JP6722507B2 - 吸水性樹脂の製造方法 - Google Patents

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本発明は、吸水性樹脂の製造方法に関する。更に詳しくは、粒度分布が制御された球状の吸水性樹脂を効率よく、安定的に製造する方法に関する。
吸水性樹脂(SAP/Super Absorbent Polymer)は、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤であり、紙オムツや生理用ナプキン等の吸収性物品、農園芸用の保水剤、工業用の止水剤等、様々な分野で多用されている。
上記吸水性樹脂には、その原料として多くの単量体や親水性高分子が使用されているが、吸水性能の観点から、アクリル酸及び/又はその塩を単量体として用いたポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂が、工業的に最も多く生産されている。
上記吸水性樹脂には、主用途である紙オムツの高性能化に伴い、様々な機能(高物性化)が求められている。具体的には、基本物性である無加圧下吸水倍率や加圧下吸水倍率の他に、ゲル強度、水可溶分、含水率、吸水速度、通液性、粒度分布、耐尿性、抗菌性、耐ダメージ性、粉体流動性、消臭性、耐着色性、低粉塵、低残存モノマー等の様々な物性が吸水性樹脂に対して要求されている。
このような吸水性樹脂は、シート状、繊維状、フィルム状等、様々な形状とすることができるが、一般的には、粉末状又は粒子状とすることが多い。粉末状又は粒子状の吸水性樹脂では、その粒子径や粒度分布等によって吸水性能や取扱性、使用感が変動することが知られている。そのため、粒子径や粒度分布が適正に制御された粉末状又は粒子状の吸水性樹脂が求められている。
上記粉末状又は粒子状の吸水性樹脂の主な製造方法として、水溶液重合法や逆相懸濁重合法が挙げられる。該水溶液重合法は、重合工程で得られた含水ゲル状架橋重合体を乾燥前又は乾燥後に粉砕して分級する必要があり、製造プロセスが複雑化する。そのため、安定稼働させるには高度な運転技術が必要となる。
一方、逆相懸濁重合法では、重合段階での粒度制御が可能であり、例えば、炭化水素溶媒に対する単量体の比を小さくして、時間をかけて滴下する方法(特許文献1)、特定のリン酸エステル系分散剤を含む疎水性有機溶媒に、単量体水溶液を滴下する方法(特許文献2)、重合を多段で行う方法(特許文献3)、特殊形状の反応装置を用いて、分散媒溶液の上昇流を利用する方法(特許文献4)が提案されている。
また、逆相懸濁重合法では、上述したように粒度制御された含水ゲル状架橋重合体が得られるものの、一般的な乾燥装置、特に材料静置型の乾燥装置を用いて乾燥させると、該含水ゲル状架橋重合体が凝集して塊状となり、重合段階での粒度制御が意味を為さなくなるという問題がある。
そこで、逆相懸濁重合で得られた含水ゲル状架橋重合体は、疎水性有機溶媒に分散させた状態で共沸脱水を行うことにより乾燥させることが一般的である(特許文献2、3)。該乾燥方法以外にも、減圧噴霧で乾燥させる方法(特許文献1)、重合後の含水ゲル状架橋重合体に乾燥した吸水性樹脂を添加して、全体の含水率を25質量%以下に調整した後、双椀型ニーダーを用いて乾燥する方法(特許文献5)が提案されている。
特開昭61−192703号公報 特開2002−284805号公報 特開2012−41419号公報 特開平3−296502号公報 特開2005−54050号公報
上述したように、粒子径や粒度分布が制御された粉末状又は粒子状の吸水性樹脂を得るため、逆相懸濁重合法を利用した技術がこれまでに検討され、実施されている。しかしながら、何れの場合も、所望する粒子径や粒度分布の吸水性樹脂を得るためには、長時間の滴下及び重合操作が必要であった。また、重合中や乾燥中に粒子同士が凝集し塊状とならないように、大量の分散剤を添加する必要があった。
具体的には、上記特許文献1及び2では、粒子径や粒度分布を制御し、かつ重合の反応熱を除去するために、単量体等を小流量で長時間かけて有機溶媒に滴下する必要があり、生産性が低いものであった。また、上記特許文献3では、所望する粒子径や粒度分布の吸水性樹脂を得るため、複数回の重合操作が必要であり、その結果として重合時間が長くなり生産性の低下を引き起こしていた。また、上記特許文献4でも、特殊な重合操作が必要とされるため、重合時間が長くなり生産性の低下を引き起こしていた。更に、上記特許文献1〜4の何れの場合も、重合反応が継続している間、安定な懸濁状態を維持するために大量の分散助剤の添加が必要であった。その結果、この分散助剤の一部が、重合反応で得られる吸水性樹脂中に残存して表面張力を低下させることになり、所望する吸水性能を有する吸水性樹脂を得ることが困難であった。
また、疎水性有機溶媒との共沸脱水による乾燥では、乾燥中における含水ゲル状架橋重合体の粒子の凝集・塊状化は回避できるものの、通常の乾燥方法に比べて、有機溶媒の還流に伴うエネルギー損失が比較的大きく、また、乾燥時間(加熱時間)を長くする必要があるためコストアップとなり、更に、環境への負荷も大きくなる。また、上記特許文献5に開示されている乾燥方法では、特にバッチ式の逆相懸濁重合法の場合に得られる多量の含水ゲル状架橋重合体の含水率を低下させるために、必然的に、多量の乾燥した吸水性樹脂を添加することになる。そのため、含水ゲル状架橋重合体と乾燥した吸水性樹脂との混合工程の追加が必要となり、操作が煩雑となるのみならず、混合装置や乾燥装置の大型化が必要であり、特に工業的規模での生産においてはコストアップとなる。
このように、市場で要望される吸水性能等を備えた粉末状又は粒子状の吸水性樹脂を、従来技術を用いて、短時間で、効率よく製造する方法は、未だ提案されていない。そこで、本発明の課題は、吸水性能等の物性に優れた粉末状又は粒子状の吸水性樹脂を、製造上のトラブルなく、安定して製造する方法を提供することである。
上記課題を解決するため種々の検討をおこなった結果、本発明者等は、液相液滴連続重合によって、吸水性樹脂の原料である単量体を含む液滴から、含水ゲル状架橋重合体を得る重合工程と、上記重合工程で得られる含水ゲル状架橋重合体を連続的に乾燥する乾燥工程とを含む、吸水性樹脂の製造方法であって、上記乾燥工程の少なくとも一部において、攪拌型乾燥装置が用いられる、吸水性樹脂の製造方法を完成するに至った。
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法によれば、分散助剤を使用しない、又は、吸水性樹脂の表面張力に影響しない程度の量の分散助剤で、凝集・塊状化することなく、含水ゲル状架橋重合体を乾燥させて、粒度制御された粉末状又は粒子状の吸水性樹脂を効率よく製造することができる。なお、本明細書において、分散助剤とは懸濁状態の安定化剤としての機能を有する物質を意味する。
図1は、本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の製造プロセスの一部を示した概略図である。
以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下に例示する以外にも、本発明の趣旨を損なわない範囲内で適宜変更して、実施することが可能である。また、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。複数の実施形態についてそれぞれ開示された技術的手段を、適宜組み合わせて得られる他の実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
〔1〕用語の定義
〔1−1〕「吸水性樹脂」
本発明における「吸水性樹脂」とは、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤を指し、下記の物性を満たすものをいう。即ち、水膨潤性としてERT441.2−02で規定されるCRC(遠心分離機保持容量)が5g/g以上であり、かつ、水不溶性としてERT470.2−02で規定されるExt(水可溶分)が50質量%以下である高分子ゲル化剤を指す。
上記吸水性樹脂は、その用途・目的に応じた設計が可能であり、特に限定されないが、カルボキシル基を有する不飽和単量体を架橋重合させた親水性架橋重合体であることが好ましい。また、全量が架橋重合体である形態に限定されず、上記の各物性(CRC、Ext)が上記数値範囲を満たす限り、添加剤等を含んだ組成物であってもよい。
本発明における「吸水性樹脂」は、出荷前の最終製品に限らず、吸水性樹脂の製造工程における中間体(例えば、重合後の含水ゲル状架橋重合体、表面架橋前の吸水性樹脂粉末等)を指す場合もある。これら全てを包括して「吸水性樹脂」と総称する。
〔1−2〕「ポリ(メタ)アクリル酸(塩)」
本発明における「ポリ(メタ)アクリル酸(塩)」とは、ポリ(メタ)アクリル酸及び/又はその塩を指し、主成分として(メタ)アクリル酸及び/又はその塩(以下、「(メタ)アクリル酸(塩)」とも称する)を繰り返し単位として含み、任意成分としてグラフト成分を含む架橋重合体を意味する。
上記「主成分」とは、(メタ)アクリル酸(塩)の使用量(含有量)が、重合に用いられる単量体全体に対して、好ましくは50モル%〜100モル%、より好ましくは70モル%〜100モル%、更に好ましくは90モル%〜100モル%、特に好ましくは実質100モル%であることを意味する。
架橋重合体としての「ポリ(メタ)アクリル酸塩」は、ポリ(メタ)アクリル酸の水溶性塩を含み、好ましくは一価の塩、より好ましくはアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、更に好ましくはアルカリ金属塩、特に好ましくはナトリウム塩を含む。
〔1−3〕「EDANA」及び「ERT」
「EDANA」は、European Disposables and Nonwovens Associationsの略称である。また、「ERT」は、EDANA Recommended Test Methodsの略称であり、吸水性樹脂の測定方法を規定した欧州標準である。本発明では、特に断りのない限り、ERT原本(2002年改定)に準拠して、吸水性樹脂の物性を測定する。
〔1−3−1〕「CRC」(ERT441.2−02)
「CRC」は、Centrifuge Retention Capacity(遠心分離機保持容量)の略称であり、吸水性樹脂の無加圧下での吸水倍率(「吸水倍率」と称する場合もある)を意味する。具体的には、吸水性樹脂0.2gを不織布製の袋に入れた後、大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液中に30分間浸漬して自由膨潤させ、その後、遠心分離機(250G)で3分間、水切りした後の吸水倍率(単位;g/g)のことをいう。
〔1−3−2〕「AAP」(ERT442.2−02)
「AAP」は、Absorption Against Pressureの略称であり、吸水性樹脂の加圧下における吸水倍率を意味する。具体的には、吸水性樹脂0.9gを大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液に対して、1時間、2.06kPa(21g/cm、0.3psi)の荷重下で膨潤させた後の吸水倍率(単位;g/g)のことをいう。また、荷重条件を4.83kPa(49g/cm、0.7psi)に変更して測定する場合もある。なお、ERT442.2−02には、Absorption Under Pressureと表記されているが、実質的には同一内容である。
〔1−3−3〕「Ext」(ERT470.2−02)
「Ext」は、Extractablesの略称であり、吸水性樹脂の水可溶分(水可溶成分量)を意味する。具体的には、吸水性樹脂1.0gを0.9質量%塩化ナトリウム水溶液200mlに添加し、500rpmで16時間攪拌した後、水溶液に溶解した物質の量(単位;質量%)のことをいう。水可溶分の測定には、pH滴定が用いられる。
〔1−3−4〕「Residual Monomers」(ERT410.2−02)
「Residual Monomers」は、吸水性樹脂中に残存する単量体(モノマー)の量を意味する。以下、吸水性樹脂中に残存する単量体を「残存モノマー」と称する。具体的には、吸水性樹脂1.0gを、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液200mlに添加し、500rpmで1時間攪拌した後、水溶液に溶解したモノマー量(単位;ppm)のことをいう。残存モノマー量の測定には、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が用いられる。
〔1−3−5〕「Moisture Content」(ERT430.2−02)
「Moisture Content」は、吸水性樹脂の含水率を意味する。具体的には、吸水性樹脂4.0gを105℃で3時間乾燥した際の乾燥減量から算出した値(単位;質量%)のことをいう。なお、吸水性樹脂の量を1.0gに、乾燥温度を180℃にそれぞれ変更して測定する場合もある。
