JP2017124841A - 内容物の鮮度保持用に好適な包装容器、及びそれを用いた包装体 - Google Patents
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Abstract
Description
当該包装容器は、青果物等の内容物の鮮度保持用に好適であり、カット野菜等の鮮度保持用に特に好適である。
例えば特許文献1には、青果物を密封した高分子フイルムよりなる青果物入り包装体において、前記包装体が(A)有孔高分子フイルムと(B)無孔高分子フィルムにより構成されており、前記(A)、(B)の少なくとも一方のフィルム特性が25℃、相対湿度75%の条件下で測定した水蒸気透過率が前記包装体の有効表面積を基準にして50〜800gm-2d-1であり、前記(A)の開孔面積比率は前記包装体の有効表面積に対し3×10-6〜7×10-4%であることを特徴とする青果物入り包装体が記載されており、より具体的には、(A)有孔高分子フィルムとして、厚さ35μmの延伸ポリプロピレンからなり、平均孔径30μmの孔を95個あけたもの、平均孔径が60μmの孔を9個開けたもの等が使用されている。
なお、孔、開口部の径を更に増大し、あるいはその数を増加させることで脱気時間の短縮をすることも可能ではあるが、その場合空気中の異物が侵入するという上述の問題が更に深刻なものとなることが懸念される。
本発明者は、鋭意検討の結果、従来円形又は略円形であった包装容器の高分子フィルム中の孔、開口部の断面形状をスリット状とし、当該開口部の幅が光学顕微鏡による倍率4倍での観察では貫通していることが確認できないものとし、更に当該開口部を高分子フィルムの少なくとも1面に設けられた凸部上に設けることで、適切な気体透過性を維持しながら、空気中の異物の侵入を適切に抑制でき、かつ通気の方向性を有し、更に圧迫時には内部の気体を脱気することで破袋を回避できる包装容器を実現できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
[1]
高分子フィルムを含んでなる包装容器であって、22℃、40%RHでの酸素透過度が2000から50000cc/m2/day/atmであり、該高分子フィルムに少なくとも1の開口部を有する凸部が設けられ、該開口部の長さが0.5〜7mmであり、該開口部の幅が、光学顕微鏡における倍率4倍での観察では、貫通していることが確認できないものである、上記包装容器である。
[2]
前記開口部を有する凸部が、前記高分子フィルムの少なくとも1の面に設けられている、[1]に記載の包装容器。
[3]
前記開口部を有する凸部が、前記1の面から、前記高分子フィルムの厚さの0.10〜2.0倍突出している、[2]に記載の包装容器。
[4]
前記開口部を有する凸部の長さが1mm〜150mmであり、幅が30μm〜1000μmであり、かつ前記開口部の長さが0.5mm〜7mmであり、さらに前記開口部の長さが凸部の長さより短い[1]から[3]のいずれか一項に記載の包装容器。
[5]
前記開口部の長さ方向が、前記高分子フィルムの結晶の配向方向に対して略垂直である、[1]から[4]のいずか一項に記載の包装容器。
[6]
前記高分子フィルムが、ポリエチレン系フィルム層を含む、[1]から[5]のいずれか一項に記載の包装容器。
[7]
前記開口部の長さ方向が、前記高分子フィルムの製造時の長手方向に対して略垂直であり、かつ、複数の該開口部が、該長手方向に間隔を置いて設けられている、[1]から[4]のいずれか一項に記載の包装容器。
[8]
前記高分子フィルムの厚みが、10から100μmである、[1]から[7]のいずれか一項に記載の包装容器。
[9]
前記高分子フィルムが、延伸ポリプロピレンフィルム、又は延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体である、[1]から[5]及び[7]から[8]のいずれか一項に記載の包装容器。
[10]
前記高分子フィルムが、少なくとも1種の抗菌剤を含有し、又は少なくとも1種の抗菌剤が塗布されている、[1]から[9]のいずれか一項に記載の包装容器。
