JP2022075638A - 防虫組成物、防虫剤および害虫忌避方法 - Google Patents

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Abstract

Figure 2022075638000001
【課題】害虫忌避成分を均質な状態に維持した防虫組成物、該防虫組成物を含む防虫剤および害虫忌避方法を提供する。
【解決手段】水と、水溶性溶剤と、水酸基の一部がスルホ基で置換されたスルホン化微細セルロース繊維と、害虫忌避成分と、を含む組成物であり、スルホン化微細セルロース繊維はスルホ基の導入量が0.5mmol/g~3.0mmol/gであり、害虫忌避成分の含有量が1質量%~40質量%であり、組成物の全光線透過率が90%以上である。害虫に対して優れた忌避効果を発揮させることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、防虫組成物、防虫剤および害虫忌避方法に関する。さらに詳しくは、スルホン化セルロースナノファイバーが含有した防虫組成物、防虫剤および害虫忌避方法に関する。
害虫に対する忌避成分(害虫忌避成分)として、N,N-diethyl-3-methylbenzamide(別名:N,N-diethyl-m-toluamide、本明細書では、トルアミドもしくはDEETと称する)が広く知られている。また、近年ではトルアミドの代替品として1-piperidinecarboxylic acid-2-(2-hydroxyethyl)-1-methylpropylester(別名:1-(1-methylpropoxycarbonyl)-2-(2-hydroxyethyl)piperidine(本明細書では、イカリジンという))が広く知られている。これら害虫忌避成分は、優れた忌避効果を発揮するものの、揮発性が高く、水に対する溶解度が非常に小さい(例えば、イカリジンの溶解度は約8g/L)化合物である。
そこで、従来、取り扱い性を向上させるために、上記害虫忌避成分が含有したアルコール溶液に水や界面活性剤等を混合することで害虫忌避成分の濃度を向上させた虫よけスプレーなどが市販されている。一方、アルコールに起因する害虫忌避成分の揮発を抑制するために、アルコールを含まない製品の開発が行われている(例えば、特許文献1、2)。
特許文献1には、水とトルアミドとTEMPO酸化CNF(セルロースナノファイバー(CNF)のグルコースユニットのC6位の水酸基にカルボキシ基を導入したもの)を含有した害虫忌避成分組成物が開示されている。また、特許文献2には、イカリジンを特許文献1のトルアミドに替えて含有させた防虫組成物が開示されている。
特開2011-057570号公報 特開2019-89738号公報
しかしながら、特許文献1、2の技術では、TEMPO酸化CNFによりトルアミドやイカリジンの揮発性が抑制されるものの、水に対する溶解度が低いトルアミド等がエマルションを形成してしまい、均質な状態に維持されないという問題が生じている。
本発明は上記事情に鑑み、害虫忌避成分を均質な状態に維持した防虫組成物、該防虫組成物を含む防虫剤および害虫忌避方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべき鋭意検討を重ねた結果、スルホ基を導入して得られたスルホン化微細セルロース繊維を水とアルコール等の水溶性溶剤の混合液に含ませることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
本発明の防虫組成物は、水と、水溶性溶剤と、水酸基の一部がスルホ基で置換されたスルホン化微細セルロース繊維と、害虫忌避成分と、を含む組成物であり、スルホン化微細セルロース繊維は、スルホ基の導入量が0.5mmol/g~3.0mmol/gであり、害虫忌避成分の含有量が、1質量%~40質量%であり、組成物の全光線透過率が、90%以上である。
本発明の防虫剤は、本発明の防虫組成物を含む防虫剤であり、剤形が、スプレー剤、ゲル剤、クリーム剤、液剤から選択される外用剤である。
本発明の害虫忌避方法は、本発明の防虫組成物を哺乳動物の皮膚に塗布、噴霧または貼付する方法である。
本発明によれば、害虫に対する忌避効果に優れた防虫組成物、施用に適した防虫剤および害虫を忌避する方法を提供することができる。
実験結果を示す図である。 実験結果を示す図である。 実験結果を示す図である。 実験結果を示す図である。 実験結果を示す図である。 実験結果を示す図である。 実験結果を示す図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本実施形態の防虫組成物は、スルホン化微細セルロース繊維を含有することにより、水に対する溶解度が低い害虫忌避成分を水中で均質な状態にできるようにしたことに特徴を有している。
(本実施形態の防虫組成物)
本実施形態の防虫組成物は、水と、水溶性溶剤と、スルホン化微細セルロース繊維と、害虫忌避成分と、を含む組成物である。
本実施形態の防虫組成物の水は、とくに限定されない。例えば、一般的な水道水のほか、純水や超純水、蒸留水などを用いることができる。
本実施形態の防虫組成物の水溶性溶剤は、水と混ざり合う性質を有する溶剤であれば、とくに限定されない。例えば、一般的に化学実験で用いられる水溶性の有機溶媒のほか、工業的に用いられる水溶性の溶剤などを挙げることができる。とくに、水に対する溶解度(g/100mL 水)が10g以上のものが本実施形態の防虫組成物の水溶性溶剤として適している。
(害虫忌避成分の含有量)
本実施形態の防虫組成物の害虫忌避成分は、害虫に対して忌避作用あるいは吸血阻害作用を有する化合物であればとくに限定されない。化合物の詳細は後述する。
本実施形態の防虫組成物における害虫忌避成分の含有量は、害虫に対して本実施形態の防虫組成物の害虫忌避成分を噴霧等した際に害虫に対して忌避作用を発揮する濃度となるように調整されていれば、とくに限定されない。
例えば、本実施形態の防虫組成物の害虫忌避成分の含有量は、本実施形態の防虫組成物全体に対して1質量%~40質量%である。つまり、害虫忌避成分は、本実施形態の防虫組成物全体を100質量%とすると、1質量%以上、40質量%以下となるように含有している。本実施形態の防虫組成物の害虫忌避成分の含有量は、好ましくは、1質量%以上、35質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上、30質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以上、20質量%以下である。また、より好ましくは1質量%以上、15質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以上、10質量%以下である。また、下限値は、好ましくは、2質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上である。
なお、本明細書における害虫に対する忌避作用とは、害虫が寄り付かないことはもちろん、害虫が寄り付きにくくなるということや、害虫が人等の皮膚や衣服に付着または降着しても停留せずにすぐに離れていくことを含む概念である。
本実施形態の防虫組成物の対象となる害虫としては、一般的に、人や家畜、愛玩動物に対して害となる虫を対象にすることができる。例えば、蚊やハエ、ブユ、アブなどの飛翔害虫のほか、ゴキブリ、ムカデ、ノミ、トコジラミ、ダニ類などを対象となる害虫として挙げることができる。
(スルホン化微細セルロース繊維)
本実施形態の防虫組成物に含まれるスルホン化微細セルロース繊維は、セルロース繊維が微細化された微細セルロース繊維である。
このスルホン化微細セルロース繊維には、さらに微細なセルロース繊維(以下、ユニット繊維という)を複数含んでいる。具体的には、スルホン化微細セルロース繊維は、複数のユニット繊維が連結して形成された繊維である。
このユニット繊維は、かかる繊維を構成するセルロース(D-グルコースがβ(1→4)グリコシド結合した鎖状の高分子、下記の一般式(1))の水酸基(-OH基)の少なくとも一部が下記の一般式(2)(以下、単にスルホ基ということもある)で硫酸化されたものである。つまり、スルホン化微細セルロース繊維は、微細セルロース繊維の水酸基の一部が、スルホ基で置換された構造(下記の一般式(3)で示す構造)である。
(一般式(1))
Figure 2022075638000002
(一般式(2))
Figure 2022075638000003

(式中、Zは、水素イオン、金属イオン、オニウムイオンまたはカチオン性有機化合物を示す。)
(一般式(3))
Figure 2022075638000004

(式中、Rは、セルロース(一般式(1)で示す)から一部の水酸基を除いた構造を示す。Zは、水素イオン、金属イオン、オニウムイオンまたはカチオン性有機化合物を示す。)
ここで、上記一般式(2)は、式(1)で表すことができる。
(-SO ・Zr+ (1)
式(1)中のrは、独立した1~3の自然数であり、Zr+は、r=1のとき、水素イオン、アルカリ金属の陽イオン、アンモニウムイオン、脂肪族アンモニウムイオン、芳香族アンモニウムイオンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である。また、r=2または3のとき、アルカリ土類金属の陽イオンまたは多価金属の陽イオンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である。
なお、セルロースの水酸基をスルホ基で置き換えることについての概略を説明する。
セルロースの水酸基の一部をスルホ基で置き換えることを、本明細書では置換といい、反応後にセルロースを構成する少なくとも一部の水酸基が置換反応等により、スルホ基が結合した状態のことを意味する。
具体的には、本明細書のセルロースの水酸基にスルホ基が置換するとは、セルロースの水酸基(-OH基)の少なくとも一部がスルホ基で置換されたものを意味する。水酸基の一部とは、「-OH基」の「H」(水素原子)のほか、「OH」も含むことを意味する。つまり、セルロースの水酸基の一部がスルホ基で置換された構造には、水酸基の酸素原子に対して水素原子(H)の代わりにスルホ基(一般式(2))が結合してセルロースの炭素と水酸基の酸素原子(O)とスルホ基が結合した構造(いわゆるエステル結合したもの、例えば、一般式(3))のほか、水酸基の「OH」の代わりにスルホ基が結合してセルロースの水酸基が結合している炭素にスルホ基が直接結合した構造(例えば、下記の一般式(4))も含まれることを意味する。
(一般式(4))
Figure 2022075638000005

(式中、Rは、セルロース(一般式(1)で示す)から一部の水酸基を除いた構造を示す。Zは、水素イオン、金属イオン、オニウムイオンまたはカチオン性有機化合物を示す。)
スルホン化微細セルロース繊維は、スルホ基以外の他の官能基が微細セルロース繊維の水酸基の一部に結合していてもよく、とくに、スルホ基以外に硫黄を含む官能基(置換基)を含んでいてもよい。
以下の説明では、スルホン化微細セルロース繊維を構成するセルロース繊維の水酸基にスルホ基だけを導入した場合を代表として説明する。
スルホン化微細セルロース繊維のスルホ基の導入量は、スルホ基に起因する硫黄量で表すことができる。
スルホ基の導入量は、とくに限定されない。例えば、スルホン化微細セルロース繊維1g(質量)あたりのスルホ基の導入量は、0.4mmol/g~5.0mmol/gである。より好ましくは、0.4mmol/g以上、4.0mmol/g以下であり、さらに好ましくは0.4mmol/g以上、3.0mmol/g以下である。また、下限値としては好ましくは、0.5mmol/g以上である。
スルホン化微細セルロース繊維1g(質量)あたりのスルホ基の導入量が0.4mmol/gよりも低い場合には、繊維間の水素結合が強固なため分散性が低下する傾向にある。その逆に、スルホ基の導入量が0.4mmol/g以上にすることによって分散性が向上させやすくなり、0.5mmol/g以上とすれば電子的反発性をより強くさせることができるので、分散した状態を安定して維持させやすくなる。
つまり、本実施形態の防虫組成物中において、均質に分散させる上では、スルホ基の導入量が0.4mmol/g以上であり、より好ましくは0.5mmol/g以上とするのがよい。一方、かかる硫黄導入量が9.9mmol/gに近づくほど結晶性の低下が懸念され、しかも硫黄を導入する際のコストも増加する傾向にある。
スルホン化微細セルロース繊維に対するスルホ基の導入量は、直接的にスルホ基を測定することで評価することができたり、スルホ基に起因する硫黄導入量で評価することができる。
前者の測定方法としては、例えば、スルホン化微細セルロース繊維をイオン交換樹脂で処理した後に水酸化ナトリウム水溶液を滴下しながら電気伝導度を測定して得られた値に基づいて算出することができる。
後者の測定方法としては、例えば、スルホン化微細セルロース繊維の所定量を燃焼させて、燃焼イオンクロマトグラフを用いて燃焼物に含まれる硫黄分をIEC 62321に準拠した方法で測定して得られた値に基づいて算出することができる。
なお、スルホ基中の硫黄の原子数は1であるので、硫黄導入量:スルホ基導入量=1:1である。例えば、スルホン化微細セルロース繊維1g(質量)あたりの硫黄導入が0.4mmol/gの場合には、スルホ基の導入量も当然に0.4mmol/gとなる。
前者の測定方法をより具体的に説明すると、まず、0.2質量%のナノセルロース繊維含有スラリーに体積比で1/10の強酸性イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、アンバージェット1024;コンディショニング済)を加え、1時間以上振とう処理を行う(イオン交換樹脂による処理)。ついで、目開き90μm~200μm程度のメッシュ上に注ぎ、樹脂とスラリーを分離する。その後のアルカリを用いた滴定では、イオン交換樹脂による処理後のスルホン化微細セルロース繊維含有スラリーに、0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えながら、電気伝導度の値の変化を計測する。得られた計測データは、縦軸に電気伝導度、横軸に水酸化ナトリウム滴定量としてプロットすると曲線が得られ、変曲点が確認できる。この変曲点での水酸化ナトリウム滴定量がスルホ基量に相当し、この変曲点の水酸化ナトリウム量を測定に供したスルホン化微細セルロース繊維固形分量で除することで、スルホ基の導入量を求めることができる。
なお、後述するように化学処理したスルホン化パルプを微細化処理してスルホン化微細セルロース繊維を調製する場合には、微細化前のスルホン化パルプにおける硫黄導入量から求めてもよい。
スルホン化微細セルロース繊維は、上述したようにセルロース繊維が微細化された微細セルロース繊維であり、その繊維は非常に細くなっている。
