JP7191616B2 - ゲル状組成物 - Google Patents
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(セルロースI型結晶化度)
本実施形態に係る(A)化学修飾セルロース繊維は、セルロースI型結晶構造を有する。具体的には、たとえば、(A)化学修飾セルロース繊維のセルロースI型結晶化度は50%以上であることが好ましい。セルロースI型結晶化度が50%以上であることにより、ゲル状組成物の分散安定性、具体的には、たとえば、ゲル状組成物中の(A)化学修飾セルロース繊維自体の分散安定性、およびゲル状組成物の保湿性を向上させることができる。セルロースI型結晶化度は、60%以上であることがより好ましく、65%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。セルロースI型結晶化度の上限は特に限定されないが、硫酸エステル化の際に反応効率を向上させる観点から、セルロースI型結晶化度は、98%以下であることが好ましく、95%以下であることがより好ましく、90%以下であることがより好ましく、85%以下であることがさらに好ましい。
セルロースI型結晶化度(%)=〔(I22.6-I18.5)/I22.6〕×100 …(2)
式(2)において、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。なお、セルロースI型とは天然セルロースの結晶形のことであり、セルロースI型結晶化度とは、セルロース繊維全体のうち結晶領域量の占める割合のことを意味する。
本実施形態に係る(A)化学修飾セルロース繊維は、たとえば後述のようにスルファミン酸を用いて、セルロース繊維を硫酸エステル化したものある。具体的には、(A)化学修飾セルロース繊維は、セルロースの有する一部の水酸基が下記の一般式(1)で表される置換基によって置換されている。言い換えれば、(A)化学修飾セルロース繊維は、たとえばセルロースが有する水酸基の酸素原子に水素原子に代わって-SO3 -Mが結合した構造を有している。すわなち、(A)化学修飾セルロース繊維には、硫酸基が導入されている。ただし、一般式(1)において、Mは1~3価の陽イオンを表す。
(A)化学修飾セルロース繊維1gあたりが有する一般式(1)の置換基の量(以下、「導入量」とも称する。)は、0.01mmol~3.0mmolであることが好ましい。導入量が3.0mmol/g以下であることにより、セルロース結晶構造を維持することができるため、ゲル状組成物の分散安定性および保湿性を向上させることができる。導入量は、2.8mmol/g以下であることがより好ましく、2.5mmol/g以下であることがさらに好ましい。また、セルロース繊維の表面を全体的に置換基で覆うと、セルロース繊維の水中での分散性が向上し、これにより保湿性も向上させることができるため、導入量は、0.01mmol以上/gであることが好ましく、0.05mmol/g以上であることがより好ましく、0.1mmol/g以上であることがさらに好ましい。
本実施形態に係る(A)化学修飾セルロース繊維の平均重合度(すなわちグルコースユニットの繰り返し数の平均値)は、100以上である。平均重合度が100以上であることにより、ゲル状組成物の分散安定性および保湿性を向上させることができる。平均重合度は、好ましくは200以上であり、より好ましくは300以上であり、より好ましくは400以上である。なお、(A)化学修飾セルロース繊維の平均重合度が高いほど、(A)化学修飾セルロース繊維の平均繊維長が大きくなる傾向がある。
平均重合度=(1/Km)×[η] …(3)
ただし、式(3)において、Kmは係数であり、セルロース固有の値である(1/Km=156)。
本実施形態に係る(A)化学修飾セルロース繊維の平均繊維長は、ゲル状組成物の分散安定性および保湿性を向上させる観点から、0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。また。上限は特に限定されないが、500μm以下であることが好ましく、300μm以下でもよく、200μm以下でもよい。
