JP6831935B1 - セルロース組成物及びセルロース組成物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来よりも簡便な方法で解繊処理を行う技術を提供する。【解決手段】セルロース組成物は、セルロース繊維の一部の水酸基が所定の式で表される置換基によって修飾されている硫酸化セルロース繊維と、水溶性セルロースと、を含有することを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、セルロース組成物及びセルロース組成物の製造方法に関する。
一般に、セルロース繊維は、食品、化粧品、機能紙、樹脂補強材等の原料として用いられている。また、セルロース繊維の表面を化学修飾した化学修飾セルロース繊維は水中での分散が容易となるため、原料としてのセルロース繊維が様々な分野で使われるようになっている。
セルロースを化学修飾したものの一つとして硫酸化セルロースがある。特許文献1では、無水硫酸を硫酸化試薬として用いてセルロースを硫酸エステル化することによって、粒子状の硫酸化セルロースを調製している。
特開2007−92034号公報
しかしながら、特許文献1に記載の硫酸化セルロースは、酸度の高い無水硫酸を製造時に用いるために、重合度が低下し、この結果として、粘度が低下するという課題があった。また、一般に、セルロースナノファイバーは繊維の配向性を有するため、一般的な撹拌羽により一定方向に長期撹拌を続けると、繊維が配向することによって粘度が低下してしまうという課題があった。
また、一般に、所望のサイズのセルロース繊維を製造するために、高圧条件下において解繊処理が行われているが、より簡便に所望のサイズのセルロース繊維を製造する方法の開発が望まれていた。
本発明は、上記の課題の少なくとも一つを解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することができる。
(1)本発明の一形態によれば、セルロース組成物が提供される。このセルロース組成物は、セルロース繊維の一部の水酸基が下記式(1)で表される置換基によって修飾されている硫酸化セルロース繊維と、水溶性セルロースと、を含有することを特徴とする。
Figure 0006831935
〔式中、Mは水素イオン、金属イオン、アミン、又はオニウムイオンを示す。〕
この形態のセルロース組成物によれば、水溶性セルロースを含まない場合と比較して、水溶性セルロースが解繊助剤として働くため、従来よりも簡便な方法で解繊処理を行うことができる。
(2)上記形態のセルロース組成物において、前記硫酸化セルロース繊維は、以下の(A)から(D)の条件を満たしてもよい。
(A)数平均繊維径が2nm以上500nm以下
(B)平均アスペクト比が50以上3000以下
(C)セルロースI型結晶構造を有する
(D)前記硫酸化セルロース繊維の含有量に対する前記置換基の含有量(置換基の含有量[mmol]/硫酸化セルロース繊維の含有量[g])が、0.01mmol/g以上3.0mmol/g以下
この形態のセルロース組成物によれば、長期撹拌における粘度低下を防ぐことが可能になる。
(3)上記形態のセルロース組成物において、前記水溶性セルロースは、20℃1気圧下において、水に対して、3g/L以上溶解してもよい。
この形態のセルロース組成物によれば、硫酸化セルロース繊維に対する解繊助剤効果に優れる。
(4)上記形態のセルロース組成物において、前記水溶性セルロースの一部がアニオン性官能基によって置換されていてもよい。
この形態のセルロース組成物によれば、硫酸化セルロース繊維に対する解繊助剤効果に優れる。
(5)上記形態のセルロース組成物において、前記硫酸化セルロース繊維の含有量に対する前記水溶性セルロースの含有量の割合(水溶性セルロースの含有量[g]/硫酸化セルロース繊維の含有量[g])が、0.001%以上500%以下であってもよい。
この形態のセルロース組成物によれば、解繊助剤としての効果や配向阻害効果を向上させることができる。
(6)上記形態のセルロース組成物において、前記硫酸化セルロース繊維の含有量に対する前記置換基の含有量(置換基の含有量[mmol]/硫酸化セルロース繊維の含有量[g])が、1.5mmol/g以上2.7mmol/g以下であってもよい。
この形態のセルロース組成物によれば、セルロース繊維構造の保持効果を高めることができる。
(7)上記形態のセルロース組成物において、前記硫酸化セルロース繊維の結晶化度が50%以上98%以下であってもよい。
この形態のセルロース組成物によれば、増粘性や沈降抑制効果を向上させることができる。
(8)本発明の一形態によれば、セルロース組成物の製造方法が提供される。このセルロース組成物の製造方法は、セルロース繊維の一部の水酸基が下記式(1)で表される置換基によって修飾されている硫酸化セルロース繊維と、水溶性セルロースと、を含有する溶液を混合する工程を備えることを特徴とする。
Figure 0006831935
〔式中、Mは水素イオン、金属イオン、アミン、又はオニウムイオンを示す。〕
この形態のセルロース組成物の製造方法によれば、水溶性セルロースを含まない場合と比較して、簡便に解繊を行うことができる。
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、セルロース組成物を含む増粘剤等の態様で実現することができる。
繊維径の測定方法を説明する図。
A.セルロース組成物
本発明の一実施形態であるセルロース組成物は、セルロース繊維の一部の水酸基が下記式(1)で表される置換基によって修飾されている硫酸化セルロース繊維と、水溶性セルロースと、を含有する。下記式(1)では、波線部分がセルロース分子を表す。つまり、硫酸化セルロース繊維は、セルロース中の水酸基の酸素原子に対して、水素原子の代わりに−SO Mが結合した構造を有し、セルロース繊維表面に硫酸基が導入されている。
Figure 0006831935
〔式中、Mは水素イオン、金属イオン、アミン、又はオニウムイオンを示す。〕