具体的には、スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅は、電子顕微鏡で観察した際に、1nm~30nmとなるように調製されているのが好ましくい。より好ましくは2nm以上、30nm以下である。
スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅が、30nmよりも大きくなるとアスペクト比が低下する傾向にあり、その結果繊維同士のからみあいが減少する傾向にある。
したがって、スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅は、粘性を向上させる上では、2nm~30nmである。好ましくは2nm以上、20nm以下であり、より好ましくは2nm以上、10nm以下である。
また、スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅が、30nmよりも大きくなると可視光の波長の1/10に近づき、マトリックス材料と複合した場合には界面で可視光の屈折及び散乱が生じ易く、可視光の散乱が生じる傾向にある。
したがって、スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅は、透明性の観点では、20nm以下である。好ましくは10nm以下であり、より好ましくは10nm以下である。
スルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅は、公知の技術を用いて測定することができる。
例えば、スルホン化微細セルロース繊維を純水等の溶媒に分散させて、所定の質量%となるように混合溶液を調整する。そしてこの混合溶液を、PEI(ポリエチレンイミン)をコーティングしたシリカ基盤上にスピンコートを行い、このシリカ基盤上のスルホン化微細セルロース繊維を観察する。
観察方法としては、例えば、走査型プローブ顕微鏡(例えば、島津製作所製;SPM-9700)を用いることができる。得られた観察画像中のスルホン化微細セルロース繊維をランダムに20本選び、各繊維幅を測定し平均化すればスルホン化微細セルロース繊維の平均繊維幅を求めることができる。
(防虫組成物の透明性について)
本実施形態の防虫組成物は、所定の透明性を有している。例えば、本実施形態の防虫組成物をガラス瓶等の透明溶液に収容した状態において、収容した本実施形態の防虫組成物を人が視認した際に、この防虫組成物が透明であると認識し得る状態になっている。つまり、本実施形態の防虫組成物は、かかる状態において、照射された光の屈折や散乱が小さくなるように調製されている。言い換えれば、本実施形態の防虫組成物は、光が散乱等するような物質等が分散体やコロイド、エマルションといった状態で存在する成分の割合が小さいことを意味する。
本実施形態の防虫組成物の透明性は、液体の透明性と濁りの両方またはいずれか一方の性質を含んだ概念として評価することができる。つまり、本実施形態の防虫組成物の透明性は、液体の透明性を全光線透過率により評価することができ、液体の濁り性をヘイズ値により評価することができる。
例えば、本実施形態の防虫組成物は、全光線透過率を測定した場合、80%以上である。好ましくは、90%以上であり、より好ましくは95%以上である。
また、本実施形態の防虫組成物は、ヘイズ値を測定した場合、80%以下である。好ましくは70%以下であり、より好ましくは60%以下であり、さらに好ましくは50%以下である。
本実施形態の防虫組成物の全光線透過率およびヘイズ値を測定する方法は、後述する実施例に記載の分光ヘイズメータを用いた方法で測定することができる。
例えば、本実施形態の防虫組成物をJIS K 7105に準拠して分光光度計を用いて測定することによりヘイズ値および全光線透過率を求めることができる。
以上のごとく、水に対する溶解度が低い害虫忌避成分を所定量含有しているにもかかわらず、本実施形態の防虫組成物の透明性を高くすることができる。言い換えれば、本実施形態の防虫組成物の害虫忌避成分は、上記特性を有しているにもかかわらず、水と害虫忌避成分の混合溶液に水溶性溶剤とスルホン化微細セルロース繊維を混合することにより、害虫忌避成分が高濃度であっても水溶液中において、エマルションの形態にならずに均質な状態にすることができる。このため、使用時に、本実施形態の防虫組成物中において、害虫忌避成分の偏りなどが生じるのを抑制できるので、害虫忌避成分の機能(害虫忌避作用)を適切に発揮させることができる。
以下、本実施形態の防虫組成物の各構成を詳細に説明する。
本実施形態の防虫組成物は、上記のごとく、水と水溶性溶媒が混合した水溶液中において、スルホン化微細セルロース繊維を含有させることにより、水に対する溶解度が低い害虫忌避成分を均質な状態に維持させることができる。
(スルホン化微細セルロース繊維の含有量)
本実施形態の防虫組成物におけるスルホン化微細セルロース繊維の含有量は、害虫忌避成分が均質な状態に維持できる量となるように調整されていればよい。
例えば、本実施形態の防虫組成物中のスルホン化微細セルロース繊維の含有量は、本実施形態の防虫組成物中に含まれる害虫忌避成分100質量部に対して、0.1質量部~100質量部である。好ましくは0.1質量部以上、50質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以上、30質量部以下であり、さらに好ましくは0.1質量部以上、20質量部以下である。また、下限値としては、好ましくは0.5質量部以上であり、より好ましくは1質量部以上であり、さらに好ましくは2質量部以上である。
(水と水溶性溶媒の含有量)
本実施形態の防虫組成物における水と水溶性溶媒の含有量は、害虫忌避成分が均質な状態に維持できる量となるように調整されていればよい。
例えば、本実施形態の防虫組成物中の水の含有量は、本実施形態の防虫組成物に含まれる害虫忌避成分100質量部に対して、50質量部~2000質量部である。好ましくは50質量部以上、1500質量部以下であり、より好ましくは50質量部以上、1000質量部以下であり、さらに好ましくは50質量部以上、600質量部以下である。また、下限値としては、好ましくは100質量部以上であり、より好ましくは200質量部以上である。
例えば、本実施形態の防虫組成物における水溶性溶媒の含有量は、本実施形態の防虫組成物に含まれる害虫忌避成分100質量部に対して、50質量部~1500質量部である。好ましくは50質量部以上、1000質量部以下であり、より好ましくは50質量部以上、600質量部以下であり、さらに好ましくは50質量部以上、500質量部以下である。また、下限値としては、好ましくは100質量部以上であり、より好ましくは200質量部以上である。
とくに、水溶性溶媒の含有量が害虫忌避成分100質量部に対して200質量部以上とすれば、本実施形態の防虫組成物の使用時(例えば、塗布等した際)におけるべたつきを抑制し易くなる。
(害虫忌避成分)
本実施形態の防虫組成物の害虫忌避成分は、上記機能(害虫忌避作用)を有していれば、とくに限定されない。
例えば、N,N-diethyl-3-methylbenzamide(別名:N,N-diethyl-m-toluamide、明細書中でトルアミドということもある)、1-piperidinecarboxylic acid-2-(2-hydroxyethyl)-1-methylpropylester(別名:1-(1-methylpropoxycarbonyl)-2-(2-hydroxyethyl)piperidine、本明細書でイカリジンということもある)、ジメチルフタレート、2‐エチル‐1,3‐ヘキサンジオール、シトロネロールなどを挙げることができるが、かかる化合物に限定されない。
とくに、本実施形態の防虫組成物が、高い害虫忌避効果を発揮させる上では、トルアミドが好ましい。
なお、本実施形態の防虫組成物の害虫忌避成分は、これらの化合物を単独または2種以上を含有してもよい。
(水溶性溶剤)
本実施形態の防虫組成物の水溶性溶剤は、上述したように水と混ざり合う性質を有する溶剤であれば、とくに限定されない。
本実施形態の防虫組成物の水溶性溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、ブタノールなどの低級アルコールのほか、エチレングリコール、酢酸、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、エチルメチルケトン、アセトニトリル、ピリジン、ジメチルスルホキシドなどやこれらの誘導体などを挙げることができるが、これらの化合物に限定されない。
なお、本実施形態の防虫組成物の水溶性溶剤としては、これらの化合物を単独または2種以上を含むことができる。
(本実施形態の防虫組成物の粘度特性)
本実施形態の防虫組成物は、所定の粘度特性を有するものが好ましい。本実施形態の防虫組成物が所定の粘度特性を有していれば、使用時における取り扱い性を向上させることができる。例えば、本実施形態の防虫組成物を塗布した際に、本実施形態の防虫組成物が垂れ落ちすることを抑制することができる。
この垂れ落ちとは、塗布する対象物に傾斜がある場合等に、塗布物の全部または一部が重力に従って固着する前に液滴として落下したり、重力に従って流動してしまい塗布膜が不均一となる状態のことをいう。
本実施形態の防虫組成物の粘度特性は、粘度やチキソトロピー性で評価することができる。
(防虫組成物の粘度)
例えば、本実施形態の防虫組成物は、粘性において、B型粘度計を用いて、25℃、回転数6rpm、3分の条件下で測定した粘度が、100mPa・s(0.1Pa・s)以上、20,000mPa・s(20Pa・s)以下である。
上記粘度の上限値は、好ましくは35,000mPa・s(35Pa・s)以下であり、より好ましくは20,000mPa・s(20Pa・s)以下であり、さらに好ましくは10,000mPa・s(10Pa・s)以下である。
一方、粘度の下限値は、好ましくは1,000mPa・s(1Pa・s)以上であり、より好ましくは4,000mPa・s(4Pa・s)以上であり、さらに好ましくは5,000mPa・s(5Pa・s)以上である。
(防虫組成物のチキソトロピー性指数(TI値))
また例えば、本実施形態の防虫組成物は、チキソトロピー性指数(TI値)において、B型粘度計を用いて、25℃、回転数6rpmと回転数60rpm、で測定を行い、各々の粘度を算出し、各粘度比(回転数6rpmでの粘度/回転数60rpmでの粘度)から算出されるチキソトロピー性指数(TI値)が、1.0以上である。好ましくはチキソトロピー性指数(TI値)が1.5以上であり、より好ましくは3.0以上であり、さらに好ましくは4.0以上である。
本実施形態の防虫組成物のべたつきは、実施例に記載の官能評価や接触角で評価することができる。
(防虫組成物のべたつき)
例えば、官能評価としては、人の左の前腕部にサンプルを1g乗せ、右手の指で塗り広げ、腕全体にサンプルが広がる場合を〇とし、指に残るサンプル量が多く指がべたつく場合を×として評価できる。皮膚等へ塗布した際の使用感として、さらさらとした使用感が得られる観点から、べたつきがない〇評価となることが好ましい。
(防虫組成物の接触角)
本実施形態の防虫組成物の接触角は、接触角測定装置(協和界面科学(株)社製)を用い、静的液滴法により求めることができる。
サンプルの液滴2μLをテフロン(登録商標)(PTFE)シート表面に接触させて着滴したとき、その液滴をカメラで撮影し、試料面とのなす角度を付属ソフトから求めることができる。
接触角は、40°以上である。上限値としては、防虫組成物が皮膚等に濡れやすく塗布しやすくなる観点から、好ましくは110°以下であり、より好ましくは90°以下であり、さらに好ましくは70°以下である。下限値としては、防虫組成物の皮膚等へのべたつきをなくす観点から、好ましくは40°以上であり、より好ましくは50°以上であり、さらに好ましくは、54°以上である。
(スルホン化微細セルロース繊維の製造方法)
本実施形態の防虫組成物に含まれるスルホン化微細セルロース繊維の製造方法は、以下に示す製法(スルホン化パルプ製法)により製造されたスルホン化パルプを微細化処理することにより製造することができるが、かかる製法に限定されない。
このスルホン化パルプ製法の概略は、セルロースを含む繊維原料(例えば木材パルプなど)を化学処理工程に供することによって本実施形態の防虫組成物の原料となるスルホン化パルプ(以下、単にスルホン化パルプという)を製造する方法である。
この化学処理工程は、供給された繊維原料を反応液に接触(接触工程)させた後、加熱反応(反応工程)に供してセルロースの水酸基をスルホン化させるという方法である。
本明細書において、繊維原料とは、セルロース分子を含む繊維状のパルプなどをいう。パルプとは、複数のセルロース繊維が集合した繊維状の部材である。このセルロース繊維は、複数の微細繊維(例えば、ミクロフィブリル等)が集合したものである。そして、この微細繊維とは、D-グルコースがβ(1→4)グリコシド結合した鎖状の高分子であるセルロース分子(以下、単にセルロースということもある)が複数集合したものである。
なお、用いられる繊維原料は、事前に洗浄することが好ましい。例えば、200メッシュもしくは235メッシュのふるい上で水を使ってろ過脱水することで、微細繊維やゴミをふるい落とすことができ、製造時の取扱性が向上するため望ましい。言い換えれば、200メッシュや235メッシュの残渣となり得るサイズのセルロース繊維が集合した繊維がパルプである。繊維原料については詳細を後述する。
化学処理工程は、上述したようにパルプ等のセルロースを含む繊維原料のセルロース繊維に対してスルホ基を有するスルホン化剤であるスルファミン酸と尿素を接触させる接触工程と、この接触工程後のパルプに含まれるセルロース繊維の水酸基の少なくとも一部にスルホ基を置換導入する反応工程とを含んでいる。以下、各工程を順に説明する。
(接触工程)
接触工程は、セルロースを含む繊維原料に対してスルファミン酸と尿素を接触させる工程である。この接触工程は、上記接触を起こさせることができる方法であれば、とくに限定されない。
例えば、スルファミン酸と尿素を溶媒に溶解させた反応液に繊維原料(例えば、木材パルプ)を浸漬等して反応液を繊維原料に含浸させてもよいし、繊維原料に対してかかる反応液を塗布してもよいし、繊維原料に対してスルファミン酸と尿素をそれぞれ別々に塗布したり、含浸させたり、スプレー噴霧してもよい。例えば、反応液に繊維原料を浸漬させて繊維原料に反応液を含浸させる方法を採用すれば、均質にスルファミン酸と尿素を繊維原料に対して接触させ易いという利点が得られる。