[11]
青果物の鮮度保持用に用いられる、[1]から[10]のいずれか一項に記載の包装容器。
[12]
青果物を、[1]から[11]のいずれか一項に記載の包装容器に収納してなる、青果物鮮度保持用包装体。
[13]
更に吸湿剤、及び/又は抗菌剤を収納してなる、[12]に記載の青果物鮮度保持用包装体。
[14]
高分子基材フィルムをエンボス処理することにより長さが1mm〜150mmであり、幅が30μm〜1000μmであって最小の厚みが0.005μm〜0.1μmである凹部を、前記凸部が設けられる面と反対側の面における、前記凸部と対応する位置に形成し、前記凹部の長手方向とはほぼ垂直方向に50〜300N/mの引張張力をかけることにより長さが0.5〜7mmの開口部を形成する工程を有する、[1]に記載の高分子フィルムの製造方法。
本発明の包装容器に青果物を収納することで、鮮度保持機能に優れ、異物の侵入が抑制され、流通等の効率の良い青果物鮮度保持用包装体を実現することができる。
本発明は、高分子フィルムを含んでなる包装容器であって、酸素透過度が2000から50000cc/m2/day/atmであり、該高分子フィルムに少なくとも1の開口部を有する凸部が設けられ、該開口部の長さが0.5〜7mmであり、該開口部の幅が、1μm以下である、上記包装容器である。
まず、次の方法で内寸220mm×240mmの袋を形成する。
1枚のフィルムをほぼ均等に2つ折りにし約5mm幅で、インパルスシーラー(富士インパルス社製、品番Fi−200−10WK)で加熱条件の目盛を3に設定してヒートシールを行い、当該ヒートシール辺がほぼ中央にくるようにヒートシール辺とほぼ垂直をなす辺の一方の全体を、他方の辺の一方の連通部となる端部約2cmを除く全体をヒートシールして、内寸220mm×240mmの袋を形成する。
次に前記連通部から窒素ガスを注入し、袋内が飽和状態になれば袋内のガスを連通部からほぼすべて排出する。この操作を5回繰り返した後、窒素ガスを注入して袋内を窒素ガスで飽和させて連通部を前記インパルスシーラーで同様の条件でヒートシールする。窒素ガスを飽和させた袋を22℃、相対湿度40%の空気中(1気圧、酸素濃度:21%、窒素濃度:79%)の室内に6時間放置する。
次にサンプリング針チューブで約20ccサンプリングして食品包装用ジルコニア酸素濃度計(東レエンジニアリング社製、型番LC−750F)にて袋中の酸素濃度を測定する。さらに、袋中の気体の体積を測定し、下記の式から酸素透過度を算出する。
(式) 酸素透過度=内部酸素濃度変化(%)/100×体積(cm3)×24×60/時間(360分)×10000cm2/面積(1232cm2)/0.21(酸素の分圧)
従って、上記包装容器は、全部又は主要部が可撓性の高分子フィルムで構成された可撓性の包装容器、いわゆる包装袋であってもよく、可撓性の高分子フィルムとコーティング紙等のそれ以外の可撓性の部材を組み合わせた可撓性の包装容器であってもよく、あるいは可撓性の高分子フィルムと剛直な部材とを組み合わせた包装容器、例えば、蓋材としての高分子フィルムと、トレー、カップ等の剛直な部材とを組み合わせた形態のものであってもよい。
なお、このような包装袋は、その平面視での形状は円形、三角形、四角形、四角形以上の多角形でもよいが、加工性や取扱いの容易さの観点から長方形をなすことが好ましい。
上記スリット状の開口部の長さは、通気性を確保する観点から、0.5〜7mmであり、より好ましくは0.7〜7mmであり、さらに好ましくは0.8〜5mmであり、さらにより好ましくは1.0〜3.0mmであり、特に好ましくは1.0〜2.0mmである。
スリット状の開口部の長さが0.5mm以上あることで、必要なガス透過性を容易に確保することが可能性であり、7mm以下であることで、フィルムの変形を考慮しても、空気中の異物等の侵入を効果的に防止することができる。
光学顕微鏡では貫通していることが確認できないほど幅が狭いことにより、気体の通気の方向性を確保できるとともに、空気中の異物等の侵入を効果的に防止することができる。
