JP6735105B2 - ゲムシタビンによる副作用を予測する方法及びdnaチップ - Google Patents

ゲムシタビンによる副作用を予測する方法及びdnaチップ Download PDF

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Description

本発明は、ゲムシタビンによる副作用を予測する方法に関し、また、ゲムシタビンによる副作用を予測する方法に利用されるDNAチップに関する。
ゲムシタビン(gemcitabine、4-アミノ-1-[3,3-ジフルオロ-4-ヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル]-1H-ピリミジン-2-オン、ジェムシタビンと呼称される場合もある)は、含フッ素ヌクレオシドの一種であり、代謝拮抗薬として作用する。すなわち、細胞内でDNAが伸長する際にピリミジンと構造が似ているゲムシタビンが組み込まれることによりDNAの伸長は阻害される。
現在、ゲムシタビンは、商品名:ジェムザールとして販売されており、非小細胞肺がん、膵臓がん、胆道がん、尿路上皮がん、乳がん、卵巣がん、悪性リンパ腫などの治療に用いられている。一方、ゲムシタビンは細胞毒性を有するために投薬による副作用が懸念される。副作用の症状としては、倦怠感、脱毛、悪心、食欲不振、血管障害、関節痛、感覚鈍麻、味覚異常、筋肉痛などが挙げられ、時には著しい骨髄抑制が生じることで重篤な状態に陥る。臨床試験において、ゲムシタビンによる副作用の発現頻度は、白血球減少(72.6%)、好中球減少(69.2%)、血小板減少(41.4%)、ヘモグロビン減少(66.5%)及び赤血球減少(52.6%)であった。
非特許文献1には、ゲムシタビンによる副作用と4ヶ所のSNP(rs11141915、rs1901440、rs11719165及びrs12046844)との相関が示唆されている。非特許文献1によれば、これら4ヶ所のSNPの遺伝子型を特定することでゲムシタビンによる副作用の有無を判定できるとある。非特許文献1には、全ゲノム領域にわたる遺伝子多型解析により同定されたゲムシタビンによる骨髄抑制と強い関連を示す4つのSNPを用いて、骨髄抑制リスク型アレルの数に応じて各患者をスコアリングすると、点数の高い患者ほど低い患者に比べて骨髄抑制を生じるリスクが統計学的に有意に強まり、副作用予測診断システムとしての臨床有用性が記載されている。
Kiyotani K, et al. A genome-wide association study identifies four genetic markers for hematological toxicities in cancer patients receiving gemcitabine therapy. Pharmacogenet Genomics 2012; 22: 229-235
ところが、非特許文献1に開示された4ヶ所のSNPについて、その遺伝子型とゲムシタビンの副作用との相関関係を更に詳細に検討したところ、これら4ヶ所のSNPの遺伝子型を利用してゲムシタビンの副作用を判定することが困難であることが分かった。そこで、本発明は、このような実情に鑑み、ゲムシタビンの副作用を高精度に判定することができる、ゲムシタビンによる副作用を予測する方法及びゲムシタビンによる副作用を予測する方法に利用されるDNAチップを提供することを目的とする。
本発明者らは、上述した目的を達成するために鋭意検討した結果、上記非特許文献1に開示された4ヶ所のSNPのうち、特にrs11141915及びrs12046844の2ヶ所のSNPの遺伝子型のうち一方又は両方を利用すれば、ゲムシタビンによる副作用を高精度に判定できることを見いだし、本発明を完成するに至った。本発明は以下を包含する。
(1)rs11141915及び/又はrs12046844の遺伝子多型を決定することを特徴とするゲムシタビンによる副作用を予測する方法。
(2)上記rs11141915の遺伝子型がTである場合、上記副作用のリスクが高いと予測する(1)記載の方法。
(3)上記rs12046844の遺伝子型がCである場合、上記副作用のリスクが高いと予測する(1)記載の方法。
(4)上記rs11141915及び/又はrs12046844の遺伝子多型を、DNAチップを用いて決定することを特徴とする(1)記載の方法。
(5)上記DNAチップに固定する、rs11141915の遺伝子多型を判定するプローブはATGCCTGGMGGCCCCTG(配列番号1)を含み、rs12046844の遺伝子多型を判定するプローブはGAAACCAACYAAAACCCCT(配列番号2)を含むことを特徴とする(4)記載の方法。
(6)ゲムシタビンによる副作用として、骨髄抑制の発症を予測することを特徴とする(1)記載の方法。
(7)膵臓癌患者における上記遺伝子多型を決定し、当該膵臓癌患者における上記副作用を予測することを特徴とする(1)記載の方法。
(8)担体と、当該担体上に固定されたrs11141915の遺伝子多型に対応する一対のプローブ及び/又はrs12046844の遺伝子多型に対応する一対のプローブとを有する、ゲムシタビンによる副作用を予測するためのDNAチップ。
(9)上記rs11141915の遺伝子多型を判定するプローブはATGCCTGGMGGCCCCTG(配列番号1)を含み、rs12046844の遺伝子多型を判定するプローブはGAAACCAACYAAAACCCCT(配列番号2)を含むことを特徴とする(8)記載のDNAチップ。
本発明に係る方法では、rs11141915及び/又はrs12046844の遺伝子多型を利用することでゲムシタビンによる副作用を高精度に予測することができる。特に本発明に係る方法によれば、膵臓癌患者に対して、ゲムシタビンによる副作用である骨髄抑制を高精度に予測することができる。