なお、スルファミン酸と尿素を溶解させる溶媒は特に限定されない。例えば、水(イオン交換水や蒸留水等の純水はもちろんのこと水道水等を含む)のみの場合のほか、エタノールやメタノール、酢酸、ギ酸、2‐プロパノール、ニトロメタン、アンモニア水のようなプロトン性極性溶媒や、アセトンや、酢酸エチル、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルスルフィド(DMS)、ジメチルアセトアミド(DMA)等の非プロトン性極性溶媒や、ジエチルエーテルや、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、クロロホルム、1,4-ジオキサン等の非極性溶媒などを挙げることができ、これらを単体で使用してもよいし、2種以上を混合したものを使用してもよい。特に、スルファミン酸と尿素を溶かしやすい観点から、水が好ましい。
(反応液の混合比)
反応液に繊維原料を浸漬させて繊維原料に対して反応液を含浸させる方法を採用する場合、反応液に含まれるスルファミン酸と尿素の混合比は、とくに限定されない。例えば、後述する実施例に記載の混合比にすることができる。
例えば、スルホン化剤と尿素または/およびその誘導体は、濃度比(g/L)において、4:1(1:0.25)、2:1(1:0.5)、1:1、2:3(1:1.5)、1:2.5となるように調整することができる。
(反応液の接触量)
繊維原料に接触させる反応液の量は、繊維原料に対して反応液中のスルファミン酸と尿素が所定の割合となるように接触させる。
例えば、反応液と繊維原料を接触させた状態において、反応液に含まれるスルホン化剤が、繊維原料の乾燥質量100質量部に対して、1質量部~20,000質量部であり、反応液に含まれる尿素または/およびその誘導体が、繊維原料の乾燥質量100質量部に対して、1質量部~100,000質量部となるように調製することができる。
次工程の反応工程に供する際の反応液を含浸させた繊維原料は、例えば、反応液を含浸させたそのままの状態つまり繊維原料と反応液を接触させた状態のままで積極的な水分除去を行わない状態のものや、繊維原料と反応液を接触させた状態のものから水分を積極的に除去した状態のもの、などを挙げることができる。
後者の方法としては、例えば、反応液と繊維原料を接触させた状態から繊維原料を取り出して風乾等により自然乾燥させて調製したものや、反応液と繊維原料を接触させた状態のものを脱水ろ過して調製したもの、この脱水ろ過したものをさらに風乾して調製したもの、この脱水ろ過したものをさらに循環送風式の乾燥機を用いて乾燥し調製したもの、この脱水ろ過したものをさらに加熱式の乾燥機を用いて乾燥して調製したもの、反応液と繊維原料を接触させた状態のものを循環送風式の乾燥機や加熱式の乾燥機を用いて乾燥して調製したもの、などを含むことを意味する。
次工程の反応工程に供する際の反応液を含浸させた繊維原料は、上述した積極的な水分除去を行わない状態のものや、積極的な水分除去を行ってある程度の水分を除去した状態のままであってよい。また、乾燥により水分を除去する場合には、乾燥後の水分率が1%程度であってもとくに問題がない。
(反応工程)
上記のごとく接触工程で調製された反応液を含浸させた繊維原料は、次工程の反応工程へ供給される。
この反応工程は、接触工程から供給された繊維原料に含まれるセルロース繊維と、スルファミン酸と、尿素とを反応させて、セルロース繊維中のセルロース水酸基に対してスルファミン酸のスルホ基を置換させて、繊維原料に含まれるセルロース繊維にスルホ基を導入する工程である。つまり、この反応工程は、反応液を含浸した繊維原料に含まれるセルロース繊維中のセルロース水酸基にスルホ基を置換するスルホン化反応を行う工程である。
この反応工程は、上記繊維原料中のセルロース繊維の水酸基にスルホ基を置換するスルホン化反応が可能な方法であれば、とくに限定されない。例えば、上記繊維原料を加熱することによりスルホン化反応を促進させる方法を採用することができる。以下、この加熱方法により、スルホン化反応を行う場合を代表として説明する。
(反応工程における反応温度)
反応工程における反応温度は、繊維の熱分解や加水分解反応を抑えながら、上記繊維原料を構成するセルロース繊維にスルホ基を導入できる温度であれば、とくに限定されない。
例えば、反応工程に供給した上記繊維原料の雰囲気温度が100℃以上200℃以下となるように調整する。好ましくは雰囲気温度が120℃以上200℃以下である。加熱時における雰囲気温度が200℃よりも高くなると、繊維の熱分解が起こったり、繊維の変色の進行が早くなったりする。一方、反応温度が100℃よりも低くなると、得られるスルホン化パルプの透明性が低下する傾向にある。
したがって、得られるスルホン化パルプの透明性の観点では、反応工程における反応温度(具体的には雰囲気温度)は、100℃以上200℃以下であり、好ましくは120℃以上180℃以下であり、さらに好ましくは120℃以上160℃以下である。
なお、反応工程に用いられる加熱器などは、接触工程後の上記繊維原料を直接的または間接的に上記要件を満たしながら加熱することができるものであれば、とくに限定されない。
例えば、公知の乾燥機や、減圧乾燥機、マイクロ波加熱装置、オートクレーブ、赤外線加熱装置、熱プレス機(例えば、アズワン(株)製、AH―2003C)を用いたホットプレス法等を採用することができる。とくに、操作性の観点では、反応工程でガスが発生する可能性があるので、循環送風式の乾燥機を使用するのが好ましい。
(反応工程における反応時間)
反応工程として上記加熱方法を採用した場合の加熱時間(つまり反応時間)は、上述したようにセルロース繊維にスルホ基を適切に導入することができれば、とくに限定されない。例えば、反応工程における反応時間は、反応温度を上記範囲となるように調整した場合、1分以上となるように調整する。好ましくは、5分以上であり、より好ましくは10分以上であり、さらに好ましくは15分以上である。
反応時間が1分よりも短い場合は、セルロース繊維の水酸基に対するスルホ基の置換反応がほとんど進行していないと推察される。一方、加熱時間をあまり長くしてもスルホ基の導入量の向上が期待できない傾向にある。
したがって、反応工程として上記加熱方法を採用した場合の反応時間は、とくに限定されないが、反応時間や操作性の観点から、5分以上300分以内が好ましく、より好ましくは5分以上120分以内とするのがよい。
(繊維原料)
スルホン化パルプ製法に用いられる繊維原料は、上述したようにセルロースを含むものであれば、とくに限定されない。例えば、一般的にパルプといわれるものを用いてもよいし、ホヤや海藻などから単離されるセルロースなどを含むものを繊維原料として採用することができるが、セルロース分子で構成されたものであれば、どのようなものであってもよい。
上記パルプとしては、例えば、木材系のパルプ(以下単に木材パルプという)や、溶解パルプ、コットンリンタなどの綿系のパルプ、麦わらや、バガス、楮、三椏、麻、ケナフのほか、果物等などの非木材系のパルプ、新聞古紙、雑誌古紙やダンボール古紙などから製造された古紙系のパルプなどを挙げることができるが、これらに限定されない。なお、入手のし易さの観点から、木材パルプが繊維原料として採用しやすい。
この木材パルプには、様々な種類が存在するが、使用に際してとくに限定されない。例えば、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)などの製紙用パルプなどを挙げることができる。なお、繊維原料として、上記パルプを使用する場合に上述した種類のパルプ1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
(反応工程の後の洗浄工程)
化学処理工程における反応工程の後に、スルホ基を導入した後のスルホン化パルプを洗浄する洗浄工程を含んでもよい。
スルホ基を導入した後のスルホン化パルプは、スルホン化剤の影響により表面が酸性になっている。また、未反応の反応液も存在した状態となっている。このため、反応を確実に終了させ、余分な反応液を除去して中性状態にする洗浄工程を設ければ、取り扱い性を向上させることができるようなる。
この洗浄工程は、スルホ基を導入した後のスルホン化パルプがほぼ中性になるようにできれば、とくに限定されない。
例えば、スルホ基を導入した後のスルホン化パルプが中性になるまで純水等で洗浄するという方法を採用することができる。また、アルカリ等を用いた中和洗浄を行ってもよい。かかる中和洗浄を行う場合、アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物としては、無機アルカリ化合物、有機アルカリ化合物などを挙げることができる。そして、無機アルカリ化合物としては、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩等を挙げることができる。有機アルカリ化合物としては、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミン、脂肪族アンモニウム、芳香族アンモニウム、複素環式化合物、複素環式化合物の水酸化物などを挙げることができる。
つぎに、上記のごとくスルホン化パルプ製法を用いて調製されたスルホン化パルプを微細化処理工程に供給し、微細化することによってスルホン化微細セルロース繊維が得られる。
なお、微細化処理工程に供給する前にスルホン化パルプは、水分率(%)が平衡状態になるまで乾燥する。
(微細化処理工程)
微細化処理工程は、スルホン化パルプを微細化して所定の大きさの(例えば、ナノレベル)微細繊維にする工程である。
この微細化処理工程に用いられる処理装置は、上記機能を有するものであれば、とくに限定されない。
例えば、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー(石臼型粉砕機)、ボールミル、カッターミル、ジェットミル、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用のミキサーなどを使用することができるが、処理装置は、これらの装置に限定されるものはない。
これらのうち、材料に均等に力を加えることができ、均質化に優れているという点で、高圧ホモジナイザーを用いるのが望ましいが、かかる装置に限定されない。
微細化処理工程において、高圧ホモジナイザーを用いる場合、上述した製法で得られたスルホン化パルプを水と水溶性溶剤の混合溶液に分散させた状態で供給する。なお、この混合溶液にスルホン化パルプを分散させた状態のものをスラリーという。
このスラリーのスルホン化パルプの固形分濃度は、とくに限定されない。例えば、このスラリーのスルホン化パルプの固形分濃度が、0.1質量%~20質量%となるように調整した溶液を高圧ホモジナイザー等の処理装置に供給すればよい。
例えば、スルホン化パルプの固形分濃度が0.5質量%となるように調整したスラリーを高圧ホモジナイザー等の処理装置に供給した場合、同じ固形分濃度のスルホン化微細セルロース繊維が混合溶液に分散した状態の分散体を得ることができる。
なお、上記例では、スルホン化パルプを水に分散させたスラリーを微細化処理する場合について説明したが、水以外に他の溶剤等を混合してもよい。
例えば、微細化処理工程において、上記スルホン化パルプのスラリーに水溶性溶剤を混合したものを微細化処理してもよい。具体的には、水溶性溶剤とスルホン化パルプと水を所定の割合で混合した状態のスラリーを処理装置に供給して微細化処理を行ってもよい。この場合、微細化処理後に得られる分散体中の水と水溶性溶剤とスルホン化微細セルロース繊維の配合割合は、処理装置に供給した水と水溶性溶剤とスルホン化パルプの配合割合と同様となる。つまり、微細化処理と同時に水と水溶性溶剤とスルホン化微細セルロース繊維が所定の割合で混合した分散体を得ることができる。
また、微細化処理に供給するスルホン化パルプのスラリーには、上記水溶性溶剤以外にも、増粘剤や紫外線吸収剤、紫外線分散剤、保湿剤などを混合してもよい。
(本実施形態の防虫組成物の使用方法)
本実施形態の防虫組成物の使用方法としては、とくに限定されない。
例えば、防虫組成物をスプレーなどで霧状に噴霧してもよいし、ローションなどのように液体状にして塗布してもよいし、コットンや布などの繊維状やシート状の支持体に塗布、浸漬させたものを貼付(例えば、シール状にして使用)してもよいし、かかる支持体を携帯してもよい。
塗布、噴霧、または貼付する対象は、哺乳動物であればとくに限定されない。例えば、人や犬、猫などの愛玩動物、牛などの家畜等の哺乳動物を対象にすることができる。また、防虫組成物をこれら哺乳動物の皮膚に直接塗布してもよいし、衣類等に塗布してもよい。とくに、皮膚に塗布することにより虫さされなどを適切に回避しやすくなる。なお、防虫組成物を塗布する部位もとくに限定されない。例えば、露出しやすい手や足などはもちろん顔面や首などに塗布することができる。
なお、本実施形態の防虫組成物は、上述したように施用対象として哺乳動物を挙げたが、この他に、人や愛玩動物、家畜などの居住スペースに塗布等してもよい。居住スペースとしては、例えば、部屋の壁やカーテン、家具などの屋内のほか、外壁などにも使用することが可能である。
とくに、外用剤として使用する場合には、本実施形態の防虫組成物を含有させた防虫剤(本実施形態の防虫剤)として使用するのが好ましい。
具体的には、本実施形態の防虫剤は、本実施形態の防虫組成物を含有した外用剤であり、剤形としてスプレー剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、リニメント剤やローション剤等の液剤、フォーム剤、水を含む基剤を用いる貼付剤であるパップ剤等から選択することができる。なお、上記の記載のとおり本実施形態の防虫組成物の効果を発揮させることができる用途であれば、これらの剤に限定されないのはいうまでもない。また、取り扱い性の観点では、スプレー剤、ゲル剤、クリーム剤、液剤が好ましく、より好ましくはスプレー剤(特にポンプスプレー剤)、ゲル剤である。
本実施形態の防虫組成物、防虫剤は、上記成分以外にも他の成分(化合物)を含有してもよい。
例えば、皮膚に対する湿潤性を向上させるという観点では、多価アルコールを含有させることができる。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン等を挙げることができる。これらの化合物は、それぞれ単独で含有してもよく、2種以上を適宜含有してもよい。また、太陽光線に暴露されるような環境で使用する場合には、例えば、紫外線反射材料を含有させてもよい。
また、香料、酸化防止剤、防腐剤、除菌剤、ビタミン類、pH調整剤などを目的に応じて適宜配合してもよい。
つぎに、実施例によりさらに詳細に本発明を説明する。ただし、本発明は、以下の実施例によってなんら制限を受けるものではない。
<スルホン化微細セルロース繊維分散液Aの調製>
まず、本発明の防虫組成物(実施例)に使用するスルホン化微細セルロース繊維分散液Aを以下のとおり調製した。
