JP5039854B1 - 地中連続壁構造体 - Google Patents

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Abstract

【課題】軟弱地盤である浅層地盤を地盤改良すると共に、液状化被害を軽減する地中連続壁構造体を提供すること。
【解決手段】屋外構造物の基礎部の下方であって、且つ浅層地盤に構築される不透水地中連続壁構造体10であって、外周を形成する連続状の外壁1と、外壁1で囲まれる内側を複数の室に分割する内壁2とからなり、外壁1および内壁2のいずれか一方または双方に透水フィルター3を設けた。
【選択図】図1

Description

本発明は、地盤面下における液状化被害を未然防止する地中連続壁構造体に関するものである。
地盤の液状化現象は、大地震や巨大地震の際、広範囲の地域で発生する。液状化現象のメカニズムの解明や対策は、地盤の状況や地震の規模に左右されるため、非常に難しいのが現状である。住宅等の建物において、地震で一番怖いのは振動より揺れの大きさであり、建物に地震被害をもたらす要因となっている。このため、建物の耐震、制震、免震等、構造性能を高めて強い建物づくりが進んでいる。しかし、住宅等の小規模な構造物が建設される浅層地盤については、地震対策がほとんど行われていない。住宅等の建設予定地では、地盤強度等の調査を行い、軟弱地盤に対しては地盤改良を施すものの、液状化対策についてはほとんど無策の状態である。
小規模の個人住宅などの屋外構造物の建設予定地が軟弱地盤である場合、該軟弱地盤である基礎構築部分の近くに地盤安定材を打ち、地盤の不同沈下を抑止する浅層地盤改良工法が知られている。例えば特開2004−60290号公報には、基礎構築部分の近くに地盤の強弱により幅及び深さを調整した安定材造成用の溝を、溝底面より上方に向けて次第に横断面が大きくなるように掘削するとともに、ソイルセメントを含む改良土質と置換し、該土質置換部分をランマー等で転圧して土質強度と靭性をもたせた改良土質による安定材を造った後、ベタ基礎部分にコンクリートを打設して安定材とベタ基礎を一体化する安定材付きベタ基礎工法が開示されている。当該工法によれば、安定材とベタ基礎を一体化するため、安定材とベタ基礎部分とで囲まれた土は剛体となりベタ基礎の剛性を高めることができ、また、上方から負荷がかかった場合でも該負荷を安定材の側面で受け止めて地盤への建物影響荷重を分散、軽減させてバランスと安定効果の向上を図ることができ、不同沈下に強いものとなる。
特開2004−60290号公報
しかしながら、従来の浅層地盤改良工法は、軟弱地盤を不同沈下が起こらないような剛性地盤に改良するものであり、液状化被害を未然に防止するようなものではない。そして、近年の浅層地盤改良工法においては、軟弱地盤を不同沈下が起こらないようにすることは無論のこと、更に巨大地震に伴う液状化対策として、浅層地盤にも対策を施すことが求められているのが現状である。
従って、本発明の目的は、軟弱地盤である浅層地盤を地盤改良すると共に、液状化被害を軽減する地中連続壁構造体を提供することにある。
かかる実情において、本発明者は鋭意検討を行った結果、浅層地盤に構築される不透水地中連続壁構造体において、外壁および内壁のいずれか一方または双方に透水フィルターを設けたものであれば、軟弱地盤である浅層地盤を地盤改良すると共に、液状化被害を軽減できること等を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、屋外構造物の基礎部の下方であって、且つ浅層地盤に構築される不透水地中連続壁構造体であり、外周を形成する連続状の外壁と、該外壁で囲まれる内側を複数の室に分割する内壁とからなり、該外壁および該内壁のいずれか一方または双方に透水フィルターを設けたことを特徴とする地中連続壁構造体を提供するものである。
