JP6754885B2 - 微細セルロース繊維含有乾燥固形物、微細セルロース繊維再分散液 - Google Patents
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Description
本発明は上記事情に鑑み、透明性、粘度特性に優れる、微細セルロース繊維含有乾燥固形物、微細セルロース繊維再分散液を提供することを課題とする。
[1]
セルロース繊維が平均繊維幅1nm〜1000nmに微細化された微細セルロース繊維と水を含む混合物の乾燥物であって、前記微細セルロース繊維は、水酸基の一部にスルホ基が導入されたスルホン化微細セルロース繊維であり、該スルホ基に起因する硫黄導入量が、0.5mmol/g以上、3.0mmol/g以下であり、前記乾燥物は、水分率が80%以下であり、該乾燥物を前記微細セルロース繊維の固形分濃度が0.5質量%となるように水に分散させた状態において、該分散液の、B型粘度計を用いて、25℃、回転数12rpm、3分間回転させることで測定される粘度が、500mPa・s以上であることを特徴とする微細セルロース繊維含有乾燥固形物。
[2]
前記乾燥物は、該乾燥物を前記微細セルロース繊維の固形分濃度が0.5質量%となるように水に分散させた状態において、該分散液のヘイズ値が20%以下となるものであることを特徴とする[1]に記載の微細セルロース繊維含有乾燥固形物。
[3]
前記乾燥物は、該乾燥物を前記微細セルロース繊維の固形分濃度が0.5質量%となるように水に分散させた状態において、該分散液の全光線透過率が95%以上となるものであることを特徴とする[1]または[2]に記載の微細セルロース繊維含有乾燥固形物。
[4]
[1]〜[3]のいずれかに記載の微細セルロース繊維含有乾燥固形物が水に分散したものであることを特徴とする微細セルロース繊維再分散液。
本実施形態に係る微細セルロース繊維含有乾燥固形物は、微細セルロース繊維を含み、後述の製造方法により好適に製造することができる。具体的には、微細セルロース繊維含有乾燥固形物は、微細セルロース繊維を含む混合物の乾燥物である。当該微細セルロース繊維含有乾燥固形物は水等の溶媒と混合し再分散した微細セルロース繊維再分散液として使用することができる。
微細セルロース繊維とは、植物由来のセルロース原料(パルプ繊維)をナノ化処理(機械的解繊やTEMPO触媒酸化など)した微小繊維である。その特性は、繊維幅がナノメートルオーダー、繊維長が数百nmの結晶性をもち、軽量、高弾性、高強度、低線熱膨張性を有している。
以下では、微細セルロース繊維の水酸基の一部が、スルホ基で置換されたスルホン化微細セルロース繊維を代表として説明する。
スルホン化微細セルロース繊維は、セルロース繊維が微細化された微細セルロース繊維であって、微細セルロース繊維を構成するセルロース(D−グルコースがβ(1→4)グリコシド結合した鎖状の高分子)の少なくとも一部の水酸基(−OH基)が下記式(1)で示されるスルホ基で置換(スルホ化)されたものである。
(−SO3 −)r・Zr+ (1)
(ここで、rは、独立した1〜3の自然数であり、Zr+は、r=1のとき、水素イオン、アルカリ金属の陽イオン、アンモニウムイオン、脂肪族アンモニウムイオン、芳香族アンモニウムイオンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である。また、r=2または3のとき、アルカリ土類金属の陽イオンまたは多価金属の陽イオンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である。)
図1に示すように、本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維は、パルプ繊維にスルホ基を導入する化学処理工程S1後に、物理的に機械解繊をする微細化処理工程S2をすることで得ることができる。
一方で、パルプ繊維に微細化処理した後に、化学処理することにより、スルホン化微細セルロース繊維を製造することもできるが、解繊時に要するエネルギーを低減させ製造コストを下げる観点と、繊維幅が小さくかつ均一な微細セルロース繊維を得られやすい観点から、パルプ繊維にスルホ基を導入した後に、微細化処理工程S2を適用することが望ましい。
化学処理工程S1は、パルプ繊維に対してスルホ基を有するスルホン化剤と尿素または/およびその誘導体を接触させる接触工程S1Aと、この接触工程S1A後のパルプ繊維に含まれるセルロースの水酸基の少なくとも一部にスルホ基を導入する反応工程S1Bとを含んでいる。
本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維の製造方法の化学処理工程S1における反応工程S1Bは、上述したように繊維原料に含まれるセルロースの水酸基に接触させたスルホン化剤のスルホ基を置換して、繊維原料に含まれるセルロースにスルホ基を導入する工程である。
この反応工程S1Bは、セルロースの水酸基にスルホ基を置換するスルホン化反応が可能な方法であれば、とくに限定されない。例えば、上記反応液を含浸させた繊維原料を所定の温度で加熱すれば、繊維原料に含まれるセルロースにスルホ基を導入することができる。