繊維原料として、丸住製紙製の針葉樹クラフトパルプ(NBKP)シート(平均繊維長が2.6mm)を105℃で乾燥したものを使用した。以下では、実験に供したNBKPを単にパルプとして説明する。
(化学処理工程)
供給されたパルプを以下のように調製した反応液に加え、薬液を含浸し、スラリー状にした。
(反応液の調製)
スルホン化剤と尿素および/またはその誘導体が以下の濃度となるように調製した。
実験ではスルホン化剤として、スルファミン酸(純度98.5%、扶桑化学工業製)を使用し、尿素またはその誘導体として、尿素(純度99%、和光純薬工業製、型番;特級試薬)を使用した。
反応液の調製方法の一例を以下に示す。
両者の混合比は、濃度比(g/L)において、1:1.5となるように混合して純水溶液を調製した。
容器に純水100mlを加え、この容器にスルファミン酸20g、尿素30gを加えて、スルファミン酸と尿素が、スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))=200/300の反応液を調製した。この反応液には、尿素が、スルファミン酸100質量部に対して150質量部となるように混合されている。
(反応液とパルプの接触方法)
調製した反応液に対してパルプ(固形分質量)を加えた。このとき、反応液中の薬品とパルプ(固形分質量)の比率が、パルプ:薬品=1:1となるようにスラリーを調整した。
実験では、スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))が200/300の反応液の場合、パルプ1.0gに対して、反応液を約3.0g加え、薬品を含浸させた。
反応液にパルプを添加して調製したスラリーを30分間手でもみほぐし、パルプに反応液を均一に含浸させた。この反応液を含浸させパルプを、吸引ろ過器し、水滴が落ちなくなるまで、余剰の薬液を除去した。その後、乾燥機(いすゞ製作所製、型番;VTR-115)に入れた。乾燥機の恒温槽の温度は、105℃に設定した。このパルプは、水分率が平衡状態になるまで乾燥した。そして、この加熱反応の前に乾燥処理を行った状態のパルプを次工程の加熱反応の工程に供給した。
加熱反応の工程へ供給する際の反応液を接触させたパルプの水分率は、下記式を用いて算出した。
また、「水分率が平衡状態」は、以下のようにして評価した。
まず、恒温槽の温度を105℃に設定した上記乾燥機で2時間乾燥した。その後、連続して測定した2回の質量の変化量が乾燥開始時の質量に対して10%以内となった状態を平衡状態にあるとした(ただし、2回目の質量の測定は1回目に要した乾燥時間の半分以上とした)。

水分率(%)=100-(パルプの固形分質量(g)/反応液に接触させた後の水分率測定時におけるパルプ質量(g))×100

パルプの固形分質量(g)とは、測定対象のパルプ自体の固形分質量をいい、本実験では実験に供した乾燥パルプ2gが相当する。なお、乾燥パルプの質量は、上記乾燥機を用いて温度105℃、2時間乾燥したものを測定した。
本実験では、加熱反応へ供給する前に乾燥機を用いて乾燥させた乾燥後のパルプ質量が、反応液に接触させた後の水分率測定時におけるパルプ質量(g)に相当する。
実験では、乾燥後のパルプの水分率は、数%~10%程度(乾燥温度105℃)であった。つまり、本実験では、この乾燥工程において、乾燥後のパルプの水分率が1%以下(いわゆる絶乾状態)にならないように調製した。
上記の反応液を含浸させたパルプを乾燥させる工程が、本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維の製造方法の化学処理工程における乾燥工程に相当する。
(加熱反応)
ついで、この反応液を含浸させたパルプを乾燥させた乾燥パルプを、次工程の加熱反応の工程に供して加熱反応を行った。
加熱反応には、乾燥機(いすゞ製作所製、型番;VTR―115)を用いた。
加熱反応の反応条件は以下の通りとした。
恒温槽の温度:120℃、加熱時間:25分
上記の加熱反応が、本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維の製造方法の化学処理工程における反応工程に相当する。
上記の加熱反応における反応条件の温度が、本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維の製造方法の化学処理工程における反応工程の反応温度に相当する。
上記の加熱反応における反応条件の加熱時間が、本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維の製造方法の化学処理工程における反応工程の反応時間に相当する。
加熱反応後、反応させたパルプを中性になるまで純水で洗浄して、スルファミン酸/尿素処理パルプを調製した。
上記の反応させたパルプを中性になるまで純水で洗浄する工程が、本実施形態のスルホン化微細セルロース繊維の製造方法の化学処理工程における洗浄工程に相当する。
上記の調製されたスルファミン酸/尿素処理パルプを構成する反応パルプ繊維が、本実施形態にいうスルホン化パルプ繊維に相当する。
(微細化処理工程)
ついで、化学処理工程により調製したスルファミン酸/尿素処理パルプを次工程の微細化処理工程に供し、微細セルロース繊維(図中ではCNFと記載)を調製した。
微細化処理工程では、スルファミン酸/尿素処理パルプのパルプスラリーを高圧ホモジナイザー(NanoVater、吉田機械興業製、L-ES008-D10)に供して、スルホ基を導入した微細セルロース繊維(実験結果図では単にCNFで表す)を含有する分散液(スルホン化微細セルロース繊維分散液A)を調製した(図1)。
処理条件:設定圧力100MPa、パス数5回
(スルホン化微細セルロース繊維分散液A1)
スルホン化微細セルロース繊維分散液A1の調製方法を以下に示す。
微細化処理工程において、スルファミン酸/尿素処理パルプと純水を混合して、スルファミン酸/尿素処理パルプの固形分濃度が1.0質量%にした調整したパルプスラリーを調製した。つまり、パルプスラリーが、組成比において、スルファミン酸/尿素処理パルプの1.0質量部に対して、純水が99.0質量部となるように調整した。
ついで、このパルプスラリーを高圧ホモジナイザー(上記条件下)に供して、スルホン化微細セルロース繊維分散液A1を調製した。
スルホン化微細セルロース繊維分散液A1は、スルホン化微細セルロース繊維と純水の組成比が、スルホン化微細セルロース繊維1.0質量部に対して純水が99.0質量部である。つまり、スルホン化微細セルロース繊維分散液A1は、スルホン化微細セルロース繊維の固形分濃度が1.0質量%の分散液である。
スルホン化微細セルロース繊維分散液A1中のスルホン化微細セルロース繊維の硫黄導入量は、1.0mmol/gであった。
(スルホン化微細セルロース繊維分散液A2)
スルホン化微細セルロース繊維分散液A2の調製方法を以下に示す。以下に示す操作以外はスルホン化微細セルロース繊維分散液A1と同様にして実施した。
微細化処理工程において、スルファミン酸/尿素処理パルプと純水とエタノール(富士フイルム和光純薬社製、エタノール(99.5)試薬特級、純度99.5%、型番 特級試薬)を混合してパルプスラリーを調製した。このパルプスラリーは、スルファミン酸/尿素処理パルプと純水とエタノールの組成比が、スルファミン酸/尿素処理パルプの1.0質量部に対して、純水が79.0質量部、エタノールが20.0質量部となるように調整した。
高圧ホモジナイザーの条件は、スルホン化微細セルロース繊維分散液A1の調製時と同様にした。
スルホン化微細セルロース繊維分散液A2は、スルホン化微細セルロース繊維と純水とエタノールの組成比が、スルホン化微細セルロース繊維の1.0質量部に対して、純水が79.0質量部、エタノールが20.0質量部である。
スルホン化微細セルロース繊維分散液A2中のスルホン化微細セルロース繊維の硫黄導入量は、1.0mmol/gであった。
(スルホン化微細セルロース繊維分散液A3)
スルホン化微細セルロース繊維分散液A3の調製方法を以下に示す。以下に示す操作以外はスルホン化微細セルロース繊維分散液A2と同様にして実施した。
微細化処理工程において、スルファミン酸/尿素処理パルプと純水とエタノールを混合してパルプスラリーを調製した。このパルプスラリーは、スルファミン酸/尿素処理パルプと純水とエタノールの組成比が、スルファミン酸/尿素処理パルプの1.0質量部に対して、純水が59.0質量部、エタノールが40.0質量部となるように調整した。
高圧ホモジナイザーの条件は、設定圧力100MPa、パス数10回とした。
スルホン化微細セルロース繊維分散液A3は、スルホン化微細セルロース繊維と純水とエタノールの組成比が、スルホン化微細セルロース繊維の1.0質量部に対して、純水が59.0質量部、エタノールが40.0質量部である。
スルホン化微細セルロース繊維分散液A3中のスルホン化微細セルロース繊維の硫黄導入量は、1.0mmol/gであった。
(スルホン化微細セルロース繊維分散液A4)
スルホン化微細セルロース繊維分散液A4の調製方法を以下に示す。以下に示す操作以外はスルホン化微細セルロース繊維分散液A2と同様にして実施した。
微細化処理工程において、スルファミン酸/尿素処理パルプと純水とエタノールを混合してパルプスラリーを調製した。このパルプスラリーは、スルファミン酸/尿素処理パルプと純水とエタノールの組成比が、スルファミン酸/尿素処理パルプの1.0質量部に対して、純水が59.0質量部、エタノールが40.0質量部となるように調整した。
高圧ホモジナイザーの条件は、スルホン化微細セルロース繊維分散液A1の調製時と同様にした。
スルホン化微細セルロース繊維分散液A4は、スルホン化微細セルロース繊維と純水とエタノールの組成比が、スルホン化微細セルロース繊維の1.0質量部に対して、純水が59.0質量部、エタノールが40.0質量部である。
高圧ホモジナイザーの条件は、スルホン化微細セルロース繊維分散液A1の調製時と同様にした。
スルホン化微細セルロース繊維分散液A4中のスルホン化微細セルロース繊維の硫黄導入量は、1.0mmol/gであった。
(スルホン化微細セルロース繊維分散液A5)
スルホン化微細セルロース繊維分散液A5の調製方法を以下に示す。以下に示す操作以外はスルホン化微細セルロース繊維分散液A1と同様にして実施した。
化学処理工程における反応液を以下のように調製した。
容器に純水187.5mlを加え、この容器にスルファミン酸37.5g、尿素37.5gを加えて、スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))が200/200(1:1)の反応液を調製した。この反応液には、尿素が、スルファミン酸100質量部に対して100質量部となるように混合されている。調製した反応液に対してパルプ(固形分質量)を加えた。このとき、反応液中の薬品とパルプ(固形分質量)の比率が、パルプ:薬品=1:1.5となるようにスラリーを調整した。
実験では、スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))が200/200(1:1)の反応液の場合、パルプ1.0gに対して、反応液を約5.3g加え、薬品を含浸させた。
得られたスルファミン酸/尿素処理パルプは、スルホン化微細セルロース繊維分散液A1の調製時と同様に微細化処理工程へ供した。
高圧ホモジナイザーの条件は、スルホン化微細セルロース繊維分散液A1の調製時と同様にした。
スルホン化微細セルロース繊維分散液A5は、スルホン化微細セルロース繊維と純水の組成比が、スルホン化微細セルロース繊維1.0質量部に対して純水が99.0質量部である。
スルホン化微細セルロース繊維分散液A5中のスルホン化微細セルロース繊維の硫黄導入量は、1.3mmol/gであった。
(スルホン化微細セルロース繊維分散液A6)
スルホン化微細セルロース繊維分散液A6の調製方法を以下に示す。以下に示す操作以外はスルホン化微細セルロース繊維分散液A5と同様にして実施した。
微細化処理工程において、スルファミン酸/尿素処理パルプと純水とエタノールを混合してパルプスラリーを調製した。このパルプスラリーは、スルファミン酸/尿素処理パルプと純水とエタノールの組成比が、スルファミン酸/尿素処理パルプの1.0質量部に対して、純水が79.0質量部、エタノールが20.0質量部となるように調整した。
高圧ホモジナイザーの条件は、スルホン化微細セルロース繊維分散液A1の調製時と同様にした。
スルホン化微細セルロース繊維分散液A6は、スルホン化微細セルロース繊維と純水とエタノールの組成比が、スルホン化微細セルロース繊維の1.0質量部に対して、純水が79.0質量部、エタノールが20.0質量部である。
スルホン化微細セルロース繊維分散液A6中のスルホン化微細セルロース繊維の硫黄導入量は、1.3mmol/gであった。
(スルホン化微細セルロース繊維分散液A7)
スルホン化微細セルロース繊維分散液A7の調製方法を以下に示す。以下に示す操作以外はスルホン化微細セルロース繊維分散液A6と同様にして実施した。
微細化処理工程において、スルファミン酸/尿素処理パルプと純水とエタノールを混合してパルプスラリーを調製した。このパルプスラリーは、スルファミン酸/尿素処理パルプと純水とエタノールの組成比が、スルファミン酸/尿素処理パルプの1.0質量部に対して、純水が59.0質量部、エタノールが40.0質量部となるように調整した。
高圧ホモジナイザーの条件は、スルホン化微細セルロース繊維分散液A1の調製時と同様にした。
スルホン化微細セルロース繊維分散液A7は、スルホン化微細セルロース繊維と純水とエタノールの組成比が、スルホン化微細セルロース繊維の1.0質量部に対して、純水が59.0質量部、エタノールが40.0質量部である。
スルホン化微細セルロース繊維分散液A7中のスルホン化微細セルロース繊維の硫黄導入量は、1.3mmol/gであった。
(スルホン化微細セルロース繊維分散液A8)
スルホン化微細セルロース繊維分散液A8の調製方法を以下に示す。以下に示す操作以外はスルホン化微細セルロース繊維分散液A1と同様にして実施した。
スルホン化微細セルロース繊維分散液A8の調製では、化学処理工程を以下に示すように3回行った。
(1回目の化学処理工程)
1回目の化学処理工程は、スルファミン酸と尿素の混合比が、濃度比(g/L)において、1:2となるように混合して純水溶液を調製した。
容器に純水125mlを加え、この容器にスルファミン酸25g、尿素50gを加えて、スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))が200/400(1:2)の反応液を調製した。この反応液には、尿素が、スルファミン酸100質量部に対して200質量部となるように混合されている。
調製した反応液に対してパルプ(固形分質量)を加えた。このとき、反応液中の薬品とパルプ(固形分質量)の比率が、パルプ:薬品=1:1となるようにスラリーを調整した。