〔1−3−6〕「PSD」(ERT420.2−02)
「PSD」は、Particle Size Distributionの略称であり、篩分級により測定される吸水性樹脂の粒度分布を意味する。なお、質量平均粒子径(D50)及び粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、米国特許第7638570号に記載された方法と同様の方法で測定される。
〔1−4〕その他
本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上、Y以下」を意味する。また、特に注釈のない限り、質量の単位である「t(トン)」は「Metric ton(メトリック トン)」を意味し、「ppm」は「質量ppm」又は「重量ppm」を意味する。更に、「質量」と「重量」、「質量部」と「重量部」、「質量%」と「重量%」はそれぞれ同義語として扱う。また、「〜酸(塩)」は「〜酸及び/又はその塩」、「(メタ)アクリル」は「アクリル及び/又はメタクリル」をそれぞれ意味する。
〔2〕吸水性樹脂の製造方法
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法は、吸水性樹脂の原料である単量体を含む単量体水溶液と重合開始剤とを混合して単量体組成物を作製する混合工程、上記単量体組成物を有機溶媒が収容された反応装置に供給する供給工程、上記反応装置において重合反応を開始させて含水ゲル状架橋重合体を得る重合工程、上記含水ゲル状架橋重合体と上記有機溶媒とを分離する分離工程、上記分離された含水ゲル状架橋重合体を乾燥する乾燥工程及びその他の工程とを有している。
以下、各工程(混合工程、供給工程、重合工程、分離工程、乾燥工程及びその他の工程)について、詳細に説明する。
〔2−1〕混合工程
本工程は、吸水性樹脂の原料である単量体を主成分として含む水溶液(以下、「単量体水溶液」と称する)と、重合開始剤とを混合して、単量体組成物を作製する工程である。なお、本願明細書において、「単量体組成物」とは、後述する単量体及び重合開始剤を必須成分として含み、必要に応じて、水、有機溶媒、内部架橋剤等の添加剤を含む組成物を意味する。このうち、単量体及び重合開始剤を必須成分として含み、必要に応じて、水、内部架橋剤等の添加剤(但し、単量体と相溶性のあるもの)を含む組成物を、「狭義の単量体組成物」と定義する。好ましくは、「狭義の単量体組成物」は、単量体、重合開始剤、水、中和剤及び内部架橋剤を、必須成分として含む。
(単量体)
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法において、使用される単量体としては、重合して吸水性樹脂となり得る化合物であればよく、その種類について特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、ビニルスルホン酸、アリルトルエンスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルフォスフェート等の酸基含有不飽和単量体;(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有不飽和単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和単量体;メルカプト基含有不飽和単量体;フェノール性水酸基含有不飽和単量体;N−ビニルピロリドン等のラクタム基含有不飽和単量体等が挙げられる。
上記単量体の中で、カルボキシル基等の酸基を有する酸基含有不飽和単量体を用いる場合、該酸基の一部又は全部が中和された中和塩を用いることができる。この場合、酸基含有不飽和単量体の塩としては一価のカチオンとの塩であることが好ましく、アルカリ金属塩、アンモニウム塩及びアミン塩から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、アルカリ金属塩であることが更に好ましく、ナトリウム塩、リチウム塩及びカリウム塩から選ばれる少なくとも1種であることがより更に好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。
これらの中でも、得られる吸水性樹脂の吸水性能の観点から、単量体は、好ましくは酸基含有不飽和単量体及び/又はその塩、より好ましくは(メタ)アクリル酸(塩)、(無水)マレイン酸(塩)、イタコン酸(塩)、ケイ皮酸(塩)、更に好ましくは(メタ)アクリル酸(塩)である。
本発明に係る製造方法において、単量体として酸基含有不飽和単量体を用いる場合、得られる吸水性樹脂の吸水性能の観点から、その酸基含有不飽和単量体の中和塩と併用することが好ましい。吸水性能の観点から、酸基含有不飽和単量体とその中和塩の合計モル数に対する中和塩のモル数(以下、「中和率」と称する)は、好ましくは40モル%以上、より好ましくは40モル%〜80モル%、更に好ましくは45モル%〜78モル%、特に好ましくは50モル%〜75モル%である。なお、本発明における単量体は、特に断りのない限り、中和塩を含む概念である。
上記中和率を調整する方法としては、酸基含有不飽和単量体とその中和塩とを混合する方法;酸基含有不飽和単量体に公知の中和剤を添加する方法;予め所定の中和率に調整された酸基含有不飽和単量体の部分中和塩(即ち、酸基含有不飽和単量体とその中和塩との混合物)を用いる方法;等が挙げられる。また、これらの方法を組み合わせてもよい。
上記酸基含有不飽和単量体を中和するために使用される中和剤としては、特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等の無機塩や、アミノ基やイミノ基を有するアミン系有機化合物等の塩基性物質が適宜選択されて用いられる。中和剤として、2種以上の塩基性物質が併用されてもよい。
上記中和率の調整は、酸基含有不飽和単量体の重合反応開始前に行ってもよいし、酸基含有不飽和単量体の重合反応中で行ってもよいし、酸基含有不飽和単量体の重合反応終了後に得られる含水ゲル状架橋重合体に対して行ってもよい。また、重合反応開始前、重合反応中又は重合反応終了後のいずれか一つの段階を選択して中和率を調整してもよいし、複数の段階で中和率を調整してもよい。なお、紙オムツ等の吸収性物品等、人体に直接接触する可能性のある用途では、好ましくは重合反応の開始前及び/又は重合反応の期間中、より好ましくは重合反応の開始前に、中和率を調製すればよい。
本発明に係る製造方法では、上記例示した単量体のいずれかを単独で使用してもよく、任意の2種以上の単量体を適宜混合して使用してもよい。また、本発明の目的が達成される限り、更に他の単量体を混合することもできる。
2種以上の単量体を併用する場合、主成分として、(メタ)アクリル酸(塩)を含むことが好ましい。この場合、単量体全体に対する(メタ)アクリル酸(塩)の割合は、得られる吸水性樹脂の吸水性能の観点から、通常は50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上(上限は100モル%)である。
(内部架橋剤)
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法において、好ましくは内部架橋剤が用いられる。該内部架橋剤によって、得られる吸水性樹脂の吸水性能や吸水時のゲル強度等が調整される。
上記内部架橋剤としては、1分子内に2以上の不飽和結合又は反応性官能基を有していればよく、その種類について特に限定されないが、例えば、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリン(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリアリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,4−ブタンジオール、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのうち、2種以上を併用してもよい。
上記内部架橋剤の使用量は、単量体及び内部架橋剤の種類等に応じて適宜設定され、特に限定されないが、得られる吸水性樹脂のゲル強度の観点から、単量体に対して、好ましくは0.001モル%以上、より好ましくは0.005モル%以上、更に好ましくは0.01モル%以上である。また、吸水性樹脂の吸水性能向上の観点から、好ましくは5モル%以下、より好ましくは2モル%以下である。なお、単量体の自己架橋反応が有効な重合条件においては、上記内部架橋剤を使用しなくともよい。
(その他の物質)
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法において、本発明の目的が達成される範囲内で、以下に例示する物質(以下、「その他の物質」と称する)を単量体水溶液に添加することもできる。
その他の物質の具体例として、チオール類、チオール酸類、2級アルコール類、アミン類、次亜リン酸塩類等の連鎖移動剤;炭酸塩、重炭酸塩、アゾ化合物、気泡等の発泡剤;エチレンジアミン4酢酸の金属塩、ジエチレントリアミン5酢酸の金属塩等のキレート剤;ポリアクリル酸(塩)及びこれらの架橋体、澱粉、セルロース、澱粉−セルロース誘導体、ポリビニルアルコール等の親水性高分子等が挙げられる。その他の物質は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
その他の物質の使用量は、特に限定されないが、その他の物質の全濃度としては、好ましくは10質量%以下である。
(重合開始剤)
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法において、使用される重合開始剤として、熱分解型重合開始剤が好ましく用いられる。該熱分解型重合開始剤は、熱によって分解しラジカルを発生する化合物を指すが、熱分解型重合開始剤の貯蔵安定性や吸水性樹脂の生産効率の観点から、10時間半減期温度(以下、「T10」と称する)が好ましくは0℃〜120℃、より好ましくは30℃〜100℃、更に好ましくは50℃〜80℃である水溶性の化合物が好ましく用いられる。
上記範囲のT10を有する熱分解型重合開始剤として、具体的には、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)等のアゾ化合物;過酸化水素、t−ブチルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド等の過酸化物等が挙げられる。これらのうち、2種以上を併用してもよい。
中でも、熱分解型重合開始剤の取扱性や吸水性樹脂の物性の観点から、好ましくは過硫酸塩、より好ましくは過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、更に好ましくは過硫酸ナトリウムが使用される。
上記熱分解型重合開始剤の使用量は、単量体及び重合開始剤の種類等に応じて適宜設定され、特に限定されないが、生産効率の観点から、単量体に対して、好ましくは0.001g/モル以上、より好ましくは0.005g/モル以上、更に好ましくは0.01g/モル以上である。また、吸水性樹脂の吸水性能向上の観点から、好ましくは2g/モル以下、より好ましくは1g/モル以下である。
また、必要に応じて、光分解型重合開始剤等、他の重合開始剤と併用することもできる。該光分解型重合開始剤として、具体的には、ベンゾイン誘導体、ベンジル誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体等が挙げられる。
上記熱分解型重合開始剤と他の重合開始剤とを併用する場合、全重合開始剤に占める熱分解型重合開始剤の割合は、好ましくは60モル%以上、より好ましくは80モル%以上である。
また、上記熱分解型重合開始剤と還元剤とを併用してレドックス系重合開始剤とすることもできる。上記レドックス系重合開始剤では、熱分解型重合開始剤が酸化剤として機能する。用いられる還元剤としては、特に限定されないが、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の(重)亜硫酸塩;第一鉄塩等の還元性金属塩;L−アスコルビン酸(塩)、アミン類等が挙げられる。
(単量体組成物の作製方法)
本工程において、単量体水溶液と重合開始剤とを含む単量体組成物が作製される。該単量体組成物を作製する方法は特に限定されないが、例えば、(1)単量体水溶液、及び重合開始剤を含む水溶液(以下、「重合開始剤水溶液」と称する)を予め用意しておき、それぞれ別の配管から同時に混合装置に供給して混合する方法、(2)予め用意した単量体水溶液を混合装置に供給した後に、重合開始剤を該混合装置に供給して混合する方法、(3)予め用意した単量体水溶液を混合装置に供給した後に、予め用意した重合開始剤水溶液を該混合装置に供給して混合する方法等が挙げられる。
