JP6747824B2 - 繊維シートおよび繊維シートの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、繊維シートおよび繊維シートの製造方法に関する。
従来より、ウェットティッシュ、フェイスマスク、化粧用コットン、クレンジングシートのような対人用繊維製品として、繊維が集合してなる繊維シートが利用されている。このような対人用繊維製品には、適度な柔軟性が求められる傾向がある。たとえば、特開平10−237750号公報(特許文献1)には、適度な柔軟性を有する対人用繊維製品として、親水性繊維、ポリエステル繊維、および熱接着性繊維からなる繊維ウェブにより構成される不織布が開示されている。
特開平10−237750号公報
ところで、上記のような対人用繊維製品には、製造時、梱包時等においては、取扱いの容易性の観点から、ある程度の硬さ(加工性)を有することが望まれる。しかし、上記のような従来の技術では、ユーザーによる使用時における肌触りの良好さ(柔軟性)を確保するために、繊維シートそのものが柔らかく設計される傾向があり、故に製造時、梱包時に求められる加工性が不十分なのが実情であった。
本発明の目的は、使用時の肌触りの良好さを有するにも関わらず、加工性に優れた繊維シートおよび繊維シートの製造方法を提供することにある。
本発明は、以下に示す繊維シートおよび繊維シートの製造方法を提供する。
[1] 繊維が集合してなる繊維シートであって、10〜500g/m2の目付量を有し、繊維シートの乾燥状態における剛軟度HDRYと、繊維シートの湿潤状態における剛軟度HWETとの比HDRY/HWETが、2〜10である、繊維シート。
[2] 繊維の少なくとも一部は、幹部と、該幹部から延出するフィブリル部とを有し、繊維シートは、任意の繊維が有するフィブリル部の少なくとも一部が、他の任意の繊維が有するフィブリル部または他の任意の繊維が有する幹部に水素結合してなるネットワーク構造を有し、繊維シートの表面の285μm×419μmの区画を観察したときに、異なる2本の幹部を結合するフィブリル部の結合点の数NFと、幹部の数NBとの比NF/NBが、2以上である、[1]に記載の繊維シート。
[3] 繊維の少なくとも一部は、幹部と、該幹部から延出するフィブリル部とを有し、繊維シートは、任意の繊維が有するフィブリル部の少なくとも一部が、他の任意の繊維が有するフィブリル部または他の任意の繊維が有する幹部に水素結合してなるネットワーク構造を有し、繊維シートの表面の285μm×419μmの区画を観察したときに、異なる2本の幹部を結合するフィブリル部の結合点の数NFが、50以上である、[1]または[2]に記載の繊維シート。
[4] 繊維シートの面内方向における少なくとも一方向において、荷重20N/5cmにおける引張伸び率が5%未満である、[1]〜[3]のいずれかに記載の繊維シート。
[5] 繊維は、20mm以上の繊維長を有する、[1]〜[4]のいずれかに記載の繊維シート。
[6] 繊維は、セルロース系繊維である、[1]〜[5]のいずれかに記載の繊維シート。
[7] 繊維のうち5質量%以上は、テンセル(登録商標)である、[1]〜[6]のいずれかに記載の繊維シート。
[8] 繊維の全ては、テンセル(登録商標)である、[7]に記載の繊維シート。
[9] 繊維シートは、対人用繊維製品に用いられる繊維シートである、[1]〜[8]のいずれかに記載の繊維シート。
[10] 複数本の繊維を集合させてシート状の第1前駆体を形成する工程と、第1前駆体の厚み方向において、少なくとも一方側からキャビテーションエネルギーを与えることにより、繊維からフィブリル部を起毛させて、第2前駆体を形成する工程と、第2前駆体のうち、フィブリル部が起毛する表面に熱媒体を接触させて表面を乾燥させる工程と、を備える、繊維シートの製造方法。
本発明によれば、使用時の肌触りの良好さを有するにも関わらず、加工性に優れた繊維シートを提供することができる。
本発明の繊維シートの表面構造を示す走査型電子顕微鏡写真である。 繊維が有する幹部およびフィブリル部を説明するための模式図である。 繊維シートが有するネットワーク構造を説明するための模式図である。 結合点を説明するための模式図である。
以下、実施の形態を示して本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において「A〜B」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上B以下)を意味しており、Aにおいて単位の記載がなく、Bにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とBの単位とは同じである。
<繊維シート>
本発明者らは、ユーザーによる使用時に要求される肌触りの良好さと、製造時および/または梱包時等の使用時以外の時に要求される加工容易性との両特性を兼ね備える繊維シートを得るべく、考察を重ねた。そして、使用時以外の時には、繊維シートは乾燥状態にあるのに対し、ユーザーによる使用時には、水、化粧水、美容液、クレンジング剤等の液体成分が繊維シートに含有されるために、繊維シートは湿潤状態にあることに着眼した。
そこで、上記着眼点に基づき、鋭意検討を重ねることにより、本発明の繊維シートを完成させた。すなわち、本発明の繊維シートは、繊維が集合してなる繊維シートであって、以下、(1)および(2)を満たす繊維シートである。
(1)10〜500g/m2の目付量を有し、
(2)繊維シートの乾燥状態における剛軟度HDRYと、繊維シートの湿潤状態における剛軟度HWETとの比HDRY/HWETが、2〜10である。
上記「繊維シート」は、繊維が集合してなるものであり、具体的には、織布(織物)、編み物、レース、フェルト、不織布などの複数本の繊維の集合体が挙げられる。用途に応じて繊維シートは適宜選択することができ、たとえば繰り返し使用する用途であれば、織物、編み物から選択することが耐久性の面で好ましく、使い捨ての用途においては、価格の面から不織布を選択することが好ましい。
