JP6751530B2 - 付着物除去方法 - Google Patents

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Description

本発明は、付着物除去方法に関する。
従来、半導体デバイスの製造及び硬質皮膜を形成した治工具の製造等に薄膜結晶成長による成膜プロセス(以下、特に断りのない限り「成膜プロセス」と記す)が用いられている。これらの成膜プロセスにおいて使用される治具には、成膜する材料が付着する。この付着物は製品特性の劣化などをまねく恐れがあるので、付着物は定期的に除去されることが必要である。
例えば、半導体デバイスの製造プロセスで用いられる成膜装置は、被処理材であるウェハを載置するトレイ、被処理材をトレイ上の所定の位置に保持するサセプタ、及びサセプタに対向して設けられ、チャンバー内のガス流を制御するための対向板などの治具を備えている。これらの治具は温度及び雰囲気等の使用条件を勘案して形成されている。例えば、対向板及びトレイ及びサセプタは、石英またはSiCまたは表面にSiCがコーティングされたカーボンにより形成されている。
このような治具に付着した付着物の除去方法として、ケミカルエッチング(例えば特許文献1及び2)、プラズマエッチング(特許文献3)、噴射加工(特許文献4)が考えられる。
特許文献1には、半導体製造装置用の炭化珪素製治具を10体積%以上の硝塩酸水溶液または弗硝酸水溶液に30分以上浸漬することにより付着物を溶解除去する方法が開示されている。また、硬質皮膜を除去する方法として、特許文献2には、TiN及びTiCN等の硬質皮膜が形成された処理対象表面に、硬質皮膜より硬い砥粒を噴射するブラスト加工により、硬質皮膜を除去する方法が開示されている。特許文献1の方法では酸を使用するため、作業上においても環境上においても注意が必要である。また、硬質皮膜を除去するためには数時間を要するので作業効率が悪く、また使用後の薬液を処理する必要があるから経済的に不利である。また、薬液に治具を浸漬するので、大きな浸漬槽及び多量の薬液が必要となる。さらに、SiCがコーティングされたカーボンの表面に付着した付着物を除去する場合、カーボンにも薬液が入り込む。これを除去するのに長時間にわたって乾燥しなくてはならない。
特許文献2には、半導体製造装置を構成する部品の汚染物を、塩素系のガスに接触させることにより除去する方法が開示されている。特許文献2の方法では酸を使用するため、作業上においても環境上においても注意が必要である。
特許文献3には、磁気転写用マスタ単体表面の付着物をプラズマエッチングによって燃焼除去する方法が開示されている。特許文献3の方法を治具に付着した付着物の除去にそのまま適用した場合、プラズマ放電により治具にダメージが生じることが考えられる。また、この作業は真空化で行うので作業性が悪く、またおおがかりな設備を必要とする。
特許文献4には、TiN及びTiCN等の硬質皮膜が形成された処理対象表面に、硬質皮膜より硬い砥粒を噴射するブラスト加工により、硬質皮膜を除去する方法が開示されている。特許文献4の方法で付着物を除去しようとすると、成膜プロセスにおいて一般的に用いられている治具は、硬質の付着物が除去された途端に非常に強い加工状態に曝されることになる。その結果、治具の表面が大きな損傷を受ける。
さらに、付着物を除去した後の治具に金属成分が残存している場合、その治具を用いて成膜する際に、成膜の過程で皮膜中にこの成分が不純物として混入する。その結果、皮膜の品質が低下する。
特開平8−078375号公報 特開2006−332201号公報 特開2003−085936号公報 特開2006−305694号公報
上記に鑑み、本発明は、成膜プロセスにおいて使用する治具に付着する付着物を除去する付着物除去方法であって、治具の損傷を低減し効率よく硬質の付着物の除去を行うことができ、且つ治具に金属成分が残留しない付着物除去方法を提供することを目的とする。
本発明の一側面は、薄膜結晶成長による成膜プロセスにて使用する治具に付着する付着物を前記治具から除去する付着物除去方法である。この付着物除去方法は、次の(1)〜(3)の工程を含む。
