JP6728104B2 - 青果物の包装体、及び青果物の鮮度保持方法 - Google Patents
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Description
例えば特許文献1には、青果物を密封した高分子フィルムよりなる青果物入り包装体において、前記包装体が(A)有孔高分子フィルムと(B)無孔高分子フィルムにより構成されており、前記(A)、(B)の少なくとも一方のフィルム特性が25℃、相対湿度75%の条件下で測定した水蒸気透過率が前記包装体の有効表面積を基準にして50〜800gm-2d-1であり、前記(A)の開孔面積比率は前記包装体の有効表面積に対し3×10-6〜7×10-4%であることを特徴とする青果物入り包装体が記載されており、より具体的には、(A)有孔高分子フィルムとして、厚さ35μmの延伸ポリプロピレンからなり、平均孔径30μmの孔を95個あけたもの、平均孔径が60μmの孔を9個開けたもの等が使用されている。
しかしながら、千切りキャベツの品質に対する需要者、消費者の要求水準は年々向上しており、特に臭いの抑制、或いは臭いの抑制と変色の抑制との両立に関する要求水準は、上記従来技術を以ってしても解決が困難なレベルに達している。
例えば、特許文献2に開示の技術においては、包装容器内の酸素濃度を0.03%以上とすることが提案されているが、これはある程度以上の酸素濃度を維持することで、千切りキャベツの呼吸を確保し、低酸素濃度環境における嫌気による異臭発生を防ぐためであった。しかし、たとえ包装容器内の酸素濃度を0.03%以上とした場合にであっても、異臭が観測される場合があり、その解決が望まれていた。
この様な背景から、臭いの発生を極めて効果的に抑制するなど、従来技術の水準を超えて千切りキャベツを含む青果物の鮮度保持が可能な技術が強く求められていた。
すなわち本発明は、
[1]
高分子フィルムを含んでなる包装容器内に千切りキャベツを含む青果物を収納してなり、前記包装容器内の、NH3換算の、においモニターにおけるにおい強度(S)が、600以下である、包装体、である。
[2]
包装体の封止後3日における前記包装容器内の、NH3換算の、においモニターにおけるにおい強度(S)が、500以下である、[1]に記載の包装体。
[3]
前記高分子フィルムの酸素透過度が、20℃、90%RHにおいて、2500cc/m2・atm・day以上である、[1]又は[2]に記載の包装体。
[4]
前記青果物の重量あたりの前記包装容器の酸素透過量が、1500〜6000cc/100g・day・atmである、[1]から[3]のいずれか一項に記載の包装体。
[5]
包装体の封止後3日における前記包装容器内のエチレン濃度が、0.300ppm以下である、[1]から[4]のいずれか一項に記載の包装体。
[6]
前記高分子フィルムが、該高分子フィルムの面積1m2あたり、総面積90000μm2以上の貫通孔を有する、[1]から[5]のいずれか一項に記載の包装体。
[7]
前記高分子フィルムの厚みが、5から100μmである、[1]から[6]のいずれか一項に記載の包装体。
[8]
前記高分子フィルムが、延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエチレン系フィルム、又は延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体である、[1]から[7]のいずれか一項に記載の包装体。
[9]
前記高分子フィルムが、少なくとも1種の抗菌剤を含有し、又は少なくとも1種の抗菌剤が塗布されている、[1]から[8]のいずれか一項に記載の包装体。
[10]
更に吸湿剤、及び/又は抗菌剤を収納してなる、[1]から[9]のいずれか一項に記載の包装体。
[11]
高分子フィルムを含んでなる包装容器内に千切りキャベツを含む青果物を収納する工程、及び該包装容器内の、NH3換算の、においモニターにおけるにおい強度(S)が、600以下とする工程、を有する青果物の鮮度保持方法。