本明細書中では、絶乾とは、水分率が1%よりも低い状態のものをいう。そして、絶乾にする乾燥処理工程とは、例えば、塩化カルシウムや、無水塩化カルシウム、五酸化二リンなどの乾燥剤を入れたデシケータ等で減圧して乾燥処理(減圧乾燥処理)する工程をいう。つまり、本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維の製造方法の化学処理工程S1において、反応工程S1Bに供給する前の繊維原料を脱水処理や乾燥処理する場合、当該処理(脱水処理や乾燥処理)は、かかる繊維原料が絶乾状態になる前に処理を完了するものとする。
なお、水分率(%)は下記の式により求めることができる。
水分率(%)=((サンプルの質量−サンプルの固形分質量)/サンプルの質量)×100
(サンプルの質量は、測定に供したサンプル(例えば、上記例では反応工程S1Bに供する際の繊維原料)の質量(g)を意味する。サンプルの固形分質量は、測定に供したサンプルと同量のサンプルを105℃の雰囲気下で2時間、恒量になるまで乾燥させた後に残った固形物(例えば、上記例では反応工程S1Bに供する際の繊維原料を乾燥して恒量の状態となった後の繊維原料)の質量(g)を意味する。)
反応工程S1Bにおける加熱する温度は、繊維の熱分解や加水分解反応を抑えながら、上記繊維原料を構成するセルロースにスルホ基を導入できる温度であれば、とくに限定されない。
具体的には、接触工程S1A後の繊維原料を直接的または間接的に上記要件を満たしながら加熱することができるものであればよい。このようなものとしては、公知の乾燥機や、減圧乾燥機、マイクロ波加熱装置、オートクレーブ、赤外線加熱装置等を挙げることができる。とくに、反応工程S1Bにおいて、ガスが発生する可能性があるので、循環送風式の乾燥機を使用するのが好ましい。
したがって、作業性の観点から、加熱時における加熱温度(具体的には雰囲気温度)が100℃以上250℃以下、より好ましくは100℃以上200℃以下、さらに好ましくは100℃以上180℃以下となるように調整する。
また、反応工程S1Bとして上記加熱方法を採用した場合の加熱時間は、とくに限定されない。
例えば、反応工程S1Bにおける加熱時間は、反応温度を上記範囲となるように調整した場合、1分以上となるように調整する。より具体的には、5分以上が好ましく、より好ましくは10分以上であり、さらに好ましくは20分以上とする。加熱時間が1分よりも短い場合は、反応がほとんど進行していないと推察される。一方、加熱時間をあまり長くしてもスルホ基の導入量の向上が期待できない傾向にある。
したがって、反応工程S1Bとして上記加熱方法を採用した場合の加熱時間は、とくに限定されないが、反応時間や操作性の観点から、5分以上300分以内が好ましく、より好ましくは5分以上120分以内とするのがよい。
スルホン化はスルホン化剤のみでもスルホ基を導入することが可能であるが、1)スルホ基の導入に要する時間が長くなったり、2)スルホン化剤の酸の影響により繊維の短繊維化が起こりやすくなったり、3)スルホン化剤の酸の影響により反応後の繊維に着色が生じてしまったり、などの問題が発生することから、尿素または/およびその誘導体を共に化学処理工程S1に供することで、上記問題点を克服することができる。
例えば、スルファミン酸、スルファミン酸塩、硫黄と共有結合する2つの酸素を持つスルホニル基を有するスルフリル化合物などを挙げることができる。なお、スルホン化剤として、これらの化合物を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
化学処理工程S1における尿素とその誘導体のうち、尿素の誘導体は、尿素を含有する化合物であればとくに限定されない。
例えば、カルボン酸アミド、イソシアネートとアミンの複合化合物、チアミドなどを挙げることができる。なお、尿素とその誘導体は、それぞれ単独で用いてもよいし、両者を混合して用いてもよい。また、尿素の誘導体は、上記化合物を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
スルホン化微細セルロース繊維の製造に用いられる繊維原料は、セルロースを含むものであればとくに限定されない。
例えば、木材系のパルプ(以下単に木材パルプという)や、溶解パルプ、コットンリンタなどの綿系のパルプ、麦わら、稲わら、バガス、楮、三椏、麻、ケナフのほか、果物等などの非木材系のパルプ、ホヤや海藻などから単離されるセルロースや、新聞古紙、雑誌古紙やダンボール古紙などから製造された古紙系のパルプなどのパルプを繊維原料として使用することができる。なお、入手のし易さの観点から、木材パルプを使用することが好ましい。
例えば、各種木材由来のクラフトパルプ(KP)やサルファイトパルプ(SP)等の化学パルプ、サーモメカニカルパルプ(TMP)やグランドパルプ(GP)等の機械パルプ、それらを粉砕した粉末セルロースなどを挙げることができる。漂白済みのクラフトパルプ(NBKPやLBKP等)であれば、製造コストや量産化の観点から好ましい。
本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維の製造方法の化学処理工程S1は、接触工程S1Aと反応工程S1Bの間に乾燥工程を含んでいてもよい。