上記(1)に関し、目付量は、 JIS L 1906に準じ、温度20℃、湿度65%の標準状態に繊維シートの試験片を24時間放置後、幅方向1m×長さ方向1mの試料を採取し、天秤を用いて重量(g)を測定する。得られた重量(g)の小数点第2位を四捨五入した値を、繊維シートの目付量とする。
上記(2)に関し、剛軟度HDRYおよび剛軟度HWETは、JIS L 1096 8.21 1A法(45°カンチレバー法)(2011繊維)により測定される。具体的には、300mm×300mmの試料を、50℃で1時間予備乾燥を行ない、標準状態(温度20℃、相対湿度65%)で24時間放置する。その後、測定試料として20mm×150mmの形状に切り出し、これを乾燥状態の繊維シートとした。一方、乾燥状態の繊維シート(測定試料)を、20℃の水に24時間浸漬し、その後該繊維シートを水から取り出して布帛上に静置して水を切り、繊維シートの400重量%の含水状態に調整したものを、湿潤状態の繊維シートとした。
各繊維シートを剛軟度試験機(好適には、「剛軟度試験機CAN−1MC型」、大栄科学精器製作所製)に供し、JIS L 1096 8.21 1A法(45°カンチレバー法)に準じ、剛軟度(mm)を測定する。乾燥状態の繊維シートおよび湿潤状態の繊維シートを、それぞれ表と裏とで5回ずつ測定し、各平均値を、繊維シートの乾燥状態における剛軟度HDRY、および繊維シートの湿潤状態における剛軟度HWETとする。
本発明の繊維シートは、上記(1)および(2)を満たすことにより、湿潤状態においては、優れた肌触りの良さ(柔軟性)を発揮することができ、乾燥状態においては、優れた加工性を発揮することができる。
一方、上記目付量が10g/cm2未満の場合、乾燥状態における繊維シートの形状が適切に維持されず、また湿潤状態での取り扱い性が不十分となる。また、上記目付量が500g/m2を超える場合、繊維量が多くなることで乾燥状態における繊維シートの剛性が増し過ぎるために、本発明による加工性に関する効果が小さくなる。また、繊維量が多くなることで、湿潤状態での柔軟性が損なわれる。上記目付量は、好ましくは15〜300g/m2であり、より好ましくは30〜210g/m2である。
また、上記比HDRY/HWETが10を超える場合、HDRYが大きすぎたり、HWETが低すぎたりする傾向がある。HDRYが大きすぎると、反って加工性が低下する場合があり、HWETが低すぎると、反って肌触りが悪くなる場合がある。また、上記比HDRY/HWETが2未満の場合には、乾燥状態での加工性と湿潤状態での柔軟性との両特性が不十分となる傾向がある。上記比HDRY/HWETは、好ましくは2〜10であり、より好ましくは2〜8であり、さらに好ましくは3〜6である。
ここで、繊維シートには、機械方向(MD方向)および幅方向(CD方向)がある場合がある。このような繊維シートとして、たとえば、スパンレース法により形成されるスパンレース不織布が挙げられる。この場合、MD方向における上記比HDRY/HWETと、CD方向における上記比HDRY/HWETは、上記範囲内であれば、同じであっても良いし、異なっていても良い。特に、MD方向における上記比HDRY/HWETは、好ましくは2.5〜10であり、より好ましくは3〜8であり、さらに好ましくは3〜5である。CD方向における上記比HDRY/HWETは、好ましくは2〜10であり、より好ましくは3〜8であり、さらに好ましくは3〜6である。
上記(1)および(2)を満たす繊維シートとして、繊維の少なくとも一部が、幹部と、該幹部から延出するフィブリル部とを有し、繊維シートは、任意の繊維が有するフィブリル部の少なくとも一部が、他の任意の繊維が有するフィブリル部または他の任意の繊維が有する幹部に水素結合してなるネットワーク構造を有し、繊維の表面の285μm×419μmの区画を観察したときに、異なる2本の幹部を結合するフィブリル部の結合点の数NFと、幹部の数NBとの比NF/NBが、2以上である、繊維シートが挙げられる。このような繊維シートについて、図1〜図4を用いながら説明する。
図1は、繊維シート1の表面構造を示す走査型電子顕微鏡写真(300倍)であり、図2は、繊維2が有する幹部2aおよびフィブリル部2bを説明するための模式図である。図3は、繊維シート1が有するネットワーク構造3を説明するための模式図であり、図4は、結合点を説明するための模式図である。
図1〜図3に示されるように、繊維シート1の繊維2の少なくとも一部は、幹部2aと、該幹部2aから延出するフィブリル部2bとを有する。なお、繊維シート1の全ての繊維2が、幹部2aおよびフィブリル部2bを有していてもよく、繊維シート1の一部の繊維2のみが、幹部2aおよびフィブリル部2bを有していてもよい。
フィブリル部2bは、繊維2に発生した亀裂を起点として、繊維2から分裂(フィブリル化)したより小さな繊維(小繊維)であり、直径0.005μm以上0.05μm未満のいわゆる「ミクロフィブリル」および直径0.05〜5μmのいわゆる「マクロフィブリル」の両方を包含する。一方、幹部2aは、フィブリル部2bが繊維2から分裂した後の繊維2の基本骨格である。したがって、幹部2aの直径は、繊維の直径から、該繊維から分裂したフィブリル部2bの直径を差し引いたものとみなすことができる。
そして、図3に示されるように、繊維シート1は、任意の繊維2が有するフィブリル部2bの少なくも一部が、他の任意の繊維2が有するフィブリル部2bまたは他の任意の繊維2が有する幹部2aに水素結合してなるネットワーク構造3を有している。繊維シート1がネットワーク構造3を有することは、走査型電子顕微鏡での観察により確認することができる(図1参照)。
数NFおよび数NBは、具体的には、次のようにして求めることができる。まず、走査型電子顕微鏡(好適には、「S−3400N型」、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、繊維シート1の表面285μm×419μmの区画を10箇所撮像する。そして、各画像を観察して、異なる2本の幹部2aを結合するフィブリル部2bの結合点の数、および幹部2aの数を求め、10個の画像での各平均値をそれぞれ算出し、各値を数NFおよび数NBとする。