本発明は、高分子フィルムを含んでなる包装容器内に千切りキャベツを含む青果物を収納してなり、前記包装容器内の、NH3換算の、においモニターにおけるにおい強度(S)が、600以下である、包装体、である。すなわち、本発明の包装体は、少なくとも、包装容器と、そこに収納された青果物と、を有するものである。
本発明の包装体を構成する包装容器は、高分子フィルムを含んでなるものである。ここで「高分子フィルムを含んでなる」とは、包装容器の全部が高分子フィルムで構成されている場合、及び蓋材等包装容器の一部が高分子フィルムで構成されている場合、の双方を含む趣旨である。
従って、上記包装容器は、全部又は主要部が可撓性の高分子フィルムで構成された可撓性の包装容器、いわゆる包装袋であってもよく、可撓性の高分子フィルムとコーティング紙等のそれ以外の可撓性の部材を組み合わせた可撓性の包装容器であってもよく、あるいは可撓性の高分子フィルムと剛直な部材とを組み合わせた包装容器、例えば、蓋材としての高分子フィルムと、トレー、カップ等の剛直な部材とを組み合わせた形態のものであってもよい。
なお、このような包装袋は、その平面視での形状は円形、三角形、四角形、四角形以上の多角形でもよいが、加工性や取扱いの容易さの観点から長方形をなすことが好ましい。
本発明の包装体は、上記包装容器内に千切りキャベツを含む青果物を収納してなる。ここで、ほう青果物が千切りキャベツを「含む」とは、当該青果物の全部が千切りキャベツで構成されている場合、及び当該青果物の一部が千切りキャベツ構成されている場合、の双方を包含する趣旨である。従って、包装容器内に収納される青果物は、千切りキャベツ以外の野菜、果物等を含んでいてもよく、含んでいなくともよい。更には、千切りキャベツを含んでいる限りにおいては、青果物以外の成分、例えば青果物以外の食品、調味料、食品添加物等を含んでいてもよい。
すなわち、ここでいう「キャベツ」は、その好ましい例として、寒玉(冬)キャベツ、春キャベツ、高原キャベツ、レッドキャベツ、グリーンボール(丸玉)、サボイキャベツ(ちりめんキャベツ)、芽キャベツ、プチヴェール、みさき甘藍/とんがりきゃべつ等の全てを包含する概念であるが、これらには限定されない。
千切りキャベツは、その鮮度や食味を保つために、殺菌処理されていてもよく、洗浄処理されていてもよい。
本発明の包装体内の硫化メチル濃度に対応する、NH3換算の、においモニターにおけるにおい強度(S)は、600以下である。包装体内の、NH3換算の、においモニターにおけるにおい強度(S)が600以下であることで、包装体内の千切りキャベツを特有の臭気の発生を、従来技術の限界を超えて効果的に抑制することができる。
包装体内の硫化メチル濃度に対応する、NH3換算の、においモニターにおけるにおい強度(S)は、500以下であることがより好ましく、400以下であることが特に好ましい。
NH3換算の、においモニターにおけるにおい強度(S)は、ハンディにおいモニター(OMX−ADM)(神栄テクノロジー株式会社製、検知方式:半導体ガスセンサー、測定法:ノズルを通しての連続吸引)を用いて測定されたものである。より具体的には、におい強度(S)は、ガスを含まない場合の、においモニター中の半導体ガスセンサーの抵抗値(RO)とガスを検知したときの抵抗値(R)から求められる感度(RO/R)を2つ異なる特性を持ったガスセンサーA及びBについて測定し、それぞれの感度をX及びYとした場合に下記式にしたがって、算出されるものである。
(式) S={(X−1)2+(Y−1)2}1/2
NH3換算の、においモニターにおけるにおい強度(S)で、600以下であることで、包装体内の千切りキャベツを特有の臭気が抑制されるメカニズムは必ずしも明らかではないが、NH3換算の、においモニターにおけるにおい強度(S)は、実質的に硫化メチルの濃度を測定していると考えられ、この硫化メチル濃度が所定レベル以下であることが、千切りキャベツを特有の臭気の抑制に何らかの関連があるものと推定される。すなわち、一般にキャベツに多く含まれるイソチオシアネート成分が千切りキャベツのカット工程で放出され、これが空気中の酸素と反応して硫化メチルを生成し得るが、この硫化メチル濃度が所定値以下であることと臭気の抑制との間に、何らかの関係があることが推定される。また、イソチオシアネート成分若しくは硫化メチル、及び後述する嫌気性呼吸で発生するアルコール類の間の一種の相乗作用で、これらの成分それぞれ単独の場合よりも強い臭気を感じ得ることと、なんらかの関係があることが推定される。