この乾燥工程は、反応工程S1Bの前処理工程として機能する工程であり、接触工程S1A後の繊維原料の水分率が平衡状態となるように乾燥する工程である。接触工程S1A後の繊維原料を湿潤状態のまま反応工程S1Bに供給して加熱してもよいが、スルファミン酸や尿素等の一部が加水分解を受ける可能性がある。このため、反応工程S1Bにおけるスルホン化反応を適切に進行させる上では、反応工程S1B前に乾燥工程を設けることが好ましい。
なお、水分率が平衡状態とは、処理施設内における雰囲気中の水分とサンプル中の水分が見かけ上出入りしなくなる状態のことを意味する。
例えば、加熱装置内の雰囲気温度が100℃以下が好ましく、より好ましくは20℃以上100℃以下であり、さらに好ましくは、50℃以上100℃以下である。加熱時における雰囲気温度が100℃よりも高くなると、スルホン化剤等の分解が起こる可能性がある。一方、加熱時における雰囲気温度が20℃よりも低いと、乾燥に時間がかかる。
したがって、上述した反応を適切に行う上では加熱時における雰囲気温度が100℃以下が好ましく、操作性の観点では加熱時における雰囲気温度が20℃以上が好ましい。
また、本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維の製造方法の化学処理工程における反応工程S1Bの後には、スルホ基を導入した後の繊維原料を洗浄する洗浄工程を含んでもよい。
上記微細化処理工程S2はスルホン化した繊維原料を微細化して所定の大きさの(例えば、ナノレベル)微細繊維にする工程である。そして、この工程S2によりスルホン化微細セルロース繊維分散液が得られる。このスルホン化微細セルロース繊維分散液は、微細化処理工程S2で微細化されたスルホン化微細セルロース繊維が水等の水溶性の溶媒に分散した状態のものである。
この微細化処理工程S2に用いられる処理装置は、上記機能を有するものであれば、とくに限定されない。例えば、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー(石臼型粉砕機)、ボールミル、カッターミル、ジェットミル、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用のミキサーなどを使用することができるが、処理装置は、これらの装置に限定されるものはない。これらのうち、材料に均等に力を加えることができ、均質化に優れているという点で、高圧ホモジナイザーを用いるのが望ましいが、かかる装置に限定されない。
前記スルホ基の導入量は、特に限定されないが、0.5mmol/g〜3.0mmol/gが好ましく、より好ましくは0.6mmol/g〜3.0mmol/g、さらに好ましくは0.8mmol/g〜3.0mmol/g、特に好ましくは1.0mmol/g〜3.0mmol/gである。
例えば、乾燥温度を40℃以下となる条件で乾燥する場合には、スルホ基の導入量を0.5mmol/g以上0.9mmol/gよりも少なくするのが好ましく、乾燥温度を70℃以下となる条件で乾燥する場合には、スルホ基の導入量を0.9mmol/g以上1.4mmol/gよりも少なくするのが好ましく、乾燥温度を120℃以下となる条件で乾燥する場合には、スルホ基の導入量を1.4mmol/g以上3.0mmol/g以下となるようにするのが好ましい。
また、微細セルロース繊維を含む混合物(スルホン化微細セルロース繊維分散液)を乾燥する際の乾燥温度を同じにした場合には、乾燥後の微細セルロース繊維含有乾燥固形物の分散性を向上させる上では、スルホ基の導入量が大きくなるようにするのが好ましい。
なお、スルホン化微細セルロース繊維のスルホ基導入量は、スルホン化微細セルロース繊維の所定量を燃焼させて、燃焼イオンクロマトグラフを用いて燃焼物に含まれる硫黄分をIEC 62321に準拠した方法で測定することができる。また、上述したスルホン化した繊維原料からスルホン化微細セルロース繊維を調製する場合には、かかるスルホン化繊維原料の硫黄導入量から求めてもよい。
スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅は、特に限定されないが、電子顕微鏡で観察して1nm〜1000nmであり、好ましくは2nm〜500nm、より好ましくは2nm〜100nmであり、さらに好ましくは2nm〜30nmであり、よりさらに好ましくは2nm〜20nmである。
また、スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅が、30nmよりも大きくなるとアスペクト比が低下して、繊維同士のからみあいが減少する傾向にある。さらに、平均繊維幅が、30nmよりも大きくなると可視光の波長の1/10に近づき、マトリックス材料と複合した場合には界面で可視光の屈折及び散乱が生じ易く、可視光の散乱が生じてしまい、透明性が低下する傾向にある。
スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅は、以下の方法で測定することができる。
例えば、スルホン化微細セルロース繊維を純水等の溶媒に分散させて、所定の質量%となるように混合溶液を調整する。そしてこの混合溶液をし、PEI(ポリエチレンイミン)をコーティングしたシリカ基盤上にスピンコートを行い、このシリカ基盤上のスルホン化微細セルロース繊維を観察する。観察は、例えば、走査型プローブ顕微鏡(例えば、島津製作所製;SPM−9700)を用いて行うことができる。そして、観察画像中のスルホン化微細セルロース繊維をランダムに20本選び、各繊維幅を測定し平均化すればスルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅を求めることができる。