本発明によれば、軟弱地盤である浅層地盤を地盤改良すると共に、液状化被害を軽減できる。
本発明の第1の実施の形態における地中連続壁構造体の斜視図である。 図1の地中連続壁構造体と基礎部との関係を示す図である。 本発明の第2の実施の形態における地中連続壁構造体の斜視図である。 本発明の第3の実施の形態における地中連続壁構造体の平面図である。 本発明の第4の実施の形態における地中連続壁構造体の平面図である。 本発明の第5の実施の形態における地中連続壁構造体の平面図である。 本発明の第6の実施の形態における地中連続壁構造体の平面図である。 本発明の第7の実施の形態における地中連続壁構造体の平面図である。 本発明の第8の実施の形態における地中連続壁構造体の平面図である。 本発明の地中連続壁構造体の平面視における「中央」を説明する図である。
本発明の第1の実施の形態における地中連続壁構造体(以下、「改良壁」とも言う。)を図1及び図2を参照して説明する。地中連続構造体10は、外周を形成する連続状の外壁1と、外壁1で囲まれる内側を複数の室に分割する内壁2とからなるセメント系固化材を撹拌混合した改良土質である。外壁1で囲まれる内側を内壁2で区画する区画形状としては、特に制限されず、格子状および中央に矩形状の室を有する不定形状のものが挙げられる。格子状の場合、縦横の壁で格子状に区画される室の個数としては、小規模住宅の場合、例えば2個以上、好ましくは4個〜12個程度である。図1及び図3は6個、図4〜図7は9個の例である。また、中央に矩形状の室(区画部)を有する不定形状のものとしては、図8に示すようなものが挙げられる。地中連続構造体10の平面視の形状は、上下対称、左右対称および非対称のものが挙げられ、この中、上下対称且つ左右対称であるものが、地盤を均等に拘束する点で好ましい。
外壁1で囲まれる内側における中央とは、外壁で囲まれる形状が矩形状の場合、平面視における前後方向および左右方向における中央であり、外壁で囲まれる形状が非対称の場合、次のような方法のいずれかを採ることで決定される。すなわち、図10(A)のように、ABCDEFで形成される非対称形の改良壁において、aAFE形状が、ABbF形状に対して小面積の場合、aAFE形状を凹み形状として捉え、当該凹み形状を無視して、aBCD形状の中心Gを当該「中央」の中心とする方法、図10(B)のように、ABCDEFで形成される非対称形の改良壁において、bAFE形状が、ABaF形状に対して大面積の場合、ABaF形状を出っ張り形状として捉え、当該出っ張り形状を無視して、EaCD形状の中心Gを当該「中央」の中心とする方法、図10(C)のように、主たる形状がABCa形状とaDEF形状の2つで把握される場合、ABCa形状の中心gとaDEF形状の中心gを決定し、gとgを結ぶ線を面積配分して決定される中心Gを当該「中央」の中心とする方法が挙げられる。また、上記のいずれにも該当しない場合、例えば、建物である屋外構造物の重心を当該「中央」の中心とすればよい。
地中連続構造体10は外壁1を連続壁とし、外壁1の内側を内壁2で区画することで、地盤を拘束して一体化し、屋外構造物の荷重を均一に地盤に伝えるため、建物等の構造物基礎および地盤強度が向上し、屋外構造物全体の安定力が増す。また、地震時、地盤のせん断破壊と移動を抑制することができる。
地中連続構造体10は、屋外構造物の基礎部の下方であって、且つ浅層地盤に構築される。屋外構造物としては、小規模住宅、店舗、工場などの建築物、庭園、私道または駐車場が挙げられる。小規模住宅とは、「小規模建築物基礎設計指針(日本建築学会)」で規定する小規模建築物であり、地上3階以下、建物高さ13m以下、軒高9m以下及び延べ面積500m以下の条件を満たす建築物を言う。屋外構造物の基礎部としては、小規模住宅の場合、例えばベタ基礎であり、店舗、工場、庭園、私道または駐車場のような大面積の屋外構造物の場合、例えば砂利層を含んだ表層やアスファルト舗装層である。図2は小規模住宅の場合であり、ベタ基礎50が、地中連続構造体10の上に形成されている。すなわち、地中連続構造体10の上面は基礎部50で覆われており、好適には地中連続構造体10と基礎部11は一体化している。本発明において、地中連続構造体10の高さは最大2.0m、概ね0.3〜1.8mである。