ここで、図4を用いて、結合点の数え方について説明する。図4においては、各繊維2の見分けが容易となるように、各繊維を異なるハッチングで示す。繊維22は、幹部2aとフィブリル部2b1〜2b3とを有し、繊維23は、幹部2a2とフィブリル部2b4〜2b7とを有し、繊維24は、幹部2a3とフィブリル部2b8〜2b11とを有している。フィブリル部2b1〜2b11のうち、フィブリル部2b3およびフィブリル部2b10は、自身の延出元である幹部2a1および幹部2a3以外の幹部、および他のフィブリル部のいずれとも水素結合していない。一方、フィブリル部2b1,2b2,2b4〜2b9,2b11は、自身の延出元である幹部以外の幹部および/またはフィブリル部と水素結合している。すなわち、フィブリル部2b1,2b2,2b4〜2b9,2b11が、ネットワーク構造3を構成するフィブリル部である。そして、ネットワーク構造3を構成する各フィブリル部と幹部とが結合する部分(図4において一点鎖線で囲む部分)の数(ここでは19個)を、結合点の数とする。
なお、観察画像において、フィブリル部と幹部とが水素結合している場合と、実際には水素結合しておらず、単に深度方向に重なって見えている場合とを区別することは難しい。このため、本明細書においては、画像において両者が重なって見える場合(すなわち、上記のいずれの場合に関しても)、結合点の測定対象とする。また、観察画像においては、繊維シートの最表面に位置する繊維だけなく、繊維シートの内部(ある程度の深度までに位置する)繊維も観察されるが、少なくとも幹部2aおよびフィブリル部2bとして区別可能に観察される場合には、これらも測定対象とする。また、走査型電子顕微鏡の撮影倍率をたとえば5000倍以上にすると、フィブリル部2bがさらに細かく枝分かれしていることが観察でき、厳密には数十ナノメートルのフィブリル部が観察できる場合があるが、厳密にそれらの本数をカウントすることは不可能である。したがって、数NFは、たとえば走査型電子顕微鏡を用いて300倍の倍率で撮影し、1本のフィブリル部2bと幹部2aとの交点を数えることが好ましい。
本発明者らは、このような繊維シート1が、上記(1)および(2)を満たすことができ、もって、乾燥状態での加工性と湿潤状態での柔軟性とのバランスに優れる理由について、次のように考察する。
上述のようなネットワーク構造3を有する繊維シート1は、ネットワーク構造3を有さない従来の繊維シートと比して、剛軟度HDRYが高くなる傾向がある。乾燥状態おいて、水素結合からなるシート間ネットワーク構造3は、強固であるためである。一方で、水素結合からなるシート間ネットワーク構造3に対し、水分を含む液体成分が付与された場合、すなわち繊維シート1の湿潤時には、シート間ネットワーク構造3を構成する水素結合は容易に外れてしまう。このため、剛軟度HWETは剛軟度HDRYと比して低くなる傾向がある。
特に、繊維シート1の表面の285μm×419μmの区画を観察したときに、異なる2本の幹部2aを結合するフィブリル部2bの結合点の数NFと、幹部2aの数NBとの比NF/NBが、2以上である場合に、剛軟度HDRYが十分に高くなり、かつ剛軟度HWETが十分に低くなる。これにより、繊維シート1は、湿潤状態において、優れた肌触りの良さ(柔軟性)を発揮することができ、乾燥状態において、優れた加工性を発揮することができる。
上記繊維シート1において、比NF/NBは好ましくは2.3以上であり、より好ましくは4以上であり、さらに好ましくは4.5以上である。この場合、ネットワーク構造3が密となるため、剛軟度HDRYをさらに高めることができ、これにより比HDRY/HWETを高めることができる。なお、比NF/NBの上限値は特に制限されないが、95以下であることが好ましい。95を超えると、幹部2aが細くなり過ぎて、繊維シート1の強度が維持し難くなる傾向があるためである。
また上記数NFは、好ましくは、50以上であり、より好ましくは70以上であり、さらに好ましくは100以上である。この場合にも、ネットワーク構造3が密となるため、剛軟度HDRYをさらに高めることができ、これにより比HDRY/HWETを高めることができる。なお、数NFの上限値に関し、上記測定方法にて測定する場合の上限値は特に制限されないが、50000以下であることが好ましい。50000を超えると、幹部2aが細くなり過ぎて、繊維シート1の強度が維持し難くなる傾向があるためである。
また、図2に示されるように、繊維シート1の繊維2において、フィブリル部2bは、繊維シート1の厚み方向Zに延びるフィブリル部2b’を含んでいることが好ましい。ここで、「繊維シートの厚み方向Zに延びる」とは、フィブリル部2b’が延びる方向であると仮想した直線Fが厚み方向Zに対し成す角度α(幹部2aと、該幹部2aから起毛したフィブリル部2b’の根元部分との角度)が−60°〜+60°の範囲内であることを指す(図2には、厚み方向に対し成す角度αが正の数値である場合(実線)、厚み方向に対し成す角度αが負の数値である場合(鎖線)をそれぞれ模式的に示している)。なお、繊維シート1の断面を観察した際、厚み方向に重なり合う繊維2の上下の位置関係が明確であって、その上下の2つの繊維2をフィブリル部2bが結合していることが確認できれば、上記角度が計測不可能であっても、本明細書でいう「繊維シートの厚み方向Zに延びる」フィブリルに包含されるものとする。
繊維シート1が、その厚み方向Zに延びるフィブリル部2b’を含むことは、たとえば、走査型電子顕微鏡(好適には、「S−3400N型」、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、繊維シート1の断面を観察することによる確認できる。
繊維シート1は、このように観察したときに、繊維シート1の厚み方向に延びるフィブリル部2bの本数の平均が、幅300μm×繊維シートの厚みの区画において、10本以上である領域を備えることが好ましく、20本以上である領域を備えることがより好ましい。このような場合、たとえば対人用ワイパーとしての使用時に、化粧水等の液体成分の保水性により優れることができる。なお、フィブリル部2bの本数の測定において、走査型電子顕微鏡の撮影倍率を5000倍未満、好ましくは300倍とすることは、上記と同様である。