(1)治具の硬度より低く、且つ金属成分を含有しない噴射材を用意する。
(2)噴射材を治具に向けて噴射する。
(3)治具に向けて噴射された噴射材が治具に衝突する際の衝突エネルギーによって付着物を除去する。
治具より低い硬度の噴射材を用いることで、噴射材が治具に衝突しても治具自体を傷つけずに付着物を除去することができる。さらに、その噴射材として、金属成分を含有しないものを使用することで、治具に金属成分が残留することがない。即ち、治具自体を傷つけずに付着物を除去し、且つ付着物を除去した後の治具を用いて成膜を行う際に皮膜の品質の低下の原因となる金属成分の残留がない加工を行うことができる。
一実施形態では、噴射材は少なくとも表層が樹脂で構成されていてもよい。樹脂材料は金属成分を含んでおらず、且つ軟質材料であるので、治具に金属成分の残留がないことと治具を傷つけずに付着物を除去することの双方を充足することができる。
一実施形態では、噴射材の外形が凸曲面で形成されていてもよい。加工装置との摩擦による表面への金属成分の付着を抑制できるので、治具への金属成分の残留をより抑制することができる。また、治具に衝突した際に衝撃力が分散されるので、結果として治具の損傷を軽減することができる。
一実施形態では、付着物を除去する工程は、次の(5)(6)の工程を含んでもよい。
(5)噴射材が前記治具に衝突したときに付着物の結晶粒界で破壊の起点を形成する工程。
(6)噴射材をさらに衝突させて結晶粒界を起点として界面破壊により治具から脱離させる工程。
薄膜結晶成長では、始めに多数の微小な結晶(結晶粒)が形成され、この結晶粒が別々に成長して多結晶体になる。その為、結晶同士の間には不連続な境界面(結晶粒界)が残る。本発明の一側面の付着物除去方法によれば、治具より硬度が低い噴射材の衝突により付着物をその結晶粒界から脱離させることにより付着物を除去することができる。即ち、この付着物除去方法は、噴射材を衝突させて付着物を切削することによって付着物を除去する従来の方法とは異なる、新たな付着物除去方法である。治具より硬度が低い噴射材を使用し、またその衝撃力は結晶粒界で破壊の起点を生ずる程度であるので、治具への衝撃を小さくすることができる。また、噴射材を治具に噴射するだけで治具から付着物を除去することができるので、簡単かつ短時間に付着物の除去を行うことができる。さらに、付着物が強固に付着している箇所や立体構造物における隅角部等、重点的に除去作業を行いたい場所を自由に選択することができる。
一実施形態では、噴射材の平均粒子径を50〜300μmとしてもよい。結晶粒界に効率よく衝突エネルギーを付与することができるので、付着物を効率よく除去することができる。
一実施形態では、付着物が治具よりも硬質である付着物の除去は、噴射材を6.0×10−6〜1.0×10−4Jの衝突エネルギーで治具に衝突させてもよい。治具よりも硬質の付着物を除去する場合に、治具に大きな損傷が生じやすいが、衝突エネルギーをこの範囲より選択することで、治具の損傷を低減し、効率よく硬質の付着物の除去を行うことができる。
一実施形態では、付着物除去方法が次の(7)(8)の工程をさらに含んでもよい。
(7)付着物が付着した治具を加熱する工程。
(8)噴射材を加熱した後の前記治具に向けて噴射する工程。
成膜装置は、成膜させる基材の載置部に対して最適な条件となるよう設定される。そのため、基材の載置部(例えば基材がウェハの場合、ウェハポケット)から離れた位置では温度の過不足などの理由で正常な状態で成膜されない場合がある。即ち、治具において、基材の載置部から離れた位置では結晶粒界が存在しない状態の付着物が付着する場合がある。この場合、(7)(8)の工程をさらに行うことで治具全体の付着物を除去することができる。
一実施形態では、治具は石英ガラスで形成されていてもよい。治具が石英ガラスで形成されている場合、従来技術のように硬質の砥粒を衝突させて付着物を切削することによる付着物除去方法では治具が大きな損傷を受けるが、一実施形態に係る付着物除去方法では、極めて小さな損傷に留めることができる。
