JP2023028832A - Cnf含有組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】有機塩の存在下であっても、取り扱い性及び経済性に優れたCNF含有組成物を提供する。【解決手段】有機塩を含有する被対象物に加えて使用される組成物であり、水酸基の一部がスルホ基で置換されたスルホン化微細セルロース繊維を含有しており、含有するスルホン化微細セルロース繊維のスルホ基の導入量が、0.4mmol/g~3.0mmol/gである。スルホン化微細セルロース繊維をアクリル酸系高分に作用させることにより、取り扱い性を向上させ、経済的に優れた増粘作用を発揮させることができる。【選択図】図1

Description

本発明は、CNF含有組成物に関する。さらに詳しくは、有機塩の存在下で粘性を付与するのに使用されるCNF含有組成物に関する。
スキンケア化粧品やボディクリーム、メイクアップ化粧品、日焼け止めクリームなどの化粧料には、一般的に取り扱い性の観点から粘度が付与されている。化粧料に粘度を付与する方法としては、例えば、カルボマー(医薬部外品表示名称;カルボキシビニルポリマー)やクロスポリマー(医薬部外品原料規格成分名称;アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体)などのアクリル酸系高分子や、多糖類などを配合する方法が存在する。前者のアクリル酸系高分子は、基質安定性が高く、他成分への干渉が低いことから、広く一般的に採用されている。その中でもカルボマーは、より少量で高い粘性を付与することができるので、経済的観点から非常に有効であることが知られている。
近年、化粧料に皮膚の老化等を抑制のための化合物を配合されるようになってきている。このような化合物としては、例えば、抗酸化活性を有する化合物の塩などがある(以下、このような化合物の塩を有機塩と称する)。このような有機塩は、化粧料の有効成分の経時的安定性を確保することも可能であることから、様々な化粧料に採用されるようになってきている。
一方、カルボマーなどのアクリル酸系高分子は、耐塩性に乏しく、とくに有機塩の種類によっては著しい粘度低下や凝集を生じさせることが知られている。
そこで、有機塩の存在下でも、化粧料に対して適切に粘度を付与する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、糖系の多価アルコールを使用することが記載さており、特許文献2には、アクリル酸系高分子を化学修飾することにより耐塩性を発揮させた化合物が開示されている。
特開2004-91360号公報 特開2015-172028号公報
しかるに、特許文献1の技術では、少量添加では十分な粘性を発揮させるのは困難であるといった問題や、粘性を発揮させるために多量に添加するこにより有効成分量などが制限されるなどの問題もある。また、特許文献2の技術では、製造が煩雑であり製造コストが増加するといった問題や、化学変性に伴い適用可能な化粧料の有効成分が制限されるなどの問題も生じている。
このため、有機塩の存在下であっても、カルボマーなどのアクリル酸系高分子と同等の取り扱い性及び経済性を有する増粘剤の開発が望まれている。
本発明は上記事情に鑑み、有機塩の存在下であっても、取り扱い性及び経済性に優れたCNF含有組成物を提供することを目的とする。
上記課題を解決すべき鋭意検討を重ねた結果、本発明者は、上記課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
本発明のCNF含有組成物は、有機塩を含有する被対象物に加えて使用される組成物であり、水酸基の一部がスルホ基で置換されたスルホン化微細セルロース繊維を含有しており、含有するスルホン化微細セルロース繊維のスルホ基の導入量が、0.4mmol/g~3.0mmol/gである。
本発明によれば、有機塩の存在下であっても、スルホン化微細セルロース繊維をアクリル酸系高分に作用させることにより、取り扱い性を向上させ、経済的に優れた増粘作用を発揮させることができる。
本実施形態のCNF含有組成物に含有されるスルホン化微細セルロース繊維の特性を示した図である。 本実施形態のCNF含有組成物の特性を示した図である。 本実施形態のCNF含有組成物を有機塩と混合した状態における粘性を示した図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本実施形態のCNF含有組成物は、アクリル酸系高分子に対してスルホン化微細セルロース繊維を作用させることにより、有機塩存在下における粘度低下を抑制できるようにしたことにしたことに特徴を有している。
本明細書の「有機塩」とは、有機化合物のアニオン性官能基または負の電荷を帯びた部位にナトリウムイオンやマグネシウムイオンのような金属イオンが静電的または配位的に結合した有機化合物の塩のことを意味する。具体的には、塩化ナトリウムのような無機塩以外の化合物塩をいう。有機塩としては、化粧料などとして使用可能であればよく、特に限定されない。例えばアスコルビン酸やトコフェロールの塩やこれらの誘導体塩(例えば、アスコルビン酸誘導体またはアスコルビン酸誘導体塩)などを挙げることができる。
本実施形態のCNF含有組成物は、スルホン化微細セルロース繊維が含有した有機塩を含有する被対象物に添加して使用される組成物である。具体的には、本実施形態のCNF含有組成物に含まれるスルホン化微細セルロース繊維をアクリル酸系高分子に作用させることにより、アクリル酸系高分子が有する粘性を適切に発揮させるというものである。
このアクリル酸系高分子は、使用時において、スルホン化微細セルロース繊維と共存状態にあればよく、例えば、スルホン化微細セルロース繊維とともに本実施形態のCNF含有組成物に含有した状態でもよく、被対象物中に含有した状態であってもよい。
このアクリル酸系高分子は、アクリル基構造を有しているもので、増粘性を発揮する機能を有するものであれば、とくに限定されない。例えば、皮膚外用剤に用いる場合には、一般的に使用されているカルボマー(医薬部外品表示名称;カルボキシビニルポリマー)やクロスポリマー(医薬部外品原料規格成分名称;アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体)などをあげることができる。
なお、この被対象物は、本実施形態のCNF含有組成物を用いることが可能なものであればよく、粘度向上が求められているものであれば、とくに限定されない。
例えば、工業分野では樹脂製組成物や、塗料等を挙げることができ、医薬品等の分野では、皮膚外用剤等を挙げることができるが、上記機能を目的とする物であれば、かかる分野・製品に限定されないことはいうまでもない。
皮膚外用剤としては、例えば、医薬品や医薬部外品や化粧品等を挙げることができる。化粧品としては、化粧水、美容液や、薬液などのほか、クレンジング剤や保湿クリーム等を挙げることができる。
被対象物の性状は、とくに限定されない。例えば、化粧品であれば、化粧水、美容液、薬液などの液体状のものはもちろん、ジェル状やスラリー状など様々な性状のものを対象とすることができる。
以下では、本実施形態のCNF含有組成物中にアクリル酸系高分子と、スルホン化微細セルロース繊維と、を含有した場合を代表として説明する。
なお、被対象物中におけるアクリル酸系高分子の有無はとくに限定されない。被対象物中にアクリル酸系高分子が存在する場合、アクリル酸系高分子の状態はとくに限定されない。例えば、アクリル酸系高分子が被対象物中の有機塩および/または無機塩により凝集等を起こした状態であってもよく、そのような状態になっていなくてもよい。以下の説明では、被対象物中にアクリル酸系高分子が存在しない場合を代表として説明する。
本実施形態のCNF含有組成物は、アクリル酸系高分子と、スルホン化微細セルロース繊維と、を含有したものである。具体的には、本実施形態のCNF含有組成物は、両者を含有させることにより直鎖状のアクリル酸系高分子に対してスルホン化微細セルロース繊維を作用させたものである。
本実施形態のCNF含有組成物に含有されるアクリル酸系高分子は、直鎖状の状態になっている。例えば、上記アクリル酸系高分子の一例であるカルボマーは、直鎖状の分子構造を有しているが、乾燥状態においては、絡み合った構造になっている。かかる状態のカルボマーに対して、水を接触させれば膨潤して絡み合いがほどけ、直鎖状の状態にすることができる。この状態で中和処理を行えばカルボマー同士は、電気的反発により凝集することなる直鎖状の状態で分散した状態になるので、粘性を発揮する。つまり、中和処理により直鎖状の状態のカルボマーを得ることができる。
本実施形態のCNF含有組成物のスルホン化微細セルロース繊維は、水酸基の一部がスルホ基で置換されたスルホン化微細セルロース繊維である。
このスルホン化微細セルロース繊維は、さらに微細なセルロース繊維(以下、ユニット繊維という)を複数含んだものである。