また、本発明に係るDNAチップは、基板に固定されたプローブによりrs11141915及び/又はrs12046844の遺伝子多型を検出することができる。したがって、本発明に係るDNAチップを利用することで、ゲムシタビンによる副作用を高精度に予測することができる。特に本発明に係るDNAチップを利用することで、膵臓癌患者に対して、ゲムシタビンによる副作用である骨髄抑制を高精度に予測することができる。
ジェムシタビン総投与量と副作用(骨髄抑制)が生じない人の割合との関係を、rs11141915遺伝子型毎に示した特性図である。 ジェムシタビン総投与量と副作用(骨髄抑制)が生じない人の割合との関係を、rs11141915遺伝子型毎に示した特性図である。 ジェムシタビン総投与量と副作用(骨髄抑制)が生じない人の割合との関係を、rs12046844遺伝子型毎に示した特性図である。 国立がん研究センターから供与された17検体について各多型の判定値を測定した結果を示す特性図である。 国立がん研究センターから供与された17検体について計算した各多型の判定値の平均値±3σを計算した結果を示す特性図である。 国立がん研究センターから供与された171検体について各多型の判定値を測定した結果を示す特性図である。 国立がん研究センターから供与された171検体について計算した各多型の判定値の平均値±3σを計算した結果を示す特性図である。
本発明に係るゲムシタビンによる副作用を予測する方法(以下、予測方法と称する場合がある)では、rs11141915及び/又はrs12046844の遺伝子型を決定する。
ここで、rs11141915は、染色体9q21に位置するDAPK1遺伝子に存在する一塩基多型を意味する。rs11141915において、メジャーアレルがGであり、マイナーアレルがTである。また、rs12046844は、染色体1p31に位置するPDE4B遺伝子に存在する一塩基多型を意味する。rs12046844において、メジャーアレルがTであり、マイナーアレルがCである。
本発明に係る予測方法では、これらrs11141915及びrs12046844のうちいずれか一方の遺伝子型を決定しても良いし、両方の遺伝子型を決定しても良い。言い換えると、本発明に係る予測方法は、rs11141915の遺伝子型及びrs12046844の遺伝子型の一方又は両方に基づいて、ゲムシタビンによる副作用を予測することができる。
なお、Kiyotani K, et al. A genome-wide association study identifies four genetic markers for hematological toxicities in cancer patients receiving gemcitabine therapy. Pharmacogenet Genomics 2012; 22: 229-235には、これらrs11141915及びrs12046844にrs1901440及びrs11719165を加えた4つの多型の遺伝子型と、ゲムシタビンによる副作用(骨髄抑制)とが相関していることを示唆している。しかし、後述する実施例に示すように、これら4つの多型のうち、rs1901440及びrs11719165の遺伝子型とゲムシタビンによる副作用(骨髄抑制)との間には相関関係がないということが判明している。
本発明に係る予測方法では、rs11141915の遺伝子型がマイナーアレル(T)のホモ接合型である場合にゲムシタビンによる副作用が生じる可能性が高いと判断する。また、本発明に係る予測方法では、rs12046844の遺伝子型がマイナーアレル(C)のホモ接合型である場合にゲムシタビンによる副作用が生じる可能性が高いと判断する。
ここで、遺伝子型を決定するとは、いわゆるタイピング技術によってrs11141915及びrs12046844のアレルを決定すること、及びrs11141915又はrs12046844と連鎖不均衡にある多型のアレルを決定することを意味する。
具体的に多型のタイピング技術としては、例えば、RFLP法、PCR-SSCP法、ASOハイブリダイゼーション、ダイレクトシークエンス法、ARMS法、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法、RNaseA切断法、化学切断法、DOL法、TaqMan PCR法、インベーダー法、MALDI-TOF/MS法、TDI法、モレキュラー・ビーコン法、ダイナミック・アリールスペシフィック・ハイブリダイゼーション法、パドロック・プローブ法、UCAN法、DNAチップを用いた核酸ハイブリダイゼーション法、及びECA法等を挙げることができる。
一例として、これらrs11141915及びrs12046844のタイピングには、それぞれ一対のプローブを設計し、使用することができる。これらプローブは、rs11141915又はrs12046844で特定される一塩基多型を含む所定の領域の塩基配列に基づいて適宜設計することができる。また、これらプローブの塩基長としては、特に限定しないが、例えば10〜30塩基長とすることができ、15〜25塩基長とすることが好ましい。さらに、rs11141915又はrs12046844で特定される一塩基多型を含む所定の領域の塩基配列に基づいて設計した塩基配列と、当該塩基配列における一方又は両方の末端に付加した塩基配列とを合計して、例えば10〜30塩基長とすることができ、15〜25塩基長とすることが好ましい。
