次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る乗物用表示装置10の平面図(目盛り板20及び表示板40の厚み方向一方側から見た図)である。図2は、乗物用表示装置10のA−A断面図である。
図1に示す乗物用表示装置10は、自動二輪車に取り付けられ、自動二輪車のエンジン回転速度及び走行速度等の乗物の状態を示す情報を表示する装置である。自動二輪車は、エンジンと、フレームと、フレーム上に設けられた燃料タンクと、燃料タンクの後ろに設けられた運転者が乗車するシートと、前後のタイヤと、前タイヤと路面の凹凸からフレームを緩衝しつつハンドル操作に応じて回転自在に取り付けられているフロントフォークと、を備える。乗物用表示装置10は、フロントフォークを自動二輪車の車体と結合しているアッパーブラケットに設けられたメータブラケット、又は、フロントフォークに固定されるブラケットを介して取り付けられている。
運転者は、乗物用表示装置10を視認することによって自動二輪車の走行状態等を把握する。なお、乗物用表示装置10は、アッパーブラケットを介したメータブラケットに取り付けられている構成に限られず、フレームから直接メータブラケットが取り付けられており、ハンドル操作に応じて乗物用表示装置10とフレームの位置が変わらない構成であっても良いし、燃料タンク上に乗物用表示装置10が配置されていても良い。乗物用表示装置10は、ハウジング11と、カバー12と、を備える。また、ハウジング11の内部には、図2に示すように、目盛り板20と、目盛り用導光体30と、表示板40と、表示板保持部材50と、制御基板60とが収容されている。
ここで、図2に示すように、乗物用表示装置10のうち厚み方向中心位置に対してカバー12が位置する側を装置上側と称し、その反対側を装置下側と称する。また、装置上側と装置下側を結ぶ方向を「装置上下方向」と称する。また、図1及び図2に示すように、表示板40が表示する文字の向きの上側(即ち車両の前側)を「装置前側」と称し、文字の向きの下側(即ち車両の後側)を「装置後側」と称する。また、装置前側と装置後側を結ぶ方向を装置前後方向と称する。また、装置上下方向及び装置前後方向の両方に直交する方向を「装置左右方向」と称する。
ハウジング11は、装置上側が開口した容器状の部材であり、当該開口にカバー12が配置されている。ハウジング11は、自動二輪車の車体に取付可能に構成されている。図2に示すように、ハウジング11は、ベース部材11aと、カバー保持部材11bと、を備える。
ベース部材11aは、ハウジング11の側面及び下面を構成する部材である。ベース部材11aの装置上側には、図略の取付機構により制御基板60が取り付けられている。また、ベース部材11aには、カバー保持部材11bと係合するための係合部が形成されている。
カバー保持部材11bは、ハウジング11の側面を構成するとともに、カバー12を保持する部材である。カバー保持部材11bは、図2に示すように、カバー12の縁部において、装置上側と装置下側を挟むようにして、当該カバー12を保持する。
カバー12は、透光性を有する材料で構成されており、乗物用表示装置10の一面を構成している。カバー12は、透光性を有するため、当該カバー12を介して、乗物用表示装置10の内部を視認することができる。
次に、図1から図4を参照して、ハウジング11の内部の構成について説明する。図3は、目盛り板20、目盛り用導光体30、表示板保持部材50、及び表示板40の分解斜視図であり、図4は、それらを組み立てた状態の斜視図である。
目盛り板20は、エンジン回転速度を示すための目盛りが記された板状の部材である。目盛り板20は、厚み方向が装置上下方向に一致するように配置されている。図3に示すように、目盛り板20は、半円状の円板の中心部に半円状の開口が形成された形状である。言い換えると、半円状の円板のうち周方向一部が切り欠かれた形状に形成される。目盛り板20には、目盛り部21と、遮光部22と、内周端面23と、切欠き24と、が形成されている。
目盛り部21は、目盛り板20の装置上側の面に形成されている。目盛り部21は、エンジン回転速度を示すための印である。目盛り部21の少なくとも一部は、透光性を有する材料で構成されており、目盛り板20の装置下側から照射された光を装置上側に向けて照射する。これにより、目盛り部21の視認性を向上させることができる。なお、目盛り部21に相当する部分を切り欠くことで、目盛り部21を発光させても良い。また、目盛り部21は、目盛り板20から装置上側に突出させても良いし、平坦であっても良い。目盛り部21は、予め定める並列方向に並んで複数配置され、それぞれ並列方向に間隔をあけて配置される。本実施形態では、並列方向は、円弧に添って延びる方向に設定される。本実施形態では、円弧中心が車体の車幅方向中心に位置するよう表示装置が配置される。