(A)化学修飾セルロース繊維の平均繊維幅は、ゲル状組成物の分散安定性および保湿性を向上させる観点から、3nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがより好ましく、8nm以上であることがより好ましく、10nm以上であることがさらに好ましい。また、平均繊維幅は、ゲル状組成物の透明性を向上させる観点から、5μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましく、0.5μmであることがより好ましく、0.3μm以下であることがより好ましく、0.1μm以下であることがさらに好ましい。
本実施形態に係る(A)化学修飾セルロース繊維の製造方法は、特に限定されないが、たとえば、セルロース原料とスルファミン酸とを反応させて、セルロース繊維を硫酸エステル化する工程(化学修飾工程)を含む。
化学修飾工程で用いるセルロース原料の具体例としては、植物(たとえば木材、綿、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ、再生パルプ、古紙)、動物(たとえばホヤ類)、藻類、微生物(たとえば酢酸菌)、微生物産生物等を起源とするものが挙げられる。セルロース原料としては、植物由来のパルプが好ましい原材料として挙げられる。
嵩密度が高いセルロース原料を用いる場合は、化学修飾工程に先立って前処理を行うことにより、嵩密度を低下させてもよい。このような前処理を行うことにより、化学修飾工程において、より効率的に硫酸エステル化を行うことができる。
化学修飾工程においては、セルロース原料をスルファミン酸で処理することにより、当該セルロース原料に含まれるセルロース繊維を硫酸エステル化する。具体的には、たとえば、スルファミン酸を含む薬液にセルロース原料を浸漬してセルロース繊維とスルファミン酸とを反応させることにより、セルロース繊維を硫酸エステル化することができる。
強酸性かつ高腐食性のある無水硫酸や硫酸水溶液等と異なり、取り扱いに関して制限がなく、また、大気汚染防止法の特定物質にも指定されていないことからも分かるように、環境に対する負荷が小さい。すなわち、スルファミン酸を用いてセルロース繊維を硫酸エステル化することにより、各種の管理コストを含む製造コストを抑制することができる。
たとえば、化学修飾工程の後、ろ過等により、化学修飾セルロース繊維を溶媒から分離し、得られた膨潤状態の化学修飾セルロース繊維を水に分散させる。そして、セルロース繊維の分散液に塩基性化合物を添加することにより、当該分散液を中和する。これにより、化学修飾セルロース繊維の有する-OSO3 -と塩基性化合物に由来する陽イオンとがイオン結合を形成する。
たとえば、硫酸エステル化試薬残渣、残留触媒、溶媒などの除去の目的、あるいは反応停止の目的で、化学修飾セルロース繊維を洗浄する工程を設けてもよい。洗浄工程においては、化学修飾セルロース繊維を、水を用いて洗浄することが好ましい。
セルロース原料は、セルロース繊維の繊維長が比較的小さい場合、化学修飾工程等を経ることにより、機械的な解繊処理を行わなくてもある程度解繊する。一方、セルロース原料は、セルロース繊維の繊維長が比較的大きい場合には、化学修飾工程等を経るだけではほとんど解繊しない。このような場合、たとえば、中和工程および洗浄工程を経たセルロース原料を脱水して水の量を調整した後、機械的な解繊処理(微細化処理工程)を行うことにより、解繊した化学修飾セルロース繊維を得ることができる。なお、本実施の形態に係る(A)化学修飾セルロース繊維は、微細化処理工程を経たものであってもよいし、経ていないものであってもよい。
本実施の形態に係る(B)保湿剤としては、塗布面からの水分の蒸発を抑えることが可能な液体(すなわち保湿性のある液体)であれば特に限定されないが、たとえば、炭化水素、脂肪酸、アルコール、エステル、シリコーン油等を挙げることができる。
本実施の形態に係る(C)水としては、イオン交換水、蒸留水等を用いることができる。また、本実施の形態に係るゲル状組成物における(C)水の含有率は、50質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましい。