実験では、スルファミン酸/尿素比((g/L)/(g/L))が200/400(1:2)の反応液の場合、パルプ1.0gに対して、反応液を約2.7g加え、薬品を含浸させた。
以降は、スルホン化微細セルロース繊維分散液A1と同様にして実施して、1回目のスルファミン酸/尿素処理パルプを調製した。
(2回目の化学処理工程)
1回目の化学処理工程後のスルファミン酸/尿素処理パルプに対して、2回目の化学処理工程を行った。つまり、1回目の化学処理工程後のスルファミン酸/尿素処理パルプを1回目の化学処理工程と同様の条件で処理して2回目の化学処理工程後のスルファミン酸/尿素処理パルプを調製した。
(3回目の化学処理工程)
2回目の化学処理工程後のスルファミン酸/尿素処理パルプに対して、スルホン化微細セルロース繊維分散液A5と同様の化学処理工程を実施して、3回目の化学処理工程を行いスルファミン酸/尿素処理パルプを調製した。
3回目の化学処理工程を行って得られたスルファミン酸/尿素処理パルプを微細化処理工程へ供した。
微細化処理工程の操作は、スルホン化微細セルロース繊維分散液A1と同様に実施した。
微細化処理工程において、3回目の化学処理工程を行って得られたスルファミン酸/尿素処理パルプと純水を混合してパルプスラリーを調製した。このパルプスラリーは、スルファミン酸/尿素処理パルプと純水の組成比が、スルファミン酸/尿素処理パルプの1.0質量部に対して、純水が99.0質量部となるように調整した。
高圧ホモジナイザーの条件は、スルホン化微細セルロース繊維分散液A1の調製時と同様にした。
スルホン化微細セルロース繊維分散液A8は、スルホン化微細セルロース繊維と純水の組成比が、スルホン化微細セルロース繊維1.0質量部に対して純水が99.0質量部である。
スルホン化微細セルロース繊維分散液A8中のスルホン化微細セルロース繊維の硫黄導入量は、2.0mmol/gであった。
(スルホン化微細セルロース繊維分散液A9)
スルホン化微細セルロース繊維分散液A9の調製方法を以下に示す。以下に示す操作以外はスルホン化微細セルロース繊維分散液A8と同様にして実施した。
微細化処理工程において、3回目の化学処理工程を行って得られたスルファミン酸/尿素処理パルプと純水とエタノールを混合してパルプスラリーを調製した。このパルプスラリーは、スルファミン酸/尿素処理パルプと純水とエタノールの組成比が、スルファミン酸/尿素処理パルプの1.0質量部に対して、純水が79.0質量部、エタノールが20.0質量部となるように調整した。
高圧ホモジナイザーの条件は、スルホン化微細セルロース繊維分散液A1の調製時と同様にした。
スルホン化微細セルロース繊維分散液A9は、スルホン化微細セルロース繊維と純水とエタノールの組成比が、スルホン化微細セルロース繊維の1.0質量部に対して、純水が79.0質量部、エタノールが20.0質量部である。
スルホン化微細セルロース繊維分散液A9中のスルホン化微細セルロース繊維の硫黄導入量は、2.0mmol/gであった。
(スルホン化微細セルロース繊維分散液A10)
スルホン化微細セルロース繊維分散液A10の調製方法を以下に示す。以下に示す操作以外はスルホン化微細セルロース繊維分散液A9と同様にして実施した。
微細化処理工程において、3回目の化学処理工程を行って得られたスルファミン酸/尿素処理パルプと純水とエタノールを混合してパルプスラリーを調製した。このパルプスラリーは、スルファミン酸/尿素処理パルプと純水とエタノールの組成比が、スルファミン酸/尿素処理パルプの1.0質量部に対して、純水が59.0質量部、エタノールが40.0質量部となるように調整した。
高圧ホモジナイザーの条件は、スルホン化微細セルロース繊維分散液A1の調製時と同様にした。
スルホン化微細セルロース繊維分散液A10は、スルホン化微細セルロース繊維と純水とエタノールの組成比が、スルホン化微細セルロース繊維の1.0質量部に対して、純水が59.0質量部、エタノールが40.0質量部である。
スルホン化微細セルロース繊維分散液A10中のスルホン化微細セルロース繊維の硫黄導入量は、2.0mmol/gであった。
(スルホン化微細セルロース繊維分散液A11)
スルホン化微細セルロース繊維分散液A11の調製方法を以下に示す。以下に示す操作以外はスルホン化微細セルロース繊維分散液A9と同様にして実施した。
微細化処理工程において、3回目の化学処理工程を行って得られたスルファミン酸/尿素処理パルプと純水とエタノールを混合してパルプスラリーを調製した。このパルプスラリーは、スルファミン酸/尿素処理パルプと純水とエタノールの組成比が、スルファミン酸/尿素処理パルプの1.0質量部に対して、純水が39.0質量部、エタノールが60.0質量部となるように調整した。
高圧ホモジナイザーの条件は、スルホン化微細セルロース繊維分散液A1の調製時と同様にした。
スルホン化微細セルロース繊維分散液A11は、スルホン化微細セルロース繊維と純水とエタノールの組成比が、スルホン化微細セルロース繊維の1.0質量部に対して、純水が39.0質量部、エタノールが60.0質量部である。
スルホン化微細セルロース繊維分散液A10中のスルホン化微細セルロース繊維の硫黄導入量は、2.0mmol/gであった。
調製したスルホン化微細セルロース繊維分散液Aの物性を以下の測定方法で評価した。
(電気伝導度測定による硫黄導入量の測定)
スルホ基に起因する硫黄導入量は、調製された微細セルロース繊維をイオン交換樹脂で処理した後、純水酸化ナトリウム純水溶液による滴定によって測定した。
イオン交換樹脂による処理では、0.2質量%の微細セルロース繊維含有スラリー100mLに体積比で1/10の強酸性イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、アンバージェット1024;コンディショニング済)を加え、1時間振とう処理を行った。その後、目開き200μmのメッシュ上に注ぎ、樹脂とスラリーを分離した。
アルカリを用いた滴定では、イオン交換樹脂による処理後の微細セルロース繊維含有スラリーに、0.5Nの純水酸化ナトリウム純水溶液を10μL~50μLずつ加えながら、電気伝導度の値の変化を計測し、縦軸に電気伝導度、横軸に純水酸化ナトリウム滴定量としてプロットし曲線を得て、得られた曲線から変曲点を確認した。
この変曲点での純水酸化ナトリウム滴定量がスルホ基量に相当する。このため、この変曲点の純水酸化ナトリウム量を測定に供した微細セルロース繊維含固形分量で除することで、微細セルロース繊維中のスルホ基量すなわちスルホ基に起因する硫黄導入量を測定した。
(SPMを用いた繊維形態の観察および繊維幅の測定)
高圧ホモジナイザー処理後の微細セルロース繊維を純水で固形分濃度0.001~0.005質量%に調製し、PEI(ポリエチレンイミン)をコーティングしたシリカ基盤上にスピンコートを行った。
このシリカ基盤上の微細セルロース繊維の観察を、走査型プローブ顕微鏡(島津製作所製、型番;SPM―9700)を用いて行った。
繊維幅および繊維長の測定は、観察画像中の繊維をランダムに20本選び測定した。
(スルホン化微細セルロース繊維分散液Aのヘイズ値の測定および全光線透過率の測定)
スルホン化微細セルロース繊維分散液Aのヘイズ値の測定および全光線透過率の測定には、微細セルロース繊維の固形分濃度が所定の濃度となるように調製した測定用スラリーを用いた。各スルホン化微細セルロース繊維分散液Aの測定用スラリーの調製方法は後述する。
ヘイズ値および全光線透過率の測定には、分光ヘーズメーター(日本電色工業社製、型番;SH-7000)を用いた。
測定用スラリーの光透過度の測定には、上記分光ヘーズメーターのオプションのガラスセル(部品番号:2277、角セル、光路長10mm×幅40×高さ55)を用いた。
ブランク測定には、上記分光ヘーズメーターのガラスセルに所定の溶液を入れて測定した。得られた値をブランク測定値とした。
ヘイズ値および全光線透過率の測定は、測定値からブランク測定値を引くことにより求められる。
測定条件:光源D65、視野角2°、測定波長の範囲380~780nm
参照したJIS条件:JIS K 7105
全光線透過率(%)およびヘイズ値(%)は、分光ヘーズメーターのコントロールユニット(型番CU-II、Ver2.00.02)により得られた数値を用いた。
各スルホン化微細セルロース繊維分散液Aの測定用スラリーを以下に示すとおり調製した。
(スルホン化微細セルロース繊維分散液A1の測定用スラリー)
スルホン化微細セルロース繊維分散液A1を純水で希釈して微細セルロース繊維の固形分濃度が0.5%となるように調製して測定用スラリーとした。
ブランク測定には、純水を用いた。
(スルホン化微細セルロース繊維分散液A2の測定用スラリー)
スルホン化微細セルロース繊維分散液A2から所定量を分取し、以下のブランク測定に使用した混合溶液と同じ溶液で希釈して測定用スラリーとした。測定用スラリーの微細セルロース繊維の固形分濃度は、0.5質量%となるように調製した。
ブランク測定には、純水とエタノールの混合溶液(質量比において、純水80質量%、エタノール20質量%)を用いた。
(スルホン化微細セルロース繊維分散液A3の測定用スラリー)
スルホン化微細セルロース繊維分散液A3から所定量を分取し、以下のブランク測定に使用した混合溶液と同じ溶液で希釈して測定用スラリーとした。測定用スラリーの微細セルロース繊維(スルホン化微細セルロース繊維、以下同様)の固形分濃度は、0.5質量%となるように調製した。
ブランク測定には、純水とエタノールの混合溶液(質量比において、純水60質量%、エタノール40質量%)を用いた。
(スルホン化微細セルロース繊維分散液A4の測定用スラリー)
スルホン化微細セルロース繊維分散液A4から所定量を分取し、以下のブランク測定に使用した混合溶液と同じ溶液で希釈して測定用スラリーとした。測定用スラリーの微細セルロース繊維の固形分濃度は、0.5質量%となるように調製した。
ブランク測定には、純水とエタノールの混合溶液(質量比において、純水60質量%、エタノール40質量%)を用いた。
(スルホン化微細セルロース繊維分散液A5の測定用スラリー)
スルホン化微細セルロース繊維分散液A5を純水で希釈して微細セルロース繊維の固形分濃度が0.5%となるように調製して測定用スラリーとした。
ブランク測定には、純水を用いた。
(スルホン化微細セルロース繊維分散液A6の測定用スラリー)
スルホン化微細セルロース繊維分散液A6から所定量を分取し、以下のブランク測定に使用した混合溶液と同じ溶液で希釈して測定用スラリーとした。測定用スラリーの微細セルロース繊維の固形分濃度は、0.5質量%となるように調製した。
ブランク測定には、純水とエタノールの混合溶液(質量比において、純水80質量%、エタノール20質量%)を用いた。
(スルホン化微細セルロース繊維分散液A7の測定用スラリー)
スルホン化微細セルロース繊維分散液A7から所定量を分取し、以下のブランク測定に使用した混合溶液と同じ溶液で希釈して測定用スラリーとした。測定用スラリーの微細セルロース繊維の固形分濃度は、0.5質量%となるように調製した。
ブランク測定には、純水とエタノールの混合溶液(質量比において、純水60質量%、エタノール40質量%)を用いた。
(スルホン化微細セルロース繊維分散液A8の測定用スラリー)
スルホン化微細セルロース繊維分散液A8を純水で希釈して微細セルロース繊維の固形分濃度が0.5%となるように調製して測定用スラリーとした。
ブランク測定には、純水を用いた。
(スルホン化微細セルロース繊維分散液A9の測定用スラリー)
スルホン化微細セルロース繊維分散液A9から所定量を分取し、以下のブランク測定に使用した混合溶液と同じ溶液で希釈して測定用スラリーとした。測定用スラリーの微細セルロース繊維の固形分濃度は、0.5質量%となるように調製した。
ブランク測定には、純水とエタノールの混合溶液(質量比において、純水80質量%、エタノール20質量%)を用いた。
(スルホン化微細セルロース繊維分散液A10の測定用スラリー)
スルホン化微細セルロース繊維分散液A10から所定量を分取し、以下のブランク測定に使用した混合溶液と同じ溶液で希釈して測定用スラリーとした。測定用スラリーの微細セルロース繊維の固形分濃度は、0.5質量%となるように調製した。
ブランク測定には、純水とエタノールの混合溶液(質量比において、純水60質量%、エタノール40質量%)を用いた。
(スルホン化微細セルロース繊維分散液A11の測定用スラリー)
スルホン化微細セルロース繊維分散液A11から所定量を分取し、以下のブランク測定に使用した混合溶液と同じ溶液で希釈して測定用スラリーとした。測定用スラリーの微細セルロース繊維の固形分濃度は、0.5質量%となるように調製した。
ブランク測定には、純水とエタノールの混合溶液(質量比において、純水40質量%、エタノール60質量%)を用いた。
(粘度の測定)
調製した測定用スラリーを、それぞれ密閉し24時間室温で静置した。静置後、60gをスクリュー管瓶(アズワン社製、ラボランスクリュー管瓶 110mL)へ分取して、B型粘度計(英弘精機(株)製、DV2T)を用いて粘度を測定した。
粘度測定の測定条件は、以下のとおりとした。
測定条件:回転数6rpmおよび60rpm、測定温度25℃、測定時間3分、スピンドルはRV-06、データの記録方法はシングルポイント
(TI値の測定)
チキソトロピー性指数(TI値)は、以下のように測定した。
TI値の算出は、上述のB型粘度計を用いて、回転数6rpmと60rpmで測定を行い、各々の粘度を下記式より算出した。その他条件は上述のとおりとした。

TI値=(回転数6rpmでの粘度)/(回転数60rpmでの粘度)
図1には、スルホン化微細セルロース繊維分散液A(A1~A11)の各物性値を示す。
(防虫組成物の調製)
つぎに、調製したスルホン化微細セルロース繊維分散液Aを使用して、害虫忌避成分を含有する本発明の防虫組成物(実施例)を以下のとおり調製した(図2、図3)。
実験では、害虫忌避成分として、トルアミド(東京化成工業社製、N,N-ジエチル-m-トルアミド、型番D0097、純度>98%(GC))、イカリジン(富士フイルム和光純薬社製、製品コードQV-5734)を使用した。
(実施例1)
防虫組成物(実施例1)は、害虫忌避成分100質量部に対して、スルホン化微細セルロース繊維が10質量部、純水が1090質量部、エタノールが800質量部となるように調製した。
防虫組成物(実施例1)の調製には、スルホン化微細セルロース繊維分散液A3を使用した。
スクリュー管瓶に、スルホン化微細セルロース繊維分散液A3(30g)、純水15g、エタノール12gを入れ、5分間強く撹拌した。その後、トルアミド3gを入れ、再度5分間強く撹拌し、スルホン化微細セルロース繊維の固形分濃度が0.5%の防虫組成物(実施例1)を得た。
防虫組成物(実施例1)の物性(ヘイズ値、全光線透過率、粘度、TI値)は、以下のとおり行った。
(防虫組成物のヘイズ値および全光線透過率の測定)