本発明において、透水フィルター3は、外壁1および内壁2のいずれか一方または双方に設置される。透水フィルター3は、水を通し、土砂を通さないものであり、例えば砂利層またはパイプフィルターが挙げられる。パイプフィルターは、パイプ内およびパイプの端面に網目のフィルターを装着したもの、あるいはパイプ内およびパイプの端面に透水性マットを装着したものであり、これら網目のフィルターや透水性マットは、水抜きパイプの目詰まり防止器具として市販されているものが使用できる。
図1の地中連続構造体10は、1つの縦壁21と2つの横壁22a、22bで、外壁1内を6つの室となるように区画したものであり、透水フィルター3は、4辺の外壁1の中、長手方向の2辺であって、各室を構成する外壁に形成されたものである。地中連続構造体10において、透水フィルター3は、外壁1の上部に形成されている。上部とは、高さ方向の中央より上方を言う。
屋外構造物の基礎部の下方に形成された地中連続構造体10は、大地震、液状化発生の際、砂質土を含んだ上昇水である噴砂流の上昇(方向性)を制御できる。液状化による噴砂流は、通常、改良壁の全区域に発生するものではなく、その一部に発生する。例えば、室11に発生した噴砂流は、矢印で示すように、地表面近くまで来ると、逃げ場を失い、水が透水フィルター3aを通り、改良壁の外側へ誘導される。この場合、土砂の流出は透水フィルター3aにより阻止されるため、室11内の地盤は保護され、液状化被害を抑制できる。また、例えば、室12に発生した噴砂流は、矢印で示すように、地表面近くまで来ると、逃げ場を失い、水が透水フィルター3bを通り、改良壁の外側へ誘導される。この場合、土砂の流出は透水フィルター3bにより阻止されるため、室12内の地盤は保護され、液状化被害を抑制できる。以下、他の室に発生した噴砂流も同様、水が透水フィルター3を通り、改良壁の外側へ誘導される。改良壁の外側に誘導された上昇水は、下水道へ流れるようにすることがより好ましい。
このように、液状化において、地中連続構造体10は、透水フィルター3を通じて、噴砂流の中、上昇水だけを拡散透水させるため、改良壁内の地盤の移動および空隙化を未然防止することができる。透水性フィルター3が設置されていないと、大地震時、改良区域の一部に発生した噴砂流が、一部の改良壁下から外側に噴出し、この部分の地盤を移動させてしまう。また、透水性フィルター3を壁の上方に設けることで、地表近くまできた噴砂流の上昇圧を、速やかに改良壁の外側へ逃がすことができる。
地中連続構造体10において、透水フィルター3が設置される外壁の場所としては、図1の場所に制限されず、例えば、短手方向の2辺に係る室を形成する壁111であってもよいし、また、長手方向及び短手方向の4辺に係る各室を形成する壁であってもよい。また、透水フィルター3は、室を形成する4辺の中の1辺の壁に複数箇所設置してもよい。また、透水フィルター3は、地中連続構造体10の平面視形状において、上下対称、左右対称の位置に設置することが、当該区域に発生した上昇水を、改良壁の外側へ均等に誘導できる点で好ましい。地中連続構造体10は、軟弱地盤である浅層地盤を地盤改良すると共に、液状化被害を軽減若しくは未然に防止することができる。