以上詳述した本発明の繊維シートは、不織布であることが好ましい。不織布で繊維シートを形成する場合、不織布以外で繊維シートを形成する場合と比較して、繊維間に空隙を作りやすい、安価に製造できるなどの利点があるためである。なかでも、繊維シートは、スパンレース不織布であることが好ましい。スパンレース不織布においては、スパンレース以外の手法で不織布を形成した場合と比較して、シートとしての形態、強度を得るために熱可塑性樹脂などの接着成分を用いる必要がなく、たとえば、フィブリルを有する繊維の配合比率を自由に設定できるという利点がある。
本発明の繊維シートの厚みは、好ましくは0.05〜10mmであり、より好ましくは0.1〜4mmであり、さらに好ましくは0.5〜2.5mmである。このような厚みの繊維シートは、対人用繊維製品に好適に用いられる。繊維シートがフィブリルを有する繊維シートであり、かつ厚みが0.05mm未満である場合には、繊維シートの厚み方向に関しネットワーク構造を形成するのに繊維本数が十分でない傾向にあり、厚みが10mmを超える場合には、繊維量が多くなり過ぎることで、湿潤状態の繊維シート自体の柔軟性が損なわれる傾向がある。
また本発明の繊維シートにおいて、空隙率は好ましくは75%以上であり、より好ましくは80%以上である。繊維シートの空隙率が75%未満である場合、空隙が小さ過ぎ、保液能力が十分でない恐れがある。また、本発明の繊維シートにおいて、空隙率は好ましくは97%以下であり、より好ましくは95%以下である。繊維シートの空隙率が97%を超える場合には、繊維シートの繊維密度が小さく、その形状(たとえばシート状)の維持が困難となる恐れがある。繊維シートの空隙率は、繊維シートの目付量、厚み、および繊維の平均比重を用いて算出することができる。
また本発明の繊維シート(乾燥状態)において、面内方向における少なくとも一方向(たとえば、MD方向またはCD方向)についての破断強度SDRYは、好ましくは10N/5cm以上であり、より好ましくは15N/5cm以上であり、さらに好ましくは20N/5cm以上である。中でも、面内方向にて直交する二方向(たとえば、MD方向およびCD方向)における各破断強度SDRYがこれを満たすことが好ましい。このような繊維シートは、高い強度を有することができる。
また本発明の繊維シート(湿潤状態)においても、面内方向における少なくとも一方向(たとえば、MD方向またはCD方向)についての破断強度SWETは、好ましくは10N/5cm以上であり、より好ましくは15N/5cm以上であり、さらに好ましくは20N/5cm以上である。中でも、面内方向にて直交する二方向(たとえば、MD方向およびCD方向)における各破断強度SWETがこれを満たすことが好ましい。このような繊維シートは、高い強度を有することができる。
また本発明の繊維シート(乾燥状態)において、面内方向における少なくとも一方向(たとえば、MD方向)についての荷重20N/5cmにおける引張伸び率は、好ましくは5%未満であり、より好ましくは3%以下であり、さらに好ましくは2%以下である。このような繊維シートは、高い寸法安定性を有することができる。
なお、上記破断強度および引張伸び率は、JIS L1913「一般短繊維不織布試験方法」に準じて測定された値を指す。
また本発明の繊維シートにおいて、見かけ密度は、好ましくは0.015〜0.45g/cm3であり、より好ましくは0.045〜0.37g/cm3であり、さらに好ましくは0.08〜0.30g/cm3である。従来の技術では、このような低密度の繊維シートにおいて、高い剛軟度HDRYを実現することはできないが、本発明、たとえば上述の実施形態に係る繊維シート1によれば、このような低密度においても、高い剛軟度HDRYを実現することができる。見かけ密度は、JIS L 1913「一般不織布試験方法」に準じて、目付量(g/m2)と厚み(mm)とを算出し、目付量を厚みで除することにより求められる。
本発明の繊維シートを構成する繊維は、特に制限されないが、フィブリルを有する繊維であることが好ましい。上記で示した繊維シート1を形成できるためである。フィブリルを有する繊維としては、セルロース系繊維(レンチング社製「テンセル(登録商標)」、旭化成社製「キュプラ」、ナノバル社製「NANOVAL」など)、パラ系アラミド繊維(ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(東レ・デュポン社製「ケブラー(登録商標)」、テイジン・アラミド社製「トワロン」);コポリパラフェニレン−3,4−ジフェニールエーテルテレフタルアミド繊維(帝人テクノプロダクツ社製「テクノーラ(登録商標)」)など)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維(東洋紡績社製「ザイロン」など)、全芳香族ポリエステル繊維(クラレ社製「ベクトラン」など)、ポリケトン繊維(旭化成社製「サイバロン」など)、超高分子量ポリエチレン繊維(東洋紡績社製「ダイニーマ」、ハネゥエル社製「スペクトラ」など)、メタ系アラミド繊維(ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(デュポン社製「ノーメックス」、帝人テクノプロダクツ社製「コーネックス」))、ポリビニルアルコール系繊維(クラレ社製「クラロン」)などが挙げられる。これらの繊維は高配向繊維であるため好ましい繊維である。
上記のフィブリルを有する繊維に関し、液体を好適に拡散吸収し得、さらには汎用繊維で入手が容易で価格が安いという利点を有することから、セルロース系繊維(セルロースを原料とした繊維)が好ましい。セルロース系繊維としては、天然セルロース繊維、再生セルロース繊維、精製セルロース繊維などが好適な例として挙げられる。具体的には、コットン、麻、パルプなどの天然セルロース繊維、レーヨン、キュプラなどの再生セルロース繊維、テンセル(登録商標)などの精製セルロース繊維などが挙げられる。中でも、その高い分子量により高強度であり、湿潤時にも強度が殆ど低下しない点でテンセル(登録商標)が好ましい。具体的には、本発明の繊維シートを構成する繊維のうち5質量%以上がテンセル(登録商標)であることが好ましく、繊維の全てがテンセル(登録商標)であることがより好ましい。