また、混合装置としては、特に限定されないが、例えば、ラインミキサーやタンク等が挙げられる。重合開始剤の貯蔵安定性や安全性の観点から、混合装置としてラインミキサーを用いた上記(1)の混合方法が好ましい。
なお、上記単量体水溶液と上記重合開始剤(重合開始剤水溶液を含む)とをそれぞれ別の管路より、供給装置を介さずに直接、反応器に供給する方法を採用することもできる。つまりこの場合、単量体組成物が作製されることなく、上記単量体水溶液と上記重合開始剤(重合開始剤水溶液を含む)とがそれぞれ別個に反応器に供給される。
(単量体組成物中の単量体濃度)
本工程において、単量体組成物中の単量体濃度は、吸水性樹脂の物性及び生産性の観点から、好ましくは10質量%〜90質量%、より好ましくは20質量%〜80質量%、更に好ましくは30質量%〜70質量%である。また、狭義の単量体組成物中の単量体濃度としては、好ましくは10質量%〜90質量%、より好ましくは20質量%〜80質量%、更に好ましくは30質量%〜70質量%である。以下、狭義の単量体組成物中の単量体濃度を「モノマー濃度」と称する場合がある。
(単量体組成物の温度)
上記混合工程において得られた単量体組成物が、狭義の単量体組成物であり、熱分解型重合開始剤を含む場合、この単量体組成物の温度(以下、「Tm」と称する)は、後述する供給工程において有機溶媒に投入されるまでの間、少なくとも70℃を超えない温度に保持されることが好ましい。但し、この単量体組成物に含まれる熱分解型重合開始剤の中で最も低いT10が70℃よりも低い場合、Tmが、このT10よりも低い温度に保持されることが好ましい。なお、熱分解型重合開始剤のT10が不明の場合、そのT10を70℃と仮定して、単量体組成物の保持温度を設定するものとする。
単量体組成物の貯蔵安定性及び製造トラブルの回避という観点から、上記Tmと上記T10との差ΔT1(=T10−Tm)は、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、更に好ましくは20℃以上である。上限としては、コストの観点から、好ましくは50℃以下である。混合工程で作製された単量体組成物が、後述する有機溶媒を含んでおり、かつ一度も上記T10以上の温度になったことがない場合、前述の条件を満たすように、該単量体組成物のTmを設定することが好ましい。一方、上記単量体組成物が後述する有機溶媒を含み、かつこの単量体組成物が作製された時点で、そのTmがT10以上である場合、直ちに供給工程に供することが好ましい。
〔2−2〕供給工程
本工程は、上記混合工程で得られた単量体組成物を、反応装置に供給する工程である。
(供給装置)
上記混合工程で得られた単量体組成物は、供給装置を介して、好ましくは液滴状で、反応装置に供給される。該供給装置としては、該単量体組成物の液滴が生成できる装置であれば特に限定されないが、例えば、1又は2以上のオリフィス又はノズルから、該単量体組成物の液柱や液膜を吐出し、有機溶媒中で分裂させ液滴を発生させる装置が使用できる。具体的には、ニードル等の円筒ノズル;プレートに多数の孔を設けたオリフィスプレート;渦巻き噴射弁、ファインスプレーノズル、衝突型噴射弁等の1流体スプレー;2流体スプレー;3流体以上の多流体スプレー;回転ホイール等の遠心アトマイザー等が挙げられる。該供給装置の使用によって、上記単量体組成物は有機溶媒中に投入される。
生成される液滴の体積平均粒子径は、この液滴の分散状態や懸濁状態の安定性や有機溶媒からの熱移動効率の観点から、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1000μm以下、更に好ましくは800μm以下である。また、生産効率の観点から、生成される液滴の体積平均粒子径は、好ましくは1μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは50μm以上である。
なお、上記液滴の「体積平均粒子径」は、JIS Z 8825で規定される「粒子径解析−レーザ回析・散乱法」及びJIS Z 8819−2で規定される「粒子径測定結果の表現−第2部:粒子径分布からの平均粒子径又は平均粒子直径及びモーメントの計算」に準拠して算出する方法や、分散状態を撮影した写真の画像解析により算出する方法を用いることができる。
(供給時間)
配管の閉塞等の製造トラブルを回避するという観点から、上記混合工程で作製された単量体組成物が反応装置内の有機溶媒に投入されるまでの時間(以下、「供給時間」と称する)を、好ましくは20分以下、より好ましくは5分以下、更に好ましくは1分以下とする。なお、単量体組成物は作製された後、即時に有機溶媒に投入されることが理想的である。
(供給方法)
前述した通り、上記反応装置中の有機溶媒は、循環していることが好ましい。この場合、上記有機溶媒の循環する方向と並流となるように、上記単量体組成物を投入することが好ましい。この観点から、単量体組成物の投入方向と有機溶媒の循環方向とのなす角度は、90度以下が好ましく、より好ましくは70度以下、更に好ましくは50度以下、特に好ましくは30度以下である。理想的には、単量体組成物の投入方向と、有機溶媒の循環方向とが平行である。例えば、上記供給装置によって単量体組成物が円錐形に噴霧される場合、上記投入方向とは、この円錐の中心軸の方向を意味する。
〔2−3〕重合工程
本工程は、上記供給工程によって反応装置に供給された単量体組成物を重合して、含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」と称する)を得る工程である。
(有機溶媒)
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法において用いられる有機溶媒は、単量体組成物と相互に溶解しない、つまり、単量体組成物との相溶性が小さく、本質的に疎水性である有機化合物を指す。また、該有機溶媒は、本発明の吸水性樹脂の原料である単量体の重合反応に対して、本質的に不活性である。
上記有機溶媒として、具体的には、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、デカリン等の脂環状炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;クロルベンゼン、ブロムベンゼン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。なお、有機溶媒の入手容易性や品質安定性等の観点から、好ましくはn−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサンが使用される。
(W/O比)
上記有機溶媒の使用量は、反応装置の形状や容量等に応じて適宜設定されるものの、重合熱の除去及び生産効率の観点から、上記反応装置中に存在する単量体組成物の量Wと有機溶媒の量Oとの比(以下、「W/O比」と称する)は、好ましくは1容積%〜40容積%、より好ましくは2容積%〜30容積%、更に好ましくは3容積%〜20容積%である。
上記W/O比が40容積%を超える場合、重合熱の除熱が不十分となり、得られる吸水性樹脂の性能が悪化したり、突沸や液滴生成不良等の操作上のトラブルが発生しやすくなったりするため、好ましくない。一方、上記W/O比が1容積%未満の場合、有機溶媒の使用量の増加や反応装置の大型化につながり、原料的にも設備的にもコストが増大するため、好ましくない。なお、特に断りのない限り、単量体組成物及び有機溶媒の容積は、25℃、1気圧における容積である。
(比重調整剤)
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法において、好ましくは比重調整剤が、上記有機溶媒に配合される。該比重調整剤によって、本発明の重合時間が調整される。
上記比重調整剤としては、上記有機溶媒との相溶性が高く、重合反応を阻害しないものであればよく、その種類について特に限定されないが、例えば、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロクロロフルオロカーボン、アルコール類のフッ化物等の塩素系又はフッ素系の化合物が挙げられる。これらのうち、2種以上を併用してもよい。以下、これらの化合物が比重調整剤として配合された有機溶媒を「混合溶媒」と称する場合がある。なお、本発明における「有機溶媒」とは、特に断りのない限り、上記比重調整剤が配合された混合溶媒をも含む概念とする。
上記比重調整剤の使用量は、後述する単量体組成物と有機溶媒との密度差が得られるように、有機溶媒の種類等に応じて適宜設定される。
(分散助剤)
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法において、本発明の目的が達成される範囲内で、以下に例示する分散助剤を、上記有機溶媒に添加することもできる。該分散助剤として、特に限定されないが、好ましくは界面活性剤や高分子添加剤等が挙げられる。また、該分散助剤は、後述の乾燥工程における添加剤として好ましく使用することができる。
上記界面活性剤として、アニオン性、カチオン性、ノニオン性の界面活性剤、及びこれらの低分子型又は高分子型の界面活性剤を使用することができる。具体的には、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、N−アルキルグルコンアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル、及びポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルのリン酸エステル等が挙げられる。これらのうち、2種以上を併用してもよい。
上記高分子添加剤として、具体的には、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体(EPDM)、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・ブタジエン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、酸化型エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。中でも、単量体組成物の分散安定性の観点から、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、及び酸化型エチレン・プロピレン共重合体が好ましい。これらのうち、2種以上を併用してもよい。また、これらの高分子添加剤と上記界面活性剤とを併用してもよい。
上記分散助剤の使用量は、重合形態、単量体組成物及び有機溶媒の種類等に応じて適宜設定される。具体的には、有機溶媒中の分散助剤の濃度として、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0.05質量%以下である。本発明に係る製造方法において、分散助剤を使用しなくてもよい。
(反応装置)
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法において、重合反応が行われる反応装置の形状は特に限定されないが、連続式製造方法の場合、好ましくは、この反応装置内に満たされた有機溶媒中を上記単量体組成物が液滴状で移動しながら重合反応しうる形状である。このような反応装置として、例えば、管状の反応管を、縦型、横型又は螺旋型に配置した反応装置が挙げられる。この場合、該反応管の内径D(mm)と長さL(mm)との比(L/D)は、好ましくは2〜100,000、より好ましくは3〜50,000、更に好ましくは4〜20,000である。
上記比(L/D)を上記範囲内とすることで、上記単量体組成物の液滴が反応装置の内部を良好に移動するため、該液滴の滞留時間のバラつきが減少する。また、最終的に得られる含水ゲルの粒子径についてもバラつきが少ないものとなるため、得られる吸水性樹脂の性能も向上する。
また、上記反応装置には、必要に応じて、外部から反応装置内部の有機溶媒を加熱又は冷却できるように、温度調整手段が備えられていてもよい。該温度調整手段によって、反応装置内部の有機溶媒が所定の温度範囲に維持される。該温度調整手段としては、特に限定されないが、例えば、反応装置へのジャケットの設置、ヒーターの設置、保温材や断熱材の設置、熱風や冷風の供給等が挙げられる。なお、該反応装置に有機溶媒が再供給される場合、この有機溶媒は、熱交換器によって加熱されている。
また、上記反応装置の材質として、銅、チタン合金、SUS304、SUS316、SUS316L等のステンレス鋼、PTEE、PFA、FEP等のフッ素樹脂等を使用することができる。中でも、得られる含水ゲルの付着性の観点から、好ましくはフッ素樹脂、より好ましくは反応装置の内壁面に、フッ素樹脂加工等の表面加工が施されたものが使用される。
(重合温度)
本発明に係る製造方法では、反応装置内の上記有機溶媒の温度(以下、「Td」と称する)を重合温度とする。