目盛り部21を構成する目盛りについて具体的に説明すると、目盛り板20の径方向の外側には、予め定めるエンジン回転数の単位(例えば1000rpm単位)の位置を示す矩形状の貫通孔が形成される。この矩形状の貫通孔の径方向の内側(中心側)には、1000rpm単位の具体的な値を示す数字が形成されている。また、矩形状の貫通孔の間には、当該矩形状の貫通孔より小さい三角状の印(即ち500rpm単位の位置を示す印)が形成されている。また、この三角状の印の径方向の内側(内側の端部近傍)には、更に三角状の印が形成されている。これらの2種類の三角状の印及び数字は遮光性を有するように構成されているため発光しないが、発光させても良い。また、図3に示すように、目盛り板20のうち半円状に開口した部分の内周側(装置上側から見たときにおいて表示板40との境界となる側)の面(即ち、隣に臨む面)である内周端面23には、複数の切欠き24が形成されている。切欠き24も目盛り部21を構成する目盛りの一部である。切欠き24は、装置上側から見たときにおいて台形状に切り欠かれている。切欠き24の周方向の位置は、目盛り部21のうち1000rpm毎に形成された矩形状の貫通孔及び数字と同じである。なお、切欠き24は、目盛り板20の装置下側から照射された光を装置上側に向けて照射する。
また、目盛り部21は、以下のように表現することもできる。即ち、目盛り部21は、発光する発光目盛り部分として、外側目盛り部分と、内側目盛り部分と、数字目盛り部分とを有する。それらの発光目盛り部分は、並列方向の円弧中心からみて、同じ角度位置に並ぶ組が設定され、それぞれの組が円弧中心に対して周方向に間隔をあけて配置される。外側発光目盛り部分は、目盛り板20の径方向外側に形成される。内側発光目盛り部分が目盛り板20の径方向内側端に形成される。数字目盛り部分は、外側発光目盛り分と、内側発光目盛り部分との径方向間に配置される。また内側発光目盛り部分は、径方向内側に進むにつれて周方向寸法が大きくなる台形形状に形成される。後述するように内側発光目盛り部分は、目盛り板20の前面よりも装置後方の面に発光面が形成される。本実施形態では、目盛り部21は、目盛り板20に印字されて非発光となる印字目盛り部分も有する。印字目盛り部分は、発光目盛り部分に対して、面積が小さく形成されるとともに、隣接する2つの発光目盛り部分の並列方向の間に配置される。具体的には、印字目盛り部分は、隣接する2つの外側目盛り部分の並列方向の間に配置される外側印字目盛り部分と、隣接する2つの内側目盛り部分の並列方向の間に配置される内側印字目盛り部分とを有する。内側印字目盛り部分は、径方向内側に進むにつれて周方向寸法が大きくなる三角形状に形成される。
また、目盛り板20の装置上側の面のうち目盛り部21が形成されていない箇所には、遮光性を有するとともに三角状の印及び数字等と色が異なる遮光部22が形成されている。この構成により、目盛り板20のうち目盛り部21を発光させつつ、それ以外の部分が発光することを防止できる。従って、目盛り部21を目立たせることができる。
乗物用表示装置10は、目盛り板20の各目盛り部分を発光させるための光源として、発光ダイオードで構成される目盛り用光源35(図1及び図2を参照)を備える。図2に示すように、目盛り用光源35は、装置左右方向の一方側から見たときに、表示板40に対して目盛り板20とは反対側(即ち装置下側)であって、目盛り板20よりも内側(即ち装置後側)に配置される。これにより、ハウジング11の装置上下方向及び装置左右方向の大型化を防いで目盛り用光源35が目盛り板20から離れて配置されることになるので、目盛り板20の位置及び形状の自由度を向上させることができる。
次に、目盛り用光源35の装置前後方向の位置について説明する。図1に示すように、目盛り用光源35は、装置上側から見たときにおいて目盛り板20の装置前側の端部に沿うように複数(本実施形態では4つ)配置されている。詳細には、目盛り用光源35は、装置上側から見たときにおいて、表示面41に対して目盛り部21の反対側(即ち装置上側)に配置されている。このように目盛り用光源35を目盛り部21よりも装置前側に配置することで、目盛り用光源35が表示板40及び表示板用導光体43等と干渉しにくくなる。
目盛り用導光体30は、目盛り用光源35が発生させた光を目盛り板20に導く部材である。図1及び図2に示すように、目盛り用導光体30は、一体的に構成された、第1導光部31と、第2導光部32と、を備える。
第1導光部31は、図2及び3に示すように、目盛り用光源35から目盛り板20の間を装置上下方向に延びて形成される。第1導光部31は、目盛り板20の外周に沿うように湾曲している。第1導光部31は、図略の構造により制御基板60又はハウジング11に取り付けられる。目盛り用光源35で発生した光は、第1導光部31の装置下側の端部から装置上側へ導かれた後に、第2導光部32へ導かれる。