より具体的に、rs11141915をタイピングするためのプローブ(rs11141915検出用プローブと称する)において、rs11141915で特定される一塩基多型を含む領域に対応する塩基配列として5’-ATGCCTGGMGGCCCCTG-3’(配列番号1、配列中MはA又はCを意味する。下線部が一塩基多型部位。)を設計することができる。rs11141915検出用プローブとしては、配列番号1の塩基配列の5’末端に8塩基長のチミンを付加した全体25塩基長のオリゴヌクレオチドを設計することができる。なお、rs11141915検出用プローブとしては、メジャーアレルGに対応するプローブ(配列番号1におけるMがC)と、マイナーアレルTに対応するプローブからなる一対のプローブ(配列番号1におけるMがA)として設計することができる。
ここで、rs11141915検出用プローブにおいて、rs11141915で特定される一塩基多型を含む領域としては配列番号1の塩基配列からなる領域に限定されず、配列番号1の塩基配列のうち一塩基多型部位を含む10〜16塩基長の範囲とすることができる。また、rs11141915で特定される一塩基多型を含む領域としては、公知のゲノム配列情報に基づいて、配列番号1の塩基配列における5’末端及び/又は3’末端から、さらに1〜10塩基、好ましくは1〜5塩基、更に好ましくは1〜3塩基長い領域としてもよい。
また、rs12046844をタイピングするためのプローブ(rs12046844検出用プローブと称する)において、rs12046844で特定される一塩基多型を含む領域に対応する塩基配列として5’-GAAACCAACYAAAACCCCT-3’(配列番号2、配列中YはT又はCを意味する。下線部が一塩基多型部位。)を設計することができる。rs12046844検出用プローブとしては、配列番号2の塩基配列の5’末端に8塩基長のチミンを付加した全体27塩基長のオリゴヌクレオチド、又は配列番号2の塩基配列の5’末端のGを欠如するとともに8塩基長のチミンを付加した全体26塩基長のオリゴヌクレオチドを設計することができる。なお、rs12046844検出用プローブとしては、メジャーアレルTに対応するプローブ(配列番号2におけるYがT)と、マイナーアレルCに対応するプローブからなる一対のプローブ(配列番号2におけるYがC)として設計することができる。
ここで、rs12046844検出用プローブにおいて、rs12046844で特定される一塩基多型を含む領域としては配列番号2の塩基配列からなる領域に限定されず、配列番号2の塩基配列のうち一塩基多型部位を含む10〜18塩基長の範囲とすることができる。また、rs12046844で特定される一塩基多型を含む領域としては、公知のゲノム配列情報に基づいて、配列番号1の塩基配列における5’末端及び/又は3’末端から、さらに1〜10塩基、好ましくは1〜5塩基、更に好ましくは1〜3塩基長い領域としてもよい。
rs11141915検出用プローブ及びrs12046844検出用プローブは、好ましくは核酸であり、より好ましくはDNAである。DNAには二本鎖も一本鎖も含まれるが、rs11141915検出用プローブ及びrs12046844検出用プローブは好ましくは一本鎖DNAである。rs11141915検出用プローブ及びrs12046844検出用プローブは、例えば、核酸合成装置によって化学的に合成することで取得することができる。核酸合成装置としては、DNAシンセサイザー、全自動核酸合成装置、核酸自動合成装置等と呼ばれる装置を使用することができる。
rs11141915検出用プローブ及びrs12046844検出用プローブは、その5’末端を担体上に固定化することにより、DNAチップの形態で用いるのが好ましい。このとき、DNAチップは、メジャーアレルに対応するrs11141915検出用プローブ及びマイナーアレルに対応するrs11141915検出用プローブ、メジャーアレルに対応するrs12046844検出用プローブ及びマイナーアレルに対応するrs12046844検出用プローブを有することが好ましい。
rs11141915検出用プローブ及びrs12046844検出用プローブそれぞれについて、メジャーアレルとマイナーアレルに対応する一対のプローブを利用することによって、rs11141915及びrs12046844について、メジャーアレルのホモ接合型であるか、メジャーアレルとマイナーアレルのヘテロ接合型か、マイナーアレルのホモ接合型であるかを正確に同定することができる。ここで、rs11141915検出用プローブ及びrs12046844検出用プローブにおいて、メジャーアレルに対応するプローブとマイナーアレルに対応するプローブとは、長さが2塩基以内の差であることが好ましく、長さが同じであることがより好ましい。
本発明に係るDNAチップは、上述したrs11141915検出用プローブ及び/又はrs12046844検出用プローブを担体上に固定することで作製することができる。
担体の材料としては、当技術分野で公知のものを使用でき、特に制限されない。例えば、白金、白金黒、金、パラジウム、ロジウム、銀、水銀、タングステンおよびそれらの化合物などの貴金属、およびグラファイト、カーボンファイバーに代表される炭素などの導電体材料;単結晶シリコン、アモルファスシリコン、炭化ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素などに代表されるシリコン材料、SOI(シリコン・オン・インシュレータ)などに代表されるこれらシリコン材料の複合素材;ガラス、石英ガラス、アルミナ、サファイア、セラミクス、フォルステライト、感光性ガラスなどの無機材料;ポリエチレン、エチレン、ポリプロビレン、環状ポリオレフィン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル・ブタジエンスチレン共重合体、ポリフェニレンオキサイドおよびポリスルホンなどの有機材料等が挙げられる。担体の形状も特に制限されないが、好ましくは平板状である。
本発明においては、担体として、好ましくは表面にカーボン層と化学修飾基とを有する担体を用いる。表面にカーボン層と化学修飾基とを有する担体には、基板の表面にカーボン層と化学修飾基とを有するもの、およびカーボン層からなる基板の表面に化学修飾基を有するものが包含される。基板の材料としては、当技術分野で公知のものを使用でき、特に制限されず、上述の担体材料として挙げたものと同様のものを使用できる。
