JP6816910B2 - 衣料の上半身部 - Google Patents

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Description

本発明は、衣料の上半身部に関する。
着用者の上半身の少なくとも一部を覆うことができる衣類の上半身部が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2014−196587号公報
従来のような衣類の上半身部のうち、着用者の身体にフィットするように伸縮性を有するものが着用された場合、この衣類の上半身部の身頃と袖との境界部分の下側が引っ張られて時間の経過ととともにしわを発生させる。そして、その境界部分の下側に生じたしわの部分が、着用者の脇の下に食い込みやすくなっている。そのため、衣類の上半身部が着用者に不快感を与えることが多いという問題がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、着用者の脇の下への食い込み量を低減させることができる衣料の上半身部の提供を目的とする。
本発明は、
前身頃および当該前身頃に設けられた伸縮性の後身頃を有する身頃と、前記身頃の左右両側にそれぞれ設けられた左袖および右袖とを備える衣料の上半身部であって、
前記前身頃の左側に左抉り部が設けられるとともに、前記左袖の正面側に、前記前身頃の左抉り部に縫合可能な左縫合端部が設けられ、
前記左抉り部が、前記前身頃の左肩部のうち、最も左側の部分よりも右側に位置する最深部を有し、
前記左縫合端部が、前記左抉り部に縫合される前には前記左抉り部の最深部に到達しない寸法に形成された状態で、前記左抉り部に縫合され、
前記前身頃の右側に右抉り部が設けられるとともに、前記右袖の正面側に、前記前身頃の右抉り部に縫合可能な右縫合端部が設けられ、
前記右抉り部が、前記前身頃の右肩部のうち、最も右側の部分よりも左側に位置する最深部を有し、
前記右縫合端部が、前記右抉り部に縫合される前には前記右抉り部の最深部に到達しない寸法に形成された状態で、前記左抉り部に縫合されている、衣料の上半身部である。
この構成によれば、前記衣料の上半身部の着用時に、前記身頃と前記左袖および前記右袖の各々との境界部分の下側、特に前下側に時間の経過ととともにしわが発生して、そのしわ部分が着用者の脇の下に食い込む食い込み量を低減させることができる。したがって、この際に、前記衣料の上半身部が前述の食い込みに起因する不快感を着用者に与えることを抑制することができる。
本発明の別の態様である第2の態様によれば、
前記左袖の正面と前記前身頃との縫合部分のうち、最も下方に位置する第1の縫合箇所が、前記左袖の背面と前記身頃との境目のうち、最も下方に位置する第1の最下部分よりも上方に配され、
前記右袖の正面と前記前身頃との縫合部分のうち、最も下方に位置する第2の縫合箇所が、前記右袖の背面と前記身頃との境目のうち、最も下方に位置する第2の最下部分よりも上方に配されている。
この構成によれば、前記衣料の上半身部の着用時に、前記身頃と前記左袖および前記右袖の各々との境界部分の下側、特に後下側に時間の経過ととともにしわが発生して、そのしわ部分が着用者の脇の下に食い込む食い込み量を低減させることができる。したがって、この際に、前記衣料の上半身部が前述の食い込みに起因する不快感を着用者に与えることを更に抑制することができる。
本発明の第3の態様によれば、
前記第2の態様において、
前記第1の縫合箇所と前記第1の最下部分との上下方向の最短距離は、2cm以上であり、
前記第2の縫合箇所と前記第2の最下部分との上下方向の最短距離は、2cm以上である。
本発明の第4の態様によれば、
前記後身頃は、着用者の左右の肩甲骨を引き寄せる伸張力を有している。
本発明の第5の態様によれば、
前記第4の態様において、
前記左袖は、前記左縫合端部を含みかつ前記身頃の左側に繋がる左連繋部を有し、
前記左袖のうち、少なくとも前記左連繋部の背面は、当該左袖の長さ方向において20%伸長時に45cN以上となる伸長力を有し、
前記右袖は、前記右縫合端部を含みかつ前記身頃の右側に繋がる右連繋部を有し、
前記右袖のうち、少なくとも前記右連繋部の背面は、当該右袖の長さ方向において20%伸長時に45cN以上となる伸長力を有している。