ブランク測定に、純水とエタノールとトルアミドの混合溶液(純水55質量%、エタノール40質量%、トルアミド5質量%)を使用した以外、スルホン化微細セルロース繊維分散液A3と同様に行った。
(防虫組成物の粘度測定)
スルホン化微細セルロース繊維分散液A1と同様に行った。
(防虫組成物のTI値の測定)
スルホン化微細セルロース繊維分散液A1と同様に行った。
(べたつきの測定)
べたつきの測定は、人の左の前腕部にサンプルを1g乗せ、右手の指で広げ塗り、指を離すという動作を繰り返して実施した。この時に、腕全体にサンプルが広がる場合を〇とし、指に残るサンプル量が多く、指がべたつく場合を×とした。
(接触角の測定)
べたつきは、接触角測定でも評価した。
接触角は、接触角測定装置(協和界面科学(株)社製)を用い、静的液滴法により測定した。具体的には、サンプルの液滴2μLをテフロン(登録商標)(PTFE)シート表面に接触させて着滴したとき、その液滴をカメラで撮影し、試料面とのなす角度を付属ソフトから求めた。なお、評価結果は、図5に示す。
(実施例2)
防虫組成物(実施例2)は、害虫忌避成分100質量部に対して、スルホン化微細セルロース繊維が5質量部、純水が495質量部、エタノールが400質量部となるように調製した。
防虫組成物(実施例2)の調製には、スルホン化微細セルロース繊維分散液A1を使用した。
スクリュー管瓶に、スルホン化微細セルロース繊維分散液A1(30g)、エタノール24gを入れ、5分間強く撹拌した。その後、トルアミド6gを入れ、再度5分間強く撹拌し、スルホン化微細セルロース繊維の固形分濃度が0.5%の防虫組成物(実施例2)を得た。
防虫組成物(実施例2)の物性(ヘイズ値、全光線透過率、粘度、TI値)は、ヘイズ値および全光線透過率の測定において、ブランク測定に純水とエタノールとトルアミドの混合溶液(純水を50質量%、エタノールを40質量%、トルアミドを10質量%)を用いた以外、実施例1と同様に行った。
(実施例3)
防虫組成物(実施例3)は、害虫忌避成分100質量部に対して、スルホン化微細セルロース繊維が5質量部、純水が495質量部、エタノールが400質量部となるように調製した。
防虫組成物(実施例3)の調製には、スルホン化微細セルロース繊維分散液A4を使用した。
スクリュー管瓶に、スルホン化微細セルロース繊維分散液A4(30g)、純水12g、エタノール12gを入れ、5分間強く撹拌した。その後、トルアミド6gを入れ、再度5分間強く撹拌し、スルホン化微細セルロース繊維の固形分濃度が0.5%の防虫組成物(実施例3)を得た。
防虫組成物(実施例3)の物性(ヘイズ値、全光線透過率、粘度、TI値)は、ヘイズ値および全光線透過率の測定において、ブランク測定に純水とエタノールとトルアミドの混合溶液(純水を50質量%、エタノールを40質量%、トルアミドを10質量%)を用いた以外、実施例1と同様に行った。
(実施例4)
防虫組成物(実施例4)は、スルホン化微細セルロース繊維分散液A3を使用した以外は、実施例3と同様に実施した。
(実施例5)
防虫組成物(実施例5)は、害虫忌避成分100質量部に対して、スルホン化微細セルロース繊維が3質量部、純水が198質量部、エタノールが200質量部となるように調製した。
防虫組成物(実施例5)の調製には、スルホン化微細セルロース繊維分散液A3を使用した。
スクリュー管瓶に、スルホン化微細セルロース繊維分散液A4(30g)、純水6g、エタノール12gを入れ、5分間強く撹拌した。その後、トルアミド12gを入れ、再度5分間強く撹拌し、スルホン化微細セルロース繊維の固形分濃度が0.5%の防虫組成物(実施例5)を得た。
防虫組成物(実施例5)の物性(ヘイズ値、全光線透過率、粘度、TI値)は、ヘイズ値および全光線透過率の測定において、ブランク測定に純水とエタノールとトルアミドの混合溶液(純水を40質量%、エタノールを40質量%、トルアミドを20質量%)を用いた以外、実施例1と同様に行った。
(実施例6)
防虫組成物(実施例6)は、害虫忌避成分100質量部に対して、スルホン化微細セルロース繊維が2質量部、純水が98質量部、エタノールが133質量部となるように調製した。
防虫組成物(実施例6)の調製には、スルホン化微細セルロース繊維分散液A3を使用した。
スクリュー管瓶に、スルホン化微細セルロース繊維分散液A3(30g)、純水0g、エタノール12gを入れ、5分間強く撹拌した。その後、トルアミド18gを入れ、再度5分間強く撹拌し、スルホン化微細セルロース繊維の固形分濃度が0.5%の防虫組成物(実施例6)を得た。
防虫組成物(実施例6)の物性(ヘイズ値、全光線透過率、粘度、TI値)は、ヘイズ値および全光線透過率の測定において、ブランク測定に純水とエタノールとトルアミドの混合溶液(純水を30質量%、エタノールを40質量%、トルアミドを30質量%)を用いた以外、実施例1と同様に行った。
(実施例7)
防虫組成物(実施例7)は、スルホン化微細セルロース繊維分散液A7を使用した以外は、実施例3と同様に実施した。
(実施例8)
防虫組成物(実施例8)は、スルホン化微細セルロース繊維分散液A10を使用した以外は、実施例3と同様に実施した。
(実施例9)
防虫組成物(実施例9)は、害虫忌避成分100質量部に対して、スルホン化微細セルロース繊維が5質量部、純水が295質量部、エタノールが600質量部となるように調製した。
防虫組成物(実施例9)の調製には、スルホン化微細セルロース繊維分散液A11を使用した。
スクリュー管瓶に、スルホン化微細セルロース繊維分散液A11(30g)、純水6g、エタノール18gを入れ、5分間強く撹拌した。その後、トルアミド6gを入れ、再度5分間強く撹拌し、スルホン化微細セルロース繊維の固形分濃度が0.5%の防虫組成物(実施例3)を得た。
防虫組成物(実施例9)の物性(ヘイズ値、全光線透過率、粘度、TI値)は、ヘイズ値および全光線透過率の測定において、ブランク測定に純水とエタノールとトルアミドの混合溶液(純水を30質量%、エタノールを60質量%、トルアミドを10質量%)を用いた以外、実施例1と同様に行った。
(実施例10)
防虫組成物(実施例10)は、トルアミドに替えてイカリジンを使用した以外は、実施例3と同様に実施した。
防虫組成物(実施例10)は、害虫忌避成分100質量部に対して、微細セルロース繊維が5質量部、純水が495質量部、エタノールが400質量部となるように調製した。
スクリュー管瓶に、スルホン化微細セルロース繊維分散液A3(30g)、純水12g、エタノール12gを入れ、5分間強く撹拌した。その後、イカリジン6gを入れ、再度5分間強く撹拌し、スルホン化微細セルロース繊維の固形分濃度が0.5%の防虫組成物(実施例10)を得た。
防虫組成物(実施例10)の物性(ヘイズ値、全光線透過率、粘度、TI値)は、ヘイズ値および全光線透過率の測定において、ブランク測定に純水とエタノールとイカリジンの混合溶液(純水を50質量%、エタノールを40質量%、イカリジンを10質量%)を用いた以外、実施例1と同様に行った。
(実施例11)
防虫組成物(実施例11)は、イカリジンの濃度を20質量%にした以外は、実施例10と同様に実施した。
防虫組成物(実施例11)は、害虫忌避成分100質量部に対して、微細セルロース繊維が3質量部、純水が198質量部、エタノールが200質量部となるように調製した。
スクリュー管瓶に、スルホン化微細セルロース繊維分散液A3(30g)、純水6g、エタノール12gを入れ、5分間強く撹拌した。その後、イカリジン12gを入れ、再度5分間強く撹拌し、スルホン化微細セルロース繊維の固形分濃度が0.5%の防虫組成物(実施例11)を得た。
防虫組成物(実施例11)の物性(ヘイズ値、全光線透過率、粘度、TI値)は、ヘイズ値および全光線透過率の測定において、ブランク測定に純水とエタノールとイカリジンの混合溶液(純水を40質量%、エタノールを40質量%、イカリジンを20質量%)を用いた以外、実施例1と同様に行った。
(実施例12)
防虫組成物(実施例12)は、イカリジンの濃度を30質量%にした以外は、実施例10と同様に実施した。
防虫組成物(実施例12)は、害虫忌避成分100質量部に対して、微細セルロース繊維が2質量部、純水が98質量部、エタノールが133質量部となるように調製した。
スクリュー管瓶に、スルホン化微細セルロース繊維分散液A3(30g)、純水0g、エタノール12gを入れ、5分間強く撹拌した。その後、イカリジン18gを入れ、再度5分間強く撹拌し、スルホン化微細セルロース繊維の固形分濃度が0.5%の防虫組成物(実施例11)を得た。
防虫組成物(実施例12)の物性(ヘイズ値、全光線透過率、粘度、TI値)は、ヘイズ値および全光線透過率の測定において、ブランク測定に純水とエタノールとイカリジンの混合溶液(純水を30質量%、エタノールを40質量%、イカリジンを30質量%)を用いた以外、実施例1と同様に行った。
(実施例13)
(スルホン化微細セルロース繊維分散液A12)
実験では、スルホン化微細セルロース繊維分散液A12を用いた。
スルホン化微細セルロース繊維分散液A12の調製は、エタノールを2-プロパノール(IPA)とした以外は、スルホン化微細セルロース繊維分散液A3と同様に実施した。
と同様に実施した。
防虫組成物(実施例13)の調製は、以下のように行った。
防虫組成物(実施例13)は、、害虫忌避成分100質量部に対して、スルホン化微細セルロース繊維が5質量部、純水が495質量部、2-プロパノールが400質量部となるように調製した以外、実施例1と同様に行った。
害虫忌避成分には、DEET(トルアミド)を用いた。このDEETは、上記トルアミドと同じ製品のものを使用した。
(実施例14)
防虫組成物(実施例14)は、害虫忌避成分100質量部に対して、スルホン化微細セルロース繊維が3質量部、純水が197質量部、2-プロパノールが200質量部となるように調製した以外、実施例13と同様に行った。
(実施例15)
防虫組成物(実施例15)は、害虫忌避成分100質量部に対して、スルホン化微細セルロース繊維が2質量部、純水が98質量部、2-プロパノールが133質量部となるように調製した以外、実施例13と同様に行った。
(実施例16)
防虫組成物(実施例16)は、害虫忌避成分をイカリジンとし、害虫忌避成分100質量部に対して、スルホン化微細セルロース繊維が5質量部、純水が495質量部、2-プロパノールが400質量部となるように調製した以外、実施例13と同様に行った。
(実施例17)
防虫組成物(実施例17)は、害虫忌避成分をイカリジンとし、害虫忌避成分100質量部に対して、微細セルロース繊維が3質量部、純水が197質量部、2-プロパノールが200質量部となるように調製した以外、実施例13と同様に行った。
(実施例18)
防虫組成物(実施例18)は、害虫忌避成分をイカリジンとし、害虫忌避成分100質量部に対して、微細セルロース繊維が5質量部、純水が495質量部、2-プロパノールが400質量部となるように調製した以外、実施例13と同様に行った。
(防虫組成物の遠心処理後の沈殿確認)
実施例4と後述する比較例10で調製した防虫組成物を遠心分離し、沈殿の有無を確認することで、分散性の確認を行った。
遠心分離の方法として、実施例4の防虫組成物1.0gを1.5mLチューブ(型番:L-510-GRD-Q、サーモフィッシャサイエンティフィック社製)に入れ、小型高速遠心機(アズワン株式会社社製、MF-12000)を用い、12000rpmで1分間遠心処理を行った。
遠心後の沈殿の有無を確認し、沈殿を目視で確認できなければ、沈殿は無とし、沈殿が見られれば液面から沈殿までの高さを測定した。
(成膜性試験)
防虫組成物を乾燥させた場合の成膜性を確認した。
成膜性は以下のようにして実施した。
実施例4で調製した防虫組成物をテフロン(登録商標)製シートに10g乗せ、105℃で乾燥し、膜を作製した。
乾燥後得られた膜の形状から成膜性の良し悪しを判断した。乾燥後に得られる膜の形状が、分散液を乗せたときの形状を維持していれば成膜性が良いとした。また、乾燥後に凝集して形状が大きく縮んでいれば、成膜性が悪いと判断した。
(比較例)
比較例を以下のとおり調製した。
まず、比較例の一例に使用するリン酸化微細セルロース繊維を調製した。
このリン酸化微細セルロース繊維は、実施例の微細セルロース繊維のスルホ基に替えてリン酸基を導入したリン酸化微細セルロース繊維を使用した。
(リン酸化微細セルロース繊維分散液Bの調製)
リン酸化微細セルロース繊維を含有したリン酸化微細セルロース繊維分散液Bは、以下のように調製した。
化学処理工程において、微細セルロース繊維をリン酸化した以外は、スルホン化微細セルロース繊維分散液A1と同様にして実施した。
リン酸化剤として、リン酸二水素アンモニウム(和光特級、和光純薬株式会社製)を使用した。尿素として、尿素(純度99%、和光純薬工業製、型番;特級試薬)を使用した。
反応液の調製方法の一例を以下に示す。
リン酸二水素アンモニウムと尿素は、次のように混合した。リン酸二水素アンモニウム/尿素比((g/L)/(g/L))=140/375とした。
容器に純水100mlを加えた。ついで、この容器にリン酸二水素アンモニウム14g、尿素37.5gを加えて、反応液を調製した。つまり、尿素は、リン酸二水素アンモニウム100質量部に対して約267質量部となるように加えた。
この調製した反応液に対してパルプ(固形分質量)を加えた。このとき、反応液中の薬品とパルプ(固形分質量)の比率が、パルプ:薬品=1:2となるようにスラリーを調整した。
実験では、リン酸二水素アンモニウム/尿素比((g/L)/(g/L))が140/375の反応液の場合、パルプ1gに対して、反応液を約5.9g加え、薬品を含浸させた。
反応液にパルプを添加して調製したスラリーを30分間手でもみほぐし、パルプに反応液を均一に含浸させた。この反応液を含浸させパルプを、吸引ろ過器し、純水滴が落ちなくなるまで、余剰の薬液を除去した。その後、乾燥し、次工程の加熱反応の工程に供給した。加熱反応は、恒温槽の温度を140℃にし、加熱時間を15分にした。加熱反応後のパルプを洗浄し、リン酸化パルプを調製した。調製したリン酸化パルプを微細化処理工程に供した。
(リン酸化微細セルロース繊維分散液B1)
リン酸化微細セルロース繊維分散液B1は、スルホン化微細セルロース繊維分散液A1と同様に調製した。
微細化処理工程において、リン酸化パルプと純水を混合して、リン酸化パルプの固形分濃度が1.0質量%にした調整したパルプスラリーを調製した。つまり、パルプスラリーが、組成比において、リン酸化パルプの1.0質量部に対して、純水が99.0質量部となるように調整した。
このパルプスラリーを高圧ホモジナイザーに供した。高圧ホモジナイザーの条件は、スルホン化微細セルロース繊維分散液A1の調製時と同様にした。
リン酸化微細セルロース繊維分散液B1は、リン酸化微細セルロース繊維と純水とエタノールの組成比が、リン酸化微細セルロース繊維の1.0質量部に対して純水が99.0質量部である。
