ところで、水平架構にネットを張る場合、下方の保護対象機器のメンテナンスなどに際してネットを開いて保護対象機器の上方を開放する必要がある。特許文献1に記載の水平養生ネット装置では、ネットを水平方向に移動自在にすることで開口部を開放させるが、竜巻などにより飛来する飛来物は重量が大きいものが想定されるため、このような飛来物から保護対象機器を保護するネットは強固なものであり、水平に移動して開口部を開放させることは困難である。
一方、上述したように、竜巻などにより飛来する飛来物は重量が大きいものが想定されるため、このような飛来物から保護対象機器を保護するネットは強固なものであり、重量が嵩むため、水平架構にネットを張る場合、中央部分が垂れ下がって架構とネットの周囲との間に隙間が生じるおそれがある。
本発明は、上述した課題を解決するものであり、保護対象物の上方を覆うネットの開閉を行うことのできる飛来物防護設備および飛来物防護設備の開閉方法を提供することを第一目的とする。また、本発明は、保護対象物の上方を覆うネットの周囲と架構との間の隙間の発生を防ぐことのできる飛来物防護設備を提供することを第二目的とする。
上述の第一目的を達成するために、本発明の一態様に係る飛来物防護設備は、保護対象物の上方にて連結支持された複数の枠部材の内側に開口部を有する架構と、前記架構の前記枠部材が連結された隅部に掛け止められて前記開口部を塞ぐ網状部と、前記架構の前記枠部材に沿って当該枠部材の上方に配置された架台と、前記架台に対して着脱可能に設けられて前記架構の前記開口部の一部を跨ぐ架橋部材と、を有する。
この飛来物防護設備によれば、架橋部材により架構の開口部の一部を跨ぐことで、架橋部材が跨いている範囲以外で開口部を覆う網状部の一部を架構から外し、架構から外した網状部の一部を折り返して架橋部材に掛ければ、網状部の全てを架構から外すことなく開口部の一部を開放して保護対象物の保守などを行うことができる。この結果、保護対象物の上方を覆う網状部の開閉を容易に行うことができる。
また、本発明の一態様に係る飛来物防護設備では、前記架橋部材が足場を有することが好ましい。
この飛来物防護設備によれば、架橋部材が足場を有することで、網状部の開閉作業の作業性を向上することができる。
また、本発明の一態様に係る飛来物防護設備では、前記架橋部材の周りに着脱可能に設けられた手摺を有することが好ましい。
この飛来物防護設備によれば、架橋部材が手摺を有することで、網状部の開閉作業の安全性を向上することができる。
また、本発明の一態様に係る飛来物防護設備では、前記架橋部材が前記開口部を跨ぐ直下の前記網状部と前記架橋部材とを連結する網状部連結機構を有することが好ましい。
この飛来物防護設備によれば、架橋部材が跨いでいる範囲に設置されている網状部を架橋部材に連結することで、網状部の開閉しない部分が移動したり架構から外れたりすることを防止できる。
また、本発明の一態様に係る飛来物防護設備では、各前記枠部材の間に掛け渡されて前記網状部の下側に配置される支持ワイヤを有し、前記架橋部材が跨いでいる範囲に設置されている前記支持ワイヤと前記架橋部材とを連結するワイヤ連結機構を有することが好ましい。
この飛来物防護設備によれば、支持ワイヤを有する場合、架橋部材が跨いでいる範囲に設置されている支持ワイヤを架橋部材に連結することで、網状部の開閉しない部分が垂れ下がらないように支持ワイヤを介して下側から支持することができる。
また、本発明の一態様に係る飛来物防護設備では、前記架構の1つの前記開口部に複数隣接して設けられた前記網状部に対し、各前記網状部の一部に渡って前記架台に着脱可能に設けられるように前記架橋部材が複数連結可能に設けられていることが好ましい。