なお、スリット状の開口部の幅の下限については22℃、40%RHでの酸素透過度が2000から50000cc/m2/day/atmの範囲内を維持できれば特に限定はされない。
一方、開口部の長さ方向に垂直な面における断面形状には特に制限はなく、高分子フィルムの厚さ方向で幅が変化しない矩形状であってもよく、厚さ方向で幅が変化するテーパー状であってもよい。
この実施形態において、凸部は、凸部が形成された面からフィルムの厚さの0.10〜2.0倍突出していることが好ましく、0.5〜1.5倍突出していることがより好ましく、0.7〜1.2倍突出していることがさらに好ましい。例えば、フィルム厚が15μm〜40μmの場合には、0.15μm〜80μm突出していることが好ましい。また、凸部に裏側に形成される凹部は上述のように平面のフィルムを例えばエンボス加工等の機械的力により形成していることから、凸部を形成するフィルムの厚みは一般には一定ではない。したがって、凸部を形成するフィルムの膜厚の最小の部分を少なくとも1か所に有し、当該膜厚の最小の部分の厚みは、0.005μm〜0.1μmであることが好ましく、0.007μm〜0.05μmであることがより好ましく、0.008μm〜0.03μmであることがさらに好ましい。
また、スリットの形成方法は本発明の効果を奏する限りにおいては限定されず、開口部の形成の容易性の観点から、先端の尖ったエンボスロール等により凹部と開口部を同時に形成してもよいし、エンボスロール等によるエンボス処理後により凹部を形成後、フィルムに適度なテンション、フィルムの厚みにもよるが、例えばフィルムの厚みが15〜40μmの場合には50〜300N/mのテンションを、より好ましくは80〜300N/mのテンションを付与することで前記の凸部に形成されたフィルムの膜厚の最小の部分を引裂させることにより形成することができる。例えば、フィルムの厚みが20μmの場合は120N/m程度、フィルムの厚みが40μmの場合は150N/m程度が特に好ましい。
高分子フィルムを構成する高分子は、一般に主鎖方向とそれに垂直な方向とで構造、性質等が大きく異なるため、製造条件等の影響で特定の方向に配向し易い。特に、その強度等を向上させるために製造工程において延伸を行った高分子フィルムは、延伸の方向に配向することが多く、一般に結晶の主鎖方向と延伸方向とが揃う様に配向する傾向がある。
一方、横延伸においては、例えばテンターによる延伸の場合は、高分子フィルムの製造時の長手方向とは垂直の方向に延伸が行われるので、高分子フィルムの長手方向と配向方向とは直行する。
したがって、これらの構成の高分子フィルムは、フィルムの配向方向との関係に応じて、フィルム製造又は加工の際のローラーの一部に、ローラーの軸方向に略平行又は垂直な刃を設けることで効率良く製造することが可能である。
開口部の間隔は必要とされる開口部の数によるので特に制限は無いが、製造上の効率等、フィルムの強度等の観点からは、2〜200mm程度であることが好ましい。
なお、個々の開口部の大きさと、開口部の個数は、包装容器全体の酸素透過度が適切な限りにおいて、適宜設定、変更可能であり、その際には、高分子フィルムの有効面積に占める開口部の数が指針となる。例えば2mmの長さのスリット状の開口部であって、閉じた状態では光学顕微鏡(オリンパス社製、型式SZH−131)にて倍率4倍による観察では貫通していることが確認できないものを設ける場合、200mm×200mmの包装容器に対して1つ存在するごとに約1000cc/m2/day/atmの酸素透過度を上げる効果があり、この様な知見に基づき必要とされる包装容器全体の酸素透過度からスリット開口部の数を決めることが好ましい。
包装容器の酸素透過度が上記の範囲にあるとき、当該包装容器に青果物等を収納してなる鮮度保持用包装体の内部の酸素濃度は、収納される青果物等の条件にもよるが、葉物野菜には、好ましくは0.5〜5体積%と、青果物の鮮度保持に適した値となるので好ましい。一般に酸素濃度0.5体積%未満では野菜にアルコール臭が発生し、5体積%以上では褐変が大きいとされる。