本実施形態のセルロース組成物によれば、水溶性セルロースを含まない場合と比較して、水溶性セルロースが解繊助剤として働くため、従来よりも簡便な方法で解繊処理を行うことができる。
また、本発明の他の実施形態であるセルロース組成物(以下、単に「セルロース組成物」とも呼ぶ)の硫酸化セルロース繊維は、以下の(A)から(D)の条件を満たす。
(A)数平均繊維径が2nm以上500nm以下
(B)平均アスペクト比が50以上3000以下
(C)セルロースI型結晶構造を有する
(D)前記硫酸化セルロース繊維の含有量に対する前記置換基の含有量(置換基の含有量[mmol]/硫酸化セルロース繊維の含有量[g])が、0.01mmol/g以上3.0mmol/g以下
セルロース組成物の形態は、特に限定されず、例えば、サスペンション、エマルション等の分散体、溶液、スラリー、粉体等であってよく、ローション、クリーム、ゲル、バーム等と呼ばれるものを含む。また、噴射剤等と共に充填されエアゾールとして塗布される形態であってもよい。
本実施形態のセルロース組成物によれば、長期撹拌における粘度低下を防ぐことが可能になる。このような効果を奏するメカニズムは定かではないが、水溶性セルロースによって、硫酸化セルロース繊維の配向が一部において阻害されるためと推定される。
[硫酸化セルロース繊維]
本明細書において、「硫酸化セルロース繊維」とは、セルロース繊維の一部の水酸基が下記式(1)で表される置換基によって修飾されているセルロース繊維を示す。下記式(1)では、波線部分がセルロース分子を表す。つまり、硫酸化セルロース繊維は、セルロース中の水酸基の酸素原子に対して、水素原子の代わりに−SO Mが結合した構造を有し、セルロース繊維表面に硫酸基が導入されている。
Figure 0006831935
ここで、上述のMは、水素イオン、金属イオン、アミン、又はオニウムイオンを示す。Mは、1価から3価の陽イオンが例示できる。ここで、Mが2価又は3価の陽イオンの場合、当該陽イオンは、2つ又は3つの−OSO との間でイオン結合を形成する。
金属イオンとしては、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、遷移金属イオン、その他の金属イオンが挙げられる。ここで、アルカリ金属としては、特に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、特に限定されないが、例えば、カルシウム、ストロンチウム等が挙げられる。遷移金属としては、特に限定されないが、例えば、鉄、ニッケル、パラジウム、銅、銀等が挙げられる。その他の金属としては、例えば、ベリリウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム等が挙げられる。
アミンとしては、例えば、1〜3級アミンが挙げられる。ここで、1〜3級アミンとしては、特に限定されないが、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン,ジエタノールアミン,トリエタノールアミン、プロピルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ペンチルアミン、tert−ペンチルアミン、ジブチルアミン、2−エチルへキシルアミン、ジへキシルアミン、トリへキシルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、プロぺニルアミン、イソブテニルアミン等が挙げられる。
オニウムイオンとしては、特に限定されないが、例えば、アンモニウムイオンやホスホニウムイオン等が挙げられる。アンモニウムイオンとしては、NH だけでなく、NH の1つ以上の水素原子が有機基に置き換わってできる各種アミン由来のアンモニウムイオンが挙げられる。アンモニウムイオンとしては、例えば、NH 、第四級アンモニウムカチオン、アルカノールアミンイオン、ピリジニウムイオン等が挙げられる。ホスホニウムイオンとしては、第4級ホスホニウムカチオン等が挙げられる。
Mで表される陽イオンとしては、保存安定性の観点から、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、第四級アンモニウムカチオンの少なくとも一つが好ましい。Mで表される陽イオンは、いずれか1種でもよいが、2種以上を組み合わせてもよい。
(置換基の含有量)
本実施形態の硫酸化セルロース繊維において、硫酸化セルロース繊維1gあたりにおける前記式(1)で表される置換基の含有量(置換基の含有量[mmol]/硫酸化セルロース繊維の含有量[g])は、0.01mmol/g以上3.0mmol/g以下である。セルロース結晶構造の保持効果を高めるという観点から、この含有量は、より好ましくは2.8mmol/g以下であり、さらに好ましくは2.7mmol/g以下であり、特に好ましくは2.5mmol/g以下である。また、セルロース繊維の表面を置換基で覆うという観点から、この含有量は、0.05mmol以上/gであることが好ましく、より好ましくは0.1mmol/g以上であり、さらに好ましくは1.0mmol/g以上であり、特に好ましくは1.2mmol/g以上である。
本明細書において、置換基の含有量は、電位差滴定により算出される値であり、例えば、洗浄により原料として用いた変性化剤や、それらの加水分解物等の副生成物を除去した後、電位差測定の分析を行って算出することができる。具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
(結晶化度)
本実施形態の硫酸化セルロース繊維は、セルロースI型結晶構造を有するものであり、硫酸化セルロース繊維の結晶化度が50%以上であることが好ましい。結晶化度が50%以上であることにより、セルロース結晶構造に由来する特性をより効果的に発現することができる結果として、増粘性や沈降抑制効果を向上させることができる。結晶化度は、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは65%以上であり、70%以上でもよい。結晶化度の上限は特に限定されないが、硫酸エステル化反応の反応効率を向上させる観点から、98%以下が好ましく、より好ましくは95%以下であり、更に好ましくは90%以下であり、特に好ましくは85%以下である。
