JP6740891B2 - ハット形鋼矢板 - Google Patents
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Description
しかしながら、冷間加工(曲げ加工)で成形される鋼矢板は、その製法上から、ウェブ、フランジ、アームのいずれの部位においても、ほぼ同一の板厚となるため、板厚を薄くした場合、以下のような問題が生ずる。
壁体に曲げモーメントが作用した場合、ハット形鋼矢板において最も大きな応力が作用する箇所は、最外縁および最内縁に位置するウェブおよびアームである。
これに対して、ウェブは断面剛性が小さく、板厚を薄くした場合、全ての部位でほぼ同一の板厚になる冷間加工で形成されるハット形鋼矢板では、最も弱点箇所になる。このため、曲げモーメントによる圧縮応力が作用した場合、早期に座屈が生じ、期待される降伏耐力(降伏モーメント)または全塑性モーメントよりも小さい荷重レベル(曲げモーメント)で壁体が崩壊する危険性がある(変形性能の低下)。
前記ウェブ部に、鋼矢板全長にわたって、以下の式(1)および式(2)を満足する突起形状部を有することを特徴とするものである。
前記ウェブ部に、鋼矢板全長にわたって、以下の式(1)および式(3)を満足する突起形状部を有することを特徴とするものである。
前記ウェブ部に、鋼矢板全長にわたって、以下の式(1)および式(4)を満足する突起形状部を有することを特徴とするものである。
本発明の一実施の形態に係るハット形鋼矢板1は、冷間加工(曲げ加工)により製造されたものであって、図1に示すように、ウェブ部3の両端に一対のフランジ部5が形成され、各フランジ部5の端部に一対のアーム部7が形成されるとともに、各アーム部7の先端に一対の継手部9が設けられたものであって、ウェブ部3に、鋼矢板全長にわたって、以下の式(1)および式(2)を満足する突起形状部11を有することを特徴とするものである。
また、式(2)は、鋼矢板断面の変形性能を規定するものであり、この値が1.0より小さい場合は、降伏モーメントに到達する前に、弾性座屈により崩壊するレベルとなる。
以下、式(1)及び式(2)を導出した経緯について説明する。
この場合の変形性能の増分率は、1.67/0.79−1=1.11と表すことができる。
具体的には、(突起形状部の高さV)/(ウェブ幅B)を、0.02から0.135まで変えたときの、変形性能の増分について調査した。
(突起形状部の高さV)/(ウェブ幅B)が大きくなるほど、変形性能の増分率が大きくなる傾向にあるが、(突起形状部の高さV)/(ウェブ幅B)が1/16未満の場合、変形性能の増分率は微小(0.3以下)となっており、十分な変形性能の向上が果たされない。そこで、本発明においては、必要な突起形状部11の高さを式(1)とした。
V≧B/16 ・・・・(1)
本発明の対象であるハット形鋼矢板1において、弱点箇所になるウェブ部3は直線状であり、その両端が曲げられフランジ部5へと続く形状になっている。
この形状に類似する形状を有する構造体として、図5に示すような四角形断面を有する角型鋼管が挙げられる。すなわち角型鋼管における一辺に着目すると、その両端が90°に曲げられて、四角形が形成されており、直線状の板要素の両端を曲げられて形成されている点でハット形と類似している。
そこで、図6の横軸の一般化幅厚比βに(H/B)0.1を乗じて、ウェブ幅の補正を行った。補正幅厚比β2(=B/t×εy 0.5×(H/B)0.1)と変形性能μの関係を図7に示す。補正幅厚比β2を用いた下記に示す変形性能評価式(7)と解析結果はよく一致した。
ウェブ部3に突起形状部を設けることにより、ウェブ部3の断面剛性が増大することから、ハット形鋼矢板1の変形性能向上がもたらされる。この効果について、変形性能評価式(7)においては、板厚tを見かけ上、増大させることで表現できる。そこで、突起形状部を設けることによるウェブ板厚増大効果分をΔtとすると、変形性能評価式は式(8)となる。
これらを考慮して、解析結果との比較を行った結果、Δtを式(9)で評価すれば、近似できることがわかった。
なお、ウェブ中央に突起形状部11を1つ設けたケースの他、図9に示すように、突起形状部11を2箇所設けたケースや、図10に示すように突起形状部11を3箇所設けたケースについても検討した。
ハット形鋼矢板1を用いた壁体構造は、仮設壁と本設壁(永久構造)とに大別される。一般に仮設壁においては、鋼矢板は弾性範囲内(降伏荷重レベル以下)での挙動を想定して設計される(弾性設計という)。