具体的には、スルホン化微細セルロース繊維は、複数のユニット繊維が連結して形成された繊維である。このユニット繊維は、かかる繊維を構成するセルロース(D-グルコースがβ(1→4)グリコシド結合した鎖状の高分子)の水酸基(-OH基)の少なくとも一部が下記式(1)で示されるスルホ基で硫酸化されたものである。つまり、スルホン化微細セルロース繊維は、微細セルロース繊維の水酸基の一部が、スルホ基で置換されたものである。なお、微細セルロース繊維の水酸基の一部がスルホ基で置換された構造としては、例えば、スルホン化微細セルロース繊維の水酸基が結合している炭素と酸素(O)を介して下記のスルホ基が結合したもの(いわゆるエステル結合したもの)や、スルホン化微細セルロース繊維の水酸基が結合している炭素と下記のスルホ基が直接結合したものを挙げることができる。
(-SO3-)r・Zr+ (1)
(ここで、rは、独立した1~3の自然数であり、Zr+は、r=1のとき、水素イオン、アルカリ金属の陽イオン、アンモニウムイオン、脂肪族アンモニウムイオン、芳香族アンモニウムイオンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である。また、r=2または3のとき、アルカリ土類金属の陽イオンまたは多価金属の陽イオンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である。)
以上のごとく、本実施形態のCNF含有組成物は、直鎖状のアクリル酸系高分子と、スルホン化微細セルロース繊維とを含有したものであり、直鎖状のアクリル酸系高分子に対してスルホン化微細セルロース繊維が作用した状態となっている。
このため、有機塩を含む液体(被対象物)に対して本実施形態のCNF含有組成物を加えれば、アクリル酸系高分子が有する粘度を適切に発揮させることができる。つまり、本実施形態のCNF含有組成物は、スルホン化微細セルロース繊維を直鎖状のアクリル酸系高分子に対して作用させることにより、含有するアクリル酸系高分子に対して耐塩性を付与することができる。
しかも、本実施形態のCNF含有組成物は、両者(直鎖状のアクリル酸系高分子とスルホン化微細セルロース繊維)の相互作用によりアクリル酸系高分子単独の粘性よりも優れた粘性を発揮させることができる。このため対象液体に加える量を従来のアクリル酸系高分子単独の場合と比べて少なくできるから、取り扱い性を向上させることができるという利点も得られる。
本実施形態のCNF含有組成物が含有するアクリル酸系高分子に対して耐塩性を付与するメカニズムの詳細は定かではないが、以下のように推測される。
一般的な直鎖状のアクリル酸系高分子が含有する液体を対象液体に加えれば、対象液体中において静電反発により互いに反発しながら直鎖状の状態を維持しつつ、互いに絡み合ったネットワーク構造を形成する。このアクリル酸系高分子によるネットワーク構造が、対象液体に対する粘性付与に起因しているものと考えられる。そして、このアクリル酸系高分子のネットワーク構造は、周囲の水をその内方に抱え込むという性質を有しており、この性質により対象液体をゲル化させているものと考えられる。しかしながら、対象液体中に有機塩が含まれていると、かかる対象液体に上記液体を添加すれば、対象液体中の有機塩に起因する急激な粘度低下が生じることが知られている。この理由としては、有機塩により、アクリル酸系高分子同士の反発が抑制されて凝集したり、ネットワーク構造内の水が除去されたりするなどの現象が生じているものと推察されている。
一方、本実施形態のCNF含有組成物は、スルホン化微細セルロース繊維が直鎖状のアクリル酸系高分子の表面付近に作用することにより、アクリル酸系高分子が周囲の有機塩による影響を受け難い状態になっているものと推測される。つまり、有機塩によるアクリル酸系高分子同士の凝集やネットワーク構造内の水分率低下などの現象を受け難くになっているので、従来のアクリル酸系高分子に生じる急激な粘度低下を抑制できるものと推測される。
つぎに、本実施形態のCNF含有組成物のスルホン化微細セルロース繊維について詳細に説明する。
本実施形態のCNF含有組成物が含有するスルホン化微細セルロース繊維は、上述したように水酸基の一部がスルホ基で置換されたスルホン化微細セルロース繊維である。
スルホン化微細セルロース繊維は、スルホ基以外の他の官能基が微細セルロース繊維の水酸基の一部に結合していてもよく、とくに、スルホ基以外に硫黄を含む官能基(置換基)を含んでいてもよい。
以下の説明では、スルホン化微細セルロース繊維を構成するセルロース繊維の水酸基にスルホ基だけを導入した場合を代表として説明する。
スルホン化微細セルロース繊維のスルホ基の導入量は、とくに限定されない。
例えば、スルホン化微細セルロース繊維1g(固形分質量)あたりのスルホ基の導入量は、0.4mmol/g以上にすることができる。好ましくは、0.5mmol/g以上であり、より好ましくは0.8mmol/gであり、さらに好ましくは1.0mmol/g以上である。
スルホ基の導入量の上限値はとくに限定されないが、9.9mmol/gに近づくほど結晶性が低下することに起因する繊維の崩壊が懸念され、硫黄を導入する際のコストも増加する傾向にある。このため、上限値としては、9.9mmol/g以下が好ましく、より好ましくは5.0mmol/g以下である。
したがって、スルホン化微細セルロース繊維へのスルホ基の導入量は、0.5mmol/g以上、5.0mmol/g以下が好ましく、より好ましくは0.8mmol/g~5.0mmol/gであり、さらに好ましくは1.0mmol/g~5.0mmol/gである。
なお、スルホン化微細セルロース繊維におけるスルホ基の導入量は、直接的にスルホ基を測定して評価しもよいし、スルホ基に起因する硫黄導入量で評価してもよい。
前者の測定方法としては、例えば、スルホン化微細セルロース繊維をイオン交換樹脂で処理した後に水酸化ナトリウム水溶液を滴下しながら電気伝導度を測定して得られた値に基づいて算出することができる。
具体的には、まず、0.2質量%のナノセルロース繊維含有スラリーに体積比で1/10の強酸性イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、アンバージェット1024;コンディショニング済)を加え、1時間以上振とう処理を行う(イオン交換樹脂による処理)。ついで、目開き90μm~200μm程度のメッシュ上に注ぎ、樹脂とスラリーを分離する。その後のアルカリを用いた滴定では、イオン交換樹脂による処理後のスルホン化微細セルロース繊維含有スラリーに、0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えながら、電気伝導度の値の変化を計測する。得られた計測データは、縦軸に電気伝導度、横軸に水酸化ナトリウム滴定量としてプロットすると曲線が得られ、変曲点が確認できる。この変曲点での水酸化ナトリウム滴定量がスルホ基量に相当し、この変曲点の水酸化ナトリウム量を測定に供したスルホン化微細セルロース繊維固形分量で除することで、スルホ基の導入量を求めることができる。
後者の測定方法としては、例えば、スルホン化微細セルロース繊維の所定量を燃焼させて、燃焼イオンクロマトグラフを用いて燃焼物に含まれる硫黄分をIEC 62321に準拠した方法で測定して得られた値に基づいて算出することができる。
なお、スルホ基中の硫黄の原子数は1であるので、硫黄導入量:スルホ基導入量=1:1である。例えば、スルホン化微細セルロース繊維1g(質量)あたりの硫黄導入が0.5mmol/gの場合には、スルホ基の導入量も当然に0.5mmol/gとなる。
スルホン化微細セルロース繊維は、セルロース繊維が微細化された微細セルロース繊維であり、その繊維は非常に細い構造となっている。
具体的には、スルホン化微細セルロース繊維は電子顕微鏡で観察した際に、平均繊維幅が1nm~30nmとなっている。好ましくは2nm~30nmであり、より好ましくは2nm~20nmであり、さらに好ましくは2nm~10nmである。
スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅は、公知の技術を用いて測定することができる。
例えば、スルホン化微細セルロース繊維を純水等の溶媒に分散させて、所定の質量%となるように混合溶液を調整する。そしてこの混合溶液を、PEI(ポリエチレンイミン)をコーティングしたシリカ基盤上にスピンコートを行い、このシリカ基盤上のスルホン化微細セルロース繊維を観察する。
観察方法としては、例えば、走査型プローブ顕微鏡(例えば、島津製作所製;SPM-9700)を用いることができる。得られた観察画像中のスルホン化微細セルロース繊維をランダムに20本選び、各繊維幅を測定し平均化すればスルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅を求めることができる。