この飛来物防護設備によれば、架構の1つの開口部に複数隣接して設けられた網状部に対し、各網状部の一部に渡って架台に着脱可能に設けられるように架橋部材が複数連結可能に設けられていることで、複数の網状部の開閉作業を行うことができる。
上述の第一目的を達成するために、本発明の一態様に係る飛来物防護設備の開閉方法は、保護対象物の上方にて連結支持された複数の枠部材の内側に開口部を有する架構と、前記架構の前記枠部材が連結された隅部に掛け止められて前記開口部を塞ぐ網状部と、前記架構の前記枠部材に沿って当該枠部材の上方に支持された架台と、を有する飛来物防護設備の開閉方法であって、前記架台に対して着脱可能な架橋部材を前記架構の前記開口部の一部に跨いで配置する工程と、前記架橋部材が跨いている範囲以外で前記開口部を覆う前記網状部を前記架構から外す工程と、前記網状部の前記架構から外した部分を折り返して前記架橋部材に掛ける工程と、を含む。
この飛来物防護設備の開閉方法によれば、網状部の全てを架構から外すことなく開口部の一部を開放して保護対象物の保守などを行うことができる。この結果、保護対象物の上方を覆う網状部の開閉を容易に行うことができる。
上述の第二目的を達成するために、本発明の一態様に係る飛来物防護設備は、保護対象物の上方にて連結支持された複数の枠部材の内側に開口部を有する架構と、前記架構の前記枠部材が連結された隅部に掛け止められて前記開口部を塞ぐ網状部と、各前記枠部材の間に掛け渡されて前記網状部の下側に配置される支持ワイヤと、を有する。
この飛来物防護設備によれば、網状部が支持ワイヤにより上方に押し上げられて下方への弛みの発生を抑制できるため、網状部の外縁と枠部材との間の隙間が塞がれる。この結果、保護対象物の上方を覆う網状部の周囲と架構との間の隙間の発生を防ぐことができる。
また、本発明の一態様に係る飛来物防護設備では、前記網状部の周縁に前記網状部の外縁にワイヤロープが取り付けられており、前記支持ワイヤの折り返し状にした端を前記ワイヤロープに取り付ける固定部と、前記枠部材に固定されて前記支持ワイヤの折り返し状部分を掛ける掛止部と、前記掛止部を介して前記支持ワイヤの長さを調整する長さ調整機構と、を有することが好ましい。
この飛来物防護設備によれば、長さ調節機構により支持ワイヤを緊張させることで、網状部のワイヤロープを外側に引っ張り、かつ網状部の中程を上方に押し上げる。これにより、網状部の外縁が枠部材側に引き寄せられて、網状部の外縁と枠部材との間の隙間が塞がれる。この結果、保護対象物の上方を覆う網状部の周囲と架構との間の隙間の発生を防ぐことができる。また、この構造とすることにより、飛来物が衝突し支持ワイヤが切れた際に、網状部の中程の上方の押上げとワイヤロープに取り付ける固定部が同時に解放されるため、飛来物衝突時のネットの変形に対して影響を及ぼすことはない。
また、本発明の一態様に係る飛来物防護設備では、前記長さ調整機構は、前記枠部材の延在方向に沿って長さを調整可能に設けられていることが好ましい。
この飛来物防護設備によれば、枠部材の存在する限られた範囲において網状部の外縁に設けられたワイヤロープを枠部材側に引き寄せることができる。
また、本発明の一態様に係る飛来物防護設備では、前記長さ調整機構は、上下方向に沿って長さを調整可能に設けられていることが好ましい。
この飛来物防護設備によれば、上下方向に沿って長さを調整可能に設けられて網状部の外縁を上方に持ち上げるため、網状部が下方に垂れ下がる力に抗する力を効率的に付与することができる。
本発明によれば、保護対象物の上方を覆う網状部の開閉を容易に行うことができる。また、本発明によれば、保護対象物の上方を覆う網状部の周囲と架構との間の隙間の発生を防ぐことができる。
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