第2導光部32は、第1導光部31の装置上側の端部に接続されている。第2導光部32は、目盛り板20と同様に、半円状の円板の中心部に半円状の開口が形成された形状である。第2導光部32は、図2に示すように、目盛り板20の装置下側の面に隣接するように、特に、目盛り部21の装置下側の面に隣接するように配置される。第2導光部32は、目盛り用光源35及び第1導光部31から光が導かれることで前方に向けて光を照射する。これにより、目盛り板20の目盛り部21を発光させることができる。特に、第2導光部32には、当該第2導光部32の平坦面から装置上側に突出する部分が形成されている。この構成により、当該突出部分が、目盛り部21の矩形状の貫通孔に挿入されることで、当該矩形状の貫通孔を介して光を装置上側に照射することができる。なお、目盛り板20と目盛り用導光体30は接触してなくても良い。
図3に示すように、半円状に開口した部分の内周側の面である内周端面33には、複数の延長部34が形成されている。延長部34は、内周端面33から更に内周側に突出しているとともに、装置下側にも突出している(延長部34は櫛歯状に配置されると表現することもできる)。延長部34の周方向の位置は、目盛り板20の切欠き24の周方向の位置と同じである。
表示板40は、本実施形態では、液晶パネルであり、装置上側の面の一部である表示面41にセグメント方式で情報を表示することができる。表示板40は、図1に示すように装置上側から見たときにおいて矩形状の板状の部材であるが、表示面41は、半円状と矩形状を組み合わせた形状である。表示板40は、厚み方向が装置上下方向に一致するように(即ち目盛り板20と平行に)配置されている。詳細には、装置上側から見たときにおいて、目盛り板20よりも装置下側であって、かつ、目盛り用導光体30の第2導光部32よりも装置下側に配置されている。また、表示板40は、装置上側から見たときにおいて目盛り板20と重なるように配置されている。
なお、表示板40は、セグメント方式ではなく、ドットマトリクス方式で情報を表示する構成であっても良い。表示板40は液晶パネルに限られず、他の表示装置であっても良い。例えば、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイであっても良いし、発光ダイオード等を並べた構成であっても良い。
表示板40は、表示板取付部材42を介して制御基板60に取り付けられている。また、制御基板60には、表示制御部61が配置されている。表示板40は、図略の電線等により表示制御部61と電気的に接続されている。表示板40は、表示制御部61から受信した信号に基づいて、表示内容を変更する。
制御基板60には、発光ダイオードで構成される表示板用光源44が取り付けられている。表示板用光源44は、表示板40よりも装置前側(目盛り板20側)に配置されている。これにより、目盛り板20の装置下側の空間を有効活用できる。また、表示板40の装置下側には、表示板用導光体43が配置されている。表示板用導光体43は、表示板用光源44が発生させた光を導くことで、表示板40の装置下側の面に光を照射する。
なお、本実施形態では、1つの制御基板60に、目盛り用光源35、表示板用光源44、及び表示制御部61が取り付けられている。この構成により、部品点数を減らし、組立ての工程数を減らすことができる。また、それぞれの部品が別々の基板に取り付けられている構成と比較して、配線を単純にすることができる。
表示板保持部材50は、表示板40の装置上側の一部、及び、側面(厚み方向に平行な面)を覆うように配置されている。表示板保持部材50は、表示板40の装置上側のうち縁部(4辺)を押さえて保持している。
また、表示板保持部材50は、遮光性を有する材料で構成されている。図2に示すように、表示板保持部材50は、目盛り板20と、表示板40(詳細には装置上側から見たときにおいて目盛り板20と重なる部分)と、を仕切る位置に配置されている。これにより、表示板40の光を目盛り板20へ漏れにくくすることができる。特に本実施形態では、表示板保持部材50は、目盛り板20と、表示板用導光体43及び表示板用光源44と、も仕切っているため、表示板40の光が目盛り板20へ一層漏れにくい。あるいは、表示板40の光が目盛り板20側に漏れることを防止する別の部材を配置する構成と比較して、部品点数を削減できる。なお、このような別部材(仕切壁)を備える場合であっても本発明に含まれる。
図3に示すように、表示板保持部材50には、表示板露出部51と、内周端面52と、遮光部53と、が形成されている。
表示板露出部51は、表示板保持部材50の装置上側に形成されており、半円と矩形を組み合わせた形状に開口されている部分である。表示板40のうち、表示板露出部51の開口を介して視認可能な部分が表示面41である。表示制御部61は、表示板露出部51を介して視認可能な部分である表示面41にのみ情報を表示する。