一実施形態では、成膜プロセスは、有機金属気相成長法(MOCVD法)であってもよい。成膜プロセスとして有機金属気相成長法(MOCVD法)が用いられる場合、GaN、AlNなど硬質の皮膜が形成されることが多い。この皮膜とトレイ、サセプタ、及び対向板などの治具とは硬度差が大きいので、従来のように硬質の砥粒を衝突させて付着物を切削することによる付着物除去方法において付着物を除去可能な条件で処理を行うと、治具が大きな損傷を受けてしまう。一実施形態に係る付着物除去方法によれば、有機金属気相成長法(MOCVD法)で用いられる治具であっても、治具の損傷を低減し、効率よく硬質の付着物の除去を行うことができる。
本発明の一側面及び一実施形態により、治具の損傷を低減し、効率よく付着物を除去できる付着物除去方法を提供することができる。
一実施形態で用いた加工装置を説明するための模式図である。 一実施形態の付着物除去方法を示すフローチャートである。 一実施形態のワークの走査軌跡を説明するための模式図である。 付着物の除去している様子を示すSEM写真である。 一実施形態の付着物除去方法で付着物を除去した場合と従来技術で付着物を除去した場合を比較したSEM写真である。 一実施形態の付着物除去方法でワークを加熱する工程を設けた場合を説明する写真である。
本発明における付着物除去方法の一実施形態として、図を参照して説明する。本発明は本実施形態に限定されず、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加えることができる。なお、説明における左右上下方向は特に断りのない限り図中の方向を指す。
図1に、本実施形態で使用した加工装置01を示す。加工装置01は、筐体10と、定量供給機構20と、分離機構30と、吸引機構40と、ノズル50と、制御機構60と、を備えている。
筐体10は内部に加工室Rが形成されており、正面に設けられた扉11を開けることで作業者は処理室Rにアクセスすることができる。処理室Rには、ノズルを固定するためのノズル固定治具12と、ノズルに対向してワークW(付着物が付着している治具)を載置する処理テーブル13と、処理テーブル13に連結された移動機構14と、が設けられている。
ノズル固定治具12は、ノズル50とワークWとの距離を自在に調整できるように構成されている。
移動機構14は、処理テーブル13(即ち、ワークW)をノズルに対して水平方向(図1における左右方向と紙面に対する垂直方向)に自在に移動するための機構である。例えばX−Yステージ等公知の機構を適宜選択できる。
移動機構15はノズル50の下方に設けられた架台15に固定されている。本実施形態では、多数の穴が設けられた板とした。ノズル50より噴射された噴射材を含む粉粒体が底部に向かって通過することができる。
処理室Rの上部には、所定量の噴射材をノズル50に定量で供給するための定量供給機構20が配置されている。定量供給機構20は、噴射材を定量で切り出すことができればその構造は特に限定されない。例えば、スクリュフィーダ、振動フィーダ、テーブルフィーダ等がある。本実施形態ではスクリュフィーダを用いた。
定量供給機構20は、分離機構30に連結された貯留ホッパ31と連結されている。分離機構30は、輸送管Pを介して筐体10の底部と連結されているので、処理室Rと貯留ホッパは輸送管Pを介して連続した空間を形成している。なお、本実施形態では分離機構30としてサイクロン式分級機を用いたが、その他の風力式分級機やスクリーン式分級機を用いても良い。
粒子を噴射するノズルとして吸引式と直圧式が知られており、どちらを選択してもよい。本実施形態では、吸引式を選択した。本実施形態のノズル50は、ノズルホルダとこのノズルホルダに挿入されたエアノズルで構成されている。エアノズルはエアホースH1を介してコンプレッサ(図示せず)と連結されており、ノズルホルダは噴射材ホースH2を介して貯留ホッパ20と連結されている。コンプレッサを作動させてエアノズルから圧縮空気を噴射することでノズルホルダ内に発生する負圧によって噴射材はノズル内に吸引され、内部で圧縮空気と混合されて固気二相流として噴射される。