本実施形態の飛来物防護設備は、保護対象物に飛来物が到達することを抑制するものである。保護対象物には限定はないが、例えば、原子力施設において建屋の外に設置されるポンプやタンクなどの機器がある。そして、飛来物防護設備は、保護対象物の周りを囲む架構を設け、架構に網状部であるネットを張ることにより、ネットで保護対象物を覆う。
図1は、本実施形態に係る飛来物防護設備の網状部を示す平面図である。
網状部1は、上述したようにネットであり鋼線が例えば菱形に編まれたものである。網状部1は、その外周を囲むようにワイヤロープ2が設けられている。ワイヤロープ2は、網状部1の外形を作るもので、後述する架構51に設けられている4つの支柱部56に掛け止めることで、網状部1を架構51に取り付ける。
ワイヤロープ2は、鋼線または鋼線を束ねたもので、例えば、図1に示すように、第一ロープ2Aと、第二ロープ2Bと、第三ロープ2Cと、を有している。第一ロープ2Aは、図1に実線で示され、長方形状に形成された網状部1の短辺1Aに沿って配置され、各支柱部56に対応して4つ設けられている。第一ロープ2Aは、1つの短辺1Aに2つ設けられる。そのうちの一方の第一ロープ2Aは、1本のワイヤが中央で折り返されて両端を揃えて設けられターンバックル2Aaに接続される。他方の第一ロープ2Aも同様に1本のワイヤが中央で折り返されて両端を揃えて設けられ上記ターンバックル2Aaに接続される。すなわち、1つの短辺1Aに設けられる一方および他方の第一ロープ2Aは、ターンバックル2Aaで互いに接続される。一方および他方の第一ロープ2Aは、折り返し部分が網状部1の4つ角の切欠部1Cに配置されて切欠部1Cの網目を縫うように挿通され、その他の部分が短辺1Aに沿配置される。網状部1の各切欠部1Cは、各支柱部56を受容する部分であり、一方および他方の第一ロープ2Aは、折り返し部分が支柱部56に巻回して掛けられる。従って、ターンバックル2Aaの長さを縮めることで一方および他方の第一ロープ2Aが相互に近づいて各支柱部56間で緊張するため、網状部1の切欠部1Cを各支柱部56間で支持する。逆に、ターンバックル2Aaの長さを延ばすことで一方および他方の第一ロープ2Aが相互に離れて各支柱部56間で緩まるため、網状部1の切欠部1Cを各支柱部56間から取り外すことができる。なお、図には明示しないが、一方および他方の第一ロープ2Aは、1本で構成されて、両端が折り返されてターンバックル2Aaで連結される構成であってもよい。
第二ロープ2Bは、図1に破線で示され、1本のワイヤが網状部1の1つの長辺1Bと当該長辺1Bに繋がる1つの短辺1Aに沿って網状部1の網目を縫うように挿通されてL字形状に配置される。第二ロープ2Bは、長辺1Bに沿う側で一端が網状部1の切欠部1Cの部分で短辺1A側に折り曲げられて連結環(一般にシャックルと呼ばれる)2Baに連結される。この折り曲げられた第二ロープ2Bの一端側は支柱部56に掛けられる。連結環2Baは、後述する架構51の枠部材53に設けられたアイプレート57に固定される。また、第二ロープ2Bは、短辺1Aに沿う側で他端が網状部1の切欠部1Cの部分で折り返されてターンバックル2Bbに連結される。この折り返された他端側は支柱部56に掛けられる。ターンバックル2Bbは、後述する架構51の枠部材53に設けられたアイプレート57に固定される。また、第二ロープ2Bは、1つの長辺1Bと当該長辺1Bに繋がる1つの短辺1Aに沿うL字形状の屈曲部が支柱部56に掛けられる。従って、ターンバックル2Bbの長さを縮めることで第二ロープ2Bが3つの支柱部56間で緊張するため、網状部1の1つの長辺1Bと当該長辺1Bに繋がる1つの短辺1Aを3つの支柱部56間で支持する。逆に、ターンバックル2Bbの長さを延ばすことで第二ロープ2Bが3つの支柱部56間で緩まるため、網状部1の1つの長辺1Bと当該長辺1Bに繋がる1つの短辺1Aを3つの支柱部56間から取り外すことができる。