次に、地中連続構造体10の造成方法について説明する。地中連続構造体10は、透水フィルターの設置を除いて、公知の方法で造成される。すなわち、地中連続構造体10が造成される領域(軟弱地盤)に図1の形状の溝を地中に形成する。次いで、溝内にセメント系固化材を撹拌混合した改良土質を埋め戻す。その後、改良土質部分をランマー等で転圧して土質強度と靭性をもたせた改良土質による改良壁を構築した後、例えば基礎部として、ベタ基礎であるコンクリートを打設して改良壁とベタ基礎を一体化させる。なお、透水フィルター3は地中に溝を形成する際、所定の位置に予め構築しておき、その後、セメント系固化材を撹拌混合した改良土質を埋め戻し、外壁1に透水フィルター3が形成されるようにしてもよい。また、ランマー等で転圧した後、設置箇所を削り取り、その後、当該設置箇所に取り付けてもよい。透水フィルター3として、パイプフィルターを使用する場合、予めパイプ内に網目のフィルターや透水性マットを装着したものを使用してもよく、また、パイプを先に設置し、その後、パイプ内部又は端面部に網目のフィルターや透水性マットを設置してもよい。
次に、本発明の第2の実施の形態における地中連続壁構造体を図3を参照して説明する。図3において、図1と同一構成要素には同一符号を付して、その説明を省略し、異なる点について主に説明する。すなわち、図3の地中連続壁構造体10Aにおいて、図1の地中連続壁構造体10と異なる点は、透水フィルター3の設置位置である。すなわち、図3の地中連続構造体10Aは外壁1と内壁2により格子状としたものであり、6つの室を形成する。透水フィルター3は各室を区画する縦壁または横壁に形成されている。地中連続構造体10Aにおいて、当該区域の局部に発生した噴砂流は、改良壁の内側の該当する室へ誘導され、地表面近くまで来ると、水が透水フィルター3を通り、矢印で示すように、各室内において、均等に逸散、消散する。この場合、土砂の流出は抑制されるため、改良壁で囲まれる地盤は保護され、液状化被害を抑制できる。なお、透水フィルター3を通った上昇水は、外壁1内の各室において均等に逸散、消散するが、許容範囲を超えると改良壁の下から外側へ流失する。この場合、外壁1内の各室は上昇水で均等に逸散、消散しているため、改良壁の下から外側への流失は、周囲に水平方向に均等に流失するため、水平沈下は起きても不同沈下は起きない。
地中連続壁構造体10Aにおいて、透水フィルター3は、内壁2の上部に形成される。なお、透水性フィルター3を壁の高さ方向の下方に設けた場合、短時間での噴砂による上昇圧の均等均一化が図り難くなる。すなわち、噴砂流は基礎部50で押えられ水平方向及び下方向に流れが変わるが、透水性フィルター3が壁の上方に設置されていると、噴砂流の上昇水は、水平方向に広がり易くなり、各室において、短時間で上昇圧の均等均一が図れる。一方、透水性フィルター3が壁の下方に設置されていると、基礎部50で押えられ下方向に流れた噴砂流は、透水性フィルター3を通り隣接する室内において、多方向に逸散、消散するため、圧低下を招来し、各室において、均等均一化に時間を要することになる。また、内壁2の上部の定義は、外壁1に設置する場合と同様である。また、透水フィルター3は室を形成する4辺の中の1辺の壁に複数箇所設置してもよい。地中連続壁構造体10Aは、液状化による噴砂流が室の局部に発生しても、上昇圧を各室に短時間で均等に分散するため、全体が安定化する。
次に、本発明の第3の実施の形態における地中連続壁構造体を図4を参照して説明する。図4において、図3と同一構成要素には同一符号を付して、その説明を省略し、異なる点について主に説明する。すなわち、図4の地中連続壁構造体10Bにおいて、図3の地中連続壁構造体10Aと異なる点は、外壁1と内壁2または内壁2同士で形成される室の数である。すなわち、地中連続壁構造体10Bは、2本の縦壁と2本の横壁により外壁1内を格子状に区画して9個の室を形成し、中央に室がくるようにしたものであり、且つ各室を形成する辺部に相当する内壁2に透水フィルター3を設置したものである。地中連続壁構造体10Bにおいても、地中連続壁構造体10Aと同様の作用効果を奏し、液状化による噴砂流が室の局部に発生しても、上昇圧を各室に短時間で均等に分散するため、全体が安定化する。