また、カット後の千切りキャベツを、水洗、乾燥する等してから、包装容器内に収納してもよい。
本実施形態において、NH3換算の、においモニターにおけるにおい強度(S)は、実質的に硫化メチル濃度に対応していると考えられる。包装体内における硫化メチルの多くは、千切りキャベツから発生するイソチオシアナートに由来すると考えられるので、カット、封止から時間が経つほど発生量が低下する傾向がある。従って、包装体の封止後3日における硫化メチル濃度が上記所定値のにおい強度(S)に対応する濃度以下であれば、その後長期間に亘って包装体内部の硫化メチルを低濃度に保つことができるので好ましい。
本発明の包装体においては、包装体の封止後3日における前記包装容器内の、NH3換算の、においモニターにおけるにおい強度(S)は、400以下であることがより好ましく、300以下であることが特に好ましい。
包装体内のエチレン(C2H 4 )濃度が包装体の封止後3日において0.300ppm以下であることで、包装体内の青果物の劣化を効果的に抑制することができる。
包装体内のエチレン(C2H 4 )濃度は、包装体の封止後3日において、0.200ppm以下であることがより好ましく、0.150ppm以下であることが特に好ましい。
包装体内の青果物の劣化の観点から、包装体内のエチレン(C2H 4 )濃度は低いほど好ましく、特に下限は存在しないが、通常の千切りキャベツを含む青果物を、通常の透過性を有する包装容器に収納する限りにおいては、0.010ppm以上となる場合が多い。
包装体内のエチレン(C2H 4 )濃度が上記範囲にあることで青果物の劣化が抑制されるメカニズムは必ずしも明らかではないが、エチレンガスが植物の熟成、老化と密接に関連する成分であることと何らかの関係があることが推定される。
また、包装容器の内容積に対して、収納される成果物の量を少なくすることにより、内容積あたりのエチレンの発生量、蓄積量を相対的に小さなものとしてもよい。あるいは、発生したエチレンを分解する触媒や吸着する活性炭等を包装体内に収納してもよい。
包装後8日における内部酸素濃度が3体積%以上であることによって、包装容器内に収容された青果物中のキャベツの臭いの発生を極めて有効に抑制することができる。包装後8日における内部酸素濃度が20体積%以下であることによって、包装容器内に収容された青果物中のキャベツの褐変を有効に抑制することができる。本発明の包装体の好ましい実施形態においては、青果物中の千切りキャベツの褐変、及び臭いの発生を、包装後長期間、例えば8日間以上にわたって抑制することができる。
本発明の包装体の、包装後8日における内部酸素濃度は4体積%以上であることがより好ましく、5体積%以上であることが特に好ましい。
本発明の包装体の、包装後8日における内部酸素濃度は、18体積%以下であることがより好ましく、16体積%以下であることが特に好ましい。
ここで、「包装後」とは、包装容器内に千切りキャベツを含む青果物を収納した後、包装容器を封止してからの経過時間をいい、「包装後8日」とは、包装容器内に千切りキャベツを含む青果物を収納した後、包装容器を封止してから8日(192時間)経過後の状態をいう。
酸素濃度の履歴については、包装直後の、すなわち包装容器内にキャベツを含む青果物を収納した後包装容器を封止した直後の、包装容器内の酸素濃度が、3〜20体積%であることが好ましい。例えば、所定量以上の酸素を含んだ気体をキャベツを含む青果物とともに包装容器に収納して包装容器を封止することで、キャベツ等からの臭いの発生を特に効果的に抑制することができる。
包装直後の包装容器内の酸素濃度は、4〜15体積%であることがより好ましく、5〜11体積%であることが特に好ましい。
尤も、包装直後の酸素濃度は安定しない場合も多いので、包装後1日の酸素濃度を、上記範囲に設定することで、初期の酸素濃度を管理してもよい。