一方、本設壁(永久構造)では、供用期間が長いことから、大地震を受けた場合の設計が行われることもあり、その際は、降伏荷重到達以降の塑性域での挙動を想定して設計される(塑性設計という)。
弾性設計においては、想定される作用力は降伏荷重以下であることから、図3に示す、作用荷重/降伏荷重と変形性能の関係を例にとると、変形性能μ=1.0(降伏荷重到達時)までの鋼矢板の性能を保証すれば良いこととなる。
よって、弾性設計を想定する場合は、ハット形鋼矢板1の変形性能μが1.5≦μ≦10となるようにすることが好ましい。
以上から、式(2)(および式(1))を満足するよう、ウェブ部3に突起形状部11を設けることとした。
上記の実施の形態1では、ハット形鋼矢板1を仮設壁として適用する場合であったが、本実施の形態では、本設壁(永久構造)として適用する場合(塑性設計への適用)の変形性能μの値について検討した。
本実施の形態は、道路構造や港湾構造への適用に好適な鋼矢板に関するものである。
道路構造、港湾構造の本設構造では塑性設計が行われるが、一般に変形性能μ=4が要求性能の上限とされる。
したがって、道路構造や港湾構造に適用される場合には、ハット形鋼矢板1の変形性能μが2.0≦μ≦4.0となるよう、式(4)(および式(1))を満足するよう、ウェブ部3に突起形状部11を設けるようにすればよい。
本発明では式(1)によってV≧B/16と規定しており、この式(1)にW=5×V(最大幅越え)を代入すると、W≧B×5/16となる。これは突起形状部の付け根の幅Wが、ウェブ幅Bに対して約1/3以上を占めることとなり、ウェブの中央に突起形状を配した場合、その両端のウェブ平行部の長さが付け根の幅Wを下回ることとなり、ウェブ部に作用する土水圧がウェブ全体にバランスよく伝わらなくなる懸念があるとともに、鋼矢板壁方向に沿って切梁、腹起しを設置する際、十分な荷重伝達ができなくなる可能性がある。そこで、これを避けるため、W<5×Vとするのが望ましい。
また、複数の突起形状部11を設ける場合には、突起形状部11の高さは同じである必要はなく、異なる高さとしてもよい。
さらに、突起形状部11の張出し方向(突出方向)について、上記の説明では、ウェブ部3の内面側に張出す場合を例に挙げて説明したが、本発明においては突起形状部11の張出し方向はこれに限定されず、ウェブ部3の外面側に張出すようにしてもよい。
鋼矢板断面高さが高い場合、突起をフランジ部に設けても良い。その場合は、フランジ中央付近につけてもよいし、フランジ付け根近傍もしくはアーム部7付け根近傍につけてもよい。
3 ウェブ部
5 フランジ部
7 アーム部
9 継手部
11 突起形状部
13 ハット形鋼矢板(突起形状部のないもの)
Claims (3)
- ウェブ部の両端に一対のフランジ部が形成され、各フランジ部の端部に一対のアーム部が形成されるとともに、各アーム部の先端に一対の継手部が設けられ、冷間加工によって成形され、仮設壁に用いられるハット形鋼矢板において、
前記ウェブ部は、鋼矢板全長にわたる突起形状部を有し、該突起形状部は、前記ウェブ部の内面側又は外面側に張り出すように屈曲形成され、以下の式(1)、式(2)、式(5)及び式(6)を満足することを特徴とするハット形鋼矢板。
- ウェブ部の両端に一対のフランジ部が形成され、各フランジ部の端部に一対のアーム部が形成されるとともに、各アーム部の先端に一対の継手部が設けられ、冷間加工によって成形され、本設壁に用いられるハット形鋼矢板において、
前記ウェブ部は、鋼矢板全長にわたる突起形状部を有し、該突起形状部は、前記ウェブ部の内面側又は外面側に張り出すように屈曲形成され、以下の式(1)、式(3)、式(5)及び式(6)を満足する突起形状部を有することを特徴とするハット形鋼矢板。
- ウェブ部の両端に一対のフランジ部が形成され、各フランジ部の端部に一対のアーム部が形成されるとともに、各アーム部の先端に一対の継手部が設けられ、冷間加工によって成形され、道路構造又は港湾構造の本設構造に用いられるハット形鋼矢板において、
前記ウェブ部は、鋼矢板全長にわたる突起形状部を有し、該突起形状部は、前記ウェブ部の内面側又は外面側に張り出すように屈曲形成され、以下の式(1)、式(4)、式(5)及び式(6)を満足する突起形状部を有することを特徴とするハット形鋼矢板。
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