本明細書において、セルロースの結晶化度は、X線回折法による回折強度値からSegal法により算出したセルロースI型結晶化度であり、下記式により定義される。
セルロースI型結晶化度(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100
〔式中、I22.6は、X線回折における格子面(200面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度を示し、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。〕
なお、セルロースI型とは天然セルロースの結晶型のことであり、セルロースI型結晶化度とは、セルロース全体のうち結晶領域量の占める割合のことを意味する。
(数平均繊維径)
硫酸化セルロース繊維の数平均繊維径は2nm以上500nm以下であるが、好ましくは2nm以上150nm以下であり、より好ましくは2nm以上100nm以下であり、特に好ましくは3nm以上80nm以下である。数平均繊維径が2nm未満であると、セルロースが溶解してナノファイバーとして得られず、高い増粘性や優れたスプレー性などの効果が得られない虞がある。一方、数平均繊維径が500nm超の場合、繊維が太すぎるため、高い増粘性や優れたスプレー性などの効果が得られない虞がある。硫酸化セルロース繊維の最大繊維径は、高い増粘性と優れたスプレー性を発揮する観点から、1000nm以下であることが好ましく、特に好ましくは500nm以下である。
図1は、繊維径の測定方法を説明する図である。繊維径は、1本の繊維Fの長手方向に直交する線と繊維の外周との2つの交点間の距離を測定することにより、求めることができる。つまり、繊維径は、図1で示す点P1と点P2との間の距離を示す。繊維長は、繊維の全体が観察画像中に写っている繊維の長さを測定することにより、求めることができる。繊維の長さを測定する際、繊維に折れ曲がりがある場合は、例えば、折れ曲がり点が1点であれば、一端から折れ曲がり点までの長さと、この折れ曲がり点から他端までの長さの合計値を繊維長とする。なお、繊維径及び繊維長は少なくとも25本以上の繊維を観察する。また、大きな繊維径の繊維を含む場合には、ガラス上へキャストした表面の走査型電子顕微鏡(SEM)像や光学顕微鏡像を観察してもよい。そして、構成する繊維の大きさに応じて5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行ってもよい。このようにして得られた繊維径及び繊維長のデータにより、数平均繊維長および数平均繊維径を算出する。
(平均アスペクト比)
上記硫酸化セルロース繊維の平均アスペクト比は50以上3000以下であるが、好ましくは2000以下、より好ましくは1000以下であり、好ましくは100以上、より好ましくは200以上である。平均アスペクト比が50未満であると増粘性が低くなるという問題が生じる。
上記硫酸化セルロース繊維の平均アスペクト比は、先に述べた方法に従って得られた数平均繊維径および数平均繊維長を用いて、下記の式により算出される。
平均アスペクト比=数平均繊維長[nm]/数平均繊維径[nm]
[硫酸化セルロース繊維の製造方法]
硫酸化セルロース繊維の製造方法は、特に限定されないが、例えば、セルロース原料と硫酸化試薬を反応させる方法が挙げられる。この製造方法は、繊維形状を保ったままのセルロース繊維を硫酸化試薬で処理することによって、硫酸化試薬と当該セルロース繊維の構成要素であるセルロース微細繊維を反応させることにより、セルロース微細繊維を硫酸エステル化する工程(化学修飾工程)を含む。
(セルロース原料)
上記の化学修飾工程で用いるセルロース繊維(セルロース原料)の具体例としては、特に限定されないが、例えば、植物、動物(例えば、ホヤ類)、藻類、微生物(例えば、酢酸菌)、微生物産生物等を起源とするもの等が挙げられる。植物としては、例えば、木材、綿、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ、再生パルプ、古紙等が挙げられる。これらの中で、植物由来パルプが好ましい原材料として挙げられる。
植物由来パルプは、例えば、植物原料を化学的、若しくは機械的に、又は両者を併用してパルプ化することで得られる植物由来パルプが挙げられる。具体的な植物由来パルプとしては、例えば、ケミカルパルプ(クラフトパルプ(KP)、亜硫酸パルプ(SP))、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグランドパルプ(CGP)、ケミメカニカルパルプ(CMP)、砕木パルプ(GP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等が好ましいものとして挙げられる。
また、セルロース原料としては、本実施形態の目的を阻害しない範囲内で化学修飾されていてもよく、即ち、化学変性パルプを用いてもよい。例えば、セルロース繊維表面に存在する一部あるいは大部分の水酸基が酢酸エステル、硝酸エステルを含むエステル化されたもの、またメチルエーテル、ヒドロキシエチルエーテル、ヒドロキシプロピルエーテル、ヒドロキシブチルエーテル、カルボキシメチルエーテル、シアノエチルエーテルを含むエーテル化されたもの、また一級水酸基を酸化させたTEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシラジカル)酸化処理パルプを含むことができる。
本実施形態に使用されるセルロース原料の形状は、特に制限はないが、取り扱いの観点から繊維状、シート状、綿状、粉末状、チップ状、フレーク状が望ましい。