次に、本発明の第4の実施の形態における地中連続壁構造体を図5を参照して説明する。図5において、図4と同一構成要素には同一符号を付して、その説明を省略し、異なる点について主に説明する。すなわち、図5の地中連続壁構造体10Cにおいて、図4の地中連続壁構造体10Bと異なる点は、透水フィルター3の設置位置である。すなわち、地中連続壁構造体10Cは、中央の室55を形成する短手方向における辺部に相当する壁211に透水フィルター3を設置したものである。地中連続壁構造体10Cは、改良壁の短手方向の中央部の一部に発生した噴砂流は、各室54、55、56のいずれかへ誘導され、地表面近くまで来ると、水が透水フィルター3を通り、矢印で示すように、各室内54、55、56間において均等に逸散、消散する。この場合、中央の室54、55、56内の土砂の移動は抑制される。なお、噴砂流は、外壁1内の各室54、55、56において均等に逸散、消散しているが、許容範囲を超えると改良壁の下から他の室51〜53、57〜59や外壁1の外側へ流出する。なお、地中連続壁構造体10Cは、短手方向の中央部分以外の室51〜53、57〜59領域において発生した噴砂流に対しては、当該室内において拘束することで被害を少しでも軽減することができる。また、地中連続壁構造体10Cにおいて、透水フィルター3の設置位置は、図5のものに限定されず、中央の室55を形成する長手方向における辺部212に形成してもよい。この場合、上昇水は、外壁1内の各室52、55、58において均等に逸散、消散する。このように、地中連続壁構造体10Cは、外壁1内の9個の室の中、面積比3/9で噴砂流(上昇圧)の均等化を図ると共に、3個の室54〜56は中央部を長手方向に通るため、当該部分に噴砂流が発生しても、本来の地盤が持っている支持力に加えて、水平に維持する安定力を発現できる。
次に、本発明の第5の実施の形態における地中連続壁構造体を図6を参照して説明する。図6において、図4と同一構成要素には同一符号を付して、その説明を省略し、異なる点について主に説明する。すなわち、図6の地中連続壁構造体10Dにおいて、図4の地中連続壁構造体10Bと異なる点は、透水フィルター3の設置位置である。すなわち、地中連続壁構造体10Dは、中央の室65を形成する4つの辺部641〜654に相当する壁に透水フィルター3を設置したものである。地中連続壁構造体10Dは、改良壁の短手方向の中央部62、65、68および長手方向の中央部64〜66に相当する領域の一部に発生した噴砂流は、各室64〜66、62、68のいずれかへ誘導され、地表面近くまで来ると、水が透水フィルター3を通り、各室内64〜66、62、68間において均等に逸散、消散する。この場合、当該5つの室内の土砂の移動は抑制される。なお、噴砂流は、外壁1内の各室64〜66、62、68において均等に逸散、消散するが、許容範囲を超えると改良壁の下から他の室61、63、67、69や外壁1の外側へ流出する。このように、地中連続壁構造体10Dは、外壁1内の9個の室の中、面積比5/9で噴砂流(上昇圧)の均等化を図ると共に、5個の室62、64〜66、68は中央部を中心に十字に繋がっているため、当該部分に噴砂流が発生しても、本来の地盤が持っている支持力に加えて、水平に維持する安定力を発現できる。
次に、本発明の第6の実施の形態における地中連続壁構造体を図7を参照して説明する。図7において、図4と同一構成要素には同一符号を付して、その説明を省略し、異なる点について主に説明する。すなわち、図7の地中連続壁構造体10Eにおいて、図4の地中連続壁構造体10Bと異なる点は、透水フィルター3の設置位置である。すなわち、地中連続壁構造体10Eは、格子状であって、且つ内壁2の縦壁と横壁の交点70に透水フィルター3を設置したものである。地中連続壁構造体10Eは、改良壁内の一部に発生した噴砂流は、該当する室へ誘導され、地表面近くまで来ると、水が透水フィルター3を通り、各室内において均等に逸散、消散すると共に、特に中央の室に集まる時間を短縮できるため、全体の均一化が早まる。すなわち、図4の地中連続壁構造体10Bでは、例えば、右隅の室に発生した噴砂流は、1つの室を経由して中央の室に到達するため時間を要するが、地中連続壁構造体10Eの場合、直接、中央の室に到達するため時間の短縮が図れる。このように、地中連続壁構造体10Eは、外壁1内の全ての室において、噴砂流(上昇圧)の早急の均等化を図ることができるため、水平に維持する安定力がより向上する。