リン酸化微細セルロース繊維分散液B1中のリン酸化微細セルロース繊維のリン酸基導入量は、1.0mmol/gであった。
(リン酸化微細セルロース繊維分散液B2)
リン酸化微細セルロース繊維分散液B2の調製方法を以下に示す。以下に示す操作以外はリン酸化微細セルロース繊維分散液B1と同様にして実施した。
微細化処理工程において、リン酸化パルプと純水とエタノールを混合してパルプスラリーを調製した。このパルプスラリーは、リン酸化パルプと純水とエタノールの組成比が、スルファミン酸/尿素処理パルプの1.0質量部に対して、純水が79.0質量部、エタノールが20.0質量部となるように調整した。
高圧ホモジナイザーの条件は、リン酸化微細セルロース繊維分散液B1の調製時と同様にした。
リン酸化微細セルロース繊維分散液B2は、リン酸化微細セルロース繊維と純水とエタノールの組成比が、リン酸化微細セルロース繊維の1.0質量部に対して、純水が79.0質量部、エタノールが20.0質量部である。
リン酸化微細セルロース繊維分散液B2中のリン酸化微細セルロース繊維のリン酸基導入量は、1.0mmol/gであった。
(リン酸化微細セルロース繊維分散液B3)
リン酸化微細セルロース繊維分散液B3の調製方法を以下に示す。以下に示す操作以外はリン酸化微細セルロース繊維分散液B1と同様にして実施した。
微細化処理工程において、リン酸化パルプと純水とエタノールを混合してパルプスラリーを調製した。このパルプスラリーは、リン酸化パルプと純水とエタノールの組成比が、スルファミン酸/尿素処理パルプの1.0質量部に対して、純水が59.0質量部、エタノールが40.0質量部となるように調整した。
高圧ホモジナイザーの条件は、リン酸化微細セルロース繊維分散液B1の調製時と同様にした。
リン酸化微細セルロース繊維分散液B3は、リン酸化微細セルロース繊維と純水とエタノールの組成比が、リン酸化微細セルロース繊維の1.0質量部に対して、純水が59.0質量部、エタノールが40.0質量部である。
リン酸化微細セルロース繊維分散液B3中のリン酸化微細セルロース繊維のリン酸基導入量は、1.0mmol/gであった。
(リン酸化微細セルロース繊維分散液B4)
リン酸化微細セルロース繊維分散液B4の調製方法を以下に示す。以下に示す操作以外はリン酸化微細セルロース繊維分散液B3と同様にして実施した。
高圧ホモジナイザーの条件は、設定圧力100MPa、パス数10回とした。
リン酸化微細セルロース繊維分散液B4は、リン酸化微細セルロース繊維と純水とエタノールの組成比が、リン酸化微細セルロース繊維の1.0質量部に対して、純水が59.0質量部、エタノールが40.0質量部である。
リン酸化微細セルロース繊維分散液B4中のリン酸化微細セルロース繊維のリン酸基導入量は、1.0mmol/gであった。
リン酸化微細セルロース繊維分散液Bの物性(ヘイズ値、全光線透過率、粘度、TI値)は、スルホン化微細セルロース繊維分散液Aの物性測定と同様に行った。
(リン酸化微細セルロース繊維分散液B1の測定用スラリー)
リン酸化微細セルロース繊維分散液B1を純水で希釈して微細セルロース繊維の固形分濃度が0.5%となるように調製して測定用スラリーとした。
ブランク測定には、純水を用いた。
(リン酸化微細セルロース繊維分散液B2の測定用スラリー)
リン酸化微細セルロース繊維分散液B2から所定量を分取し、以下のブランク測定に使用した混合溶液と同じ溶液で希釈して測定用スラリーとした。測定用スラリーの微細セルロース繊維(リン酸化微細セルロース繊維、以下同様)の固形分濃度は、0.5質量%となるように調製した。
ブランク測定には、純水とエタノールの混合溶液(質量比において、純水80質量%、エタノール20質量%)を用いた。
(リン酸化微細セルロース繊維分散液B3の測定用スラリー)
リン酸化微細セルロース繊維分散液B3から所定量を分取し、以下のブランク測定に使用した混合溶液と同じ溶液で希釈して測定用スラリーとした。測定用スラリーの微細セルロース繊維の固形分濃度は、0.5質量%となるように調製した。
ブランク測定には、純水とエタノールの混合溶液(質量比において、純水60質量%、エタノール40質量%)を用いた。
(リン酸化微細セルロース繊維分散液B4の測定用スラリー)
リン酸化微細セルロース繊維分散液B4から所定量を分取し、以下のブランク測定に使用した混合溶液と同じ溶液で希釈して測定用スラリーとした。測定用スラリーの微細セルロース繊維の固形分濃度は、0.5質量%となるように調製した。
ブランク測定には、純水とエタノールの混合溶液(質量比において、純水60質量%、エタノール40質量%)を用いた。
図1に、リン酸化微細セルロース繊維分散液B(B1~B4)の各物性値を示す。
(比較例1)
比較例1は、害虫忌避成分100質量部に対して、スルホン化微細セルロース繊維が5質量部、純水が895質量部、エタノールが0質量部となるように調製した。
比較例の調製には、スルホン化微細セルロース繊維分散液A1を使用した。
スクリュー管瓶に、スルホン化微細セルロース繊維分散液A1(30g)、純水24g、エタノール0gを入れ、5分間強く撹拌した。その後、トルアミド6gを入れ、再度5分間強く撹拌し、スルホン化微細セルロース繊維の固形分濃度が0.5%の比較例1を得た。
比較例1の物性(ヘイズ値、全光線透過率、粘度、TI値)は、ヘイズ値および全光線透過率の測定において、ブランク測定に純水を用いた以外、実施例2と同様に行った。
(比較例2)
比較例2は、害虫忌避成分100質量部に対して、スルホン化微細セルロース繊維が5質量部、純水が695質量部、エタノールが200質量部となるように調製した。
比較例の調製には、スルホン化微細セルロース繊維分散液A2を使用した。
スクリュー管瓶に、スルホン化微細セルロース繊維分散液A2(30g)、純水18g、エタノール6gを入れ、5分間強く撹拌した。その後、トルアミド6gを入れ、再度5分間強く撹拌し、スルホン化微細セルロース繊維の固形分濃度が0.5%の比較例2を得た。
比較例2の物性(ヘイズ値、全光線透過率、粘度、TI値)は、ヘイズ値および全光線透過率の測定において、ブランク測定に純水とエタノールの混合溶液(純水を80質量%、エタノールを20質量%)を用いた以外、実施例2と同様に行った。
(比較例3)
比較例3は、害虫忌避成分100質量部に対して、スルホン化微細セルロース繊維が5質量部、純水が895質量部、エタノールが0質量部となるように調製した。
比較例の調製には、スルホン化微細セルロース繊維分散液A5を使用した。
スクリュー管瓶に、スルホン化微細セルロース繊維分散液A5(30g)、純水24g、エタノール0gを入れ、5分間強く撹拌した。その後、トルアミド6gを入れ、再度5分間強く撹拌し、スルホン化微細セルロース繊維の固形分濃度が0.5%の比較例3を得た。
比較例3の物性(ヘイズ値、全光線透過率、粘度、TI値)は、ヘイズ値および全光線透過率の測定において、ブランク測定に純水を用いた以外、実施例2と同様に行った。
(比較例4)
比較例4は、害虫忌避成分100質量部に対して、スルホン化微細セルロース繊維が5質量部、純水が695質量部、エタノールが200質量部となるように調製した。
比較例の調製には、スルホン化微細セルロース繊維分散液A6を使用した。
スクリュー管瓶に、スルホン化微細セルロース繊維分散液A6(30g)、純水18g、エタノール6gを入れ、5分間強く撹拌した。その後、トルアミド6gを入れ、再度5分間強く撹拌し、スルホン化微細セルロース繊維の固形分濃度が0.5%の比較例4を得た。
比較例4の物性(ヘイズ値、全光線透過率、粘度、TI値)は、ヘイズ値および全光線透過率の測定において、ブランク測定に純水とエタノールの混合溶液(純水を80質量%、エタノールを20質量%)を用いた以外、実施例2と同様に行った。
(比較例5)
比較例5は、害虫忌避成分100質量部に対して、スルホン化微細セルロース繊維が5質量部、純水が895質量部、エタノールが0質量部となるように調製した。
比較例の調製には、スルホン化微細セルロース繊維分散液A8を使用した。
スクリュー管瓶に、スルホン化微細セルロース繊維分散液A8(30g)、純水24g、エタノール0gを入れ、5分間強く撹拌した。その後、トルアミド6gを入れ、再度5分間強く撹拌し、スルホン化微細セルロース繊維の固形分濃度が0.5%の比較例5を得た。
比較例5の物性(ヘイズ値、全光線透過率、粘度、TI値)は、ヘイズ値および全光線透過率の測定において、ブランク測定に純水を用いた以外、実施例2と同様に行った。
(比較例6)
比較例6は、害虫忌避成分100質量部に対して、スルホン化微細セルロース繊維が5質量部、純水が695質量部、エタノールが200質量部となるように調製した。
比較例の調製には、スルホン化微細セルロース繊維分散液A9を使用した。
スクリュー管瓶に、スルホン化微細セルロース繊維分散液A9(30g)、純水18g、エタノール6gを入れ、5分間強く撹拌した。その後、トルアミド6gを入れ、再度5分間強く撹拌し、スルホン化微細セルロース繊維の固形分濃度が0.5%の比較例6を得た。
比較例6の物性(ヘイズ値、全光線透過率、粘度、TI値)は、ヘイズ値および全光線透過率の測定において、ブランク測定に純水とエタノールの混合溶液(純水を80質量%、エタノールを20質量%)を用いた以外、実施例2と同様に行った。
(比較例7)
比較例7は、害虫忌避成分100質量部に対して、リン酸エステル化微細セルロース繊維が5質量部、純水が895質量部、エタノールが0質量部となるようにし調製した。
比較例の調製には、リン酸化微細セルロース繊維分散液B1を使用した。
スクリュー管瓶に、リン酸化微細セルロース繊維分散液B1(30g)、純水24g、エタノール0gを入れ、5分間強く撹拌した。その後、トルアミド6gを入れ、再度5分間強く撹拌し、リン酸化微細セルロース繊維の固形分濃度が0.5%の比較例7を得た。
比較例7の物性(ヘイズ値、全光線透過率、粘度、TI値)は、ヘイズ値および全光線透過率の測定において、ブランク測定に純水を用いた以外、実施例2と同様に行った。
(比較例8)
比較例8は、害虫忌避成分100質量部に対して、リン酸エステル化微細セルロース繊維が5質量部、純水が695質量部、エタノールが200質量部となるように調製した。
比較例の調製には、リン酸化微細セルロース繊維分散液B2を使用した。
スクリュー管瓶に、リン酸化微細セルロース繊維分散液B2(30g)、純水18g、エタノール6gを入れ、5分間強く撹拌した。その後、トルアミド6gを入れ、再度5分間強く撹拌し、リン酸化微細セルロース繊維の固形分濃度が0.5%の比較例8を得た。
比較例8の物性(ヘイズ値、全光線透過率、粘度、TI値)は、ヘイズ値および全光線透過率の測定において、ブランク測定に純水とエタノールの混合溶液(純水を80質量%、エタノールを20質量%)を用いた以外、実施例2と同様に行った。
(比較例9)
比較例9は、害虫忌避成分100質量部に対して、リン酸エステル化微細セルロース繊維が5質量部、純水が495質量部、エタノールが400質量部となるように調製した。
比較例の調製には、リン酸化微細セルロース繊維分散液B3を使用した。
スクリュー管瓶に、リン酸化微細セルロース繊維分散液B3(30g)、純水12g、エタノール12gを入れ、5分間強く撹拌した。その後、トルアミド6gを入れ、再度5分間強く撹拌し、リン酸化微細セルロース繊維の固形分濃度が0.5%の比較例9を得た。
比較例9の物性(ヘイズ値、全光線透過率、粘度、TI値)は、ヘイズ値および全光線透過率の測定において、ブランク測定に純水とエタノールとトルアミドの混合溶液(純水50質量%、エタノール40質量%、トルアミド10質量%)を用いた以外、実施例2と同様に行った。
(比較例10)
比較例10は、害虫忌避成分100質量部に対して、リン酸エステル化微細セルロース繊維が5質量部、純水が495質量部、エタノールが400質量部となるように調製した。
比較例の調製には、リン酸化微細セルロース繊維分散液B4を使用した。
スクリュー管瓶に、リン酸化微細セルロース繊維分散液B4(30g)、純水12g、エタノール12gを入れ、5分間強く撹拌した。その後、トルアミド6gを入れ、再度5分間強く撹拌し、リン酸化微細セルロース繊維の固形分濃度が0.5%の比較例10を得た。
比較例10の物性(ヘイズ値、全光線透過率、粘度、TI値)は、ヘイズ値および全光線透過率の測定において、ブランク測定に純水とエタノールとトルアミドの混合溶液(純水50質量%、エタノール40質量%、トルアミド10質量%)を用いた以外、実施例2と同様に行った。
(比較例11)
比較例11は、ブランクとして測定した。
比較例11は、微細セルロース繊維(微細セルロース繊維およびリン酸化微細セルロース繊維)を含まない、純水とエタノールとトルアミドの混合溶液を調製した。つまり、比較例11は、害虫忌避成分100質量部に対して、微細セルロース繊維が0質量部、純水が500質量部、エタノールが400質量部となるように調製した。
スクリュー管瓶に、純水30g、エタノール24gを入れ、5分間強く撹拌した。その後、トルアミド6gを入れ、再度5分間強く撹拌して、比較例11を得た。
比較例11の物性(粘度、TI値)は、ヘイズ値および全光線透過率の測定において、ブランク測定に純水を用いた以外、実施例2と同様に測定した。
(比較例12)
比較例12は、ブランクとして測定した。
比較例12は、微細セルロース繊維(微細セルロース繊維およびリン酸化微細セルロース繊維)を含まない、純水とエタノールとトルアミドの混合溶液を調製した。つまり、比較例12は、害虫忌避成分100質量部に対して、微細セルロース繊維が0質量部、純水が200質量部、エタノールが200質量部となるように調製した。
スクリュー管瓶に、純水24g、エタノール24gを入れ、5分間強く撹拌した。その後、トルアミド12gを入れ、再度5分間強く撹拌して、比較例12を得た。
比較例12の物性(粘度、TI値)は、ヘイズ値および全光線透過率の測定において、ブランク測定に純水を用いた以外、実施例2と同様に測定した。
(比較例13)
比較例13は、ブランクとして測定した。
比較例13は、微細セルロース繊維(微細セルロース繊維およびリン酸化微細セルロース繊維)を含まない、純水とエタノールとトルアミドの混合溶液を調製した。つまり、比較例13は、害虫忌避成分100質量部に対して、微細セルロース繊維が0質量部、純水が100質量部、エタノールが133質量部となるように調製した。
スクリュー管瓶に、純水18g、エタノール24gを入れ、5分間強く撹拌した。その後、トルアミド18gを入れ、再度5分間強く撹拌して、比較例13を得た。
比較例13の物性(粘度、TI値)は、ヘイズ値および全光線透過率の測定において、ブランク測定に純水を用いた以外、実施例2と同様に測定した。
(比較例14)
比較例14では、微細セルロース繊維としてカルボキシメチルセルロースナトリウムを使用した分散液を調製した。
