JP6727639B1 - 衣料の上半身部 - Google Patents

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Abstract

左袖の背面と右袖の背面との間に、着用者の左右の肩甲骨が互いから離れることを阻む規制部が設けられている。左袖の前面と前身頃との間の縫合部分のうち最も下に位置する第1縫合点が、左袖の背面と身頃との間の境界のうち最も下に位置する第1最下点よりも上に配置されている。右袖の前面と前身頃との間の縫合部分のうち最も下に位置する第2縫合点が、右袖の背面と身頃との間の境界のうち最も下に位置する第2最下点よりも上に配置されている。

Description


本発明は、衣料の上半身部に関する。

着用者の上半身の少なくとも一部を覆うことができる衣料の上半身部が知られている(たとえば、特許文献1参照)。

特開2014−196587号公報

人は、スマートフォン等の携帯機器を操作するとき、携帯機器を持つ腕が自身の正面中央側へ回るように、肩が正しい姿勢での位置よりも自身の前方へ出る姿勢を取りやすい。「正しい姿勢」とは、具体的には、平坦面に起立している人を真横から見た場合、その人の首のつけ根、肩、ひじ、くるぶしがほぼ一直線上に位置する姿勢である。両肩が前方へ出る姿勢は、頻繁に繰り返され、または長時間連続して保持された場合、巻き肩、猫背といった体形の悪化を招きかねない。「巻き肩」とは、肩甲骨が左右に広がって肩が内側へ入った体形をいう。「猫背」とは、背骨が前後に湾曲して頭が前へ出た姿勢をいう。これらの体形は肩こり等の痛みの原因にもなり得る。

衣料には、着用者に正しい姿勢を保たせ、またはすでに悪化した着用者の姿勢を矯正させる目的で、両袖の背面間の伸長力が強化されたものがある。強化された伸長力で、着用者の左右の肩甲骨が互いから離れることが阻まれるので、着用者は両肩が前方へ出る姿勢を取りづらい。その結果、巻き肩または猫背といった悪い姿勢を着用者が取ることが抑制される。さらに、すでに体形が悪化した着用者の姿勢が矯正される。しかし、両袖の背面間の伸長力が強すぎれば、肩甲骨の動きだけでなく腕の動きまでもが妨げられる。特に、腕を肩のまわりに回転させて下から前へ伸ばすこと(屈曲)が困難であれば、日常生活に支障を来す危険性がある。

本発明の目的は、上記の問題点を解決することであり、特に、両腕が正面中央側へ回るように両肩が前方へ出る姿勢を着用者に取らせづらくすると共に、日常生活に支障を来たさないようにいずれの腕も比較的容易に肩のまわりに回転させて下から前へ伸ばすことができる衣料の上半身部を提供することにある。

本発明の一つの観点による衣料の上半身部は、前身頃と後身頃とを含む身頃、左袖、および右袖を備えている。左袖の背面と右袖の背面との間に、着用者の左右の肩甲骨が互いから離れることを阻む規制部が設けられている。前記左袖の背面と前記後身頃との間の縫合部分のうち最も下に位置する第1最下点が、前記左袖の前面と前記前身頃との間の縫合部分のうち最も下に位置する第1縫合点よりも下に配置されている。前記右袖の背面と前記後身頃との間の縫合部分のうち最も下に位置する第2最下点が、前記右袖の前面と前記前身頃との間の縫合部分のうち最も下に位置する第2縫合点よりも下に配置されている、

規制部は着用者の両肩で引っ張られると、抵抗力として引張力を発生させ、着用者の左右の肩甲骨が互いから離れることを阻む。これにより、着用者は両肩が前方へ出る姿勢を取りづらい。一方、左袖の背面の第1最下点が左袖の前面の第1縫合点よりも下に配置されているため、この高さを相違させた部分の左袖の背面に、左腕を肩のまわりに回転させて下から前へ伸ばすことが比較的容易になる生地増大領域を設けることができる。また、右袖の背面の第2最下点が右袖の前面の第1縫合点よりも下に配置されているため、この高さを相違させた部分の右袖の背面においても、右腕を肩のまわりに回転させて下から前へ伸ばすことができる生地増大領域を設けることができる。これら生地増大領域が設けられる結果、規制部による引張力の機能に大きな悪影響を与えずに、着用者はいずれの腕も肩のまわりに回転させて下から前へ伸ばすことが比較的容易にできる。