制御機構60は、上記各機構などの動作を制御する。制御機構としては、パーソナルコンピュータなどの各種演算装置、プログラマルロジックコントローラ(PLC)及びデジタルシグナルプロセッサ(DSP)などのモーションコントローラ、高機能携帯端末及び高機能携帯電話、等を用いることができる。
次に、本実施形態の加工装置01による付着物除去方法について、更に図2を用いて説明する。本発明の付着物除去方法は、結晶成長による成膜プロセスにおいて治具に付着する硬質の付着物の除去に適用できる。さらに、損傷を受けやすい材料からなる治具に付着する場合に特に有効である。本実施形態では、有機金属気相成長法(MOCVD法)にて成膜する際に使用する治具に付着した付着物を除去する方法について説明する。
MOCVD法による半導体デバイスの製造においては、基板上にGaNやAlNなどの硬質皮膜を形成する。より詳細には、基板上にGaNやAlNなどの微小な結晶が形成され、その結晶が成長することで多結晶の皮膜が形成される。その際、トレイ、サセプタ、対向板などの治具にもこれらの硬質皮膜が形成される。即ち、治具の付着物はこの硬質皮膜であり、この付着物には結晶粒界が存在する。トレイやサセプタや対向板は石英ガラスで構成されている場合がある。この場合、付着物との硬度差が大きく、損傷を受けやすい治具の表面に硬質の付着物が存在している状態となる。即ち、従来技術のような硬質の砥粒を衝突させて付着物を切削する付着物除去方法において付着物を除去可能な条件で処理を行うと、治具が大きな損傷を受ける。
<S1:ワークの予備洗浄>
ワークWは比較的付着力の弱い付着物を刷毛等で予め除去してもよい。この工程は、省略してもよい。
<S2:加工装置の準備>
吸引機構40を作動して、加工室Rを吸引する。次いで、扉11の施錠を解除して、扉11を開ける。次いで、所定量の噴射材を加工室Rに投入し、輸送管P及び分離機構30を介して噴射材を貯留ホッパ20に移送する。その後、扉11を閉め、施錠する。加工室Rは吸引機構40により吸引されているので負圧となり、外部と連通するように設けられた吸引孔(図示せず)より外気が処理室Rに流入する。
噴射材は、治具に衝突した際に治具へ与えるダメージを抑えた上で効率よく付着物を除去するために、治具よりも軟質の噴射材を用いた。この時、噴射材の硬度を治具の硬度の1/2以下としてもよい。さらに、治具に噴射材由来の金属成分が残留しないよう、金属成分を含有しない材料を用いた。噴射材は、セラミックス(アルミナ、炭化ケイ素、ジルコン、等)、樹脂(ユリア樹脂、ナイロン、アクリル樹脂、フェノール樹脂、等)、ガラス、植物種子(クルミ殻、桃種、杏子種、等)、重曹、ドライアイス、等から治具の硬度に合わせて適宜選択してもよい。この中で、樹脂は形状や粒度の調整が容易であり、且つ安価に製造できるので、特に好適に用いることができる。樹脂を選択した場合は、少なくとも外面が樹脂であればよい。即ち、全体を樹脂で構成してもよく、比重の大きな粒子を核としてその外郭に樹脂が位置する粒子としてもよい。
噴射材の形状は特に限定されない。角部を有していると付着物の除去効率は高くなるが、加工装置01との接触によって噴射材の表面に噴射材の表面に付着した成分が付着しやすくなる恐れがある。噴射材は加工装置10と接触する機会も多いので、ごく微量が装置由来の金属成分が噴射材の表面に付着する可能性がある。そこで、より金属成分の残留をなくすために、噴射材の形状は凸曲線で形成されていてもよい。この形状の場合、治具に衝突した際に衝撃力が分散されるので、結果として治具の損傷を軽減することができる。凸曲線で形成とは、球形状であってもよく、多角形状または異方形状の角部を丸めた形状であったもよい。
噴射材の粒子径は、小さすぎると付着物を除去できず、大きすぎると治具にダメージを与える。本実施形態では、平均粒子径d50を50〜400μmとした。
噴射材は、後述の通り質量を知る必要がある。その為、真比重が既知の粒子を用いてもよく、予めピクノメータ法等既知の方法で真比重を測定しておいてもよい。