表示板露出部51の半円状に開口している部分の内周側の面である内周端面52には、複数の遮光部53が形成されている。遮光部53は、内周端面52から更に内周側に突出しているとともに、装置上側にも突出している。遮光部53の周方向の位置は、目盛り用導光体30の延長部34の周方向の位置と異なり、隣接する延長部34の間に相当する位置に遮光部53が位置する。
以上に説明したように、乗物用表示装置10では、目盛り板20と表示板40とが装置上側から見たときにおいて重なるように配置されることで、目盛り板20と表示板40の装置上下方向及び装置左右方向での干渉を防止できる。特に、乗物用表示装置10の目盛り板20は発光する部分を有するため、目盛り用導光体30及び目盛り用光源35が必要となり、ハウジング11の内部のスペースが更に制約される場合のスペースの有効活用を図ることができる。従って、目盛り板20と表示板40が干渉しないという効果をより有効に発揮できる。特に、本実施形態では、表示板40よりも装置上側に目盛り板20が配置されている。この場合、表示板40の一部を目盛り板20で覆うことができるので、目盛り板20に応じた形状の表示板40の形状変更が抑えられ、既存の表示板40を用い易くなり、製造コストを低減できる可能性がある。
また、自動二輪車のような鞍乗型乗物では、乗物用表示装置10の小型化が特に望まれている。この点、目盛り板20と表示板40とが装置上側から見たときにおいて重なるように配置されることで、目盛り板20と表示板40とが装置上側から見たときにおいて並ぶように配置された構成と比較して、装置上側から見たときにおけるサイズを低減できる。特に、本実施形態のように目盛り板が半円状で半円状の開口が存在する場合、目盛り板と表示板を重ねない場合は、半円状の開口よりも装置後側に表示板を配置せざるを得ないため、乗物用表示装置の装置上側から見たときにおける装置上下方向のサイズが大型化し易くなる。
なお、比較例として、目盛り板20と表示板40を重ねずに、表示板40を表示面41に沿って半円状に形成しようとした場合、表示板40を加工するコストが掛かるとともに、乗物用表示装置10に応じて個別に表示板40の形状の設計を行うコストも掛かってしまう。
次に、図1及び図5を参照して、表示面41に表示される情報について説明する。図5は、表示板40の領域を説明する図である。
上述のように、装置上側から見たときにおいて、表示板40は目盛り板20の一部と重なっている。この図5に示すように、表示板40が目盛り板20と重なっている領域をラップ領域と称する。ラップ領域は、目盛り板20の輪郭から、当該目盛り板20の凸方向(装置前側)に突出する領域である。
液晶パネルは、複数のセグメントが設定され、セグメントごとに光の透過状態と遮断状態とを切り換え可能に構成される。制御基板60によって、セグメントごとに選択的に状態を切り換えることで、装置下側から照射される光が部分的に遮光された表示画像を得ることができる。ラップ領域では、常時、遮断状態となるようにセグメントが設定されても良いし、後述する遮光体によって光の外部への照射が防がれても良い。本実施形態では、ラップ領域では、制御基板60による表示制御が非動作となる領域となる。
このラップ領域に隣接する領域を隣接領域と称する。本実施形態では、目盛り板20の半円状に開口している部分(即ち、表示板40のうち表示板露出部51から露出している半円状の部分)が隣接領域に該当する。換言すれば、目盛り板20によって周囲(詳細には装置後側以外の周囲)が囲われている部分であって、開口部の中心近傍の略矩形状の部分を除いた領域が隣接領域に該当する。
表示板40のうち、ラップ領域及び隣接領域とは異なる領域を隔離領域と称する。本実施形態では、隔離領域は、目盛り板20に囲われていない領域であって、隣接領域よりも目盛り板20から離れた位置にある領域である。また、隔離領域は開口部の中心近傍の略矩形状の部分と、それより装置後ろ側の矩形状の部分である。
図1に示すように、表示面41には、目盛り板20の目盛り部21を指すための指針部71と、変速段を表示するための変速段表示部72と、が表示される。指針部71は、現在のエンジン回転速度に応じて時計回りに回転する針状の表示物である。このように、目盛り板20と指針部71により、エンジン回転速度が示される。また、変速段表示部72は、指針部71の回転中心に位置しており、半円状の隣接領域の中心に相当する位置に配置されている。変速段表示部72は、現在の変速段を表示する。