規制部はたとえば、左右方向において20%伸長時に伸長力が45cN以上となる難伸長性の生地、または左右方向において45cNの伸長力を加えても伸長率が20%未満でしかない非伸長性の生地で構成されている。ここで、「伸長力」とは、約20℃(18℃〜22℃)の環境下において、幅2.5cm、長さ10cmの生地を定速伸長形引張試験機により、引張り速度30cm/分で長さ方向に伸長させるのに必要な力をいう。この明細書には、定速伸長形引張試験機として島津製作所製AGS−Xを用いて測定された伸長力の値が記載されている。

規制部が、後身頃のうち、後身頃と左袖との間の境界から後身頃と右袖との間の境界までに位置する領域を含んでいてもよい。すなわち、後身頃のこの領域と規制部が一体に構成されていてもよい。ここで、「一体に構成されている」とは、規制部の生地が後身頃の他の領域の生地に縫製で繋げられていることであっても、他の領域の生地と共に編まれていることであってもよい。これとは別に、規制部が、後身頃に付加された後身頃とは別の生地を含んでいてもよい。この生地は、左右両側の袖の背面と後身頃との間の境界に縫合されていてもよく、左右両側の袖の背面に縫合されていてもよい。

左袖は左連繋部と難伸長領域とを有してもよい。左連繋部は、身頃の左側に繋がっている領域である。難伸長領域は、左袖の長さ方向において20%伸長時に伸長力が45cN以上となる領域であり、少なくとも左連繋部の背面に広がっていてもよい。右袖は右連繋部と難伸長領域とを有してもよい。右連繋部は、身頃の右側に繋がっている領域である。難伸長領域は、右袖の長さ方向において20%伸長時に伸長力が45cN以上となる領域であり、少なくとも右連繋部の背面に広がっていてもよい。左袖の難伸長領域は左連繋部の背面から前面にわたって広がっていてもよく、右袖の難伸長領域は右連繋部の背面から前面にわたって広がっていてもよい。これらの構成によれば、左右の袖の連繋部がいずれも、伸びに応じて強い引張力を発生させるので、いずれの連繋部も規制部の引張力をほとんど、または全く減殺しない。その結果、着用者の左右の肩甲骨、上腕上部、および肩の前方への移動をより効果的に阻止することができる。

左袖と右袖とは難伸長領域に代えて非伸長領域を有してもよい。非伸長領域は、各袖の長さ方向に45cN以上の伸張力をかけても伸長率が20%未満でしかない領域である。左袖の非伸長領域は少なくとも左連繋部の背面に広がっていてもよく、右袖の非伸長領域は少なくとも右連繋部の背面に広がっていてもよい。左袖の非伸長領域は左連繋部の背面から前面にわたって広がっていてもよく、右袖の非伸長領域は右連繋部の背面から前面にわたって広がっていてもよい。これらの構成によれば、左右の袖の連繋部がいずれもほとんど伸びない、または実質上伸びないので、いずれの連繋部も規制部の引張力をほとんどまたは全く減殺しない。その結果、着用者の左右の肩甲骨、上腕上部、および肩の前方への移動をより効果的に阻止することができる。

本発明の上記の観点による衣料の上半身部では、着用者の左右の肩甲骨が互いから離れることを規制部が阻む。一方、左袖と身頃との間では第1縫合点が第1最下点よりも上に配置され、右袖と身頃との間では第2縫合点が第2最下点よりも上に配置されている。これにより、両脇の下では規制部の引張力が前身頃の生地の伸縮で緩和される。こうして、この衣料の上半身部は、両腕が正面中央側へ回るように両肩が前方へ出る姿勢を着用者に取らせづらくすると共に、いずれの腕も容易に肩で屈曲させることができる。

本発明の実施形態1による衣料の上半身部の正面図である。 図1が示す衣料の上半身部の背面図である。 図2の上部の拡大図である。 前身頃と後身頃とのうち、左袖ぐりの近傍を示す部分展開図である。 前身頃と左袖とのうち、左袖ぐりの近傍を示す部分展開図である。 後身頃と左袖とのうち、左袖ぐりの近傍を示す部分展開図である。 図1が示す衣料の上半身部の立体形状の平面図である。 本発明の実施形態2による衣料の上半身部の背面図である。 本発明の実施形態2による衣料の上半身部の第1変形例の背面図である。 本発明の実施形態2による衣料の上半身部の第2変形例の背面図である。 本発明の実施形態2による衣料の上半身部の第3変形例の背面図である。