上記単量体組成物が液滴状で有機溶媒に分散される場合、単量体組成物の温度は、有機溶媒からの熱移動によって速やかに上昇する。該液滴に含まれる重合開始剤が熱分解型重合開始剤の場合には、上記昇温に伴って熱分解型重合開始剤が分解してラジカルが発生する。発生したラジカルによって重合反応が開始し、重合反応の進行に伴って含水ゲルが形成される。形成された含水ゲルは、循環する有機溶媒によって反応装置の内部を移動し、有機溶媒と共に反応装置から排出される。
上記単量体組成物が熱分解型重合開始剤を含む場合、上記Tdは、重合率の観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは75℃以上、更に好ましくは80℃以上である。Tdの上限は特に限定されないが、安全性の観点から、用いられる有機溶媒の沸点を超えない範囲内で、適宜選択される。
上記Tdが70℃未満の場合、重合速度が遅くなり、得られる含水ゲルの重合率が低くなったり、得られる含水ゲルの粒子径が大きくバラついたりする場合がある。更に、重合率の低い含水ゲルを乾燥させると、乾燥中に含水ゲル同士が付着して一体化するという現象が発生することがある。
また、上記Tdは、重合効率の観点から、使用されている熱分解型重合開始剤のT10と同じであるか、またはT10よりも高くすることが好ましい。具体的には、TdとT10との差ΔT2(=Td−T10)は、好ましくは0℃以上、より好ましくは5℃以上、更に好ましくは7℃以上、特に好ましくは10℃以上である。差ΔT2の上限は、エネルギー効率の観点から、好ましくは50℃以下である。
上記ΔT2を上記範囲内とすることで、T10よりも低温に維持された単量体組成物が有機溶媒に投入された場合でも、速やかに重合反応が開始され、大きな重合速度が達成される。
なお、反応装置内の有機溶媒の温度は、単量体組成物が反応装置に供給されることにより変動する。特に、単量体組成物が供給される領域での温度変化が大きい。そのため、好ましくは、当該領域で所望するTdが得られるように、熱交換器で加熱した有機溶媒をこの領域に再供給するか、または、反応装置に設置されたジャケット等の温度調整手段によって反応装置内部の有機溶媒を加熱する。これにより、重合反応の開始や進行に寄与する反応装置内の有機溶媒の温度変化を抑制し、より精密にTdを制御することができる。
(重合時間)
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法において、「重合時間」とは、連続式製造方法の場合、単量体組成物の反応装置への投入時を起点とし、重合反応で得られた含水ゲルを反応装置から排出する時を終点として規定される時間である。例えば、単量体組成物が反応装置に液滴状で連続的に供給され、形成された含水ゲルが反応装置から連続的に排出される場合、一の単量体組成物の液滴が起点から終点に到達するまでに要する時間を意味する。換言すれば、単量体組成物の反応装置への供給開始から、最初の含水ゲルの反応装置からの排出までの時間が、重合時間である。該重合時間が液滴の反応装置内の滞留時間に相当する。
上記重合時間は、単量体及び重合開始剤の種類等に応じて制御されるが、生産効率の観点から、好ましくは20分以下、より好ましくは10分以下、更に好ましくは5分以下に制御される。また、該重合時間の下限値は特に限定されないが、上記反応装置内に供給された単量体組成物の液滴が重合温度まで昇温される際の、有機溶媒からの熱移動効率の観点から、好ましくは30秒以上に制御される。上記重合時間を上記範囲内に制御することで、反応装置のサイズを小さくすることができるため、好ましい。
なお、上記反応装置内で形成される単量体組成物の液滴は、ある程度の粒子径分布を有している。また、上記反応装置内を移動中に、単粒子以外にサイズの異なる凝集体を形成する場合もある。そのため、個々の液滴の重合時間が厳密には同一とは限らない。したがって、個々の液滴の重合時間は、上記範囲内であれば多少時間が異なっていてもよい。
(重合率)
本発明に係る製造方法では、上記重合時間は含水ゲルにおいて達成される重合率を指標として調整される。該重合率は、得られる含水ゲルの乾燥時の凝集抑制や、得られる吸水性樹脂中の残存モノマー低減の観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。重合率の上限は特に限定されないが、100質量%が理想的である。該重合率が70質量%未満の場合、かような低重合率の含水ゲルを乾燥させると、本願発明の方法を適用したとしても、乾燥中に強く凝集し塊状化する虞があるため、好ましくない。
(重合時間の調整方法)
本発明において、上記重合率を達成するための重合時間の調整方法は特に限定されないが、連続式製造方法の場合、例えば、反応装置の形状(即ち、反応管の長さや内径)や、有機溶媒の流速、有機溶媒の比重、単量体組成物の比重等によって調整することができる。
更に具体的に説明すると、反応装置として螺旋型反応装置を用いる場合、重合時間は、反応管の全長をその内部の有機溶媒の流速で除すことにより算出される有機溶媒の滞留時間を目安として、反応管の全長を変更することで調整することができる。上記有機溶媒の流速は、有機溶媒の流量と、反応管の断面積とに基づいて決定される。該有機溶媒の流量は、重合熱の除熱の観点から、単量体組成物の供給量に応じて適宜設定される。
上記螺旋型反応装置を用いる場合、有機溶媒の流速としては、好ましくは0.05m/s〜2.0m/s、より好ましくは0.1m/s〜1.0m/s、更に好ましくは0.2m/s〜0.5m/sである。螺旋型反応装置において、該流速が0.05m/s未満の場合、単量体組成物の液滴が沈降してしまい、反応管の底面に滞留してしまうため、好ましくない。一方、該流速が2.0m/sを超える場合、所望する重合時間とするには、非常に長い反応管が必要となりコストがかかること、更に所望する流量を得るには圧力損失が大きく、高圧のポンプが必要となるため、好ましくない。
また、反応装置として縦型反応装置を用いる場合、重合時間は、反応管の全長を、有機溶媒の流速と単量体組成物からなる液滴(又は含水ゲル)の終末沈降速度との和で除すことにより算出される時間単位の値を目安として、反応管の全長を変更することで調整することができる。
上記液滴及び含水ゲルの終末沈降速度は、液滴等の粒径の他に、単量体組成物と有機溶媒との密度差に依存する。そのため、重合時間を、単量体組成物と有機溶媒との密度差により調整することができる。単量体組成物と有機溶媒との密度差としては、好ましくは0.05g/ml〜0.40g/ml、より好ましくは0.10g/ml〜0.30g/mlである。
上記密度差が0.05g/ml未満の場合に、形成された含水ゲルに気泡が付着すると、含水ゲルの見掛けの密度が有機溶媒の密度より小さくなる。この結果、有機溶媒の流れ方向に逆行して含水ゲルが浮上することにより、トラブルの原因となる場合があり、好ましくない。一方、有機溶媒の密度が液滴又は含水ゲルの密度よりも小さく、その密度差が0.40g/mlを超える場合、終末沈降速度が速くなり、重合時間が極端に短くなるため、好ましくない。また、有機溶媒の密度が液滴又は含水ゲルの密度よりも大きくなった場合、含水ゲルが浮上することがある。そのような場合、反応管中の有機溶媒を下から上へ流すことで、この液滴及び含水ゲルの移動方向を該有機溶媒の移動方向と同じ(並流)にすることができる。並流とすることで、該液滴の移動が良好となるため、重合を安定的に行うことができる。
〔2−4〕分離工程
本工程は、上記重合工程において反応装置から排出された含水ゲルと有機溶媒とを分離して含水ゲルを得る工程である。
本発明において、分離装置の種類及び構造については特に限定されないが、例えば、ろ過、沈降、遠心分離、圧搾等の公知の方法を利用することができる。
本工程において有機溶媒と分離された含水ゲルは、適宜必要な工程に供される。具体的には、そのまま乾燥工程に供されることで吸水性樹脂とされてもよいし、更に粉砕工程、造粒工程、表面架橋工程、整粒工程等に供されることで吸水性樹脂とされてもよい。
(含水ゲルの形状)
本発明において、得られる含水ゲルの形状は球形である。上記含水ゲルの粒子径(以下「ゲル粒子径」と称する)は、得られる吸水性樹脂の用途等に応じて適宜調整される。
上記「球形」とは、真球状以外の形状(例えば、略球状)を含む概念であって、粒子の平均長径と平均短径との比(「真球度」とも称する)が好ましくは1.0〜3.0である粒子を意味する。該粒子の平均長径と平均短径は、顕微鏡で撮影された画像に基づいて測定される。本発明において、上記含水ゲルは、微小な球形ゲルの凝集体として形成されてもよく、微小な球形ゲルと該球形ゲルの凝集体との混合物として得られでもよい。
また、上記含水ゲルが球形ゲルの凝集体である場合、この凝集体を構成する各球形ゲルの粒子径を、1次粒子径と称する。本発明において、1次粒子径は特に制限されないが、乾燥工程において微粉発生を抑制できるという観点から、好ましくは1μm〜2000μm、より好ましくは5μm〜1000μm、更に好ましくは10μm〜800μmである。
(含水ゲルの固形分率)
本発明における含水ゲルの「固形分率」とは、下記実施例に記載した測定方法によって求められる値である。なお、吸水性樹脂の「固形分率」は、測定条件が異なるだけで、理論的な考え方は含水ゲルの「固形分率」と同じである。
後述する乾燥工程に供される含水ゲルの固形分率は、特に限定されないが、乾燥コストの観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、特に好ましくは45質量%以上である。該含水ゲルの固形分率の上限は、特に限定されないが、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、特に好ましくは60質量%以下である。上記範囲の固形分率である含水ゲルを後述の乾燥工程に供することにより、本発明の効果が顕著となる。
(含水ゲルの物性)
本発明における含水ゲルのCRC(遠心分離機保持容量)は、固形分率あたり、好ましくは5g/g〜80g/g、より好ましくは10g/g〜70g/g、更に好ましくは15g/g〜60g/g、特に好ましくは20g/g〜55g/gである。また、本発明における含水ゲルのExt(水可溶分)は、固形分率あたり、好ましくは20質量%未満、より好ましくは15質量%未満、更に好ましくは10質量%未満、特に好ましくは5質量%未満である。
上記のCRCやExtを有する含水ゲルが、下記の乾燥工程に供されて、乾燥される。下記乾燥を経ることによって、含水ゲルのCRCやExtに変化があってもよいし、変化がなくてもよいが、CRCが低い状態の含水ゲルを乾燥工程に導入し、乾燥後に目的とするCRCにまで上昇させることが好ましい。このとき、CRCの上昇度として、好ましくは+1g/g以上、より好ましくは+2g/g以上、更に好ましくは+3g/g以上、特に好ましくは+4g/g以上、最も好ましくは+5g/g以上である。
〔2−5〕乾燥工程
本工程は、上記分離工程で分離された含水ゲルを所望する固形分率となるまで乾燥させて、乾燥重合体を得る工程である。該含水ゲルを解砕又は造粒することで所望する粒子径又は粒度分布に調整した後に、乾燥工程に供してもよい。
また、上述した通り、本発明に係る製造方法で形成される含水ゲルの形状は、球形である。球形の含水ゲルを攪拌型乾燥装置で乾燥することで、球状の粒子からなる乾燥重合体が得られる。なお、本乾燥工程で得られる球状の粒子からなる乾燥重合体を、そのまま吸水性樹脂粉末とすることもできる。また、本発明においては、後述する表面架橋工程に供される乾燥重合体を、便宜上「吸水性樹脂粉末」と称する。
なお、上記含水ゲルを乾燥する公知の方法としては、例えば、伝導伝熱による乾燥、対流伝熱(例えば、熱風)による乾燥、減圧による乾燥、赤外線を用いた乾燥、マイクロ波を用いた乾燥、疎水性有機溶媒との共沸脱水による乾燥、高温の水蒸気(例えば、過熱水蒸気)を用いた乾燥等が挙げられる。
しかしながら、本発明において使用される乾燥装置としては、攪拌型乾燥装置が好ましく、連続式の攪拌型乾燥装置がより好ましい。該攪拌型乾燥装置を用いることで、上記含水ゲルの乾燥効率が高くなり、該含水ゲル中に残存している有機溶媒(以下、「残存有機溶媒」と称する)の回収が容易となるため、好ましい。更に、液相液滴連続重合で得られる粒度制御された含水ゲルを連続的に攪拌型乾燥装置で乾燥することで、分散助剤を使用しない、又は、吸水性樹脂の表面張力にほとんど影響しない程度の少量の分散助剤を含む含水ゲルであっても、大きな凝集物となったり塊状化したりすることがないため、好ましい。その結果、吸水性能等の物性に優れた粉末状又は粒子状の吸水性樹脂を、効率良く安定して製造することができる。一方、水溶液重合で得られる含水ゲルや、該含水ゲルをゲル粉砕して得られる粒子状含水ゲルについて、攪拌型乾燥装置を用いて連続的に乾燥する場合、凝集や塊状化を抑制するために、大量の分散助剤が必要であった。