本発明に係るマイクロアレイにおいては、微細な平板状の構造を有する担体が好適に用いられる。形状は、長方形、正方形および丸形など限定されないが、通常、1〜75mm四方のもの、好ましくは1〜10mm四方のもの、より好ましくは3〜5mm四方のものを用いる。微細な平板状の構造の担体を製造しやすいことから、シリコン材料や樹脂材料からなる基板を用いるのが好ましく、特に単結晶シリコンからなる基板の表面にカーボン層および化学修飾基を有する担体がより好ましい。単結晶シリコンには、部分部分でごくわずかに結晶軸の向きが変わっているものや(モザイク結晶と称される場合もある)、原子的尺度での乱れ(格子欠陥)が含まれているものも包含される。
本発明において基板上に形成させるカーボン層としては、特に制限されないが、合成ダイヤモンド、高圧合成ダイヤモンド、天然ダイヤモンド、軟ダイヤモンド(例えば、ダイヤモンドライクカーボン)、アモルファスカーボン、炭素系物質(例えば、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ)のいずれか、それらの混合物、またはそれらを積層させたものを用いることが好ましい。また、炭化ハフニウム、炭化ニオブ、炭化珪素、炭化タンタル、炭化トリウム、炭化チタン、炭化ウラン、炭化タングステン、炭化ジルコニウム、炭化モリブデン、炭化クロム、炭化バナジウム等の炭化物を用いてもよい。ここで、軟ダイヤモンドとは、いわゆるダイヤモンドライクカーボン(DLC:Diamond Like Carbon)等の、ダイヤモンドとカーボンとの混合体である不完全ダイヤモンド構造体を総称し、その混合割合は、特に限定されない。カーボン層は、化学的安定性に優れておりその後の化学修飾基の導入や分析対象物質との結合における反応に耐えることができる点、分析対象物質と静電結合によって結合するためその結合が柔軟性を持っている点、UV吸収がないため検出系UVに対して透明性である点、およびエレクトロブロッティングの際に通電可能な点において有利である。また、分析対象物質との結合反応において、非特異的吸着が少ない点においても有利である。前記のとおり基板自体がカーボン層からなる担体を用いてもよい。
本発明においてカーボン層の形成は公知の方法で行うことができる。例えば、マイクロ波プラズマCVD(Chemical vapor deposit)法、ECRCVD(Electric cyclotron resonance chemical vapor deposit)法、ICP(Inductive coupled plasma)法、直流スパッタリング法、ECR(Electric cyclotron resonance)スパッタリング法、イオン化蒸着法、アーク式蒸着法、レーザ蒸着法、EB(Electron beam)蒸着法、抵抗加熱蒸着法などが挙げられる。
高周波プラズマCVD法では、高周波によって電極間に生じるグロー放電により原料ガス(メタン)を分解し、基板上にカーボン層を合成する。イオン化蒸着法では、タングステンフィラメントで生成される熱電子を利用して、原料ガス(ベンゼン)を分解・イオン化し、バイアス電圧によって基板上にカーボン層を形成する。水素ガス1〜99体積%と残りメタンガス99〜1体積%からなる混合ガス中で、イオン化蒸着法によりカーボン層を形成してもよい。
アーク式蒸着法では、固体のグラファイト材料(陰極蒸発源)と真空容器(陽極)の間に直流電圧を印加することにより真空中でアーク放電を起こして陰極から炭素原子のプラズマを発生させ蒸発源よりもさらに負のバイアス電圧を基板に印加することにより基板に向かってプラズマ中の炭素イオンを加速しカーボン層を形成することができる。
レーザ蒸着法では、例えばNd:YAGレーザ(パルス発振)光をグラファイトのターゲット板に照射して溶融させ、ガラス基板上に炭素原子を堆積させることによりカーボン層を形成することができる。
基板の表面にカーボン層を形成する場合、カーボン層の厚さは、通常、単分子層〜100μm程度であり、薄すぎると下地基板の表面が局部的に露出する可能性があり、逆に厚くなると生産性が悪くなるので、好ましくは2nm〜1μm、より好ましくは5nm〜500nmである。
カーボン層が形成された基板の表面に化学修飾基を導入することにより、オリゴヌクレオチドプローブを担体に強固に固定化できる。導入する化学修飾基は、当業者であれば適宜選択することができ、特に制限されないが、例えば、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、ホルミル基、ヒドロキシル基および活性エステル基が挙げられる。
アミノ基の導入は、例えば、カーボン層をアンモニアガス中で紫外線照射することによりまたはプラズマ処理することにより実施できる。または、カーボン層を塩素ガス中で紫外線を照射して塩素化し、さらにアンモニアガス中で紫外線照射することにより実施できる。または、メチレンジアミン、エチレンジアミンで等の多価アミン類ガス中を、塩素化したカーボン層と反応させることによって実施することもできる。