以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。

《実施形態1》

図1、図2はそれぞれ、本発明の実施形態1による衣料の上半身部100の正面図、背面図である。図3は図2の上部の拡大図である。なお、この明細書では、衣料の上半身部100の着用者を基準にして前後方向と左右方向とを定める。たとえば、「左方向」は、図1では右方向に描かれ、図2では左方向に描かれる。

衣料の上半身部100は、着用者の体幹上部および両上腕を包み込むように構成されている。衣料の上半身部100には、肌着として着用されるインナーウェアと、中衣もしくは上着として着用されるアウターウェアとがある。実施形態1による衣料の上半身部100は、半袖のシャツである。

衣料の上半身部100は、身頃110、120、左袖130、および右袖140を備えている。身頃110、120は筒状であり、着用者の体幹上部を包むように構成されている。身頃は前身頃110および後身頃120を含む。前身頃110は、身頃のうち着用者の体幹上部の前面(胸と腹)に対向する部分であり、その前面のほぼ全体を覆う。後身頃120は、身頃のうち着用者の体幹上部の背面(背中)に対向する部分であり、その背面のほぼ全体を覆う。前身頃110と後身頃120とはいずれも、形状が左右対称である。左袖130は身頃の左側に、右袖140は身頃の右側に、それぞれ設けられている。両袖130、140はいずれも身頃110、120よりは細い筒状であり、着用者の左右の上腕上部を包むように構成されている。両袖130、140は、身頃110、120の左右方向における中心面CNPに対して対称である。両袖130、140は長さ方向(図1が示す矢印LDL、RDLの方向)のサイズが自由に設定可能である。実施形態1では、両袖130、140は半袖に設定されている。その他に、両袖130、140は長袖でも七分袖であってもよい。

なお、衣料の上半身部100の身頃は、前身頃110と後身頃120との2パーツに代えて、前身頃、左右の脇身頃、および後身頃の4パーツで構成されていてもよい。この場合に本発明が適用されるには、脇身頃が前身頃の一部とみなされればよい。

前身頃110と後身頃120とは、左脇113、右脇114、および肩115で縫合されている。これにより身頃は、襟ぐり116、裾117、左袖ぐり118、および右袖ぐり119を含む。襟ぐり116は、身頃が成す筒形の上側の開口部に相当し、裾117は下側の開口部に相当する。左袖ぐり118は、身頃の左上側に開けられた穴の縁であり、右袖ぐり119は、身頃の右上側に開けられた穴の縁である。左袖ぐり118には左袖130の基端部、すなわち袖山が縫合され、右袖ぐり119には右袖140の袖山が縫合されている。

前身頃110を構成する生地は伸縮性であっても、非伸縮性であってもよい。一方、後身頃120を構成する生地は伸縮性である。ただし、後身頃120のうち、少なくとも左袖130と右袖140との間の領域128(図2が示す細かいドット領域参照。)は、難伸長性または非伸長性の生地で構成されている。「難伸長性」とは、生地が伸びにくいこと、具体的には、左右方向において20%伸長時に生地の伸長力が45cN以上となることをいう。「非伸長性」とは、生地がほとんど伸びない、または実質上伸びないこと、具体的には、左右方向において45cNの伸長力を加えても生地の伸長率が20%未満でしかないことをいう。生地の難伸長性または非伸長性により、この領域128は後身頃120の他の領域と比べ、外からの引張力に対する抵抗力が強い。この領域128を、以下、「規制部」と呼ぶ。規制部128は、後身頃120のうち、左脇113の上端LWPと右脇114の上端RWPとを結ぶ直線LVLよりも上方に位置する。規制部128の左側には左袖130の背面132が縫合され、右側には右袖140の背面142が縫合されている。これにより規制部128は、着用者の両肩で引っ張られると抵抗力として引張力を発生させ、着用者の左右の肩甲骨が互いから離れることを阻む。その結果、着用者は左右の肩甲骨、上腕上部、および肩が後方へ、かつ背面中央側へ引っ張られる。したがって、両腕が正面中央側へ回るように両肩が前方へ出る姿勢を着用者は取りづらい。