また、本発明の繊維シートにおけるフィブリルを有する繊維は、溶剤紡糸によって製造される溶剤紡糸セルロース繊維であることが好ましい。このような溶剤紡糸セルロース繊維としては、木材パルプをNMMO(N−メチルモルフォリン−N−オキサイド)を溶媒として、NMMO/水/セルロース=80%/10%/10%の配合比で溶解させ紡糸した繊維である上述のテンセル(登録商標)が挙げられる。
フィブリルを有する繊維の繊度は、特に制限されないが、0.01〜5.5dtexの範囲が好ましい。繊維の繊度が0.01dtex未満である場合には、繊維強度が低くなることによって繊維シートの強度が低くなる傾向にあるためであり、また、繊度が5.5dtexを超える場合には、繊維シートにおける繊維間の距離が大きくなることから、ネットワーク構造が形成されにくい傾向にあるためである。強度と適度な繊維空間(空隙)を好適に形成できるという理由からは、繊維の繊度は、0.7〜5.0dtexの範囲がより好ましく、1.3〜3.8dtexの範囲が特に好ましい。
また、繊維シートが有するフィブリル部は、5〜100000のアスペクト比を有することが好ましい。このようなフィブリル部は、その長さが十分であることによりネットワーク構造を形成し易いという利点がある。上記アスペクト比は、より好ましくは10〜1000であり、さらに好ましくは、20〜1000である。なおフィブリル部のアスペクト比とは、フィブリル部の径に対する長さの比(長さ/径)である。
また本発明の繊維シートにおける繊維の繊維長は特に制限されないが、たとえば20mm以上とすることが好ましい。このような長繊維を用いた繊維シートは、たとえばスパンレース法によって不織布として作製することができる。繊維長が20mm未満の場合、形成される繊維シートの密度が高くなるため、フィブリルによるネットワーク形成に必要な繊維間の空隙が確保され難くなる。上記繊維長は、より好ましくは25〜60mmであり、さらに好ましくは32〜51mmである。
なお、本発明の繊維シートにおいて、上述の効果を奏する限り、上述のフィブリルを有する繊維以外の繊維が含まれていても良い。フィブリルを有する繊維以外の繊維は、その目的に応じて自由に選択することができ、特に制限されるものではないが、たとえば合成繊維が挙げられる。また、嵩高にするために、他の繊維としてポリエステル繊維を混合するようにしてもよい。さらに、芯鞘構造を有する従来公知の適宜の複合繊維を他の繊維として用いるようにしてもよい。
他の繊維の繊度は特に制限されるものではないが、0.1〜5.5dtexの範囲が好ましく、0.5〜3.8dtexの範囲がより好ましく、1.3〜3.8dtexの範囲がさらに好ましい。他の繊維の繊度が0.1dtex未満である場合には、繊維シートの密度が高くなるため、フィブリルによるネットワーク構造の形成に必要な繊維間の空隙が確保できない傾向にある。他の繊維の繊度が5.5dtexを超える場合には、繊維シートの繊維間の距離が大きくなることから、フィブリルによるネットワーク構造の形成が困難となる傾向にある。また、他の繊維の繊維長についても特に制限されるものではなく、上述したフィブリルを有する繊維と同様に、20mm以上とすることができる。
他の繊維を混合する場合、他の繊維を混合することで本発明の繊維シートに空隙を作りやすく働くため好ましく、その一方で他の繊維の混合率が高くなるとフィブリルによるネットワーク構造の形成が困難となる方向に働く。このため、重量比で、フィブリルを有する繊維が、当該フィブリルを有する繊維および他の繊維全体のうち20%以上を占めることが好ましく、50%以上を占めることがより好ましい。フィブリルを有する繊維が20%未満である場合には、上述のようなネットワーク構造が形成されにくくなってしまうためである。
以上詳述した本発明の繊維シートは、対人用繊維製品の繊維シートとして、好適に用いられる。使用時以外(すなわち乾燥状態)では、高い寸法安定性と、高い剛軟度HDRYを有するために、梱包、搬送、およびユーザーの取り扱い等の点で優れ、使用時(すなわち湿潤状態)では、低い剛軟度HWETを有するために、柔軟性に優れるためである。対人用繊維製品としては、ウェットティッシュ、フェイスマスク、化粧用コットン、クレンジングシートなどが挙げられる。また、対人用繊維製品として本発明の繊維シートを用いるにあたって、繊維シートを2つ以上積層させてもよい。
<繊維シートの製造方法>
本発明の繊維シートの製造方法について説明する。ここでは、実施形態として、フィブリルを有する繊維からなる繊維シートの製造方法について説明する。
本実施形態の製造方法は、複数本の繊維を集合させてシート状の第1前駆体を形成する工程(第1工程)と、第1前駆体の厚み方向において、少なくとも一方側からキャビテーションエネルギーを与えることにより、繊維からフィブリル部を起毛させて、第2前駆体を形成する工程(第2工程)と、第2前駆体のうち、フィブリル部が起毛する表面に熱媒体を接触させることにより、第2前駆体を乾燥させる工程(第3工程)と、を備える。
(第1工程)
本実施形態の製造方法においては、まず、シート状の第1前駆体が形成される。第1前駆体は、フィブリルを有する繊維として好ましいものとして上述した繊維を用いて、または、場合によっては他の繊維として好ましいものとして上述した繊維を混合して、既存の加工技術(織物、編み物、レース、フェルト、不織布(乾式、湿式のいずれでもよい)の製法)を特に制限なく用いて形成することができる。
第1前駆体は、好ましくは、スパンレース(水流)にて繊維を三次元交絡させた不織布であることが好ましい。なお、第1前駆体は、複数層から形成されていても勿論よいが、その場合には、次のキャビテーションエネルギーを与える側に、フィブリルを有する繊維で形成された層が露出するようにする必要がある。
(第2工程)
次に、得られた第1前駆体に、その厚み方向において少なくとも一方側からキャビテーションエネルギーを与える。当該工程は、上述の工程で第1前駆体を形成し、そのまま行ってもよいし、形成後に一旦巻き取られた第1前駆体を取り出して行ってもよい。これにより、繊維からフィブリル部が起毛された、第2前駆体が形成される。