第三ロープ2Cは、図1に二点鎖線で示され、1本のワイヤが第二ロープ2Bを沿わせていない1つの長辺1Bと当該長辺1Bに繋がる1つの短辺1Aに沿って網状部1の網を縫うように挿通されてL字形状に配置される。第三ロープ2Cは、長辺1Bに沿う側で一端が網状部1の切欠部1Cの部分で短辺1A側に折り曲げられてターンバックル2Cbに連結される。この折り曲げられた第三ロープ2Cの一端側は支柱部56に掛けられる。ターンバックル2Cbは、ターンバックル2Bbと隣接して後述する架構51の枠部材53に設けられたアイプレート57に固定される。また、第三ロープ2Cは、短辺1Aに沿う側で他端が網状部1の切欠部1Cの部分で折り返されて連結環(一般にシャックルと呼ばれる)2Caに連結される。この折り返された他端側は支柱部56に掛けられる。連結環2Caは、連結環2Baと隣接して後述する架構51の枠部材53に設けられたアイプレート57に固定される。また、第三ロープ2Cは、1つの長辺1Bと当該長辺1Bに繋がる1つの短辺1Aに沿うL字形状の屈曲部が支柱部56に掛けられる。従って、ターンバックル2Cbの長さを縮めることで第三ロープ2Cが3つの支柱部56間で緊張するため、網状部1の1つの長辺1Bと当該長辺1Bに繋がる1つの短辺1Aを3つの支柱部56間で支持する。逆に、ターンバックル2Cbの長さを延ばすことで第三ロープ2Cが3つの支柱部56間で緩まるため、網状部1の1つの長辺1Bと当該長辺1Bに繋がる1つの短辺1Aを3つの支柱部56間から取り外すことができる。
なお、ワイヤロープ2は、上述した構成に限らない。網状部1の外周を囲み網状部1の網目を縫うように挿通されて、支柱部56に掛けられて枠部材53に取り付けられるものであればよい。
上述した網状部1は以下のように架構51に取り付けられる。図2および図3は、本実施形態に係る飛来物防護設備の網状部の取付工程を示す斜視図である。図4は、本実施形態に係る飛来物防護設備の網状部の取付工程を示す平面図である。
本実施形態における架構51は、保護対象物(図示せず)の上方を囲むものである。架構51は、鋼材にて構成された堅牢なものである。架構51は、4本の支柱52を平面視で長方形状の4隅に配置し、隣接する支柱52の上端部に枠部材53が連結されている。そして、架構51は、4本の枠部材53が平面視で長方形状に配置され、各枠部材53の内側に長方形状の開口部51Aを有する。また、架構51は、各支柱52の上端にスペーサ54が配置され、当該スペーサ54の上に架台55が支持されている。架台55は、スペーサ54の高さ分で各枠部材53の上方位置で、各枠部材53に沿って平面視で長方形状に配置されている。また、架構51は、各支柱52の上端であって、枠部材53がなす長方形状の開口部51Aの4隅に支柱部56が上方に延在して設けられている。支柱部56は、円柱形状に形成され上端にフランジが形成されている。また、架構51は、長方形状の短辺となる各枠部材53の上面にアイプレート57が設けられている。
このような架構51に網状部1を取り付ける場合、図2に示すように、網状部1の1つの短辺1Aにワイヤ101を掛けて吊り天秤102を介してバランスを維持しつつクレーン(図示せず)により吊り下げる。そして、図3に示すように、吊り下げた下端側の短辺1Aを長方形の短辺となる一方の枠部材53に合わせ、当該下端側の短辺1Aの両側に設けられたワイヤロープ2の折り返し部分を支柱部56に掛ける。その後、吊り下げた上端側の短辺1Aを長方形の短辺となる他方の枠部材53に合わせるように、ワイヤ101および吊り天秤102を移動させる。