WO2023170763A1

WO2023170763A1 - 衣料

Info

Publication number: WO2023170763A1
Application number: PCT/JP2022/009811
Authority: WO
Inventors: 生央虎谷
Original assignee: トラタニ株式会社
Priority date: 2022-03-07
Filing date: 2022-03-07
Publication date: 2023-09-14
Also published as: WO2023171000A1

Abstract

本発明は、猫背対策の構成に悪影響を及ぼさずに息苦しさを改善できる衣料に関し、着用者の脇の下側において着用者の前面、左右側面、及び後面を覆う伸縮性の筒状の身頃２００が備えられた衣料であって、脇の下側の箇所とウエストの箇所との間に、ウエストの箇所の周長よりも短い周長になるように凹状の絞り部３００が形成されており、絞り部３００は、脇の下側の箇所であって、絞りが開始する最上部の箇所をＡ、絞りが最大で周長が最短となる中間部の箇所をＢ、絞りが終了する最下部の箇所をＣ、ウエストの箇所をＤとした時、着用者への着圧Ｐｒ（hＰa）がＢ＞ＡでかつＢ＞Ｃ≧Ｄの関係になるように構成されているとともに、Ｂの箇所は左右側面が着用者の第６肋骨Ｒ６から第１０肋骨Ｒ１０の領域に位置されるように構成されている。

Description

衣料

　本発明は、猫背対策の構成に悪影響を及ぼさずに息苦しさを改善できる衣料に関する。

　本発明の発明者は、猫背対策として、前身頃と後身頃とを含む伸縮性の身頃、伸縮性の左袖、および伸縮性の右袖を備え、左袖の背面と右袖の背面との間に、着用者の左右の肩甲骨が互いから離れることを阻む伸縮性の規制部を設け、これによって円背の胸椎を起こして猫背を改善させる衣料の上半身部を提供した。

特許第６７２７６３９号公報

　これらの開発品は、販売の結果、多くの人々に好評を博している状況にあるが、しかし、たとえ猫背対策を施したとしても、胸郭の個人差によっては、改善する余地がまだ残されていることが判明した。

　すなわち、鋭意研究を進めてみると、猫背対策によって外観上は円背が解消されて正しい姿勢になったように見えても、個人差によっては胸郭、特に肋骨の下部側が正常な状態になっていないことや横隔膜の動きが悪いことがはじめて知見された。このような状態の人は、たとえ正しい姿勢になったように見えても、相変わらず呼吸が浅いままの状態になり息苦しさが残るという問題になることが判明したのである。

　本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、猫背対策を施したものであっても、その猫背対策の機能に致命的な悪影響を及ぼさずに息苦しさを改善できる衣料を提供することを目的とする。

　上記目的を達成するための本発明に係る衣料は、着用者の脇の下側において着用者の前面、左右側面、及び後面を覆う伸縮性の筒状の身頃が備えられた衣料であって、
　前記脇の下側の箇所とウエストの箇所との間に、ウエストの箇所の周長よりも短い周長になるように凹状の絞り部が形成されており、
　前記絞り部は、絞りが開始する最上部の箇所をＡ、絞りが最大で周長が最短となる中間部の箇所をＢ、絞りが終了する最下部の箇所をＣ、ウエストの箇所をＤとした時、着用者への着圧がＢ＞ＡでかつＢ＞Ｃ≧Ｄの関係になるように構成されているとともに、
　前記Ｂの箇所は左右側面が着用者の第６肋骨から第１０肋骨の領域に位置されるように構成されていることを特徴とする。

本発明の実施形態に係る衣料１００の着用状態での部分説明図である。本発明の実施形態に係る衣料１００の平置き状態での正面図である。本発明の実施形態に係る衣料１００の平置き状態での背面図である。本発明の実施形態に係る衣料１００の猫背対策を示す立体形状での平面図である。