本発明の第6の態様によれば、
前記第5の態様において、
前記左袖は、当該左袖のうち、少なくとも前記左連繋部の背面および正面に亘って、当該左袖の長さ方向において20%伸長時に45cN以上となる伸長力を有し、
前記右袖は、当該右袖のうち、少なくとも前記右連繋部の背面および正面に亘って、当該右袖の長さ方向において20%伸長時に45cN以上となる伸長力を有している
本発明の第7の態様によれば、
前記第5の態様において、
前記左袖のうち、前記左連繋部の正面は、当該左袖の長さ方向に45cN以上の伸張力をかけても20%の伸張にならない20%未満の伸びない構成とされ、
前記右袖のうち、前記右連繋部の正面は、当該右袖の長さ方向に45cN以上の伸張力をかけても20%の伸張にならない20%未満の伸びない構成とされている
本発明の第8の態様によれば、
前記第4の態様において、
前記左袖は、前記左縫合端部を含みかつ前記身頃の左側に繋がる左連繋部を有し、
前記左袖のうち、少なくとも前記左連繋部の背面は、当該左袖の長さ方向に45cN以上の伸張力をかけても20%の伸張にならない20%未満の伸びない構成とされ、
前記右袖は、前記右縫合端部を含みかつ前記身頃の右側に繋がる右連繋部を有し、
前記右袖のうち、少なくとも前記右連繋部の背面は、当該右袖の長さ方向に45cN以上の伸張力をかけても20%の伸張にならない20%未満の伸びない構成とされている。
本発明の第9の態様によれば、
前記第8の態様において、
前記左袖は、当該左袖のうち、少なくとも前記左連繋部の背面および正面に亘って、当該左袖の長さ方向に45cN以上の伸張力をかけても20%の伸張にならない20%未満の伸びない構成とされ、
前記右袖は、当該右袖のうち、少なくとも前記右連繋部の背面および正面に亘って、当該右袖の長さ方向に45cN以上の伸張力をかけても20%の伸張にならない20%未満の伸びない構成とされている。
本発明の第10の態様によれば、
前記第8の態様において、
前記左袖の左連繋部の正面は、当該左袖の長さ方向において20%伸長時に45cN以上となる伸長力を有し、
前記右袖の右連繋部の正面は、当該右袖の長さ方向において20%伸長時に45cN以上となる伸長力を有している。
本発明の第11態様によれば、
前記左右の袖が、半袖、七分袖または長袖である。
本発明によれば、着用者の脇の下への食い込み量を低減させることができる衣料の上半身部を提供できる。
本発明の一実施形態に係る衣料の上半身部の正面図である。 図1の衣料の上半身部の背面図である。 図1の衣料の上半身部における身頃の左側と左袖との縫合が解かれた状態の概略図である。 図3の場合における身頃の前身頃の左側と左袖の左袖正面との関係を表す概略図である。
本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1に、本発明の一実施形態に係る衣料の上半身部1の正面図を示す。図2に、衣料の上半身部1の背面図を示す。
図1、図2に示されるように、衣料の上半身部1は、着用者の上半身に着用され得るように構成されている。衣料の上半身部1としては、肌着として着用され得るもの(インナウェア)、または、肌着の上に着用される中衣もしくは上着として着用され得るもの(アウターウェア)がある。
衣料の上半身部1は、身頃2と、左袖3と、右袖4とを備えている。この衣料の上半身部1において、身頃2は、前身頃11と、この前身頃11に設けられた伸縮性の後身頃12とを有している。左袖3および右袖4は、身頃2の左右両側にそれぞれ設けられている。
詳しくは、身頃2は、衣料の上半身部1の上下方向を軸方向とする筒状体である。身頃2は、着用者が衣料の上半身部1を着用する際に着用者の上半身に応じて少なくとも後身頃12の一部(後述の後側領域8)を伸ばしつつ、着用者の上半身を覆うことができるように構成されている。
身頃2において、前身頃11は、着用者の上半身の正面に対応する部分であり、着用者の上半身の概ね正面を覆うことができるように形成されている。後身頃12は、着用者の上半身の背面に対応する部分であり、着用者の上半身の概ね背面を覆うことができるように形成されている。