スルホン化微細セルロース繊維は、上述した範囲の平均繊維幅を有する構造であるので、その分散体は優れた透明性を発揮する。言い換えれば、以下に示す透明性を有していれば、本実施形態のCNF含有組成物に含まれるスルホン化微細セルロース繊維であるといえる。
例えば、スルホン化微細セルロース繊維は、固形分濃度0.5質量%の状態に調製した際の全光線透過率が90%以上を発揮するものである。この全光線透過率は、より好ましくは95%以上である。
全光線透過率の測定方法は、後述する実施例に記載の分光ヘーズメーターを用いた方法により測定することができる。
また、スルホン化微細セルロース繊維は、ヘイズ値においては、固形分濃度0.5質量%の状態に調製した際のヘイズ値が30%以下を発揮するものである。このヘイズ値は、好ましくは20%以下であり、より好ましくは15%以下であり、さらに好ましくは10%以下である。
ヘイズ値の測定方法は、後述する実施例に記載の分光ヘーズメーターを用いた方法により測定することができる。
なお、本明細書中の固形分濃度は、下記式を用いて算出される。

固形分濃度(%)=(試料の固形分質量(g))/(供する試料量(g))×100

上記式中の「試料の固形分質量(g)」とは、試料の乾燥重量をいう。
体的には、乾燥機等を用いて試料を105℃で乾燥させて恒量となるように調整された乾燥重量をいう。詳細は実施例の記載に示すが、例えば、分散液を乾燥機に入れ、所定の乾燥条件(例えば、温度105℃、2時間)で乾燥して測定することにより、分散液中の試料としてのスルホン化パルプの乾燥重量を算出することができる。
また、恒量とは、処理施設内における雰囲気中の水分と原料中の水分が見かけ上出入りしなくなる状態のことを意味する。具体的には、一定時間(例えば2時間)乾燥させたのち、連続して測定した2回の重量の変化量が乾燥開始時の重量に対して1%以内となった状態を意味する(ただし、2回目の重量の測定は1回目に要した乾燥時間の半分以上とする)。
スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維長は、アクリル酸系高分子と作用し易い長さになっていれば、とくに限定されない。例えば、スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維長が、アクリル酸系高分子の平均繊維長よりも短くなるように調製されたものを用いることができる。
具体的には、スルホン化微細セルロース繊維は電子顕微鏡で観察した際の平均繊維長が50nm~1000nmのものを用いることができる。好ましくは100nm~500nmであり、より好ましくは150nm~500nmであり、さらに好ましくは200nm~500nmである。
スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維長は、平均繊維幅と同様の方法により測定することができる。
本実施形態のCNF含有組成物に含まれるスルホン化微細セルロース繊維は、その分散体が以下に示す粘性を発揮する。言い換えれば、上記透明性を有しつつ以下に示す粘性を有していれば、本実施形態のCNF含有組成物に含まれるスルホン化微細セルロース繊維であるといえる。なお、以下に示す値は、スルホン化微細セルロース繊維のみを以下に示す濃度に分散させた際の値である。
スルホン化微細セルロース繊維は、固形分濃度が0.2質量%の状態における、B型粘度計を用いて測定したB型粘度(20℃、回転数6rpm、3分)が100mPa・s以上、1000mPa・s以下のものである。好ましくは200mPa・s以上、500mPa・s以下であり、より好ましくは250mPa・s以上、500mPa・s以下である。
また、スルホン化微細セルロース繊維は、所定のチキソトロピー性指数(TI値)を有している。例えば、スルホン化微細セルロース繊維のTI値が、2.0以上10.0以下であり、好ましくは2.5以上8.0.0以下である。
このTI値は、スルホン化微細セルロース繊維の固形分濃度が0.2質量%の状態における、B型粘度計を用いて測定したB型粘度(20℃、3分)の回転数6rpmと回転数60rpmでの測定を行い、各々の粘度値に基づいて以下の式により算出される。

TI値=(回転数6rpmの粘度)/(回転数60rpmの粘度)
本実施形態のCNF含有組成物中におけるスルホン化微細セルロース繊維の含有率量は、上記アクリル酸系高分子と作用できる量であれば、とくに限定されない。
例えば、スルホン化微細セルロース繊維の含有量は、アクリル酸系高分子100質量部に対して、50質量部以上である。好ましくは100質量部であり、より好ましくは200質量部以上であり、さらに好ましくは400質量部以上である。
一方、スルホン化微細セルロース繊維の含有量が1000よりも多くなると液状の粘性でなくゴムのような粘弾性を示すようなるため、例えば、皮膚外用剤に使用する場合には肌等への延びが低下して取り扱い性が低下する傾向にある。
したがって、本実施形態のCNF含有組成物における、スルホン化微細セルロース繊維の含有率量は、アクリル酸系高分子100質量部に対して、50質量部以上1000質量部以下が好ましく、より好ましくは100質量部以上1000質量部以下であり、さらに好ましくは200質量部以上1000質量部以下である。
(スルホン化微細セルロース繊維の製造方法)
本実施形態のCNF含有組成物に含まれるスルホン化微細セルロース繊維は、以下に示す製法により製造することができるが、かかる製法に限定されない。
セルロースを含む繊維原料(例えば木材パルプなど)を化学処理工程に供してスルホン化パルプを調製した後、かかるスルホン化パルプを微細処理工程に供することにより製造することができる。
まず化学処理工程について説明する。
化学処理工程は、供給された繊維原料を反応液に接触(接触工程)させた後、加熱反応(反応工程)に供してセルロースの水酸基をスルホン化させるという方法である。
なお、本明細書において、繊維原料とは、セルロース分子を含む繊維状のパルプなどをいう。パルプとは、複数のセルロース繊維が集合した繊維状の部材である。このセルロース繊維は、複数の微細繊維(例えば、ミクロフィブリル等)が集合したものである。そして、この微細繊維とは、D-グルコースがβ(1→4)グリコシド結合した鎖状の高分子であるセルロース分子(以下、単にセルロースということもある)が複数集合したものである。
化学処理工程に供する繊維原料は、そのままの状態で供給してもよいし、事前に洗浄してもよい。この洗浄方法は、とくに限定されない。例えば、200メッシュもしくは235メッシュのふるい上で水を使ってろ過脱水することで、微細繊維やゴミをふるい落とすことができ、製造時の取扱性が向上するため望ましい。言い換えれば、200メッシュや235メッシュの残渣となり得るサイズのセルロース繊維が集合した繊維がパルプである。繊維原料については詳細を後述する。
化学処理工程は、上述したようにパルプ等のセルロースを含む繊維原料のセルロース繊維に対してスルホ基を有するスルホン化剤であるスルファミン酸と尿素を接触させる接触工程と、この接触工程後のパルプに含まれるセルロース繊維の水酸基の少なくとも一部にスルホ基を置換導入する反応工程とを含んでいる。以下、各工程を順に説明する。
(接触工程)
接触工程は、セルロースを含む繊維原料に対してスルファミン酸と尿素を接触させる工程である。この接触工程は、上記接触を起こさせることができる方法であれば、とくに限定されない。
例えば、スルファミン酸と尿素を溶媒に溶解させた反応液に繊維原料(例えば、木材パルプ)を浸漬等して反応液を繊維原料に含浸させてもよいし、繊維原料に対してかかる反応液を塗布してもよいし、繊維原料に対してスルファミン酸と尿素をそれぞれ別々に塗布したり、含浸させたり、スプレー噴霧してもよい。例えば、反応液に繊維原料を浸漬させて繊維原料に反応液を含浸させる方法を採用すれば、均質にスルファミン酸と尿素を繊維原料に対して接触させ易いという利点が得られる。
なお、スルファミン酸と尿素を溶解させる溶媒は、特に限定されない。
例えば、水(イオン交換水や蒸留水等の純水はもちろんのこと水道水等を含む)のみの場合のほか、エタノールやメタノール、酢酸、ギ酸、2‐プロパノール、ニトロメタン、アンモニア水のようなプロトン性極性溶媒や、アセトンや、酢酸エチル、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルスルフィド(DMS)、ジメチルアセトアミド(DMA)等の非プロトン性極性溶媒や、ジエチルエーテルや、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、クロロホルム、1,4-ジオキサン等の非極性溶媒などを挙げることができ、これらを単体で使用してもよいし、2種以上を混合したものを使用してもよい。特に、スルファミン酸と尿素を溶かしやすい観点から、水が好ましい。
なお、この接触工程により繊維原料にスルファミン酸と尿素を接触させた状態のものを「反応液含浸繊維」という。