前記プロピレン系重合体としては、ポリプロピレンの名称で製造、販売されているプロピレン単独重合体(ホモPPとも呼ばれている)、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(ランダムPPとも呼ばれている)、プロピレン単独重合体と、低結晶性または非晶性のプロピレン・エチレンランダム共重合体との混合物(ブロックPPとも呼ばれている)などのプロピレンを主成分とする結晶性の重合体が挙げられる。また、プロピレン系重合体は、分子量が異なるプロピレン単独重合体の混合物であってもよく、プロピレン単独重合体と、プロピレンとエチレン又は炭素数4から10のα−オレフィンとのランダム共重合体との混合物であってもよい。
本発明の延伸ポリプロピレンフィルムは少なくとも一方向に延伸されたフィルムから構成されていてもよいし、延伸ポリプロピレンフィルム自体が少なくとも一方向に延伸されていてもよい。また、延伸ポリプロピレンフィルムとして二軸延伸フィルムを得る場合には、例えば逐次、あるいは同時二軸延伸することにより容易に製造することも可能である。本発明の延伸ポリプロピレンフィルムとして二軸延伸フィルムを得る場合には、通常、縦方向に5〜8倍延伸し、続いて横方向にテンター機構を用いて8〜10倍延伸し、フィルムの厚さを最終的に20〜40μmとする方法、あるいは、縦方向及び横方向に夫々5〜10倍(面倍率で25〜100倍)延伸することにより製造することができる。
前記エチレン系重合体としては、エチレンの単独重合体、エチレンを主要モノマーとし、それと炭素数3から8のα−オレフィンの少なくとも1種類以上との共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、そのケン化物及びアイオノマーが挙げられる。具体的には、ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ペンテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体などのエチレンを主要モノマーとし、これと炭素数3から8のα−オレフィンの少なくとも1種類以上との共重合体が挙げられる。これらの共重合体中のα−オレフィンの割合は、1〜15モル%であることが好ましい。
本発明のポリエチレン系フィルムは、前記エチレン系重合体を含むフィルムである。本発明のポリエチレン系フィルムは種々の公知の成型方法を用いることができるが、エクストルーダーによる押出によるキャスト成型が、生産効率の観点から好ましい。
ナイロン6、ナイロン66等からなるポリアミドフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートに代表されるポリエステルからなるフィルム、ポリカーボネートフィルム、エチレン・ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレン等のポリオレフィン及びポリL乳酸、ポリD乳酸、またはポリL乳酸とポリD乳酸を精密に配位したステレオコンプレックス晶ポリ乳酸からなる一軸あるいは二軸延伸フィルムである。
本発明の延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体は上記ポリエチレン系フィルムの層と延伸フィルムの層を積層して得られる。ポリエチレン系フィルムは一方向または二方向に延伸されていてもよいが、包装袋の機械的強度の安定性の観点から、無延伸フィルムであることが好ましい。
予め作製された延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとを接着剤により貼着させるドライラミネーションを行うが、ここで接着剤を塗布する延伸フィルム表面にはコロナ処理をしておくことが接着安定性の観点から好ましい。具体的には、コロナ処理後のフィルム表面の表面張力が接着安定性の観点から、35mN/m以上が好ましく、40mN/m以上がより好ましい。
青果物等の内容物の鮮度保持の観点からは、上記高分子フィルムが、少なくとも1種の抗菌剤を含有することが好ましい。