(前処理工程)
嵩密度が10kg/m以上のセルロース原料を用いる場合は、化学修飾工程の反応に先立ち、前処理を行い、嵩密度を0.1〜5.0kg/mにしてもよい。この前処理を予め行うことにより、硫酸エステル化工程をより効率的に行うことができる。前処理方法としては、特に限定されないが、機械処理を行うことにより、セルロース原料を適度な嵩密度にすることができる。機械処理としては、使用する機械や処理条件に制限はなく、例えばシュレッダー、ボールミル、振動ミル、石臼、グラインダー、ブレンダー、高速回転ミキサー等が挙げられる。嵩密度は好ましくは、0.1〜5.0kg/mであり、より好ましくは0.1〜3.0kg/mであり、さらにより好ましくは0.1〜1.0kg/mである。
(反応工程)
硫酸エステル化工程において、セルロース繊維と硫酸化試薬との反応(即ち、硫酸エステル化反応)は、硫酸化試薬を含む薬液にセルロース原料(セルロース繊維)を浸漬することにより行うことができる。
硫酸化試薬としては、スルファミン酸が好ましく用いられる。スルファミン酸は、無水硫酸や硫酸水溶液等に比べてセルロース溶解性が小さいだけでなく、酸性度が低いために重合度の保持が可能である。また、強酸性かつ高腐食性のある無水硫酸や硫酸水溶液に対して、スルファミン酸は、取り扱いに制限がなく、大気汚染防止法の特定物質にも指定されていないため、環境に対する負荷が小さい。
スルファミン酸の使用量は、セルロース繊維への置換基の含有量を考慮して適宜調整することができる。スルファミン酸は、例えば、セルロース分子中のアンヒドログルコース単位1モル当たり、好ましくは0.01〜50モル使用することができ、より好ましは0.1〜30モル使用することができる。
硫酸エステル化反応を行う薬液は、硫酸化試薬と溶媒を混合したものであり、更に触媒を添加してもよく、添加しなくてもよい。触媒としては、特に限定されないが、例えば、尿素、アミド類、三級アミン類等が挙げられるが、工業的観点から尿素を用いることが好ましい。触媒の使用量は、特に限定されないが、例えば、セルロース分子中のアンヒドログルコース単位1モル当たり0.001〜5モルが好ましく、0.005〜2.5モルがより好ましく、0.01〜2.0モルが更に好ましい。触媒は、高濃度のものをそのまま用いてもよく、事前に溶媒で希釈して用いてもよい。また、触媒の添加方法は、特に限定されないが、一括添加、分割添加、連続的添加、又はこれらの組合せで行うことができる。
薬液に使用する溶媒は、特に限定されないが、公知の溶媒を使用してもよい。公知の溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクタノール、ドデカノール等の炭素数1〜12の直鎖あるいは分岐のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の炭素数3〜6のケトン;直鎖又は分岐状の炭素数1〜6の飽和炭化水素又は不飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;炭素数2〜5の低級アルキルエーテル;ジオキサン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ピリジン等の溶媒が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。上記の溶媒の中では、セルロース原料の膨潤を促進する観点から、たとえば、水または極性有機溶媒がより好ましい。なお、上記溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。溶媒の使用量は、特に限定されないが、例えば、セルロース原料の溶媒含有量(即ち、セルロース原料の乾燥質量に対する溶媒の質量の比率)が10質量%以上、好ましくは10〜10000質量%、より好ましくは20〜5000質量%、更に好ましくは50〜2000質量%で使用される。溶媒量が少ないほど、洗浄工程の利便性が向上する。
硫酸エステル化反応の温度は0〜100℃を例示でき、好ましくは10〜80℃、さらに好ましくは20〜70℃である。この反応温度が低すぎると反応完結に長時間を要する傾向にあり、反応温度が高すぎるとセルロース分子内のグリコシド結合が切断される傾向にある。硫酸エステル化反応は通常30分〜5時間で完結する。
着色の少ない製品を得るために、更に、硫酸エステル化反応の際に、窒素ガス、ネオンガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスや炭酸ガスを導入してもよい。これらのガスの導入方法としては、例えば、(i)ガスを反応槽に吹き込みながら反応を行う方法、(ii)反応前に反応槽内をガスで置換した後、反応槽を密閉して反応を行う方法等が挙げられる。工業的見地から、ガスは反応時に使用しないのが好ましい。
また、硫酸化工程の後、必要に応じて更なる化学修飾工程を設けてもよい。化学修飾工程としては、例えば、硫酸化されなかったセルロース繊維表面に存在する一部の水酸基を、酢酸エステル、硝酸エステルによりエステル化する工程、メチルエーテル、ヒドロキシエチルエーテル、ヒドロキシプロピルエーテル、ヒドロキシブチルエーテル、カルボキシメチルエーテル、シアノエチルエーテルによりエーテル化する工程、また一級水酸基を酸化させたTEMPO酸化処理する工程等が挙げられる。
(中和・洗浄工程)
本実施形態では、必要に応じて、硫酸エステル塩を中和する工程を設けてもよい。硫酸エステル塩は、得られた粗製物のpHが低下することによって酸性を示した場合、粗製物の保存安定性が低い。そのため、この硫酸エステル塩に塩基性化合物を添加して中和させることにより、pHを中性もしくはアルカリ性に調整することが好ましい。中和に用いる塩基性化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、その他の無機塩、アミン類、オニウム化合物等が挙げられる。具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウム、塩基性乳酸アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド等が挙げられる。なお、本実施形態において、一種以上の塩基性化合物を使用して中和することができる。