　以下、本発明の実施形態に係る衣料１００について、図面を参照しながら説明する。

　図１は衣料１００の着用状態での部分説明図、図２は衣料１００の平置き状態での正面図、図３は衣料１００の平置き状態での背面図、図４は本発明の実施形態に係る衣料１００の猫背対策を示す立体形状での平面図である。なお、衣料において「平置き」とは、その衣料を平面上、例えば大きいテーブルの上に皺のないように拡げて置くことを意味し、「立体形状」とは、その衣料のいずれの部分をも伸長させることなく、かつ折り曲げることなく、膨らませた状態における衣料の３次元的な形状を意味する。また、この明細書において、上下、左右、及び前後の方向は着用者を基準とした方向である。

　図１において、Ｒは胸椎Ｔ、胸骨Ｓとともに胴体上部の胸郭を構成する肋骨であり、最上部にある第１肋骨Ｒ１から最下部の第１２肋骨Ｒ１２まで、左右１２対あり、合計２４本存在する。第１肋骨Ｒ１から第５肋骨Ｒ５はそれぞれ、後端で胸椎Ｔに連結し、前端で肋軟骨Ｒａを介して個別に胸骨Ｓに連結している。第６肋骨Ｒ６から第１０肋骨Ｒ１０はそれぞれ、後端で胸椎Ｔに連結し、前端で肋軟骨Ｒａを介してまとまって胸骨Ｓに連結している。第１１肋骨Ｒ１１と第１２肋骨Ｒ１２はそれぞれ、後端で胸椎Ｔに連結し、前端は胸骨Ｓに対して連結せずに遊離している。第１肋骨Ｒ１から第５肋骨Ｒ５の内部に図示しない左右の肺があり、第６肋骨Ｒ６から第１０肋骨Ｒ１０の内部に図示しない横隔膜がある。正常な状態の肋骨Ｒは、左右の肋骨弓Ｒｂの間にできる肋骨下角Ｒｃが９０°から７０°になっている。Ｐは胴体下部にある骨盤であり、肋骨Ｒと骨盤Ｐとの間の一番くびれた（一番細い）部分がウエストＷである。

　図１から図４を参照して、衣料１００が備える技術的特徴について説明する。
　衣料１００は、図１から図３に示すように、
（１Ａ）着用者の脇の下側において着用者の前面、左右側面、及び後面を覆う伸縮性の筒状の身頃２００が備えられた衣料であって、
（１Ｂ）脇の下側の箇所とウエストの箇所との間に、ウエストの箇所の周長よりも短い周長になるように凹状の絞り部３００が形成されており、
（１Ｃ）絞り部３００は、脇の下側の箇所であって、絞りが開始する最上部の箇所をＡ、絞りが最大で周長が最短となる中間部の箇所をＢ、絞りが終了する最下部の箇所をＣ、ウエストの箇所をＤとした時、着用者への着圧Ｐｒ（hＰa）がＢ＞ＡでかつＢ＞Ｃ≧Ｄの関係になるように構成されている（なお、本発明の一実施形態である図示のものは着用者への着圧Ｐｒ（hＰa）がＢ＞Ａ≧Ｃ≧Ｄの関係になるように構成されている。）。
　また、（１Ｄ）Ｂの箇所は左右側面が着用者の第６肋骨Ｒ６から第１０肋骨Ｒ１０の領域に位置されるように構成されている。
　なお、衣料において「着圧」とは、その衣料を着用した際に、その部位にかかる圧力を意味する。

　また、衣料１００は、図２から図３に示すように、
（２Ａ）身頃２００が、前身頃４００、後身頃５００を備え、
（２Ｂ）前身頃４００は、着用者の脇の下側において着用者の前面、左右側面、及び後面の左右両側部を覆うように形成され、後身頃５００は、着用者の脇の下側において前身頃４００で覆われていない着用者の後面を覆うように形成されて、前身頃４００と後身頃５００との左右の縫合線である左脇線６００、右脇線７００が着用者の後面側に設けられており、
（２Ｃ）左脇線６００、右脇線７００のうち、絞り部３００における左右の縫合線部である左脇線部６１０、右脇線部７１０は、それぞれの形状が、絞り部３００の左右幅方向の凹状の左外形線３１０、右外形線３２０と同等以上の曲率を有する凹状に形成されている。

