JP6753174B2 - ドリル - Google Patents
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Description
この種のドリルによれば、穴あけ加工時に、第1マージン部及び第2マージン部が被削材の加工穴の内周面にそれぞれ摺接してガイド機能が得られるため、穴加工精度を安定して確保しやすい。
特許文献1では、該特許文献1の図3に示されるように、ドリル本体を軸線方向の先端から基端側へ向けて見たドリル正面視で、第2マージン部がドリル本体の先端面(先端逃げ面)の外周縁に配置されている。この場合、例えば軟らかい金属材料等からなる被削材を穴あけ加工する際に、第2マージン部と先端面との交差稜線部が、被削材の加工穴の内周面を傷付けてうねり模様等の加工痕が生じることがあった。
従って、第2マージン部とマージン前壁面との接続部分が、被削材の加工穴の内周面に意図せず切り込んで傷付けてしまうようなことを確実に防止でき、加工面品位を高めることができる。
従って、例えばマージン前壁面が加工穴の内周面に摺接して第2マージン部の所期するマージン機能に影響を与えたり、切削抵抗を増大させてしまうような不具合を、本発明によれば確実に防止できる。従って、穴あけ加工の精度を良好に維持しつつ、ドリルを長寿命化することができる。
このため上記構成のドリルによれば、第2マージン部が加工穴の内周面を傷付けてしまうような不具合を格別顕著に抑制することができる。
図1及び図2に示されるように、本実施形態のドリル10は、軸状をなすドリル本体1を有している。ドリル本体1は、その軸線O方向に沿う一方側部分が刃部とされ、他方側部分(刃部以外の部位)が図示しないシャンク部とされている。
なお、本実施形態のドリル10は、特に、軟らかい金属材料等からなる被削材の穴あけ加工に適している。
本実施形態においては、ドリル本体1の軸線Oが延在する方向、つまり軸線Oに沿う方向を、軸線O方向という。また、軸線O方向のうち、ドリル本体1のシャンク部から刃部へ向かう方向(図2における上方)を先端側といい、刃部からシャンク部へ向かう方向(図2における下方)を基端側という。
また、軸線O回りに周回する方向を周方向という。周方向のうち、穴あけ加工時にドリル本体1が回転させられる向きをドリル回転方向Tといい、これとは反対の回転方向を、ドリル回転方向Tとは反対側(反ドリル回転方向)という。
ドリル本体1の外周には、軸線O方向の先端から基端側へ向かうように延びる切屑排出溝2が、周方向に互いに間隔をあけて複数形成されている。切屑排出溝2は、ドリル本体1の先端に開口し、該先端から軸線O方向の基端側へ向かうに従い漸次ドリル回転方向Tとは反対側へ向けてねじれて、螺旋状に延びている。
本実施形態の例では、ドリル10がツイストドリルであり、ドリル本体1の外周には、2つの切屑排出溝2が形成されている。
図1及び図2において、ドリル本体1の先端部には、ドリル10の先端側(ドリル送り方向)を向く先端面(先端逃げ面)3と、切屑排出溝2のドリル回転方向Tを向く壁面2aと先端面3との交差稜線部に形成された切れ刃4と、先端面3と該先端面3のドリル回転方向Tとは反対側に隣り合う切屑排出溝2との間に形成されたシンニング面5と、が備えられる。
第1先端逃げ面6は、切れ刃4からドリル回転方向Tとは反対側に向かうに従い漸次軸線O方向の基端側へ向けて傾斜している。第2先端逃げ面7は、第1先端逃げ面6からドリル回転方向Tとは反対側に向かうに従い漸次軸線O方向の基端側へ向けて傾斜しており、第1先端逃げ面6よりも大きな逃げ角を有している。つまり、第2先端逃げ面7におけるドリル周方向に沿う単位長さあたりの軸線O方向への変位量(逃げ角に相当する傾き)は、第1先端逃げ面6における前記変位量よりも大きい。
本実施形態の例では、先端面3が、互いに異なる2つの傾斜面(第1先端逃げ面6及び第2先端逃げ面7)を有しているが、これに限定されるものではない。先端面3は、単一の傾斜面により形成されていてもよく、或いは3つ以上の傾斜面を備えていてもよい。