(反応液の混合比)
反応液に繊維原料を浸漬させて繊維原料に対して反応液を含浸させる方法を採用する場合、反応液に含まれるスルファミン酸と尿素の混合比は、とくに限定されない。例えば、後述する実施例に記載の混合比にすることができる。
(反応液の接触量)
繊維原料に接触させる反応液の量は、繊維原料に対して反応液中のスルファミン酸と尿素が所定の割合となるように接触させる。
具体的には、後述する反応工程に供する際の反応液含浸繊維中の繊維原料に対する反応液中のスルファミン酸の量と尿素の量が適切な量となるように接触させる。
例えば、スルホン化剤と尿素または/およびその誘導体は、濃度比(g/L)において、4:1(1:0.25)、2:1(1:0.5)、1:1、2:3(1:1.5)、1:2.5となるように調整することができる。
繊維原料に接触させる反応液の量は、繊維原料に対して反応液中のスルファミン酸と尿素が所定の割合となるように接触させる。
例えば、反応液と繊維原料を接触させた状態において、反応液に含まれるスルホン化剤が、繊維原料の固形分質量100質量部に対して、1質量部~20,000質量部であり、反応液に含まれる尿素または/およびその誘導体が、繊維原料の乾燥質量100質量部に対して、1質量部~100,000質量部となるように調製することができる。
上記繊維原料の固形分質量100質量部に対するスルファミン酸の接触量および尿素の接触量は、後述する反応工程に供する際の反応液含浸繊維の状態に応じて適宜算出することができる。この具体的な算出方法は、例えば、後述する実施例に記載の算出方法を採用することができる。
(反応液含浸繊維の状態)
次工程の反応工程に供する際の反応液含浸繊維の状態としては、例えば、反応液含浸繊維をそのままの状態つまり繊維原料と反応液を接触させた状態のままで積極的な水分除去を行わない状態のものや、繊維原料と反応液を接触させた状態のものから水分を積極的に除去した状態のもの、などを挙げることができる。
前者(積極的な水分除去を行わない状態)の反応液含浸繊維とは、繊維原料と反応液を接触させた状態(例えば、スラリー状の状態などを含む)のものや、反応液と繊維原料を接触させた状態のものから繊維原料を取り出して静置して調製したものなどを含むことを意味する。
一方、後者(積極的な水分除去を行った状態)の反応液含浸繊維とは、繊維原料と反応液を接触させた状態から水分を意識的に除去したものをいう。
例えば、反応液と繊維原料を接触させた状態から繊維原料を取り出して風乾等により自然乾燥させて調製したものや、反応液と繊維原料を接触させた状態のものろ過脱水して調製したもの、このろ過脱水したものをさらに風乾して調製したもの、このろ過脱水したものをさらに循環送風式の乾燥機を用いて乾燥し調製したもの、このろ過脱水したものをさらに加熱式の乾燥機を用いて乾燥して調製したもの、反応液と繊維原料を接触させた状態のものを循環送風式の乾燥機や加熱式の乾燥機を用いて乾燥して調製したもの、などを含むことを意味する。
つまり、反応工程に供する際の反応液含浸繊維は、上述した積極的な水分除去を行わない状態のものや、積極的な水分除去を行ってある程度の水分を除去した状態のままであってよい。また、乾燥により水分を除去する場合には、乾燥後の水分率が1%程度であってもとくに問題がない。
とくに、後者の方法を採用すれば、反応工程へ供給する際の反応液含浸繊維中の水分を低くできるので、反応工程の加熱反応における反応時間を短くできる。
このため、スルホン化パルプの生産性を向上させることができるという利点が得られる。また、脱水処理を行う方法を採用すれば、反応液を多量に処理する際より効率よく反応液含浸繊維を調製することができるという利点が得られる。
なお、積極的に乾燥する方法を採用する場合、反応液含浸繊維の水分率が1%程度まで乾燥してもよく、1%よりもかなり低い絶乾状態にまで乾燥する方法で水分を除去してもよい。
本明細書では、反応液含浸繊維の水分率が1%以上の非絶乾状態のものを湿潤状態ともいう。例えば、反応液を含浸等させたままの状態のものやある程度脱水処理した状態のものはもちろん、ある程度乾燥処理した状態のものも本願明細書では湿潤状態ということがある。
一方、本明細書にいう絶乾とは、例えば、塩化カルシウムや五酸化二リンなどの乾燥剤を入れたデシケータ等で減圧したり、長時間加熱乾燥処理を行って水分率を1%よりも低くした状態のものを意味する。
したがって、接触工程において、上記後者の方法(積極的な水分除去を行った状態での反応方法)を採用する場合には、反応液含浸繊維の水分率を非絶乾状態にする方法を採用してもよいし、絶乾状態にする方法を採用してもよいが、好ましくは非絶乾状態の方法を採用するのがよい。
なお、本明細書中の反応液含浸繊維の水分率は、下記式を用いて算出される。

反応液含浸繊維の水分率(%)=100-(反応液含浸繊維における固形分質量(g)/水分率測定時における反応液含浸繊維(g))×100={(水分率測定時における反応液含浸繊維(g)-反応液含浸繊維における固形分質量(g))/水分率測定時における反応液含浸繊維(g)}×100

上記式中の反応液含浸繊維における固形分質量(g)とは、反応液含浸繊維の乾燥重量をいう。
具体的には、乾燥機等を用いて試料を105℃で乾燥させて恒量となるように調整された乾燥重量をいう。詳細は実施例の記載に示す。例えば、反応液含浸繊維を乾燥機に入れ、所定の乾燥条件(例えば、温度105℃、2時間)で乾燥して測定することにより、反応液含浸繊維から水分が除去された後の乾燥したもの(つまり上記乾燥条件で除去されないもの。例えば、繊維原料や反応液中の試薬などを含むもの)の重量を算出することができる。
また、恒量とは、処理施設内における雰囲気中の水分と原料中の水分が見かけ上出入りしなくなる状態のことを意味する。具体的には、一定時間(例えば2時間)乾燥させたのち、連続して測定した2回の重量の変化量が乾燥開始時の重量に対して1%以内となった状態を意味する(ただし、2回目の重量の測定は1回目に要した乾燥時間の半分以上とする)。
なお、反応液を接触させる際の繊維原料の状態はとくに限定されない。例えば、乾燥した状態であってもよいしウェットの状態(つまり湿潤状態)であってもよい。
(反応工程)
上記のごとく接触工程で調製された反応液含浸繊維は、次工程の反応工程へ供給される。
この反応工程は、接触工程から供給された反応液含浸繊維中の、繊維原料に含まれるセルロース繊維と、スルファミン酸と、尿素とを反応させて、セルロース繊維中のセルロース水酸基に対してスルファミン酸のスルホ基を置換させて、繊維原料に含まれるセルロース繊維にスルホ基を導入する工程である。つまり、この反応工程は、反応液含浸繊維に含まれるセルロース繊維中のセルロース水酸基にスルホ基を置換するスルホン化反応を行う工程である。
この反応工程は、反応液含浸繊維の繊維原料中のセルロース繊維の水酸基にスルホ基を置換するスルホン化反応が可能な方法であれば、とくに限定されない。
例えば、反応液含浸繊維を加熱することによりスルホン化反応を促進させる方法を採用することができる。以下、この加熱方法により、スルホン化反応を行う場合を代表として説明する。
(反応工程における反応温度)
反応工程における反応温度は、繊維の熱分解や加水分解反応を抑えながら、上記繊維原料を構成するセルロース繊維にスルホ基を導入できる温度であれば、とくに限定されない。
例えば、反応工程に供給した反応液含浸繊維の雰囲気温度が100℃以上200℃以下となるように調整する。好ましくは雰囲気温度が120℃以上200℃以下である。加熱時における雰囲気温度が200℃よりも高くなると、繊維の熱分解が起こったり、繊維の変色の進行が早くなったりする。一方、反応温度が100℃よりも低くなると、得られるスルホン化パルプの透明性が低下する傾向にある。
したがって、得られるスルホン化パルプの透明性の観点では、反応工程S2における反応温度(具体的には雰囲気温度)は、100℃以上200℃以下であり、好ましくは120℃以上180℃以下であり、さらに好ましくは120℃以上160℃以下である。
なお、反応工程に用いられる加熱器などは、接触工程後の反応液含浸繊維を直接的または間接的に上記要件を満たしながら加熱することができるものであれば、とくに限定されない。
例えば、公知の乾燥機や、減圧乾燥機、マイクロ波加熱装置、オートクレーブ、赤外線加熱装置、熱プレス機(例えば、アズワン(株)製、AH―2003C)を用いたホットプレス法等を採用することができる。とくに、操作性の観点では、反応工程でガスが発生する可能性があるので、循環送風式の乾燥機を使用するのが好ましい。
(反応工程おける反応時間)
反応工程として上記加熱方法を採用した場合の加熱時間(つまり反応時間)は、上述したようにセルロース繊維にスルホ基を適切に導入することができれば、とくに限定されない。
例えば、反応工程における反応時間は、反応温度を上記範囲となるように調整した場合、1分以上となるように調整する。好ましくは、5分以上であり、より好ましくは10分以上であり、さらに好ましくは15分以上である。