スルホン化微細セルロース繊維分散液および後述する微細セルロース繊維再分散液の透明性は、該分散液のヘイズ値により評価することができる。
例えば、上記分散液のヘイズ値は、20%以下が好ましく、より好ましくは15%以下であり、さらに好ましくは10%以下である。かかる分散液のヘイズ値が20%よりも高いと透明性を適切に発揮させにくくなる。
したがって、スルホン化微細セルロース繊維は、固形分濃度が0.5質量%となるように調整した分散液のヘイズ値が上記範囲となるように調製するのが好ましい。
なお、固形分濃度(質量%)は以下の式から求めることができる。
固形分濃度(質量%)=(サンプルの固形分質量/サンプルの質量)×100
(サンプルの固形分質量は、測定に供したサンプルと同量のサンプルを105℃の雰囲気下で2時間、恒量になるまで乾燥させた後に残った固形物(例えば、上記例ではスルホン化微細セルロース繊維を分散させた分散液を乾燥して恒量の状態となった後のスルホン化微細セルロース繊維)の質量(g)を意味する。サンプルの質量は、測定に供したサンプル(例えば、上記例ではスルホン化微細セルロース繊維を分散させた分散液)の質量(g)を意味する。)
全光線透過率は、上記分散液のヘイズ値が上記範囲内において、全光線透過率が90%以上であり、より好ましくは95%以上となるように調製するのが好ましい。かかる分散液の全光線透過率が90%よりも低いと透明性を適切に発揮させにくくなる。
ヘイズ値および全光線透過率は、以下のようにして測定することができる。
スルホン化微細セルロース繊維分散液の粘度特性は、分散液のB型粘度により評価することができる。
かかる粘度は、スルホン化微細セルロース繊維の固形分濃度が0.5質量%、温度が25℃としたスルホン化微細セルロース繊維分散液において、測定条件は回転数12rpm、3分の測定条件下で、好ましくは500mPa・s以上であり、より好ましくは1000mPa・s、さらに好ましくは1500mPa・s、特に好ましくは2000mPa・s以上である。
市販されているポリエチレンオキサイドからなる増粘剤では、上記条件(温度25℃、増粘剤濃度0.5%、12rpm)でのB型粘度が100mPa・s以上である。
したがって、スルホン化微細セルロース繊維分散液のB型粘度が上述のような大きい粘度を発揮させることができれば、スルホン化微細セルロース繊維分散液を増粘剤として好適に使用することができる。
B型粘度は、以下のようにして測定することができる。
(B型粘度復元率(%))=(微細セルロース繊維再分散液の粘度)/(スルホン化微細セルロース繊維分散液の粘度)×100
本実施形態に係る微細セルロース繊維含有乾燥固形物の製造方法は、金属イオンや、水溶性高分子などの分散剤を添加することなく、上記のごとく調製したスルホン化微細セルロース繊維を水に分散させた分散液であるスルホン化微細セルロース繊維分散液を、上述した所定の水分率以下となるように乾燥させることにより得ることができる。つまり、本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維分散液は、スルホン化微細セルロース繊維が水等の水溶性の溶媒に分散した状態のものであり、本実施形態の微細セルロース繊維含有乾燥固形物は、上記スルホン化微細セルロース繊維分散液(この分散液が特許請求の範囲の微細処理工程後の微細化した微細セルロース繊維を水に分散させた「混合物」に相当する)が乾燥した状態のものである。つまり、本実施形態の微細セルロース繊維含有乾燥固形物は、所定の平均繊維幅を有する微細セルロース繊維を含む混合物の乾燥物である。
水分率が高い方が製造効率を向上させることができ、繊維を温和な条件で処理したり、加熱時間を短くできるので繊維へのダメージを小さくすることができる。このため、微細セルロース繊維含有乾燥固形物の品質を向上させることができる。また、水分率を高くすることにより、微細セルロース繊維含有乾燥固形物を水等に分散させた微細セルロース繊維再分散液の透明性を向上させることができる(図2参照)。
一方、輸送や取り扱い性の観点では、水分率が低いほうが好ましい。例えば、水分率は50%以下が好ましく、より好ましくは30%以下であり、さらに好ましくは20%以下であり、さらにより好ましくは10%以下である。
水分率(%)=((サンプルの質量−サンプルの固形分質量)/サンプルの質量)×100
(サンプルの質量は、測定に供したサンプル(例えば、上記例では微細セルロース繊維含有乾燥固形物)の質量(g)を意味する。サンプルの固形分質量は、測定に供したサンプルと同量のサンプルを105℃の雰囲気下で2時間、恒量になるまで乾燥させた後に残った固形物(例えば、上記例では微細セルロース繊維含有乾燥固形物を乾燥して恒量の状態となった後の微細セルロース繊維含有乾燥固形物)の質量(g)を意味する。)