カルボキシル基の導入は、例えば、前記のようにアミノ化したカーボン層に適当な化合物を反応させることにより実施できる。カルボキシル基を導入するために用いられる化合物としては、例えば、式:X-R1-COOH(式中、Xはハロゲン原子、R1は炭素数10〜12の2価の炭化水素基を表す)で示されるハロカルボン酸、例えばクロロ酢酸、フルオロ酢酸、ブロモ酢酸、ヨード酢酸、2-クロロプロピオン酸、3-クロロプロピオン酸、3-クロロアクリル酸、4-クロロ安息香酸;式:HOOC-R2-COOH(式中、R2は単結合または炭素数1〜12の2価の炭化水素基を表す)で示されるジカルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、トリメリット酸、ブタンテトラカルボン酸などの多価カルボン酸;式:R3-CO-R4-COOH(式中、R3は水素原子または炭素数1〜12の2価の炭化水素基、R4は炭素数1〜12の2価の炭化水素基を表す)で示されるケト酸またはアルデヒド酸;式:X-OC-R5-COOH(式中、Xはハロゲン原子、R5は単結合または炭素数1〜12の2価の炭化水素基を表す。)で示されるジカルボン酸のモノハライド、例えばコハク酸モノクロリド、マロン酸モノクロリド;無水フタル酸、無水コハク酸、無水シュウ酸、無水マレイン酸、無水ブタンテトラカルボン酸などの酸無水物が挙げられる。
エポキシ基の導入は、例えば、前記のようにアミノ化したカーボン層に適当な多価エポキシ化合物を反応させることによって実施できる。あるいは、カーボン層が含有する炭素=炭素2重結合に有機過酸を反応させることにより得ることができる。有機過酸としては、過酢酸、過安息香酸、ジペルオキシフタル酸、過ギ酸、トリフルオロ過酢酸などが挙げられる。
ホルミル基の導入は、例えば、前記のようにアミノ化したカーボン層に、グルタルアルデヒドを反応させることにより実施できる。
ヒドロキシル基の導入は、例えば、前記のように塩素化したカーボン層に、水を反応させることにより実施できる。
活性エステル基は、エステル基のアルコール側に酸性度の高い電子求引性基を有して求核反応を活性化するエステル群、すなわち反応活性の高いエステル基を意味する。エステル基のアルコール側に、電子求引性の基を有し、アルキルエステルよりも活性化されたエステル基である。活性エステル基は、アミノ基、チオール基、水酸基等の基に対する反応性を有する。さらに具体的には、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、シアノメチルエステル、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等がアルキルエステル等に比べてはるかに高い活性を有する活性エステル基として知られている。より具体的には、活性エステル基としては、たとえばp-ニトロフェニル基、N-ヒドロキシスクシンイミド基、コハク酸イミド基、フタル酸イミド基、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド基等が挙げられ、特に、N-ヒドロキシスクシンイミド基が好ましく用いられる。
活性エステル基の導入は、例えば、前記のように導入したカルボキシル基を、シアナミドやカルボジイミド(例えば、1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド)などの脱水縮合剤とN-ヒドロキシスクシンイミドなどの化合物で活性エステル化することにより実施できる。この処理により、アミド結合を介して炭化水素基の末端に、N-ヒドロキシスクシンイミド基等の活性エステル基が結合した基を形成することができる(特開2001-139532)。
rs11141915検出用プローブ及び/又はrs12046844検出用プローブを、スポッティング用バッファーに溶解してスポッティング用溶液を調製し、これを96穴もしくは384穴プラスチックプレートに分注し、分注した溶液をスポッター装置等によって担体上にスポッティングすることにより、多型検出用プローブが担体に固定化されたマイクロアレイを製造することができる。または、スポッティング溶液をマイクロピペッターにて手動でスポッティングしてもよい。
スポッティング後、多型検出用プローブが担体に結合する反応を進行させるため、インキュベーションを行うことが好ましい。インキュベーションは、通常−20〜100℃、好ましくは0〜90℃の温度で、通常0.5〜16時間、好ましくは1〜2時間にわたって行う。インキュベーションは、高湿度の雰囲気下、例えば、湿度50〜90%の条件で行うのが望ましい。インキュベーションに続き、担体に結合していないDNAを除去するため、洗浄液(例えば、50mM TBS/0.05% Tween20、2×SSC/0.2%SDS溶液、超純水など)を用いて洗浄を行うことが好ましい。
以上のように構成されたDNAチップを用いることで、被検者(ゲムシタビン投与対象者)における、rs11141915及び/又はrs12046844の遺伝子型を判定することができる。ただし、rs11141915検出用プローブ及びrs12046844検出用プローブのいずれか一方を有するDNAチップを用いることで、被検者(ゲムシタビン投与対象者)における、rs11141915で特定される一塩基多型及びrs12046844で特定される一塩基多型のうちいずれか一方の遺伝子型を判定してもよい。
具体的に、rs11141915及びrs12046844の遺伝子型を判定する際には、被検者由来の試料からDNAを抽出する工程と、抽出したDNAを鋳型とし、rs11141915を含む領域及びrs12046844を含む領域をそれぞれ増幅する工程と、上述したDNAチップを用いて、増幅された核酸に含まれるrs11141915及びrs12046844の遺伝子型を同定する工程とを含む。
被検者は通常ヒトであり、人種等には特に限定されないが、特に、黄色人種、好適には東アジア人種、特に好適には日本人とする。また、被験者としては、ゲムシタビンが投与されている患者、ゲムシタビンの投与が予定されている患者、ゲムシタビンが適応となる疾患に罹患している患者とすることができる。ゲムシタビンが適応となる疾患としては、非小細胞肺癌、膵癌、胆道癌、尿路上皮癌、がん化学療法後に増悪した卵巣癌、手術不能又は再発乳癌、再発又は難治性の悪性リンパ腫を挙げることができる。なかでも、膵癌に罹患した患者を被験者とすることが好ましい。