なお、規制部は後身頃120のうち、左袖130の背面132と右袖140の背面142との間の領域128に限らず、それよりも広い領域、更には後身頃120全体で構成されていてもよい。

左袖130と右袖140とは形が鏡像関係にある。したがって、以下では、左袖130の構造についてのみ説明する。右袖140の構造については、左袖130の構造から当業者には容易に理解されるであろう。

左袖130は、2枚の生地が袖下133とダーツ134とで筒状に縫合された構造である。ダーツ134は、生地がつまみ縫いされた部分であり、左袖130の背面132を左袖130の全長にわたって伸びている。ダーツ134の方向は、図3が示すように、後身頃120の左右方向における中心面CNPに対して角度αを成す。この角度αの範囲は好ましくは約70°〜約110°、更に好ましくは約80°〜約100°である。ダーツ134により左袖130の背面132が立体的な丸みを帯びるので、着用者の左腕によくフィットする。その結果、規制部128の引張力にかかわらず、左袖130が自然には、着用者の左腕に沿って肩側へずり上がりにくい。

左袖130は袖口135と左連繋部136とを含む。袖口135は、左袖130が成す筒形の先端の開口部に相当し、左連繋部136はその筒形の基端の開口部に相当する。左連繋部136は袖山ともいい、左袖130のうち、着用者の左肩を覆う部分であり、全体が左袖ぐり118に縫合されている。

左連繋部136のうち少なくとも背面(図3が示す粗いドット領域参照。)は難伸長領域または非伸長領域である。「難伸長領域」とは、生地が伸びにくい領域、具体的には、左袖130の長さ方向において45cN以上600cN以下の伸長力を加えると20%伸長する領域をいう。この伸長力は、左袖130の長さ方向の20%伸長時に60cN以上500cN以下となるものが好ましく、左袖130の長さ方向の20%伸長時に80cN以上400cN以下となるものがより好ましい。「非伸長領域」とは、生地がほとんど、または実質上伸びない領域、具体的には、左袖130の長さ方向に45cNの伸長力を加えても伸長率が0%から20%未満まででしかない領域をいう。好ましくは、非伸長領域は、左袖130の長さ方向に45cNの伸長力を加えても伸長率が0%から10%未満まででしかない領域である。左袖130の難伸長領域または非伸長領域は左連繋部136の背面から前面にわたって広がっていてもよい。これらの構成によれば、左連繋部136が外からの引張力に対して強い抵抗力を発生させるので、左連繋部136が規制部128の引張力をほとんど、または全く減殺しない。その結果、着用者の左の肩甲骨、上腕上部、および肩の前方への移動をより効果的に阻止することができる。

図2、図3が示すように、左袖130の背面132と後身頃120との間の縫合部分のうち最も下に位置する点LWP(以下、「第1最下点」という。)が、左袖130の前面131と前身頃110との間の縫合部分のうち最も下に位置する点LSP(以下、「第1縫合点」という。)(第1縫合点は脇下付近の縫合部分である)よりも、距離LUPだけ下に配置される。この高低差の距離LUPは好ましくは1cm以上20cm以下である。この高さを相違させた部分の距離LUPにより、左袖130の背面132の下側において、左腕を肩のまわりに回転させて下から前へ伸ばすことができる生地増大領域を設けることができる。この結果、規制部128の引張力の機能に大きな悪影響を与えずに、着用者は左腕を肩のまわりに回転させて下から前へ伸ばすことが比較的容易にできる。

図4は、前身頃110と後身頃120とのうち、左袖ぐり118の近傍を示す部分展開図である。なお、右袖ぐり119の近傍の部分展開図は、図4の左右を反転させた図に等しい。したがって、以下では左袖ぐり118について説明する。その説明が右袖ぐり119についても援用されることは、当業者には自明であろう。

前身頃110と後身頃120との間の縫合が解かれると、左袖ぐり118は前部310と後部320とに分かれる。左袖ぐり118の前部310は前身頃110の左上側(図4では右上側)に位置し、左抉り部311と左脇上部312とを含む。左抉り部311は、前身頃110の左上角を抉り取った跡のような曲線形状であり、左袖130の前面131と縫合される。左脇上部312は、身頃の左脇113の上端を構成する部分であり、左袖130の背面132と縫合される。左袖ぐり118の後部320は後身頃120の左上側に位置し、後身頃120の左上角を抉り取った跡のような曲線形状であり、その全体が左袖130の背面132と縫合される。