加工装置01の制御機構60を操作して圧縮空気をノズル50に供給する経路に設けられた電磁弁(図示せず)を「開」、定量供給機構20を「ON」にする。この動作により噴射材はノズル50に供給されてノズル50より噴射される。ここで、噴射材の噴射量を調整するが、その調整方法は特に限定されない。例えば、噴射材の物性(種類や粒子径等)と噴射圧力と噴射速度との相関関係を予め測定しておき、その結果に基づいて所望の噴射速度となるように噴射圧力を調整してもよい。本実施形態では、粒子流速測定法(Particle Image velocimetry:PIV)により、噴射材の物性に対する噴射圧力と噴射速度の関係を予め測定し、圧縮空気の供給圧力を調整するバルブ(図示せず)を操作して、噴射材の噴射速度が所望の速度となるように調整した。
噴射速度を調整後、表面処理装置01の制御機構60を操作し、前述の電磁弁を「閉」、定量供給機構20を「OFF」にそれぞれ切り替える。この操作により、噴射材の噴射が停止する。扉11を開け、ワークWを処理テーブル13に載置し、固定する。その後、固定治具12によりノズル50とワークWとの距離を調整する。これらの作業が終了したら、扉11を閉めて施錠する。
制御機構60に、ワークWの移動の軌跡(図3におけるX方向、Y方向の距離)、移動速度、走査回数、等の加工条件を入力する。
<S3:付着物を除去>
加工装置01の制御機構60を操作して前述の電磁弁を「開」、定量供給機構20を「ON」にして、噴射材を噴射する。次いで、移動機構14を「ON」にして、ワークWをノズルに対して相対的に水平移動させる。例えば、図3に示すようにワークWの中心Cの走査軌跡Tは、ワークWの端部から噴射材の噴射領域AにX方向に走査し、所定のピッチでY方向にずらした後にX方向に戻すことを繰り返して櫛歯状に走査する軌跡である。ノズルに対してワークWをこのように移動することで、ワークの全面に対して噴射材を衝突させることができる。ここで、ノズル50の噴射口が長方形状に形成されている場合には、長辺がY方向となるように配置することにより、1回のX方向の走査による噴射材の噴射幅を増大させることができるので、噴射処理の効率を向上させることができる。
治具がノズル50の噴射口の下方まで移動すると、噴射材がワークに衝突する。衝突の初期では、噴射材の衝突エネルギーによって結晶界面での破壊の起点が形成される。その後、更に噴射材が衝突することで、この起点より結晶粒子が剥離する。
ここで、噴射材の硬さが低い方が治具に与えるダメージの観点より有利であるが、硬さが小さすぎると結晶界面での破壊の起点を形成する能力が不足する。また、硬さが高いと加工時間が短くなることや、加工後に治具に残留する噴射材が少ないので後工程での洗浄が容易になることなど有利な点があるが、硬さが高すぎるとワークに与えるダメージが大きくなる。
また、噴射材がワークWと衝突する際の衝突エネルギーが小さすぎると結晶界面での破壊の起点を形成する能力が不足し、高すぎると付着物を除去できるがワークの損傷が大きくなる。ワークWの損傷が少なく、且つ効率よく付着物を除去するために、噴射材の衝突エネルギーを1.0×10−6〜1.0×10−4Jとすることができる。噴射材の衝突エネルギーは、噴射材の質量mと噴射材の速度vより、「1/2×m×v」の式で算出することができる。ここで、噴射材の質量は、噴射材の平均粒子径より球に近似した体積を算出し、これに比重ρを掛け合わせることで算出してもよい。
結晶粒界で剥離している様子を示すSEM写真を図4に示す。加工前は表面に結晶粒が観察されるが深さ方向には結晶が緻密に堆積して皮膜を形成しているのが分かる(図中の「加工前」)。本実施形態の加工により、皮膜は結晶粒界で剥離しているのが分かる(図中の「加工中」)。その後、付着物が治具表面より完全に除去される(図中の「加工後」)。ここで、表面に凹凸が形成されているのは皮膜形成時に治具が受けたダメージであると推測される。薬剤によって付着物を除去した治具の表面をSEMにて観察し、同様の凹凸が形成されていることを確認している。