また、反応停止の目的、及び/又は、硫酸化試薬残渣、残留触媒、溶媒等の除去の目的で、湿潤状態の化学修飾セルロース繊維を洗浄する工程を設けてもよい。この時、洗浄条件は特に限定されないが、洗浄に使用する溶媒として水、及び/又は、有機溶媒を用いて、反応終了後の化学修飾セルロース繊維を洗浄するのが好ましい。
脱溶媒方法は、特に限定されないが、例えば、遠心沈降法、濾過、プレス処理等を使用できる。ここで、溶媒を完全に除去せず、化学修飾セルロース繊維からなるシートを溶媒で湿潤状態にしておいてもよい。化学修飾セルロース繊維の溶媒含有量(即ち、化学修飾セルロース繊維集合体の乾燥質量に対する溶媒の質量の比率)は1〜500質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜100質量%であり、更に好ましくは10〜50質量%である。
[水溶性セルロース]
本実施形態のセルロース組成物は、水溶性セルロースを含有する。本明細書において、「水溶性セルロース」とは、20℃1気圧下において、水に対して、1g/L以上溶解するセルロースを意味する。水溶性セルロースとしては、20℃1気圧下において、水に対して、3g/L以上溶解することが好ましい。
水溶性セルロースは、特に限定されず、例えば、一般的に使用されるものを使用することができる。水溶性セルロースとしては、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、硫酸化セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。これらは1種で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。硫酸化セルロース繊維に対する解繊助剤効果に優れる観点から、水溶性セルロースは、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及び硫酸化セルロースからなる群から選択された1種または2種以上であることが好ましい。
また、水溶性セルロースは、硫酸化セルロース繊維に対する解繊助剤効果に優れる観点から、水溶性セルロースの一部がアニオン性官能基によって置換されていることが好ましい。本明細書において、アニオン性官能基とは、pH7の水中において半数以上の水素イオンが乖離する官能基を示す。アニオン性官能基としては、特に制限されないが、例えば、カルボキシ基、リン酸基、硫酸基等が挙げられる。アニオン性官能基としては、水溶性セルロースへのアニオン性官能基の導入が容易であるため、カルボキシ基が好ましい。
セルロース組成物において、硫酸化セルロース繊維の含有量に対する水溶性セルロースの含有量の割合(水溶性セルロースの含有量[g]/硫酸化セルロース繊維の含有量[g])は、特に限定されないが、好ましくは0.001%以上500%以下であり、より好ましくは0.001%以上230%以下であり、さらに好ましくは0.001%以上100%以下である。この質量比率が0.001%以上であることにより、解繊助剤としての効果や配向阻害効果を向上させることができる。この質量比率が500%以下であることにより、硫酸化セルロース繊維単独よりも粘度が低下することを抑制できる。
また、セルロース組成物において、硫酸化セルロース繊維の含有量は、特に限定されないが、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.001質量%以上4質量%以下がより好ましく、0.01質量%以上2質量%以下がさらに好ましい。硫酸化セルロース繊維の含有量が0.001質量%以上であることにより、増粘効果を発揮できる。また、硫酸化セルロース繊維の含有量が5質量%以下であることにより解繊及び/又は撹拌が容易になる。
また、セルロース組成物において、水溶性セルロースの含有量は、特に限定されないが、0.00001質量%以上25質量%以下が好ましく、0.0001質量%以上20質量%以下がより好ましく、0.001質量%以上10質量%以下がさらに好ましい。水溶性セルロースの含有量が0.00001質量%以上であることにより、解繊助剤としての効果や配向阻害効果を向上させることができる。また、水溶性セルロースの含有量が25質量%以下であることにより、硫酸化セルロース繊維単独よりも粘度が低下することを抑制できる。
また、セルロース組成物には、効果を妨げない範囲において他の成分を添加してもよい。他の成分としては、特に限定されないが、例えば、当該分野で一般的に使用されるものが挙げられる。他の成分としては、例えば、耐候剤、抗菌剤、抗カビ剤、顔料、充填材、防錆剤、染料、造膜助剤、無機架橋剤、有機架橋剤(例えば、ブロックドイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、メラミン系架橋剤等)、シランカップリング剤、ブロッキング防止剤、粘度調整剤、レベリング剤、消泡剤、分散安定剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、無機、有機充填剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤等が挙げられる。
本実施形態のセルロース組成物は、通常の製造方法によって製造することができる。例えば、本実施形態のセルロース組成物は、硫酸化セルロース繊維と、水溶性セルロースと、その他の任意成分とを、所定の方法にて混合する事により製造することができる。具体的には、本実施形態のセルロース組成物は、例えば、精製水に溶解した本実施形態の硫酸化セルロース繊維及び水溶性セルロースを、精製水に攪拌しながら徐々に加えることによって粘ちょう性液体とし、ついで、任意の他の成分を加えて均一にした後、放置することによって製造することができる。