また、上記高分子フィルムの表面に特定の界面活性剤が特定量存在し、又は上記高分子フィルムが特定の界面活性剤を特定量含むことで、抗菌機能を有していてもよい。例えば、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレートおよびジグリセリンモノラウレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物が、上記高分子フィルムの少なくとも一方の表面に存在することが好ましく、当該少なくとも1種の化合物が0.002〜0.5g/m2存在することが特に好ましい。あるいは、上記高分子フィルムが、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレートおよびグリセリンモノカプレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有していることが好ましく、0.001〜3質量部含有していることが特に好ましい。
上記高分子フィルムの表面に特定の界面活性剤が特定量存在し、又は上記高分子フィルムが特定の界面活性剤を特定量含むことで、該高分子フィルムの表面での結露が抑制され、雑菌の繁殖が抑制されることにより、結露(ドリップ)中での雑菌の増殖が抑制され、抗菌機能が発揮される。
この場合、延伸プロピレンフィルム単体で用いる場合は、その厚さが10〜100μmであることが好ましく、延伸ポリプロピレンフィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体を用いる場合には、前者の厚さが10〜50μm、後者の厚さが10〜120μmであることが好ましい。
この実施形態において包装容器に収納され鮮度保持される青果物には特に制限は無いが、例えばバナナ、マンゴー、ウメ、リンゴ、イチゴ、ミカン、ブドウ、和梨、西洋梨のような果実類、ダイコン、ニンジン、ナガイモ、ゴボウのような根菜類、トマト、キュウリ、ナス、ピーマン、エダマメ、オクラのような果菜類、緑豆モヤシ、大豆モヤシ、トウミョウのような芽物類、シイタケ、シメジ、エリンギ、マイタケ、マツタケのような菌茸類(キノコ類)、ブロッコリー、ホウレンソウ、コマツナ、チンゲンサイ、キャベツ、レタス、アスパラガスのような葉茎菜類、キク、ユリ、カーネーション等の花卉または苗が挙げることができる。
従って、青果物は収穫されたままのものであってもよく、外葉等を除去したいわゆる前処理済みのものであってもよく、カット済みのいわゆるカット野菜であってもよい。また、青果物は、洗浄、冷却、脱水等の処理のいずれか又は全てを行ったものであってもよく、またこれらの処理のいずれも行わないものであってもよい。
本発明の包装容器は、適切な気体透過性を有することにより青果物等の内容物の鮮度保持機能に優れた包装容器であって、空気中の異物の侵入を抑制できるものであるので、カット野菜の鮮度保持に特に好適に用いることができる。
特に、開口部が、高分子フィルムが一方向に変形して凹部が形成されたものであることで、通気の方向性を有する実施形態においては、外部からの菌の侵入の懸念が一層小さいために、生食に供することもあるため衛生面に厳しいカット野菜用の包装容器に特に好適である。また、内部からの排気が容易であることから、包装体内の酸素を低濃度に維持することができ、カット野菜の鮮度保持に特に有効である。カット野菜の鮮度保持には、例えば15000から45000cc/m2・atm・dayの酸素透過度が好適であり、この様な酸素透過度は、例えば1つの包装容器に3から5個の上記の開口部を設けることで実現することができる。
以下、本実施形態の青果物鮮度保持用包装体の製造方法を、カット野菜の鮮度保持用包装体を例に説明する。
また、カット幅が狭いほど、切断面積が増加し、鮮度保持がより困難になるため、鮮度保持の観点からは、需要の形態に適合する限りにおいてカット幅が広い方が好ましい。
更に、カット野菜に当初から雑菌が多く付着していると、鮮度保持がより困難になるため、カット野菜をよく洗浄するなどして、雑菌の付着をできるだけ低減することが好ましい。洗浄は、雑菌の付着を低減するばかりか、活性の高い酵素等を含み変色等の原因となりうる細胞液等を除去する効果もあるため、鮮度保持のために特に有効である。