図5に、本実施形態の方法にて付着物を除去した結果と、従来技術の方法(硬質の砥粒を衝突させて付着物を切削して除去)にて付着物を除去した結果と、を比較したSEM写真を示す。従来技術の方法では治具の表面が噴射材で切削されていることが観察される。また、従来技術の方法で付着物を除去した場合、表面粗さ・輪郭形状統合測定機により、治具の表面が噴射材で切削されていることも確認されている。従って、本実施形態の方法では、治具の損傷を抑えて付着物を除去できる。
噴射材及び加工によって生じた粉塵(除去された付着物や再使用できないサイズとなった噴射材)は吸引機構40の吸引力によって分離機構30に移送される。分離機構30にて、再使用可能な噴射材(第一)と粉塵とに分離され、再使用可能な噴射材(第一)は貯留ホッパ20に堆積される。貯留ホッパ20に堆積された再使用可能な噴射材(第一)は、ノズル50に移送されて再び噴射される。一方、重量の軽い粉塵は、吸引機構40に吸引され、吸引機構40の内部にセットされた捕集フィルタに捕集される。
<S4:ワークを回収>
所定の加工が終了したら、制御手段により、移動手段14が「OFF」、前述の電磁弁が「閉」、定量供給機構20が「OFF」にそれぞれ切り替えられる。その後、扉11の施錠を解除して扉11を開け、ワークWを回収する。このワークWに付着した噴射材や粉塵をエアブローや超音波洗浄機等で除去して、一連の加工が完了する。
S1〜S3の工程を経ても、ワークWにおける基材の載置部から離れた場所では付着物が残留している場合がある。付着物の残留は、結晶同士が強固に結合している、若しくは結晶粒界が存在しない場合がある、に起因していると推測される。付着物の残留がある場合には、以下のS5〜S8の工程をさらに行ってもよい。付着物の残留がない場合は、当然これらの工程は省略することができる。
<S5:ワークを加熱>
庫内が所定の温度に保持された恒温器を準備し、ワークWを庫内にセットする。治具と付着物とはそれぞれ膨張係数が異なることから、所定の温度に加熱することで治具と付着物との密着力が低下する。すなわち、後述のS7の工程にて付着物を除去できる程度まで密着力が低下すればよく、過剰に加熱することはエネルギーの損失に繋がる。さらに、例えば治具の軟化点近傍に加熱すると最も密着力が小さくなるが、治具に熱ダメージを加えることになり、治具の寿命が低下する。加熱する温度は500〜1000℃としてもよく、800〜1000℃としてもよい。
<S6:ワークを冷却>
ワークWを室温まで冷却する。冷却速度が早いと付着物に微細なクラックが発生するので、後のS7の工程にて付着物を容易に除去することができるが、治具にも熱ダメージを加えることになる。S7の工程にて付着物を容易に除去でき、且つ治具に熱ダメージがないよう、冷却速度を決定する。なお、この二側面を満足しさえすれば室内に放置することで冷却してもよい。
<S7:付着物を除去>
S1〜S3の工程と同様の操作で、ワークWに向けて噴射材を噴射する。前述の通り、治具よりも軟質の噴射材を用いると、治具へのダメージが抑制されるので、S3の工程にて使用した噴射材と同じものを使用してもよい。付着物は加熱により治具との密着力が低下しており、かつ硬脆性があるので噴射材の衝突により付着物にクラックが発生し、このクラックを起点として付着物が除去される。
<S8:ワークを回収>
S4の工程と同様の操作にてワークWを回収し、このワークWに付着した噴射材や粉塵をエアブローや超音波洗浄機等で除去して、一連の加工が完了する。
工程S05〜S08にて付着物の除去を行った結果を図6に示す。左図は、工程S1〜S4を経たワークWに付着物が残留している様子を示す。中図は、このワークWを加熱した後冷却した状態を示す(S5、S6)。加熱及び冷却のみでは付着物が除去されていないことが判る。右図は、この加熱と冷却を行ったワークWに対して噴射材を噴射した後の状態を示す(S7、S8)。S5〜S8の工程を経ることで、ワークW全体の付着物を除去できることが示された。
次に、この付着物除去方法によりワークより付着物を除去した結果について説明する。
治具相当の基材として、実際の治具の使用環境を考慮して石英板(2インチ×t1.0mm。ビッカース硬さがHV714〜918)を1000℃にて10分間保持した後室温に冷却するサイクルを200回繰り返したものを準備した。