図5は、前身頃110と左袖130とのうち、左袖ぐり118の近傍を示す部分展開図である。図6は、後身頃120と左袖130とのうち、左袖ぐり118の近傍を示す部分展開図である。なお、右袖ぐり119の近傍の部分展開図は、図5、図6の左右を反転させた図に等しい。したがって、以下では、左袖ぐり118と左袖130とについて説明する。その説明が右袖ぐり119と右袖140とについても援用されることは、当業者には自明であろう。

左袖130は、袖上部410と袖下部420とが筒状に縫合された構造である。袖上部410は左袖130の前面131の全体と背面132の上部とを成し、袖下部420は左袖130の背面132の下部を成す。袖上部410と袖下部420との間の縫合線の一方は左袖130の袖下133に沿って伸び、他方はダーツ134である(図3参照)。

袖上部410は周囲に、前袖山線411、後袖山線412、袖口端413、袖下線414、縫合線415を含む。袖下部420は周囲に、前袖山線421、後袖山線422、袖口端423、袖下線424、縫合線425を含む。袖上部410の前袖山線411が前身頃110の左抉り部311に縫合され、袖下部420の前袖山線421が前身頃110の左脇上部312に縫合される。袖上部410の後袖山線412と袖下部420の後袖山線422とは、後身頃120の左袖ぐりの後部320に縫合される。袖上部410の袖下線414と袖下部420の袖下線424とが互いに縫合され、左袖130の袖下133を形成する(図2、図3参照)。袖上部410の縫合線415と袖下部420の縫合線425とが互いに縫合され、左袖130のダーツ134を形成する。以上の結果、袖上部410の袖口端413と袖下部420の袖口端423とが左袖130の袖口135を形成する。

左袖ぐりの後部320のうち、その両端LKP、LWPを結ぶ直線BLNから最も遠くに位置する部分MDPを「最深部」という(図6参照)。左袖ぐりの後部320の最深部MDPは後身頃120の左肩115のうち最も左側の部分、すなわち左袖ぐりの後部320の上端LKPよりも右側に位置する。左袖ぐりの後部320のこのような大きな曲がりに比べ、左袖130の後袖山線412、422は曲がりが小さい。すなわち、左袖130が後身頃120に縫合される前、後袖山線412、422の幅SWDが左袖ぐりの後部320の幅BWDよりも小さい:SWD<BWD。ここで、後袖山線412、422の幅SWDは、それら全体の両端LKP、LWPを結ぶ直線SLNから後袖山線412、422までの距離の最大値であり、左袖ぐりの後部320の幅BWDは、その両端LKP、LWPを結ぶ直線BLNから最深部MDPまでの距離である。これらの幅SWD、BWDの関係により、後袖山線412、422は右方向に引き伸ばされなければ左袖ぐりの後部320には届かない。その結果、左袖130は後身頃120に縫合されると、後身頃120よりも後方へ自然に傾く。

図7は、衣料の上半身部100の立体形状の平面図である。衣料の「立体形状」とは、その衣料のいずれの部分をも伸長させることなく、かつ折り曲げることもなく、膨らませた状態における衣料の3次元的な形状を意味する。立体形状は一般に、標準的な人体の形状に合わせて、その形状を包み込むように設計される。図7が示すように、衣料の上半身部100の立体形状において、左連繋部136の方向は標準的な方向よりも後方へ傾いている。これにより左袖130の全体の立体形状が、標準的な人体の左腕を包む際の立体形状(図7の示す2点鎖線VSL参照。)よりも角度θだけ後方(左斜め後方)へ傾いている。右袖140も同様である。両袖130、140がこのように後方へ傾く結果、着用者は左右の肩甲骨、上腕上部、および肩が後方へ、かつ背面中央側へ引っ張られる。したがって、両腕が正面中央側へ回るように両肩が前方へ出る姿勢を着用者は取りづらい。

《実施形態2》

本発明の実施形態1による衣料の上半身部100では、後身頃120の規制部128が後身頃120の他の領域と一体に編み込まれている。しかし、これに限らず、規制部は、後身頃120に付加された別の生地で構成されていてもよい。