スルホン化微細セルロース繊維分散液の乾燥時の温度は、熱によるスルホン化微細セルロース繊維同士の凝集を低減する観点、また、加熱後の変色を防ぐ観点から、120℃以下であればよく、より優れた再分散性を確保する観点からは、好ましくは80℃以下、さらに好ましくは70℃以下、より好ましくは40℃以下、特に好ましくは10℃以下である。特に、40℃以下であれば、スルホン化微細セルロース繊維中の置換基導入量が少ない場合であっても、優れた再分散性を確保することができる。
また、スルホ基の導入量が同じ場合には、乾燥温度を低くすれば分散性を向上させることができる傾向にある。
スルホン化微細セルロース繊維分散液の乾燥方法は特に限定されず、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、噴霧乾燥等の公知の方法により微細セルロース繊維含有乾燥固形物を得ることができる。
減圧雰囲気下または真空雰囲気下の圧力は、例えば、80℃の水の飽和水蒸気圧付近である480hPa以下、より好ましくは70℃の水の飽和水蒸気圧付近である320hPa以下、さらに好ましくは40℃の水の飽和水蒸気圧付近である75hPa以下、特に好ましくは10℃の水の飽和水蒸気圧付近である15hPa以下等の減圧または真空条件を挙げることができる。
上記微細セルロース繊維再分散液は、微細セルロース繊維含有乾燥固形物に水等の溶媒を加え、微細セルロース繊維含有乾燥固形物含有液を得た後、当該混合液を撹拌することにより得られたものである。つまり、微細セルロース繊維再分散液は、微細セルロース繊維含有乾燥固形物が水等の水溶性の溶媒に分散した状態のものである。
本実施形態に係る微細セルロース繊維再分散液とは、上述したように微細セルロース繊維含有乾燥固形物を水等の水溶性の溶媒(水溶性溶媒)へ撹拌等により分散させた分散液である。
水溶性溶媒へ再分散後の微細セルロース繊維含有乾燥固形物の固形分濃度は、特に限定されず、再分散後の微細セルロース繊維再分散液の用途に応じて適宜調整することができる。
水以外の溶媒であっても使用用途に応じて好適な溶媒を選択することができ、例えば、溶解度パラメーターに大きな差がない、極性有機溶媒が挙げられる。極性有機溶媒には、アルコール類、ケトン類、エーテル類、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられるが、特に限定されない。
微細セルロース繊維含有乾燥固形物の再分散性は、微細セルロース繊維含有乾燥固形物を水へ再分散させた、微細セルロース繊維再分散液と微細セルロース含有固形物のヘイズ値または全光線透過率またはB型粘度または沈殿特性の少なくとも一項目を測定し比較することで評価できる。
再分散性が良いというのは、
1)再分散後と乾燥前を比較して、全光線透過率の差が小さい場合、
2)再分散後と乾燥前を比較して、ヘイズ値の差が小さい場合、
3)再分散後と乾燥前を比較して、粘度の差が小さい場合(つまり粘度の復元率が高い場合)、
4)沈殿特性試験において、再分散後に凝集等が見られない場合
の何れか一つまたは複数の所見を得られることをいう。
<スルホン化微細セルロース繊維分散液の製造>
針葉樹クラフトパルプ(丸住製紙製NBKP)を使用した。以下では、実験に供したNBKPを単にパルプとして説明する。パルプは、大量の純水で洗浄後、200メッシュのふるいで水を切り、固形分濃度を測定後、実験に供した。
パルプを以下のように調製した反応液に加え撹拌してスラリー状にした。なお、パルプを反応液に加えてスラリー状にする工程が、本実施形態の化学処理工程の接触工程に相当する。
スルホン化剤と尿素または/およびその誘導体が以下の固形分濃度となるように調製した。
実験では、スルホン化剤として、スルファミン酸(純度98.5%、扶桑化学工業製)を使用し、尿素またはその誘導体として、尿素溶液(純度99%、和光純薬工業製、型番;特級試薬)を使用した。両者の混合比は、濃度比(g/L)において、1:2.5となるように混合し水溶液を調整した。
スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))=200/500
容器に水100mlを加えた。ついで、この容器にスルファミン酸20g、尿素50gを加えて、スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))が200/500(1:2.5)の反応液を調製した。つまり、尿素は、スルファミン酸100重量部に対して250重量部となるように加えた。
サンプルの秤量は、秤量瓶を使用した測定方法で行った。秤量には電子天秤(新光電子株式会社製、型番;RJ−320)を用いた。
水分率(%)=((サンプルの質量−サンプルの固形分質量)/サンプルの質量)×100
サンプル:ろ紙から剥がしたパルプ
サンプルの質量:ろ紙から剥がしたパルプを乾燥機に供した質量(g)
サンプルの固形分質量:ろ紙から剥がしたパルプを乾燥機に供した質量(g)と同量のろ紙から剥がしたパルプを、105℃の雰囲気下で2時間、恒量になるまで乾燥させた後に残った固形物の質量(g)であり、乾燥方法はJIS P 8225 に準拠した方法により行った。
恒温槽の温度:120℃、加熱時間:20分
高圧ホモジナイザー(コスにじゅういち製N2000−2C−045型)を用いてスルファミン酸/尿素処理パルプの解繊を行い、スルホン化微細セルロース繊維分散液を調製した。高圧ホモジナイザーの処理条件は、以下の通りとした。