このワイヤ101および吊り天秤102の移動に際し、吊り天秤102の両端に介錯ロープ103を取り付けて移動を補助してもよい。その後、図4に示すように、残り全てのワイヤロープ2の折り返し部分を支柱部56に掛ける。そして、各ターンバックル2Aa,2Bb,2Cbを縮めてワイヤロープ2を緊張させ、網状部1を架構51に取り付ける。これにより、架構51の開口部51Aが網状部1で塞がれ、当該網状部1により架構51の下方の保護対象物を飛来物から保護する。なお、網状部1は1つに限らず、同様の取付工程により複数層に重ねて設けてもよい。
図5は、本実施形態に係る飛来物防護設備の網状部の支持ワイヤの取付形態を示す平面図である。図6は、本実施形態に係る飛来物防護設備の網状部の支持ワイヤの他の取付形態を示す側面図である。図7は、本実施形態に係る飛来物防護設備の網状部の支持ワイヤの他の取付形態を示す一部拡大側面図である。
本実施形態の飛来物防護設備は、図2から図4に示すように、支持ワイヤ3を有する。支持ワイヤ3は、水平方向で対向する枠部材53間に掛け渡されて網状部1の下側に配置される。支持ワイヤ3は、鋼線または鋼線を束ねたものである。支持ワイヤ3は、少なくとも水平方向で対向する枠部材53間に1本掛け渡される。本実施形態では、支持ワイヤ3は、網状部1の短辺1A間で長辺1Bに平行に3本の支持ワイヤ3Aと、長辺1B間で短辺1Aに平行に1本の支持ワイヤ3Bとを有する。支持ワイヤ3Bは、長辺1Bの中央に配置される。
この支持ワイヤ3(3A,3B)は、その両端が枠部材53に掛け止められている。具体的に、図5に示すように、支持ワイヤ3は、端3aに固定部である連結環(一般にシャックルと呼ばれる)7が設けられている。支持ワイヤ3が掛け止められる枠部材53は、その上面において上方に延在する棒状の掛止部58が設けられている。掛止部58は、上端にフランジが設けられている。また、枠部材53は、その上面に固定されたアイプレート59を介して長さ調整機構であるターンバックル8が取り付けられている。この支持ワイヤ3は、折り返し状にした端3aを連結環7により網状部1のワイヤロープ2に取り付け、当該折り返した二重部分を掛止部58に掛け、折り返した環の部分をターンバックル8に取り付ける。支持ワイヤ3は、この構成を両端に備える。または、支持ワイヤ3は、この構成を一端に備えて、他端は折り返した環の部分をターンバックル8を介さずアイプレート59に取り付けてもよい。そして、ターンバックル8を縮めると、支持ワイヤ3が緊張され、網状部1の対向する辺のワイヤロープ2を外側に引っ張り、かつ網状部1の中程を上方に押し上げる。これにより、網状部1の外縁が枠部材53側に引き寄せられて、網状部1の外縁と枠部材53との間の隙間が塞がれる。この結果、保護対象物の上方を覆う網状部1の周囲と架構51との間の隙間の発生を防ぐことができる。なお、掛止部58はターンバックル8の配置により無しとすることも複数設けることも可能である。
しかも、本実施形態の飛来物防護設備では、長さ調整機構であるターンバックル8が枠部材53の延在方向に沿って設けられていることが好ましく、このように構成することで、枠部材53の上面の限られた範囲において網状部1の外縁に設けられたワイヤロープ2を枠部材53側に引き寄せることができる。
ところで、支持ワイヤ3は、網状部1を架構51に取り付ける際、または取り外す際には、連結環7により端3aがワイヤロープ2に取り付けられた状態とし、ターンバックル8から、またはアイプレート59から外すことで、図2および図3に示すように、網状部1と共に架構51に対する取り付けや取り外しが可能である。