指針部71は、針を機械的に回転させる構成と異なり、表示制御部61により表示内容を変更可能に構成されているため、様々な方法でエンジン回転速度を表示することができる。以下、具体的な表示方法を3つ説明する。1つ目は、機械的に回転する針と同様に、指針部71を回転させる方法であり、隣接領域には同時に1つの指針部71しか表示されない。2つ目は、1つ目の例に加え、エンジン回転速度が上昇した場合に残像を残す方法である。具体的には、エンジン回転速度が上昇して、速いエンジン回転速度を指す新たな指針部71を表示させても、遅いエンジン回転速度を指す指針部71は一定時間表示され続ける。3つ目は、2つ目の例において、遅いエンジン回転速度を指す指針部71を消さずに表示させ続ける方法である。ここで挙げた3つの表示方法は一例であり、適宜変更可能である。また、複数の表示方法は、ユーザの選択により切替可能である。
更に、指針部71の表示内容の制御は、シフトアップインジケータ及びオープニングセレモニーにも用いることができる。シフトアップインジケータとは、エンジン回転速度が所定以上となった場合に、次の段への変速を促すことである。表示制御部61は、例えば、指針部71の根本側を点滅させる制御を行い、次の段への変速を促す。また、乗物用表示装置10は、例えば指針部71の全体を点滅させたり、点滅ではなく表示色を変えたりするように設定を変更することもできる。
オープニングセレモニーとは、エンジン始動直後における、見栄えを良好にするための乗物用表示装置10の表示である。表示制御部61は、例えば、指針部71を一度上限まで回転させて戻すように表示内容を制御する。乗物用表示装置10は、例えば、指針部71が回転する速度等の設定を変更可能である。このように、従来は針を機械的に回転させていた構成を電子表示で実現することにより、ユーザの好みに応じて自在にカスタマイズ可能な表示が実現できる。
隔離領域には、自動二輪車の移動速度を示す速度表示部73が表示されている。また、隔離領域には、更に、累計走行距離及び燃料の残量等が表示される。なお、隣接領域及び隔離領域に表示する内容は任意であり、例えば隣接領域に移動速度が表示されていても良い。また、上記で説明した以外の状態値、例えば冷却水温度及び燃費等が表示されていても良い。
なお、本実施形態では、装置左右方向において、表示板40は目盛り板20の外形より小さく、目盛り板20の半円状の開口より大きい。これにより、目盛り板20の半円状の開口の全体(隣接領域)に情報を表示しつつ、表示板40のサイズを抑えることができる。
また、隣接領域及び隔離領域に表示される情報は、以下のように表現することもできる。即ち、隣接領域には、目盛り部21に関連する乗物状態値が表示される。具体的には、隣接領域の表示によって、乗物状態の変化に応じて、対応する目盛り部21を指し示す。隣接領域では、乗物状態値の大小に応じて、並列方向の円弧中心に対する角度位置の大小を表示態様によって表現する。隣接領域の表示が目盛り部21に関連する表示であるため、隣接領域での表示が、目盛り部に隣接した位置であることが好ましい。隔離領域では、隣接領域に比べて、目盛り部21との関連が低い乗り物状態値が表示される。本実施形態では、機械式の指針ではなく、上述した指針表示を隣接領域に表示することで、機械式指針のように指針回転指示する部分を並列方向の円弧中心に設ける必要がない。これによって、円弧中心周囲にも別の情報を表示させることができる。本実施形態では、乗り物の変速比を表示することで、運転者に乗物の変速状態を視認させ易くすることができる。隣接領域にエンジン回転数を表示することで、エンジン回転数表示と、変速状態表示とを近接して配置することができ、運転者の変速操作にあたっての表示装置の視線の移動を小さくすることができる。隣接領域でのセグメントは、円弧中心から印字目盛り部分、発光目盛り部分ごとにそれぞれに向かって延びる棒状に形成される。乗り物のエンジン回転数に対応する目盛り部分を示すように、各セグメントが選択的に点消灯制御されることで、視認者がエンジン回転数を把握することができる。隣接領域でのセグメントの径方向外側端は、内側目盛り部分の周方向寸法と略等しくなるように、幅広の径方向一端面が形成される。これによって内側目盛り部分と、隣接領域でのセグメントとの一体感を得易い。本実施形態では、内側目盛り部分の周方向外側縁が径方向に延びる延長線に沿って、隣接領域のセグメントの径方向外側の周方向外側縁が形成される。これによって更に内側目盛り部分と、隣接領域でのセグメントとの一体感を得易い。
次に、乗物用表示装置10で生じる視差について説明する。上述のように、乗物用表示装置10は、目盛り板20の内側の発光位置と、表示板40の発光位置と、の装置上下方向における位置が異なるため、発光位置に装置上下方向の段差が生じるとして、視差が存在する。以下、図1及び図4を参照して、この視差を軽減する構成を説明する。なお、図4では、乗物用表示装置10の発光部分のうち、以下の説明で言及する部分にドット状のハッチングを付している。
