間も本発明No.2に比べて1/2となっている。
比較例No.17は、Cr,Al,N含有量が高いために、窒化物が粗大化し易く、微細分散個数が少なく、また、高温特性である、絞りが劣り、クリープ破断時間も本発明No.1に比べて1/3となっている。これに対し、本発明であるNo.1〜は、いずれも本発明の条件を満足していることから、窒化物の微細分散個数が30個以上を満たし、高温特性である、伸び、絞り、強度に優れており、また、クリープ破断時間も9時間以上であることが分かる。
本発明材と従来材での窒化物析出状況を比較した図である。 本発明材と従来材での窒化物析出状況を電子顕微鏡にて詳細比較した図である。 本発明材と従来材での窒化物析出による転位移動抑制効果を透過型電子顕微鏡にて詳細比較した図である。 本発明材において窒化物の大きさにより転位移動抑制効果に差異があることを透過型電子顕微鏡にて説明する図である。

Claims (2)

  1. 質量%で、Cr:9〜25%、Al:1〜7%、Si:0.05〜1.0%、N:0.01〜0.20%、残部Fe、および不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼の製造方法であって、フェライト組織中に1μm以下の微細窒化物を分散析出させるに当たり、該フェライト系ステンレス鋼を真空溶解または不活性雰囲気中で溶解後、不活性ガス噴霧でのガスアトマイズにより得られた合金粉末を固化成形することで、フェライト組織中に1μm以下の微細窒化物が400μm平方に30個以上分散してなることを特徴とする高温強度およびクリープ強度に優れたFe基粉末緻密固化成形体の製造方法。
  2. 請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼に、Zr,Ti,Hf,Reの1種または2種以上を合計で0.01〜0.50%含有したフェライト系ステンレス鋼の製造方法であって、フェライト組織中に1μm以下の微細窒化物を分散析出させるに当たり、該フェライト系ステンレス鋼を真空溶解または不活性雰囲気中で溶解後、不活性ガス噴霧でのガスアトマイズにより得られた合金粉末を固化成形することで、フェライト組織中に1μm以下の微細窒化物が400μm平方に30個以上分散してなることを特徴とする高温強度およびクリープ強度に優れたFe基粉末緻密固化成形体の製造方法。
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