本発明において、上記攪拌型乾燥装置の攪拌方式及び形態は特に限定されず、該乾燥装置内の内容物が、アーム、羽根、パドル等の攪拌翼や回転円筒等の攪拌手段により攪拌される形態であればよい。つまり、上記攪拌型乾燥装置として、内容物を収容する容器自体が回転、振動、揺動する容器回転型乾燥機;アーム、羽根、パドル等の攪拌翼を具備した回転軸で内容物を攪拌する機械攪拌型乾燥機;空気等の気体で内容物を浮遊させる浮遊攪拌型乾燥機;重力及び分岐板等で流路を分割する流路分割型乾燥機;高速せん断型乾燥機;衝撃型乾燥機等が挙げられる。これらの中でも、攪拌能力の高い乾燥機が好ましく選択される。また、これらの乾燥機は、連続式であってもバッチ式であってもよい。例えば、一軸又は二軸のディスク型乾燥機、一軸又は二軸のパドル型乾燥機、ロータリードライヤー、ロータリーキルン、チューブドライヤー等が挙げられる。具体的には、ナウタ―ミキサー、ソリッドエアーコンティニュエーター、トーラスディスク、ミクロンサーモプロセッサ(ホソカワミクロン株式会社製);コンダクションフロー、スーパーロータリードライヤー、フラッシュリアクター(株式会社大川原製作所製);カットデスクドライヤー(株式会社栗本鐵工所製);パドルドライヤ(株式会社奈良機械製作所製);レーディゲミキサー(株式会社マツボー製);スチームチューブドライヤー(宇部興産機械株式会社製);プローシエアミキサー(太平洋機工株式会社製);等の攪拌型乾燥機を使用することができる。
また、上述した攪拌型乾燥装置は、加熱手段を備えている。この加熱手段は、上記含水ゲルを所望する固形分率の乾燥重合体とするのに必要な熱量を加えることができる形態であればよく特に限定されないが、例えば、高圧蒸気や熱媒油、熱風等の熱媒を通すことができるジャケットや、スチームトレス、電熱線、マイクロ波、電磁誘導等の各種加熱手段から適宜選択すればよい。なお、これらの加熱手段は通常、乾燥装置の外側に設置されるが、乾燥装置の内側にも設置することができる。
本発明において、上記熱媒から内容物への伝熱を効率よく行うために、容積に対する伝熱面積が大きい攪拌型乾燥装置とすることが好ましい。該「容積に対する伝熱面積」とは、(伝熱面積/有効容積)で定義される比(単位;m−1)を意味する。該比が大きい値ほど伝熱効率が向上する。その結果、内容物の昇温速度が速くなるため、乾燥時間が短くなり、生産性向上に貢献する。なお、該比は、使用する攪拌型乾燥装置の仕様、形態、被乾燥物の形状等によって、適宜設定されるが、好ましくは10m−1以上、より好ましくは15m−1以上である。なお、有効容積とは、上記内容物が収容される乾燥室の容積であり、伝熱面積とは、上記乾燥室に収容された内容物に熱量を付加できる加熱面の面積である。
本発明において、上記攪拌型乾燥装置の材質は特に限定されないが、ステンレス鋼を使用することが好ましい。また内容物と接触する部分については、鏡面仕上げとされていることが好ましい。該鏡面仕上げは、電解研磨、サンドブラスト等の表面処理によって行うことができる。該鏡面仕上げによって攪拌型乾燥装置の内面を下記の表面粗さに調節することで、内容物が装置に付着する度合いが減少し、得られる吸水性樹脂の物性への悪影響が減少する。なお、上記ステンレス鋼としては、SUS304、SUS316、SUS316L等が挙げられる。また、ステンレス鋼以外にも、銅、チタン合金、PTEE、PFA、FEP等のフッ素樹脂等を使用することができる。
本発明において、乾燥工程に使用される上記攪拌型乾燥装置の内面は、JIS B 0601−2013で規定される表面粗さ(Rz)が、好ましくは2μm以下、以下順に1μm以下、900nm以下、500nm以下、300nm以下、200nm以下がより好ましく、最も好ましくは170nm以下に制御される。また、該表面粗さ(Rz)の下限として好ましくは0nmであるが、10nm又は20nm程度でもよい。なお、該表面粗さ(Rz)は、表面の凹凸に最大高さ(単位;nm)の最大値を意味する。
また、上記の表面粗さ(Rz)の他に、表面粗さ(Ra)もJIS B 0601−2013で規定されるが、その好ましい値も表面粗さ(Rz)と同じとされる。これらの表面粗さは、触針式表面粗さ測定器を用いて測定することができる。
本発明において、攪拌型乾燥装置として、アーム、羽根、パドル等の攪拌翼を具備した回転軸で内容物を攪拌する機械攪拌型乾燥機を使用する場合、その回転軸の回転数としては特に限定されないが、好ましくは5rpm〜300rpm、より好ましくは10rpm〜300rpm、更に好ましくは20rpm〜300rpmである。また、下記(式1)で定義される攪拌翼の周速(V)としては特に限定されないが、好ましくは0.15m/s〜10m/s、より好ましくは0.3m/s〜10m/s、更に好ましくは0.5m/s〜10m/sである
V(m/s)=2πrn/60 ・・・ (式1)
ここで、上記(式1)中、Vは攪拌翼の周速(単位;m/s)、rは攪拌翼の径(単位;m)、nは攪拌翼の回転数(単位;rpm)である。
本発明において、攪拌型乾燥装置として2つの平行回転軸と周面にディスクを備えた機械攪拌型乾燥機を使用する場合、ディスクや軸のセルフクリーニング性を向上させるために軸の回転数は異なっていてもよい。また、特開平6−233925号に開示されているように、異速回転するディスクに混練棒を備えた乾燥機とすることもできる。
本発明において、乾燥工程に使用される上記攪拌型乾燥装置の数は、1基のみでもよく、2基以上の複数でもよい。仕様の異なる複数の攪拌型乾燥装置を組み合わせて用いてもよい。また、上記攪拌型乾燥装置と、攪拌型乾燥装置に分類されない他の乾燥装置とを組み合わせて用いてもよい。少なくとも1基の上記攪拌型乾燥装置を含んでいる限り、組み合わせる乾燥装置の種類及び数は、限定されない。
なお、複数の乾燥装置を使用する場合、乾燥重合体の固形分率又は乾燥重合体中の残存有機溶媒の量を指標にして、装置の切替のタイミングを決定することができる。例えば、乾燥重合体の固形分率を指標とする場合、第1段目の乾燥装置で固形分率約70質量%まで乾燥し、その後、第2段目の乾燥装置に切り替えて所望する固形分率となるまで乾燥する形態、更に第2段目の乾燥装置で固形分率約85質量%まで乾燥し、その後、第3段目の乾燥装置に切り替えて所望する固形分率となるまで乾燥する形態等が挙げられる。また、乾燥重合体中の残存有機溶媒の量を指標とする場合、第1段目の乾燥装置で好ましくは10000ppm、より好ましくは5000ppmとなるまで残存有機溶媒の量を低減させ、その後、第2段目の乾燥装置に切り替えて所望する残存有機溶媒の量となるまで乾燥する形態等が挙げられる。攪拌型乾燥装置と他の乾燥装置とを組み合わせる場合、乾燥重合体の固形分率が小さい又は乾燥重合体中の残存有機溶媒の量が多い段階で、上記攪拌型乾燥装置を使用する形態が好ましい。
上記乾燥工程において、攪拌型乾燥装置内に滞留する含水ゲルの充填量は、使用する乾燥装置に応じて適宜設定することができる。通常、有効容積の5%〜100%とされるが、乾燥装置の効率的使用のため、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは30%以上とされる。
本発明において、上記攪拌型乾燥装置での乾燥時間は、得られる乾燥重合体又は吸水性樹脂の固形分率を指標として適宜調整されるため、特に限定されないが、好ましくは1分間〜120分間、より好ましくは3分間〜90分間、更に好ましくは10分間〜90分間、特に好ましくは20分間〜80分間、最も好ましくは30分間〜60分間である。なお、乾燥重合体又は吸水性樹脂の固形分率は、吸水性能の観点から、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%〜98質量%である。
また、上記攪拌型乾燥装置での乾燥温度は、乾燥速度の観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは140℃以上、特に好ましくは160℃以上である。該乾燥温度の上限は、乾燥重合体の劣化や着色、得られる吸水性樹脂の性能の観点から、好ましくは250℃以下、より好ましくは230℃以下、更に好ましくは200℃以下である。
また、上記攪拌型乾燥装置は、装置内を常圧、又は減圧状態とする機能を備えることもできる。減圧状態とする場合、大気圧に対する減圧度として、好ましくは0kPa超5kPa以下、より好ましくは0.1kPa〜2kPa、更に好ましくは0.1kPa〜0.5kPaである。かような減圧度とすることで、有機溶媒を効率的に回収することができ、乾燥工程における含水ゲルの凝集や塊状化を低減することができる。なお、「大気に対する減圧度」とは、大気圧との差圧を意味し、大気圧より低い気圧を正(プラス)の値として表現する。例えば、「大気圧が標準大気圧(101.3kPa)、大気圧に対する減圧度が10kPa」とは、気圧が91.3kPaであることを意味する。また、減圧とすることで乾燥温度をより低温とすることができる。具体的には、乾燥温度を好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上、更に好ましくは40℃以上とすることができる。
また、上記攪拌型乾燥装置は、装置内に、キャリアガスを導入する機能を備えることもできる。該キャリアガスとしては、特に限定されないが、例えば、空気、ドライエアー、窒素、水蒸気及びこれらの混合気体等が挙げられる。取扱性の観点から、好ましくは、ドライエアー、窒素、水蒸気及びこれらの混合気体等が用いられる。なお、該キャリアガスの導入量としては、含水ゲルの固形分率にもよるが、乾燥される含水ゲルの単位時間当たりの処理量(kg/hr)に対して、通常、0.05Nm/kg〜200Nm/kgとされるが、好ましくは0.1Nm/kg〜100Nm/kg、より好ましくは0.1Nm/kg〜50Nm/kg、更に好ましくは0.2Nm/kg〜25Nm/kg、特に好ましくは0.2Nm/kg〜10Nm/kgである。
本発明においては、上記キャリアガスを一箇所又は複数箇所から攪拌型乾燥装置に導入することで、攪拌型乾燥装置内部の雰囲気露点を調整することができる。換言すれば、該雰囲気露点は、攪拌型乾燥装置に投入される含水ゲルの固形分率に応じて適宜調整することができる。該雰囲気露点は、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは60℃以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは90℃以下である。攪拌型乾燥装置内部の雰囲気露点を上記範囲とすることで、乾燥状態が良くなり、その結果、得られる吸水性樹脂の性能が向上する。
また、上記攪拌型乾燥装置内におけるキャリアガスの移動方向は、この攪拌型乾燥装置内の含水ゲルの移動方向に対して、並流であっても向流であってもよく、これらが混ざったものでもよいが、乾燥効率の観点から、向流であることが好ましい。
また、本発明においては、上記キャリアガスとして高温の湿り混合気体(以下、「高湿混合気体」と称する)を用いることもできる。本願明細書において、高湿混合気体とは、水蒸気を含む混合気体を意味する。好ましくは、該高湿混合気体を、上記攪拌型乾燥装置中に形成された、含水ゲルを収容する乾燥室と高湿混合気体の流通管とを含む閉回路系に導入し、この閉回路系を循環させて使用する。なお、該高湿混合気体の温度は、好ましくは105℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは140℃以上である。上限値としては、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下である。また、該高湿混合気体の露点は、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上、特に好ましくは90℃以上である。
従来、酸素による吸水性樹脂の性能劣化及び変色抑制のためには、含水ゲルを窒素雰囲気下で乾燥させる必要があり、コストアップの原因となっていた。上記攪拌型乾燥装置を上記高湿混合気体の雰囲気とすることで、窒素の使用量を低減しても、又は窒素を使用せずとも、該乾燥装置内を低酸素状態とすることができる。その結果として、乾燥後の吸水性樹脂の性能向上と低着色とを達成することができる。更に、乾燥中の含水ゲルの凝集・塊状化を抑制することが可能となるため、好ましい。
なお、上記「低酸素状態」とは、上記攪拌型乾燥装置内の酸素濃度が低い状態を意味し、特に、含水ゲルを収容する乾燥室内の雰囲気中の酸素濃度が低い状態を意味する。この酸素濃度は、好ましくは15容積%以下、より好ましくは10容積%以下、更に好ましくは5容積%以下、特に好ましくは1容積%以下である。下限値としては0容積%が好ましいが、0.1容積%程度でもよい。
また、本発明に係る吸水性樹脂の製造方法においては、乾燥工程において、界面活性剤、高分子添加剤、無機微粒子、表面架橋剤、粉塵防止剤、乾燥した吸水性樹脂(微粉)、通液性向上剤等の添加剤を加えることが可能である。該添加剤としては、界面活性剤、高分子添加剤、無機微粒子、吸水性樹脂微粉及び表面架橋剤から選択される1又は2が好ましく、表面架橋剤がより好ましい。
上記添加剤の具体例として、以下の化合物を挙げることができる。なお、界面活性剤及び高分子添加剤については、上述した分散助剤に記載した化合物が挙げられる。