図6および図7に示す飛来物防護設備は、枠部材53の開口部51A側の上縁部に滑車9が設けられている。そして、滑車9の上方に長さ調整機構であるネジ機構10が設けられている。ネジ機構10は、滑車9の直上に滑車11が設けられ、さらに滑車11の直上に滑車12が設けられている。ネジ機構10は、ネジ部10Aと、当該ネジ部10Aに螺合するナット部10Bとを有している。ネジ部10Aは、枠部材53に固定されて、滑車9および滑車11が設けられている。ナット部10Bは、枠部材53には関わらず滑車12が設けられている。そして、ナット部10Bを回転させると、ナット部10B自体が上下に移動し、この移動に伴い滑車11,12の上下距離が変化する。
そして、図6に示すように、支持ワイヤ3(3A,3B)は、開口部51A側から滑車9の上で滑車12との間に通して滑車11,12に掛かるように折り返し状にした端3aを連結環7により網状部1のワイヤロープ2に取り付ける。支持ワイヤ3は、この構成を両端に備える。または、支持ワイヤ3は、この構成を一端に備えて、他端は折り返した環の部分を滑車9のみの構成に掛けてもよい。そして、ネジ機構10を上方に延ばすと支持ワイヤ3の折り返し部分の環が大きくなって支持ワイヤ3が緊張され、網状部1の対向する辺のワイヤロープ2を外側に引っ張り、かつ網状部1の中程を上方に押し上げる。これにより、網状部1の外縁が枠部材53側に引き寄せられて、網状部1の外縁と枠部材53との間の隙間が塞がれる。この結果、保護対象物の上方を覆う網状部1の周囲と架構51との間の隙間の発生を防ぐことができる。しかも、長さ調整機構であるネジ機構10は、上下方向に沿って長さを調整可能に設けられて網状部1の外縁を上方に持ち上げるため、網状部1が下方に垂れ下がる力に抗する力を効率的に付与することができる。
なお、枠部材53の開口部51A側の上縁部に滑車9が設けられて、支持ワイヤ3を滑車9の上に掛けることで、支持ワイヤ3における枠部材53との接触を阻止し、支持ワイヤ3の傷つきを防止することができる。滑車9は、図5に示す形態にも適用可能である。
図8は、本実施形態に係る飛来物防護設備の網状部の開放工程を示す斜視図である。図9は、本実施形態に係る飛来物防護設備の網状部の開放工程を示す平面図である。図10は、図9のA部分拡大斜視図である。図11は、図9のB部分拡大断面図である。図12は、図9のC部分拡大断面図である。図13は、図9のD部分拡大断面図である。図14は、図9のE部分拡大断面図である。図15から図17は、本実施形態に係る飛来物防護設備の網状部の開放工程を示す斜視図である。
架構51の下方の保護対象物を保守する場合、上述した飛来物防護設備において網状部1を開ける。この場合、網状部1を架構51から全て外してしまうことは大がかりな作業となるため、網状部1の一部を開ける構成とした。
具体的に、本実施形態の飛来物防護設備では、図8および図9に示すように、枠部材53に沿って枠部材53の上方に配置された架台55を有し、この架台55に対して着脱可能に設けられて架構51の開口部51Aの一部を跨ぐ架橋部材61を有する。
架橋部材61は、本実施形態では網状部1の長辺1Bの半分までの上部を跨ぐように構成されている。この架橋部材61は、複数の足場62が枠部63に固定されている。枠部63は、架台55に取り付けられるもので、架台55の短辺とその両側の長辺の半分までの3辺に支持される。足場62は、板状に形成されており、枠部63の枠内において、網状部1の長辺1Bに沿って平行配置された2枚と、この2枚の足場62の間で網状部1の短辺1Aに平行な2枚と、を有する。また、架橋部材61は、足場62の外縁に沿って手摺64が立設されている。この手摺64は、架橋部材61に対して着脱可能に設けられている。