加えて、洗浄後にカット野菜表面に付着した水分を十分に除去することが、鮮度保持のために重要である。洗浄後静置して水切りを行っても、カット野菜表面にはなお多くの水が付着している場合が多いので、遠心脱水機等を用いて水分を除去することが有効である。
また、流通の過程での効率向上やスペース節約、特定の気体の排除等の観点からも、包装容器の封止後に脱気を行うことが好ましい。
上述の様に、本発明の包装容器を構成する高分子フィルム中の開口部はスリット状の断面形状を有するので、機械的圧力をかける等の比較的簡便な手段で、スリットの中央部の幅を拡げて気体透過性を顕著に増大させることが可能であり、これにより包装体を比較的容易にかつ短時間で脱気することが可能である。
例えば、青果物に加えて、吸湿剤、及び/又は抗菌剤が包装容器中に収納されていてもよい。
吸湿剤には特に限定は無く、吸湿効果または調湿効果を有する公知又は市販の材料を使用することができる。吸湿剤として好適に用いられるものとしては、例えば、活性炭、シリカゲル、アルミナゲル、シリカアルミナゲル、無水硫酸マグネシウム、ゼオライト、合成ゼオライト、酸化カルシウム、塩化カルシウム、及び、焼ミョウバン、又はこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
これらの中でも、青果物への影響や食品である青果物等の近くで使用することに関する懸念の比較的少ない活性炭を用いることが特に好ましい。活性炭は粉末状、粒状どちらでも何ら差し支えなく、原料はヤシ殻、おがくず、木炭、竹炭、褐炭、泥炭、ほね、石油ピッチなどどんなものでも差し支えない。また活性炭は不織布、セロファン、紙などなどで使用単位毎に包装してあることが望ましいが、活性炭自体が繊維状になったものでも差し支えない。活性炭の包材としては、合成樹脂からなる不織布のように、ヒートシール性を有するものが好ましいが、水蒸気透過性を有しかつ活性炭がこぼれないもので有れば、紙、天然繊維などでも何ら問題ない。
(フィルム開口部の形状)
光学顕微鏡(オリンパス社製、型式SZH−131)により4倍の条件で、フィルム中に設けられた開口部の形状を観察し、開口部の長さ及び幅を測定し、また開口部が貫通しているか否か判定した。更に、開口部を有する凸部の有無 、及びその高さ を測定した。
(酸素透過度)
まず、次の方法で内寸220mm×240mmの袋を形成した。
1枚のフィルムをほぼ均等に2つ折りにし約5mm幅で、インパルスシーラー(富士インパルス社製、品番Fi−200−10WK)で加熱条件の目盛を3に設定してヒートシールを行い、当該ヒートシール辺がほぼ中央にくるようにヒートシール辺とほぼ垂直をなす辺の一方の全体を、他方の辺の一方の連通部となる端部約2cmを除く全体をヒートシールして、内寸220mm×240mmの袋を形成した。
次に前記連通部から窒素ガスを注入し、袋内が飽和状態になってから袋内のガスを連通部からほぼすべて排出した。この操作を5回繰り返した後、窒素ガスを注入して袋内を窒素ガスで飽和させて連通部を前記インパルスシーラーで同様の条件でヒートシールした。窒素ガスを飽和させた袋を22℃、相対湿度40%の空気中(1気圧、酸素濃度:21%、窒素濃度:79%)の室内に6時間放置した。
次にサンプリング針チューブで袋内のガスを約20ccサンプリングして食品包装用ジルコニア酸素濃度計(東レエンジニアリング社製、型番LC−750F)にて袋中の酸素濃度を測定した。さらに、袋中の気体の体積を測定し、下記の式から酸素透過度を算出した。
(式)酸素透過度=内部酸素濃度変化(%)/100×体積(cm3)×24×60/時間(360分)×10000cm2/面積(1232cm2)/0.21(酸素の分圧)
エンボスロール(エンボス:ロールの軸方向:4mmピッチ、ロールの周方向:2mm幅、エンボスの形状:エンボスの先端10μm、エンボスの下端2mm、高さ:30μm(フィルム厚みと同じ)、平面視及び断面視で角に丸みを帯びた長方形)を用いて、厚さ30μmのOPP(二軸延伸ポリプロピレン)フィルムに、配向方向対し略垂直に凹部の長手方向が配置されるようにエンボス処理後、チルロールにて冷却し、テンションをかけることにより前記4mm間隔で設けられた凹部にスリット状の開口部を形成した。凹部の反対側のフィルム面には凸部が形成され、スリット状の開口部は、凸部の頂点付近に位置していた。フィルム面からの凸部の高さは、2.4μmであった。