　更に、衣料１００は、図２から図４に示すように、
（３Ａ）着用者の左上腕上部、右上腕上部を覆う伸縮性の筒状の左袖８００、右袖９００がさらに備えられ、
（３Ｂ）左袖８００、右袖９００は、それぞれの立体形状が、標準的な人体の両腕を覆う際の立体形状（図４の２点鎖線参照。）よりも角度θ（図例は略３０°）だけ後方へ傾くように、それぞれの基端部が、絞り部３００より上側の身頃２００に縫合されている。

　図１から図４を参照して、さらに詳しく、衣料１００について説明する。
　衣料１００は、図１から図４に示すように、着用者の胴体及び両上腕を包み込むように構成されている半袖のシャツである。

　衣料１００は、身頃２００、左袖８００、及び右袖９００を備えている。身頃２００は筒状であり、着用者の胴体を包み込むように構成されている。身頃２００は前身頃４００、後身頃５００を備えている。前身頃４００は、身頃２００のうち、着用者の脇の下側において着用者の前面、左右側面、及び後面の左右両側部に対向する部分と、着用者の脇の上側において着用者の前面に対向する部分であり、その部分を覆うように形成されている。後身頃５００は、身頃２００のうち、着用者の脇の下側において前身頃４００で覆われていない着用者の後面に対向する部分と、着用者の脇の上側において前身頃４００で覆われていない着用者の後面に対向する部分であり、その部分を覆うように形成されている。前身頃４００と後身頃５００には周方向長さの伸び率が同等の生地（布）を使用しており、前身頃４００と後身頃５００の上下方向の伸び率についても両身頃４００、５００とも同等である。また、前身頃４００と後身頃５００の形状はいずれも左右対称である。左袖８００は身頃２００の左側に、また右袖９００は身頃２００の右側に、それぞれ設けられている。両袖８００、９００はいずれも身頃２００よりは細い筒状であり、着用者の左右の上腕上部を包み込むように構成されている。両袖８００、９００は身頃２００の左右方向における図示しない中心線に対して対称である。両袖８００、９００は長さ方向のサイズが自由に設定可能である。本実施形態では、両袖８００、９００は半袖に設定されている。その他に、両袖８００、９００は長袖でも七分袖であってもよい。なお、身頃２００は、前身頃８００と後身頃９００との２パーツに代えて、前身頃、左右の脇身頃、及び後身頃の４パーツで構成されていてもよい。この場合に本発明が適用されるには、脇身頃が前身頃の一部とみなされればよい。

　前身頃４００と後身頃５００とは、左脇線６００、右脇線７００、さらに左肩線２１０、右肩線２２０で縫合されている。これにより身頃２００は、襟ぐり２３０、裾２４０、左袖ぐり２５０、及び右袖ぐり２６０を備えている。襟ぐり２３０は、身頃２００が成す筒形の上側の開口部に相当し、裾２４０は下側の開口部に相当する。裾２４０の長さは自由に設定可能である。本実施形態では、裾２４０の長さは着用者の臀部の上部までを覆う長さに設定されている。その他に、裾２４０の長さは臀部を全体的に覆う長さ、或いは、それよりも長い長さであってもよい。左袖ぐり２５０は、身頃２００の左上側に開けられた穴の縁であり、右袖ぐり２６０は、身頃２００の右上側に開けられた穴の縁である。左袖ぐり２５０には左袖８００の基端部が縫合され、右袖ぐり２６０には右袖９００の基端部が縫合されている。

　身頃２００は、上部領域２００ａ、下部領域２００ｂを備えるとともに、これらの間に中央領域として絞り部３００が備えられている。上部領域２００ａは、絞り部３００の絞りが開始する最上部の箇所Ａより更に上側の部分であり、左肩線２１０、右肩線２２０、襟ぐり２３０、左袖ぐり２５０、及び右袖ぐり２６０を備えている。下部領域２００ｂは、絞り部３００の絞りが終了する最下部の箇所Ｃより更に下側の部分であって、ウエストの箇所Ｄを含み、左脇線６００の下部、右脇線７００の下部、及び裾２４０を備えている。