得られた固形分濃度が0.5質量%のスルホン化微細セルロース繊維分散液50g(絶乾重量にして0.25g分)をシャーレ上に分取し真空装置(真空ポンプ到達圧力は10Pa)内で水分率が平衡となるまで(水分率10%以下)乾燥(本実施形態の真空乾燥に相当)させ、微細セルロース繊維含有乾燥固形物を得た。乾燥条件は以下の通りである。
真空装置バキューム計指針値:−0.1MPa以下
真空装置内雰囲気温度:40℃
サンプル温度:10℃
得られた微細セルロース繊維含有乾燥固形物の全量をバイアル瓶に入れ、固形分濃度が0.5質量%となるように純水を加え、30分静置後、10分間強く手動で振り混ぜ微細セルロース繊維含有乾燥固形物を再分散させた微細セルロース繊維再分散液を得た。
後述する評価は、分散液をさらに一昼晩静置した後に実施した。
(化学処理後のパルプの元素分析(硫黄))
化学処理後のパルプに含まれる硫黄分を燃焼イオンクロマトグラフにより求めた。測定方法はIEC 62321の測定条件に準拠して測定した。
燃焼装置:三菱ケミカルアナリテック社製、型番;AQF−2100 H
イオンクロマト:サーモフィッシャーサイエンス社製、型番;ICS−1600
ヘイズ値の測定および全光線透過率の測定はスルホン化微細セルロース繊維を純水で、固形分濃度が0.5質量%となるようにスルホン化微細セルロース繊維分散液を調製した。そして調製した溶液を分取して分光光度計(日本分光(株)社製、型番;V−570)を用いて測定した。なお、測定方法は、JIS K 7105の方法に準拠して行った。
スルホン化微細セルロース繊維分散液及び後述の方法で作成した微細セルロース繊維再分散液の粘度をB型粘度計(英弘精機(株)製、LVDV−I Prime)にて測定した。
具体的には、測定サンプルはそれぞれ固形分濃度が0.5質量%、温度25℃とし、測定条件は回転数12rpm、3分、スピンドルは付属のLVスピンドルとした。
(B型粘度復元率(%))=(微細セルロース繊維再分散液の粘度)/(スルホン化微細セルロース繊維分散液の粘度)×100
微細セルロース繊維含有乾燥固形物(絶乾重量0.25g分)をバイアル瓶へ入れ、純水を加え、微細セルロース繊維含有乾燥固形物が固形分濃度0.5質量%となるように調整し、手動にて振り混ぜ、一晩放置し微細セルロース繊維再分散液を得た。得られた分散液は、目視にて沈殿の状態を確認し、以下の通り評価した。
◎:凝集がほとんどなく透明である
○:一部凝集している繊維が見られ若干の白濁があるが、沈降はない
×:凝集している繊維が見られ、さらに沈降している
乾燥工程において、恒温槽の温度を40℃に設定した乾燥機で加熱乾燥を行なった以外、実施例1と同様にして実施した。
反応液の調製工程において、スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))=200/200となるように調整した反応液を用いて、パルプ100重量部に対して、スルファミン酸は1000重量部、尿素は1000重量部となるように調製した以外、実施例1と同様にして実施した。
乾燥工程において、恒温槽の温度を40℃に設定した乾燥機で加熱乾燥を行なった以外、実施例3と同様にして実施した。
乾燥工程において、恒温槽の温度を70℃に設定した乾燥機で加熱乾燥を行なった以外、実施例3と同様にして実施した。
反応液の調製工程において、スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))=200/300パルプ100重量部に対して、スルファミン酸は1000重量部、尿素は1500質量部となるように調製した。さらに、加熱工程において、反応温度を160℃、反応時間を1時間とした以外、実施例1と同様にして実施した。
乾燥工程において、恒温槽の温度を40℃に設定した乾燥機で加熱乾燥を行なった以外、実施例6と同様にして実施した。
乾燥工程において、恒温槽の温度を70℃に設定した乾燥機で加熱乾燥を行なった以外、実施例6と同様にして実施した。
乾燥工程において、恒温槽の温度を105℃に設定した乾燥機で加熱乾燥を行なった以外、実施例6と同様にして実施した。
パルプは実施例1と同様に針葉樹クラフトパルプ(丸住製紙製NBKP)を使用した。パルプは、大量の純水で洗浄後、200メッシュふるいで水を切り、固形分濃度を20重量%とし、実験に供した。
反応液は、純水1Lに対してスルファミン酸が200g、尿素が200gとなるように調製した。つまり、以下のように混合した。
スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))=200/200
恒温槽の温度:140℃、加熱時間:30分
微細化処理には、高圧ホモジナイザーを使用した。高圧ホモジナイザーの圧力は60MPaとした。また、パス回数は目視にて粗大繊維が視認できなくなるまで行い。スルホン化微細セルロース繊維を得た。
得られたスルホン化微細セルロース繊維を乾燥して調製した微細セルロース繊維含有乾燥固形物の再分散性試験や評価は、実施例1と同様に実施した。
乾燥工程において、恒温槽の温度を40℃に設定した乾燥機で加熱乾燥を行った以外、実施例10と同様にして実施した。
乾燥工程において、恒温槽の温度を70℃に設定した乾燥機で加熱乾燥を行った以外、実施例10と同様にして実施した。
乾燥工程において、恒温槽の温度を105℃に設定した乾燥機で加熱乾燥を行った以外、実施例10と同様にして実施した。