図8は、本発明の実施形態2による衣料の上半身部500の背面図である。この上半身部500は、実施形態1によるもの100と同様、半袖のシャツである。なお、この上半身部500は長袖でも七分袖であってもよい。この上半身部500では更に、後身頃520の全体が前身頃510と同程度の伸縮性を有する一方、規制部528が、後身頃520に付加された別の生地で構成されている。規制部528の生地は難伸長性または非伸長性である。規制部528の生地は左右方向に長い矩形状であり、左右方向の両端521、522が左右両側の袖530、540の背面532、542と後身頃520との間の境界よりも内側に縫合されている。このような規制部528が後身頃520に付加されているので、着用者の左右の肩甲骨が互いから離れることは阻止される。すなわち、左右の上腕上部が正面中央側へ回るように左右の肩が前方に出る姿勢を、着用者は取りづらい。

図9が示すように、規制部528の生地の両端521、522は左右両側の袖530、540の背面532、542に縫合されていてもよい。図10が示すように、規制部528の生地の両端521、522はそれぞれ左袖ぐり521、右袖ぐり522と交差して、左右両側の袖530、540の背面532、542と後身頃520との両方に縫合されていてもよい。規制部は単一の生地が付加されたものには限られず、複数枚の生地から構成されていてもよい。図11が示すように、規制部として2枚の帯状の生地568が交差するように付加されていてもよい。これらの生地568は互いに平行に配置されてもよい。

上述の教示を考慮すれば、本発明が多くの変更形態および変形形態をとり得ることは明らかである。したがって、本発明が、添付の特許請求の範囲内において、本明細書に記載された以外の方法で実施され得ることを理解されたい。

Claims (7)


  1. 前身頃と後身頃とを含む身頃、左袖、および右袖を備える衣料の上半身部であって、

    前記左袖の背面と前記右袖の背面との間に、着用者の左右の肩甲骨が互いから離れることを阻む規制部が設けられ、

    前記左袖の背面と前記後身頃との間の縫合部分のうち最も下に位置する第1最下点が、前記左袖の前面と前記前身頃との間の縫合部分のうち最も下に位置する第1縫合点よりも下に配置され、

    前記右袖の背面と前記後身頃との間の縫合部分のうち最も下に位置する第2最下点が、前記右袖の前面と前記前身頃との間の縫合部分のうち最も下に位置する第2縫合点よりも下に配置されている、

    衣料の上半身部。

  2. 前記規制部が、前記後身頃のうち、前記後身頃と前記左袖との間の境界から前記後身頃と前記右袖との間の境界までの領域を含む、請求項1に記載の衣料の上半身部。

  3. 前記規制部が、前記後身頃に付加された前記後身頃とは別の生地を含む、請求項1に記載の衣料の上半身部。

  4. 前記左袖は、

    前記身頃の左側に繋がっている左連繋部と、

    前記左袖の長さ方向において20%伸長時に伸長力が45cN以上となる難伸長領域と

    を有し、

    前記左袖の難伸長領域は、少なくとも前記左連繋部の背面に広がっており、

    前記右袖は、

    前記身頃の右側に繋がっている右連繋部と、

    前記右袖の長さ方向において20%伸長時に伸長力が45cN以上となる難伸長領域と

    を有し、

    前記右袖の難伸長領域は、少なくとも前記右連繋部の背面に広がっており、

    請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の衣料の上半身部。

  5. 前記左袖の難伸長領域は、前記左連繋部の背面から前面にわたって広がっており、

    前記右袖の難伸長領域は、前記右連繋部の背面から前面にわたって広がっている、

    請求項4に記載の衣料の上半身部。

  6. 前記左袖は、

    前記身頃の左側に繋がっている左連繋部と、

    前記左袖の長さ方向に45cN以上の伸張力をかけても伸長率が20%未満でしかない非伸長領域と

    を有し、

    前記左袖の非伸長領域は、少なくとも前記左連繋部の背面に広がっており、

    前記右袖は、

    前記身頃の右側に繋がっている右連繋部と、

    前記右袖の長さ方向に45cN以上の伸張力をかけても伸長率が20%未満でしかない非伸長領域と

    を有し、

    前記右袖の非伸長領域は、少なくとも前記右連繋部の背面に広がっている、

    請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の衣料の上半身部。

  7. 前記左袖の非伸長領域は、前記左連繋部の背面から前面にわたって広がっており、

    前記右袖の非伸長領域は、前記右連繋部の背面から前面にわたって広がっている、

    請求項6に記載の衣料の上半身部。
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