後身頃12は、後側領域8(図2における点ハッチングの領域)を有している。後側領域8は、後身頃12と左袖3との連繋箇所と、後身頃12と右袖4との連繋箇所との間に配されている。後側領域8は、これらの連繋箇所間に延在しており、左右方向に伸縮可能に構成されている。
後側領域8は、後身頃12において、衣料の上半身部1の着用時に着用者の左右方向に引張力を発揮し得る、伸縮性を有する領域である。そして、後側領域8の左側に左袖3が連繋するように縫合され、後身頃12の後側領域8の右側に右袖4が連繋するように縫合されている。
本実施形態においては、この後側領域8を備えることにより、後身頃12が、衣料の上半身部1の着用者の左右の肩甲骨を引き寄せる伸張力を有するようになっている。なお、後側領域8は、左袖3および右袖4の各々との連繋箇所の最下端どうしを左右方向に最短距離で結ぶ直線よりも上方に存在する身頃2の一部分である。
こうして、後身頃12は、後側領域8を用いて、左袖3との連繋箇所を右方へ引っ張りかつ右袖4との連繋箇所を左方へ引っ張る引張力を衣料の上半身部1の着用者に対して発揮できるようになっている。ここで、後身頃12のうち少なくとも後側領域8は、左右方向において20%伸長時に60cN以上となる伸長力を有している。
なお、後身頃12のうち少なくとも後側領域8の左右方向の伸長力は、後側領域8の左右方向の20%伸長時に80cN以上600cN以下となるものが好ましく、後側領域8の左右方向の20%伸長時に100cN以上400cN以下となるものがより好ましい。
また、身頃2は、襟ぐり16と、裾17と、左袖ぐり18と、右袖ぐり19とを備えている。この身頃2において、襟ぐり16は、身頃2の上端部に配されるとともに、身頃2の左右方向の中央付近に配されている。裾17は、襟ぐり16の下方に配されている。
左袖ぐり18は、襟ぐり16の左方に位置するように、身頃2の左上部に配されている。右袖ぐり19は、襟ぐり16の右方に位置するように、身頃2の右上部に配されている。左袖ぐり18は後側領域8の左側に配され、右袖ぐり19は後側領域8の右側に配されている。
左袖ぐり18は、左袖3と連繋する左の連繋端部を構成するものであり、左の連繋端部正面23と左の連繋端部背面24とを有している。なお、以下の説明においては、左の連繋端部正面23を単に左端部正面23といい、左の連繋端部背面24を単に左端部背面24という。
左端部正面23は、左袖ぐり18正面に備えられている。左端部正面23は、前身頃11の上部左側に設けられている。左端部背面24は、左袖ぐり18背面に備えられている。左端部背面24は、後身頃12の上部左側(後側領域8の左側)に設けられている。
右袖ぐり19は、右袖4と連繋する右の連繋端部を構成するものであり、右の連繋端部正面26と右の連繋端部背面27とを有している。なお、以下の説明においては、右の連繋端部正面26を単に右端部正面26といい、右の連繋端部背面27を単に右端部背面27という。
右端部正面26は、右袖ぐり19正面に備えられている。右端部正面26は、前身頃11の上部右側に設けられている。右端部背面27は、右袖ぐり19背面に備えられている。右端部背面27は、後身頃12の上部右側(後側領域8の右側)に設けられている。
本実施形態においては、後側領域8が、左端部背面24から右端部背面27に亘って延在するように、後身頃12に設けられている。
また、左袖3は、身頃2に連通しつつ当該左袖3の長さ方向(軸方向、図1における概ね矢印21方向)に延在し得る筒状体である。本実施形態において、左袖3は半袖である。なお、本発明における左袖は、これに限定するものではなく、例えば、長袖であってもよいし、七分袖であってもよい。
左袖3は、左袖正面31と、左袖背面32とを有している。本実施形態において、左袖3は、左袖正面31および左袖背面32の一部(上部)を形成する第1の部材151と、左袖背面32の残部(下部)を形成する第2の部材152とから構成されている(図2、図3参照)。
なお、左袖3は、本実施形態においては別体の部材である第1の部材151と第2の部材152とから構成されたものとしているが、一つの部材から構成されたものとしてもよい。