キャビテーションエネルギーを与える方法としては、第1前駆体を媒体となる液体(一般には水が用いられる)に浸漬しながら、第1前駆体に超音波を適用することにより、キャビテーションエネルギーを与える方法がある。超音波エネルギーを与える場合、媒体中で、第1前駆体を、超音波発振器から発生する電気エネルギーを機械振動エネルギーに変換するホーンの近くに配置し、超音波に曝す方法がある。超音波の振動方向は、第1前駆体に対して垂直方向となる縦振動が好ましい。第1前駆体とホーンの距離は、約1mm未満とし、ホーンから1/4の波長距離に配置することが好ましいが、第1前駆体をホーンに接触配置させてもよい。
キャビテーションの強度、およびキャビテーションに曝す時間は、第1前駆体における繊維の種類やフィブリル化の程度に応じて調整するのがよい。キャビテーションの強度が高くなればなるほど、フィブリル部の生成速度が速くなり、より細く、かつアスペクト比の大きいフィブリル部が生成され易くなる。超音波振動周波数は、通常10〜500kHz、好ましくは10〜100kHz、更に好ましくは10〜40kHzである。
媒体の温度は特に限定されるものではなく、10〜100℃とするのが好ましい。処理時間は、第1前駆体における繊維の種類、目的とする繊維シートの形態、繊維の繊度によって異なる。処理時間は0.005秒以上10分未満、好ましくは0.01秒以上2分未満、さらに好ましくは0.02秒以上1秒未満である。処理時間と同様に処理回数によってもネットワーク構造の密度を調整することができる。処理回数は特に限定されないが、2回以上の処理を行うことが好ましい。
第1前駆体に液体が含浸されている状態であれば、超音波によるキャビテーション処理は大気中でも構わない。ただし、大気中で第1前駆体を超音波処理した場合、霧吹きのように液体が放出されてしまうので、数秒程度超音波処理した後、液体を第1前駆体に含浸させることを繰り返すか、常時液体を第1前駆体に垂れ流しながら、第1前駆体に超音波処理を行う方法が好ましい。この場合、特に超音波の振動方向は第1前駆体に対して垂直方向となる縦振動が好ましい。
当該第2工程は、繰り返し実施されてもよい。たとえば、第1前駆体の一方の表面側からキャビテーションエネルギーを与えた後に、該第1前駆体の他方の表面側からキャビテーションエネルギーを与えても良い。この場合、第1前駆体の両面において、多くのフィブリル部を起毛させることができる。
(第3工程)
次に、得られた第2前駆体のうち、フィブリル部が起毛する表面(キャビテーションエネルギーが与えられた表面)に熱媒体を接触させて、この表面を乾燥させる。これにより、第2前駆体の表面に起毛したフィブリル部が、第2前駆体の表面を構成する幹部、または他のフィブリル部に接触した状態で第2前駆体が乾燥されるため、第2前駆体の表面において、フィブリル部と幹部との水素結合が多数発生することとなる。このようにして、第2前駆体が乾燥されることにより、上述の繊維シートが得られる。
熱媒体は特に制限されないが、たとえばシリンダー乾燥機を用いることができる。特に、熱媒体の表面構造は鏡面加工などが施された平滑な面であることが好ましい。これにより、第2前駆体の表面において、フィブリル部と幹部との接触頻度をより向上させることができ、もって緻密な(高い密度の)ネットワーク構造の構成が可能となる。また熱媒体の温度は、繊維の種類、第2前駆体の目付量、媒体量(水分量)等によって適宜調整されるが、たとえば、100〜150℃が好ましい。また、乾燥に要する処理時間についても、繊維の種類、第2前駆体の目付量、水分量等によって適宜調整されるが、30秒間〜10分間であることが好ましい。
また、第2前駆体に対し、第2前駆体の目付量に対して、50〜500%の水分を均一に含ませた状態で、第3工程を実施することが好ましい。これにより、より均一にフィブリル部による水素結合を形成することができ、もってネットワーク構造をより均一に形成させることができる。
以上詳述した製造方法によれば、上述のフィブリル部を有する繊維を含む、本発明の繊維シートを製造することができる。
特に、キャビテーションエネルギーが与えられた表面が、シート状の第1前駆体のうちの一方の面の場合には、当該一方の面側においては他方の面側と比較して、より多くのフィブリル部が起毛する傾向がある。より具体的には、他方の面側から一方の面側に向けて、フィブリル部の数が増加する傾向がある。なお、一方の面側の表面において、フィブリル部の数が最も多くなる。
したがって、たとえば、シート状の第1前駆体の両面に対して、キャビテーションエネルギーが与えられた場合、繊維シートの両面においてフィブリル部が多数存在し、繊維シートの厚み方向において内側に向かうに連れて、フィブリル部の数が減少する傾向がある。
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例における各物性値の測定方法は次のとおりである。
〔1〕繊維シートの目付量(g/m2
JIS L 1906に準じ、温度20℃、湿度65%の標準状態に繊維シートの試験片を24時間放置後、幅方向1m×長さ方向1mの試料を採取し、天秤を用いて重量(g)を測定する。得られた重量(g)の小数点第2位を四捨五入して目付量とした。
〔2〕繊維シートの厚み(mm)
剃刀(フェザー安全剃刀(株)製「フェザー剃刃S片刃」)を用いて、サンプルを表面に対して垂直なMD方向に切断し、デジタル顕微鏡[(株)キーエンス(KEYENCE)製デジタルマイクロスコープ(DIGITALMICROSCOPE)VHX−900]にて試料の断面を観察し厚さを計測した。
〔3〕繊維シートの見かけ密度(g/cm3
目付量(g/m2)を厚み(mm)で除して、見かけ密度を求めた。
〔4〕繊維シートの空隙率(%)
目付量E(g/m2)、厚みF(μm)および繊維の平均比重G(g/cm2)から、下記式
空隙率(%)=100−((E/F/G)×100)
により空隙率(%)を算出した。
〔5〕破断強度S(N/5cm)
JIS L 1913「一般短繊維不織布試験方法」に準じて、繊維シートのMD方向およびCD方向に関し、乾燥状態および湿潤状態における各々の破断強度を測定した。