この架橋部材61は、図8に示すように、ワイヤ101を掛けてクレーン(図示せず)により吊り下げて架構51の上に運ばれ、図9に示すように、架台55の上に設置される。架橋部材61は、網状部1の短辺1Aに沿う位置の枠部63が架台55の上面に載せられる。また、架橋部材61は、図9および図10に示すように、一方の長辺1Bに沿う位置の枠部63が、架台55の上面に載せられ、固定のボルト受部67にストッパ65がボルト66で取り付けられることで枠部63の枠外方向への移動を規制される。また、架橋部材61は、図9および図11に示すように、他方の長辺1Bに沿う位置の枠部63が、架台55の内側に突出して上方に折れ曲がるL字形状の固定アングル68における突出部分に載せられ、上方に折れ曲がる部分に対して固定のボルト受部70がボルト69で取り付けられる。
また、架橋部材61は、自身が開口部51Aを跨いでいる直下の網状部1や支持ワイヤ3を連結機構により連結する。具体的に、架橋部材61は、図9および図12に示すように、一方の長辺1Bに沿う位置の枠部63に固定のアイプレート71に、連結環(一般にシャックルと呼ばれる)72および固縛部材(例えば、ベルトラッシング)73を介して網状部1のワイヤロープ2が連結される(網状部連結機構)。また、架橋部材61は、図9および図13に示すように、他方の長辺1Bに沿う位置の枠部63に、固縛部材(例えば、ベルトラッシング)74を介して網状部1のワイヤロープ2が連結される(網状部連結機構)。また、架橋部材61は、図9および図14に示すように、枠部63または足場62の縁に固定のアイプレート75に、固縛部材(例えば、ベルトラッシング)76を介して支持ワイヤ3(長辺1Bに沿う各支持ワイヤ3A)が連結される(ワイヤ連結機構)。支持ワイヤ3Aは、延在方向の複数箇所(本実施形態では3箇所)で架橋部材61に連結され、複数の固縛部材76により水平となるように網状部1と共に持ち上げられる。
このように、架橋部材61は、架台55に取り付けられ、当該架橋部材61が開口部51Aを跨ぐ直下の網状部1を連結する。この架橋部材61を架台55に取り付ける作業、および架橋部材61に網状部1を連結する作業は、架橋部材61の足場62に作業者が載って行う。なお、図9に示すように、架構51の側部には、メンテナンス用の足場60が設けられており、作業者は、この足場60から架橋部材61の足場62に移動して作業を行う。この作業の後、図15に示すように、手摺64を取り外す。
その後、図16に示すように、架橋部材61が跨いでいる範囲以外で架構51の開口部51Aを覆う網状部1を架構51から外す。具体的には、架橋部材61が跨いでいる範囲以外に設置されている網状部1において、ワイヤロープ2を緩めて支柱部56から外し(図16では一方の短辺1A側)、その部分にワイヤ101を掛けて吊り天秤102を介してバランスを維持しつつクレーン(図示せず)により吊り上げる。そして、図17に示すように、吊り上げた部分を架橋部材61の上にひっくり返すように折り返して掛ける。掛けた部分をロープなどで架橋部材61に留めてもよい。この作業において、支持ワイヤ3(3A)は、網状部1に取り付けたままとして網状部1と共に吊り上げてもよいが、図17に示すように、網状部1とは別に吊り上げて、吊り上げた部分を架橋部材61の上にひっくり返すように折り返して掛けてもよい。また、掛けた部分をロープなどで架橋部材61に留めてもよい。
なお、架橋部材61が跨いでいる範囲に設置されている網状部1においては、上述したように架橋部材61に対して網状部連結機構により連結されているため、移動したり支柱部56から外れたりすることを防止できる。
網状部1を元に戻すには、上述した作業を逆手順で行う。