上記無機微粒子として、具体的には、タルク、カオリン、フラー土、ベントナイト、活性白土、重晶石、天然アスファルタム、ストロンチウム鉱石、イルメナイト、パーライト等の鉱産物;硫酸アルミニウム14〜18水塩(又はその無水物)、硫酸カリウムアルミニウム12水塩、硫酸ナトリウムアルミニウム12水塩、硫酸アンモニウムアルミニウム12水塩、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物類;その他の多価金属塩、多価金属酸化物及び多価金属水酸化物;親水性のアモルファスシリカ類;酸化ケイ素・酸化アルミ・酸化マグネシウム複合体、酸化ケイ素・酸化アルミニウム複合体、酸化ケイ素・酸化マグネシウム複合体等の酸化物複合体類;等が挙げられる。これらのうち、2種以上を併用してもよい。
上記吸水性樹脂微粉として、吸水性樹脂の製造工程で発生する粒子径が150μm未満の粒子が挙げられる。
上記表面架橋剤として、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサノール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリシドール等のエポキシ化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン等の多価アミン化合物及びこれらの無機塩又は有機塩;2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の多価イソシアネート化合物;ポリアジリジン等のアジリジン化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリン、ビスオキサゾリン、ポリオキサゾリン等の多価オキサゾリン化合物;尿素、チオ尿素、グアニジン、ジシアンジアミド、2−オキサゾリジノン等の炭酸誘導体;1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,3−ジオキサン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、4,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、1,3−ジオキソパン−2−オン等のアルキレンカーボネート化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物及びこれらの多価アミン付加物;オキセタン化合物;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノブロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤;亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、ジルコニウム等の水酸化物、塩化物、硫酸塩、硝酸塩又は炭酸塩等の多価金属化合物;等が挙げられる。これらのうち、2種以上を併用してもよい。
上記添加剤の乾燥工程における使用量は、得られる吸水性樹脂の表面張力に影響を及ぼさない範囲内で、添加剤の種類、含水ゲルの量、乾燥装置の種類等に応じて適宜設定される。具体的には、乾燥装置に投入される含水ゲルに対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。また、下限値としては好ましくは0.001質量%である。また、本発明に係る製造方法において、上記添加剤を使用しなくてもよい。
上記添加剤、特に界面活性剤、高分子添加剤、無機微粒子、吸水性樹脂微粉、表面架橋剤の添加によって、含水ゲルの流動性が向上し、凝集・塊状化をより効率的に防止することができる。なお、該添加剤の添加のタイミングは特に限定されず、(1)上記乾燥工程前、即ち、乾燥装置に投入する前の含水ゲルに加える方法、(2)上記乾燥工程と同時、即ち、上記含水ゲルと同時に乾燥装置に投入する方法、(3)上記乾燥工程の途中、即ち、乾燥装置に投入後、乾燥途中の含水ゲルに添加する方法等が適用できる。また、(1)〜(3)から選択した1以上の方法を組み合わせることもできる。更に、それぞれの方法を複数回に分割することもできる。中でも(1)の方法が好ましい。(3)の方法を採用する場合には、乾燥工程の前半(例えば、投入した含水ゲルを移動しながら乾燥する機能を備えた乾燥装置において、含水ゲルの投入口から乾燥装置の全長の50%までの間)で添加剤を加えることが好ましい。また、(1)〜(3)から選択した1以上の方法を組み合わせる場合、その組合せとして、(1)の方法で添加剤を添加した後、更に(2)及び/又は(3)の方法を適用して添加剤を添加する組合せ、(2)の方法で添加剤を添加した後、更に(3)の方法を適用して添加剤を添加する組合せ、及び(3)の方法で添加剤を添加した後、更に、(3)の方法を適用して添加剤を添加する組合せが例示される。(1)〜(3)のいずれか1つの方法で添加剤を添加した後、(3)の方法を適用する組合せが好ましい。即ち、乾燥工程の前、乾燥工程と同時又は乾燥工程の途中のいずれかにおいて、含水ゲル状架橋重合体に添加剤を添加した後、乾燥工程の途中において、含水ゲル状架橋重合体に更に添加剤を添加する方法である。
(具体的な実施形態)
図1には、本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の製造プロセスの一部(混合工程〜乾燥工程)が示されている。図示されている通り、該製造プロセスには、混合装置10、供給装置12、反応装置14、分離装置16、熱交換器18、送液ポンプ20、乾燥装置22並びにこれらの装置を連結する配管30、40、50及び60が含まれている。混合装置10には、単量体水溶液供給配管1及び重合開始剤供給配管2が接続されている。乾燥装置22には、乾燥重合体排出配管3が接続されている。
本発明の吸水性樹脂の製造方法の概略を、図1にしたがって説明する。
先ず、反応装置14、分離装置16、熱交換器18並びにこれらの装置を連結する配管40及び50の内部に有機溶媒を満たす。次に、該有機溶媒を送液ポンプ20を稼働させて循環させる。各装置及び配管中の有機溶媒は、熱交換器18で、所定温度に加熱される。熱交換器18で加熱された有機溶媒の一部は、供給装置12へも供給される。
次に、別途用意した単量体水溶液及び熱分解型重合開始剤を、それぞれ単量体水溶液供給配管1及び重合開始剤供給配管2を介して、混合装置10に連続供給して混合し、単量体組成物を作製する。その後、該単量体組成物を、配管30を介して供給装置12に連続供給する。この単量体組成物は、供給装置12によって液滴状で反応装置14の有機溶媒中に連続投入され、反応装置14において重合反応が開始される。反応装置14では、循環する有機溶媒の移動によって、単量体組成物からなる液滴が移動する。この液滴は、移動しながら、重合反応によって、含水ゲルに変化する。この液滴及び含水ゲルの移動方向は、該有機溶媒の移動方向と同じ(並流)である。本発明において、有機溶媒からなる液相に、単量体を含む液滴が分散又は懸濁した状態で、重合反応を開始して含水ゲルを得る重合方法を、液相液滴連続重合と称する。
続いて、上記液相液滴連続重合によって得られた含水ゲルは、有機溶媒と共に反応装置14から連続的に排出され、配管40を介して分離装置16に連続供給される。該分離装置16において、含水ゲルと有機溶媒とが連続的に分離される。分離された該含水ゲルは、配管60を介して次の工程(乾燥装置22)へ連続的に供給される。分離された有機溶媒は配管50を介して熱交換器18を経由して、反応装置14に連続的に再供給される。分離された有機溶媒の一部は、熱交換器18を経由して、供給装置12にも供給される。乾燥装置22では、含水ゲル状架橋重合体に含まれる水分と分離装置16で分離しきれなかった有機溶媒が除去され、粒子状の乾燥重合体とされる。粒子状の乾燥重合体は、乾燥重合体排出配管3から排出され、必要に応じて、次の工程に供給される。図示されないが、乾燥装置22により除去された有機溶媒は、反応装置14に再供給される。
以上説明した実施形態では、連続式製造が採用されており、この場合、各工程及び工程間におけるそれぞれの操作を連続的に実施できるため、各装置の停止及び再稼働に伴う閉塞等のトラブルを回避することができる。
〔2−6〕その他の工程
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法は、上述した各工程以外に、必要に応じて、粉砕工程、分級工程、表面架橋工程、整粒工程、微粉除去工程、造粒工程及び微粉再利用工程を含むことができる。また、輸送工程、貯蔵工程、梱包工程、保管工程等を更に含んでもよい。
(粉砕工程、分級工程)
上記乾燥工程で得られた粒子状の乾燥重合体は、必要に応じて、粉砕工程及び分級工程を経ることによって、粒子径又は粒度分布が制御された吸水性樹脂粉末とされる。
上記粉砕工程では、例えば、ロールミル、ハンマーミル、スクリューミル、ピンミル等の高速回転式粉砕機、振動ミル、ナックルタイプ粉砕機、円筒型ミキサー等が適宜選択されて用いられる。
上記分級工程では、例えば、JIS標準篩(JIS Z8801−1(2000))を用いた篩分級や気流分級等が適宜選択されて用いられる。
(表面架橋工程)
上記乾燥工程を経て得られる粒子状の乾燥重合体、即ち、吸水性樹脂粉末は、必要に応じて表面架橋工程に供される。この表面架橋工程は、吸水性樹脂粉末の表面層(吸水性樹脂粉末の表面から数10μmの部分)に架橋密度の高い部分を設ける工程である。なお、本発明においては、公知の表面架橋技術が適宜適用される。また、この表面架橋工程は、乾燥工程で表面架橋剤が添加される場合には、乾燥工程を含むものとする。
(整粒工程)
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法において、「整粒工程」とは、表面架橋工程を経て緩く凝集した吸水性樹脂粉末を解して粒子径を整える工程を意味する。なお、この整粒工程は、表面架橋工程以降の微粉除去工程、含水ゲルの解砕工程及び分級工程を含むものとする。
(微粉再利用工程)
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法において、「微粉再利用工程」とは、微粉をそのまま、又は微粉を造粒した後に何れかの工程に供給する工程を意味する。
〔3〕吸水性樹脂の物性
本発明に係る製造方法で得られる吸水性樹脂は、該吸水性樹脂を吸収性物品、特に紙オムツに使用する場合には、下記の(3−1)〜(3−6)に掲げた物性のうち、少なくとも1つ以上、好ましくはAAPを含めた2つ以上、より好ましくはAAPを含めた3つ以上、更に好ましくはAAPを含めた4つ以上、特に好ましくはAAPを含めた5つ以上、最も好ましくは全ての物性が、所望する範囲に制御されることが望まれる。以下の全ての物性が下記の範囲を満たさない場合、本発明の効果が十分に得られず、特に、紙オムツ一枚当たりの吸水性樹脂の使用量が多い、所謂、高濃度紙オムツにおいて十分な性能を発揮しないおそれがある。
〔3−1〕CRC(遠心分離機保持容量)
本発明の吸水性樹脂のCRC(遠心分離機保持容量)は、通常5g/g以上であり、好ましくは15g/g以上、より好ましくは25g/g以上である。上限値については特に限定されず、より高いCRCが好ましいが、他の物性とのバランスの観点から、好ましくは70g/g以下、より好ましくは50g/g以下、更に好ましくは40g/g以下である。
上記CRCが5g/g未満の場合、吸収量が少なく、紙オムツ等の吸収性物品の吸収体としては適さない。また、上記CRCが70g/gを超える場合、尿や血液等の体液等を吸収する速度が低下するため、高吸水速度タイプの紙オムツ等への使用に適さない。なお、CRCは、内部架橋剤や表面架橋剤等の種類や量を変更することで制御することができる。
〔3−2〕AAP(加圧下吸水倍率)
本発明の吸水性樹脂のAAP(加圧下吸水倍率)は、好ましくは20g/g以上、より好ましくは22g/g以上、更に好ましくは23g/g以上、特に好ましくは24g/g以上、最も好ましくは25g/g以上である。上限値については特に限定されないが、好ましくは30g/g以下である。
上記AAPが20g/g未満の場合、吸収体に圧力が加わった際の液の戻り量(「Re−Wet(リウェット)」と称する場合がある)が多くなるので、紙オムツ等の吸収性物品の吸収体としては適さない。なお、AAPは、粒度の調整や表面架橋剤の変更等により制御することができる。
〔3−3〕Ext(水可溶分)
本発明の吸水性樹脂のExt(水可溶分)は、通常50質量%以下であり、好ましくは35質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。下限については特に限定されないが、好ましくは0質量%、より好ましくは0.1質量%程度である。なお、本発明において「〜程度」とは±5%の誤差を含むことを意味する。