〔6〕破断伸度E(%)
JIS L 1913「一般短繊維不織布試験方法」に準じて、繊維シートの機械方向(MD)および幅方向(CD)に関し、乾燥状態および湿潤状態における各々の破断伸度をそれぞれ測定した。
〔7〕引張伸び率(%)
JIS L 1913「一般短繊維不織布試験方法」に準じて、繊維シートのMD方向に関し、乾燥状態における引張伸び率(%)を測定した。具体的には、乾燥状態の繊維シートのMD方向において、破断強度(N/5cm)の測定(上記〔5〕)を実施し、その際、繊維シートに対して20Nの応力が負荷された時の引張伸び率(%)を測定した。
〔8〕剛軟度HDRYおよび剛軟度HWETの比HDRY/HWET
300mm×300mmの繊維シートを、50℃で1時間予備乾燥を行ない、標準状態(温度20℃、相対湿度65%)で24時間放置する。その後、測定試料として20mm×150mmの形状に切り出し、これを乾燥状態の繊維シートとした。一方、乾燥状態の繊維シートを、20℃の水に24時間浸漬し、その後該繊維シートを水から取り出して布帛上に静置して水を切り、繊維シートの400重量%の含水状態に調整したものを、湿潤状態の繊維シートとした。各繊維シートを剛軟度試験機(「剛軟度試験機CAN−1MC型」、大栄科学精器製作所製)に供し、JIS L 1096 8.21 1A法(45°カンチレバー法)に準じ、剛軟度(mm)を測定した。乾燥状態の繊維シートおよび湿潤状態の繊維シートを、それぞれ表と裏とで5回ずつ測定し、各平均値を、繊維シートの乾燥状態における剛軟度HDRY、および繊維シートの湿潤状態における剛軟度HWETとした。
〔9〕結合点の数NFおよび幹部の数NBの比NF/NB
繊維シートの表面を、走査型電子顕微鏡(「S−3400N型」、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて繊維シートの表面の285μm×419μmの区画を10箇所観察(撮影倍率:300倍)し、異なる2本の幹部を結合するフィブリル部の結合点の数と、幹部の数とを測定して、各値の平均値を算出し、各平均値を数NFおよび数NBとし、比NF/NBを算出した。
〔10〕加工による幅収縮率評価
本発明の繊維シートは、ウェットティッシュ、フェイスマスク、化粧用コットン、クレンジングシートのような対人用繊維製品の用途目的に応じた後加工が行なわれる場合がある。このような後加工としては、たとえばリワインド(巻き返し)加工、スリット加工、打ち抜き加工、折りたたみ加工、シール加工、複合加工などがあげられる。いずれの加工においても繊維シートには工程を通過させる為の張力がかかる。このような加工時の寸法安定性を、代表的なリワインド(巻き返し)加工による幅の収縮率で求めた。
具体的には、30cm(CD方向)×200m(MD方向)に切り出した繊維シートからなる試験片を、サーフェイスリール(大昌鉄工所)を用いて、200m/minの速度でリワインド(巻き返し処理)し、その後、これを巻きほどき、リワインド前後における試験片の幅(CD方向)の変化率を算出した。リワインド前の幅の測定は、試験片の一端で行った。リワインド後の幅の測定は、試験片の一端および該一端から20mm間隔の各箇所(9カ所)で実施した。そして、リワインド後の試験片にて測定した合計10カ所の平均値J(mm)およびリワインド前の試験片にて測定した値K(mm)から、下記式
幅収縮率(%)=J/K×100
により幅収縮率(%)を算出した。
〔11〕官能評価
繊維シートを5cm×5cmにカットしたシートを作製し、シートの中央部分に3mlのイオン交換水を滴下した。そして、滴下から60秒後に、10人の被験者(20代、30代、40代、50代、60代の女性各2人ずつ)が、該シートを用いて、それぞれ頬、瞼、唇、腕、手の甲の皮膚を擦り、その際の刺激を、以下の3つの判定基準で官能評価を行った。
AAA:柔軟で肌触りがとても良い。
AA:不快な刺激をわずかに感じる。
A:明らかに不快な刺激を感じる。
そして、以下の基準に基づいて、官能評価結果を判定した。
+++:AAA評価が6人以上。
++:AAA評価が4〜5人。
+:AAA評価が0〜3人。
<実施例1>
(第1工程)
繊度1.7dtex、繊維長38mmのテンセル(登録商標)(レンチング社製)を用い、CADでセミランダムウェブを作成した。次いで、水流による三次元絡合処理を施した。ウエブを金属製多孔性支持部材上に載置し、直径0.10mmの噴射孔がウエブの幅方向に間隔0.6mm毎に設けられた1列のノズルを用い、それぞれ水流を水圧3MPa、5MPaの順で噴射し交絡させた(第1交絡処理)。更にウエブの表裏を搬送コンベアで反転させ、ポリエステル平織りメッシュ(日本フィルコン株式会社製、OP−76)支持体上に載置し、1列のノズルにおけるそれぞれ水流を水圧3MPa、5MPaの順で噴射し三次元絡合させた(第2交絡処理)。これら一連の処理を5m/分の速度で行ない、スパンレース不織布(第1前駆体)を得た。
(第2工程)
次に、精電舎電子工業株式会社製の超音波加工機を用い、関西金網株式会社製ナイロン平織りメッシュ(線径160μm、#200)で形成された支持体上で、スパンレース不織布の片面に、出力:1200W、周波数:20kHz、水温:25℃で、水浴超音波加工により0.2秒間を行なった。これにより、フィブリル部が起毛した繊維シート(第2前駆体)を得た。
(第3工程)
次に、第2工程後の繊維シートにおいて、フィブリル加工が施された面に、鏡面加工されたシリンダー乾燥機を押し当てて、130℃で1分間、乾燥処理を行った。これにより、第2前駆体が乾燥され、ネットワーク構造を有する繊維シートが作製された。得られた繊維シートについて、それぞれ評価した結果を表1に示す。
<実施例2>
繊度1.3dtex、繊維長38mmのテンセル(登録商標)(レンチング社製)を用い、第1交絡処理および第2交絡処理のそれぞれにおいて、水流を2MPa、3MPaの順で噴射した以外は、実施例1と同様の方法により、繊維シートを作製した。
<実施例3>