次に、本発明の第7の実施の形態における地中連続壁構造体を図8を参照して説明する。図8において、図1と同一構成要素には同一符号を付して、その説明を省略し、異なる点について主に説明する。すなわち、図8の地中連続壁構造体10Fにおいて、図1の地中連続壁構造体10と異なる点は、平面視の形状および透水フィルター3の設置位置である。すなわち、地中連続壁構造体10Fは、矩形状の外壁1に対して、該外壁1の形状より小さな略相似形状の壁213を中央部に形成し、該壁213の角部と該外壁1の角部(内角)間を結んだ放射状の壁214を更に造成し、且つ中央の内壁213の長手方向に延びる壁に2つの透水フィルター3を、中央の内壁2の短手方向に延びる壁に1つの透水フィルター3をそれぞれ設置したものである。なお、中央の室81は、図4の地中連続壁構造体10Bにおける中央の室41よりも面積(平面視)が大である。地中連続壁構造体10Fにおいて、改良壁内の一部に発生した噴砂流は、該当する室へ誘導され、地表面近くまで来ると、水は透水フィルター3を通り、中央を経由して各室内に流れ均等に逸散、消散する。この場合、土砂の流出は抑制されるため、改良壁内の地盤は保護され、液状化被害を抑制できる。このように、地中連続壁構造体10Fは、外壁1内の全ての室において、噴砂流(上昇圧)の均等化を図ることができ、また、中央の室の面積比率が大であるため、水平に維持する安定力がより向上する。
次に、本発明の第8の実施の形態における地中連続壁構造体を図9を参照して説明する。図9において、図1と同一構成要素には同一符号を付して、その説明を省略し、異なる点について主に説明する。なお、符号54は良好地盤、符号55は液状地盤を示す。すなわち、図9の地中連続壁構造体10Gにおいて、図1の地中連続壁構造体10と異なる点は、透水性柱状杭の有無である。すなわち、地中連続壁構造体10Gは、内壁2で分割された各室の地盤に、透水性柱状杭4を形成したものである。透水性柱状杭4としては、砕石杭が挙げられる。透水性柱状杭4は、最大高さが改良壁の壁深さ(高さ)の3倍、好適には2倍であり、具体的には、最大で8m、好ましくは最大で6m、特に最大で4mである。このため、従来の10m以上もある地盤改良柱状杭とは相違する。透水性柱状杭4は、公知の地盤改良杭造成工法により造成することができる。地中連続壁構造体10Gにおいて、地震により発生した液状化上昇水圧(図9中の矢印)は、透水性柱状杭4にて誘導される。これにより、上昇水圧は減圧され、噴砂の流出を防止することができる。また、透水性柱状杭4にて誘導された上昇水は、内壁2で分割された室内の地盤中から外壁1に形成された透水フィルター3を通って外部へ排出される。このため、液状化による被害を最小限にすることができる。また、柱状杭4そのものが軟弱地盤を改良するものであり、地震後の地盤沈下に対しても杭効果を発現できる。また、透水性柱状杭4の設置箇所は、内壁2で分割された全ての室に限定されず、少なくともひとつの室の地盤に形成されていればよい。
本発明において、内壁により外壁の内側を複数の室に分割する方法としては、上記実施の形態における分割方法に限定されず、種々の分割形態を採ることができる。また、透水フィルターの設置位置及び設置個数も、上記実施の形態におけるものに限定されず、種々の設置位置や設置個数を採ることができる。また、上記実施の形態例は、基礎部がベタ基礎であり、屋外構造物が小規模住宅の場合であるが、これらに限定されず、例えば、屋外構造物が、小規模住宅以外の建築物、庭園または駐車場の場合にも適用できる。この場合、基礎部は、例えば砂利層を含んだ表層やアスファルト舗装層とすればよい。上記地中連続構造体10〜10F上に、当該基礎部を構築する方法としては、公知の方法が適用できる。