左袖正面31と左袖背面32とは、前後に並べられ、左袖3が筒状を呈するように連続的に設けられている。左袖正面31と左袖背面32とは、左袖3の長さ方向一端部(身頃2側にある上端部)43側で身頃2の左袖ぐり18に接続される一方、左袖3の長さ方向他端部(下端部)側に袖口35を形成している。
左袖3は、また、身頃2の左袖ぐり18に繋がる左連繋部42を備えている。この左連繋部42は、左袖3の長さ方向一端部43を含むように設けられている。
そして、左連繋部42の正面45が、左袖正面31のうち、左袖3の長さ方向一端部43付近の正面に含まれている。左連繋部42の正面45は、身頃2の左端部正面23と隣り合うように配されている。
また、右袖4は、身頃2に連通しつつ当該右袖4の長さ方向(軸方向、図1における概ね矢印22方向)に延在し得る筒状体である。本実施形態において、右袖4は半袖である。なお、本発明における右袖は、これに限定するものではなく、例えば、長袖であってもよいし、七分袖であってもよい。
右袖4は、右袖正面51と、右袖背面52とを有している。本実施形態において、右袖4は、右袖正面51および右袖背面52の一部(上部)を形成する第3の部材153と、右袖背面52の残部(下部)を形成する第4の部材154とから構成されている。
なお、右袖4は、本実施形態においては別体の部材である第3の部材153と第4の部材154とから構成されたものとしているが、一つの部材から構成されたものとしてもよい。
右袖正面51と右袖背面52とは、前後に並べられ、右袖4が筒状を呈するように連続的に設けられている。右袖正面51と右袖背面52とは、右袖4の長さ方向一端部(身頃2側にある上端部)63側で身頃2の右袖ぐり19に接続される一方、右袖4の長さ方向他端部(下端部)側に袖口55を形成している。
右袖4は、また、身頃2の右袖ぐり19に繋がる右連繋部62を備えている。この右連繋部62は、右袖4の長さ方向一端部63を含むように設けられている。
そして、右連繋部62の正面65が、右袖正面51のうち、右袖4の長さ方向一端部63付近の正面に含まれている。右連繋部62の正面65は、身頃2の右端部正面26と隣り合うように配されている。
図3に、身頃12の左側と左袖3との縫合が解かれた状態の概略図を示す。図4に、図3の場合における身頃12の前身頃11の左側と左袖3の左袖正面31との関係を表す概略図を示す。
図3、図4に示されるように、前身頃11の左側に、左抉り部71が設けられている。左袖3の正面側(左袖正面31)に、前身頃11の左抉り部71に縫合可能な左縫合端部72が設けられている。
左抉り部71が、前身頃11の左肩部73(身頃2の左肩部75)のうち、最も左側の部分よりも右側に位置する最深部77を有している。そして、左縫合端部72が、左抉り部71に縫合されている。ここで、左縫合端部72は、左抉り部71に縫合される前には左抉り部71の最深部77に到達しない寸法に形成されている。
なお、衣料の上半身部1においては、左袖3に関する構造と右袖4に関する構造とは、図1の身頃2の左右方向中心縦線69に対して略対称な構造であるので、以下では左袖3に関する構造についての説明を行い、右袖4に関する構造についての説明は省略する。
詳しくは、左抉り部71は、身頃2の左端部正面23として機能するものである。左抉り部71は、前身頃11において、その左縁部の上側が抉られることによって構成されている。左抉り部71は、概ね前身頃11の上下方向に延在した状態で形成されている。
左抉り部71は、前身頃11の左右方向中心縦線69側(右側)へ凹む湾曲形状(凹形状)を有している。左抉り部71は、そのなかで左右方向中心縦線69側へ最も凹んだ部分に、最深部77を備えている。この最深部77は、凹形状の縫合ラインを形作る、左抉り部71の縁部上に配されている。
左抉り部71は、また、延在方向一端部(上側の端部)81と、延在方向他端部(下側の端部)82とを備えている。この左抉り部71において、延在方向一端部81は、前身頃11の左肩部73のうち、最も左側の部分に配されている。左抉り部71の延在方向他端部(下側の端部)82は、延在方向一端部81よりも下方でかつ左方に設けられている。
そして、最深部77が、上下方向において、延在方向一端部81と延在方向他端部82との間に設けられている。最深部77は、延在方向一端部81(前身頃11の左肩部73のうち、最も左側の部分)から下方へ向かって略垂直に延びる第1仮想線85よりも所定の最短距離d1(例えば約1又は2cm)だけ右方に配されている。