　絞り部３００は、身頃２００における脇の下側からウエストの箇所の少し上側までに形成されている。絞り部３００の外形は、周長が上下両端から上下中央に進むにつれて小さくなるように形成されており、平置き状態における左右幅方向の両端には凹状の左外形線３１０、右外形線３２０を有して、周長がＢ＜ＡでかつＢ＜Ｃ≦Ｄの関係を有する。これによって、絞り部３００は、着用者への着圧Ｐｒ（hＰa）がＢ＞ＡでかつＢ＞Ｃ≧Ｄの関係になるように構成されているとともに、Ｂの箇所は左右側面が着用者の第６肋骨Ｒ６から第１０肋骨Ｒ１０の領域に位置されるように構成されている。Ａ、Ｂ、Ｃ、Ｄそれぞれの箇所での着圧ＰｒはＢ＞ＡでかつＢ＞Ｃ≧Ｄの関係を満たす限り自由に設定可能である。また、中間部の箇所Ｂは高さ方向において幅をもつ面状に構成してもよく、さらには、絞りが終了する最下部の箇所Ｃはウエストの箇所Ｄと同一の箇所に構成してもよい。また、Ｂの箇所での着圧Ｐｒは１０から４０hＰaが好ましく、１５から３５hＰaがより好ましい。本実施形態では、Ｂの箇所での着圧Ｐｒを２５hＰaに設定し、その他のＡ、Ｃ、Ｄの箇所での着圧ＰｒをＢ＞ＡでかつＢ＞Ｃ＞Ｄの関係になるように設定されている。勿論、その他のＡ、Ｃ、Ｄの箇所での着圧ＰｒをＢ＞ＡでかつＢ＞Ｃ＝Ｄの関係になるように構成してもよい。

　次に、衣料１００の技術的特徴による作用効果について説明する。

　衣料１００は、（１Ａ）から（１Ｄ）の技術的特徴を備えていることにより、絞り部３００はＢの箇所で第６肋骨Ｒ６から第１０肋骨Ｒ１０を締めることになる。

　猫背の人の肋骨Ｒは横隔膜を囲う第６肋骨Ｒ６から第１０肋骨Ｒ１０が左右方向に異常に広がっている（肋骨下角Ｒｃが９０°より大きい）ことが知見された。絞り部３００はＢの箇所で第６肋骨Ｒ６から第１０肋骨Ｒ１０を締めることで、第６肋骨Ｒ６から第１０肋骨Ｒ１０の歪みを直して呼吸が浅く、息苦しいという状態を改善するのに役立つ。

　つまり、絞り部３００がＢの箇所で第６肋骨Ｒ６から第１０肋骨Ｒ１０を締めると、第６肋骨Ｒ６から第１０肋骨Ｒ１０は肋軟骨Ｒａを介してまとまって胸骨Ｓに連結しているため、一体的に窄まりながら（肋骨下角Ｒｃが９０°以下で７０°以上になり）まっすぐに伸びた正しい状態になり、ウエスト（D）側は絞り部３００のＢの箇所よりも周長を長くしているため締め付けが緩み、肋骨の下部側が過度に下窄まりになるといった不都合がない。このため、その内部にある横隔膜が上下方向に十分に動作できるようになり、つまり、上方へドーム状に膨れ上がる緩み動作（呼気）と下方へ平ら状に縮まる収縮動作（吸気）が十分に行えるようになり、呼吸が浅く、息苦しいという状態が改善される。

　また、絞り部３００は肺を囲む第４肋骨Ｒ４あるいは第５肋骨Ｒ５を締めないようにしているため、それを締めてしまうものに比べて、肺のふくらみを阻害することなく、吸気を十分にさせることができ、しかも、絞り部３００はウエストＷを締めないようにもしているため、それを締めてしまうものに比べて、お腹のふくらみを阻害して横隔膜を下がりにくくすることなく、吸気を十分にさせることができ、より深い呼吸をさせることができる。

　更に、着用者の脇の下側において着用者の前面、左右側面、及び後面を覆う伸縮性の筒状の身頃２００を改良すればよいので、それより上に猫背対策が施されている場合であっても、猫背対策の機能に致命的な悪影響を及ぼさない。