まず、実施例に用いる各(A)化学修飾セルロース繊維を下記の製造例1~3に従って調製する。
セパラブルフラスコにスルファミン酸52.8g、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)620gを投入し、30分間攪拌を行った。その後、室温下、セルロース原料として針葉樹クラフトパルプ(結晶化度85%)20.0gを投入した。ここで、硫酸エステル化試薬であるスルファミン酸の使用量は、セルロース分子中のアンヒドログルコース単位1モル当たり4.4モルとした。55℃で4時間反応させた後、室温まで冷却した。次に繊維を取り出し水で洗浄した後、中和剤として2N水酸化ナトリウム水溶液に投入してpHを7.6にし、脱水を行った後、固形分濃度が1.0%になるように水で希釈した。その後、微細化処理工程としてマイクロフルイタイザーによる処理(150MPa、1パス)を行うことで、化学修飾セルロース繊維A1(表中では「A1」と表記する)の水分散体を得た。
スルファミン酸の仕込量を26.4gとしたこと以外は、製造例1と同様の手順により、化学修飾セルロース繊維A2(表中では「A2」と表記する)の水分散体を得た。
微細化処理工程を行わないこと以外は、製造例2と同様の手順により、固形分濃度が1.0%の水分散体を得た。この水分散体150gをセパラブルフラスコに移し、臭化ナトリウム0.25g、2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシラジカル(TEMPO)0.025gを加え攪拌した。pHが10-11となるよう0.5N水酸化ナトリウム水溶液を適量投入しながら、13%次亜塩素酸ナトリウム6.6gを滴下した。45分間酸化反応させ、pHに変化が見られなくなったことを確認した後、0.1N塩酸を加えてpH=7.0とした。脱水を行った後、固形分濃度が1.0%になるように水で希釈した。その後、微細化処理工程としてマイクロフルイタイザーによる処理(150MPa、1パス)を行うことで、化学修飾セルロース繊維A3(表中では「A3」と表記する)の水分散体を得た。
(1)(A)化学修飾セルロース繊維1gが有する硫酸基量、
(2)(A)化学修飾セルロース繊維1gが有するカルボキシ基量、
(3)平均重合度、
(4)平均繊維幅、および
(5)結晶化度を測定した。
測定結果を表1に示す。各測定の詳細については、以下に示す。
硫酸基量は電位差測定により算出した。詳細には、乾燥重量を精秤した硫酸エステル化セルロース繊維試料から固形分率0.5質量%に調製した硫酸エステル化セルロース繊維の水分散体を60ml調製し、0.1N塩酸水溶液によってpHを約1.5とした後、ろ過、水洗浄し、繊維を再び固形分率0.5質量%となるよう水に再分散させ、0.1N水酸化カリウム水溶液を滴下して電位差滴定を行った。0.1N水酸化カリウムの滴下量から硫酸基量を算出した。
カルボキシ基量は電位差測定により算出した。詳細は(1)硫酸基量の測定と同様の手法で行った。カルボキシ基量の算出は、TEMPO酸化を行った試料の0.1N水酸化カリウムの滴下量と、TEMPO酸化を行う前の試料(硫酸エステル化後)の0.1N水酸化カリウムの滴下量の差分で算出した。
(A)化学修飾セルロース繊維の平均重合度は粘度法により算出した。詳細には、JIS-P8215に準じて極限粘度数[η]を測定し、下記式(3)より平均重合度(DP)を求めた。ただし、式(3)において、Kmは係数であり、セルロース固有の値である(1/Km=156)。
DP=(1/Km)×[η] …(3)
(A)化学修飾セルロース繊維の平均繊維幅の測定は、電子顕微鏡(TEM)で行った。詳細には、親水化処理済みのカーボン膜被覆をグリット状にキャストした後、2%ウラニルアセテートでネガティブ染色したTEM像(倍率:1000~10000倍)で観察した繊維50本の繊維幅の各平均値を算出し、平均繊維幅とした。
(A)化学修飾セルロース繊維のX線回折強度をX線回折法にて測定し、その測定結果からSegal法を用いて下記式(2)により算出した。
セルロースI型結晶化度(%)=〔(I22.6-I18.5)/I22.6〕×100 …(2)