また、左縫合端部72は、左袖3の長さ方向一端部43において、左袖3の左袖正面31のうち左連繋部42の正面45に設けられている。左袖3の左連繋部42の正面45には、また、左基部87が設けられている。左基部87は、左縫合端部72に対して左袖3の長手方向他端部側に配されている。
左縫合端部72は、左基部87から左抉り部71に向かって膨出する膨出形状を有している。左縫合端部72は、そのなかで左右方向中心縦線69側(右側)へ最も突出する部分に、頂部89を備えている。頂部89は、左抉り部71に対して凸形状の縫合ラインを形作る、左縫合端部72の正面視左側縁部上に配されている。
そして、左縫合端部72の正面視左側縁部が左抉り部71の縁部に縫合されている。この際、左縫合端部72においては、その延在方向一端部91が、左抉り部71の延在方向一端部81に合致させられる。
しかも、左縫合端部72の延在方向他端部92が、左抉り部71の延在方向他端部82に合致させられる。加えて、左縫合端部72の頂部89が、左抉り部71の最深部77に合致させられる。
ここでは、左縫合端部72と左抉り部71との縫合が解かれた場合(即ち、これら両者が分離している場合)に、左縫合端部72の延在方向一端部91と延在方向他端部92との最短距離d2が、左抉り部71の延在方向一端部81と延在方向他端部82との最短距離d3よりも長くなるように設定されている。
また、左縫合端部72における正面視左側縁部の周長が、左抉り部71の周長と略同じになるように設定されている。なお、これら両者の周長は、伸ばし縫い等により適切に縫合を実行できる周長であればよく、本実施形態に代えて、互いに異なる周長としてもよい。
さらに、左縫合端部72と左抉り部71との縫合が解かれた場合に、左縫合端部72の突出寸法(膨出寸法)が、左抉り部71の凹み寸法よりも小さくなるように設定されている。具体的には、第2仮想線95と左縫合端部72の頂部89との最短距離d4が、第3仮想線97と左抉り部71の最深部77との最短距離d5よりも短くなるように設定されている。
すなわち、この場合に、左縫合端部72と左抉り部71とを左右方向に並べたとき、左縫合端部72の延在方向一端部91と左抉り部71の延在方向一端部81とが合致しかつ左縫合端部72の延在方向他端部92と左抉り部71の延在方向他端部82とが合致した状態で、左縫合端部72における縫合ライン上の頂部89が左抉り部71における縫合ライン上の最深部77に左右方向において到達しない(届かずに合致しない)ように、左縫合端部72が所定の寸法(短寸)に形成されている。
なお、第2仮想線95は、左縫合端部72と左抉り部71との縫合が解かれたときに、左縫合端部72の延在方向一端部91と延在方向他端部92とを最短距離d2で結ぶ直線である。第3仮想線97は、左縫合端部72と左抉り部71との縫合が解かれたときに、左抉り部71の延在方向一端部81と延在方向他端部82とを最短距離d3で結ぶ直線である。
この構成により、衣料の上半身部1の着用時に、身頃2と左袖3および右袖4の各々との境界部分の下側、特に前下側に時間の経過ととともにしわが発生して、そのしわ部分が着用者の脇の下に食い込む食い込み量を低減させることができる。したがって、この際に、衣料の上半身部1が前述の食い込みに起因する不快感を着用者に与えることを抑制することができる。
また、本実施形態においては、図2に示すように、左袖3の左袖正面31と前身頃11との縫合部分のうち、最も下方に位置する縫合箇所101が、左袖3の左袖背面32と身頃2との境目のうち、最も下方に位置する最下部分103よりも上方に配されている。
詳しくは、最下部分103は、前身頃11と後身頃12との左脇線105の最上端部に設けられている。縫合箇所101は、左脇線105の最上端部から上方へ延びる延長線上に設けられている。
なお、左脇線105の延長線を形成する前身頃11の延長部107は、後身頃12と接触せずに左袖ぐり18の一部を形成するものであり、左袖3の一部(左袖背面32の一部)109と縫合されるようになっている。