その後、当該OPPフィルムと、上記スリット状の開口部が形成されていない同一厚みのOPPフィルムとを重ね合わせて、3辺をヒートシールで封止のうえ切断して、1辺が未封止の包装袋(220mm×240mm、内寸の面積:1232cm2)を作製した。
包装袋1袋当たり120個のスリット状の開口部が形成された。開口部の形状は、ほぼ直線形であり、長さ(ロールの軸方向)2mm、であり、光学顕微鏡(倍率4倍)で観察したがスリット状開口部が貫通していることは確認できなかった(図1)。但し、スリット状の開口部全体にいきわたるように赤色浸透液(三菱ガス化学株式会社製、商品名:エージレスシールチェックスプレー)を包装容器内に注入後、インパルスシーラーで加熱条件の目盛を3に設定し、約5mm幅でヒートシールして、紙(コクヨ PPC用紙 共用紙 A4)を押しあてたところ、幅2mmのスリットに沿ってインクが転写したことから、スリット部が貫通していることが確認できた。
同じ刃を用いてバッチで包装袋あたりのスリット数が1個、5個のサンプル袋を形成した。
酸素透過度の測定結果は下表−1のとおりであり、スリット数を変えることで広範な酸素透過度が簡易な設備で得られることが分かる。参考例として、スリットを有さないサンプル袋について同様の評価を行った結果を併せて表−1に示す。
スリット数が0、1、5、120の袋にカットキャベツ150gを封入し、ヒートシール後5℃の冷暗所で保管したところ、カットキャベツによる呼吸により包装袋内部の酸素濃度は日々低下した。5日目に開封し、内容物の観察をおこなった。
その結果、スリット数に応じて、包装袋内部の酸素濃度が変わり、キャベツの臭いに差が見られた。この条件ではスリット数1個/袋、及び5個/袋のとき表−2に示すような良好な結果が得られた。
(比較例1)
スリット加工に代えて熱針を用いてφ100の孔を1つ空けた他は、実施例1と同様の条件で作製を行い、比較例1の包装袋を得た。光学顕微鏡(倍率4倍)で観察したところ、開口部が貫通していることが確認できた。本包装袋は1袋当たり120個のスリット状の開口部が形成された実施例1の包装袋とほぼ同等の酸素透過度であり、鮮度保持試験ほぼ同じ結果となった。
次に上記の包装袋をそのままエバキュレーターに入れ、5分ほどかけておおよそ0.3kgfに減圧した。その結果、上記参考例の開口部を有さない包装袋と比較例1のφ100の貫通孔を設けた包装袋でシール部の破れが見られた。これは減圧による気圧変化に対して実施例のスリット加工フィルムでは拡がったスリット開口部から包装袋内の空気が排出されることにより減圧環境下に順応したのに対して比較例では開口部の径が変わらないので空気を排出することにより減圧環境下に順応できなかったためと推定する。
またこの試験結果からは、実施例のスリット加工包装袋は保管環境の気圧変化に順応することができるため、保管環境の気圧変化を伴う例えば空輸等に適しているといえる。
(実施例2、比較例2)
実施例1の30μmのOPP(二軸延伸ポリプロピレン)フィルムに代えてOPP20μとPE30μの積層フィルム(総厚み50μm)を用いて、スリット加工の刃長さも同じく50μmとして、他の条件も実施例1、又は比較例1と同じで、包装袋作製及び試験を行い、それぞれ実施例2、及び比較例2とした。光学顕微鏡(倍率4倍)で観察したところ、実施例2の開口部については、貫通していることは確認できず、一方比較例2の開口部については、貫通していることが確認できた。
その結果、下表−3に示すように、実施例1とほぼ同等の結果が得られた。
但し、シール部の破れは延伸ポリプロピレンフィルム単体(実施例1)に比べてちいさかった。
(比較例3)
実施例1のフィルムをスリットするさいに刃長さをフィルムに対して5μm少ない25μmとして非貫通のスリット加工とした。
スリット加工部を光学顕微鏡(倍率4倍)で観察したところ、貫通していることは確認できなかった。