乾燥工程において、恒温槽の温度を105℃に設定した乾燥機で加熱乾燥を行い、乾燥後の微細セルロース繊維含有乾燥固形物の水分率が43%となるように調製した以外、実施例13と同様にして実施した。
乾燥工程において、恒温槽の温度を105℃に設定した乾燥機で加熱乾燥を行い、乾燥後の微細セルロース繊維含有乾燥固形物の水分率が77%となるように調製した以外、実施例13と同様にして実施した。
パルプは実施例1と同様に針葉樹クラフトパルプ(丸住製紙製NBKP)を使用した。パルプは、大量の純水で洗浄後、200メッシュふるいで水を切り、固形分濃度を20重量%とし、実験に供した。
スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))=200/500
上記反応液が含浸したパルプスラリーを恒温槽の温度が50℃の乾燥機内で、重量変化がなくなるまで乾燥(水分率が平衡状態になるまで)した。この乾燥したパルプを以下の反応条件で加熱反応(スルホン化反応)を行った。
恒温槽の温度:120℃、加熱時間:25分
得られたスルファミン酸/尿素処理パルプは、乾燥させること無く、上記処理をもう一回繰り返し、2回処理したスルホン化パルプを得た。
得られた2回処理したスルホン化パルプを再度スルファミン酸/尿素で反応させた。
スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))=200/200
恒温槽の温度:120℃、加熱時間:25分
微細化処理には、高圧ホモジナイザーを使用した。高圧ホモジナイザーの圧力は60MPaとした。また、パス回数は目視にて粗大繊維が視認できなくなるまで行い、スルホン化微細セルロース繊維を得た。
得られたスルホン化微細セルロース繊維を乾燥して調製した微細セルロース繊維含有乾燥固形物の再分散性試験や評価は、実施例1と同様にして実施した。
3回目の処理では、反応液をパルプ絶乾重量として100質量部に対して固形分重量として150質量部となるようにした点、反応液をパルプに含浸させた後、吸引ろ過による脱水をすることなく加熱反応に供した点、加熱反応の時間を25分とした点以外、実施例1と同様にしてスルホン化パルプを得た。
乾燥工程において、恒温槽の温度を40℃に設定した乾燥機で加熱乾燥を行った以外、実施例16と同様にして実施した。
なお、この実験では、微細化処理して乾燥工程後に得られた微細セルロース繊維含有乾燥固形物は、水分率が10%以下となるように調製した。
乾燥工程において、恒温槽の温度を70℃に設定した乾燥機で加熱乾燥を行った以外、実施例16と同様にして実施した。
なお、この実験では、微細化処理して乾燥工程後に得られた微細セルロース繊維含有乾燥固形物は、水分率が10%以下となるように調製した。
乾燥工程において、恒温槽の温度を105℃に設定した乾燥機で加熱乾燥を行った以外、実施例16と同様にして実施した。
乾燥工程において、恒温槽の温度を105℃に設定した乾燥機で加熱乾燥を行い、乾燥後の水分率を46%とした以外、実施例17と同様にして実施した。
乾燥工程において、恒温槽の温度を105℃に設定した乾燥機で加熱乾燥を行い、乾燥後の水分率を75%とした以外、実施例17と同様にして実施した。
乾燥工程において、恒温槽の温度を70℃に設定した乾燥機で加熱乾燥を行なった以外、実施例1と同様にして実施した。
乾燥工程において、恒温槽の温度を105℃に設定した乾燥機で加熱乾燥を行なった以外、実施例1と同様にして実施した。
乾燥工程において、恒温槽の温度を105℃に設定した乾燥機で加熱乾燥を行なった以外、実施例3と同様にして実施した。
反応液の調製工程において、パルプ100重量部に対して、スルファミン酸は250重量部、尿素は125重量部となるように調製した以外、実施例1と同様にして実施した。
乾燥工程において、恒温槽の温度を40℃に設定した乾燥機で加熱乾燥を行なった以外、比較例4と同様にして実施した。
乾燥工程において、恒温槽の温度を70℃に設定した乾燥機で加熱乾燥を行なった以外、比較例4と同様にして実施した。
乾燥工程において、恒温槽の温度を105℃に設定した乾燥機で加熱乾燥を行なった以外、比較例4と同様にして実施した。
(リン酸エステル化微細セルロース繊維含有物の作成)
実施例1に供したものと同じNBKPを用い、NBKPの絶乾質量として100質量部に対しリン酸二水素アンモニウム56質量部、尿素150質量部となるように圧搾し、薬液含浸パルプを得た。該薬液含浸パルプを105℃の雰囲気下で乾燥させた後、反応工程として140℃の雰囲気温度下で20分間加熱し、リン酸基を導入した以外、実施例1と同様に実施した。
得られた上記リン酸エステル化微細セルロース繊維中のリン酸基量をアルカリ滴定により測定した。具体的には以下のように実施した。前処理として、リン酸エステル化微細セルロース繊維スラリーを、固形分濃度が0.2質量%になるように純水で希釈した後、スラリーに対して10体積%の強酸性イオン交換樹脂を混合し1時間振とうし、目開きが90μmメッシュの金網にてスラリーのみを分離した。
乾燥工程において、恒温槽の温度を40℃に設定した乾燥機で加熱乾燥を行なった以外、比較例8と同様にして実施した。
乾燥工程において、恒温槽の温度を70℃に設定した乾燥機で加熱乾燥を行なった以外、比較例8と同様にして実施した。