(微細化工程)
一般的に、マイクロオーダーの硫酸化セルロース繊維に対して、機械的解繊による微細化工程を経ることにより、ナノオーダーの硫酸化セルロース繊維を得ることができる。硫酸化セルロース繊維の微細化工程を行う一般的な装置としては、例えば、リファイナー、二軸混錬機(二軸押出機)、高圧ホモジナイザー、媒体撹拌ミル(例えば、ロッキングミル、ボールミル、ビーズミル等)、石臼、グラインダー、振動ミル、サンドグラインダー等が挙げられる。
ここで、本実施形態のセルロース組成物の微細化工程は、セルロース繊維の一部の水酸基が下記式(1)で表される置換基によって修飾されている硫酸化セルロース繊維と、水溶性セルロースと、を含有する溶液を混合する工程である。この工程により、硫酸化セルロース繊維を微細化する。
Figure 0006831935
〔式中、Mは水素イオン、金属イオン、アミン、又はオニウムイオンを示す。〕
微細化工程を経ることにより、上述した(A)から(D)の条件を満たす硫酸化セルロース繊維を含むセルロース組成物を得ることができる。この製造方法によれば、水溶性セルロースを用いない場合と比較して、簡便に解繊を行うことが可能である。このため、硫酸化セルロース繊維の微細化処理を行う装置としては、例えば、ホモミキサー、ホモディスパー、ジューサーミキサー、プラネタリーミキサー、スタンドミキサー等を用いることができる。
微細化工程における回転数は、特に限定されないが、例えば、2,000rpm以上20,000rpm以下が好ましく、3,000rpm以上18,000rpm以下がより好ましく、3,000rpm以上15,000rpm以下がさらに好ましい。2,000rpm以上であることにより、硫酸化セルロース繊維を効果的に微細化できる。また、20,000rpm以下であることにより、好ましい繊維形態を保持できる。
微細化工程における攪拌時間は、特に限定されないが、例えば、5分以上120分以下が好ましく、5分以上80分以下がより好ましく、5分以上60分以下がさらに好ましい。5分以上であることにより、硫酸化セルロース繊維を微細化し、かつ水溶性セルロースと硫酸化セルロース繊維が均一に混ざることで配向阻害効果を向上させることができる。また、120分以下であることにより、好ましい繊維形態を保持できる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「%」とあるのは、特に限定のない限り「質量%」を意味する。
[硫酸化セルロース繊維の合成]
まず、実験に用いる硫酸化セルロース繊維を下記の製造例1〜3に従って合成する。
(製造例1)
まず、反応工程として、スルファミン酸14.4g(セルロース分子中のアンヒドログルコース単位1モル当たり1.2モル)に、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)620gを添加した後、30分撹拌を行った。その後、室温(25℃)下において、セルロース原料として針葉樹クラフトパルプ20.0gを添加した。その後、55℃で4時間反応させた後、室温(25℃)まで冷却した。次に、繊維を取り出した後に、水で洗浄した後、中和剤として2N水酸化ナトリウム水溶液を添加することにより、pHを7.6に調整した。その後、脱水を行うことによって、硫酸化セルロース繊維A1を得た。
(製造例2)
反応工程においてスルファミン酸の仕込み量を23.9gとした点以外は、製造例1と同様の手順により硫酸化セルロース繊維A2を得た。
(製造例3)
反応工程においてスルファミン酸の仕込み量を41.9gとした点以外は、製造例1と同様の手順により硫酸化セルロース繊維A3を得た。
(評価)
製造例1〜3により得られたセルロース繊維について硫酸基量と、結晶化度とを測定した。測定結果を表1に示す。各測定の詳細については、以下に示す。
・硫酸基量(mmol/g)
硫酸基量は、電位差滴定により算出した。ここで、硫酸基量は、硫酸化セルロース繊維の含有量に対する置換基の含有量(置換基の含有量[mmol]/硫酸化セルロース繊維の含有量[g])と同義である。乾燥質量を精秤した硫酸化セルロース繊維試料を用いて、固形分率0.5%に調製した硫酸化セルロース繊維の水分散体を60mL調製した。その後、1N塩酸水溶液によって、水分散体のpHを約1.0とした。その後、ろ過及び水洗浄をした後、硫酸エステル化セルロース繊維を再び固形分率0.5%となるように水に再分散させた。その後、0.1N水酸化カリウム水溶液を滴下することにより電位差測定を行った。そして、この滴下量を用いて硫酸基量を算出した。
・セルロースI型結晶化度(%)
硫酸化セルロース繊維のX線回折強度を、X線回折法を用いて測定した。そして、その測定結果からSegal法を用いて、下記式により結晶化度を算出した。
セルロースI型結晶化度(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100
上記式中、I22.6は、X線回折における格子面(200面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度を示し、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。また、サンプルのX線回折強度の測定は、株式会社リガク製の「RINT2200」を用い、以下の条件にて実施した。
X線源:Cu/Kα―radiation
管電圧:40kV
管電流:30mA
測定範囲:回折角2θ=5〜35°
X線のスキャンスピード:10°/min
[TEMPO酸化セルロース繊維の合成]
比較例に用いるTEMPO酸化セルロース繊維について、製造例4に従って合成した。
(製造例4)