目盛り板20の切欠き24は、上述のように、エンジン回転速度の1000rpm単位の位置を示している。目盛り用導光体30の延長部34は、図4に示すように、この切欠き24と周方向の位置が同じである。目盛り板20の上面より装置下側に位置する延長部34から光が装置上方及び径方向内側に照射される。目盛り板20より低い(装置下側の)位置から発光するとともに径方向内側に向けて発光することで、切欠き24と延長部34との発光部分が連続している印象を視認者に与えることができる。更に、表示面41に表示される指針部71は、図1に示すように、先端が幅広になっている。更に、指針部71も、切欠き24及び延長部34と同様に発光しており、指針部71と切欠き24は接続部分において同じ幅であり、延長部34から径方向内側に光を照射して指針部71との段差部分の周囲を照らしているため、指針部71の先端が延長部34を介して切欠き24に繋がっているような印象を視認者に与えることができる。これにより、視差を軽減できる。
更に、表示板保持部材50には、遮光部53が形成されている。遮光部53は、装置上下方向における位置が延長部34と同じになるように、即ち目盛り用導光体30の一部を覆うように、配置されている。また、遮光部53の周方向の位置は、隣接する延長部34の間に相当する。更に、遮光部53は遮光性を有する。以上により、遮光部53は、目盛り用導光体30の内周端面33のうち、延長部34以外の部分の発光を遮ることができる。これにより、延長部34の発光が強調されるので、指針部71、延長部34、及び切欠き24が更に繋がっているような印象を視認者に与えることができるので、視差を一層低減できる。
視差に関して、別の観点から説明すると以下のようになる。隣接領域でのセグメント発光位置と、目盛り板20の前面とが、装置上下方向に離れている。本実施形態では、内側発光目盛り部分が隣接領域に向けて発光、即ち径方向内側に向けて発光することで、目盛り板と隣接領域との装置上下方向間にも光が到達することで、目盛り板20と表示面41とが装置上下方向に離れていることの視差(違和感)を抑えることができる。内側発光目盛り部分の発光面が、目盛り板20の前面よりも装置後方に配置されることで、目盛り板20の上面で発光する場合に比べて、表示面41に近い位置で発光させることができる。また延長部34が残余の部分に比べて、装置後方に延長される。このことから、目盛り板20の発光面を表示面41に近づけることで、目盛り板20と表示面41とが装置上下方向に離れていることの視差(違和感)を抑えることができる。目盛り板20に形成される切欠き24の壁面で、内側発光目盛り部分から照射された光が反射することで、目盛り板20の径方向内側の端面、目盛り用導光体30の前面、目盛り用導光体30の径方向内側の端面とがそれぞれ発光することで、目盛り板20の前面と表示板40の前面との間を装置上下方向に延びる発光部分を形成することができ、視差を抑えることができる。
特に、自動二輪車のような鞍乗型乗物では、旋回時に機体(車体及び船体等)を傾けることが多いため、視認者は、様々な方向から乗物用表示装置10を視認することとなる。従って、乗物用表示装置10の視差が発生し易くなるため、上記のような構造を設ける必要性が一層高い。また、視認者が様々な方向から乗物用表示装置10を視認する場合、視認性が高いことが好ましいが、乗物用表示装置10は、目盛り板20及び表示板40の両方が発光することにより、高い視認性を実現している。
次に、図6及び図7を参照して、上記実施形態の変形例を説明する。変形例の説明においても、上記実施形態と同様に方向を定義する。変形例の説明においては、上記実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
本実施形態の目盛り板20及び表示板40の形状は一例であり、以下の第1変形例から第6変形例に示すように、本実施形態と異なる形状であっても良い。
図6(a)の第1変形例では、目盛り板20の形状は本実施形態と同等である。表示板40は、装置前後方向よりも装置左右方向に長い長方形状であり、目盛り板20よりも装置左右方向のサイズが大きい。表示板40は、一部が目盛り板20の装置左右方向外側(即ち目盛り板20の径方向外側)にはみ出すように、目盛り板20と重なっている。従って、第1変形例では、目盛り板20よりも装置左右方向の外側(径方向外側)に情報を表示可能である。
図6(b)の第2変形例では、目盛り板20は、中心角が180度より小さい扇形から中心側を開口させた形状である。あるいは、目盛り板20は、所定の太さを有する湾曲した形状である。表示板40は、装置前後方向よりも装置左右方向に長い長方形状である。表示板40は、目盛り板20の開口を覆い、かつ、当該開口から装置前側に突出するラップ領域を有するように、目盛り板20と重なっている。なお、目盛り板20は、円弧状に限らず、円弧でない湾曲状であっても良い。
図6(c)の第3変形例では、目盛り板20は、中心角が180度より大きい扇形から中心側を開口させた形状である。表示板40は、目盛り板20の開口を覆い、かつ、当該開口から装置前側、装置後側、装置左側に突出するラップ領域を有するように、目盛り板20と重なっている。