このように、本実施形態の飛来物防護設備は、保護対象物の上方にて連結支持された複数の枠部材53の内側に開口部51Aを有する架構51と、架構51の枠部材53が連結された隅部に掛け止められて開口部51Aを塞ぐ網状部1と、架構51の枠部材53に沿って枠部材53の上方に配置された架台55と、架台55に対して着脱可能に設けられて架構51の開口部51Aの一部を跨ぐ架橋部材61と、を有する。
この飛来物防護設備によれば、架橋部材61により架構51の開口部51Aの一部を跨ぐことで、架橋部材61が跨いている範囲以外で開口部51Aを覆う網状部1の一部を架構51から外し、架構51から外した網状部1の一部を折り返して架橋部材61に掛ければ、網状部1の全てを架構51から外すことなく開口部51Aの一部を開放して保護対象物の保守などを行うことができる。この結果、保護対象物の上方を覆う網状部1の開閉を容易に行うことができる。
また、本実施形態の飛来物防護設備では、架橋部材61が足場62を有することが好ましい。
この飛来物防護設備によれば、架橋部材61が足場62を有することで、網状部1の開閉作業の作業性を向上することができる。
また、本実施形態の飛来物防護設備では、架橋部材61の周りに着脱可能に設けられた手摺64を有することが好ましい。
この飛来物防護設備によれば、架橋部材61が手摺64を有することで、網状部1の開閉作業の安全性を向上することができる。
また、本実施形態の飛来物防護設備では、架橋部材61が開口部51Aを跨ぐ直下の網状部1と架橋部材61とを連結する網状部連結機構を有することが好ましい。
この飛来物防護設備によれば、架橋部材61が跨いでいる範囲に設置されている網状部1を架橋部材61に連結することで、網状部1の開閉しない部分が移動したり架構51から外れたりすることを防止できる。
また、本実施形態の飛来物防護設備では、枠部材53に掛け渡されて網状部1の下側に配置される支持ワイヤ3を有し、架橋部材61が跨いでいる範囲に設置されている支持ワイヤ3と架橋部材61とを連結するワイヤ連結機構を有することが好ましい。
この飛来物防護設備によれば、支持ワイヤ3を有する場合、架橋部材61が跨いでいる範囲に設置されている支持ワイヤ3を架橋部材61に連結することで、網状部1の開閉しない部分が垂れ下がらないように支持ワイヤ3を介して下側から支持することができる。
また、本実施形態の飛来物防護設備の開閉方法は、保護対象物の上方にて連結支持された複数の枠部材53の内側に開口部51Aを有する架構51と、架構51の枠部材53が連結された隅部に掛け止められて開口部51Aを塞ぐ網状部1と、架構51の枠部材53に沿って当該枠部材53の上方に支持された架台55と、を有する飛来物防護設備の開閉方法であって、架台55に対して着脱可能な架橋部材61を架構51の開口部51Aの一部に跨いで配置する工程と、架橋部材61が跨いている範囲以外で開口部51Aを覆う網状部1の一部を架構51から外す工程と、網状部1の架構51から外した部分を折り返して架橋部材61に掛ける工程と、を含む。
この飛来物防護設備の開閉方法によれば、網状部1の全てを架構51から外すことなく開口部51Aの一部を開放して保護対象物の保守などを行うことができる。この結果、保護対象物の上方を覆う網状部1の開閉を容易に行うことができる。
ところで、図18は、本実施形態に係る飛来物防護設備の他の例を示す斜視図である。
図18に示す架構51は、枠部材53で囲む開口部51Aを、2つ隣接して設けた網状部1により覆う構成である。そして、枠部材53に沿って枠部材53の上方に設けた架台55に着脱可能な上述した架橋部材61を複数(図18では2つ)連結可能にし、隣接する網状部1に渡って設置する。
このように、架構51の1つの開口部51Aに複数隣接して設けられた網状部1に対し、各網状部1の一部に渡って架台55に着脱可能に設けられるように架橋部材61が複数連結可能に設けられていることで、複数の網状部1の開閉作業を行うことができる。