反応時間が1分よりも短い場合は、セルロース繊維の水酸基に対するスルホ基の置換反応がほとんど進行していないと推察される。一方、加熱時間をあまり長くしてもスルホ基の導入量の向上が期待できない傾向にある。
したがって、反応工程として上記加熱方法を採用した場合の反応時間は、とくに限定されないが、反応時間や操作性の観点から、5分以上300分以内が好ましく、より好ましくは5分以上120分以内とするのがよい。
(接触工程の予備乾燥工程)
なお、上記例では、接触工程における反応液含浸繊維の調製方法において、積極的な水分除去を行った状態の反応液含浸繊維を調製する方法について説明したが、この製法において、加熱しながら水分を除去する方法(予備乾燥工程)を採用する場合(例えば、反応液と繊維原料を接触させた状態のものを直接加熱乾燥したり、脱水処理したものを加熱乾燥するような場合など)には、加熱温度が所定の温度以下となるように調整するのが望ましい。
この予備乾燥工程における乾燥温度は、反応液含浸繊維に含まれる水分や周囲の水分を除去でき、かつ上記反応が進行しない程度の温度となるように調整されていれば、とくに限定されない。
例えば、予備乾燥工程における乾燥温度として、反応液含浸繊維の雰囲気温度が100℃以下となるように調整することができる。一方、作業性の観点では、50℃以上となるように調整するのが好ましい。したがって、接触工程S1における予備乾燥工程の乾燥温度は、50℃以上100℃以下となるように調整するのが好ましく、より好ましくは70℃以上100℃以下である。
(繊維原料)
スルホン化パルプ製法に用いられる繊維原料は、上述したようにセルロースを含むものであれば、とくに限定されない。例えば、一般的にパルプといわれるものを用いてもよいし、ホヤや海藻などから単離されるセルロースなどを含むものを繊維原料として採用することができるが、セルロース分子で構成されたものであれば、どのようなものであってもよい。
上記パルプとしては、例えば、木材系のパルプ(以下単に木材パルプという)や、溶解パルプ、コットンリンタなどの綿系のパルプ、麦わらや、バガス、楮、三椏、麻、ケナフのほか、果物等などの非木材系のパルプ、新聞古紙、雑誌古紙やダンボール古紙などから製造された古紙系のパルプなどを挙げることができるが、これらに限定されない。なお、入手のし易さの観点から、木材パルプが繊維原料として採用しやすい。
この木材パルプには、様々な種類が存在するが、使用に際してとくに限定されない。例えば、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)などの製紙用パルプなどを挙げることができる。
なお、繊維原料として、上記パルプを使用する場合に上述した種類のパルプ1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
(接触工程における水分調整工程)
とくに、接触工程において、反応液と接触させる繊維原料を水分率が所定の範囲内に入るように水分調整工程を含んでもよい。
この水分調整工程は、繊維原料が所定の水分率となるように乾燥したり、加湿したりして所望の水分量となるように調整する工程である。この水分調整工程を含むことにより、反応液等と接触させる際の繊維原料中の水分量をある程度均質にすることができるので、連続操業における製品安定性を向上させる可能性がある。
また、繊維原料をある程度乾燥して水分量を少なくすれば(例えば、水分率が1%以上10%以下)、保管性を向上させることができるという利点がある。
(反応工程の後の洗浄工程)
また、化学処理工程における反応工程の後に、スルホ基を導入した後のスルホン化パルプを洗浄する洗浄工程を含んでもよい。
スルホ基を導入した後のスルホン化パルプは、スルホン化剤の影響により表面が酸性になっている。また、未反応の反応液も存在した状態となっている。このため、反応を確実に終了させ、余分な反応液を除去して中性状態にする洗浄工程を設ければ、取り扱い性を向上させることができるようなる。
この洗浄工程は、スルホ基を導入した後のスルホン化パルプがほぼ中性にできれば、とくに限定されない。例えば、スルホ基を導入した後のスルホン化パルプが中性になるまで純水等で洗浄するという方法を採用することができる。
また、アルカリ等を用いた中和洗浄を行ってもよい。かかる中和洗浄を行う場合、アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物としては、無機アルカリ化合物、有機アルカリ化合物などを挙げることができる。そして、無機アルカリ化合物としては、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩等を挙げることができる。有機アルカリ化合物としては、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミン、脂肪族アンモニウム、芳香族アンモニウム、複素環式化合物、複素環式化合物の水酸化物などを挙げることができる。
なお、洗浄工程におけるスルホン化パルプの分取は、スルホン化パルプと洗浄水との濾別ができれば、特に限定されない。
例えば、反応後のスルホ基を導入した後のスルホン化パルプの洗浄は、目開き243μm(70メッシュ)から20μm(635メッシュ)のステンレスふるいを用いて洗浄するという方法を採用することができる。この目開きは、好ましくは目開き132μm(120メッシュ)以上45μm(300メッシュ)以下であり、より好ましくは目開き75μm(200メッシュ)以上45μm(300メッシュ)である。
とくに、製造物の品質向上の観点、つまり透明性の高いシートを製造する上では、シートに含まれる短繊維率の含有率を向上させることが好ましく、メッシュサイズの数字が大きいもの(つまり目開きがより小さいもの)を選択することが望ましい。
一方、シートを製造する際の操業上の観点(洗浄効率の向上)においては、メッシュサイズの数字が小さいものを選択することが望ましい。
このため、使用するふるいの目開きのサイズを適宜調整することにより、製造するシートの品質と操業性を制御することができる。
上記のごとき方法により調製されたスルホン化パルプスルホン化パルプを次工程の微細化処理工程に供すれば、本実施形態のCNF含有組成物に含まれるスルホン化微細セルロース繊維を製造することができる。
(微細化処理工程)
微細化処理工程は、上記方法で調製されたスルホン化パルプを微細化して所定の大きさの(例えば、ナノレベル)微細繊維にする工程である。
この微細化処理工程に用いられる処理装置は、上記機能を有するものであれば、とくに限定されない。
例えば、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー(石臼型粉砕機)、ボールミル、カッターミル、ジェットミル、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用のミキサーなどを使用することができるが、処理装置は、これらの装置に限定されるものはない。
これらのうち、材料に均等に力を加えることができ、均質化に優れているという点で、高圧ホモジナイザーを用いるのが望ましいが、かかる装置に限定されない。
微細化処理工程において、高圧ホモジナイザーを用いる場合、上述した製法で得られたスルホン化パルプを水と水溶性溶剤の混合溶液に分散させた状態で供給する。なお、この混合溶液にスルホン化パルプを分散させた状態のものをスラリーという。
このスラリーのスルホン化パルプの固形分濃度は、とくに限定されない。例えば、このスラリーのスルホン化パルプの固形分濃度が、0.1質量%~20質量%となるように調整した溶液を高圧ホモジナイザー等の処理装置に供給すればよい。
例えば、スルホン化パルプの固形分濃度が0.5質量%となるように調整したスラリーを高圧ホモジナイザー等の処理装置に供給した場合、同じ固形分濃度のスルホン化微細セルロース繊維が混合溶液に分散した状態の分散体を得ることができる。つまり、この場合、スルホン化微細セルロース繊維の固形分濃度が0.5質量%となるように調整された本実施形態の微細セルロース繊維含有組成物を得ることができる。
(アクリル酸系高分子の調製濃度)
本実施形態のアクリル酸系高分子の水溶液濃度は、とくに限定されない。
例えば、アクリル酸系高分子の固形分濃度は、水100質量部に対して、0.001質量部以上である。好ましくは0.01質量部であり、より好ましくは0.1質量部以上であり、さらに好ましくは0.5質量部以上であり、ゲル化時に未溶解物が残っていなければよい。
(アクリル酸系高分子の調整pH)
本実施形態のアクリル酸系高分子の水溶液におけるpHは、とくに限定されない。
例えば、アクリル酸系高分子のpHは4以上12以下が望ましく、好ましくは4以上9以下、より好ましくは6以上8.5以下、さらに好ましくは7.5以上8.5以下である。
