JP2013155559A - 構造物の液状化被害低減構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】液状化地盤3上の構造物1を対象として前記液状化地盤が液状化した際における前記構造物の被害を低減させるための構造物の液状化被害低減構造であって、前記構造物の外周側に該構造物の下方の液状化地盤を取り囲む遮水壁5を形成し、該遮水壁の内側に液状化時の過剰間隙水を地表に排水するためのドレーン2を打設する。本発明は、液状化地盤上に近接配置されて構築されている複数の既存の構造物を対象とする場合に適用するものとして好適である。
【選択図】図2
Description
たとえば、図11に示すように既存の戸建て住宅や工場の施設等の構造物1が密集して配置されている場合、隣接する構造物1との間隔が狭くて重機が入れないとそこでの対策が不可能である。その場合には重機が接近し得る周囲の道路から外周部に対する作業を行うしかないが、それでは改良率が小さすぎて十分な効果が得られない場合が多い。
しかし、そのような排水工法による場合は多数のドレーン2を密に打設する必要があるばかりでなく、既存の構造物1がある場合にはその直下に対してはドレーン2を打設できないからその周囲にドレーン2を打設するしかなく、液状化を有効に防止するための所要本数のドレーン2を打設できない場合も多い。
しかも、ドレーン2による排水工法では、ドレーン2近傍の水圧が低下するとその周囲の水圧が低下して水圧差が生じるため、図示しているように水がドレーン2側に移動を起こす。そうするとドレーン2で排水しても次々と外周からの水の流入が生じて構造物1の直下の水圧を十分に低下させるために時間がかかり、効果が低くなるという問題もある。
以上のことから、簡易にかつ低コストで施工可能な液状化被害低減構造、特に狭隘空間や既存構造物が密集して配置されているような場合においても適用可能な有効適切な液状化被害低減構造が求められているのが実状である。
また、遮水壁内の水圧のみを低減させれば良いので、従来の単なる排水工法による場合に比べて、ドレーンの所要本数を少なくすることもできる。
しかも、遮水壁は外部からの作業で形成可能であるし、ドレーンは小型のボーリング機械により施工可能であるので、大型重機による従来一般の液状化対策が実施できない場合に適用して好適である。
通常の液状化に対する設計手法では、地盤の過剰間隙水圧比が1に達した状態を完全に液状化した状態(液体になった状態)として、これ以降の状態を考えることはないが、本発明では過剰間隙水圧比が1に達した後にせん断変形により剛性が回復する状態(以下、これを「ポスト液状化状態」という)を呈することに着目し、そのポスト液状化状態を安定に継続させることで構造物に対する支持力を維持し確保するという設計思想に基づくものである。
すなわち、図1に示すように、ポスト液状化状態に達した地盤に対して排水することなくさらにせん断力を作用し続けると、非可逆の塑性体積ひずみ(圧縮側)にダイレクタンシーによる可逆的な塑性体積ひずみ(膨張側)が追いつけず、地盤が完全な液体状態なる。この状態が噴砂や構造物の不同沈下が生じる地盤の破壊に達した状態である。
一方、適切に排水しながら上記のせん断力を作用させると、非可逆の塑性体積ひずみ圧縮側)と可逆的な塑性体積ひずみ(膨張側)が常に釣り合い、ポスト液状化状態が安定に継続するから、本発明はそのような安定なポスト液状化状態を保持することで構造物の支持力を確保して構造物の沈下や傾斜といった液状化被害を低減するものである。
本実施形態は、非液状化層3aの上層に液状化層3bが存在しているような液状化地盤3に、複数の既存の構造物1(図示例では8棟の戸建て住宅)が密集して近接配置されている場合の適用例であって、各構造物1が構築されている領域4の外周側に該領域4の下方全体の液状化地盤3を取り囲む遮水壁5を非液状化層3aに達するように形成するとともに、その遮水壁5の内側および各構造物1の間に多数のドレーン2を打設して上記のポスト液状化状態を保持することを主眼とする。
また、領域4内の水圧のみを低減させれば良いので、図12に示したような従来の単なる排水工法による場合に比べて、ドレーン2の所要本数を少なくすることもできる。
なお、図9〜図10では構造物1およびドレーン2の図示は省略してある。
まず、対象とする領域4における地盤の条件から沈下量と排水量を算出し、それに基づきドレーン2の設計(口径、所要本数、設置間隔)を設定するが、そのためには、液状化が発生した後における構造物1の沈下量Dsをたとえば特許第4640671号公報に示される手法や、特開2007−9558号公報に示される計算手法により算定する。
すなわち、地震時に液状化地盤3に生じる最大せん断ひずみγmaxから、液状化後の地盤の最大残留ひずみ(ενr)maxを計算し、さらに液状化後の沈下に寄与する体積ひずみενpを計算し、その体積ひずみενpに液状化層3bの層厚Dを乗じることで液状化時の沈下量Dsを次式により求める。
また、Δhはドレーン2の入口と出口における水頭差であり、液状化時に有効応力が0になると仮定すると、ドレーン2の下端に生じる間隙水圧uはそこに作用する荷重σと等しくなり、このときΔhは次式により求められる。hw1は入口での水頭、hw2は出口での水頭(hw2=0)、Hはドレーン2の高さ(長さ)、γwは単位体積重量である。
たとえば、上記実施形態は既存の戸建て住宅等の比較的小規模な構造物1が密集して構築されている場合の適用例であるが、本発明はそのような場合に限らず、新築/既存の別は問わず、様々な規模、用途の建物や構造物全般に対して広く適用できるものであることは当然であるし、複数の構造物の全体を対象とするのみならず単独の構造物に対する液状化被害低減構造としても適用可能であることはいうまでもない。
2 ドレーン
3 液状化地盤
3a 非液状化層
3b 液状化層
4 領域
5 遮水壁
6 補助遮水壁
7 水平ドレーン
Claims (2)
- 液状化地盤上の構造物を対象として前記液状化地盤が液状化した際における前記構造物の被害を低減させるための構造物の液状化被害低減構造であって、
前記構造物の外周側に該構造物の下方の液状化地盤を取り囲む遮水壁を形成し、該遮水壁の内側に液状化時の過剰間隙水を地表に排水するためのドレーンを打設してなることを特徴とする構造物の液状化被害低減構造。 - 液状化地盤上に近接配置されて構築されている複数の既存の構造物を対象として前記液状化地盤が液状化した際における前記構造物の被害を低減させるための構造物の液状化被害低減構造であって、
前記構造物が構築されている領域の外周側に該領域の下方全体の液状化地盤を取り囲む遮水壁を形成し、該遮水壁の内側に液状化時の過剰間隙水を地表に排水するためのドレーンを打設してなることを特徴とする構造物の液状化被害低減構造。
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