また、上述した所望の内部硫化メチル濃度を実現するためには、酸素透過度が所定値以上である高分子フィルムを用いて、包装容器を構成することが望ましい。
すなわち、本発明において用いる高分子フィルムの酸素透過度は、20℃、90%RHにおいて、2500cc/m2・atm・day以上であることが好ましい。20℃、90%RHにおける酸素透過度が上記値以下であることによって、包装体内部における硫化メチルの蓄積を防ぎ、NH3換算の臭いセンサー値で600以下、という硫化メチル濃度を実現することが、一層容易になる。特に、包装体の封止後3日における前記包装容器内の硫化メチル濃度を、NH3換算の臭いセンサー値で500以下とすることが、一層容易になる。
更に、高分子フィルムの酸素透過度が、20℃、90%RHにおいて、2500cc/m2・atm・day以上であることによって、上述の好ましい内部酸素濃度を実現することも、一層容易になる。
本発明において用いる高分子フィルムの酸素透過度は、20℃、90%RHにおいて、3500cc/m2・atm・day以上であることがより好ましく、5000cc/m2・atm・day以上であることが特に好ましい。
高分子フィルムの酸素透過度には特に上限は存在しないが、包装体内の酸素濃度を低く保ち、千切りキャベツを含む青果物の褐変等の外観の劣化を一層有効に抑制する観点からは、20℃、90%RHにおいて、45000cc/m2・atm・day以下であることが好ましい。高分子フィルムの酸素透過度は、20℃、90%RHにおいて、35000cc/m2・atm・day以下であることがより好ましく、32000cc/m2・atm・day以下であることが特に好ましい。
まず、次の方法で内寸a(cm)×b(cm)の袋を形成する。
1枚のフィルムをほぼ均等に2つ折りにし約5mm幅で、インパルスシーラー(富士インパルス社製、品番Fi−200−10WK)で加熱条件の目盛を3に設定してヒートシールを行い、当該ヒートシール辺がほぼ中央にくるようにヒートシール辺とほぼ垂直をなす辺の一方の全体を、他方の辺の一方の連通部となる端部約2cmを除く全体をヒートシールして、内寸a(cm)×b(cm)の袋を形成する。
次に前記連通部から窒素ガスを注入し、袋内が飽和状態になれば袋内のガスを連通部からほぼすべて排出する。この操作を5回繰り返した後、窒素ガスを注入して袋内を窒素ガスで飽和させて連通部を前記インパルスシーラーで同様の条件でヒートシールする。窒素ガスを飽和させた袋を22℃、相対湿度40%の空気中(1気圧、酸素濃度:21%、窒素濃度:79%)の室内に6時間放置する。
次にサンプリング針チューブで約20ccサンプリングして食品包装用ジルコニア酸素濃度計(東レエンジニアリング社製、型番LC−750F)にて袋中の酸素濃度を測定する。さらに、袋中の気体の体積を測定し、下記の式から酸素透過度を算出する。
(式) 酸素透過度=内部酸素濃度変化(%)/100×体積(cm3)×24×60/時間(360分)×10000cm2/面積(2×a×b cm2)/酸素の分圧(0.21atm)
高分子フィルムに開口部を設けない場合には、製造プロセスがより簡便、低コストなものとなり、また開口部の大きさ、形状等を精密に制御することも不要となる。
高分子フィルム中に開口部が存在しないことは、例えば、包装容器を構成する高分子フィルムが、インク洩れチェッカーで確認できる貫通孔を有さないことにより、確認することができる。
個々の開口部の大きさと、開口部の個数は、高分子フィルムの酸素透過度が適切な限りにおいて、適宜設定、変更可能であり、その際には、高分子フィルムの有効面積に占める開口部の数が指針となる。例えば2mmの長さのスリット状の開口部であって、閉じた状態では光学顕微鏡(オリンパス社製、型式SZH−131)にて倍率4倍による観察では貫通口としての幅は視認することができないものを設ける場合、200mm×200mmの包装容器に対して1つ存在するごとに約1000cc/m2・atm・dayの酸素透過度を上げる効果があり、この様な知見に基づき必要とされる包装容器全体の酸素透過度からスリット開口部の数を決めることが好ましい。