乾燥工程において、恒温槽の温度を105℃に設定した乾燥機で加熱乾燥を行なった以外、比較例8と同様にして実施した。
<カルボキシ化CNFの製造>
実施例1に供したものと同じNBKPに、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−オキシラジカル(以下TEMPOと記載する)と臭化物を触媒として、次亜塩素酸塩存在下でNBKPにカルボキシ基を導入した。
得られた上記カルボキシ化微細セルロース繊維中のカルボキシ基は、微細化処理前のカルボキシ化パルプをアルカリ滴定することにより測定した。具体的には以下のように実施した。絶乾重量0.3gのカルボキシ化パルプを精秤し、固形分濃度が0.5%になるように純水で希釈した。得られたカルボキシ化パルプスラリーに、0.1M塩酸水溶液を加えpH2.5とした後、アルカリ滴定に供した。使用したアルカリ溶液は、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液であり、pH11となるまで、アルカリ溶液を滴下する毎に電気伝導度を測定することで、アルカリ滴定量と電気伝導度のプロットを得た。得られたプロットから変極点の滴定量を読み取り、その値を測定に供したカルボキシ化パルプの固形分重量で除することで、カルボキシ基量を算出した。
(亜リン酸エステル化微細セルロース繊維含有物の作成)
実施例1に供したものと同じNBKPを用い、反応のための薬品を、パルプ100質量部に対して、亜リン酸水素ナトリム・5水和物130質量部、尿素108質量部し、反応工程として180℃の雰囲気温度下で過熱した以外、実施例9と同様にして実施した。
得られた上記亜リン酸エステル化微細セルロース繊維分散液中の亜リン酸基量は、比較例10と同様にして測定した。
化学修飾が施されていない微細セルロース繊維(株式会社スギノマシン社製、BiNFi−s、FMa‐10002)を水に分散させた分散液を乾燥工程に供し、乾燥固形物を調製した。この調製した乾燥固形物の再分散性試験や評価は、実施例1と同様にして実施した。
具体的には、上記スギノマシン社製の微細セルロース繊維(製品出荷時の固形分濃度が2質量%)を、固形分濃度0.5重量%になるように純水と混合し、均一になるまでシェイキングし、一晩放置した。この一晩放置後の分散液を乾燥工程に供して乾燥固形物を調製した。
乾燥工程において、恒温槽の温度を105℃に設定した乾燥機で加熱乾燥を行った以外、比較例14と同様にして実施した。
乾燥工程において、恒温槽の温度を105℃に設定した乾燥機で加熱乾燥を行い、乾燥後の水分率を85%とした以外、比較例15と同様にして実施した。
図2には、比較例4、実施例1、実施例3、実施例10〜実施例16、実施例18〜実施例21、比較例8、比較例14〜比較例16の測定結果(微細セルロース繊維分散液と再分散後の微細セルロース繊維再分散液の透明度、粘度特性等)を示す。
図3には、実施例および比較例の評価試験の結果を示す。
図4には、評価試験結果をスルホ基導入量(硫黄導入量)と乾燥温度との関係で示した。なお、図4中において、「○」は実施例を示し、「×」は比較例を示している。
なお、図2に示すように、比較例14〜比較例16に示すように化学修飾を行っていない微細セルロース繊維の場合には、乾燥固形物を分散させた再分散液の評価試験はいずれも「×」であり、「凝集している繊維が見られ、さらに沈降している」という結果となった。しかも乾燥固形物の水分率を85%となるように調製した場合でも同様の評価となった。このため、いずれの乾燥固形物を分散させた再分散液においても、透明度(全光線透過率およびヘイズ値)も粘度に関しても適切に測定することができなかった。
Claims (4)
- セルロース繊維が平均繊維幅1nm〜1000nmに微細化された微細セルロース繊維と水を含む混合物の乾燥物であって、
前記微細セルロース繊維は、
水酸基の一部にスルホ基が導入されたスルホン化微細セルロース繊維であり、
該スルホ基に起因する硫黄導入量が、0.5mmol/g以上、3.0mmol/g以下であり、
前記乾燥物は、水分率が80%以下であり、
該乾燥物を前記微細セルロース繊維の固形分濃度が0.5質量%となるように水に分散させた状態において、該分散液の、B型粘度計を用いて、25℃、回転数12rpm、3分間回転させることで測定される粘度が、500mPa・s以上である
ことを特徴とする微細セルロース繊維含有乾燥固形物。 - 前記乾燥物は、
該乾燥物を前記微細セルロース繊維の固形分濃度が0.5質量%となるように水に分散させた状態において、該分散液のヘイズ値が20%以下となるものである
ことを特徴とする請求項1記載の微細セルロース繊維含有乾燥固形物。 - 前記乾燥物は、
該乾燥物を前記微細セルロース繊維の固形分濃度が0.5質量%となるように水に分散させた状態において、該分散液の全光線透過率が95%以上となるものである
ことを特徴とする請求項1または2記載の微細セルロース繊維含有乾燥固形物。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の微細セルロース繊維含有乾燥固形物が水に分散したものである
ことを特徴とする微細セルロース繊維再分散液。
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