被検者由来の試料は特に制限されない。例えば、血液関連試料(血液、血清、血漿など)、リンパ液、糞便、がん細胞、組織または臓器の破砕物および抽出物などが挙げられる。
まず、被検者から採取した試料からDNAを抽出する。抽出手段としては、特に限定されない。例えばフェノール/クロロホルム、エタノール、水酸化ナトリウム、CTABなどを用いたDNA抽出法を用いることができる。
次に、得られたDNAを鋳型として用いて増幅反応を行い、rs11141915を含む領域やrs12046844を含む領域、好ましくはDNAを増幅させる。増幅反応としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、LAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)、ICAN(Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification of Nucleic acids)法等を適用することができる。増幅反応においては、増幅後の領域を識別できるように標識を付加することが望ましい。このとき、増幅された核酸を標識する方法としては、特に限定されないが、例えば増幅反応に使用するプライマーをあらかじめ標識しておく方法を使用してもよいし、増幅反応に標識ヌクレオチドを基質として使用する方法を使用してもよい。標識物質としては、特に限定されないが、放射性同位元素や蛍光色素、あるいはジゴキシゲニン(DIG)やビオチンなどの有機化合物などを使用することができる。
またこの反応系は、核酸増幅・標識に必要な緩衝剤、耐熱性DNAポリメラーゼ、増幅領域に特異的なプライマー、標識ヌクレオチド三リン酸(具体的には蛍光標識等を付加したヌクレオチド三リン酸)、ヌクレオチド三リン酸および塩化マグネシウム等を含む反応系である。
rs11141915を含む領域の増幅反応に用いるプライマーは、rs11141915を含む領域を特異的に増幅できるものであれば特に制限されず、当業者であれば適宜設計できる。例えば、
プライマー1:5'- GCTCTCCCTGCTTGGTTTAC -3'(配列番号3)及び
プライマー2:5'- CATGCCAAGTCTCTGGTTGC -3'(配列番号4)
からなるプライマーのセットが挙げられる。
rs12046844を含む領域増幅反応に用いるプライマーは、rs12046844を含む領域を特異的に増幅できるものであれば特に制限されず、当業者であれば適宜設計できる。例えば、
プライマー1:5'- AGATAATAGCAGGCCATTGGTTAAT -3'(配列番号5)及び
プライマー2:5'- GAGTCACTTCCTTCCTTCCTGA -3'(配列番号6)
からなるプライマーのセットが挙げられる。
また、プライマーにより増幅される核酸断片は、目的とする多型(rs11141915又はrs12046844)を含んでいれば特に限定されず、例えば1kbp以下が好ましく、800bp以下がより好ましく、400bp以下が更に好ましく、200bp以下が特に好ましい。
上記のようにして得られた増幅核酸と、担体に固定されたrs11141915検出用プローブ及び/又はrs12046844検出用プローブとのハイブリダイゼーション反応を行い、rs11141915検出用プローブ及び/又はrs12046844検出用プローブにハイブリダイズした核酸の量を、例えば標識を検出することにより測定できる。標識からのシグナルは、例えば、蛍光標識を用いた場合は、蛍光スキャナを用いて蛍光シグナル検出し、これを画像解析ソフトによって解析することによりシグナル強度を数値化することができる。また、rs11141915検出用プローブ及び/又はrs12046844検出用プローブにハイブリダイズした増幅核酸は、例えば、既知量のDNAを含む試料を用いて検量線を作成することにより、定量することもできる。ハイブリダイゼーション反応は、好ましくはストリンジェントな条件下で実施する。ストリンジェントな条件とは、特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいい、例えば、50℃で16時間ハイブリダイズ反応させた後、2×SSC/0.2% SDS、25℃、10分および2×SSC、25℃、5分の条件で洗浄する条件をさす。或いは、ハイブリダイズする温度としては、塩濃度が0.5×SSCのとき、45〜60℃とすることができ、rs11141915検出用プローブ及び/又はrs12046844検出用プローブの鎖長が短い場合にはハイブリダイズ温度をこれより低くすることがより好ましく、rs11141915検出用プローブ及び/又はrs12046844検出用プローブの鎖長が長い場合にはハイブリダイズ温度をこれより高くすることがより好ましい。塩濃度が高くなると特異性を有するハイブリダイズ温度は高くなり、逆に塩濃度が低くなると特異性を有するハイブリダイズ温度は低くなることはいうまでもない。
本発明に係る予測方法では、rs11141915の遺伝子型がマイナーアレル(T)のホモ接合型である場合及び/又はrs12046844の遺伝子型がマイナーアレル(C)のホモ接合型である場合にゲムシタビンによる副作用が生じる可能性が高いと判断するため、判断結果を被験者に対するゲムシタビンの投与量を決定する際に利用することができる。すなわち、被験者において、rs11141915の遺伝子型がマイナーアレル(T)のホモ接合型であるか、rs12046844の遺伝子型がマイナーアレル(C)のホモ接合型である場合、当該被験者に対するゲムシタビン投与量を少量とし、副作用の発生を予防することができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