また、酸素透過度を測定したところ、スリットの個数が異なっていても酸素透過度は変わらなかった。このことから、スリット加工部が酸素透過度に寄与していないこと、すなわち貫通口が存在しないこと、がわかった。また、貫通口を設けて酸素透過度を調整するためには、フィルムと精密に一致した刃長さの加工が必要なことが確認できた。
(比較例4)
実施例2のラミフィルムに代えてポリエチレン単体で厚さ50μmのフィルムを用いた他は、実施例2と同様の条件で包装袋作製及び試験を行った。刃長さはフィルムと同じ50μmであったが、ポリエチレンフィルムは柔らかく、深く凹むだけで予定した貫通のスリット加工ができなかった。
スリット加工部を光学顕微鏡(倍率4倍)で観察したところ、貫通していることは確認できなかった。
また、酸素透過度を測定したところ、スリットの個数が異なっていても酸素透過度は変わらなかった。このことから、スリット加工部が酸素透過度に寄与していないこと、すなわち貫通口が存在しないこと、がわかった。また、貫通口を設けるためのポリエチレンフィルムのスリット加工には延伸フィルムとの貼り合わせが好適なことが分かった。
Claims (14)
- 高分子フィルムを含んでなる包装容器であって、22℃、40%RHでの酸素透過度が2000から50000cc/m2/day/atmであり、該高分子フィルムに少なくとも1の開口部を有する凸部が設けられ、該開口部の長さが0.5〜7mmであり、該開口部の幅が、光学顕微鏡における倍率4倍での観察では、貫通していることが確認できないものである、上記包装容器。
- 前記開口部を有する凸部が、前記高分子フィルムの少なくとも1の面に設けられている、請求項1に記載の包装容器。
- 前記開口部を有する凸部が、前記1の面から、前記高分子フィルムの厚さの0.10〜2.0倍突出している、請求項2に記載の包装容器。
- 前記開口部を有する凸部の長さが1mm〜150mmであり、幅が30μm〜1000μmであり、かつ前記開口部の長さが0.5mm〜7mmであり、さらに前記開口部の長さが凸部の長さより短い請求項1から3のいずれか一項に記載の包装容器。
- 前記開口部の長さ方向が、前記高分子フィルムの結晶の配向方向に対して略垂直である、請求項1から4のいずか一項に記載の包装容器。
- 前記高分子フィルムが、ポリエチレン系フィルム層を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の包装容器。
- 前記開口部の長さ方向が、前記高分子フィルムの製造時の長手方向に対して略垂直であり、かつ、複数の該開口部が、該長手方向に間隔を置いて設けられている、請求項1から4のいずれか一項に記載の包装容器。
- 前記高分子フィルムの厚みが、10から100μmである、請求項1から7のいずれか一項に記載の包装容器。
- 前記高分子フィルムが、延伸ポリプロピレンフィルム、又は延伸フィルムとポリエチレン系フィルムとの積層体である、請求項1から5及び7から8のいずれか一項に記載の包装容器。
- 前記高分子フィルムが、少なくとも1種の抗菌剤を含有し、又は少なくとも1種の抗菌剤が塗布されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の包装容器。
- 青果物の鮮度保持用に用いられる、請求項1から10のいずれか一項に記載の包装容器。
- 青果物を、請求項1から11のいずれか一項に記載の包装容器に収納してなる、青果物鮮度保持用包装体。
- 更に吸湿剤、及び/又は抗菌剤を収納してなる、請求項12に記載の青果物鮮度保持用包装体。
- 高分子基材フィルムをエンボス処理することにより長さが1mm〜150mmであり、幅が30μm〜1000μmであって最小の厚みが0.005μm〜0.1μmである凹部を、前記凸部が設けられる面と反対側の面における、前記凸部と対応する位置に形成し、前記凹部の長手方向とはほぼ垂直方向に50〜300N/mの引張張力をかけることにより長さが0.5〜7mmの開口部を形成する工程を有する、請求項1に記載の高分子フィルムの製造方法。
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