繊度1.7dtex、繊維長38mmのテンセル(登録商標)(レンチング社製)と、再生セルロースである繊度1.7dtex、繊維長40mmのビスコースレーヨン(コロナ、オーミケンシ社製)とを、重量比で50:50となるように均一に混合させた繊維を用い、第1交絡処理および第2交絡処理のそれぞれにおいて、水流を5MPa、8MPa、10MPaとした以外は、実施例1と同様の方法により、繊維シートを作製した。
<比較例1>
繊維として、繊度1.7dtex、繊維長38mmのテンセル(登録商標)(レンチング社製)と、繊度1.7dtex、繊維長51mmの芯鞘複合繊維(芯:ポリプロピレン、鞘:ポリエチレン、「HR−NTW」、宇部日東株式会社製)とを、重量比で75:25となるように均一に混合させた繊維を用いた。また、第2工程を実施せず、第3工程における乾燥処理の条件を、135℃、1分間とした以外は、実施例1と同様の方法により、繊維シートを作製した。
<比較例2>
第2工程を実施しなかった以外は、実施例1と同様の方法により、繊維シートを作製した。
<比較例3>
繊度3.8dtex、繊維長51mmの分割繊維(ナイロン6とポリエチレンテレフタレートの質量比:33/67、「WRAMP W102」、(株)クラレ製)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、繊維シートを作製した。
表1に示される実施例1〜3の繊維シートは、ネットワーク構造を有する繊維シートであって、本発明に含まれる。一方、比較例1〜3の繊維シートは、ネットワーク構造を有さない繊維シートである。
表1における「幅収縮率(%)」は、繊維シートの高速リワインド(巻き戻し)加工における寸法安定性を示しており、値が小さいほど、繊維シートが加工時の工程張力変動の影響を受けにくく、流れ方向の寸法が安定していることを意味する。また「引張伸び率(%)」も同様に、値が小さいほど、繊維シートが加工時の工程張力変動の影響を受けにくく、流れ方向の寸法が安定していることを意味する。また「官能評価」は、スパンレース不織布の湿潤状態における柔軟性の良好さを示しており、「+++」が最も肌触りが良好であり、「++」が普通の肌触りであり、「+」が肌触りが不良であることを意味する。
表1を参照し、上述の(1)および(2)を満たす実施例1〜3の繊維シートは、高い寸法安定性、すなわち加工性に優れつつ、ユーザーによる使用時において、良好な柔軟性を発揮できることが確認された。なお、一般的に、幅収縮率が2%を超える場合、該値を超えない場合と比して、その幅の精度(形状安定性)が顕著に低下する傾向がある。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲および実施例と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 繊維シート、2,22,23,24 繊維、2a,2a1〜2a3 幹部、2b,2b’,2b1〜2b11 フィブリル部、3 ネットワーク構造。

Claims (10)

  1. 繊維が集合してなる繊維シートであって、
    10〜500g/m2の目付量を有し、
    前記繊維シートの乾燥状態における剛軟度HDRYと、前記繊維シートの湿潤状態における剛軟度HWETとの比HDRY/HWETが、2〜10であり、
    前記繊維は、精製セルロース繊維またはポリビニルアルコール系繊維含み、
    前記繊維の少なくとも一部は、幹部と、該幹部から延出するフィブリル部とを有する、繊維シート。
  2. 前記繊維シートは、任意の繊維が有するフィブリル部の少なくとも一部が、他の任意の繊維が有するフィブリル部または他の任意の繊維が有する幹部に水素結合してなるネットワーク構造を有し、
    前記繊維シートの表面の285μm×419μmの区画を観察したときに、異なる2本の幹部を結合するフィブリル部の結合点の数NFと、幹部の数NBとの比NF/NBが、2以上である、請求項1に記載の繊維シート。
  3. 前記繊維シートは、任意の繊維が有するフィブリル部の少なくとも一部が、他の任意の繊維が有するフィブリル部または他の任意の繊維が有する幹部に水素結合してなるネットワーク構造を有し、
    前記繊維シートの表面の285μm×419μmの区画を観察したときに、異なる2本の幹部を結合するフィブリル部の結合点の数NFが、50以上である、請求項1または請求項2に記載の繊維シート。
  4. 前記繊維シートの面内方向における少なくとも一方向において、荷重20N/5cmにおける引張伸び率が5%未満である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の繊維シート。
  5. 前記繊維は、20mm以上の繊維長を有する、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の繊維シート。
  6. 前記繊維は、精製セルロース繊維である、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の繊維シート。
  7. 前記繊維のうち5質量%以上は、テンセル(登録商標)である、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の繊維シート。
  8. 前記繊維の全ては、テンセル(登録商標)である、請求項7に記載の繊維シート。
  9. 前記繊維シートは、対人用繊維製品に用いられる繊維シートである、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の繊維シート。
  10. 複数本の繊維を集合させてシート状の第1前駆体を形成する工程と、
    前記第1前駆体の厚み方向において、少なくとも一方側からキャビテーションエネルギーを与えることにより、繊維からフィブリル部を起毛させて、第2前駆体を形成する工程と、
    前記第2前駆体のうち、前記フィブリル部が起毛する表面に熱媒体を接触させて、前記表面を乾燥させる工程と、を備え、
    前記繊維は、精製セルロース繊維またはポリビニルアルコール系繊維含む、繊維シートの製造方法。
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