JP3871434B2 - 高吸水性樹脂の製法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、衛生品等に使用される高吸水性樹脂の製法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
高吸水性樹脂は、衛生用品分野で、幼児用、大人用もしくは失禁者用の紙おむつ(使い捨ておむつ)又は婦人用の生理用ナプキン等の吸収性物品における吸水性物質として使用されている。
現在、高吸水性樹脂としては、ポリアクリル酸系高吸水性樹脂がその主流を占めている。
【0003】
水溶性ビニルモノマー、とりわけアクリル酸モノマーの重合により行われる高吸水性樹脂の製法において、重合開始剤として一般に、過硫酸塩、過酸化物、アゾ化合物、過酸化物と還元剤を組み合わせるレドックス系開始剤等が用いられるが、実際に工業的生産を考えた場合、過酸化物は爆発の危険性を有するなど取り扱いに注意を要するものが多く好ましくない。過硫酸塩は安価で安全性も高く、もっとも一般的に使用されているが、重合開始能とともに自己架橋も併発することが知られている。高吸水能を有する吸水性樹脂を得る場合、架橋度を下げることが要求されるが、過硫酸塩を使用すると自己架橋が起こるために十分な吸水能を有する樹脂が得られない。自己架橋を抑えるために過硫酸塩の使用量を減らすことが特開平6−287233号公報に開示されているが、過硫酸塩の減量は実質的に開始剤を減らすことになるため、重合率の低下とそれによる未反応モノマー量の増加、重合の不安定化を招きやすい。アゾ化合物を開始剤として用いれば自己架橋は抑えられるが、重合率が低く未反応モノマー量が多い上、現状では単価が経済上不利となる。
【0004】
また、架橋度の低い樹脂は含水したゲルの状態での強度、すなわち加圧状態での保型性や吸水能、経時安定性等が不十分となり易い。この含水ゲルの耐久性等の向上を目的として、最近、特定のチタン化合物を含有させる方法(特開平6−306118号公報及び同7−62252号公報)等があるが、高吸水性樹脂に添加剤を加える方法は、実生産において、添加設備の増設、工程の複雑化を招き、経済上不利となる。
【0005】
従って、本発明の目的は、高吸水倍率を有し、しかも、含水状態での経時安定性が良好な吸水性樹脂を、添加剤等を加えることなく簡便に且つ安価に、再現良く製造する方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、水溶性ビニルモノマー(以下、モノマーという)水溶液を、疎水性有機溶媒を含有する分散媒中へ供給し、逆相懸濁重合して高吸水性樹脂を得るに際し、モノマー全体量の25重量%が上記分散媒中へ供給される迄の該分散媒中への供給モノマー水溶液のモノマー最低濃度(a1 重量%)と、これ以降の該分散媒中への供給モノマー水溶液のモノマー最低濃度(a2 重量%)とを比較したとき、a1 <a2 であることを特徴とする高吸水性樹脂の製法を提供することにより、上記目的を達成したものである
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の高吸水性樹脂の製法について詳細に説明する。
本発明に用いられるモノマーとしては、水溶性で、重合性の不飽和基を有する種々のビニルモノマーが挙げられ、具体的には、オレフィン系不飽和カルボン酸又はその塩、オレフィン系不飽和カルボン酸エステル、オレフィン系不飽和スルホン酸又はその塩、オレフィン系不飽和リン酸又はその塩、オレフィン系不飽和リン酸エステル、オレフィン系不飽和アミン、オレフィン系不飽和アンモニウム、及びオレフィン系不飽和アミドなどの重合性不飽和基を有するビニルモノマーが例示される。
これらの中でも、特にオレフィン系不飽和カルボン酸及びその塩が好ましく用いられ、更に好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、及びこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩が用いられ、一層好ましくは、アクリル酸、アクリル酸アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、及びアクリル酸アンモニウム塩が用いられる。
これらのモノマーは1種以上で使用することができる。
【0008】
また、モノマーは、これと共重合し得る水不溶性ビニルモノマーと併用することもできる。該水不溶性ビニルモノマーとしては、例えば、炭素数1〜18のアルキル基を有するアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸などの不飽和カルボン酸エステルモノマーなどが挙げられる。
この場合、モノマーは、全ビニルモノマー中に50重量%以上、特に70重量%以上含有していることが好ましい。
【0009】
本発明に用いられる分散媒は、重合に不活性な疎水性有機溶媒を含有する。