縫合箇所101は左抉り部71の延在方向他端部(下側の端部)82を含み、最下部分103は左袖ぐり18の最下点をなす後身頃12の角部111を含んでいる。身頃2への左袖3の取付後、左抉り部71の延在方向他端部82は、後身頃12の角部111に対し延長部107に応じて離間した状態を保つ。
この構成により、衣料の上半身部1の着用時、身頃2と左袖3および右袖4の各々との境界部分の後下側に時間の経過ととともにしわが発生して、そのしわ部分が着用者の脇の下に食い込む食い込み量を低減させることができる。したがって、この際に、前記衣料の上半身部が前述の食い込みに起因する不快感を着用者に与えることを更に抑制することができる。
本実施形態において、縫合箇所101と最下部分103との上下方向の最短長さL1は約2cm以上である。なお、最下部分103は本実施形態に係る上下位置よりも身頃2の裾17側にある任意の上下位置に変更させてもよく、この最下部分103を身頃2の裾17に位置させた場合には当該最下部分103と縫合箇所101との最短距離を最大とし得る。
また、本実施形態においては、前述の通り、左袖3は、左縫合端部72を含みかつ身頃2の左側に繋がる左連繋部42を有している。そして、左袖3のうち、少なくとも前記左連繋部42の背面121は、左袖3の長さ方向において20%伸長時に45cN以上600以下となる伸長力を有するように構成されている。
左連繋部42の背面121は、左袖背面32のうち、左袖3の長さ方向一端部43付近の背面に含まれている。左連繋部42の背面121は、身頃2の左端部背面24と隣り合うように配されている。
なお、左袖3のうち少なくとも左連繋部42の背面68の長さ方向の伸長力は、左袖3の長さ方向の20%伸長時に60cN以上500cN以下となるものが好ましく、左袖3の長さ方向の20%伸長時に80cN以上400cN以下となるものがより好ましい。
この構成により、着用者の左の肩甲骨、更には上腕上部および肩と、右の肩甲骨、更には上腕上部および肩とに、後方への高い負荷をかけることが可能となる。したがって、左の上腕上部および右の上腕上部がそれぞれ正面中央側にまわるように左肩および右肩の各々が前方に出てしまうという姿勢を、着用者にとって、とりづらいものにすることができる。その結果、着用者が巻き肩や猫背になるといったことを効果的に抑制することができ、着用者の姿勢矯正効果を高めることができる。また、既に巻き肩や猫背になった人に対しても優れた矯正効果を衣類の上半身部1に発揮させることが可能になる。
しかも、本実施形態においては、着用者が衣類の上半身部1を着用したとき、後身頃12(後側領域8)が発揮する引張力(左袖3の左連繋部42の背面121を略右方へ引っ張り、かつ、右袖4の右連繋部62の背面122を略左方へ引っ張る力)が左右の袖3・4の連繋部42・62の背面121・122の伸びにより大きく減殺されず、着用者の左右の肩甲骨、更には上腕上部および肩を引き寄せる力、即ち着用者の後方および着用者の背面中央側へと移動させようとする力がより強く働くことになる。
なお、ここでの伸長力とは、それぞれの製造に用いられる生地(素材)を、定速伸長形引張試験機により、約20℃(18℃〜22℃)の環境下において、幅2.5cm、長さ(生地把持間隔)10cmの状態で、引張り速度30cm/分で所定方向に20%伸長させた時の伸長力である。本件では定速伸長形引張試験機として島津製作所製AGS−Xを採用し、これを用いて測定した伸長力を記載している。
また、本実施形態においては、衣類の上半身部1は、左袖3のうち少なくとも左連繋部42の背面121および左連繋部42の正面45に亘って、左袖3の長さ方向において20%伸長時に45cN以上600以下となる伸長力を有するように構成されている。
なお、衣類の上半身部1は、左袖3のうち少なくとも左連繋部42の背面121および左連繋部42の正面45に亘って、左袖3の長さ方向の20%伸長時に60cN以上500cN以下となるものを有するように構成されることが好ましく、左袖3の長さ方向の20%伸長時に80cN以上400cN以下となるものを有するように構成されることがより好ましい。
この構成により、着用者が衣類の上半身部1を着用したとき、着用者の左右の肩甲骨、更には上腕上部および肩を、さらに強く引き寄せる、即ち着用者の後方および着用者の背面中央側へと移動させることができる。そのため、より効果的な着用者の姿勢矯正を行うことができる。