前記プロピレン系重合体としては、ポリプロピレンの名称で製造、販売されているプロピレン単独重合体(ホモPPとも呼ばれている)、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(ランダムPPとも呼ばれている)、プロピレン単独重合体と、低結晶性または非晶性のプロピレン・エチレンランダム共重合体との混合物(ブロックPPとも呼ばれている)などのプロピレンを主成分とする結晶性の重合体が挙げられる。また、プロピレン系重合体は、分子量が異なるプロピレン単独重合体の混合物であってもよく、プロピレン単独重合体と、プロピレンとエチレン又は炭素数4から10のα−オレフィンとのランダム共重合体との混合物であってもよい。
前記エチレン系重合体としては、エチレンの単独重合体、エチレンを主要モノマーとし、それと炭素数3から8のα−オレフィンの少なくとも1種類以上との共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、そのケン化物及びアイオノマーが挙げられる。具体的には、ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ペンテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体などのエチレンを主要モノマーとし、これと炭素数3から8のα−オレフィンの少なくとも1種類以上との共重合体が挙げられる。これらの共重合体中のα−オレフィンの割合は、1〜15モル%であることが好ましい。
機械的強度等の観点からは、各種高分子の延伸フィルムを好適に用いることができる。
特に、プロピレン系重合体を用いた延伸フィルム(延伸ポリプロピレンフィルム)は、機械的強度、透明性、耐熱性等に優れるため、本発明に用いる包装容器において、特に好ましく使用することができる。
また、エチレン系重合体を用いたフィルム(ポリエチレン系フィルム)も、無延伸フィルム、延伸フィルムのいずれであってもよいが、ヒートシール性等の観点から、無延伸のものを、特に好ましく使用することができる。
本発明において包装容器を構成する高分子フィルムとして特に好適なものの例として、延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエチレン系フィルム、及び延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体を挙げることができる。
本発明において好ましく用いられる延伸ポリプロピレンフィルムは少なくとも一方向に延伸されたフィルムから構成されていてもよいし、延伸ポリプロピレンフィルム自体が少なくとも一方向に延伸されていてもよい。また、延伸ポリプロピレンフィルムとして二軸延伸フィルムを得る場合には、例えば逐次、あるいは同時二軸延伸することにより容易に製造することも可能である。延伸ポリプロピレンフィルムとして二軸延伸フィルムを得る場合には、通常、縦方向に5〜8倍延伸し、続いて横方向にテンター機構を用いて8〜10倍延伸し、フィルムの厚さを最終的に20〜40μmとする方法、あるいは、縦方向及び横方向に夫々5〜10倍(面倍率で25〜100倍)延伸することにより製造することができる。
<ポリエチレン系フィルム>
本発明において好ましく用いられるポリエチレン系フィルムは、前記エチレン系重合体を含むフィルムである。ポリエチレン系フィルムは種々の公知の成型方法を用いることができるが、エクストルーダーによる押出によるキャスト成型が、生産効率の観点から好ましい。
ナイロン6、ナイロン66等からなるポリアミドフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートに代表されるポリエステルからなるフィルム、ポリカーボネートフィルム、エチレン・ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレン等のポリオレフィン及びポリL乳酸、ポリD乳酸、またはポリL乳酸とポリD乳酸を精密に配位したステレオコンプレックス晶ポリ乳酸からなる一軸あるいは二軸延伸フィルムである。