図7(a)の第4変形例では、目盛り板20は、台形状であり、中央から右側に延びるように第1目盛り部が配置されるとともに、中央から左側に延びるように、第1目盛り部と異なる状態値を示す第2目盛り部が配置されている。表示板40は、目盛り板20を全て覆うように、目盛り板20と重なっている。
図7(b)の第5変形例では、第1変形例と同形状の目盛り板20が並べて2つ配置される。表示板40は、これらの2つの目盛り板20の両方と重なるように配置されている。
図7(c)の第6変形例では、目盛り板20よりも装置上側(即ち、乗物用表示装置10を視認する視認者側)に表示板40が配置されている。第6変形例のように、目盛り板20と表示板40の装置上下方向の並びが逆である場合であっても、目盛り板20と表示板40が干渉しにくいため、目盛り板20及び表示板40の配置及び形状の自由度が向上する。特に、表示板40を装置上側に配置することで、例えば目盛り板20の一部を表示板40で覆うことができるので、既存の目盛り板20が使い回し易くなるため、製造コストが低減できる可能性がある。
なお、第1変形例の構成(例えば表示板40が目盛り板20の径方向外側に突出する構成)は、上記実施形態又は他の変形例に適用することができる。第2変形例から第6変形例の構成も、上記実施形態又は他の変形例に適用することができる。
以上に説明したように、乗物用表示装置10は、目盛り板20と、表示板40と、表示制御部61と、を備える。目盛り板20は、乗物(自動二輪車)に関する状態値を示すための目盛りである目盛り部21を有する。表示板40は、表示内容を変更可能に表示する表示面41を有する。表示制御部61は、表示面41に表示する表示内容を電子制御する。表示板40は、当該表示板40の厚み方向一方側から見たときに、目盛り板20と重なるラップ領域を有するように配置されている。
これにより、目盛り板20と表示板40とが厚み方向一方側から見たときに重なるように配置されることで、厚み方向に間隔をあけて配置でき、目盛り板20と表示板40との干渉が防がれる。また、目盛り板20と表示板40が干渉しなくなることで、目盛り板20と表示板40の位置及び形状が制約されにくくなるため、目盛り板20と表示板40の位置及び形状等の設計の自由度を高めることができる。
特に、本実施形態のように目盛り板20の目盛り部21の少なくとも一部が発光する場合は、この目盛り部21を発光させる構造(光源等)を配置するスペースも必要となる。そのため、目盛り板20及び表示板40等の位置はされに制約される。従って、目盛り板20と表示板40の位置及び形状等の設計の自由度を高めるという上記の効果をより有効に発揮させることができる。なお、目盛り部21の発光は必須ではなく、発光しない目盛り部21も本発明に含まれる。
また、乗物用表示装置10においては、表示面41の少なくとも一部は、表示板40のうち、ラップ領域に隣接する隣接領域に配置される。
これにより、目盛り板20の輪郭近傍に表示面41が配置されるので、表示面41を広げることができる。そのため、例えば表示内容を多様化したり、視認性を向上したりすることができる。また、目盛り板20の輪郭近傍にまでに表示面41を配置させた分だけ、表示板40のサイズを小さくすることができる。
また、乗物用表示装置10では、隣接領域の表示内容によって、エンジン回転速度である状態値が表示される。乗物用表示装置10では、ラップ領域及び隣接領域と異なる領域であって、隣接領域に対してラップ領域から離れる側に配置される隔離領域の表示によって、移動速度等の前記状態値と異なる情報が表示される。
これにより、状態値と、状態値と異なる情報とを同じ表示板40で表示することで、それぞれ個別の表示板40でそれらを表示する場合と比べて、構造を単純化することができる。
また、乗物用表示装置10においては、目盛り板20のうち、内側の面であって、厚み方向一方側から見たときに表示板40との境界となる部分(即ち、目盛り板20のうち表示板40と反対側の面となる前面よりも表示板40寄り、即ち後方の部分でかつ、隣接領域に臨む部分)が発光する。
これにより、目盛り板20のうち表示板40との境界となる部分が発光するため、表示板40が発光する場合は、目盛り板20と表示板40の発光部分が繋がっている印象を視認者に与えることができる。従って、目盛り板20と表示板40とを厚み方向一方側から見たときに装置上下方向に離れることに起因する視差を軽減できる。
また、乗物用表示装置10においては、表示板40のラップ領域と、目盛り板20と、の間には、遮光性を有する仕切壁(表示板保持部材50)が配置される。
これにより、表示板40から目盛り板20への光及び目盛り板20から表示板40への光をそれぞれ漏れにくくすることができる。