なお、本発明における左袖の左連繋部の背面は、本実施形態においては左抉り部71に対して凸形状の縫合ラインを左縫合端部72に有する左連繋部42の背面121としているが、これに限定するものではなく、左縫合端部で左抉り部と縫合されていない分離時にその左抉り部の最深部に到達しない形状をもつ短寸に形成されたものであればよい。
また、本発明における左袖は、左袖3に代えて、左袖のうち少なくとも左連繋部の背面が長さ方向において20%伸長時に45cN以上(600以下)となる伸長力を有し、かつ、左袖のうち左連繋部の正面が長さ方向に45cN以上の伸張力をかけても20%の伸張にならないように伸びない構成とされた左袖としてもよい。
なお、ここでの20%未満の伸びない構成とされた左袖とは、全く伸びない左袖を含むものである。
このような場合には、例えば、左の袖を、正面と背面とを別体の部材から構成した(異なる生地から構成した)袖としてもよいし、長さ方向において20%伸長時に45cN以上となる伸長力を有するように正面と背面とを一つの部材から構成した(同一の生地から構成した)うえで、長さ方向に45cN以上の伸張力をかけても20%の伸張にならないように、別の生地等を袖のうち少なくとも連繋部の正面に設けた袖としてもよい。
また、本発明における左袖は、左袖3に代えて、左袖のうち少なくとも左連繋部の背面が長さ方向に45cN以上の伸張力をかけても20%の伸張にならない20%未満の伸びない構成とされた左袖としてもよい。
そして、本発明における左袖は、このように左袖3を代えた場合に、左袖のうち少なくとも左連繋部の背面および正面に亘って、長さ方向に45cN以上の伸張力をかけても20%の伸張にならない20%未満の伸びない構成とされた左袖としてもよい。
または、本発明における左袖は、このように左袖3を代えた場合に、左袖のうち左連繋部の背面が長さ方向に45cN以上の伸張力をかけても20%の伸張にならないように伸びない構成とされ、かつ、左袖のうち少なくとも左連繋部の正面が長さ方向において20%伸長時に45cN以上600以下となる伸長力を有する左袖としてもよい。
なお、身頃、左右の袖に関して、伸縮性あるいは伸張力あるいは20%の伸張も得られない伸び難い構成にするために、生地自体で、伸縮性、伸張力、あるいは、伸び難い構成にする場合に限られず、ポリウレタンなどの材料を生地にプリントとして、所定の伸縮性、所定の伸張力、あるいは、所定の伸び難い構成にしてもよいし、別の生地を付加させて所定の伸縮性、所定の伸張力、あるいは、所定の伸び難い構成にしてもよい。
上述の教示を考慮すれば、本発明が多くの変更形態および変形形態をとり得ることは明らかである。したがって、本発明が、添付の特許請求の範囲内において、本明細書に記載された以外の方法で実施され得ることを理解されたい。
1 衣料の上半身部
2 身頃
3 左袖
4 右袖
11 前身頃
12 後身頃
31 左袖の正面
42 左連繋部
45 左連繋部の正面
62 右連繋部
65 右連繋部の正面
71 左抉り部
72 左縫合端部
73 前身頃の左肩部
77 左抉り部の最深部
101 縫合箇所(第1の縫合箇所)
103 最下部分(第1の最下部分)
121 左連繋部の背面
122 右連繋部の背面

Claims (10)

  1. 前身頃および当該前身頃に設けられた伸縮性の後身頃を有する身頃と、前記身頃の左右両側にそれぞれ設けられた左袖および右袖とを備える衣料の上半身部であって、
    前記前身頃の左側に左抉り部が設けられるとともに、前記左袖の正面側に、前記前身頃の左抉り部に縫合可能な左縫合端部が設けられ、
    前記左抉り部が、前記前身頃の左肩部のうち、最も左側の部分よりも右側に位置する最深部を有し、
    前記左縫合端部が、前記左抉り部に縫合される前には前記左抉り部の最深部に到達しない寸法に形成された状態で、前記左抉り部に縫合され、
    前記前身頃の右側に右抉り部が設けられるとともに、前記右袖の正面側に、前記前身頃の右抉り部に縫合可能な右縫合端部が設けられ、
    前記右抉り部が、前記前身頃の右肩部のうち、最も右側の部分よりも左側に位置する最深部を有し、
    前記右縫合端部が、前記右抉り部に縫合される前には前記右抉り部の最深部に到達しない寸法に形成された状態で、前記右抉り部縫合され、