本発明において好ましく用いられる延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体は上記ポリエチレン系フィルムの層と延伸フィルムの層を積層して得られる。ポリエチレン系フィルムは一方向または二方向に延伸されていてもよいが、包装袋の機械的強度の安定性の観点から、無延伸フィルムであることが好ましい。
予め作製された延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとを接着剤により貼着させるドライラミネーションを行うが、ここで接着剤を塗布する延伸フィルム表面にはコロナ処理をしておくことが接着安定性の観点から好ましい。具体的には、コロナ処理後のフィルム表面の表面張力が接着安定性の観点から、35mN/m以上が好ましく、40mN/m以上がより好ましい。
青果物等の内容物の鮮度保持の観点からは、上記高分子フィルムが、少なくとも1種の抗菌剤を含有することが好ましい。
また、上記高分子フィルムの表面に特定の界面活性剤が特定量存在し、又は上記高分子フィルムが特定の界面活性剤を特定量含むことで、抗菌機能を有していてもよい。例えば、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレートおよびジグリセリンモノラウレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物が、上記高分子フィルムの少なくとも一方の表面に存在することが好ましく、当該少なくとも1種の化合物が0.002〜0.5g/m2存在することが特に好ましい。あるいは、上記高分子フィルムが、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレートおよびグリセリンモノカプレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有していることが好ましく、0.001〜3質量部含有していることが特に好ましい。
上記高分子フィルムの表面に特定の界面活性剤が特定量存在し、又は上記高分子フィルムが特定の界面活性剤を特定量含むことで、該高分子フィルムの表面での結露が抑制され、雑菌の繁殖が抑制されることにより、結露(ドリップ)中での雑菌の増殖が抑制され、抗菌機能が発揮される。
この場合、延伸プロピレンフィルム単体で用いる場合は、その厚さが10〜100μmであることが好ましく、延伸ポリプロピレンフィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体を用いる場合には、前者の厚さが10〜50μm、後者の厚さが10〜120μmであることが好ましい。
千切りキャベツを含む青果物を本発明の包装容器に収納し、その包装容器内の硫化メチル濃度を適宜調整することで、本発明の包装体を製造することができ、また本発明の一実施形態である青果物の鮮度保持方法を実施することができる。
以下、本発明の包装体の製造方法を、千切りキャベツの鮮度保持用の包装体を例に説明する。
また、カット幅が狭いほど、切断面積が増加し、鮮度保持がより困難になるため、鮮度保持の観点からは、需要の形態に適合する限りにおいてカット幅が広い方が好ましい。
更に、千切りキャベツに当初から雑菌が多く付着していると、鮮度保持がより困難になるため、千切りキャベツをよく洗浄するなどして、雑菌の付着をできるだけ低減することが好ましい。洗浄は、雑菌の付着を低減するばかりか、活性の高い酵素等を含み変色等の原因となりうる細胞液等を除去する効果もあるため、鮮度保持のために特に有効である。
加えて、洗浄後に千切りキャベツ表面に付着した水分を十分に除去することが、鮮度保持のために重要である。洗浄後静置して水切りを行っても、千切りキャベツ表面にはなお多くの水が付着している場合が多いので、遠心脱水機等を用いて水分を除去することが有効である。
また、流通の過程での効率向上やスペース節約、特定の気体の排除等の観点からも、包装容器の封止後に脱気を行ってもよい。あるいは、硫化メチルを吸着する活性炭等を包装容器内に収納しても構わない。