スクリュー管瓶に、1.0%のカルボキシメチルセルロースナトリウムの分散液30g、エタノール24gを入れ、5分間強く撹拌した。その後、トルアミドを6g入れ、再度5分間強く撹拌し、カルボキシメチルセルロースの固形分質量が0.5%の分散液(比較例14)を得た。
カルボキシメチルセルロースナトリウムは、和光純薬工業株式会社製の化学用を使用した。
(比較例15)
比較例15では、微細セルロース繊維の替わりにヒアルロン酸ナトリウムを使用した分散液を調製した。
スクリュー管瓶に、1.0%のヒアルロン酸ナトリウムの分散液30g、エタノール24gを入れ、5分間強く撹拌した。その後、トルアミドを6g入れ、再度5分間強く撹拌し、カルボキシメチルセルロースの含有率が0.5%の分散液(比較例15)を得た。
ヒアルロン酸ナトリウムは、ナカライテスク株式会社製(ナカライ規格特級、商品コード:18237-41)を使用した。
(結果)
(スルホン化微細セルロース繊維分散液Aとリン酸化微細セルロース繊維分散液B)
図1には、スルホン化微細セルロース繊維分散液Aとリン酸化微細セルロース繊維分散液Bの物性(ヘイズ値、全光線透過率、粘度、TI値)を示す。
各分散液中において、微細セルロース繊維であるCNFが分散しているかどうかをヘイズ値で評価した。
図1に示すように、スルホ基、リン酸基がそれぞれ同一導入量のとき、エタノールを含む溶媒中では、スルホ基を導入したCNFを含有した分散液のほうがリン酸基を導入したCNFを含有した分散液と比べて、得られるヘイズ値が低いことが確認できた。
このことから、スルホ基を導入したCNFのほうがリン酸基を導入したCNFと比べて溶媒中での分散性に優れていることがわかった。
(実施例と比較例)
図2には、実施例1~9、比較例1~13の各物性を示す。
図3には、実施例10~12の各物性を示す。
図4には、実施例の一例の写真を示す。
防虫組成物の遠心処理後の沈殿確認の実験結果から、微細セルロース繊維(以下、CNFという)のうちスルホン化微細セルロース繊維(以下、スルホン化CNFという)を含む防虫組成物(実施例)とリン酸化微細セルロース繊維(以下、リン酸化CNFという)を含む防虫組成物(比較例)について、ダマになりやすさについて比較した。
図2、図3に示すように、全光線透過率とヘイズ値だけでは、目視において透明であることはわかるが、CNFがダマの形成のしやすさおよび凝集しやすさについては不明瞭である。実際に本発明の防虫組成物を塗布剤として使用する場合、CNFのダマになりやすさは、問題となる。
そこで、本発明の防虫組成物中のスルホン化CNFおよびリン酸化CNFのダマになりやすさを、遠心分離処理時の沈殿のしやすさから判断した。
遠心分離処理後において、スルホン化CNFを含む防虫組成物(実施例4)では沈殿は見られなかった。一方、リン酸化CNFを含む防虫組成物(比較例10)では沈殿が見られた。
このことから、リン酸化CNFが含有した防虫組成物のように、目視では透明だと思われるもの(全光線透過率が90%程度)であっても、ヘイズ値80%以上のものは、ダマを形成しやすいということがわかった。一方、本発明のスルホン化CNFが含有した防虫組成物では、全線光線透過率およびヘイズ値が、リン酸化CNFが含有した防虫組成物よりも優れていたことから、ダマになることはなかった。
つまり、ダマを形成する指標として、全光線透過率が90%以上であり、かつヘイズ値80%よりも低くすることが重要であることがわかった。
図4には、実施例4、比較例7、比較例14、比較例15の防虫組成物を縦置きで1日間静置した状態の写真、その静置後のサンプルを横に倒し4秒後の写真、成膜後の写真を示す。
また、膜の形成が確認できたものを〇、凝集が見られたが膜の形成が確認できたものを△、凝集物となったものを×とし評価した。
図4に示すように、スルホ基を導入したスルホン化CNFを含有した分散液である実施例4のほうがリン酸基を導入したリン酸化CNFを含有した分散液である比較例7と比べて、透明性が高いことが視認できる。
また、従来から知られる増粘剤を含有した比較例14と比較例15と比較して、粘度が高いことが確認できる。
さらに、成膜性に関しては、実施例4のみが成膜することができた。
図2には、純水/エタノール/トルアミドを各種割合で調製した防虫組成物中での微細セルロース繊維(CNF)の分散性について示す。分散性は、各種組成物の透明性(全光線透過率およびヘイズ)から判断した。
トルアミドは、純水とは混ざらず(純水/エタノール/トルアミド=90質量%/0質量%/10質量%)、また、エタノールの割合が少ない場合(純水/エタノール/トルアミド=70質量%/20質量%/10質量%)でも混ざらず、白濁しエマルジョンのような形態を示した。
しかし、エタノールを一定以上の割合で含有させれば(純水/エタノール/トルアミド=50質量%/40質量%/10質量%、40質量%/40質量%/20質量%、30質量%/40質量%/30質量%))、透明で均一に混ざることが確認された。
なお、図には示していない。
そして、このような透明な状態の溶液中にスルホン化微細セルロース繊維(スルホン化CNF)を分散させることによって、微細セルロース繊維を分散させているにもかかわらず、透明な状態が維持されていることが確認できた(例えば、実施例1~9、実施例10~13)。
つまり、本発明の防虫組成物は、水への溶解性が低いトルアミドやイカリジンなどの化合物(害虫忌避成分)を、所定のスルホン化微細セルロース繊維、所定の濃度のアルコール(水溶性溶剤)の水溶液に混合することにより、害虫忌避成分を均質な状態に維持できることが確認できた。
このことから、親水性のスルホン化CNFであっても分散液の種類と比率を変えることで、本発明の水溶性溶剤を、本発明の防虫組成物中において、均一に混ぜ合わせることが可能であることが分かった。
また、本発明の防虫組成物のスルホン化CNFは、リン酸化微細セルロース繊維(リン酸化CNF)よりも透明な分散液が得られることが確認できた。そして、このスルホン化CNFは、リン酸化CNFよりも純水とエタノールとトルアミドの混合溶液に混ざりやすいことが分かった。
図2、図3に示すように、本発明の防虫組成物の増粘効果を確認した。
本発明の防虫組成物は、スルホン化微細セルロース繊維(スルホン化CNF)を含有させることにより、透明な液が得られるだけでなく、トルアミド混合溶液に対して増粘効果及び、チキソ性を付与することが可能であった。
トルアミドおよびイカリジンは、虫よけ剤として用いられており、市販の製品では、含有量が10%程度のものが多い。
図2、図3、図7に示すように、本発明の防虫組成物は、スルホン化微細セルロース繊維(スルホン化CNF)を含有することにより、一般的に市販されている製品の含有量と同等またはそれ以上を含有させることができることが確認できた。しかも、本発明の防虫組成物では、トルアミドおよびイカリジンを高濃度(例えば、10%以上)に含有させた場合であっても、均質な状態を維持できることが確認できた。
このことから、本発明の防虫組成物は、スルホン化CNFによる粘性調整効果を活かした、虫よけ剤として利用することができる。
トルアミドの虫よけ効果を効率よく発揮させるためには、皮膚に塗布後、均一に塗布された状態、すなわち、皮膚表面において、スルホン化CNFとトルアミドを含有した防虫組成物が膜状に存在すれば、よりよい効果を発揮することが期待できる。
具体的には、スルホン化CNFがトルアミドを内包し、そのスルホン化CNFが膜を形成することで、皮膚への均一な塗布状態となり、虫の接近阻害が期待できる。そのため、トルアミドを含んだスルホン化CNFのスラリーが成膜可能かということは非常に重要な課題と考えられる。
各種増粘剤とトルアミド含有組成物が乾燥後に成膜性を有するかの確認を行ったところ、図4に示すように、スルホン化CNFを含有した本発明の防虫組成物、CMC含む分散液、ヒアルロン酸を含む分散液は、乾燥前において、透明で均一な分散液であった(図4の瓶中の写真)。しかし、スルホン化CNFを含有する実施例4では乾燥後も膜ができていた。一方、CMCおよび、ヒアルロン酸ナトリウムでは、凝集が生じた。
これらの結果から、本発明の防虫組成物は、スルホン化微細セルロース繊維はトルアミドを含んだ分散液であっても乾燥により成膜することができた。このことは、スルホン化CNFを含有する本発明の防虫組成物が、害虫忌避成分の機能を効率よく発揮させると期待できる。
図5には、防虫組成物において、溶媒とDEETを用いた場合のべたつき試験と液滴角度試験の結果を示す。
図5に示すように、DEETの濃度が高くなるほど、接触角が小さくなり、それに伴い、べたつきも感じるようになった。
これは、本条件での接触角で測定される界面の状態と、皮膚へのべたつき感の測定に相関があると考えられる。
DEETは濃度が高くなると、より親油性となる。今回の条件では、DEET濃度増加に伴い、接触角が小さくなっていた。人の皮膚はタンパク質から構成され、ある程度両親媒性の状態になっている。
DEETの濃度が10質量%程度ではべたつきがなく、使用感に抵抗は感じられなかった。しかし、DEETの濃度が20質量%、30質量%となるにつれべたつきを感じるようになった。そして、各濃度の接触角においては、DEET濃度が10質量%のときに55.4°であったのに対して、DEET濃度が20質量%のときは47.1 °と低下した。
これは、人が感じるべたつきは、組成物の親油性が高くなりすぎると(ここでは接触角が47.1°未満となると)、べたつきを感じやすくなると言えることがわかった。その逆に、接触角が高くなるということは、ここでは、親水性が高くなると言える。
スルホン化CNFを添加したものでは、DEET濃度が20質量%においてもべたつきはなく、スルホン化CNF添加により塗やすさの改善効果が見られた。また、このときの接触角度は62.1°であり、スルホン化CNFも適切に分散した状態であった。そして、DEET濃度を低くしていくと、接触角も増加していき、90°程度を示した(図示していない)。また、このときの防虫組成物はべたつくことなく、良好な塗りやすさを示した。
これらの結果から、接触角測定により、ある程度べたつきを評価することができることが示唆された。また、スルホン化CNFを添加したとき、べたつきが無く、ここでは、接触角が50~90°程度の範囲に入るものであり、透明性の高い(スルホン化CNFが分散している状態である)、増粘効果のある防虫組成物を調製することができた。
防虫組成物の皮膚への利用を考えたとき、塗りやすいということは非常に重要となる。皮膚用であれば、ある程度の粘度があれば取り扱いやすくなる。また、べたつきがなければ、より良い使用感を得ることができる。そのため、粘度があり、べたつくことのない本発明の防虫組成物は皮膚用として好適に用いることができる。
また、図6、図7に示すように、水溶性溶剤としてエタノール以外に2-プロパノール(IPA)を用いた場合であっても、防虫組成物中でスルホ基CNFを適切に分散させることが可能であることが確認できた。
本発明の防虫組成物、害虫忌避方法は、害虫を忌避するための組成物、忌避方法として適している。また、本発明の防虫剤は、害虫を忌避するための施用に適している。

Claims (11)

  1. 水と、水溶性溶剤と、水酸基の一部がスルホ基で置換されたスルホン化微細セルロース繊維と、害虫忌避成分と、を含む組成物であり、
    前記スルホン化微細セルロース繊維は、スルホ基の導入量が0.5mmol/g~3.0mmol/gであり、
    前記害虫忌避成分の含有量が、1質量%~40質量%であり、
    前記組成物の全光線透過率が、90%以上である
    ことを特徴とする防虫組成物。
  2. 前記組成物のヘイズ値が、70%以下である
    ことを特徴とする請求項1記載の防虫組成物。
  3. 前記スルホン化微細セルロース繊維の含有量が、
    前記害虫忌避成分100質量部に対して、0.1質量部~100質量部である
    ことを特徴とする請求項1または2記載の防虫組成物。
  4. 前記害虫忌避成分が、
    N,N-diethyl-3-methylbenzamideおよび/または1-piperidinecarboxylic acid 2-(2-hydroxyethyl)-1-methylpropylesterを含む
    ことを特徴とする請求項1、2または3記載の防虫組成物。
  5. 前記水の含有量が、
    前記害虫忌避成分100質量部に対して、50質量部~2000質量部であり、
    前記水溶性溶剤の含有量が、
    前記害虫忌避成分100質量部に対して、50質量部~1000質量部である
    ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の防虫組成物。
  6. 前記組成物は、
    B型粘度計を用いて、25℃、回転数6rpm、3分で測定したB型粘度が1Pa・s以上である
    ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の防虫組成物。
  7. 前記組成物は、
    B型粘度計を用いて、25℃、回転数6rpmと回転数60rpm、で測定を行い、各々の粘度を算出し、各粘度比(回転数6rpmでの粘度/回転数60rpmでの粘度)から算出されるチキソトロピー性指数が、1.0以上である
    ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の防虫組成物。
  8. 前記水溶性溶剤が、低級アルコールである
    ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の防虫組成物。
  9. 前記水溶性溶剤が、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、ブタノールまたはこれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む
    ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の防虫組成物。
  10. 1乃至9のいずれかに記載の防虫組成物を含む防虫剤であり、
    剤形が、スプレー剤、ゲル剤、クリーム剤、液剤から選択される外用剤である
    ことを特徴する防虫剤。
  11. 請求項1乃至9のいずれかに記載の防虫組成物を哺乳動物の皮膚に塗布、噴霧または貼付する
    ことを特徴する害虫忌避方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2024105667A1 (en) * 2022-11-17 2024-05-23 Yissum Research Development Company Of The Hebrew University Of Jerusalem Ltd. Formulations for preventing mosquito bites

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