Kiyotani K, et al. A genome-wide association study identifies four genetic markers for hematological toxicities in cancer patients receiving gemcitabine therapy. Pharmacogenet Genomics 2012; 22: 229-235には、rs11141915、rs1901440、rs12046844及びrs11719165の遺伝子型と、ゲムシタビンによる副作用(骨髄抑制)とが相関していると示唆されている。本実施例では、ゲムシタビン副作用予測診断を臨床応用するため、更なる検証試験を実施した。
本実施例では、国立がん研究センターにおいてゲムシタビン単剤投与された膵癌患者の検体及び副作用(骨髄抑制)に関する情報(骨髄抑制の有無)を用いて、上記4ヶ所の多型と副作用との相関関係を検証した。なお、本例では、インベーダー法によって上記4ヶ所の多型をタイピングした。結果を表1に示す。
Figure 0006735105
なお、表1において、RAFとはリスクアレルの頻度を意味する。また、表1において、Allelic欄はリスクアレルの数 vs 非リスクアレルの数に関するP value、Dominantの欄は優性遺伝形式(リスクアレルをホモ又はヘテロで持つと副作用が生じると仮定した場合)のP value、Recessiveの欄は劣性遺伝形式(リスクアレルをホモで持つと副作用が生じると仮定した場合)のP valueを示している。さらに、表1においてOdds ratio (オッズ比)はリスクgenotypeまたはアレルを有することでどの程度骨髄抑制になりやすいのかを示す尺度として用いられている。さらにまた、表1において(95%CI)は95%の信頼区間を示している。
表1において、0.05以下のP valueを枠で囲っている。表1から分かるように、rs11141915、rs1901440、rs12046844及びrs11719165のうち、rs11141915及びrs12046844の遺伝子型と、ゲムシタビンによる副作用(骨髄抑制)とは有意に相関していることが明らかとなった。一方、rs1901440及びrs11719165の遺伝子型と、ゲムシタビンによる副作用(骨髄抑制)との間に相関関係は見られなかった。
以上の結果より、被験者におけるrs11141915及びrs12046844の遺伝子型を調べることで、当該被験者についてゲムシタビンによる副作用の発症リスクを評価できることが明らかとなった。
また、本実施例では、国立がん研究センターにおいてゲムシタビン単剤投与された膵癌患者の検体及び副作用(骨髄抑制)に関する情報(骨髄抑制の有無)と、Kiyotani K, et al. A genome-wide association study identifies four genetic markers for hematological toxicities in cancer patients receiving gemcitabine therapy. Pharmacogenet Genomics 2012; 22: 229-235に開示された情報を用いて、上記4ヶ所の多型と副作用との相関関係を検証した。結果を表2に示す。
Figure 0006735105
なお、表2における各表記は表1と同じである。表2においてDr.Kiyotaniの欄はKiyotani K, et al. A genome-wide association study identifies four genetic markers for hematological toxicities in cancer patients receiving gemcitabine therapy. Pharmacogenet Genomics 2012; 22: 229-235に開示された情報を意味している。表2においてNCCの欄は、国立がん研究センターにおいてゲムシタビン単剤投与された膵癌患者の検体及び副作用(骨髄抑制)に関する情報(骨髄抑制の有無)を意味している。表2においてCombinedの欄は、Dr.Kiyotaniの欄とNCCの欄を合計したものである。
表2においても、0.05以下のP valueを枠で囲っている。表2からも分かるように、rs11141915、rs1901440、rs12046844及びrs11719165のうち、rs11141915及びrs12046844の遺伝子型と、ゲムシタビンによる副作用(骨髄抑制)とは有意に相関していることが明らかとなった。一方、表2からも、rs1901440及びrs11719165の遺伝子型と、ゲムシタビンによる副作用(骨髄抑制)との間に相関関係は見られなかった。
一方、ジェムシタビン総投与量と副作用(骨髄抑制)が生じない人の割合との関係を、rs11141915遺伝子型毎に示したグラフを図1及び2に示した。また、ジェムシタビン総投与量と副作用(骨髄抑制)が生じない人の割合との関係を、rs12046844遺伝子型毎に示したグラフを図3に示した。
図1〜3に示すように、rs11141915及びrs12046844の遺伝子型についてリスクアレルをホモで有する個体については、ゲムシタビンによる副作用(骨髄抑制)がその投与量に応じてより高頻度で発症していることが明らかとなった。
〔実施例2〕DNAチップの作製
本実施例では、被験者におけるrs11141915及びrs12046844の遺伝子型を判定できるDNAチップを作製した。なお、本実施例では、rs11141915及びrs12046844に加えて、rs1901440及びrs11719165の遺伝子型もまた判定できるDNAチップを作製した。
<プローブ及びプライマーの設計>