針葉樹クラフトパルプ2.0gに、水150mL、臭化ナトリウム0.25g、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシラジカル(TEMPO)0.025gを加えた後、十分撹拌させた。その後、13質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、上記パルプ1.0gに対して次亜塩素酸ナトリウム量が10mmol/gとなるように加えることにより、反応を開始した。さらに、反応中のpHが10〜11に保持するように0.5N水酸化ナトリウム水溶液を滴下しながら、45分間反応させた。反応後、0.1N塩酸を加えてpHを7.0とした後、脱水を行うことにより、TEMPO酸化セルロース繊維B1を得た。
(評価)
製造例4により得られたTEMPO酸化セルロース繊維B1についてカルボキシ基量と、結晶化度とを測定した。なお、カルボキシ基量の測定方法は以下の方法で行い、結晶化度の測定方法は硫酸化セルロース繊維の評価と同様の手法で行った。測定結果を表1に示す。
・カルボキシ基量
上記セルロース繊維0.25gを水に分散させたセルロース水分散体60mlを調製した後、0.1Nの塩酸水溶液によってpHを約2.5とした。その後、0.05Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下することにより、電気伝導度測定を行った。測定は、pHが11になるまで続けた。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において、消費された水酸化ナトリウム量(V)を用いて、下記式に基づいてカルボキシ基量を求めた。
カルボキシ基量[mmol/g]=V[ml]×(0.05/セルロース質量[g])
[水溶性セルロースの合成]
水溶性セルロースとして用いる硫酸化セルロースを製造例5に従って合成した。
(製造例5)
結晶性セルロース50.0gにDMF150mLを加えた後、1時間撹拌させた。18質量%無水硫酸―DMF溶液480mLを氷冷下でゆっくり滴下した後、室温(25℃)で6時間反応させた。その後、反応液を5℃まで冷却した後、氷冷下において反応液を水400gに滴下した。pHが10となるよう5N水酸化ナトリウム水溶液を加えた後、さらに1N塩酸を加えることにより、pHを7.0とした。その後、析出物を濾別した後、ろ液をイソプロピルアルコール2Lに滴下した後、ろ過及びろ物の乾燥を行うことにより、水溶性セルロースとしての硫酸化セルロースを得た。
(その他の水溶性セルロース)
その他の水溶性セルロースとして、以下のものを用いた。
・カルボキシメチルセルロース(CMC)(第一工業製薬社製 セロゲンWS−A)
・ヒドロキシエチルセルロース(HEC)(三晶社製 SANHEC)
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(三晶社製 NEOVISCO MC)
[水溶性セルロースの調製]
上述の水溶性セルロースを乾燥固形分量が1.0gとなるように秤量した後、水を添加し、その後、一日スターラーで撹拌することにより1質量%のセルロース溶液を得た。
Figure 0006831935
[セルロース組成物の調製]
次に、上記製造方法により得られたセルロース繊維等を用いてセルロース組成物を調製した。
(実施例1)
製造例1により得られた硫酸化セルロース繊維A1 6.7g(固形分濃度15%)に水93.3mLを加え固形分濃度が1%となるように調製した。その後、硫酸化セルロース溶液を5.0g添加した後、ホモミキサー(プライミクス社製 ホモミキサーMARKII2.5型)によって10,000rpmで30分間撹拌することにより、セルロース組成物を調製した。
(実施例2〜11)
製造例1〜3により得られた硫酸化セルロース繊維を用いて、表2、3に示す条件となるように、実施例1と同様の操作を行うことでセルロース組成物を調製した。
(比較例1)
製造例1により得られた硫酸化セルロース繊維A1 6.7g(固形分濃度15%)に水93.3mLを加え固形分濃度が1%となるように調製した。その後、ホモミキサー(プライミクス社製 ホモミキサーMARKII2.5型)によって10,000rpmで60分間撹拌することにより、セルロース組成物を調製した。
(比較例2)
製造例1により得られた硫酸化セルロース繊維A1の代わりに製造例3により得られた硫酸化セルロース繊維A3を用いた点、ホモミキサーによる攪拌時間を10分とした点以外は、比較例1と同様の操作でセルロース組成物を調製した。
(比較例3)
製造例1により得られた硫酸化セルロース繊維A1の代わりに製造例4により得られたTEMPO酸化セルロース繊維B1を用いた点、ホモミキサーによる攪拌時間を30分とした点以外は、比較例1と同様の操作でセルロース組成物を調製した。
(比較例4,5)
水溶性セルロースを用いた点以外は、表3に示す条件となるように、比較例3と同様の操作でセルロース組成物を調製した。
(評価)
実施例及び比較例について、以下の測定及び評価を行った。
・数平均繊維径、数平均繊維長及び平均アスペクト比
セルロース繊維の平均繊維径及び平均繊維長は、光学顕微鏡又は原子間力顕微鏡(AFM)で観察した繊維50本の数平均値である。また、平均アスペクト比は、数平均繊維長/数平均繊維径の値である。
・粘度(初期粘度、長期撹拌後粘度、粘度低下率)
セルロース組成物50.0gに水50mLを加えた後、ホモミキサーを用いて8,000rpm、5分間撹拌した。そして、脱気した後、100mLのスクリュー管に移し、1日静置した。25℃1気圧の条件下において、BM型粘度計を用いて6rpmで3分間攪拌させた後のサンプルの粘度を、「初期粘度」とした。
さらに、このサンプルを、200mLのビーカーに移した後、スターラーで2週間撹拌した後、再度脱気した。その後、このサンプルを100mLのスクリュー管に移し、1日静置した。そして、25℃1気圧の条件下において、BM型粘度計を用いて6rpmで3分間攪拌させた後のサンプルの粘度を、「長期撹拌後粘度」とした。
また、長期撹拌後粘度と、初期粘度と、以下の式とを用いて、「粘度低下率」を算出した。