また、乗物用表示装置10においては、目盛り用光源35と、導光体(目盛り用導光体30)と、を備える。目盛り用光源35は、目盛り部21を発光するための光を発生させる。導光体は、目盛り用光源が発生させた光を目盛り部21に導く。表示板40の厚み方向に垂直な方向から見たときに、目盛り用光源35は、表示板40に対して目盛り板20とは反対側に配置される。
これにより、目盛り用光源35が目盛り板20から装置上下方向に離れて配置されることになるので、目盛り板20の位置及び形状の自由度を向上させることができる。また、厚み方向一方側から見て、目盛り用光源35が目盛り板20と重なる位置に配置されることで、目盛り用光源35が目盛り板20よりも装置上下方向又は装置左右方向に突出する場合に比べて、乗物用表示装置10の大型化を防ぐことができる。
また、乗物用表示装置10においては、目盛り用光源35と、表示制御部61と、が共通の基板である制御基板60上に配置される。
これにより、目盛り用光源35と表示制御部61が個別の基板に配置される構成と比較して、部品点数を削減できるとともに組立ての工程数を低減できる。
また、乗物用表示装置10においては、目盛り部21の並列方向一端側と、目盛り部21の並列方向他端側とを結ぶ直線が延びる方向に関して、表示板40が、目盛り板20よりも小さく形成される。
これにより、目盛り板20に沿って隣接領域を配置しつつ、かつ、表示板40が装置左右方向に目盛り板20から突出することを防いで、表示板40の大型化を防ぐことができる。
また、乗物用表示装置10においては、目盛り部21は、所定の突出方向に凸になるように湾曲して並んでいる。ラップ領域は、目盛り板20の輪郭から、突出方向に突出している。
これにより、目盛り部21を直線状に並べる構成と比較して、目盛り数を増やすことができるので、乗物用表示装置10のサイズを有効的に活用できる。また、表示板40を湾曲に応じた形状に形成しなくて良いため、表示板40の汎用性を向上させることができる。
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
表示板40は、目盛り板20に対して、目盛り部21の並ぶ方向に関して直交する方向の両側に突出しても良い。この場合、目盛り部21の並ぶ方向に関して直交する方向の何れか一方に突出する面積が、目盛り部21の並ぶ方向に関して直交する方向の何れか他方に突出する面積よりも小さいことが好ましい。これによって目盛り板20をハウジング11の縁部に近接して配置し易くなる。
また、目盛り板20に対して、表示板40の隣接領域が配置される側が、目盛り部21の並ぶ方向に関して直交する方向の何れか他方に突出することが好ましい。これによって目盛り板20に関連する表示を隣接領域に表示しつつ、目盛り板20をハウジング11の縁部に近接して配置し易くなる。
上記実施形態では、目盛り部21の並列方向が円弧に沿って延びるとしたが、直線に沿って並んだり、L字に沿って並ぶ場合も本発明に含まれる。
表示板40は、目盛り板20に対して、目盛り部21の並列方向に関して直交する方向の両側に突出しても良いが、目盛り部21の並列方向に関して直交する方向の何れか一方のみに突出することが好ましい。これによって目盛り板20がハウジング11の縁部に近接して配置し易くなる。
表示板40が表示する情報は、乗物状態を示す情報のほか、運転に関する情報を含んでいても良い。例えば運転に関する情報として、目的地への経路を表示するナビゲーション情報でも良いし、渋滞情報や外気温などの乗物状態以外の周辺情報であっても良い。
目盛り用光源35についても発光ダイオード以外の光源、例えば、有機EL素子などが用いられても良い。
本実施形態では、目盛り用導光体30を用いることで目盛り部21の数よりも、目盛り用光源35の数が少ないが、同じ又は目盛り用光源35の数の方が多くても良い。
上記実施形態では、目盛り板20と表示板40が個別の光源及び導光体を備えるが、光源及び導光体の少なくとも一方が目盛り板20と表示板40で共通であっても良い。例えば、表示板用導光体43が目盛り板20の装置下側まで達している構成であれば、目盛り用導光体30及び目盛り用光源35を省略できる。また、目盛り板20の目盛り部21の下側に光源を直接配置し、導光体を省略することもできる。
目盛り板20は、エンジン回転速度を示すための目盛りであるが、自動二輪車(鞍乗型乗物)の他の状態値(例えば移動速度)であっても良い。
本発明は、自動二輪車に限られず、乗物、特に乗物用表示装置10の小型化が望まれる鞍乗型乗物(運転者が跨って乗る乗物)に関する状態値を表示する乗物用表示装置に好適に適用できる。鞍乗型乗物としては、主としてオフロードを走行するための全地形対応車(ATV、All Terrain Vehicle)、水上オートバイ(PWC、Personal Water Craft)等を挙げることができる。