例えば、青果物に加えて、吸湿剤、及び/又は抗菌剤が包装容器中に収納されていてもよい。
吸湿剤には特に限定は無く、吸湿効果または調湿効果を有する公知又は市販の材料を使用することができる。吸湿剤として好適に用いられるものとしては、例えば、活性炭、シリカゲル、アルミナゲル、シリカアルミナゲル、無水硫酸マグネシウム、ゼオライト、合成ゼオライト、酸化カルシウム、塩化カルシウム、及び、焼ミョウバン、又はこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
これらの中でも、青果物への影響や食品である青果物等の近くで使用することに関する懸念の比較的少ない活性炭を用いることが特に好ましい。活性炭は粉末状、粒状どちらでも何ら差し支えなく、原料はヤシ殻、おがくず、木炭、竹炭、褐炭、泥炭、ほね、石油ピッチなどどんなものでも差し支えない。また活性炭は不織布、セロファン、紙などなどで使用単位毎に包装してあることが望ましいが、活性炭自体が繊維状になったものでも差し支えない。活性炭の包材としては、合成樹脂からなる不織布のように、ヒートシール性を有するものが好ましいが、水蒸気透過性を有しかつ活性炭がこぼれないもので有れば、紙、天然繊維などでも何ら問題ない。
(酸素透過度)
まず、次の方法で内寸210mm×175mmの袋を形成した。
1枚のフィルムをほぼ均等に2つ折りにし約5mm幅で、インパルスシーラー(富士インパルス社製、品番Fi−200−10WK)で加熱条件の目盛を3に設定してヒートシールを行い、当該ヒートシール辺がほぼ中央にくるようにヒートシール辺とほぼ垂直をなす辺の一方の全体を、他方の辺の一方の連通部となる端部約2cmを除く全体をヒートシールして、内寸210mm×175mmの袋を形成した。その際、ヒートシール部に、ガス測定用のピンチコックを1個設けた。
次に前記連通部から窒素ガスを注入し、袋内が飽和状態になってから袋内のガスを連通部からほぼすべて排出した。この操作を5回繰り返した後、窒素ガスを注入して袋内を窒素ガスで飽和させて連通部を前記インパルスシーラーで同様の条件でヒートシールした。窒素ガスを飽和させた袋を22℃、相対湿度40%の空気中(1気圧、酸素濃度:21%、窒素濃度:79%)の室内に6時間放置した。
次にガス測定用のピンチコックから、袋内のガスを約20ccサンプリングして食品包装用ジルコニア酸素濃度計(東レエンジニアリング社製、型番LC−750F)にて袋中の酸素濃度を測定した。さらに、袋中の気体の体積を測定し、下記の式から酸素透過度を算出した。
(式)酸素透過度=内部酸素濃度変化(%)/100×体積(cm3)×24×60/時間(360分)×10000cm2/面積(1232cm2)/酸素の分圧(0.21atm)
(酸素濃度)
ガス測定用のピンチコックから包装体内のガスを約20ccサンプリングして食品包装用ジルコニア酸素濃度計(東レエンジニアリング社製、型番LC−750F)にて袋中の酸素濃度を測定した。
(におい強度(S))
ハンディにおいモニター(OMX−ADM)(神栄テクノロジー株式会社製、検知方式:半導体ガスセンサー、測定法:ノズルを通しての連続吸引)を用いてNH3換算でのにおい強度(S)を測定した。
(エチレン濃度)
島津社製ガスクロマトグラフィー(2010plusAF)を用い、FID法により測定した。
(臭い)
包装体の封を開けた時に顔を近づけて内部のにおいを嗅いでn=3で官能評価した。
厚さ30μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムに対し、210mm間隔で1.65mmの縦スリットの開口部を設けたフィルムを用意した。
上記のフィルムを用いて210mm×175mmサイズの袋をヒートシールで作製した。なお、袋にはピンチコックを取り付けた。
この袋の酸素透過度を測定したところ、3,600cc/m2・atm・dayだった。
予め準備した千切りキャベツ150gをそれぞれの袋に包装後、上部をヒートシールで封止した。袋中の気体を真空ポンプで脱気後、予めガス組成を調節した混合ガス(CO2:15%、O2:5%、N2:80%)を350ml封入し、千切りキャベツを収納してなる包装体を作製した。