上記Extが50質量%を超える場合、ゲル強度が弱く、液透過性に劣った吸水性樹脂となるおそれがある。更に、リウェットが多くなるため、紙オムツ等の吸収性物品の吸収体としては適さない。なお、Extは、内部架橋剤等の種類や量の変更により制御することができる。
〔3−4〕残存モノマー量
本発明の吸水性樹脂に含まれる残存モノマー量は、安全性の観点から、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、更に好ましくは300ppm以下である。下限値については特に限定されないが、好ましくは0ppm、より好ましくは10ppm程度である。
上記残存モノマー量を上記範囲内とすることで、人体の皮膚等への刺激が軽減された吸水性樹脂が得られる。
〔3−5〕含水率
本発明の吸水性樹脂の含水率は、好ましくは0質量%を超えて20質量%以下、より好ましくは1質量%〜15質量%、更に好ましくは2質量%〜13質量%、特に好ましくは2質量%〜10質量%である。
上記含水率を上記範囲内とすることで、粉体特性(例えば、流動性、搬送性、耐ダメージ性等)に優れた吸水性樹脂が得られる。
〔3−6〕粒度
本発明の吸水性樹脂の質量平均粒子径(D50)は、好ましくは200μm〜700μm、より好ましくは250μm〜600μm、更に好ましくは250μm〜500μm、特に好ましくは300μm〜450μmである。また、粒子径150μm未満の粒子の割合は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。また、粒子径850μm以上の粒子の割合は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。換言すれば、この吸水性樹脂は、粒子径850μm未満の粒子を、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上含む。粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、好ましくは0.20〜0.50、より好ましくは0.25〜0.40、更に好ましくは0.27〜0.35である。
〔4〕吸水性樹脂の用途
本発明の吸水性樹脂の用途は、特に限定されないが、好ましくは紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品の吸収体用途が挙げられる。特に、原料由来の臭気、着色等が問題となっていた高濃度紙オムツの吸収体として使用することができる。更に、本発明に係る吸収性樹脂は、吸水時間に優れ、かつ粒度分布が制御されているので、上記吸収体の上層部に使用する場合に、顕著な効果が期待できる。
また、上記吸収体の原料として、上記吸水性樹脂と共にパルプ繊維等の吸収性材料を使用することもできる。この場合、吸収体中の吸水性樹脂の含有量(コア濃度)としては、好ましくは30質量%〜100質量%、より好ましくは40質量%〜100質量%、更に好ましくは50質量%〜100質量%、更により好ましくは60質量%〜100質量%、特に好ましくは70質量%〜100質量%、最も好ましくは75質量%〜95質量%である。
上記コア濃度を上記範囲とすることで、該吸収体を吸収性物品の上層部に使用した場合に、この吸収性物品を清浄感のある白色状態に保つことができる。更に、該吸収体は尿や血液等の体液等の拡散性に優れるため、効率的な液分配がなされることにより、吸収量の向上が見込める。
以下の実施例・比較例に従って本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの説明に限定解釈されるものではなく、各実施例に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施例も、本発明の範囲に含まれるものとする。
なお、実施例及び比較例で使用する電気機器(吸水性樹脂の物性測定用機器も含む)には、特に注釈のない限り、200V又は100Vの電源を使用した。また、本発明の吸水性樹脂の諸物性は、特に注釈のない限り、室温(20℃〜25℃)、相対湿度50%RH±10%の条件下で測定された。
また、便宜上、「リットル」を「l」又は「L」、「質量%」又は「重量%」を「wt%」と表記することがある。微量成分の測定を行う場合、検出限界以下をN.D(Non Detected)と表記する場合がある。
[含水ゲル及び吸水性樹脂の物性測定方法]
(a)CRC(遠心分離機保持容量)
本発明の吸水性樹脂のCRC(遠心分離機保持容量)を、EDANA法(ERT441.2−02)に準拠して測定した。また、含水ゲルのCRC(遠心分離機保持容量)は、試料として含水ゲルを0.4gに、自由膨潤時間を24時間に、それぞれ変更した以外はEDANA法(ERT441.2−02)と同様の操作を行った。更に、別途含水ゲルの固形分率αを測定し、含水ゲル0.4g中の吸水性樹脂の重量を求めた。下記(式2)にしたがって含水ゲルのCRCを算出した。
含水ゲルのCRC(g/g)={(mwi−mb)−msi×(α/100)}/{msi×(α/100)} ・・・ (式2)
ここで、msiは測定前の含水ゲルの質量(単位;g)、mbは自由膨潤し、脱水した後のBlank(不織布のみ)の質量(単位;g)、mwiは自由膨潤し、脱水した後の含水ゲルの質量(単位;g)、αは測定前の含水ゲルの固形分率(単位;質量%)である。
(b)AAP(加圧下吸水倍率)
本発明の吸水性樹脂のAAP(加圧下吸水倍率)を、EDANA法(ERT442.2−02)に準拠して測定した。なお、測定に当たり、荷重条件を4.83kPa(0.7psi)に変更した。
(c)Ext(水可溶分)
本発明の吸水性樹脂のExt(水可溶分)を、EDANA法(ERT470.2−02)に準拠して測定した。また、含水ゲルのExt(水可溶分)は、試料として含水ゲルを5.0gに、攪拌時間を24時間に、それぞれ変更した以外はEDANA法(ERT470.2−02)と同様の操作を行った。更に、別途含水ゲルの固形分率αを測定し、含水ゲル5.0g中の吸水性樹脂の重量を求めた。下記(式3)にしたがって含水ゲルのExtを算出した。
含水ゲルのExt(質量%)={(VHCl.s−VHCl.b)×CHCl×Mw×Fdil×100}/ms×(α/100)×1000 ・・・ (式3)
ここで、VHCl.sは溶解したポリマーを含む濾液をpH10からpH2.7にするのに必要なHCl量(単位;ml)、VHCl.bはBlank(0.9質量%塩化ナトリウム水溶液)をpH10からpH2.7にするのに必要なHCl量(単位;ml)、CHClはHCl溶液の濃度(単位;モル/l)、Mwはアクリル酸(塩)ポリマー中のモノマーユニットの平均分子量(単位;g/モル)、Fdilは溶解したポリマーを含む濾液の希釈度、msは測定前の含水ゲルの質量(単位;g)、αは測定前の含水ゲルの固形分率(単位;質量%)である。
(d)残存モノマー量
本発明の吸水性樹脂の残存モノマー量を、EDANA法(ERT410.2−02)に準拠して測定した。
(e)含水率
本発明の吸水性樹脂の含水率を、EDANA法(ERT430.2−02)に準拠して測定した。なお、本発明においては、試料量を1.0g、乾燥温度を180℃にそれぞれ変更して測定した。
(f)粒度
本発明の吸水性樹脂の粒度(粒度分布、質量平均粒子径(D50)及び粒度分布の対数標準偏差(σζ))を、米国特許第7638570号のカラム27、28に記載された方法に準拠して測定した。
(g)重合率
イオン交換水1000gに含水ゲル1.00gを投入し、300rpmで2時間攪拌した後に、ろ過することにより、不溶分を除去した。上記操作で得られたろ液中に抽出された単量体の量を、液体クロマトグラフを用いて測定した。該単量体の量を残存モノマー量m(g)としたときに、下記(式4)にしたがって、重合率C(質量%)を求めた。
C(質量%)=100×{1−m/(α・M/100)} ・・・ (式4)
ただし、(式4)中、Mは含水ゲルの質量(g)、αは含水ゲルの固形分率(質量%)を意味する。なお、固形分率は以下の手法によって求められる。
(h)含水ゲルの固形分率
底面の直径が50mmのアルミカップに含水ゲル2.00gを投入した後、試料(含水ゲル及びアルミカップ)の総質量W1(g)を正確に秤量した。次に、上記試料を、雰囲気温度180℃に設定されたオーブン内に静置した。24時間経過後、該試料を上記オーブンから取り出し、総質量W2(g)を正確に秤量した。本測定に供された含水ゲルの質量をM(g)としたときに、下記(式5)にしたがって、含水ゲルの固形分率α(質量%)を求めた。
α(質量%)=100−{(W1−W2)/M}×100 ・・・ (式5)
(i)ゲル粒子径及び一次粒子径
含水ゲルを光学顕微鏡(KH−3000、株式会社ハイロックス製)で撮影し、得られた画像から、一次粒子の短径と長径とを測定した。一次粒子10粒について測定し、その平均値を当該含水ゲルの一次粒子径とした。同様に、含水ゲル10粒を上記光学顕微鏡で撮影して得られた画像から、各含水ゲルの短径と長径とを測定し、その平均値を当該含水ゲルのゲル粒子径とした。
(j)表面張力
十分に洗浄された容量100mlのビーカーに、23℃〜25℃に調温された0.9質量%の塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)50mlを投入し、該生理食塩水の表面張力を表面張力計(自動表面張力計K11、クルス社製)を用いて測定した。なお、該測定方法では、生理食塩水の表面張力の測定値が71mN/m〜75mN/mの範囲内となる必要がある。該測定値が範囲外となった場合には、再度、初めからやり直す必要がある。
続いて、上記表面張力を測定した生理食塩水に、十分に洗浄された25mm長のフッ素樹脂製の回転子と吸水性樹脂0.5gとを投入し、500rpmで4分間攪拌した。その後、攪拌を停止して、含水した吸水性樹脂を沈降させ、上澄み液について、上記と同様の手法により表面張力を測定した。
なお、本発明の測定では、白金プレートを用いるプレート法を採用した。また、測定に用いる白金プレートは各測定前に十分洗浄し、かつ、バーナーを用いて加熱洗浄した。
[製造例1]
図1に示した製造プロセスに従って含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」と称する)(1)を製造した。
なお、混合装置としてスタティックミキサー(株式会社ノリタケカンパニーリミテド製、型式:T3−15)、供給装置として2流体スプレー(外部混合型、ノズル内径:0.70mm、補助流体:後述の混合溶媒、形式:SETO07507S303+TS303、株式会社いけうち製)、反応装置としてPFA製チューブ(内径:25mm、全長:10m)を縦に配置したもの、分離装置として重力沈降を利用した固液分離装置を、それぞれ使用した。
重合反応の準備段階として、有機溶媒としてn−ヘプタン及びハイドロフルオロエーテル(商品名:Novec(登録商標)7300、住友スリーエム株式会社製)を質量比1.0:0.8で混合して得た混合溶媒(比重:0.9g/ml)を有機溶媒として、上記2流体スプレーの補助流体用流路、上記反応装置、上記分離装置及びこれらを接続する配管内に投入した。
続いて、送液ポンプを稼働させて、流量600ml/分で、有機溶媒の循環を開始した。この製造例では、循環させた有機溶媒の経路を、2流体スプレーを介して反応装置に投入する経路と、直接反応装置に投入する経路とに分岐させた。2流体スプレーを介して反応装置に投入される有機溶媒の流量を240ml/分とし、直接反応装置に投入される有機溶媒の流量を360ml/分とした。また、熱交換器を稼働させて、設定温度が85℃となるように、上記有機溶媒を加熱した。
次に、アクリル酸、48.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液及びイオン交換水を混合し、更に、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均重合度:9)及びジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウムを配合することで、単量体水溶液(1)を作製した。該単量体水溶液(1)に、液温を25℃に保ちながら窒素ガスを吹き込むことで窒素置換を行った。また、別途、過硫酸ナトリウム及びイオン交換水を混合することで、10質量%の過硫酸ナトリウム水溶液(1)を作製した。該過硫酸ナトリウム水溶液(1)に窒素ガスを吹き込むことで窒素置換を行った。
続いて、上記操作で得られた単量体水溶液(1)と過硫酸ナトリウム水溶液(1)とを、それぞれ別個に上記混合装置に供給して混合することで、単量体組成物(1)を作製した。該単量体組成物(1)のモノマー濃度は43質量%、中和率は70モル%であった。また、内部架橋剤であるポリエチレングリコールジアクリレートは単量体に対して0.02モル%、キレート剤であるジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウムは単量体に対して100ppm、重合開始剤である過硫酸ナトリウムは単量体に対して0.1g/モルであった。