粘度低下率(%)=〔1−(長期撹拌後粘度/初期粘度)〕×100
・複屈折
初期粘度を測定したサンプルと、長期撹拌後粘度を測定したサンプルと、を、それぞれ2枚の偏光板で挟んだ後、複屈折の有無を目視にて観察した。複屈折の判定の基準を以下に示す。
〇:複屈折が全部に見える。
△:複屈折が一部に見える。
×:複屈折が見えない。
・透明度
セルロース組成物50.0gに水50mLを加えた後、ホモミキサーを用いて8,000rpm、5分間撹拌した。そして、脱気した後、一日静置した。波長660nmにおけるこの溶液の透過率を分光光度計により測定した。
・スプレー性
セルロース組成物50.0gに水50mLを加え、ホモミキサーを用いて8,000rpm、5分間撹拌した後、スプレー容器(サンラテック社製分注瓶(スプレー式)S−50)に入れ、噴射を試みた。そして、噴射の可否を目視で観察した。スプレー性の判定の基準を以下に示す。
〇:ノズルからミスト状に噴射される。
△:ノズルから噴射されるがミスト状ではない。
×:ノズルから噴射できない。
・沈降抑制効果
容量200mLのポリカップに、水性セルロース組成物10.0gと水90mLとを加えた後、ホモミキサーを用いて8,000rpm、5分間撹拌することにより、固形分濃度が0.1質量%のセルロース組成物を得た。得られたセルロース組成物にアルミナ(粒子径0.5μm)1.0gを添加した後、ホモディスパー(プライミクス社製、ホモディスパー2.5型)を用いて2,000rpm、2時間撹拌した。その後、この分散液を直径3cm×30cm長の目盛付試験管に25mL移した後、25℃で3日静置した。その後、この分散液の離水量を測定し、この離水量と以下の式とを用いて、沈降度を算出した。
沈降度=離水量(mL)/25(mL)
沈降抑制効果の判定の基準を以下に示す。
〇:沈降度が0.1未満
△:沈降度が0.1以上、0.3未満
×:0.3以上
得られた結果を、以下の表に示す。
Figure 0006831935
Figure 0006831935
上述の結果から以下のことが分かった。つまり、表2、3の結果から、実施例1〜11と比較例1〜3とを比較することにより、水溶性セルロースを含むことによって、高圧解繊処理を行わずに攪拌処理のみで、繊維幅が小さいとともに、アスペクト比が所定の範囲内の微細繊維状セルロースを得ることができることが分かった。そして、この結果として、実施例のセルロース組成物によれば、スプレー性が良好であり、粘度低下率が低くかつ透明度に優れ、沈降抑制効果に優れるゲルを得ることが可能であることが分かった。
また、実施例1〜11と比較例1〜3とを比較することによって、実施例において、複屈折が観察されていることから、ネットワーク構造が形成されていることが分かった。この結果として、本実施例のセルロース組成物は、長期攪拌後においてもネットワーク構造が維持されるために粘度の低下が抑制され、また、同一方向に流れる攪拌系においても品質の低下を抑制できた。このような効果を奏する原因は定かではないが、水溶性セルロースが硫酸化セルロース繊維の配向を一部において阻害するためと推定される。
一方、比較例1〜3は、水溶性セルロースが含まれないため、解繊が進まず、この結果として、繊維径が太く、粘度や透明度が低い結果となった。また、比較例4,5は水溶性セルロースを含むが、硫酸化セルロース繊維を含まないため、同程度の置換基量を有する実施例3と比較して、平均繊維幅が太く、粘度及び透明度が低かった。
本実施形態のセルロース組成物は、例えば、増粘剤に用いることができる。特に、長期攪拌後における粘度の安定性に優れることから、この性能が求められる化粧品、塗料、インク等の分野に好適に用いることができる。
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
P1…点
P2…点
F…繊維

Claims (6)

  1. セルロース繊維の一部の水酸基が下記式(1)で表される置換基によって修飾されている硫酸化セルロース繊維と、水溶性セルロースと、を含有し、
    前記硫酸化セルロース繊維は、以下の(A)から(D)の条件を満たすことを特徴とする、セルロース組成物。
    (A)数平均繊維径が2nm以上500nm以下
    (B)平均アスペクト比が50以上3000以下
    (C)セルロースI型結晶構造を有する
    (D)前記硫酸化セルロース繊維の含有量に対する前記置換基の含有量(置換基の含有量[mmol]/硫酸化セルロース繊維の含有量[g])が、0.01mmol/g以上3.0mmol/g以下
    Figure 0006831935
    〔式中、Mは水素イオン、金属イオン、アミン、又はオニウムイオンを示す。〕
  2. 前記水溶性セルロースは、20℃1気圧下において、水に対して、3g/L以上溶解することを特徴とする、請求項1に記載のセルロース組成物。
  3. 前記水溶性セルロースの一部がアニオン性官能基によって置換されていることを特徴とする、請求項1又は請求項に記載のセルロース組成物。
  4. 前記硫酸化セルロース繊維の質量に対して、前記硫酸化セルロース繊維の含有量に対する前記水溶性セルロースの含有量の割合(水溶性セルロースの含有量[g]/硫酸化セルロース繊維の含有量[g])が、0.001%以上500%以下であることを特徴とする、請求項1から請求項のいずれか1項に記載のセルロース組成物。
  5. 前記硫酸化セルロース繊維の含有量に対する前記置換基の含有量(置換基の含有量[mmol]/硫酸化セルロース繊維の含有量[g])が、1.2mmol/g以上2.7mmol/g以下であることを特徴とする、請求項1から請求項のいずれか1項に記載のセルロース組成物。
  6. 前記硫酸化セルロース繊維の結晶化度が50%以上98%以下であることを特徴とする、請求項1から請求項のいずれか1項に記載のセルロース組成物。
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