ノズルとワークとの距離を100mmとして、またワークに対する噴射流の角度が90°となるようにノズルをセットした。そして、このワークに対して噴射材を5分間定点に噴射した。噴射材は以下の物を使用した。
噴射材A:ユリア樹脂(ロックウェル硬さHRMが115であり、多角状)
噴射材B:ナイロン樹脂(ロックウェル硬さHRRが110であり、円柱状)
噴射材C:アクリル樹脂(ロックウェル硬さHRMが95であり、球状)
噴射材D:フェノール樹脂(ロックウェル硬さHRMが125であり、球状)
噴射材E:ガラス(ビッカース硬さHvが500であり、球状)
噴射材F:胡桃種子(モース硬度が2であり、多角状)
噴射材G:白色溶融アルミナ(ビッカース硬さがHv2,200であり、多角状)
噴射材H:ウレタンゴムの外縁に白色溶融アルミナ粒子を担持させた粒子(ショアA硬度が40であり、円柱状)
噴射材I:ステンレス(ビッカース硬さHvが187であり、球状)
加工後、表面粗さ・輪郭形状統合測定機により石英板の切削深さ(損傷)を確認した。評価基準は以下の通りとした。
<基材の損傷評価>
○・・・切削深さが3μm未満である。
△・・・切削深さが3μm〜5μmである。
×・・・切削深さが5μmを超える。
「基材の損傷評価」の結果が○もしくは△の条件にて、更に付着物の除去を行った。前述の処理を行った石英板にMOCVD法にて10回の皮膜形成作業を繰り返し、厚さ50μmのGaNの皮膜を形成した。
皮膜を形成した石英板に対して、前述と同様に噴射材を5分間定点に噴射して付着物(皮膜)の除去を行った。
加工後、マイクロスコープによる観察及びEDXによる分析により付着物が除去されているかを確認した。
<付着物除去の評価>
○・・・EDXで皮膜の残留が確認されない。
△・・・目視では皮膜の残留が確認されないが、EDXでわずかに膜の残留が確認される。
×・・・目視で皮膜の残留が確認される。
結果を表1に示す。
<基材の損耗評価>
噴射材の硬度が石英板より低い実施例1〜11及び比較例2〜3は、基材の損耗評価が○若しくは△評価となった。△評価は実用上の問題がない、若しくは加工条件の最適化により○評価となりうるものである。一方、噴射材の硬度が石英板より高い噴射材を用いた場合、比較例1のように噴射材の衝突エネルギーを過剰に低くしても基材の損耗評価が×となった。従って、治具よりも硬度の低い噴射材を用いることで基材への損傷が抑えられることが示された。
また、噴射材の形状による基材の損傷への影響を調べるために実施例1、7、8を比較すると、定性評価ではいずれも○評価であったが球状の噴射材を使用した実施例8が最も切削深さが浅かった。従って、全体が凸曲面で形成されている噴射材を使用することで、より基材への損傷が抑えられることが示された。
<付着物除去の評価>
基材の損傷評価が○若しくは△評価である実施例1〜11及び比較例2〜3の条件にて皮膜の除去を行った結果、いずれも○若しくは△評価となった。△評価は実用上の問題がない、若しくは加工条件の最適化により○評価となりうるものである。実施例1〜11及び比較例2〜3は、噴射材の衝突エネルギーが1.0×10−6〜1.0×10−4の範囲に含まれる。従って、この条件下では皮膜は十分に剥離できることが示された。
<基材の観察>
皮膜の除去を行った石英板の被加工面をSEMにて観察した。その結果、いずれも図5の左図のような性状であり、結晶粒界より脱離されることで除去されていた。実施例11では、一部に図4の中央図のような箇所が残っていた。これは、大半が結晶粒界より剥離されるが、全域において結晶粒界からの破壊の起点を形成するには硬度が低かったことによると推察される。
<金属成分の残留評価>
実施例7、比較例2、比較例3の条件にて、実際の治具(石英製)の付着物の除去を行った後、その治具を用いて基板にGaNの皮膜をMOCVD法にて形成した。皮膜形成後、TOF−SIMSによりGaN皮膜の深さ方向での成分分析を行った。その結果、実施例7の場合は金属成分が検出されなかったが、比較例2の場合はAlが、比較例3の場合はFeがそれぞれ検出された。検出されたAlとFeはそれぞれウレタンゴムの外縁に担持しているアルミナ、Feはステンレスに由来すると思われる。即ち、噴射材の金属成分が治具に残留し、それがGaN皮膜に入り込んだと考えられる。例えば、MOCVDにてLEDの発光素子を成膜した場合はこの金属成分により発光効率の低下する、など治具に残留した金属成分は成膜した皮膜の性能低下に繋がる。従って、噴射材として金属成分を含まない材質を用いるとよいことが示された。