次に、上記混合工程で作製した単量体組成物(1)を、速やかに上記2流体スプレーの単量体組成物用流路に送液した。その後、上記2流体スプレーを用いて、流量20ml/分(23.6g/分)で、単量体組成物(1)を上記反応装置内に噴霧した。該単量体組成物(1)は、該有機溶媒の循環方向と同じ方向(並流)となるように噴霧した。なお、該有機溶媒に噴霧する前の単量体組成物(1)の液温を25℃に保持した。
上記2流体スプレーによって投入された上記単量体組成物(1)は、上記有機溶媒中で液滴状(液滴径;100μm〜250μm)に分散した。上記単量体組成物(1)と上記有機溶媒との比(W/O比)は、3.3容積%であった。
上記単量体組成物(1)からなる液滴は、上記有機溶媒が満たされた反応装置内を落下しながら、重合反応の進行に伴って微小な球形ゲルに変化した。これらの微小な球形ゲルは、落下するに従って相互に付着して凝集体を形成した。そして、該反応装置の排出口付近において、微小な球形ゲルの凝集体からなる直径1〜2cmの含水ゲル(1)を確認した。
上記一連の操作で得られた含水ゲル(1)は、上記有機溶媒と共に連続的に反応装置から排出された。なお、単量体組成物(1)の反応装置への投入開始から、最初の含水ゲル(1)の反応装置からの排出までの重合時間は190秒であった。
上記反応装置から排出された含水ゲル(1)と有機溶媒とは、そのまま分離装置に連続的に供給された。該分離装置において、重力沈降を利用して、該含水ゲル(1)と有機溶媒とを分離した。なお、該分離装置で分離された有機溶媒は、設定温度が90℃となるように熱交換器で調温した後、再度、反応装置に供給した。
上記操作で得られた含水ゲル(1)は、微小な球形の含水ゲルが付着凝集した形状をしており、一次粒子径は250μm、ゲル固形分率は44質量%であり、重合率は91質量%であった。含水ゲル(1)のCRCは、33g/gであった。
[実施例1]
実施例1では、攪拌型乾燥装置として、容量5Lの間接加熱式攪拌型乾燥機(形式:CD−80、株式会社栗本鐵工所製)を使用した。上記間接加熱式攪拌型乾燥機は、中空扇形カットディスク攪拌盤と、ジャケットとを備えている。
上記間接加熱式攪拌型乾燥機に、単位時間当たりの処理量3.0kg/hrで含水ゲル(1)を連続的に投入すると共に、予め準備したポリエチレングリコール400(PEG400)のエタノール溶液(濃度20質量%)を投入した。含水ゲル(1)に対するPEG400エタノール溶液の量は2.5質量%であった。続いて、上記攪拌盤の回転軸及びジャケットの温度をそれぞれ200℃に調整して、上記含水ゲル(1)を、PEG400と混合しながら、連続乾燥を行って、粒子状の乾燥重合体(1)を得た。連続乾燥中、該間接加熱式攪拌型乾燥機内の雰囲気露点は85℃であり、酸素濃度9.0容積%であった。上記含水ゲル(1)の間接加熱式攪拌型乾燥機内の滞留量は1.2kgであり、平均滞留時間は45分間であった。
上記粒子状の乾燥重合体(1)を目開き8mmのJIS標準篩を用いて分級し、この篩の通過物を採取して、吸水性樹脂粉末(1)を得た。なお、該分級操作において、上から軽く押さえても解れないほどの固い凝集物はほとんど確認されず、該篩上に残存した量は、全体の0.7質量%であった。また、得られた吸水性樹脂粉末(1)のCRC(遠心分離機保持容量)は52g/g、含水率は4質量%、粒子径が150μm未満である粒子の割合は0.3質量%であった。
[比較例1]
製造例1で得られた含水ゲル(1)の乾燥に通気ベルト型乾燥機を使用した以外は実施例1と同様の操作を行って、比較乾燥重合体(1)を得た。
なお、乾燥後に得られた比較乾燥重合体(1)は、1層の板状の強固な凝集物であり、目開き8mmのJIS標準篩を通過する粒子はほとんどなかった。当該比較乾燥重合体(1)を、ハンマーを用いて解砕した後、市販の卓上式粉砕機で粉砕した。得られた比較乾燥重合体(1)の粉砕物を、目開き8mmのJIS標準篩で分級し、この篩の通過物を、比較吸水性樹脂粉末(1)として採取した。
得られた比較吸水性樹脂粉末(1)のCRC(遠心分離機保持容量)は50g/g、含水率は4質量%、粒子径が150μm未満である粒子の割合は10質量%であった。
[実施例2]
実施例1において、間接加熱式攪拌型乾燥機内の雰囲気露点を60℃に変更した以外は実施例1と同様の操作を行って、吸水性樹脂粉末(2)を得た。なお、該分級操作において、上から軽く押さえても解れないほどの固い凝集物はほとんど確認されず、該篩上に残存した量は、全体の1.4質量%であった。また、得られた吸水性樹脂粉末(2)のCRC(遠心分離機保持容量)は53g/g、含水率は3.5質量%、粒子径が150μm未満である粒子の割合は0.2質量%であった。
[実施例3]
実施例1において、間接加熱式攪拌型乾燥機内の回転軸及びジャケットの温度をそれぞれ150℃に変更した以外は実施例1と同様の操作を行って、吸水性樹脂粉末(3)を得た。なお、該分級操作において、上から軽く押さえても解れないほどの固い凝集物はほとんど確認されず、該篩上に残存した量は、全体の3.0質量%であった。また、得られた吸水性樹脂粉末(3)のCRC(遠心分離機保持容量)は45g/g、含水率は15.0質量%、粒子径が150μm未満である粒子の割合は0.0質量%であった。
[実施例4]
実施例1において、乾燥時に、PEG400に代えて、100質量部の含水ゲル(1)に対し、0.5質量部の表面処理剤としてデナコールEX−810(ナガセケムテックス(株)製のエポキシ系化合物)を添加した以外は実施例1と同様の操作を行って、吸水性樹脂粉末(4)を得た。なお、該分級操作において、上から軽く押さえても解れないほどの固い凝集物はほとんど確認されず、該篩上に残存した量は、全体の0.0質量%であった。また、得られた吸水性樹脂粉末(4)のCRC(遠心分離機保持容量)は45g/g、含水率は3質量%、粒子径が150μm未満である粒子の割合は0.5質量%であった。
[実施例5]
実施例1において、乾燥時に、PEG400に代えて、100質量部の含水ゲル(1)に対し5質量部の吸水性樹脂の微粉を追加添加した以外は実施例1と同様の操作を行って、吸水性樹脂粉末(5)を得た。なお、該分級操作において、上から軽く押さえても解れないほどの固い凝集物はほとんど確認されず、該篩上に残存した量は、全体の2.0質量%であった。また、得られた吸水性樹脂粉末(5)のCRC(遠心分離機保持容量)は50g/g、含水率は4質量%、粒子径が150μm未満である粒子の割合は1.0質量%であった。
[実施例6]
実施例1において、乾燥時に、PEG400に代えて、100質量部の含水ゲル(1)に対し2質量部の硫酸アルミニウムを添加した以外は実施例1と同様の操作を行って、吸水性樹脂粉末(6)を得た。なお、該分級操作において、上から軽く押さえても解れないほどの固い凝集物はほとんど確認されず、該篩上に残存した量は、全体の1質量%であった。また、得られた吸水性樹脂粉末(6)のCRC(遠心分離機保持容量)は51g/g、含水率は5質量%、粒子径が150μm未満である粒子の割合は0.3質量%であった。
[実施例7]
実施例1において、PEG400のエタノール溶液を、乾燥途中の含水ゲル(1)に添加した以外は実施例1と同様の操作を行って、吸水性樹脂粉末(7)を得た。このPEG400のエタノール溶液の添加位置は、乾燥機の前半部分(含水ゲルの投入口から乾燥器の全長の50%までの領域)であった。なお、該分級操作において、上から軽く押さえても解れないほどの固い凝集物はほとんど確認されず、該篩上に残存した量は、全体の0.3質量%であった。また、得られた吸水性樹脂粉末(7)のCRC(遠心分離機保持容量)は52g/g、含水率は4質量%、粒子径が150μm未満である粒子の割合は0.4質量%であった。
[実施例8]
実施例8では、攪拌型乾燥装置として、容量110Lの間接加熱式攪拌型乾燥機(形式:SJS−10−6、ホソカワミクロン株式会社製/ソリッドエアー(登録商標))を使用した。上記間接加熱式攪拌型乾燥機は、内径0.25mの水平円筒状の乾燥容器、ジャケット及びパドルを備えている。なお、ジャケットは乾燥容器内に設置され、パドルは乾燥容器の中心部のシャフト(直径0.1m)に設置されている。
上記間接加熱式攪拌型乾燥機に、単位時間当たりの処理量15kg/hrで含水ゲル(1)を連続的にスクリューフィーダーを用いて投入すると共に、予め準備したポリエチレングリコール400(PEG400)のエタノール溶液(濃度20質量%)を投入した。含水ゲル(1)に対するPEG400エタノール溶液の量は2.5質量%であった。同時に、165℃に加熱されたドライエアー120Nl/minを含水ゲル(1)の進行方向に対して向流で上記乾燥容器内に吹き込みながら、連続乾燥を行って、粒子状の乾燥重合体(8)を得た。
連続乾燥中、該間接加熱式攪拌型乾燥機内の雰囲気露点は85℃であり、酸素濃度9.0容積%であった。また、このときの平均滞留時間は2.5分間であった。なお、上記間接加熱式攪拌型乾燥機のジャケット温度は180℃、シャフトの回転数は750rpm(周速9.8m/s)に設定した。
上記粒子状の乾燥重合体(8)を目開き8mmのJIS標準篩を用いて分級し、この篩の通過物を採取して、吸水性樹脂粉末(8)を得た。なお、該分級操作において、上から軽く押さえても解れないほどの固い凝集物はほとんど確認されなかった。また、得られた吸水性樹脂粉末(8)のCRC(遠心分離機保持容量)は47g/g、含水率は9質量%、粒子径が150μm未満である粒子の割合は1.0質量%であった。
以上、実施例1から8及び比較例1に示される通り、本発明の優位性は明らかである。本発明に係る吸水性樹脂の製造方法によれば、短時間で、効率よく、吸水性樹脂を製造することができる。
本発明によって得られる吸水性樹脂は、紙オムツ等の衛生用品の吸収体用途に適している。
1・・・単量体水溶液供給配管
2・・・重合開始剤供給配管
3・・・乾燥重合体排出配管
10・・・混合装置
12・・・供給装置
14・・・反応装置
16・・・分離装置
18・・・熱交換器
20・・・送液ポンプ
22・・・乾燥装置
30、40、50、60・・・配管

Claims (13)

  1. 液相液滴連続重合によって、吸水性樹脂の原料である単量体を含む液滴から、含水ゲル状架橋重合体を得る重合工程と、
    上記含水ゲル状架橋重合体を連続的に乾燥して、粒子状の乾燥重合体を得る乾燥工程とを含む、吸水性樹脂の製造方法であって、
    上記含水ゲル状架橋重合体が、球形ゲルの凝集体であり、この球形ゲルの1次粒子径が1μm〜2000μmであり、
    上記乾燥工程の少なくとも一部において、攪拌型乾燥装置が用いられる吸水性樹脂の製造方法。
  2. 上記液相液滴連続重合の液相が有機溶媒であり、この有機溶媒が循環されており、
    上記液相液滴連続重合が、上記単量体を含む液滴を、上記有機溶媒中に、この有機溶媒と並流となるように連続的に投入することで行われる請求項に記載の製造方法。
  3. 上記含水ゲル状架橋重合体が有機溶媒を含んでおり、上記乾燥工程において、この含水ゲル状架橋重合体中の有機溶媒を回収し、上記重合工程において再使用する請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 上記乾燥工程において、上記含水ゲル状架橋重合体を、酸素濃度10容積%以下の雰囲気下で乾燥させる請求項1からのいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 上記乾燥工程に供される含水ゲル状架橋重合体の重合率が70質量%〜100質量%である請求項1からのいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 上記乾燥工程において、上記攪拌型乾燥装置内部の雰囲気露点を40℃以上90℃以下とする、請求項1からのいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 上記乾燥工程での乾燥温度が120℃〜250℃である、請求項1からのいずれか1項に記載の製造方法。
  8. 上記乾燥工程の前、乾燥工程と同時又は乾燥工程の途中のいずれかにおいて、上記含水ゲル状架橋重合体に添加剤を添加する請求項1からのいずれか1項に記載の製造方法。
  9. 上記添加剤が、界面活性剤、高分子添加剤、無機微粒子、吸水性樹脂微粉、表面架橋剤から選択された1又は2以上である、請求項に記載の製造方法。
  10. 上記添加剤が表面架橋剤であり、この表面架橋剤が、多価金属イオン、エポキシ系化合物、オキサゾリン系化合物から選択された1又は2以上である、請求項8又は9に記載の製造方法。
  11. 上記添加剤を、上記乾燥工程の途中において、上記含水ゲル状架橋重合体に更に添加する、請求項8から10のいずれか1項に記載の製造方法。
  12. 上記添加剤を、上記乾燥工程の前半で添加する、請求項8から11のいずれか1項に記載の製造方法。
  13. 上記乾燥工程に供される含水ゲル状架橋重合体の固形分率が35〜90%である、請求項1から12のいずれか1項に記載の製造方法。
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