　よって、猫背対策を施したものであっても、その猫背対策の機能に致命的な悪影響を及ぼさずに息苦しさを改善できる衣料を提供することができる。

　また、衣料１００は、（２Ａ）から（２Ｃ）の技術的特徴を備えていることにより、絞り部３００における後身頃５００が前側に突出することになり、特に絞り部３００のＢの箇所における後身頃５００が最も前側に突出することになり、絞り部３００はＢの箇所における後身頃５００で脊柱を前方へ押圧することになる。

　吸気では横隔膜が収縮して肋骨Ｒの内部を上下方向に拡げる。そのとき、腹圧が上昇するのでお腹が前上方に膨らみ、それに伴い第６肋骨Ｒ６から第１０肋骨Ｒ１０も前上方に膨らむ。絞り部３００がＢの箇所における後身頃５００で脊柱を前方に押圧すると、脊柱を後方に反らせて、吸気でのお腹と第６肋骨Ｒ６から第１０肋骨Ｒ１０の膨らみ動作を助け、吸気を十分にさせることができ、より深い呼吸をさせることができる。

　更に、衣料１００は、（３Ａ）（３Ｂ）の技術的特徴を備えていることにより、両袖８００、９００の後方への傾きが猫背対策となり、身頃２００の絞り部３００より上側の部分（上部領域２００ａ）で猫背対策を施すことができる。

　つまり、両袖８００、９００のそれぞれの立体形状が、標準的な人体の両腕を覆う際の立体形状よりも角度θだけ後方へ傾く結果、着用者は左右の肩甲骨、上腕上部、及び両肩が後方へ、かつ背面中央側へ引っ張られる。そのため、両腕が前面に中央側へ回るように両肩が前方へ出る姿勢（円せ背や猫背と呼ばれる姿勢）を着用者はとりづらくなる。

　なお、本実施形態では、猫背対策を施した衣料に対して本発明を適用した場合を説明したが、本発明は、猫背対策を施していない衣料に対しても広く適用することができるのは勿論である。また、猫背対策の構成も（３Ａ）（３Ｂ）に限らず種々のものが存在するが、本発明であれば、各種の猫背対策が施されたものに対して広く適用することができる。更に、本実施形態では、着用者の上半身部を覆う衣料に対して本発明を適用した場合を説明したが、本発明は、着用者の上半身部に加えて下半身部を部分的或いは全体的に覆う衣料に対しても広く適用することができる。

　１００　衣料
　２００　身頃
　３００　絞り部

Claims

　着用者の脇の下側において着用者の前面、左右側面、及び後面を覆う伸縮性の筒状の身頃が備えられた衣料であって、
　前記脇の下側の箇所とウエストの箇所との間に、ウエストの箇所の周長よりも短い周長になるように凹状の絞り部が形成されており、
　前記絞り部は、絞りが開始する最上部の箇所をＡ、絞りが最大で周長が最短となる中間部の箇所をＢ、絞りが終了する最下部の箇所をＣ、ウエストの箇所をＤとした時、着用者への着圧がＢ＞ＡでかつＢ＞Ｃ≧Ｄの関係になるように構成されているとともに、前記Ｂの箇所は左右側面が着用者の第６肋骨から第１０肋骨の領域に位置されるように構成されていることを特徴とする衣料。
　前記身頃が、前身頃、後身頃を備え、
　前記前身頃は、着用者の脇の下側において着用者の前面、左右側面、及び後面の左右両側部を覆うように形成され、前記後身頃は、着用者の脇の下側において前記前身頃で覆われていない着用者の後面を覆うように形成されて、前記前身頃と前記後身頃との左右の縫合線が着用者の後面側に設けられており、
　左右の前記縫合線のうち、前記絞り部における左右の縫合線部は、それぞれの形状が、前記絞り部の左右幅方向の外形形状となる凹状と同等以上の曲率を有する凹状に形成されていることを特徴とする請求項１に記載の衣料。
　着用者の左上腕上部、右上腕上部を覆う伸縮性の筒状の左袖、右袖がさらに備えられ、　
　前記左袖、右袖は、それぞれの立体形状が、標準的な人体の両腕を覆う際の立体形状よりも角度θだけ後方へ傾くように、それぞれの基端部が、前記絞り部より上側の前記身頃に縫合されていることを特徴とする請求項１又は２に記載の衣料。