図1、図2及び図4において、ドリル本体1の外周のうち、周方向に隣り合う切屑排出溝2同士の間には、ランド部15が形成されている。
ランド部15は、切屑排出溝2のドリル回転方向Tを向く壁面2aのドリル回転方向Tとは反対側に隣接配置された第1マージン部11と、第1マージン部11よりもドリル回転方向Tとは反対側に配置された第2マージン部12と、第2マージン部12よりもドリル回転方向Tとは反対側に配置された第3マージン部13と、を備えている。つまり、本実施形態のドリル10は、トリプルマージンタイプのドリルである。なお、図2には、第3マージン部13の形状を具体的には図示していない。
また、ランド部15のうち、第1マージン部11、第2マージン部12及び第3マージン部13以外の部位は、これらのマージン部よりも径方向内側に後退させられた二番取り面とされている。
具体的に、マージン前壁面16は、第2マージン部12の軸線O回りの回転軌跡(後述する仮想円筒面VC)よりも径方向内側に位置しており(図1参照)、本実施形態において角度θaは、0°を超え30°以下である。
なお、図示の例では、ランド部15の二番取り面のうち第1マージン部11と第2マージン部12との間に位置する部位については、マージン前壁面16を除いて、二番取り深さが略一定とされている。
以上説明した本実施形態のドリル10によれば、ドリル本体1の先端面3を正面に見たドリル正面視(ドリル先端視)において、第2マージン部12が、シンニング面5の外周縁に配置されている。すなわち、第2マージン部12のドリル回転方向Tの前端12aが、先端面(先端逃げ面)3ではなく、シンニング面5の外周縁に配置されている。つまり、ドリル正面視で、第2マージン部12の全体(第2マージン部12である円弧の全長)が、シンニング面5の外周縁に位置している。このため、ドリル本体1の先端面3と第2マージン部12との間には交差稜線部が形成されることはなく、シンニング面5と第2マージン部12との間に、交差稜線部が形成される。
従って、第2マージン部12とマージン前壁面16との接続部分が、被削材の加工穴の内周面に意図せず切り込んで傷付けてしまうようなことを確実に防止でき、加工面品位を高めることができる。
従って、例えばマージン前壁面16が加工穴の内周面に摺接して第2マージン部12の所期するマージン機能に影響を与えたり、切削抵抗を増大させてしまうような不具合を、本実施形態によれば確実に防止できる。従って、穴あけ加工の精度を良好に維持しつつ、ドリル10を長寿命化することができる。
すなわちこの場合、第2マージン部12のドリル回転方向Tの前端12aが、例えばドリル製造上の誤差等により、意図せずドリル本体1の先端面(先端逃げ面)3の外周縁に位置してしまうような不具合を確実に防止することができる。従って、上述した本実施形態による作用効果がより安定する。
このため本実施形態のドリル10によれば、第2マージン部12が加工穴の内周面を傷付けてしまうような不具合を格別顕著に抑制することができる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
実施例1では、超硬合金製のコーティングオイルホールドリルを用いて、被削材S50C(A)の加工初期における穴精度(JIS B 0601 2001に規定される断面曲線の最大断面高さPt、粗さ曲線の最大高さRz)を評価した。
具体的には、横型マシニングセンター(主軸HSK−A63)を用い、下記の加工条件にて、本発明例のドリル10と、比較例(従来例)のドリルとを用いて、200穴加工した後の穴精度を評価した。
<加工条件>
切削速度Vc:80m/min
回転数n:4246min−1
送り量f:0.18mm/rev
送り速度Vf:764mm/min
加工深さ:120mm
冷却方式:ミスト冷却
本発明例2は、本発明例1に対して更に、第2マージン部12よりもドリル回転方向Tとは反対側に第3マージン部13を形成したドリル10を用いた。
比較例2は、比較例1に対して更に、第2マージン部よりもドリル回転方向とは反対側に第3マージン部を形成したドリルを用いた。
比較例5は、比較例4に対して更に、第2マージン部よりもドリル回転方向とは反対側に第3マージン部を形成したドリルを用いた。