この包装体を5℃に設定した冷蔵庫内に保管し、経日で内部の酸素濃度、及び硫化メチル濃度、を測定し、千切りキャベツの臭いを評価した。
結果を表1に示す。
初期、長期ともに臭いは観測されず、NH3換算の、においモニターにおけるにおい強度(S)が本発明の範囲内であり、硫化メチル濃度が抑制されていることにより、異臭を有効に抑制できることが判った。
厚さ30μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムに対し、210mm間隔で2.3mm×2.3mmのX(クロス)スリットの開口部を設けたフィルムを用いたことを除くほか、実施例1と同様にして、千切りキャベツを収納してなる包装体を作製し、評価を行った。その際、包装体内部のエチレン濃度も測定した。
袋の酸素透過度は、8,200cc/m2・atm・dayだった。
評価結果を表1に示す。
初期、長期ともに臭いは観測されず、NH3換算の、においモニターにおけるにおい強度(S)が本発明の範囲内であり、硫化メチル濃度が抑制されていることにより、異臭を有効に抑制できることが判った。
また、エチレン濃度も長期間に亘って低く抑制され、千切りキャベツの老化防止、鮮度維持に有利であった。
レーザー加工で直径約70μmの円形の開口部を1個設けた厚さ39μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを使用した他は、実施例1と同様にして、千切りキャベツを収納してなる包装体を作製し、評価を行った。
袋の酸素透過度は、6,000cc/m2・atm・dayであった。
評価結果を表1に示す。
初期、長期ともに臭いは観測されず、NH3換算の、においモニターにおけるにおい強度(S)が本発明の範囲内であり、硫化メチル濃度が抑制されていることにより、異臭を有効に抑制できることが判った。
開口部を設けていない厚さ30μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いたことを除くほか、実施例1と同様にして、千切りキャベツを収納してなる包装体を作製し、評価を行った。その際、包装体内部のエチレン濃度も測定した。
袋の酸素透過度は、1,400cc/m2・atm・dayだった。
結果を表1及び表2に示す。
初期、長期ともに臭いが観測され、NH3換算の、においモニターにおけるにおい強度(S)が本発明の範囲外であり、硫化メチル濃度が高いため、異臭を有効に抑制できなかった。また、エチレン濃度も高く、千切りキャベツの老化防止、鮮度維持に不利であった。
Claims (5)
- 延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエチレン系フィルム、又は延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体である2枚の高分子フィルムを互いに重ね合わせた状態、または1枚の該高分子フィルムを折り重ねた状態で融着してなる包装容器内に千切りキャベツを含む青果物を収納してなり、包装体の封止後3日における前記包装容器内の、NH3換算の、においモニターにおけるにおい強度(S)が、391以下であり、前記高分子フィルムの酸素透過度が、20℃、90%RHにおいて、3500cc/m2・atm・day以上45000cc/m2・atm・day以下である、包装体。
- 包装体の封止後3日における前記包装容器内のエチレン濃度が、0.150PPM以下である、請求項1に記載の包装体。
- 前記高分子フィルムの厚みが、5から100μmである、請求項1又は2に記載の包装体。
- 前記高分子フィルムが、少なくとも1種の抗菌剤を含有し、又は少なくとも1種の抗菌剤が塗布されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の包装体。
- 更に吸湿剤、及び/又は抗菌剤を収納してなる、請求項1から4のいずれか一項に記載の包装体。
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