    前記後身頃は、着用者の左右の肩甲骨を引き寄せる伸長力を有している、
    衣料の上半身部。
  2. 前記左袖の正面と前記前身頃との縫合部分のうち、最も下方に位置する第1の縫合箇所が、前記左袖の背面と前記身頃との境目のうち、最も下方に位置する第1の最下部分よりも上方に配され、
    前記右袖の正面と前記前身頃との縫合部分のうち、最も下方に位置する第2の縫合箇所が、前記右袖の背面と前記身頃との境目のうち、最も下方に位置する第2の最下部分よりも上方に配されている、請求項1に記載の衣料の上半身部。
  3. 前記第1の縫合箇所と前記第1の最下部分との上下方向の最短距離は、2cm以上であり、
    前記第2の縫合箇所と前記第2の最下部分との上下方向の最短距離は、2cm以上である、請求項2に記載の衣料の上半身部。
  4. 前記左袖は、前記左縫合端部を含みかつ前記身頃の左側に繋がる左連繋部を有し、
    前記左袖のうち、少なくとも前記左連繋部の背面は、当該左袖の長さ方向において20%伸長時に45cN以上となる伸長力を有し、
    前記右袖は、前記右縫合端部を含みかつ前記身頃の右側に繋がる右連繋部を有し、
    前記右袖のうち、少なくとも前記右連繋部の背面は、当該右袖の長さ方向において20%伸長時に45cN以上となる伸長力を有している、
    請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の衣料の上半身部。
  5. 前記左袖は、当該左袖のうち、少なくとも前記左連繋部の背面および正面に亘って、当該左袖の長さ方向において20%伸長時に45cN以上となる伸長力を有し、
    前記右袖は、当該右袖のうち、少なくとも前記右連繋部の背面および正面に亘って、当該右袖の長さ方向において20%伸長時に45cN以上となる伸長力を有している、
    請求項4に記載の衣料の上半身部。
  6. 前記左袖のうち、前記左連繋部の正面は、当該左袖の長さ方向に45cN以上の伸長力をかけても20%の伸長にならない20%未満の伸びない構成とされ、
    前記右袖のうち、前記右連繋部の正面は、当該右袖の長さ方向に45cN以上の伸長力をかけても20%の伸長にならない20%未満の伸びない構成とされている、
    請求項4に記載の衣料の上半身部。
  7. 前記左袖は、前記左縫合端部を含みかつ前記身頃の左側に繋がる左連繋部を有し、
    前記左袖のうち、少なくとも前記左連繋部の背面は、当該左袖の長さ方向に45cN以上の伸長力をかけても20%の伸長にならない20%未満の伸びない構成とされ、
    前記右袖は、前記右縫合端部を含みかつ前記身頃の右側に繋がる右連繋部を有し、
    前記右袖のうち、少なくとも前記右連繋部の背面は、当該右袖の長さ方向に45cN以上の伸長力をかけても20%の伸長にならない20%未満の伸びない構成とされている、
    請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の衣料の上半身部。
  8. 前記左袖は、当該左袖のうち、少なくとも前記左連繋部の背面および正面に亘って、当該左袖の長さ方向に45cN以上の伸長力をかけても20%の伸長にならない20%未満の伸びない構成とされ、
    前記右袖は、当該右袖のうち、少なくとも前記右連繋部の背面および正面に亘って、当該右袖の長さ方向に45cN以上の伸長力をかけても20%の伸長にならない20%未満の伸びない構成とされている、
    請求項7に記載の衣料の上半身部。
  9. 前記左袖の左連繋部の正面は、当該左袖の長さ方向において20%伸長時に45cN以上となる伸長力を有し、
    前記右袖の右連繋部の正面は、当該右袖の長さ方向において20%伸長時に45cN以上となる伸長力を有している、
    請求項7に記載の衣料の上半身部。
  10. 前記左右の袖が、半袖、七分袖または長袖である、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の衣料の上半身部。
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