以上の結果、次の事が示唆された。
(1)基材(治具)の損傷を低減して付着物の除去を行うには、治具の硬度より低く、且つ金属成分を含有しない噴射材を用いるとよい。
(2)効率よく付着物の除去を行うには、治具に対する噴射材の硬度と、噴射材が治具に衝突する際の衝突エネルギーと、のバランスが重要である。
一実施形態では、治具相当の基材として石英を選択し、表面に付着した皮膜の除去について説明したが、治具の材質は石英に限定されない。
一実施形態では、MOCVD法による成膜の際に使用する治具の付着物除去について説明したが、真空蒸着法やスパッタリング法等の物理的気相成長法(PVD)や熱CVDやプラズマCVD等の化学的気相成長法(CVD)等、あらゆる結晶成長による成膜プロセスにおいて使用する治具に付着する付着物を除去することができる。
一実施形態では、半導体デバイスの製造プロセスにおける皮膜プロセスについて説明したが、治工具の製造等他の製造工程における薄膜結晶による成膜プロセスにおいて使用される治具の付着物の除去について適用することができる。
01 加工装置
10 筐体
11 扉
12 ノズル固定治具
13 処理テーブル
14 移動機構
15 架台
20 定量供給機構
30 分離機構
31 貯留ホッパ
40 吸引機構
50 ノズル
60 制御機構
A 噴射領域
H1 エアホース
H2 噴射材ホース
R 加工室
T 走査軌跡
W ワーク

Claims (5)

  1. 薄膜結晶成長による成膜プロセスにて使用する治具に付着する付着物を前記治具から除去する付着物除去方法であって、
    前記治具の硬度より低く、且つ金属成分を含有しない噴射材を準備する工程と、
    前記噴射材を前記治具に向けて噴射する工程と、
    前記治具に向けて噴射された噴射材が前記治具に衝突する際の衝突エネルギーによって前記付着物を除去する工程と、
    を含み、
    前記噴射材は、少なくとも表層が樹脂で構成されており、
    前記付着物を除去する工程は、前記噴射材が前記治具に衝突したときに前記付着物の結晶粒界で破壊の起点を形成する工程と、前記噴射材をさらに衝突させて該結晶粒界を起点として界面破壊により該治具から脱離させる工程と、を含み、
    前記付着物は前記治具よりも硬質であり、
    前記付着物の除去は、平均粒子径が50〜400μmの前記噴射材を、1.0×10−6〜1.0×10−4Jの衝突エネルギーで前記治具に衝突させることを特徴とする付着物除去方法。
  2. 薄膜結晶成長による成膜プロセスにて使用する治具に付着する付着物を前記治具から除去する付着物除去方法は、
    前記治具の硬度より低く、且つ金属成分を含有しない噴射材を準備する工程と、
    前記噴射材を前記治具に向けて噴射する工程と、
    前記治具に向けて噴射された噴射材が前記治具に衝突する際の衝突エネルギーによって前記付着物を除去する工程と、
    を行った後に、
    付着物が付着した治具を加熱する工程と、前記噴射材を加熱した後の前記治具に向けて噴射する工程と、をさらに含むことを特徴とする付着物除去方法。
  3. 前記噴射材の外形が凸曲面で形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の付着物除去方法。
  4. 前記治具は石英ガラスで形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の付着物除去方法。
  5. 前記成膜プロセスは有機金属気相成長法であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の付着物除去方法。
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