なお、屋外構造物が、店舗、工場、私道、庭園や駐車場のように大面積の場合、改良壁内を内壁2で区画する方法としては、格子状に数十〜数百の多数の室を形成する方法、地中連続構造体10、10A〜10Gのそれぞれを1ユニットとして、当該同ユニットを横並びに複数配置する複数配置方法、あるいは同ユニット及び異なるユニットを複数組み合わせて配置する複数混合配置方法などが挙げられる。屋外構造物が大面積の場合、改良壁内を内壁2で区画する室の数は、小規模住宅に比べて当然多くなる。
本発明によれば、各室(区画)に均一な噴砂流由来の上昇水圧を生じさせ(拡散)、区画間の応力差を小さくできる。また、中央部(重心)を中心に区画連結を図ることにより、安定力が向上する。液状化対策は時間との関係が、被害軽減に大きく影響するため、早期に中央部(重心)を含めた区画連結を構築することが求められる。本発明は、液状化における発生場所、発生時期、大きさ等不確定な要素への対策となるが、通常時は、地盤改良壁として更なる地盤の安全性に寄与し、通常の震災害時には、被害の未然防止を図り、予想を超えた液状現象には、被害軽減を図ることができる。このため、地震対策の最も有効な手段と成り得るものである。
1 外壁
2 内壁
3、3a、3b 透水フィルター
4 透水性柱状杭
10〜10F 地中連続壁構造体
50 ベタ基礎

Claims (11)

  1. 屋外構造物の基礎部の下方であり、且つ浅層地盤に構築される不透水地中連続壁構造体であって、外周を形成する連続状の外壁と、該外壁で囲まれる内側を複数の室に分割する内壁とからなり、
    該外壁および該内壁のいずれか一方または双方に透水フィルターを設けたことを特徴とする地中連続壁構造体。
  2. 該透水フィルターは、該外壁または該内壁の上部に設けたことを特徴とする請求項1記載の地中連続壁構造体。
  3. 該内壁は、該外壁で囲まれる内側を格子状に分割することを特徴とする請求項1または2記載の地中連続壁構造体。
  4. 該外壁で囲まれる内側の中央に矩形状の区画部を形成したことを特徴とする請求項3記載の地中連続壁構造体。
  5. 該中央の区画部は、該外壁で囲まれる内側を少なくとも9個の区画に格子状に分割した中のひとつであることを特徴とする請求項4記載の地中連続壁構造体。
  6. 該内壁の交差部に該透水フィルターを設置したことを特徴とする請求項3記載の地中連続壁構造体。
  7. 該内壁で分割された複数の室の少なくともひとつの地盤に、透水性柱状杭を形成したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の地中連続壁構造体。
  8. 該透水フィルターは、砂利層またはパイプフィルターであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の地中連続壁構造体。
  9. 該地中連続壁構造体の高さは、最大2.0mであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の地中連続壁構造体。
  10. 該屋外構造物は、建築物、庭園、私道または駐車場であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の地中連続壁構造体。
  11. 該基礎部は、該屋外構造物が建築物の場合、ベタ基礎であることを特徴とする請求項10記載の地中連続壁構造体。
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