ゲムシタビンの副作用と関連するrs11141915及びrs12046844並びにrs1901440及びrs11719165について、各多型を含む領域の塩基配列をNCBI(National Center for Biotechnology Information)のデータベースを利用して取得した。プローブは多型部位を中央とし、5’末端にチミン塩基を付加することで蛍光強度が強くなる知見があったため、これを応用したプローブを設計した。表3に設計したプローブのDNA配列を示した。なお、配列中、多型部位に下線を付した。
Figure 0006735105
プライマーは検査対象のSNPs領域をほぼ中央として、約160塩基対が増幅され、さらに既知のSNPsと重複しない領域を選択した。この時、最近接塩基対法を用いて融解温度(Melting Temperature:Tm)を算出し、各プライマーのTmが同程度になるように設計した。表4に設計したプライマーのDNA配列を示した。
Figure 0006735105
<DNAチップの作製>
DNAチップの基板を作製するために、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)上に多価カルボン酸を固定化し、そのカルボキシル基をNHS(N-ヒドロキシスクシンイミド)にて活性エステル化し、ジーンシリコンを作製した。ジーンシリコン上に表3のアミノ基修飾DNAを10μmol/Lで各2点ずつスポットした。スポット後、80℃で1時間加熱し固定化した。ジーンシリコンを室温の2×SSC/0.2%SDSで10分、55〜60℃の2×SSC/0.2%SDSで10分間浸漬後、超純水で3回すすいで洗浄を行った。遠心機にて乾燥させた後、ハイブリプレートにジーンシリコンを移載し、DNAチップを作製した。
<DNAの増幅>
DNAの増幅は、表5のPCR液を調製し、表6のサイクルに従いPCRを行った。
Figure 0006735105
Figure 0006735105
<測定>
得られたPCR産物4μLと2.25×SSC/0.3%SDSを混合した。この混合液3μLを上記で作製したDNAチップに滴下し、ハイブリダイゼーション専用装置(東洋鋼鈑)を用いて54℃で1時間ハイブリダイゼーションした。次に、金属ラック及び染色バットを用いて、0.1×SSC/0.1%SDSに5分浸漬後、1×SSCに浸漬させ10回上下に振とうして洗浄を行った。洗浄後DNAチップにカバーフィルムを被せ、バイオショット(露光時間7秒、温度10.0℃)を用いて蛍光強度を測定した。
各スポットは拡張領域法を用いてスポットの輪郭範囲を設定し、その範囲内のピクセルの蛍光強度の中央値をそれぞれのプローブに応じた蛍光強度とした。そして、各プローブの蛍光強度(複数点あるものはその平均値)から以下の式を用いて、判定値を算出した。
Figure 0006735105
<結果1>
国立がん研究センターから供与された17検体について各多型の判定値を測定した結果を図4に示す。図4に示すように各多型において、判定値が3個の群に収束した。群から大きく外れた判定値はなく、判定値の高い群の順にRisk型、Hetero型、Normal型と判別した。
また、各多型の判定値の平均値±3σを計算した結果を図5に示した。図5に示すように、本実施例で作製したDNAチップを利用することで、ゲムシタビンの副作用と関連するrs11141915及びrs12046844についてNormal型、Hetero型及びRisk型を高精度に分離して判定できることが明らかとなった。
本実施例で作製したDNAチップにおける17種類の検体の判別結果を表7に示した。この結果は、国立がん研究センターにてタイピングした結果とすべて一致した。
Figure 0006735105
<結果2>
また、国立がん研究センターから供与された171例の検体について、各多型の判定値を測定した結果を図6に示す。また、各多型の判定値の平均値±3σを計算した結果を図7に示した。
図6に示すように、各多型において、判定値が3個の群に収束した。なお、図6に示すように、rs12046844のヘテロ型と変異型が最も近接していた。しかし、これらはN数が十分多く(N>30)、図7に示すように3σの範囲は明確に分離しているため、検査における誤判定のリスクは低い。その他全ての遺伝子型についても、3σの範囲が重複せず、明確に分離していることから、本実施例で作製したDNAチップを利用することで、ゲムシタビンの副作用と関連するrs11141915及びrs12046844について遺伝子型を正確に判定できる。
また、本実施例で作製したDNAチップを用いて判定した遺伝子型は、171例の検体すべてにおいて国立がん研究センターにてタイピングした結果と一致した。

Claims (7)

  1. rs11141915及びrs12046844の遺伝子多型のみを決定することを特徴とするゲムシタビンによる副作用を予測する方法。
  2. 上記rs11141915の遺伝子型がTである場合、上記副作用のリスクが高いと予測する請求項1記載の方法。
  3. 上記rs12046844の遺伝子型がCである場合、上記副作用のリスクが高いと予測する請求項1記載の方法。
  4. 上記rs11141915及びrs12046844の遺伝子多型のみを、DNAチップを用いて決定することを特徴とする請求項1記載の方法。
  5. 上記DNAチップに固定する、rs11141915の遺伝子多型を判定するプローブはATGCCTGGMGGCCCCTG(配列番号1)を含み、rs12046844の遺伝子多型を判定するプローブはGAAACCAACYAAAACCCCT(配列番号2)を含むとすることを特徴とする請求項4記載の方法。
  6. ゲムシタビンによる副作用として、骨髄抑制の発症を予測することを特徴とする請求項1記載の方法。
  7. 膵臓癌患者における上記遺伝子多型を決定し、当該膵臓癌患者における上記副作用を予測することを特徴とする請求項1記載の方法。
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