上記の各ドリルを用いた穴あけ加工試験の評価結果を、表1に示す。
実施例2では、実施例1の評価で用いた本発明例1と比較例3について、追加評価を実施した。試験条件は700穴加工とした以外は実施例1と同じとし、先端逃げ面の摩耗幅を評価した。試験の結果を表2に示す。
2 切屑排出溝
2a 壁面
3 先端面(先端逃げ面)
4 切れ刃
5 シンニング面
5a 前端
5b 後端(ヒール)
5c 中間点
10 ドリル
11 第1マージン部
12 第2マージン部
12a 前端
12b 後端
13 第3マージン部
13a 前端
13b 後端
15 ランド部
16 マージン前壁面(第2マージン前壁面)
16a 前端
18 マージン前壁面(第3マージン前壁面)
19 壁面部分
La、Lb 延長線
O 軸線
T ドリル回転方向
VLa、VLb 仮想直線
θa、θb 角度
Claims (5)
- 軸状をなし、軸線回りの周方向のうちドリル回転方向に回転させられるドリル本体と、
前記ドリル本体の外周に、軸線方向の先端から基端側へ向かうように延び、周方向に互いに間隔をあけて形成された複数の切屑排出溝と、
前記切屑排出溝のドリル回転方向を向く壁面と前記ドリル本体の先端面との交差稜線部に形成された切れ刃と、
前記先端面と該先端面のドリル回転方向とは反対側に隣り合う前記切屑排出溝との間に形成されたシンニング面と、
前記ドリル本体の外周において周方向に隣り合う前記切屑排出溝同士の間に形成されたランド部と、
前記ランド部において前記切屑排出溝のドリル回転方向を向く壁面に隣接配置された第1マージン部と、
前記ランド部において前記第1マージン部よりもドリル回転方向とは反対側に配置された第2マージン部と、を備えたドリルであって、
前記ドリル本体を軸線方向の先端から基端側へ向けて見たドリル正面視で、前記第2マージン部は、前記シンニング面の外周縁のうち、ドリル回転方向の前端とドリル回転方向とは反対側の後端との中間点よりも、ドリル回転方向に配置されており、
前記ドリル本体の軸線に直交するドリル横断面視において、前記第2マージン部のドリル回転方向の前端とドリル回転方向とは反対側の後端とを結ぶ仮想直線と、前記ランド部における前記第2マージン部のドリル回転方向に隣接するマージン前壁面の延長線と、の間に形成される角度が、30°以下であり、
前記ドリル正面視において前記第2マージン部のドリル回転方向の前端が、前記シンニング面の外周縁のうちドリル回転方向の前端から、ドリル回転方向とは反対側に離間して配置されていることを特徴とするドリル。 - 請求項1に記載のドリルであって、
前記ランド部における前記第2マージン部よりもドリル回転方向とは反対側に、第3マージン部が形成されていることを特徴とするドリル。 - 請求項2に記載のドリルであって、
前記ドリル横断面視において、前記第2マージン部と前記第3マージン部との間の二番取り深さは、ドリル回転方向とは反対側に向けて漸次減少していることを特徴とするドリル。 - 請求項2又は3に記載のドリルであって、
前記ドリル横断面視において、前記第3マージン部のドリル回転方向の前端とドリル回転方向とは反対側の後端とを結ぶ仮想直線と、前記ランド部における前記第3マージン部のドリル回転方向に隣接するマージン前壁面の延長線との間に形成される角度は、前記第2マージン部のドリル回転方向の前端とドリル回転方向とは反対側の後端とを結ぶ仮想直線と、前記ランド部における前記第2マージン部のドリル回転方向に隣接するマージン前壁面の延長線との間に形成される角度よりも小さいことを特徴とするドリル。 - 請求項2〜4のいずれか一項に記載のドリルであって、
前記ドリル横断面視において、前記ランド部のうち、前記第2マージン部のドリル回転方向に隣接するマージン前壁面のドリル回転方向の前端よりもドリル回転方向に位置する壁面部分がなす曲率半径が、前記第3マージン部のドリル回転方向に隣接するマージン前壁面がなす曲率半径よりも大きいことを特徴とするドリル。
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