式(2)において、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。また、サンプルのX線回折強度の測定は、株式会社リガク製の「RINT2200」を用いて以下の条件にて実施した。
X線源:Cu/Kα-radiation
管電圧:40Kv
管電流:30mA
測定範囲:回折角2θ=5~35°
X線のスキャンスピード:10°/min
なお、上記のセルロース原料の結晶化度についても同様に測定した。
製造例1~3により得られた(A)化学修飾セルロース繊維の水分散体等を用いて、ゲル状組成物を調製した。具体的には、表2に示す配合割合となるように、(A)化学修飾セルロース繊維の水分散体またはセルロースナノクリスタル(CNC)の水分散体と、(B)保湿剤と、(C)水とを混合し、ホモミキサーを用いて3000rpmで5分間分散処理を行うことにより、表2の各実施例および各比較例に係るゲル状組成物を調製した。なお、CNCは、(A)化学修飾セルロース繊維の比較用材料である。
[粘度]
各実施例および各比較例に係るゲル状組成物を25℃環境下で24時間静置した後、BH型粘度計を用いて回転数6.0rpm、25℃、3分の条件で測定した。
各実施例および各比較例に係るゲル状組成物を、直径3cm×高さ30cmの試験管に、液面が25cmの高さになるように投入し、25℃環境下で3日間静置した。その後、分離層の体積%を測定することにより、ゲル状組成物の分散安定性を評価した。評価基準を下記に示す。
++:分離層が10体積%未満
+:分離層が10体積%以上20体積%未満
-:分離層が20体積%以上
各実施例および各比較例に係るゲル状組成物に、塩化ナトリウムを0.1質量%となるように添加し、ホモミキサーで4000rpm、5分間攪拌して試料を得た。得られた試料を直径3cm×高さ30cmの試験管に、液面が25cmの高さになるように投入し、25℃環境下で3日間静置した。その後、分離層の体積%を測定することにより、塩添加に対するゲル状組成物の安定性を評価した。評価基準を下記に示す。
++:分離層が10体積%未満
+:分離層が10体積%以上20体積%未満
-:分離層が20%以上
各実施例および各比較例に係るゲル状組成物に、界面活性剤(非イオン界面活性剤:ポリオキシエチレントリデシルエーテル)を0.1質量%になるように添加し、ホモミキサーで4000rpm、5分間攪拌して試料を得た。得られた試料を直径3cm×高さ30cmの試験管に、液面が25cmの高さになるように投入し、25℃で3日間静置した。その後、分離層の体積%を測定することにより、界面活性剤添加に対するゲル状組成物の安定性を評価した。評価基準を下記に示す。
++:分離層が10体積%未満
+:分離層が10体積%以上20体積%未満
-:分離層が20体積%以上
容量20mlのガラス瓶に純水を17.0g加えた後、上部に親水性メンブレンフィルター(孔径0.45μm)を乗せ、その上から上部に直径1.5cmの穴の開いたキャップで蓋をした。メンブレンフィルター上に調製したゲル状組成物を50μg塗布した。その後恒温恒湿室(20℃、65%RH)、で24時間静置した。この上部に水分蒸散量測定装置(TewameterTM300、Courage+Khazaka社製)を密着させ、水分蒸散量を20分間測定した。測定開始後5分から20分までの測定値の平均値を算出し、水分蒸散量(g/m2・h)とした。そして、水分蒸散量を用いて、下記の基準でゲル状組成物の保湿性を評価した。
++:水分蒸散量が15(g/m2・h)未満
+:水分蒸散量が15(g/m2・h)以上20(g/m2・h)未満
-:水分蒸散量が20(g/m2・h)以上
Claims (3)
- 前記(A)化学修飾セルロース繊維の平均繊維幅は3nm~5000nmである、請求項1に記載のゲル状組成物。
- 前記(B)保湿剤は、炭素数10以上の飽和炭化水素、炭素数10以上の不飽和炭化水素、炭素数6~50の飽和炭化水素を有する化合物、炭素数6~50の不飽和炭化水素を有する化合物、および、アリール基を有する炭素数6~50の化合物からなる群から選択される1種以上である、請求項1または2に記載のゲル状組成物。
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