アクリル酸系高分子の水溶液のゲル化に用いるpH調整用アルカリ性水溶液は、一般的なアルカリ性水溶液であればとくに限定されない。例えば、一般的な酸塩基中和に用いられる水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのような水溶液を用いてもよいし、エタノールアミンのようなアミノ基を有する溶液、化粧品に使用されるアルカリ性溶媒などを適宜用途に合わせて採用することができる。
つぎに、実施例によりさらに詳細に本発明を説明する。ただし、本発明は、以下の実施例によってなんら制限を受けるものではない。
(実験1)
実験1では、カルボマーとの作用に使用するアニオン性微細セルロース繊維の特性を確認した。
<試料A スルホン化微細セルロース繊維の分散液の調製>
アニオン性微細セルロース繊維の官能基として、スルホ基を導入したスルホン化微細セルロース繊維を以下のとおり調製した。
繊維原料として、未叩解の針葉樹クラフトパルプ(NBKP)を使用した。
以下では、実験に供したNBKPを単にパルプとして説明する。
パルプは、大量のイオン交換水(ORGANO社製電気伝導率計(型番RG-12)で測定される電気伝導度の値の範囲が0.1~0.2μS/cm。以降、純水という)で洗浄後、目開き75μm(200メッシュ)のステンレスふるいで水を切り、サンプルを一部採り分け後述する方法により固形分濃度を測定した(固形分濃度25.0質量%)。
(化学処理工程)
供給されたパルプを以下のように調製した反応液に加え、薬液を含浸した。
(反応液の調製)
スルホン化剤と尿素および/またはその誘導体が以下の濃度となるように調製した。
実験では、スルホン化剤として、スルファミン酸(純度98.5%、扶桑化学工業製)を使用し、尿素またはその誘導体として、尿素(純度99%、和光純薬工業製、型番;特級試薬)を使用した。
反応液の調製方法の一例を以下に示す。
両者の混合比は、濃度比(g/L)において、2:1なるように混合して水溶液を調製した。
具体的には、300mLビーカーにスルファミン酸13.6g、尿素7.2g、純水70mlを加え、室温で2-3時間撹拌し完全に溶解した(スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))が200/106)。
(反応液とパルプの接触方法)
調製した反応液に対してパルプを加えた。
このとき、反応液中の薬品とパルプ(固形分質量)の比率が、パルプ:薬品=1:2となるように調整した。
実験では、調製した反応液に固形分濃度25.0質量%パルプを40g(固形分質量10g)加え、薬品を含浸させた。それゆえ、接触後の組成が、パルプ:スルファミン酸:尿素:純水=10g:13.6g:7.2g:100mLとなるよう設計した。
反応液にパルプを添加して10分後、20cm角のアクリル板上に均一に広げた。その後、乾燥機(ヤマト科学社製、型番;DKN302)に入れた。乾燥機の恒温槽の温度は、80℃に設定した。このパルプは、水分率が平衡状態になるまで乾燥した。そして、この加熱反応の前に乾燥処理を行った状態のパルプを次工程の加熱反応の工程に供給した。
加熱反応の工程へ供給する際の反応液を接触させたパルプの水分率は、下記式を用いて算出した。
また、「水分率が平衡状態」は、以下のようにして評価した。
まず、恒温槽の温度を105℃に設定した上記乾燥機で4時間乾燥した。その後、連続して測定した2回の質量の変化量が乾燥開始時の質量に対して10%以内となった状態を平衡状態にあるとした(ただし、2回目の質量の測定は1回目に要した乾燥時間の半分以上とした)。

水分率(%)=100-(パルプの固形分質量(g)/反応液に接触させた後の水分率測定時におけるパルプ質量(g))×100

パルプの固形分質量(g)とは、測定対象のパルプ自体の固形分質量をいう。なお、乾燥パルプの質量は、上記乾燥機を用いて温度105℃、2時間乾燥したものを測定した。
本実験では、加熱反応へ供給する前に乾燥機を用いて乾燥させた乾燥後のパルプ質量が、反応液に接触させた後の水分率測定時におけるパルプ質量(g)に相当する。
上記の反応液を含浸させたパルプを乾燥させる工程が、本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維の製造方法の化学処理工程における乾燥工程に相当する。
(加熱反応)
ついで、この反応液を含浸させたパルプを乾燥させた乾燥パルプを、次工程の加熱反応の工程に供して加熱反応を行った。
加熱反応には、乾燥機(ヤマト科学社製、型番;DKN302)を用いた。
加熱反応の反応条件は以下の通りとした。
恒温槽の温度:120℃、加熱時間:30分
上記の加熱反応が、本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維の製造方法の化学処理工程における反応工程に相当する。
上記の加熱反応における反応条件の温度が、本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維の製造方法の化学処理工程における反応工程の反応温度に相当する。
上記の加熱反応における反応条件の加熱時間が、本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維の製造方法の化学処理工程における反応工程の反応時間に相当する。
加熱反応後、反応させたパルプを純水に懸濁させ、炭酸水素ナトリウムで泡が出なくなるまで中和した。中和したパルプは、300メッシュの金網上で中性になるまで大量の純水で洗浄して、スルファミン酸/尿素処理パルプを調製した。
上記の反応させたパルプを中性になるまで純水で洗浄する工程が、本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維の製造方法の化学処理工程における洗浄工程に相当する。
上記の調製されたスルファミン酸/尿素処理パルプを構成する反応パルプが、本実施形態にいうスルホン化パルプに相当する。
(スルファミン酸/尿素処理パルプの固形分濃度測定)
次工程の微細化処理工程にて、所定の固形分濃度の微細セルロース繊維を調製するために、スルファミン酸/尿素処理パルプの固形分濃度を測定した。
上記洗浄工程後のスルファミン酸/尿素処理パルプを分取して、質量を電子天秤で秤量した(この時の質量を下記式の固形分濃度測定時に分取した質量とする)。
このサンプルを105℃に設定した乾燥機で2時間以上乾燥させ恒量に達したときの質量を電子天秤で秤量し(この時の質量を下記式の乾燥後の質量とした)、下記式を用いて固形分濃度を算出した。
なお、本実施形態の微細セルロース繊維の固形分濃度とは、本測定にて算出した既知の固形分濃度を希釈したときの希釈倍率に応じて算出した値である。

スルファミン酸/尿素処理パルプの固形分濃度(%)=(乾燥後の質量(g))/(固形分濃度測定時に分取した質量(g))×100
(微細化処理工程)
ついで、化学処理工程により調製したスルファミン酸/尿素処理パルプを次工程の微細化処理工程に供し、微細セルロース繊維を調製した。
微細化処理工程では、スルファミン酸/尿素処理パルプのパルプスラリーを高圧ホモジナイザー(NanoVater、吉田機械興業製、L-ES008-D10)に供して、スルホン化CNFを含有する分散液(試料A)を調製した。
処理条件:解繊圧力60MPa、パス数5回
実験では、スルファミン酸/尿素処理パルプと純水を混合して、スルファミン酸/尿素処理パルプの固形分濃度が1.0質量%にした調整したパルプスラリーを調製した。つまり、パルプスラリーが、組成比において、スルファミン酸/尿素処理パルプ(固形分質量(g))の1.0質量部に対して、純水が99.0質量部となるように調整した。
なお、スルファミン酸/尿素処理パルプの固形分質量とは、上記乾燥機を用いて温度105℃、2時間乾燥した後、連続して2回の質量を測定し変化量が平衡状態になった状態のものを測定した質量のことをいう。
ついで、このパルプスラリーを高圧ホモジナイザー(上記条件下)に供して、スルホン化微細セルロース繊維分散液を調製した。つまり、スルホン化微細セルロース繊維分散液は、スルホン化微細セルロース繊維と純水の組成比が、スルホン化微細セルロース繊維(固形分質量(g))の1.0質量部に対して純水が99.0質量部である。言い換えれば、スルホン化微細セルロース繊維分散液は、スルホン化微細セルロース繊維の固形分濃度が1.0質量%の分散液となるように調製した。
なお、スルホン化微細セルロース繊維分散液中のスルホン化微細セルロース繊維の硫黄導入量は、1.7mmol/gであった。
調製したスルホン化微細セルロース繊維分散液の各物性は、固形分濃度が1.0質量%の分散液を、純水を用いて0.2質量%に希釈したサンプルを用いて、以下の測定方法で評価した。
(電気伝導度測定による硫黄導入量の測定)
スルホ基に起因する硫黄導入量は、調製された微細セルロース繊維をイオン交換樹脂で処理した後、水酸化ナトリウム水溶液による滴定によって測定した。