疎水性有機溶媒としては、例えば、n−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素、n−ブチルアルコール、n−アミルアルコールなどの炭素数4〜6の脂肪族アルコール、メチルエチルケトンなどの脂肪族ケトン、酢酸エチルなどの脂肪族エステル類などを挙げることができる。これらの疎水性有機溶媒は1種以上で使用することができる。
【0010】
疎水性有機溶媒の使用量は、モノマー又はモノマー水溶液100重量部に対して、通常、好ましくは50〜500重量部、更に好ましくは100〜500重量部である。
【0011】
また、上記分散媒には、上記疎水性有機溶媒以外に、両親媒性の溶剤を加えてもよい。該両親媒性の溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、及び2−プロパノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、及びテトラヒドロフラン及びジオキサンなどのエーテル類が挙げられる。該両親媒性の溶剤の使用量は、該疎水性有機溶媒との合計量で、モノマー100重量部に対し500重量部までの量であることが好ましい。
【0012】
本発明において、モノマー全体量の25重量%、更に好ましくは10重量%が上記分散媒中へ供給される迄の該分散媒中への供給モノマー水溶液のモノマー最低濃度(a1 重量%)と、これ以降の該分散媒中への供給モノマー水溶液のモノマー最低濃度(a2 重量%)とを比較したとき、a1 <a2 である。a1 は好ましくは1〜50、更に好ましくは10〜50であり、a2 は好ましくは10〜60、更に好ましくは20〜60である。上記分散媒中への供給モノマー水溶液のモノマー濃度は、分散媒中に添加される水及び水溶性成分の全ての中におけるモノマーの占める割合を示すものである。従って、モノマー濃度を上記の濃度に調整するには、あらかじめモノマー水溶液中に水を加えることによる方法の他に、モノマーを分散媒中に添加する際に、同時に並行して水を分散媒中に添加する方法や、あらかじめ所定量の水を分散媒中に共存させておき、ここへモノマー水溶液を添加する方法によっても良い。a1 <a2 の条件が満足されない場合には、得られた高吸水性樹脂の含水状態での経時安定性が低下するため、本発明の目的を達成できない。
【0013】
上記分散媒中への供給モノマー水溶液のモノマー濃度は、モノマー供給開始時に、最低濃度とすることがさらに好ましい。
【0014】
本発明における逆相懸濁重合に際してのモノマーの重合温度は、好ましくは20〜120℃、更に好ましくは40〜100℃である。
【0015】
本発明における逆相懸濁重合に際しては、分散剤を用いることができる。
分散剤としては、例えば、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノラウレート及びポリオキシメチレンソルビタンモノオレート等のソルビタン脂肪酸エステル、トリメチルステアリルアンモニウムクロリド及びカルボキシメチルジメチルセチルアンモニウム等の陽オン性及び両性の界面活性剤、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸エステルナトリウム塩及びドデシルエーテル硫酸エステルナトリウム塩等の陰イオン性界面活性剤、アルキルグルコシド等のグリコシド化合物、エチルセルロース及びベンジルセルロース等のセルロースエーテル、セルロースアセテート、セルロースブチレート及びセルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル、マレイン化ポリブタジエン、マレイン化ポリエチレン、マレイン化α−オレフィン、スチレン−ジメチルアミノエチルメタクリレート4級塩及びイソプロピルメタクリレート−ジメチルアミノエチルメタクリレート4級塩等の高分子分散剤を挙げることができる。
上記分散剤としては、上述した化合物の中でもイオン性界面活性剤を用いるのが好ましく、更には、陰イオン性界面活性剤を用いるのが好ましい。
これらの分散剤は1種以上で使用することができる。
【0016】
また、本発明における逆相懸濁重合に際しては、公知の重合開始剤が用いられる。例えば、ジアルキルパーオキシド、ハイドロパーオキシド類、過硫酸塩、ハロゲン酸塩、アゾ化合物、過酸化水素/第1鉄塩、過硫酸塩/亜硫酸塩、クメンヒドロパーオキシド/第1鉄塩、過酸化水素/L−アスコルビン酸等のレドックス系開始剤を挙げることができる。これらの重合開始剤は1種以上で使用することができる。
これらの重合開始剤の中でも、過硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリドが好ましく用いられる。
【0017】
上記重合開始剤の添加量は、重合を円滑に行うために、モノマー100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、更に好ましくは0.02〜5重量部である。
また、上記重合開始剤の添加方法は、特に制限されないが、上記重合開始剤をモノマー水溶液に予め添加する方法が好ましい。
【0018】
また、本発明の製法の実施にあたり、重合前、重合時、重合後又は乾燥時等において、公知の架橋剤を添加することができる。該架橋剤としては、例えば、ポリアリル化合物、ポリビニル化合物、ポリグリシジルエーテル、ハロエポキシ化合物、ポリアルデヒド、ポリオール、ポリアミン、ヒドロキシビニル化合物、またカルシウム、マグネシウム、亜鉛及びアルミニウムなどの多価イオンを生じる無機塩または有機金属塩などを挙げることができる。
【0019】
また、逆相懸濁重合法により上記重合を終了た後、必要に応じ通常の後処理、例えば、共沸脱水、乾燥等を行うことにより、所望の高吸水性樹脂を得ることができる。
【0020】
本発明の製法により得られた高吸水性樹脂は、吸水倍率が高く、しかも、含水状態での経時安定性が良好なものであり、このため、衛生用品分野で、幼児用、大人用もしくは失禁者用の紙おむつ(使い捨ておむつ)又は婦人用の生理用ナプキン等の吸収性物品における吸水性物質等として使用される。
【0021】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断らない限り、以下の実施例及び比較例における「%」は「重量%」を表す。
【0022】
実施例及び比較例を説明するに先立ち、実施例及び比較例で行った試験方法を以下に示す。
〔遠心脱水法による水の保持量の測定法〕
高吸水性樹脂1gを生理食塩水(0.9%NaCl溶液、大塚製薬製)150mlで30分間膨潤させた後、不織布袋に入れ、遠心分離機にて143Gで10分間脱水し、脱水後の総重量(全体重量)を測定した。そして、下記式(1)に従って、遠心脱水後の水の保持量を測定した。
【0023】
Figure 0003871434
【0024】
実施例1〜及び比較例1〜2
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管を付した1000mlの4つ口フラスコに、疎水性有機溶媒としてのシクロヘキサン400ml、及び分散剤としてのポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩(平均エチレンオキシド付加モル数=2)の25%水溶液0.82gを仕込み、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出し、75℃まで昇温した。別のフラスコにて、アクリル酸102.0gをイオン交換水25.5gで希釈し、外部より冷却しつつ、30%水酸化ナトリウム水溶液140gで中和した。次いで、このモノマー水溶液に、重合開始剤としての過硫酸カリウム0.408gをイオン交換水13gに溶解させたものを添加溶解した後、窒素ガスを吹き込み水溶液内に残存する酸素を除去した。この時のモノマー水溶液中のモノマー濃度は44.5%であった。このモノマー水溶液をイオン交換水で希釈して、下記〔表1〕に示す方法により、該モノマー水溶液を4つ口フラスコ中へ添加し、温度75℃で、60分間モノマーの重合を行った。重合終了後、脱水管を用いて共沸脱水を行い、高吸水性樹脂の含水量を高吸水性樹脂100重量部に対して40重量部に調整した。その後、架橋剤としてのポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセ化成工業(株)製、商品名;デナコールEX−512)0.1gを水2gに溶解したものを添加し、75〜80℃で2時間反応させた。その後、更に共沸脱水を行い、高吸水性樹脂の含水量を高吸水性樹脂100重量部に対して30重量部に調整した。冷却後、シクロヘキサンをデカンテーションで除き、80〜100℃、約50Torrの条件で乾燥させることにより高吸水性樹脂を得た。得られた高吸水性樹脂の遠心脱水法による保持量を測定した。その結果を下記〔表1〕に示す。
【0025】
【表1】
Figure 0003871434
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、高吸水性樹脂が、特別な成分を添加したり、特殊な添加方法を行うことなく、再現よく得られる。しかも、特定の添加方法によって水の添加量を極少量に抑えることが可能であるため、得られた高吸水性樹脂の経時安定性が損なわれない。

Claims (2)

  1. 水溶性ビニルモノマー(以下、モノマーという)水溶液を、疎水性有機溶媒を含有する分散媒中へ供給し、逆相懸濁重合して高吸水性樹脂を得るに際し、モノマー全体量の25重量%が上記分散媒中へ供給される迄の該分散媒中への供給モノマー水溶液のモノマー最低濃度(a1 重量%)と、これ以降の該分散媒中への供給モノマー水溶液のモノマー最低濃度(a2 重量%)とを比較したとき、a1 <a2 であることを特徴とする高吸水性樹脂の製法。
  2. イオン性界面活性剤存在下に、逆相懸濁重合する請求項1記載の高吸水性樹脂の製法。
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