イオン交換樹脂による処理では、0.2質量%の微細セルロース繊維含有スラリー100mLに体積比で1/10の強酸性イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、アンバージェット1024;コンディショニング済)を加え、1時間振とう処理を行った。その後、目開き200μmのメッシュ上に注ぎ、樹脂とスラリーを分離した。
アルカリを用いた滴定では、イオン交換樹脂による処理後の微細セルロース繊維含有スラリーに、0.1Nの水酸化ナトリウム純水溶液を10μL~50μLずつ加えながら、電気伝導度の値の変化を計測し、縦軸に電気伝導度、横軸に水酸化ナトリウム滴定量としてプロットし曲線を得て、得られた曲線から変曲点を確認した。
この変曲点での水酸化ナトリウム滴定量がスルホ基量に相当する。このため、この変曲点の水酸化ナトリウム量を測定に供した微細セルロース繊維含固形分量で除することで、微細セルロース繊維中のスルホ基導入量を測定した。
(CNF分散液のB型粘度測定)
測定用分散液100gを220mL容量のスチロール棒瓶に入れ、B型粘度計を用いて粘度を測定した。
粘度測定の測定条件等を以下に示す。
B型粘度計(英弘精機社製、型番DV2T)
測定条件:回転数6rpmまたは60rpm、測定温度20℃、測定時間3分、スピンドルはRV-05、データの記録方法はシングルポイント
シングルポイントとは、本実験に用いたB型粘度計における測定終了時の値のみを取得する記録方法の設定項目である。つまり、測定開始時から3分経過時の瞬間値を記録している。
実験では、併せてチキソトロピー性指数(TI値)を測定した。
TI値の算出は、上述のB型粘度計を用いて、回転数6rpmと60rpmで測定を行い、回転数6rpmで得られた粘度値を60rpmで得られた粘度値で除した値とした。
(SPMを用いた繊維形態の観察および繊維幅の測定)
(スルホン化微細セルロース繊維の繊維サイズ測定)
スルホン化微細セルロース繊維を純水で観察に適した固形分濃度0.0005~0.001質量%に調製した。その後、PEI(ポリエチレンイミン)をコーティングしたシリカ基盤上にスピンコートを行った。
このシリカ基盤上のナノセルロース繊維の観察を、走査型プローブ顕微鏡(島津製作所製、型番;SPM―9700)を用いて行った。
繊維幅および繊維長の測定は、観察画像中の繊維をランダムに20本選び測定した。
<試料B スルホン化微細セルロース繊維の分散液の調製>
試料Aにおいて、微細化処理工程における条件を解繊圧力60MPaから10MPaに変更した以外は、同様の方法で試料Bを調製した。
<試料C リン酸化微細セルロース繊維の分散液の調製>
リン酸化微細セルロース繊維を含有したリン酸化微細セルロース繊維分散液は、以下のように調製した。
化学処理工程において、微細セルロース繊維をリン酸化した以外は、スルホン化微細セルロース繊維分散液と同様にして実施した。
リン酸化剤として、リン酸二純水素アンモニウム(和光特級、和光純薬株式会社製)を使用した。尿素として、尿素(純度99%、和光純薬工業製、型番;特級試薬)を使用した。
反応液の調製方法の一例を以下に示す。
両者の混合比は、濃度比(g/L)において、2:5.5なるように混合して水溶液を調製した。
具体的には、300mLビーカーにリン酸二水素アンモニウム16.1g、尿素44.4g、純水70mlを加え、室温で2-3時間撹拌し完全に溶解した(リン酸二水素アンモニウム/尿素比((g/L)/(g/L))が200/552)。
(反応液とパルプの接触方法)
調製した反応液に対してパルプを加えた。
このとき、反応液中の薬品とパルプ(固形分質量)の比率が、パルプ:薬品=1:となるように調整した。
実験では、調製した反応液に固形分濃度25.0質量%パルプを40g(固形分質量10g)加え、薬品を含浸させた。それゆえ、接触後の組成が、パルプ:リン酸二水素アンモニウム:尿素:純水=10g:16.1g:44.4g:100mLとなるよう設計した。
反応液にパルプを添加して10分後、20cm角のアクリル板上に均一に広げた。その後、乾燥機(ヤマト科学社製、型番;DKN302)に入れた。乾燥機の恒温槽の温度は、80℃に設定した。このパルプは、水分率が平衡状態になるまで乾燥した。そして、この加熱反応の前に乾燥処理を行った状態のパルプを次工程の加熱反応の工程に供給した。
加熱反応は、恒温槽の温度を140℃にし、加熱時間を30分にした。加熱反応後のパルプを洗浄し、リン酸化パルプを調製した。調製したリン酸化パルプは試料Aと同様にして微細化処理した。
<試料D TEMPO酸化微細セルロース繊維の分散液の調製>
TEMPO酸化微細セルロース繊維を含有したTEMPO酸化微細セルロース繊維分散液は、以下のように調製した。
化学処理工程において、微細セルロース繊維をTEMPO酸化した以外は、試料Aと同様にして実施した。
試料Aに供したものと同じ繊維原料に、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-オキシラジカル(以下TEMPOと記載する)と臭化物を触媒として、次亜塩素酸塩存在下でNBKPにカルボキシ基を導入した。
具体的には、TEMPO(Sigma Aldrich社)78mgと臭化ナトリウム754mgを水に溶解した水溶液を作製後、NBKPを絶乾重量として5gを加え均一になるまで撹拌し、触媒成分の入ったパルプスラリーを得た。得られたパルプスラリーに2M次亜塩素酸ナトリウム水溶液を16.25mL添加した後、0.5N塩酸水溶液を添加しpH10.3に調整し、酸化反応を開始した。酸化反応中は、pHが経時的に低下していくが、3時間後にpHの低下が確認できなくなったため、この時点で反応終了とみなし、十分に水洗しTEMPO酸化パルプを得た。調整したTEMPO酸化パルプは試料Aと同様にして微細化処理した。
(実験結果)
図1には、調製した各アニオン性微細セルロース繊維分散液の物性値を示す。
固形分濃度0.2質量%のアニオン性微細セルロース繊維分散液は、6rpmにおける粘度が300mPa・sと導入した官能基に差はなく低い値を示した。アニオン性微細セルロース繊維は、固形分濃度が1.0質量%や0.5質量%のような分散液では数千mPa・s以上の高粘性を示すことがこれまで報告されている。その一方で、本発明に使用した低固形分濃度の分散液(または低固形分質量部)においては、増粘作用が期待されにくい。加えて、TI値も約2とチキソトロピー性が低かった。そのため、微細セルロース繊維が低配合量であると、増粘性を付与する効果の期待は薄いことが通例であった。
本発明では、低固形分濃度(または低固形分質量部)の微細セルロース繊維を後述するカルボマーに作用させることで、カルボマー水溶液の増粘性が増加する作用を見出した。
(実験2)
実験2では、調製したアニオン性微細セルロース繊維とカルボマーとを作用させたときの効果を確認した。
(実施例1)
スルホン化微細セルロース繊維とカルボマーとの作用を評価した。
(カルボマー水溶液の調製)
1Lビーカーに純水499.5gを入れスターラーで撹拌し、そこへカルボマー(自然化粧品研究所社製、商品名;カルボマー 化粧品原料 20g)0.5gをママコができないよう少量ずつ添加した。ここへ、pHが7.5~8.5の中性域になるまで5N水酸化ナトリウム水溶液を添加し、透明ゲル状の固形分濃度0.1質量%カルボマー水溶液を得た。
(カルボマー水溶液へのCNF作用)
220mL容量のスチロール棒瓶に調製したカルボマー水溶液100gを入れ、固形分濃度1.0質量%の試料A(スルホン化微細セルロース繊維分散液)を20g添加した。すなわち、カルボマーとスルホン化微細セルロース繊維の配合割合が、カルボマー:CNF=0.1質量部:0.2質量部となるように調整した。
10分以上棒瓶を振り続けた後、1日静置し以下の測定を行った。
(B型粘度測定)
粘度測定の測定条件等を以下に示す。
B型粘度計(英弘精機社製、型番DV2T)
測定条件:回転数6rpmまたは60rpm、測定温度20℃、測定時間3分、スピンドルはRV-05、データの記録方法はシングルポイント
シングルポイントとは、本実験に用いたB型粘度計における測定終了時の値のみを取得する記録方法の設定項目である。つまり、測定開始時から3分経過時の瞬間値を記録している。
実験では、併せてチキソトロピー性指数(TI値)を測定した。
TI値の算出は、上述のB型粘度計を用いて、回転数6rpmと60rpmで測定を行い、回転数6rpmで得られた粘度値を60rpmで得られた粘度値で除した値とした。
(実施例2)
CNFとして試料B(低解繊圧力で調製したスルホン化微細セルロース繊維)を用いた以外、実施例1と同様の方法で行った。
(比較例1)
CNFの代わりに純水を用いた以外、実施例1と同様の方法で行った。
(比較例2)
CNFとして試料C(リン酸化微細セルロース繊維)を用いた以外、実施例1と同様の方法で行った。
(比較例2)
CNFとして試料D(TEMPO酸化微細セルロース繊維)を用いた以外、実施例1と同様の方法で行った。
(実験結果)
図2には、カルボマーとスルホン化微細セルロース繊維または比較例との物性値を示す。
比較例1のカルボマー水溶液(CNF非配合)は、6rpmにおけるB型粘度が4633mPa・s、TI値が5.19であった。この比較例1の物性を基準とし、CNFを配合させたときの増粘効果を調べた。
実施例1の試料Aのスルホン化CNFとカルボマーを作用させた時、6rpmにおけるB型粘度が8467mPa・sに増加し、TI値は5.66であった。実施例2の試料Bでは、6rpmにおけるB型粘度が4267mPa・sと増粘効果は見られなかったが、TI値が6.11と向上した。このことから、スルホン化CNFはカルボマーに増粘作用を与えることができることが示された。
比較例2のリン酸化CNFでは粘度の減少(2683mPa・s)とTI値の低下(4.35)、TEMPO酸化CNFでは増粘作用は見られた(12300mPa・s)がTI値の低下(4.35)がそれぞれ観察された。これらのことから、アニオン性CNFの官能基のうちスルホ基を選択することにより、カルボマーへ増粘作用を期待できることが示された。
(実験3)
実験3では、実験2で調製したカルボマーとアニオン性微細セルロース繊維からなる分散液に有機塩としてL-アスコルビルリン酸ナトリウム(以下APNaと称する)を添加した時の粘度特性を確認した。
(実施例3)
実施例1で調製したサンプル100gにAPNa(ジュネスクレール社製、商品名;濃厚本舗社ブライトニングパウダー)を0.5g添加した。
10分以上棒瓶を振り続けた後、1日静置し以下の測定を行った。
(B型粘度測定)
粘度測定の測定条件等を以下に示す。
B型粘度計(英弘精機社製、型番DV2T)
測定条件:回転数6rpmまたは60rpm、測定温度20℃、測定時間3分、スピンドルはRV-05、データの記録方法はシングルポイント
シングルポイントとは、本実験に用いたB型粘度計における測定終了時の値のみを取得する記録方法の設定項目である。つまり、測定開始時から3分経過時の瞬間値を記録している。
実験では、併せてチキソトロピー性指数(TI値)を測定した。
TI値の算出は、上述のB型粘度計を用いて、回転数6rpmと60rpmで測定を行い、回転数6rpmで得られた粘度値を60rpmで得られた粘度値で除した値とした。
(実施例4)
実施例3においてAPNaの添加量を0.5gから1.0gに変更したこと以外は、実施例3と同様の方法で行った。
(実施例5)
実施例3においてAPNaの添加量を0.5gから5.0gに変更したこと以外は、実施例3と同様の方法で行った。
(実施例6)
実施例3においてサンプルを実施例1で調製したものから、実施例2で調製したものに変更したこと以外は、実施例3と同様の方法で行った。
(実施例7)
実施例6においてAPNaの添加量を0.5gから1.0gに変更したこと以外は、実施例6と同様の方法で行った。
(比較例4)
実施例3においてサンプルを実施例1で調製したものから、比較例1で調製したものに変更したこと以外は、実施例3と同様の方法で行った。
(比較例5)
実施例3においてサンプルを実施例1で調製したものから、比較例2で調製したものに変更したこと以外は、実施例3と同様の方法で行った。
(比較例6)
比較例5においてAPNaの添加量を0.5gから1.0gに変更したこと以外は、比較例5と同様の方法で行った。
(比較例7)
実施例3においてサンプルを実施例1で調製したものから、比較例4で調製したものに変更したこと以外は、実施例3と同様の方法で行った。
(比較例8)
比較例7においてAPNaの添加量を0.5gから1.0gに変更したこと以外は、比較例7と同様の方法で行った。
(比較例9)
220mL容量のスチロール棒瓶に固形分濃度1.0質量%の試料A 20gをはかり取り、純水を80g加え、10分以上棒瓶を振り続けた。その後、APNa0.5gを添加し、再度10分以上棒瓶を振り続けた後、1日静置し実施例3と同様の測定を行った。
(比較例10)
比較例9においてAPNaの添加量を0.5gから1.0gに変更したこと以外は、比較例9と同様の方法で行った。
(比較例11)
比較例9においてAPNaの添加量を0.5gから5.0gに変更したこと以外は、比較例9と同様の方法で行った。
(比較例12)
比較例9において試料Aを試料Cに変更したこと以外は、比較例9と同様の方法で行った。
(比較例13)
比較例12においてAPNaの添加量を0.5gから1.0gに変更したこと以外は、比較例12と同様の方法で行った。
(比較例14)
比較例12においてAPNaの添加量を0.5gから5.0gに変更したこと以外は、比較例12と同様の方法で行った。
(実験結果)
図3には、APNaを作用させたときのカルボマーとスルホン化微細セルロース繊維または比較例との物性値を示す。
比較例4に示す通り、カルボマーにAPNaを添加すると粘性は失われた(<10mPa・s)。このことから、カルボマーには耐有機塩性を有さないことが示された。
実施例3~7に示したスルホン化CNFを作用させたカルボマー水溶液にAPNaを添加したところ、粘度は失われることがなかった。TI値も約5~10を維持することが示された。
比較例5~8に示したリン酸化CNFまたはTEMPO酸化CNFを作用させたカルボマー水溶液にAPNaを添加したところ、粘度は維持されるがTI値が5よりも低い値を示した。本発明は化粧品のような肌に塗る製品を想定している。そのため、TI値が高いと液の延び性が高く塗ったあとは液だれを抑制できることから、TI値は高いほうが望ましい。
一方で、カルボマーが配合されていないCNF分散液にAPNaを添加したところ、低TI値であった(比較例9~13)。比較例14では、凝集による粘度増加が観測されたことから、カルボマー非配合のCNF分散液のみではTI値の効果が発現しなかった。
これらのことから、アニオン性CNFの官能基のうちスルホ基を選択することにより、カルボマーへ増粘作用だけでなく、APNaを添加した時の耐有機塩性や高TI値を有することが示された。
本発明のCNF含有組成物は、有機塩が存在する状況下において、適切な粘性を発揮させることがものとして適している。

Claims (11)

  1. 有機塩を含有する被対象物に加えて使用される組成物であり、
    水酸基の一部がスルホ基で置換されたスルホン化微細セルロース繊維を含有しており、
    該スルホン化微細セルロース繊維は、
    スルホ基の導入量が、0.4mmol/g~3.0mmol/gである
    ことを特徴とするCNF含有組成物。
  2. アクリル酸系高分子が前記被対象物および/または前記組成物に含有されている
    ことを特徴とする請求項1記載のCNF含有組成物。
  3. 前記スルホン化微細セルロース繊維は、
    固形分濃度0.2質量%の状態における、ヘイズ値が20%以下のものである
    ことを特徴とする請求項1または2記載のCNF含有組成物。
  4. 前記スルホン化微細セルロース繊維は、
    固形分濃度0.2質量%の状態における、B型粘度計を用いて測定したB型粘度(20℃、回転数6rpm、3分)が100mPa・s以上、2000mPa・s以下のものである
  5. 前記組成物が、前記アクリル酸系高分子を含有しており、
    該アクリル酸系高分子が、直鎖状である
    ことを特徴とする請求項2、3または4記載のCNF含有組成物。
  6. 前記被対象物が、アクリル酸系高分子を含有したものであり、
    該アクリル酸系高分子が、有機塩および/または無機塩の影響により粘性が低下した状態のものを有している
    ことを特徴とする請求項2、3、4または5記載のCNF含有組成物。
  7. 前記被対象物が、皮膚外用剤である
    ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のCNF含有組成物。
  8. 前記被対象物が、化粧料である
    ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のCNF含有組成物。
  9. 前記アクリル酸系高分子が、カルボマーである
    ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のCNF含有組成物。
  10. 前記有機塩が、アスコルビン酸誘導体またはアスコルビン酸誘導体塩である
    ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のCNF含有組成物。
  11. 前記スルホン化微細セルロース繊維は、
    平均繊維長が50~1000nmであり、平均繊維幅が2~30nmである
    ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のCNF含有組成物。

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